JP3782848B2 - 徐放性ヨウ素複合体、その製造方法及び用途 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、徐放性ヨウ素複合体に関するもので、より詳細にはヨードホールを無機多孔質担体に組込んでなり、ヨウ素化合物が持つ特有の臭気を抑制し且つ有効ヨウ素が水性媒体系又は大気系に持続して徐々に放出される徐放性ヨウ素複合体及びそのヨウ素複合体を主成分とし、幅広い抗菌スペクトルを有する抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、消毒薬や抗菌剤としては、塩素、次亜塩素酸塩、クロラミンT等の塩素系薬剤、ヨウ素系薬剤、カチオン界面活性剤系薬剤、クレゾ−ル等のフエノ−ル系薬剤、ホルマリン等のアルデヒド系薬剤、グルコン酸塩薬剤、クロルヘキシジン塩酸塩等のビグアニド系薬剤、アルコ−ル系薬剤及び銅、亜鉛、銀等の金属及びその化合物等が、それぞれの特徴を活かして、使用されている。
【0003】
中でも、ヨウ素は、周知の通り、ハロゲン系の次亜塩素酸に匹敵する優れた抗菌性を有し、人体に対して比較的安全であり、従来より広範囲に消毒剤として、広く使用されている。例えば、理容、美容業界のハサミ、カミソリ、バリカン等の金属器具の消毒等の用途には、布、紙、合成樹脂シ−ト等の柔軟性材料にヨウ素を含浸、内填させたものが消毒防錆布として使用され、ペ−スト中にヨウ素を含有させたものは塗布可能な創傷治療剤として使用され、更に活性炭、ゼオライト、ケイ藻土、ケイ酸カルシウム等の担体にヨウ素を担持、吸蔵させたものは空気浄化、脱臭、防菌、殺ウイルス等の用途に使用されている。
【0004】
特開平5−237171号公報には、アルコ−ル、エ−テル等の媒体中にヨウ素、ヨウ化物イオン及び非イオン性界面活性剤を含む殺菌剤組成物を含浸させたポリウレタン発泡体が記載され、このものは外科手術用洗浄具として有用であることが示されている。特開平4−174632号公報には、ヨウ素、アルコ−ル、ポリオ−ル、ポリビニルピロリドン等を含有するヨ−ド系殺菌剤組成物を含浸させたウエットテイツシュが記載されている。更に、特開昭60−40048号公報には、ポビドンヨ−ドを殺菌剤として、吸収性部材に含浸させた衛生ナプキン等が記載されている。
【0005】
また、米国特許第4,911,859 号及び第5,O43,090 号明細書には、ポビドンヨ−ド等のヨ−ドホ−ルを吸蔵させた石膏を、分子量1乃至6万のポリエチレン・オキサイド・コポリマー、PEG-8000 、PEG誘導体等をバインダ−として、タブレット状に成形したトイレット等のクリ−ナ、サニタイザ−が記載されている。
【0006】
更に、特開平4−169529号公報には、家畜の乳房炎予防剤として、主成分のキトサンとポビドンヨ−ド、グルコン酸塩及び次亜塩素酸塩との組合わせが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ヨウ素は、抗菌性も強く、広範囲の抗菌スペクトルを有し、しかも安全性に優れているという利点があるが、特有の臭いと色とを有し、取り扱いに難点があることが問題であり、一方ヨードホールは、ヨウ素と同様な抗菌性及び抗菌スペクトルを有しながら、ヨードに特有の臭いが抑制され、取り扱いも容易であるという利点を有するが、比較的短時間の内に効果が失われる傾向があり、抗菌作用の持続性に関して未だ十分満足しうるものではない。
【0008】
また、ヨードホールを種々の担体に担持させた場合には、担体とヨウ素との相互作用が生じ、有効ヨウ素量が減少することも問題である。
【0009】
従って、本発明の目的は、ヨウ素特有の臭気が抑制されていると共に、有効ヨウ素量が長期にわたって安定に維持され、しかも抗菌作用の持続性を有するヨウ素複合体及びそれを用いた抗菌剤を提供するにある。特に具体的には、溶剤タイプ又は水に易溶性等の液体のヨウ素化合物等を、従来の有機系担持材のようにヨウ素とその担持材との反応により、有効ヨウ素が低下するクロラミン化等の問題の起こらない無機担持体に担持させ、水に易溶性及び昇華性のヨウ素化合物を水性媒体系及び大気系で有効ヨウ素が徐々に放出して抗菌作用を長く持続させ、且つヨウ素特有の臭気を抑制された徐放性を有するヨウ素複合体及びそれを用いる抗菌剤を提供するにある。
【0010】
本発明の他の目的は、浮遊する細菌等により汚染された空気を長期にわたって抗菌処理することが可能なフィルターを提供するにある。
本発明の更に他の目的は、靴底等に付着している細菌等を除去し、室内への細菌の持ち込みを長期にわたって防止できる抗菌性マットを提供するにある。
本発明の別の目的は、熱可塑性重合体或いはエラストマー中で抗菌作用が安定に維持されており、抗菌性とその持続性に優れた成形体を製造することが可能な熱可塑性重合体組成物を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体が提供される。
【0012】
上記無機担体(A)は、上記比表面積及び細孔容積を有するものであれば、特に限定されないが、特に好適なものとして、多孔質の非晶質シリカ粉粒体、特に、全細孔容積当たり、細孔半径7.5乃至150オングストロームの範囲にある細孔容積が20乃至90%であるもの;多孔質の活性アルミナまたは活性シリカアルミナの粉粒体;フィロケイ酸塩またはフィロアルミノケイ酸塩、特にスメクタイト族粘土鉱物の粉粒体、ベントナイトまたはベントナイトと硫酸アルミニウムの混合物の粉粒体、フライポンタイト或いはフライポンタイトを表面に担持した多孔質の非晶質シリカの粉粒体、ホルマイト系粘土鉱物の粉粒体等が挙げられる。上記無機担体(A)は0.0001乃至4mmの平均粒径を有することが好ましい。
【0013】
上記無機担体(A)の好適な他の例として、非晶質シリカ、活性アルミナ、活性シリカアルミナ、スメクタイト族粘土鉱物、酸処理されたスメクタイト族粘土鉱物、フライポンタイト及びホルマイト系粘土鉱物から成る群より選択された少なくとも1種から成る多孔質の成形体が挙げられる。
【0014】
上記無機担体(A)の更に他の例として、非晶質シリカ多孔質体であって、コ−ルタ−カウンタ法で測定して10乃至100μmの体積基準メジアン径を有する球状粒子であり、見掛密度(JIS K−6220法)が0.2乃至0.5ml/gの範囲にあり、且つ水銀圧入法による細孔容積が細孔半径18乃至43500オングストロームの範囲で0.5乃至3.5ml/gであるものが挙げられる。上記球状非晶質シリカ粒子は、水銀圧入法で測定して細孔半径75乃至1000オングストロームのメソポアを有し、該細孔容積が0.2ml/g以上であることが好ましい。
【0015】
上記無機担体(A)の別の例として、非晶質シリカであって、走査型電子顕微鏡法による一次粒子径が0.2乃至20μmであり、個々の粒子の真球度が0.9以上の明確な球状粒子であり、見掛密度(JISK−6220法)が0.1乃至0.5ml/gであり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.5乃至2ml/gの範囲にあり且つ吸油量が100乃至400ml/100gであるものが挙げられる。
【0016】
上記ヨードホール(B)としては、5乃至20重量%の有効ヨウ素量を有するものが好ましく、特にポビドンヨ−ド、即ち、ポリビニルピロリドンヨウ素錯体が好適である。
【0017】
上記無機担体(A)100重量部当たりヨードホール(B)が0.05乃至30重量部、特に0.1乃至20重量部の範囲で含有されていることが好適である。
【0018】
本発明によればまた、80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)と、これらを被覆するオイル、ワックス及び樹脂の少なくとも1種から成る被覆層(C)とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体が提供される。
【0019】
上記無機担体(A)100重量部当たりヨウ素化合物(B)が0.05乃至30重量部の範囲で含有され且つ(A)と(B)の合計量100重量部当たり被覆層(C)が1乃至30重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、上記徐放性ヨウ素複合体から成る抗菌剤が提供される。
【0021】
本発明によれば更に、上記徐放性ヨウ素複合体を含有して成る空気清浄機用フィルターが提供される。
【0022】
本発明によればまた、熱可塑性樹脂またはエラストマーに上記徐放性ヨウ素複合体を配合して成る熱可塑性重合体組成物が提供される。この態様では、熱可塑性樹脂またはエラストマー100重量部当たりヨウ素複合体0.1乃至30重量部を配合して成ることが好ましい。この熱可塑性重合体組成物は抗菌性成形体、例えば敷物として有用である。
【0023】
本発明の別の態様では、無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る通気性の織布又は不織布に上記ヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性フィルタ−が提供される。
【0024】
本発明の更に別の態様では、無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る織布又は不織布に上記ヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性マットが提供される。
【0025】
【発明の実施形態】
本発明では、ヨウ素剤としてヨードホールを選択し、これを80乃至800 m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機担体と組み合わせたことが特徴である。
【0026】
ヨードホール(Iodophor)とは、界面活性剤や重合体を担体としたヨウ素の複合体であり、ヨウ素に固有の不快臭は取り除かれているが、強い抗菌作用及び広い抗菌スペクトルを有することが特徴である。
【0027】
即ち、ヨードホールは、元素ヨウ素と同様に、バクテリア、ウィルス、カビ、胞子菌、プロトゾア、イースト菌等の微生物を殺菌するのみならず、ある種の昆虫類、寄生虫類、線虫類等に対しても駆除能力を有することが知られており、微生物の耐性が形成されないという利点をも有している。また、このヨードホールは、古典的なハロゲン系抗菌剤に比して、安全性が高く、取り扱いも容易であり、人や動物に対する刺激も少ないという利点を与える。
【0028】
上記ヨードホールを、80乃至800m2 /gのBET比表面積及び0.2乃至2.3ml/gの細孔容積を有する無機多孔質粉粒体に担持させたことが第二の特徴である。
【0029】
ヨードホールを上記無機多孔質粉粒体に担持させることにより、抗菌剤等として使用時のヨードホールの安定性を向上させ、ヨードホールに徐放性を付与し、更に殺菌作用の持続性を向上させることができる。
【0030】
ヨードホール、例えばポリビニルピロリドン・ヨウ素錯体は粉体であるが、水に溶解し、水溶液の状態でも単独では比較的長期間安定であるが、抗菌剤等に適用した場合には、有機物、例えば糖、アミノ酸、脂質、蛋白質等との接触により、その殺菌作用は比較的短期間の内に失われる傾向がある。
【0031】
本発明で使用する無機多孔質粉粒体では、ヨウ素との相互作用が実質上なく、ヨウ素の担持状態で有効ヨウ素量が安定に維持されると共に、この粉粒体は表面活性を有し、しかも内部に細孔を有するので、これにヨードホールを担持させると、ヨードホールが無機多孔質粉粒体中に安定に保持され、無機多孔質粉粒体中に保持されたヨードホールが徐々に溶出することにより、ヨードホール乃至ヨウ素の徐放性と殺菌作用の持続性とが得られるものである。
【0032】
[ヨードホール]
本発明において、ヨードホールとしては、それ自体公知の任意のヨードホール製剤が使用され、このヨードホールは殺菌作用を有するがヨウ素に固有の不快臭を有しない複合体から成っている。この複合体では、重合体や界面活性剤から成る担体にヨウ素がコンプレックスの形で組み込まれている。
【0033】
一例として、ポピドンヨードの場合、下記式(1)
【化1】
の構造式に示すとおり、ポリビニルピロリドンと分子ヨウ素とがコンプレックスを形成している。
【0034】
ヨードホールの担体重合体としては、ポリビニルピロリドンの他に、ポリエーテルグリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリオキシアルキレン等があげれる。また、界面活性剤担体としては、陰イオン性、陽イオン性、両性、非イオン性のものが使用される。これらは単独でも或いは2種以上の組み合わせでも使用でき、例えば、重合体と界面活性剤との組み合わせも使用できる。
【0035】
ヨードホール製剤の具体的なものとして、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドンヨウ素錯体、)、ヨウ素・アルキルポリエーテルアルコール錯体(G.S.I.)、ポリエトキシポリプロポキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体(Iocline)、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加植物油・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪酸・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪アルコール・ヨウ素錯体、脂肪酸アミド・ヨウ素錯体、第4級有機アンモニウム・ヨウ素錯体等が挙げられるが、ポピドンヨードが好適である。
【0036】
本発明品のヨウ素複合体が0.005乃至3%、特に0.01乃至2%の有効ヨウ素量を有するものが、抗菌性やその持続性の点で有利であり、有効ヨウ素量が上記範囲よりも少ないものでは、抗菌性が不十分であり、一方上記範囲よりも多いものでは安定性が低かったり、臭いの点で不満足である。
【0037】
ヨードホールとしては、液体で入手しうるものと、粉末で入手しうるものとがあるが、本発明ではどちらも使用可能であるが、粉末のものが水分量を調節しうる点で有利である。
【0038】
ポビドンヨードで代表されるヨードホールは次の利点を有する。
(1) 冷水、エチルアルコ−ルに容易に溶解し、通常の使用濃度10%ポビドンヨ−ド水溶液は、室温下に1年間変化せず安定であり、ポリビニルピロリドンとヨウ素が錯体を形成したもののPHは2乃至3.5である。
(2) 細菌、真菌(カビ、酵母)、ウイルス、、ある種の昆虫、原虫、寄生虫等に抗菌活性を有し、抗菌力が強く、多くの微生物が数秒から数分で死滅する。なお真菌に対しては優れた抗菌剤は多くはない。
(3) また微生物がポビドンヨ−ドに耐性とならないため、抗生物質が効かない耐性菌に対しても有効な抗菌活性を有する。ちなみにMRSAは、ほとんどの抗生物質に対して耐性を持つている。
(4) 哺乳類の組織に対する刺激性はほとんど無く、傷口や粘膜に作用しても、無刺激で痛みを伴わないので、取扱いのうえでも安心である。
(5) グラム陽性、グラム陰性の別なく強力な殺菌効果を示し、更に塩素と同様に、界面活性剤、ビグアナイド誘導体、フェノ−ル系殺菌剤とは異なり、
真菌に対しても強い殺菌力を示す。
(6) 細菌芽胞に対しては100〜500ppmの高濃度で長時間の接触が必要であるが、塩素やアルデヒド系以外の殺菌剤では常温では死滅作用は示さない。なおポビドンヨ−ド以外で常温で殺芽胞作用を示すのは塩素やアルデヒドのみである。
【0039】
ヨードホールは毒性が少なく、人や動物に対する刺激も少ないという点で優れたものである。ヨードホールの内、代表的なポピドンヨードについて、その毒性を示すと次の通りである。
【0040】
1)急性経口毒性
一群10頭、12群のラットを用い、ポビドンヨードの水溶液(有効ヨウ素濃度2.5%)の急性経口毒性を評価したところ、LD50(2週間後)は有効ヨウ素量として1.300mg/Kgであった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0041】
2)健康皮膚に及ぼす影響
200人の皮膚に対し、パッチテスト法により、ポビドンヨード液(10%)を96時間適用したところ、異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0042】
3)損傷皮膚に及ぼす影響
人もしくはウサギの皮膚を荒いサンドペーパーで擦りむき、パッチテスト法により、ポビドンヨード液(10%)を適用したところ、健康皮膚と同様に異常は認められなかった。また、その部位では感染は起こらずに、擦りむきは治癒した。
(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0043】
4)眼に及ぼす影響
10%ポビドンヨード液0.5ccを25羽のウサギの眼に点眼し、2週間観察したところ、わずかに結膜が赤くなったが、それは2、3日以内に消失した。25羽のウサギならびに25頭のモルモットの眼に10%ポビドンヨード液0.1ccを15日間、毎日点眼したところ、一時的な紅斑が出現するが、数時間後には消失して、15日の試験期間中とくに異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0044】
5)喉への影響
25人のボランティアに対して、喉にポビドンヨード液(10%)を塗布したところ、6割の人がピリッとする刺激を10〜20分間感じ、喉の粘膜がわずかに赤くなったが、それも2時間前後で消失した。4割の人には特に異常は認められなかった。
10人に15日間、喉にポビドンヨード液を塗布したところ、5人は異常は認められなかった。他の5人は最初わずかに赤くなったが、悪化することはなかった。2週間後、同じ人に同じ試験を行ったところ、全く同じ結果であった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0045】
6)特異体質の人への影響
3人のヨードアレルギーを持つ人の皮膚に、ポビドンヨードと、ルゴール液を適用したところ、ルゴール液を塗布した皮膚は特有の過敏症状が出現したが、ポビドンヨードではいずれの人も特に異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
ポビドンヨードを外用殺菌剤として、3年間に5900人に使用したところ、本剤に対する特異体質がみられたのは2名であった。この2名とも、全身的な毒性症状やヨード過敏症状はみられなかった。(The Bulletin American Society of Hospital Pharmecists 13,226(1956))
【0046】
[無機多孔質粉粒体]
本発明では、ヨードホールを担持させる無機多孔質粉粒体として、80乃至800m2 /gのBET比表面積と、0.2乃至2.3ml/gの細孔容積を有するものを使用する。
【0047】
用いる無機多孔質粉粒体は、前述したBET比表面積と細孔容積とを有することも重要であり、BET比表面積や細孔容積が上記範囲を下回ると、ヨードホール乃至ヨウ素の徐放性や殺菌作用の持続性が本発明の範囲内にある場合に比して不十分となり、一方上記範囲よりも上回ると、ヨードホール担持粒子の粒子強度や耐磨耗性等が低下するので好ましくない。
【0048】
無機多孔質体としては、上記のBET比表面積と細孔容積とを有するものであれば、全て使用することができ、必ずしもこれに限定されるものではないが、非晶質シリカ、活性アルミナ、シリカアルミナ、各種ケイ酸塩、フィロケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、フィロアルミノケイ酸塩、テクトアルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0049】
無機多孔質体は、熱可塑性重合体に配合する場合や、粉剤としての用途には粒径0.1乃至100μmの粉体で用いられ、粉体の成形品として使用することもできる。一般に、取り扱い性や粉立ち防止の点では、粒状物であることが好ましく、一般に1乃至10mm、特に2乃至5mmの粒径を有することが好ましい。粒子形状は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状、不定形状等の任意の形状であってよい。
【0050】
ヨードホール担持用無機多孔質担体の好適な例として、非晶質シリカ粒状物がある。粒状非晶質シリカは、ゲルタイプのものでも、沈降法タイプの非晶質シリカの何れであってもよい。
【0051】
A) 瞬間造粒法非晶質シリカ:
前者のタイプの例として、瞬間造粒法による多孔質球状シリカが挙げられ、このものは、2流体ノズルを用いて、混合時のpHが8乃至9となる条件に、ケイ酸ソ−ダ溶液或いはシリカヒドロゲルを含むケイ酸ソ−ダ溶液と硫酸とを瞬間的に混合すると共にこの混合物を空中に噴霧し、瞬時にシリカ球状粒子にゲル化させ、生成するゲルを下部の酸性溶液中に落下させ、次いで水洗、乾燥させることにより得られる。このタイプの無機多孔質粉粒体は、粒径0.1乃至4mmで、BET比表面積が300乃至800m2 /g、窒素吸着法による細孔容積が0.6乃至2ml/gの範囲にある。このタイプの担体は、球状で表面も滑らかであり、流動性に優れ、粉立ちがなく取り扱いが容易であると共に、ヨードホールの粒子内部の担持性にも優れており、粒状抗菌剤用担体として有用である。
【0052】
B)ヒドロゲル造粒法非晶質シリカ:
別のゲルタイプの非晶質球状シリカとして、ヒドロゲル噴霧造粒法シリカが挙げられ、このものは、ケイ酸アルカリ水溶液と硫酸等の酸水溶液とを混合してゾルのpHが2乃至6になるように反応させ、反応混合物をゲル化させ、次いで得られるゲルを解砕して、水洗し、必要により100乃至150℃の温度範囲で水熱処理し、得られたシリカヒドロゲルを湿式粉砕し、このシリカヒドロゲルの水性スラリーを噴霧乾燥造粒することにより得られる。
このタイプの非晶質シリカは、コ−ルタ−カウンタ法で測定して10乃至100μm、特に25乃至80μmの体積基準メジアン径を有する球状粒子で、見掛密度(JIS K−6220法)が0.2乃至0.5ml/gの範囲にあり、水銀圧入法による細孔容積が細孔半径18乃至43500オングストロームの範囲で0.5乃至3.5ml/gである。また、この球状非晶質シリカ粒子は、水銀圧入法で測定して、細孔半径75乃至1000オングストロームのメソポアを有し、該細孔容積が0.2ml/g以上である。
このタイプの非晶質シリカは、粒子内部の空隙が大きく、ヨードホールの担持性に特に優れており、粉立ちの比較的少ない粉末抗菌剤用担体として有用であるばかりではなく、後述する成形担体の原料としても有用である。
【0053】
C) 凝集成長法非晶質シリカ:
沈降法球状非晶質シリカとしては、出願人による特開平5−193927号公報記載の方法による多孔質球状シリカ乃至ケイ酸塩粒子が挙げられ、このものは、カルボキシメチルセルロースのごとき水溶性高分子を凝集成長剤として、ケイ酸アルカリ水溶液の部分中和物を球状に成長させ、これを中和するか、或いは更にこの粒状物と周期律表第II族金属の水酸化物または塩とを水性溶媒中で反応させることにより得られる。シリカ乃至ケイ酸塩の球状粒子は、シリカ一次粒子の集合体であるため多孔質であり、そのため、一次粒子間にヨードホールを担持することができ、その担持性に特に優れている。
この非晶質シリカは、走査型電子顕微鏡法による一次粒子径が0.2乃至20μmであり、個々の粒子の真球度が0.9以上の明確な球状粒子であり、見掛密度(JISK−6220法)が0.1乃至0.5ml/gで 、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.5乃至2ml/gの範囲にあり且つ吸油量が100乃至400ml/100gである。
このタイプの非晶質シリカは、そのままの形で使用するほかに、非晶質乃至層状微結晶のケイ酸塩の形で変性して用いることもできる。そのケイ酸塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等を挙げることができる。この球状のケイ酸塩を合成する場合は、上記方法で得られるケイ酸アルカリの部分乃至完全中和物から成る球状粒子とマグネシウム、カルシウム、亜鉛の水酸化物、或いは硝酸塩、塩化物、硫酸塩等の無機酸塩水酸化物または塩の一種または2種以上とを水性媒体の存在下で反応させのがよく、これにより、球状粒子の少なくとも表面に、フィロケイ酸マグネシウム、フィロケイ酸カルシウム或いはフィロケイ酸亜鉛等等を生成させる。
【0054】
D)フィロアルミノケイ酸塩:
上記フィロアルミノケイ酸塩としては、各種の天然或いは合成の粘土鉱物或いはその化学変性物が使用される。例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物、メタカオリン、ハロイサイト、メタハロイサイト、アンチゴライト等のカオリン族粘土鉱物、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト等が挙げられる。化学変性物としては、酸性白土等のモンモリロナイトを、酸処理により活性化した活性白土や、酸性白土等のモンモリロナイトをアルカリ処理に活性化した活性ベントナイト等が使用される。
更に、硫酸アルミニウムを含有する活性ベントナイトや活性白土も好適に使用される。
このタイプのフィロアルミノケイ酸塩乃至その変性物は、ヨードホールの担体として優れているばかりではなく、脱臭性、凝集性等をも兼ねており、消臭性能が要求される環境用殺菌剤等の用途に有用である。
【0055】
E) 鎖状粘土鉱物
鎖状粘土鉱物に属するホルマイト系のセピオライト、パリゴスカイトは、その外観形状が繊維状又はその収束体であり、その基本構造は八面体層の骨格を形成する主成分がマグネシウムから成る3−八面体型ケイ酸マグネシウム粘土鉱物であり、このケイ酸マグネシウム粘土鉱物は三次元の鎖状の結晶構造を有し、その外観形状の繊維及びその収束体の間隙にできる空孔がBET法比表面積で100乃至600m2 /gの比表面積を有し、またその収束体構造を有するが故に、吸着作用を有する多孔質の鎖状粘土鉱物である。このため、この鉱物は、ヨードホールの担持性に優れていると共に、脱臭作用をも有しており、種々の繊維への配合も容易である。
これらの粘土鉱物を本発明の担体として使用する前に、ボ−ルミル、ハンマ−ミキサ−での解砕、ス−パ−ミキサ−、擂解機等での練込み粉砕や、アトマイザ−、ジェットミル等での衝撃粉砕等の一次粉砕処理を施し、収束体としての鎖状構造及び鱗片状としての積層構造を部分的に解繊またはほぐしてから、ヨードホールの担持に使用することがより好ましい。
【0056】
F)フィロケイ酸塩:
また、微結晶で比表面積の大きい合成のフィロケイ酸亜鉛、フィロケイ酸マグネシウム、含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛、含アルミニウムフィロケイ酸マグネシウムを、無機多孔質粉粒体として使用できる。このフィロケイ酸塩は消臭作用に優れているので、抗菌性と共に優れた消臭作用も同時に達成されるという利点がある。
特に好適なフィロケイ酸塩として、(1)特開昭61−10021号公報に記載されているフライポンタイト型のX線回折像と100m2 /gのBET比表面積を有するフィロケイ酸亜鉛や含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛或いは(2)特公平5−79602号公報に記載されている複合フィロケイ酸塩、即ち非晶質で多孔質のシリカ或いはシリカアルミナと、その一次粒子表面に形成されたフィロケイ酸亜鉛乃至マグネシウムや含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛乃至マグネシウムが挙げられる。
【0057】
G)成形体:
本発明では、上記多孔質粉粒体を成形したものを、無機担体として使用することができる。この態様では、非晶質シリカ、活性アルミナ、活性シリカアルミナ、スメクタイト族粘土鉱物、フライポンタイト、及びホルマイト系粘土鉱物から成る群より選択された少なくとも1種から成る多孔質の成形体が好適に使用され、成形法は、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、噴霧造粒法、押出造粒法等のそれ自体公知の造粒法が使用される。
【0058】
形状がリング状である圧縮成形体について以下に説明をする。この用途には、上記粉粒体の内でも、前記B)の非晶質シリカが特に適している。このものは、成形性に優れているため、結合剤、滑沢剤等の成形助剤を必ずしも必要としないが、滑沢剤は、成形すべき原料粉粒体の内部摩擦および外部摩擦を減少させて充填性、圧縮性を向上させ、特に圧縮開放時に外力による成形体への応力集中を抑制するなどの作用をもたらすものである。この目的で、打錠前に通常原料に対して0.5乃至1%程度の量で添加する。滑沢剤としては、タルク、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、シリコンオイル、流動パラフィン、ポリエチレングリコ−ル等が用いられ、本発明のこの例では、ステアリン酸マグネシウム又はシリコンオイルを用いた。
25乃至80μmの体積基準メジアン径を有するシリカ球状粒子が、全シリカ球状粒子中80乃至95容量%になるように調粒し、シリカ球状粒子50kgに0.5 kgのステアリン酸マグネシウムを加えてドラム回転混合機で良く混合したものをホッパ−から供給し、タ−ンテ−ブルの回転が10乃至15rpmの条件で成形を行なった。
この例では、(株)菊水製作所製の回転式粉末成形機(ロ−タリ−打錠機)コレクトD555-C15Rを用いてリング状の多孔質シリカ成形体を造った。このロ−タリ−打錠機の成形機構は、水平に回転するタ−ンテ−ブルの同一円周上に臼が等間隔に埋め込まれており、タ−ンテ−ブルが回転する間に、この臼に原料が充填され、杵で圧縮され、次いで杵で打出しされる一連の操作が、連続的に行なわれる。なお、下杵は臼にはめ込まれて臼と一緒に移動し、上杵は臼と同軸上に位置していて、臼と一緒に回転し、且つ上杵及び下杵はそれぞれ上下運動して一連の操作が行なわれて、シリカ成形体が得られる。また、その成形最大径は3乃至15mm、また最大充填高さも3乃至15mm範囲に適用できるが、この例においては、主に外径5mm、内径2mm、高さ6mmのリング状の多孔質シリカ成形体を、圧縮圧30kg/cm2 の条件で連続的に製造し、成形担持体として使用した。
勿論、本発明における成形体は、上記したリング状に限定されるものではなくシリンダ−(臼)と上・下ピストン(上杵、下杵)との組合せからなる金型の種類によって、例えば球形、三角錐型、立方体乃至直方体型、菱型、六角柱型、円柱型、他のリング型、タブレット型等も可能であり、しかも、上記ロ−タリ−打錠機を用いることにより、最大径が一般に3乃至30mmの範囲までの成形物を提供することができる。
【0059】
[ヨウ素複合体及びその製法]
無機多孔質粉粒体にヨードホールを担持させるには、格別に面倒な操作は不要であり、無機多孔質粉粒体にヨードホールの溶液を、噴霧法或いは含浸法等により施し、乾燥すればよい。ヨードホールの溶液としては、一般に濃度が1乃至50重量%の水溶液が使用される。乾燥は、160℃以下の温度で、好ましくは120℃以下、より好ましくは80℃以下の温度で行うのがよい。無機多孔質粉粒体に対するヨードホールの担持量は、用途によっても相違するが、無機多孔質担体100重量部当たり0.05乃至30重量部の範囲にある。この手段は、予め形成された担体にヨードホールを担持させるのに有効である。
【0060】
無機多孔質担体にヨードホールを担持するためには、他の手段を用いることもできる。即ち、無機多孔質担体の原料となる粉体にヨードホールを混合し、これを粒状物或いはその他の成形体に成形することによっても、本発明のヨウ素複合体を製造することができる。ヨードホールは、粉末の状態で混合しても、或いは溶液の形で混合してもよい。この粒状体の成形には、後述するワックス類や低融点樹脂等を造粒媒体として配合することができる。
【0061】
上記成分の混合或いは更に混練には、例えばダブルスクリュニ−ダ、擂漬機、サンドグラインダ−ミル、アトライター、アトマイザー、奈良式粉砕機、円板振動ミル、振動ボールミル、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー等或いはこれらの組合せが使用される。また、造粒には、押出造粒、打錠、転動造粒、スプレー造粒、破砕造粒等のそれ自体公知の任意の手段を用いることができる。
【0062】
担体からのヨードホールの徐放性を強調するために、ヨードホール担持無機多孔質粉粒体乃至成形体をシリコンオイル等の有機処理剤で処理して、被覆層を形成することができる。
【0063】
有機成分としてはシリコンオイルの他にワックス類や低融点樹脂類等が好適に使用される。これらの有機処理剤は、無機多孔質粉粒体とヨードホールとの合計量100重量部当たり1乃至30重量部の量で用いるのがよい。
【0064】
これらの有機成分としてのワックス類や低融点樹脂類には、
(1)脂肪酸及びその金属塩:高級脂肪酸(炭素数が8〜22のもの)またその金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、Zn塩、Al塩):
(2)アマイド、アミン、一価、多寡アルコールの脂肪酸エステル:高級脂肪酸アマイド、エルカ酸アミド、ステアリルエルカミド、2−ステアロミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、脂肪酸ジエタノールアミン、ステアリン酸n−ブチル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリト−ル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ジエチレングリコールステアリン酸ジエステル、トリグリセライドワックス、ポリエチレンワックス、エポキシ変性ポリエチレンワックス:
(3)低融点樹脂としては、融点或いは軟化点が40乃至160℃、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルプチラーアル、テルペン樹脂、石油樹脂等:
が挙げられ、これらのワックス類及び低融点樹脂は、単独或いは2種以上の組合せで使用できる。
【0065】
殺菌効果を増大させ、即効性を強調するために、ヨードホール担持無機多孔質粉粒体に、ヨウ化カリウム/ヨウ素等の即効性殺菌成分をヨードホール及び無機多孔質粉粒体の合計量100重量部当たり50重量部以下の量で添着させてもよい。
【0066】
[抗菌剤]
本発明のヨウ素複合体は、有効ヨウ素の徐放性を有する抗菌剤乃至環境殺菌剤(サニタイザー)としての用途に有用である。即ち、水に易溶性であるが、やや安定性に乏しいヨ−ドホ−ルを無機多孔質担体に担持させることにより、有効要素を安定に維持することが可能となると共に、後述する実施例2からも明らかなように、ヨウ素が持続して徐々に放出される徐放性を付与することが可能となった。
【0067】
また、本発明によって得られた徐放性ヨウ素複合体を抗菌剤として抗菌試験に供すると、後述する実施例3から明らかなように、寒天培地の表面にはMRSA菌のコロニ−が無数に増殖しているのが観察されるが、寒天培地上に置いたヨウ素複合体ペレットの周囲には、上記菌の増殖を阻止したいわゆる増殖阻止帯が形成されており、その増殖阻止帯が長時間にわたって安定に観察された事実は、有効ヨウ素が持続して徐々に放出されるという本発明の作用効果を示している。
【0068】
一方、比較のために、デンプンを含んだ寒天培地上に、ポビドンヨ−ド原末或いは本発明のヨウ素複合体粉末をスポットしたところ、原末の周辺にヨウ素−デンプン反応による青色が確認されたが、翌日には青色も原末の茶色も消失していたが、本発明の徐放性ヨウ素複合体を用いた場合には、翌日においてもその周囲の青色が持続していた。以上の知見から、本発明のヨウ素複合体が安定性と徐放性との組み合わせに優れていることも分かる。
【0069】
本発明のヨウ素複合体は、ポビドンヨ−ドに代表されるヨードホールと同様の広範な抗菌スペクトルを有する。
【0070】
ポビドンヨ−ドを例に公知のデ−タを参照すると、細菌種
(S.aureus、E.faecalis、 E.coli、 K.pneumoniae、 S.marcescens、P.mirabilis、P.aeruginosa)に対して、抗菌効果(0.01%水溶液、1分、死滅)があり、真菌種(C.albicans-typeA、-B、 C.tropicalis、 C.stellatoidea、 C.guilliermondii、 C.parapsilosis、 C.krusei、 T.glabrata、 Cr.neoformans)に対して、抗菌効果(0.005%水溶液、5分、死滅)があり、またウイルス(単純ヘルペス、インフルエンザ、エコ−、ヒト免疫不全(HIV)、コクサッキ−)に対して抗ウイルス効果(0.1-0.02%水溶液、15〜60秒、ウイルス感染価10-2.8〜10-1)がある。
更に上記以外に下記に示す細菌種(グラム陰性菌、グラム陽性菌、抗酸菌、真菌、ウイルス、原生動物)に対しても、抗菌作用を示す。
(1)グラム 陰性菌:Aerobacter aerogenes、 Aeromonas liquefaciens、 Achromobacter xylosoxidans、 Chlamydia trachomatis、 Citrobacter freundii、 Enterobacter aerogenes、 Enterobacter cloacae。
(2)グラム陽性菌:Bacillus cereus、 Bacillus pumilis、 Bacillus subtilis、Clostridium histolyticum、 Clostridium perfringens、 Clostridium septicum、Clostridium tetani、 Corynebacterium acnes、
(3)抗酸菌: Mycobacterium fortuitum、 Mycobacterium tuberculosis。
(4)真菌:Aspergillus flavus、 Aspergillus niger、 Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus、 Pityrosporum ovale、 Trichophyton rubrum、Rhodotorula glutinis、 Trichophyton interdigitale、
(5)ウイルス:Adenovirus、 Cytomegalovirus、 Influenza Virus A、 Herpes simplex Type1&2、 Rabies Virus、 Rubella Virus、 Vaccinia Virus。
(6)プロトゾア:Treponema pallidum、Entamoeba histolytica、 Trichomonas vaginalis。
【0071】
本発明の抗菌剤及び環境殺菌剤は、粉体、粒体或いは成形対等の任意の形で、抗菌作用及び環境殺菌作用が要求される場所に施すことができる。この抗菌剤及び環境殺菌剤の施用は、粉粒体を前記場所に直接散布してもよく、或いは、通気性乃至通水性を有する容器内に、前記粉粒体或いは成形体を収容させ、この容器を抗菌作用及び環境殺菌作用が要求される場所に置くだけでもよい。
【0072】
必要な量は、要求される抗菌作用或いは殺菌作用の程度によっても相違するが、一般に1乃至200ppm、特に10乃至100ppmの有効ヨウ素量を供給するようなものであればよい。
【0073】
[熱可塑性重合体組成物]
本発明の別の態様によれば、熱可塑性重合体或いはエラストマーに、前記ヨウ素複合体を配合して成る熱可塑性重合体組成物が提供され、これにより抗菌性の熱可塑性重合体成形品が得られる。
【0074】
熱可塑性重合体としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、ピロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物のいずれかの樹脂でもよい。勿論、生分解性樹脂を用いることにより、環境に優しい樹脂成形品を提供することもできる。
エラストマー重合体としては、例えばニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリルゴム等;熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの内でも、炭化水素系エラストマー、特にEPRやEPDMは好適なものである。
勿論、これらは2種以上のブレンド物の形で使用することもできる。
【0075】
熱可塑性樹脂やエラストマー100重量部当たり、前記ヨウ素複合体を0.1乃至30重量部配合することが好ましく、これにより抗菌性を有する重合体成形品を得ることができる。
熱可塑性樹脂にポビドンヨウ素0.01乃至20重量部を直接混練することもできるが分散性が悪く、添加量が多くなるとブリードを起こしやすくなる。これに対して、本発明のヨウ素複合体を配合すると、重合体中への分散性も良好であり、ヨウ素複合体及び重合体の熱劣化も抑制され、この重合体組成物の成形品は、種々の特性に優れている。
【0076】
重合体へのヨウ素複合体の配合には、いわゆるドライブレンドやメルトブレンド方式を採用でき、更にヨウ素複合体を比較的高濃度で含有するマスターバッチを、未配合の重合体にブレンドする方法を採用することもできる。
混練は、重合体が溶融する温度で、比較的低温で行うのが望ましく、200℃以下の温度が好ましい。混練を比較的低温で行うために、可塑剤を用いるのが好ましく、いわゆる塩化ビニール樹脂等のプラスチゾルを用いることができる。
重合体組成物の成形には、押出成形によるフィルム、シート、パイプ等の成形、ブロー成形によるタンク、容器等の成形、射出成形による各種ハウジング、部品等の成形、カレンダー成形によるシートの成形等が用いられ、形成される成形品は、優れた抗菌性を有している。勿論、同時押出或いは同時射出等により、表面層のみがヨウ素複合体が配合されている積層体から成る重合体成形品とすることもできる。
【0077】
本発明のヨウ素複合体を、それ自体公知の塗料中に配合して、抗菌剤塗料組成物とすることもできる。塗料としては、樹脂の種類から、ニトロセルロース塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料の他に、フェノール系レジン、変性フェノール系レジン、アルキド系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、シリコーン系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素系レジン等の1種或いは2種以上を含有する塗料が挙げられる。
また、用いる塗料は、その用い方によって、溶剤型塗料、水性塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよいが、本発明では溶剤型塗料又は水性塗料が特に適している。この溶剤型塗料の有機溶媒としては、トルエン、キシレンn−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンエタノール、プロパノール、ブタノール、ダイアセトンアルコールテトラヒドロフラン、ジオキサンエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ酢酸エチル、ジメチルスルホキシド溶媒等の1種または2種以上を用いることができる。また、水性塗料としては、水溶液型の塗料の他、自己乳化型或いは界面活性剤乳化型の塗料が使用される。水性塗料の樹脂としては、水性媒体に水溶化された或いは自己乳化されたアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂或いはこれらの2種以上を組合わせて用いることができる。樹脂分濃度は、一般に10乃至70重量%、特に20乃至60重量%の範囲にある。
【0078】
用途によって異なるが、本発明によるヨウ素複合体、特に球状抗菌剤を樹脂100重量部当たり5乃至100重量部を添加させて抗菌剤塗料として使用することができる。
【0079】
[抗菌性フィルター]
前記ヨウ素複合体は、抗菌性フィルター、例えば空気清浄機用のフィルターの用途に使用することができる。
例えば、病院内でまき散らされたMRSAは、乾燥状態で1週間は生存し、空中に浮遊・拡散し、不特定多数の人がこれを吸い込んで保菌者となる可能性がある。このような院内の感染ル−トを断つ手段として、例えば集中治療室内の空気を、本発明の抗菌剤を装填した空気清浄機に通気循環させて、室内の汚染空気を浄化(抗菌環境化)させることができる。抗菌処理には、例えば前項G)で述べたラッシヒリングにヨウ素複合体を担持させたものをフィルターとして用いることができる。
【0080】
図1はこのラッシヒリング型抗菌剤を用いた空気清浄機用フィルターの抗菌試験装置を説明するための図であって、エアーポンプ1の排気側に、容器3が接続される。容器3には、使用済み動物飼育用チップ6が充填されており、容器3には2本のパイプ2が接続されていて、一方は、直接、対照培地8を収容する容器に接続されている。他方は、抗菌剤試料7、即ち、試料(GI−9)を収容する容器を介して、試験培地9を収容する容器に接続されている。対照培地8及び試験培地9を収容する容器は、ゴム栓4で密栓されており、排気チュウブには、菌が入り込まないように、綿栓10が施されている。
チップ6に接触した空気は、対照培地8と接触し、菌のコロニーが発生したのに対して、本発明のラッシヒリングと接触した後、試験培地と接触した場合には、菌のコロニーの発生は全く認められなかった。
【0081】
[抗菌性シート]
本発明の徐放性ヨウ素複合体の粒子を、無機繊維、動植物繊維、合成樹脂繊維等からなる通気性の織布又は不織布に充填した少なくとも1層からなるシートは、抗菌性シートとして、フィルター或いは後述するマット等の用途に用いることができる。例えば、上下のサンドイッチされた繊維シートの間に、ヨウ素複合体の充填部を形成し、抗菌性シートとすることができる。また、織布、不織布、紙や多孔性樹脂シートにヨウ素複合体を内填して、この用途に用いることもできる。
【0082】
図2は抗菌シートを説明するための斜視図であり、図3はこの抗菌シートのA-A断面図である。この抗菌性シートは、凹凸部を有する上面シートと12と平面状の下面シート13とから成り、シート凸部11における上面シート12と下面シート13との間には、ヨウ素複合体粒子の充填部14が形成されている。この具体例では、試料(GI−10)を用いた。
上記抗菌性シートは、フィルターの他、マット、敷物、病院ベッド用シーツ、床材、壁材、その他の用途に使用できる。
【0083】
図4は抗菌シートの使用状態を説明するための図であり、ベッドの敷き布団18上に、抗菌性シート17を載せ、その上に通常のシーツ16を敷いて、病人15が寝るようにすることができる。
本発明の抗菌性シートにおいて、ヨウ素複合体として、前述した消臭作用を有するものを用いると、抗菌性の付与と同時に、脱臭作用も得られるので、環境も一層好適なものとなるいう利点がある。
【0084】
[用途]
以上から、本発明による徐放性ヨウ素複合体は、以下に示す種々の用途に、消毒剤や抗菌剤としては勿論のこと、その他にも防腐、防黴、消臭剤及びその組成物として使用されることが期待されるものである。
(1)畜舎用及び畜産器具用消毒剤:例えば、牛舎、豚舎、鶏舎等の床、壁、天上の消毒、搾乳器具、ふ卵器具、家畜診療・繁殖用器具等の消毒、搾乳後の乳頭消毒剤、
(2)食品、醸造等の製造機器の消毒・抗菌剤:例えば、その設備、施設、機械器具、原料・製品の保管倉庫、冷蔵庫、容器・包装材料、作業者の手袋・履物等の消毒剤、抗菌剤
(3)木材等の消毒剤:例えば、輸入木材、製材、チップ、合板、皮革、繊維、塗料等の防腐、防黴剤、
(4)環境消毒・抗菌剤:例えば、浄化槽、屎尿浄化槽、配水・排水管、腐敗沼・池等の消毒、抗菌剤、
(5)公共施設の消毒・抗菌剤:例えば、病院のトイレ、病室、ベット等の消毒剤、学校、保育園の給食室、トイレ、砂場の消毒、給食センタ−、劇場、公衆便所、公衆浴所、乗物内の消毒、抗菌剤、
(6)植物消毒・抗菌剤:例えば、輸入植物、茶葉、生薬等の防黴、防虫、それらの保管倉庫・冷蔵庫の消毒、抗菌剤、
(7)家庭用消毒・抗菌剤:例えば、浴室、浴槽等の防腐、防黴、洗濯機の消毒剤、台所、流し台、冷蔵庫内、生ごみ箱等の消毒剤、便器、簡易便器(乳児、老人、病人)等の消毒剤、ペット用の消毒、抗菌剤、ペット用トイレ砂。
【0085】
【実施例】
本発明は以下の例で詳細に説明する。なお本発明に用いる徐放性ヨウ素化合物、抗菌剤等の物性及び評価方法は以下の通りである。
(1)見掛密度
JIS K−6220.6.8に準拠して測定した。
【0086】
(2)吸油量
JIS K−5101.19に準拠して測定した。
(3)pH
試料10gをイオン交換水100mlに加え撹拌後、25℃に1時間放置し、その上澄液のpHを測定する。
(4)比表面積、細孔容積
カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法による比表面積、細孔容積を測定した。また水銀圧入式ポロシメ−タ−(マイクロメリテイクス社製オ−トポア9220)を用いて、18乃至43500Åのポアサイズを測定し、細孔容積を求めた。
(5)粒度
コ−ルターカウンター(コールターエレクトロニクス社製TA−II型)法により、アパーチャーチューブ50μmを用いて測定した。
(6)SEMによる粒径
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた写真像から、代表的な粒子を選んで、スケールを用いて粒子像の長径と短径を測定し、一次粒子径とした。
(7)真球度
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた写真像から、代表的な粒子を選んで、スケールを用いて粒子像の長径と短径を測定し以下の式から求めた。
真球度 = 短径(DS )/ 長径(DL )
(8)ヨウ素の溶出速度
所定量のヨウ素(I2 )を担持させたヨウ素複合体の所定量をカラムにとり、20℃のイオン交換水を5ml/分の速度で通流させ、ポビドンヨ−ドの色調が消失し、流出液のヨウ素−デンプン反応の青色が認められなく時点を終点として、本発明の徐放性ヨウ素複合体のヨウ素の溶出速度(meq/hr・100g)を算出する。
(9)抗菌試験
被験株を生理食塩水に約1×106 個/mlに懸濁した液1mlを、予め50℃に保温したペプトン0.2%、食塩0.7%、寒天0.8%よりなる培地2mlに混合し、寒天1.5%より成る同一組成の寒天平板培地に重層する。次いで重層部分の上に本発明の試料を載せ、完全に固化した後37℃にて24時間培養後、試料の周囲に生じる増殖阻止帯の幅を測定する(図5参照)。なおNIP 4000 の細菌では、培地成分として更にグルコ−スを0.1%を追加する。
【0087】
(10)有効ヨウ素及びヨウ化物イオン量
ヨウ素化合物の消毒、抗菌効果はヨウ素(I2 )自体であり、従って当該供試体の全ヨウ素のうち、イオン性ヨウ素量とそれ以外の有効ヨウ素量(ヨウ素分子自体)とを下記の方法で評価する必要がある。
1. 有効ヨウ素は、2gの試料粉末を水30mlに懸濁させ、0.005Nチオ硫酸ナトリウム液でのヨウ素−デンプン反応滴定で有効ヨウ素%(Ia)を定量する。
2. ヨウ化物イオンは、2gの試料粉末を水100mlに懸濁させ、ヨウ素の色が消失するまで亜硫酸水素ナトリウム液を加え、次いで0.1N硝酸銀液10mlと硝酸4mlとを加え、過量の硝酸銀を用いて0.05Nチオシアン酸アンモニウム液で滴定(指示薬:硫酸第二鉄アンモニウム)して全ヨウ素量%(I)を求め、(I)−(Ia)の差がヨウ化物イオン(%)量である。
【0088】
(実施例1)
本発明による各種の徐放性ヨウ素複合体について以下に説明する。担持材(A)としては、多孔性非晶質シリカで不定形のミズカソ−ブ(水澤化学製:比表面積400m2 /g、細孔容積1.5ml/g、pH5)、シルトンA(水澤化学製:比表面積250m2 /g、細孔容積0.3ml/g、pH5.3)及び2−八面体型スメクタイトの酸性白土シルトンLP(水澤化学製:比表面積90m2 /g、細孔容積0.2ml/g、pH5)、3−八面体型スメクタイトのフィロケイ酸マグネシウムのミズカライフ(水澤化学製:比表面積650m2/ g、細孔容積0.8ml/g、pH8.5)の粉末それぞれ100重量部にヨウ素化合物(B)としてポビドンヨ−ド(日宝化学製)の粉末10重量部を加え、水で調湿しながら混合・混練し、次いで押出し造粒法で円柱状(1.5mm径のペレット)に造粒し、60乃至120℃条件で乾燥させ、試料番号それぞれPI−1、PI−2、PI−3、PI−4の本発明による徐放性ヨウ素複合体を得た。
【0089】
なおPI−1、PI−3の一部について、それぞれ市販のシリコンオイル及びPEG−800を有機表面処理剤として(A)と(B)の合量100重量部にそれぞれ20及び10重量部を上記混練時に加えて得られたものを、それぞれ試料番号PI−1S、PI−3Sとした。
【0090】
同じく担持材(A)として定形の球状粒子のミズパ−ル(水澤化学製:平均粒径3μm、比表面積500m2 /g、細孔容積1.0ml/g、pH7)、MSシリカ(水澤化学製:平均粒径30μm、比表面積350m2 /g、細孔容積1.5ml/g、pH7.5)、微小球シリカ(水澤化学製:平均粒径3mm、比表面積750m2 /g、細孔容積1.1ml/g、pH5)同じく微小球シリカ(水澤化学製:平均粒径1mm、比表面積300m2 /g、細孔容積1.5ml/g)の100重量部に、ヨウ素化合物(B)としてポビドンヨ−ド固形分の10重量部に相当するポビドンヨ−ド(日宝化学製)の10%水溶液を含浸させて以下同様にして得た球状の本発明による徐放性ヨウ素複合体を、それぞれ試料番号SI−5S(シリコンオイル)、SI−6S(PEG−800)、SI−7S(シリコンオイル)、SI−8S(PEG−800)とした。なおいずれもポビドンヨ−ド含浸後に転動下にシリコンオイル及びPEG−800で表面処理した後、60乃至90℃で乾燥させた。
【0091】
次いでSI−6Sの球状徐放性ヨウ素複合体の一部を使用し、圧縮(打錠)成型機の(株)菊水製作所の粉末成型機(コレクトD555−C15R)を用いて外径5mm、内径2mm、高さ6mmのラッシヒイリング型の成型体徐放性ヨウ素複合体を調製し、これを試料番号GI−9とした。
【0092】
(実施例2)
本発明による徐放性ヨウ素複合体のヨウ素の徐放性を評価するために、水に寒天を1.5%、可溶性デンプンを0.1%の割合で加え、完全溶解させた後、シャ−レに厚さ3乃至4mm程度に加え、放冷固化した寒天上に実施例1で得られたPI−1、PI−2、PI−3、PI−3S、SI−5S、SI−6S、SI−8S及び比較のためにポビドンヨ−ドの粉末をそれぞれ載せた。その結果、本発明の試料の周辺に生じたヨウ素−デンプン反応による青色は、数日間持続したが、ポビドンヨ−ド原末周辺の青色は試験翌日に消失した。以上から本発明のヨウ素複合体は、持続してヨウ素を放出する徐放性体であることが判った。
【0093】
(実施例3)
実施例1で得られた試料番号PI−1、PI−2、PI−3、PI−4、PI−1S、PI−3S、SI−5S、SI−6S、SI−7S、SI−8S、GI−9の本発明による徐放性ヨウ素複合体について、その有効ヨウ素量(%)とヨウ化物イオン量(%)を測定し、各試料の有効ヨウ素量(%)とStaphylococcus aureus NIP 2019(MRSA)、Pseudomonas aeruginosa IFM 3011 及びCandia albicans NIP4000、更にIFM 2058、IFM 3039、IFM 3029、IFM 3041、IFM 3048の各菌に対する抗菌試験結果を下記の表1、2に示した。
なお、MRSA、IFM 3011は特に院内感染において問題にされ、何れも抗生物質に耐性を示す細菌であり、NIP4000は、日和見感染の原因となっている病原性酵母である。またIFM 2058、IFM 3039、IFM 3029、IFM 3041は食中毒原因菌であり、IFM 3048は赤痢菌である。
【0094】
なお下記に示す寒天培地上の阻止帯の周辺は、各細菌がコロニーを作って増殖している状況がよく観察されるものである。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例4)
エアーポンプ(風量1.5l/min)を用いて、動物飼育汚物を詰めた容器内に送風し、容器からの排気を、試料GI−9を充填したカラム(担体部分長さ43cm、内径25mm)に通す。カラムより出た空気を、底部にBrain Heart Infusion 寒天培地を作成した容器に2日間通す。対象として汚物を詰めた同一の容器からの排気を、直接、底部にBrain Heart Infusion寒天培地を作成した容器に平行して通す。通気後、それぞれの培地作成容器を37℃にて2日間好気的条件下で放置したところ、対照培地には500個以上の菌のコロニーが生じたのに対し、試験培地には10個のコロニーが生じたのみだった。図1に試験装置を図示する。
【0098】
(実施例5)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)に試料SI−5S,を下記配合で撹拌混練(ヘンシェルミキサー)し、得られた混練物を2軸押し出し機に供給して加熱温度150℃でペレットにし、次いでインフレーション成形を行い、幅250mm、厚さ100μのフィルムを得た。
このフィルム及び抗菌試験結果を表3に示す。
【0099】
(実施例6)
不織布を立体加工したシートの内部にセピオライト100部にポビドンヨード10部を担持した物(GI−10)を充填したシート(充填量800g/m2,日栄工業製:コルケミシート)を作成した。(図2、図3参照)
シートの平面を上向きに設置し緑膿菌或いはMRSAの被検液を2ml載せ、1時間マットに吸収させた後、シートの下に濾紙を敷き、上方よりスパーテルを用いて押しつけ(圧力)、シートに吸収させた被検液を濾紙に強制的にしみ出させた。この濾紙を菌検出用の標準寒天培地にはりつけ、一晩のおいた後、濾紙をはがし、寒天培地を37℃、24時間培養し、菌の検出を行った。その結果、ポリビニルピロリドン含有マットでは、吸着された緑膿菌或いはMRSAの被検液がマット内で殺菌され、液を強制的にしみ出させても菌は検出されなかった。一方、比較シート(試料にセピオライト単独で使用)の方は、吸収されても殺菌されず、吸収された被検液を強制的にしみ出させると菌は漏れだし寒天培地上に菌が検出された。
【0100】
(実施例7)
実施例6で用いた抗菌シートを、何らかの慢性疾患を有する在宅療養中の71から80歳の高齢者(男3名、女2名)の使用している布団もしくはベッドの上に敷き、その上にシーツを敷く(図4参照)、尚、この抗菌シートは1ヶ月に1回新しい物とした。3ヶ月間使用し、その褥そうの形成を予防できるかどうか、臨床的に評価した。
褥そうについては、試験開始時5名中2名が軽度、1名は中等度の褥そうを既に形成しており、これら5名の褥そう形成の経過を1ヶ月おきに観察した結果を表4に脱臭試験の結果を表5に示す。
褥そうの程度を下記に示した。
中等度 :++
軽度 :+
無し :−
脱臭試験の評価基準を下記に示した。
++:強い臭いあり
+:弱い臭いあり
−:臭い無し
【0101】
さらに、布団にMRSAが、しみこんでいるのかを確認するために次の試験を行った。上記で使用したシーツと布団の表面布を適当に切断し、これを適量の生理食塩水でリンスする。生理食塩水にて10倍段階に稀釈した各液0.1mlをオキサシリン(MPIPC)4μg/ml添加卵黄加マンニット食塩寒天培地及び卵黄加マンニット食塩寒天培地に塗抹後、37℃、40時間好気培養する。
生じたコロニーのうち以下に示したものをMRSAとして検出し、定量培養を行いその結果を表6に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
褥そう臨床的試験
【0104】
【表5】
脱臭試験
【0105】
【表6】
MRSA検出結果
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、ヨードホールを選択し、これを多孔性の無機担体に担持させたことにより、有効ヨウ素を長期にわたって安定に保持することができ、しかも有効ヨウ素を徐々に放出させることが可能なヨウ素複合体が提供される。このヨウ素複合体は、広範囲の抗菌スペクトルを有すると共に、抗菌作用に優れており、安全性も高く、抗菌剤として、また抗菌性フィルター、抗菌性シート或いはマット等として有用である。また、無機担体として、消臭作用を有するものを使用することにより、消臭作用も同時に達成されるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】空気清浄機用フィルターの抗菌試験装置を説明するための図である。
【図2】抗菌シートを説明するための斜視図である。
【図3】図1の抗菌シートのA-A断面図である。
【図4】抗菌シートの使用状態を説明するための図である。
【図5】菌の増殖の阻止帯幅を説明するための図である。
【符号の説明】
1 エアーポンプ
2 ガスパイプ
3 容器
4 ゴム栓
5 ガラス管
6 使用済み動物飼育用チップ
7 試料(GI−9)
8 対照培地
9 試験培地
10 綿栓
11 シート凸部
12 シートの凹凸状上面部材面
13 シートの平面状下面部材
14 試料(GI−10)
15 被験者
16 シーツ
17 抗菌シート
18 布団
21 シャーレ
22 試料
23 菌の増殖の阻止帯幅(mm)
24 菌のコロニー
【産業上の利用分野】
本発明は、徐放性ヨウ素複合体に関するもので、より詳細にはヨードホールを無機多孔質担体に組込んでなり、ヨウ素化合物が持つ特有の臭気を抑制し且つ有効ヨウ素が水性媒体系又は大気系に持続して徐々に放出される徐放性ヨウ素複合体及びそのヨウ素複合体を主成分とし、幅広い抗菌スペクトルを有する抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、消毒薬や抗菌剤としては、塩素、次亜塩素酸塩、クロラミンT等の塩素系薬剤、ヨウ素系薬剤、カチオン界面活性剤系薬剤、クレゾ−ル等のフエノ−ル系薬剤、ホルマリン等のアルデヒド系薬剤、グルコン酸塩薬剤、クロルヘキシジン塩酸塩等のビグアニド系薬剤、アルコ−ル系薬剤及び銅、亜鉛、銀等の金属及びその化合物等が、それぞれの特徴を活かして、使用されている。
【0003】
中でも、ヨウ素は、周知の通り、ハロゲン系の次亜塩素酸に匹敵する優れた抗菌性を有し、人体に対して比較的安全であり、従来より広範囲に消毒剤として、広く使用されている。例えば、理容、美容業界のハサミ、カミソリ、バリカン等の金属器具の消毒等の用途には、布、紙、合成樹脂シ−ト等の柔軟性材料にヨウ素を含浸、内填させたものが消毒防錆布として使用され、ペ−スト中にヨウ素を含有させたものは塗布可能な創傷治療剤として使用され、更に活性炭、ゼオライト、ケイ藻土、ケイ酸カルシウム等の担体にヨウ素を担持、吸蔵させたものは空気浄化、脱臭、防菌、殺ウイルス等の用途に使用されている。
【0004】
特開平5−237171号公報には、アルコ−ル、エ−テル等の媒体中にヨウ素、ヨウ化物イオン及び非イオン性界面活性剤を含む殺菌剤組成物を含浸させたポリウレタン発泡体が記載され、このものは外科手術用洗浄具として有用であることが示されている。特開平4−174632号公報には、ヨウ素、アルコ−ル、ポリオ−ル、ポリビニルピロリドン等を含有するヨ−ド系殺菌剤組成物を含浸させたウエットテイツシュが記載されている。更に、特開昭60−40048号公報には、ポビドンヨ−ドを殺菌剤として、吸収性部材に含浸させた衛生ナプキン等が記載されている。
【0005】
また、米国特許第4,911,859 号及び第5,O43,090 号明細書には、ポビドンヨ−ド等のヨ−ドホ−ルを吸蔵させた石膏を、分子量1乃至6万のポリエチレン・オキサイド・コポリマー、PEG-8000 、PEG誘導体等をバインダ−として、タブレット状に成形したトイレット等のクリ−ナ、サニタイザ−が記載されている。
【0006】
更に、特開平4−169529号公報には、家畜の乳房炎予防剤として、主成分のキトサンとポビドンヨ−ド、グルコン酸塩及び次亜塩素酸塩との組合わせが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ヨウ素は、抗菌性も強く、広範囲の抗菌スペクトルを有し、しかも安全性に優れているという利点があるが、特有の臭いと色とを有し、取り扱いに難点があることが問題であり、一方ヨードホールは、ヨウ素と同様な抗菌性及び抗菌スペクトルを有しながら、ヨードに特有の臭いが抑制され、取り扱いも容易であるという利点を有するが、比較的短時間の内に効果が失われる傾向があり、抗菌作用の持続性に関して未だ十分満足しうるものではない。
【0008】
また、ヨードホールを種々の担体に担持させた場合には、担体とヨウ素との相互作用が生じ、有効ヨウ素量が減少することも問題である。
【0009】
従って、本発明の目的は、ヨウ素特有の臭気が抑制されていると共に、有効ヨウ素量が長期にわたって安定に維持され、しかも抗菌作用の持続性を有するヨウ素複合体及びそれを用いた抗菌剤を提供するにある。特に具体的には、溶剤タイプ又は水に易溶性等の液体のヨウ素化合物等を、従来の有機系担持材のようにヨウ素とその担持材との反応により、有効ヨウ素が低下するクロラミン化等の問題の起こらない無機担持体に担持させ、水に易溶性及び昇華性のヨウ素化合物を水性媒体系及び大気系で有効ヨウ素が徐々に放出して抗菌作用を長く持続させ、且つヨウ素特有の臭気を抑制された徐放性を有するヨウ素複合体及びそれを用いる抗菌剤を提供するにある。
【0010】
本発明の他の目的は、浮遊する細菌等により汚染された空気を長期にわたって抗菌処理することが可能なフィルターを提供するにある。
本発明の更に他の目的は、靴底等に付着している細菌等を除去し、室内への細菌の持ち込みを長期にわたって防止できる抗菌性マットを提供するにある。
本発明の別の目的は、熱可塑性重合体或いはエラストマー中で抗菌作用が安定に維持されており、抗菌性とその持続性に優れた成形体を製造することが可能な熱可塑性重合体組成物を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体が提供される。
【0012】
上記無機担体(A)は、上記比表面積及び細孔容積を有するものであれば、特に限定されないが、特に好適なものとして、多孔質の非晶質シリカ粉粒体、特に、全細孔容積当たり、細孔半径7.5乃至150オングストロームの範囲にある細孔容積が20乃至90%であるもの;多孔質の活性アルミナまたは活性シリカアルミナの粉粒体;フィロケイ酸塩またはフィロアルミノケイ酸塩、特にスメクタイト族粘土鉱物の粉粒体、ベントナイトまたはベントナイトと硫酸アルミニウムの混合物の粉粒体、フライポンタイト或いはフライポンタイトを表面に担持した多孔質の非晶質シリカの粉粒体、ホルマイト系粘土鉱物の粉粒体等が挙げられる。上記無機担体(A)は0.0001乃至4mmの平均粒径を有することが好ましい。
【0013】
上記無機担体(A)の好適な他の例として、非晶質シリカ、活性アルミナ、活性シリカアルミナ、スメクタイト族粘土鉱物、酸処理されたスメクタイト族粘土鉱物、フライポンタイト及びホルマイト系粘土鉱物から成る群より選択された少なくとも1種から成る多孔質の成形体が挙げられる。
【0014】
上記無機担体(A)の更に他の例として、非晶質シリカ多孔質体であって、コ−ルタ−カウンタ法で測定して10乃至100μmの体積基準メジアン径を有する球状粒子であり、見掛密度(JIS K−6220法)が0.2乃至0.5ml/gの範囲にあり、且つ水銀圧入法による細孔容積が細孔半径18乃至43500オングストロームの範囲で0.5乃至3.5ml/gであるものが挙げられる。上記球状非晶質シリカ粒子は、水銀圧入法で測定して細孔半径75乃至1000オングストロームのメソポアを有し、該細孔容積が0.2ml/g以上であることが好ましい。
【0015】
上記無機担体(A)の別の例として、非晶質シリカであって、走査型電子顕微鏡法による一次粒子径が0.2乃至20μmであり、個々の粒子の真球度が0.9以上の明確な球状粒子であり、見掛密度(JISK−6220法)が0.1乃至0.5ml/gであり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.5乃至2ml/gの範囲にあり且つ吸油量が100乃至400ml/100gであるものが挙げられる。
【0016】
上記ヨードホール(B)としては、5乃至20重量%の有効ヨウ素量を有するものが好ましく、特にポビドンヨ−ド、即ち、ポリビニルピロリドンヨウ素錯体が好適である。
【0017】
上記無機担体(A)100重量部当たりヨードホール(B)が0.05乃至30重量部、特に0.1乃至20重量部の範囲で含有されていることが好適である。
【0018】
本発明によればまた、80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)と、これらを被覆するオイル、ワックス及び樹脂の少なくとも1種から成る被覆層(C)とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体が提供される。
【0019】
上記無機担体(A)100重量部当たりヨウ素化合物(B)が0.05乃至30重量部の範囲で含有され且つ(A)と(B)の合計量100重量部当たり被覆層(C)が1乃至30重量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、上記徐放性ヨウ素複合体から成る抗菌剤が提供される。
【0021】
本発明によれば更に、上記徐放性ヨウ素複合体を含有して成る空気清浄機用フィルターが提供される。
【0022】
本発明によればまた、熱可塑性樹脂またはエラストマーに上記徐放性ヨウ素複合体を配合して成る熱可塑性重合体組成物が提供される。この態様では、熱可塑性樹脂またはエラストマー100重量部当たりヨウ素複合体0.1乃至30重量部を配合して成ることが好ましい。この熱可塑性重合体組成物は抗菌性成形体、例えば敷物として有用である。
【0023】
本発明の別の態様では、無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る通気性の織布又は不織布に上記ヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性フィルタ−が提供される。
【0024】
本発明の更に別の態様では、無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る織布又は不織布に上記ヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性マットが提供される。
【0025】
【発明の実施形態】
本発明では、ヨウ素剤としてヨードホールを選択し、これを80乃至800 m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機担体と組み合わせたことが特徴である。
【0026】
ヨードホール(Iodophor)とは、界面活性剤や重合体を担体としたヨウ素の複合体であり、ヨウ素に固有の不快臭は取り除かれているが、強い抗菌作用及び広い抗菌スペクトルを有することが特徴である。
【0027】
即ち、ヨードホールは、元素ヨウ素と同様に、バクテリア、ウィルス、カビ、胞子菌、プロトゾア、イースト菌等の微生物を殺菌するのみならず、ある種の昆虫類、寄生虫類、線虫類等に対しても駆除能力を有することが知られており、微生物の耐性が形成されないという利点をも有している。また、このヨードホールは、古典的なハロゲン系抗菌剤に比して、安全性が高く、取り扱いも容易であり、人や動物に対する刺激も少ないという利点を与える。
【0028】
上記ヨードホールを、80乃至800m2 /gのBET比表面積及び0.2乃至2.3ml/gの細孔容積を有する無機多孔質粉粒体に担持させたことが第二の特徴である。
【0029】
ヨードホールを上記無機多孔質粉粒体に担持させることにより、抗菌剤等として使用時のヨードホールの安定性を向上させ、ヨードホールに徐放性を付与し、更に殺菌作用の持続性を向上させることができる。
【0030】
ヨードホール、例えばポリビニルピロリドン・ヨウ素錯体は粉体であるが、水に溶解し、水溶液の状態でも単独では比較的長期間安定であるが、抗菌剤等に適用した場合には、有機物、例えば糖、アミノ酸、脂質、蛋白質等との接触により、その殺菌作用は比較的短期間の内に失われる傾向がある。
【0031】
本発明で使用する無機多孔質粉粒体では、ヨウ素との相互作用が実質上なく、ヨウ素の担持状態で有効ヨウ素量が安定に維持されると共に、この粉粒体は表面活性を有し、しかも内部に細孔を有するので、これにヨードホールを担持させると、ヨードホールが無機多孔質粉粒体中に安定に保持され、無機多孔質粉粒体中に保持されたヨードホールが徐々に溶出することにより、ヨードホール乃至ヨウ素の徐放性と殺菌作用の持続性とが得られるものである。
【0032】
[ヨードホール]
本発明において、ヨードホールとしては、それ自体公知の任意のヨードホール製剤が使用され、このヨードホールは殺菌作用を有するがヨウ素に固有の不快臭を有しない複合体から成っている。この複合体では、重合体や界面活性剤から成る担体にヨウ素がコンプレックスの形で組み込まれている。
【0033】
一例として、ポピドンヨードの場合、下記式(1)
【化1】
の構造式に示すとおり、ポリビニルピロリドンと分子ヨウ素とがコンプレックスを形成している。
【0034】
ヨードホールの担体重合体としては、ポリビニルピロリドンの他に、ポリエーテルグリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリオキシアルキレン等があげれる。また、界面活性剤担体としては、陰イオン性、陽イオン性、両性、非イオン性のものが使用される。これらは単独でも或いは2種以上の組み合わせでも使用でき、例えば、重合体と界面活性剤との組み合わせも使用できる。
【0035】
ヨードホール製剤の具体的なものとして、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドンヨウ素錯体、)、ヨウ素・アルキルポリエーテルアルコール錯体(G.S.I.)、ポリエトキシポリプロポキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体(Iocline)、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加植物油・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪酸・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪アルコール・ヨウ素錯体、脂肪酸アミド・ヨウ素錯体、第4級有機アンモニウム・ヨウ素錯体等が挙げられるが、ポピドンヨードが好適である。
【0036】
本発明品のヨウ素複合体が0.005乃至3%、特に0.01乃至2%の有効ヨウ素量を有するものが、抗菌性やその持続性の点で有利であり、有効ヨウ素量が上記範囲よりも少ないものでは、抗菌性が不十分であり、一方上記範囲よりも多いものでは安定性が低かったり、臭いの点で不満足である。
【0037】
ヨードホールとしては、液体で入手しうるものと、粉末で入手しうるものとがあるが、本発明ではどちらも使用可能であるが、粉末のものが水分量を調節しうる点で有利である。
【0038】
ポビドンヨードで代表されるヨードホールは次の利点を有する。
(1) 冷水、エチルアルコ−ルに容易に溶解し、通常の使用濃度10%ポビドンヨ−ド水溶液は、室温下に1年間変化せず安定であり、ポリビニルピロリドンとヨウ素が錯体を形成したもののPHは2乃至3.5である。
(2) 細菌、真菌(カビ、酵母)、ウイルス、、ある種の昆虫、原虫、寄生虫等に抗菌活性を有し、抗菌力が強く、多くの微生物が数秒から数分で死滅する。なお真菌に対しては優れた抗菌剤は多くはない。
(3) また微生物がポビドンヨ−ドに耐性とならないため、抗生物質が効かない耐性菌に対しても有効な抗菌活性を有する。ちなみにMRSAは、ほとんどの抗生物質に対して耐性を持つている。
(4) 哺乳類の組織に対する刺激性はほとんど無く、傷口や粘膜に作用しても、無刺激で痛みを伴わないので、取扱いのうえでも安心である。
(5) グラム陽性、グラム陰性の別なく強力な殺菌効果を示し、更に塩素と同様に、界面活性剤、ビグアナイド誘導体、フェノ−ル系殺菌剤とは異なり、
真菌に対しても強い殺菌力を示す。
(6) 細菌芽胞に対しては100〜500ppmの高濃度で長時間の接触が必要であるが、塩素やアルデヒド系以外の殺菌剤では常温では死滅作用は示さない。なおポビドンヨ−ド以外で常温で殺芽胞作用を示すのは塩素やアルデヒドのみである。
【0039】
ヨードホールは毒性が少なく、人や動物に対する刺激も少ないという点で優れたものである。ヨードホールの内、代表的なポピドンヨードについて、その毒性を示すと次の通りである。
【0040】
1)急性経口毒性
一群10頭、12群のラットを用い、ポビドンヨードの水溶液(有効ヨウ素濃度2.5%)の急性経口毒性を評価したところ、LD50(2週間後)は有効ヨウ素量として1.300mg/Kgであった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0041】
2)健康皮膚に及ぼす影響
200人の皮膚に対し、パッチテスト法により、ポビドンヨード液(10%)を96時間適用したところ、異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0042】
3)損傷皮膚に及ぼす影響
人もしくはウサギの皮膚を荒いサンドペーパーで擦りむき、パッチテスト法により、ポビドンヨード液(10%)を適用したところ、健康皮膚と同様に異常は認められなかった。また、その部位では感染は起こらずに、擦りむきは治癒した。
(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0043】
4)眼に及ぼす影響
10%ポビドンヨード液0.5ccを25羽のウサギの眼に点眼し、2週間観察したところ、わずかに結膜が赤くなったが、それは2、3日以内に消失した。25羽のウサギならびに25頭のモルモットの眼に10%ポビドンヨード液0.1ccを15日間、毎日点眼したところ、一時的な紅斑が出現するが、数時間後には消失して、15日の試験期間中とくに異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0044】
5)喉への影響
25人のボランティアに対して、喉にポビドンヨード液(10%)を塗布したところ、6割の人がピリッとする刺激を10〜20分間感じ、喉の粘膜がわずかに赤くなったが、それも2時間前後で消失した。4割の人には特に異常は認められなかった。
10人に15日間、喉にポビドンヨード液を塗布したところ、5人は異常は認められなかった。他の5人は最初わずかに赤くなったが、悪化することはなかった。2週間後、同じ人に同じ試験を行ったところ、全く同じ結果であった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
【0045】
6)特異体質の人への影響
3人のヨードアレルギーを持つ人の皮膚に、ポビドンヨードと、ルゴール液を適用したところ、ルゴール液を塗布した皮膚は特有の過敏症状が出現したが、ポビドンヨードではいずれの人も特に異常は認められなかった。(Journal of The International College of Surgeons 25,727(1956))
ポビドンヨードを外用殺菌剤として、3年間に5900人に使用したところ、本剤に対する特異体質がみられたのは2名であった。この2名とも、全身的な毒性症状やヨード過敏症状はみられなかった。(The Bulletin American Society of Hospital Pharmecists 13,226(1956))
【0046】
[無機多孔質粉粒体]
本発明では、ヨードホールを担持させる無機多孔質粉粒体として、80乃至800m2 /gのBET比表面積と、0.2乃至2.3ml/gの細孔容積を有するものを使用する。
【0047】
用いる無機多孔質粉粒体は、前述したBET比表面積と細孔容積とを有することも重要であり、BET比表面積や細孔容積が上記範囲を下回ると、ヨードホール乃至ヨウ素の徐放性や殺菌作用の持続性が本発明の範囲内にある場合に比して不十分となり、一方上記範囲よりも上回ると、ヨードホール担持粒子の粒子強度や耐磨耗性等が低下するので好ましくない。
【0048】
無機多孔質体としては、上記のBET比表面積と細孔容積とを有するものであれば、全て使用することができ、必ずしもこれに限定されるものではないが、非晶質シリカ、活性アルミナ、シリカアルミナ、各種ケイ酸塩、フィロケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、フィロアルミノケイ酸塩、テクトアルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0049】
無機多孔質体は、熱可塑性重合体に配合する場合や、粉剤としての用途には粒径0.1乃至100μmの粉体で用いられ、粉体の成形品として使用することもできる。一般に、取り扱い性や粉立ち防止の点では、粒状物であることが好ましく、一般に1乃至10mm、特に2乃至5mmの粒径を有することが好ましい。粒子形状は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状、不定形状等の任意の形状であってよい。
【0050】
ヨードホール担持用無機多孔質担体の好適な例として、非晶質シリカ粒状物がある。粒状非晶質シリカは、ゲルタイプのものでも、沈降法タイプの非晶質シリカの何れであってもよい。
【0051】
A) 瞬間造粒法非晶質シリカ:
前者のタイプの例として、瞬間造粒法による多孔質球状シリカが挙げられ、このものは、2流体ノズルを用いて、混合時のpHが8乃至9となる条件に、ケイ酸ソ−ダ溶液或いはシリカヒドロゲルを含むケイ酸ソ−ダ溶液と硫酸とを瞬間的に混合すると共にこの混合物を空中に噴霧し、瞬時にシリカ球状粒子にゲル化させ、生成するゲルを下部の酸性溶液中に落下させ、次いで水洗、乾燥させることにより得られる。このタイプの無機多孔質粉粒体は、粒径0.1乃至4mmで、BET比表面積が300乃至800m2 /g、窒素吸着法による細孔容積が0.6乃至2ml/gの範囲にある。このタイプの担体は、球状で表面も滑らかであり、流動性に優れ、粉立ちがなく取り扱いが容易であると共に、ヨードホールの粒子内部の担持性にも優れており、粒状抗菌剤用担体として有用である。
【0052】
B)ヒドロゲル造粒法非晶質シリカ:
別のゲルタイプの非晶質球状シリカとして、ヒドロゲル噴霧造粒法シリカが挙げられ、このものは、ケイ酸アルカリ水溶液と硫酸等の酸水溶液とを混合してゾルのpHが2乃至6になるように反応させ、反応混合物をゲル化させ、次いで得られるゲルを解砕して、水洗し、必要により100乃至150℃の温度範囲で水熱処理し、得られたシリカヒドロゲルを湿式粉砕し、このシリカヒドロゲルの水性スラリーを噴霧乾燥造粒することにより得られる。
このタイプの非晶質シリカは、コ−ルタ−カウンタ法で測定して10乃至100μm、特に25乃至80μmの体積基準メジアン径を有する球状粒子で、見掛密度(JIS K−6220法)が0.2乃至0.5ml/gの範囲にあり、水銀圧入法による細孔容積が細孔半径18乃至43500オングストロームの範囲で0.5乃至3.5ml/gである。また、この球状非晶質シリカ粒子は、水銀圧入法で測定して、細孔半径75乃至1000オングストロームのメソポアを有し、該細孔容積が0.2ml/g以上である。
このタイプの非晶質シリカは、粒子内部の空隙が大きく、ヨードホールの担持性に特に優れており、粉立ちの比較的少ない粉末抗菌剤用担体として有用であるばかりではなく、後述する成形担体の原料としても有用である。
【0053】
C) 凝集成長法非晶質シリカ:
沈降法球状非晶質シリカとしては、出願人による特開平5−193927号公報記載の方法による多孔質球状シリカ乃至ケイ酸塩粒子が挙げられ、このものは、カルボキシメチルセルロースのごとき水溶性高分子を凝集成長剤として、ケイ酸アルカリ水溶液の部分中和物を球状に成長させ、これを中和するか、或いは更にこの粒状物と周期律表第II族金属の水酸化物または塩とを水性溶媒中で反応させることにより得られる。シリカ乃至ケイ酸塩の球状粒子は、シリカ一次粒子の集合体であるため多孔質であり、そのため、一次粒子間にヨードホールを担持することができ、その担持性に特に優れている。
この非晶質シリカは、走査型電子顕微鏡法による一次粒子径が0.2乃至20μmであり、個々の粒子の真球度が0.9以上の明確な球状粒子であり、見掛密度(JISK−6220法)が0.1乃至0.5ml/gで 、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.5乃至2ml/gの範囲にあり且つ吸油量が100乃至400ml/100gである。
このタイプの非晶質シリカは、そのままの形で使用するほかに、非晶質乃至層状微結晶のケイ酸塩の形で変性して用いることもできる。そのケイ酸塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等を挙げることができる。この球状のケイ酸塩を合成する場合は、上記方法で得られるケイ酸アルカリの部分乃至完全中和物から成る球状粒子とマグネシウム、カルシウム、亜鉛の水酸化物、或いは硝酸塩、塩化物、硫酸塩等の無機酸塩水酸化物または塩の一種または2種以上とを水性媒体の存在下で反応させのがよく、これにより、球状粒子の少なくとも表面に、フィロケイ酸マグネシウム、フィロケイ酸カルシウム或いはフィロケイ酸亜鉛等等を生成させる。
【0054】
D)フィロアルミノケイ酸塩:
上記フィロアルミノケイ酸塩としては、各種の天然或いは合成の粘土鉱物或いはその化学変性物が使用される。例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物、メタカオリン、ハロイサイト、メタハロイサイト、アンチゴライト等のカオリン族粘土鉱物、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト等が挙げられる。化学変性物としては、酸性白土等のモンモリロナイトを、酸処理により活性化した活性白土や、酸性白土等のモンモリロナイトをアルカリ処理に活性化した活性ベントナイト等が使用される。
更に、硫酸アルミニウムを含有する活性ベントナイトや活性白土も好適に使用される。
このタイプのフィロアルミノケイ酸塩乃至その変性物は、ヨードホールの担体として優れているばかりではなく、脱臭性、凝集性等をも兼ねており、消臭性能が要求される環境用殺菌剤等の用途に有用である。
【0055】
E) 鎖状粘土鉱物
鎖状粘土鉱物に属するホルマイト系のセピオライト、パリゴスカイトは、その外観形状が繊維状又はその収束体であり、その基本構造は八面体層の骨格を形成する主成分がマグネシウムから成る3−八面体型ケイ酸マグネシウム粘土鉱物であり、このケイ酸マグネシウム粘土鉱物は三次元の鎖状の結晶構造を有し、その外観形状の繊維及びその収束体の間隙にできる空孔がBET法比表面積で100乃至600m2 /gの比表面積を有し、またその収束体構造を有するが故に、吸着作用を有する多孔質の鎖状粘土鉱物である。このため、この鉱物は、ヨードホールの担持性に優れていると共に、脱臭作用をも有しており、種々の繊維への配合も容易である。
これらの粘土鉱物を本発明の担体として使用する前に、ボ−ルミル、ハンマ−ミキサ−での解砕、ス−パ−ミキサ−、擂解機等での練込み粉砕や、アトマイザ−、ジェットミル等での衝撃粉砕等の一次粉砕処理を施し、収束体としての鎖状構造及び鱗片状としての積層構造を部分的に解繊またはほぐしてから、ヨードホールの担持に使用することがより好ましい。
【0056】
F)フィロケイ酸塩:
また、微結晶で比表面積の大きい合成のフィロケイ酸亜鉛、フィロケイ酸マグネシウム、含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛、含アルミニウムフィロケイ酸マグネシウムを、無機多孔質粉粒体として使用できる。このフィロケイ酸塩は消臭作用に優れているので、抗菌性と共に優れた消臭作用も同時に達成されるという利点がある。
特に好適なフィロケイ酸塩として、(1)特開昭61−10021号公報に記載されているフライポンタイト型のX線回折像と100m2 /gのBET比表面積を有するフィロケイ酸亜鉛や含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛或いは(2)特公平5−79602号公報に記載されている複合フィロケイ酸塩、即ち非晶質で多孔質のシリカ或いはシリカアルミナと、その一次粒子表面に形成されたフィロケイ酸亜鉛乃至マグネシウムや含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛乃至マグネシウムが挙げられる。
【0057】
G)成形体:
本発明では、上記多孔質粉粒体を成形したものを、無機担体として使用することができる。この態様では、非晶質シリカ、活性アルミナ、活性シリカアルミナ、スメクタイト族粘土鉱物、フライポンタイト、及びホルマイト系粘土鉱物から成る群より選択された少なくとも1種から成る多孔質の成形体が好適に使用され、成形法は、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、噴霧造粒法、押出造粒法等のそれ自体公知の造粒法が使用される。
【0058】
形状がリング状である圧縮成形体について以下に説明をする。この用途には、上記粉粒体の内でも、前記B)の非晶質シリカが特に適している。このものは、成形性に優れているため、結合剤、滑沢剤等の成形助剤を必ずしも必要としないが、滑沢剤は、成形すべき原料粉粒体の内部摩擦および外部摩擦を減少させて充填性、圧縮性を向上させ、特に圧縮開放時に外力による成形体への応力集中を抑制するなどの作用をもたらすものである。この目的で、打錠前に通常原料に対して0.5乃至1%程度の量で添加する。滑沢剤としては、タルク、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、シリコンオイル、流動パラフィン、ポリエチレングリコ−ル等が用いられ、本発明のこの例では、ステアリン酸マグネシウム又はシリコンオイルを用いた。
25乃至80μmの体積基準メジアン径を有するシリカ球状粒子が、全シリカ球状粒子中80乃至95容量%になるように調粒し、シリカ球状粒子50kgに0.5 kgのステアリン酸マグネシウムを加えてドラム回転混合機で良く混合したものをホッパ−から供給し、タ−ンテ−ブルの回転が10乃至15rpmの条件で成形を行なった。
この例では、(株)菊水製作所製の回転式粉末成形機(ロ−タリ−打錠機)コレクトD555-C15Rを用いてリング状の多孔質シリカ成形体を造った。このロ−タリ−打錠機の成形機構は、水平に回転するタ−ンテ−ブルの同一円周上に臼が等間隔に埋め込まれており、タ−ンテ−ブルが回転する間に、この臼に原料が充填され、杵で圧縮され、次いで杵で打出しされる一連の操作が、連続的に行なわれる。なお、下杵は臼にはめ込まれて臼と一緒に移動し、上杵は臼と同軸上に位置していて、臼と一緒に回転し、且つ上杵及び下杵はそれぞれ上下運動して一連の操作が行なわれて、シリカ成形体が得られる。また、その成形最大径は3乃至15mm、また最大充填高さも3乃至15mm範囲に適用できるが、この例においては、主に外径5mm、内径2mm、高さ6mmのリング状の多孔質シリカ成形体を、圧縮圧30kg/cm2 の条件で連続的に製造し、成形担持体として使用した。
勿論、本発明における成形体は、上記したリング状に限定されるものではなくシリンダ−(臼)と上・下ピストン(上杵、下杵)との組合せからなる金型の種類によって、例えば球形、三角錐型、立方体乃至直方体型、菱型、六角柱型、円柱型、他のリング型、タブレット型等も可能であり、しかも、上記ロ−タリ−打錠機を用いることにより、最大径が一般に3乃至30mmの範囲までの成形物を提供することができる。
【0059】
[ヨウ素複合体及びその製法]
無機多孔質粉粒体にヨードホールを担持させるには、格別に面倒な操作は不要であり、無機多孔質粉粒体にヨードホールの溶液を、噴霧法或いは含浸法等により施し、乾燥すればよい。ヨードホールの溶液としては、一般に濃度が1乃至50重量%の水溶液が使用される。乾燥は、160℃以下の温度で、好ましくは120℃以下、より好ましくは80℃以下の温度で行うのがよい。無機多孔質粉粒体に対するヨードホールの担持量は、用途によっても相違するが、無機多孔質担体100重量部当たり0.05乃至30重量部の範囲にある。この手段は、予め形成された担体にヨードホールを担持させるのに有効である。
【0060】
無機多孔質担体にヨードホールを担持するためには、他の手段を用いることもできる。即ち、無機多孔質担体の原料となる粉体にヨードホールを混合し、これを粒状物或いはその他の成形体に成形することによっても、本発明のヨウ素複合体を製造することができる。ヨードホールは、粉末の状態で混合しても、或いは溶液の形で混合してもよい。この粒状体の成形には、後述するワックス類や低融点樹脂等を造粒媒体として配合することができる。
【0061】
上記成分の混合或いは更に混練には、例えばダブルスクリュニ−ダ、擂漬機、サンドグラインダ−ミル、アトライター、アトマイザー、奈良式粉砕機、円板振動ミル、振動ボールミル、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー等或いはこれらの組合せが使用される。また、造粒には、押出造粒、打錠、転動造粒、スプレー造粒、破砕造粒等のそれ自体公知の任意の手段を用いることができる。
【0062】
担体からのヨードホールの徐放性を強調するために、ヨードホール担持無機多孔質粉粒体乃至成形体をシリコンオイル等の有機処理剤で処理して、被覆層を形成することができる。
【0063】
有機成分としてはシリコンオイルの他にワックス類や低融点樹脂類等が好適に使用される。これらの有機処理剤は、無機多孔質粉粒体とヨードホールとの合計量100重量部当たり1乃至30重量部の量で用いるのがよい。
【0064】
これらの有機成分としてのワックス類や低融点樹脂類には、
(1)脂肪酸及びその金属塩:高級脂肪酸(炭素数が8〜22のもの)またその金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、Zn塩、Al塩):
(2)アマイド、アミン、一価、多寡アルコールの脂肪酸エステル:高級脂肪酸アマイド、エルカ酸アミド、ステアリルエルカミド、2−ステアロミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、脂肪酸ジエタノールアミン、ステアリン酸n−ブチル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリト−ル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ジエチレングリコールステアリン酸ジエステル、トリグリセライドワックス、ポリエチレンワックス、エポキシ変性ポリエチレンワックス:
(3)低融点樹脂としては、融点或いは軟化点が40乃至160℃、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルプチラーアル、テルペン樹脂、石油樹脂等:
が挙げられ、これらのワックス類及び低融点樹脂は、単独或いは2種以上の組合せで使用できる。
【0065】
殺菌効果を増大させ、即効性を強調するために、ヨードホール担持無機多孔質粉粒体に、ヨウ化カリウム/ヨウ素等の即効性殺菌成分をヨードホール及び無機多孔質粉粒体の合計量100重量部当たり50重量部以下の量で添着させてもよい。
【0066】
[抗菌剤]
本発明のヨウ素複合体は、有効ヨウ素の徐放性を有する抗菌剤乃至環境殺菌剤(サニタイザー)としての用途に有用である。即ち、水に易溶性であるが、やや安定性に乏しいヨ−ドホ−ルを無機多孔質担体に担持させることにより、有効要素を安定に維持することが可能となると共に、後述する実施例2からも明らかなように、ヨウ素が持続して徐々に放出される徐放性を付与することが可能となった。
【0067】
また、本発明によって得られた徐放性ヨウ素複合体を抗菌剤として抗菌試験に供すると、後述する実施例3から明らかなように、寒天培地の表面にはMRSA菌のコロニ−が無数に増殖しているのが観察されるが、寒天培地上に置いたヨウ素複合体ペレットの周囲には、上記菌の増殖を阻止したいわゆる増殖阻止帯が形成されており、その増殖阻止帯が長時間にわたって安定に観察された事実は、有効ヨウ素が持続して徐々に放出されるという本発明の作用効果を示している。
【0068】
一方、比較のために、デンプンを含んだ寒天培地上に、ポビドンヨ−ド原末或いは本発明のヨウ素複合体粉末をスポットしたところ、原末の周辺にヨウ素−デンプン反応による青色が確認されたが、翌日には青色も原末の茶色も消失していたが、本発明の徐放性ヨウ素複合体を用いた場合には、翌日においてもその周囲の青色が持続していた。以上の知見から、本発明のヨウ素複合体が安定性と徐放性との組み合わせに優れていることも分かる。
【0069】
本発明のヨウ素複合体は、ポビドンヨ−ドに代表されるヨードホールと同様の広範な抗菌スペクトルを有する。
【0070】
ポビドンヨ−ドを例に公知のデ−タを参照すると、細菌種
(S.aureus、E.faecalis、 E.coli、 K.pneumoniae、 S.marcescens、P.mirabilis、P.aeruginosa)に対して、抗菌効果(0.01%水溶液、1分、死滅)があり、真菌種(C.albicans-typeA、-B、 C.tropicalis、 C.stellatoidea、 C.guilliermondii、 C.parapsilosis、 C.krusei、 T.glabrata、 Cr.neoformans)に対して、抗菌効果(0.005%水溶液、5分、死滅)があり、またウイルス(単純ヘルペス、インフルエンザ、エコ−、ヒト免疫不全(HIV)、コクサッキ−)に対して抗ウイルス効果(0.1-0.02%水溶液、15〜60秒、ウイルス感染価10-2.8〜10-1)がある。
更に上記以外に下記に示す細菌種(グラム陰性菌、グラム陽性菌、抗酸菌、真菌、ウイルス、原生動物)に対しても、抗菌作用を示す。
(1)グラム 陰性菌:Aerobacter aerogenes、 Aeromonas liquefaciens、 Achromobacter xylosoxidans、 Chlamydia trachomatis、 Citrobacter freundii、 Enterobacter aerogenes、 Enterobacter cloacae。
(2)グラム陽性菌:Bacillus cereus、 Bacillus pumilis、 Bacillus subtilis、Clostridium histolyticum、 Clostridium perfringens、 Clostridium septicum、Clostridium tetani、 Corynebacterium acnes、
(3)抗酸菌: Mycobacterium fortuitum、 Mycobacterium tuberculosis。
(4)真菌:Aspergillus flavus、 Aspergillus niger、 Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus、 Pityrosporum ovale、 Trichophyton rubrum、Rhodotorula glutinis、 Trichophyton interdigitale、
(5)ウイルス:Adenovirus、 Cytomegalovirus、 Influenza Virus A、 Herpes simplex Type1&2、 Rabies Virus、 Rubella Virus、 Vaccinia Virus。
(6)プロトゾア:Treponema pallidum、Entamoeba histolytica、 Trichomonas vaginalis。
【0071】
本発明の抗菌剤及び環境殺菌剤は、粉体、粒体或いは成形対等の任意の形で、抗菌作用及び環境殺菌作用が要求される場所に施すことができる。この抗菌剤及び環境殺菌剤の施用は、粉粒体を前記場所に直接散布してもよく、或いは、通気性乃至通水性を有する容器内に、前記粉粒体或いは成形体を収容させ、この容器を抗菌作用及び環境殺菌作用が要求される場所に置くだけでもよい。
【0072】
必要な量は、要求される抗菌作用或いは殺菌作用の程度によっても相違するが、一般に1乃至200ppm、特に10乃至100ppmの有効ヨウ素量を供給するようなものであればよい。
【0073】
[熱可塑性重合体組成物]
本発明の別の態様によれば、熱可塑性重合体或いはエラストマーに、前記ヨウ素複合体を配合して成る熱可塑性重合体組成物が提供され、これにより抗菌性の熱可塑性重合体成形品が得られる。
【0074】
熱可塑性重合体としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、ピロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物のいずれかの樹脂でもよい。勿論、生分解性樹脂を用いることにより、環境に優しい樹脂成形品を提供することもできる。
エラストマー重合体としては、例えばニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリルゴム等;熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの内でも、炭化水素系エラストマー、特にEPRやEPDMは好適なものである。
勿論、これらは2種以上のブレンド物の形で使用することもできる。
【0075】
熱可塑性樹脂やエラストマー100重量部当たり、前記ヨウ素複合体を0.1乃至30重量部配合することが好ましく、これにより抗菌性を有する重合体成形品を得ることができる。
熱可塑性樹脂にポビドンヨウ素0.01乃至20重量部を直接混練することもできるが分散性が悪く、添加量が多くなるとブリードを起こしやすくなる。これに対して、本発明のヨウ素複合体を配合すると、重合体中への分散性も良好であり、ヨウ素複合体及び重合体の熱劣化も抑制され、この重合体組成物の成形品は、種々の特性に優れている。
【0076】
重合体へのヨウ素複合体の配合には、いわゆるドライブレンドやメルトブレンド方式を採用でき、更にヨウ素複合体を比較的高濃度で含有するマスターバッチを、未配合の重合体にブレンドする方法を採用することもできる。
混練は、重合体が溶融する温度で、比較的低温で行うのが望ましく、200℃以下の温度が好ましい。混練を比較的低温で行うために、可塑剤を用いるのが好ましく、いわゆる塩化ビニール樹脂等のプラスチゾルを用いることができる。
重合体組成物の成形には、押出成形によるフィルム、シート、パイプ等の成形、ブロー成形によるタンク、容器等の成形、射出成形による各種ハウジング、部品等の成形、カレンダー成形によるシートの成形等が用いられ、形成される成形品は、優れた抗菌性を有している。勿論、同時押出或いは同時射出等により、表面層のみがヨウ素複合体が配合されている積層体から成る重合体成形品とすることもできる。
【0077】
本発明のヨウ素複合体を、それ自体公知の塗料中に配合して、抗菌剤塗料組成物とすることもできる。塗料としては、樹脂の種類から、ニトロセルロース塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料の他に、フェノール系レジン、変性フェノール系レジン、アルキド系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、シリコーン系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素系レジン等の1種或いは2種以上を含有する塗料が挙げられる。
また、用いる塗料は、その用い方によって、溶剤型塗料、水性塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよいが、本発明では溶剤型塗料又は水性塗料が特に適している。この溶剤型塗料の有機溶媒としては、トルエン、キシレンn−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンエタノール、プロパノール、ブタノール、ダイアセトンアルコールテトラヒドロフラン、ジオキサンエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ酢酸エチル、ジメチルスルホキシド溶媒等の1種または2種以上を用いることができる。また、水性塗料としては、水溶液型の塗料の他、自己乳化型或いは界面活性剤乳化型の塗料が使用される。水性塗料の樹脂としては、水性媒体に水溶化された或いは自己乳化されたアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂或いはこれらの2種以上を組合わせて用いることができる。樹脂分濃度は、一般に10乃至70重量%、特に20乃至60重量%の範囲にある。
【0078】
用途によって異なるが、本発明によるヨウ素複合体、特に球状抗菌剤を樹脂100重量部当たり5乃至100重量部を添加させて抗菌剤塗料として使用することができる。
【0079】
[抗菌性フィルター]
前記ヨウ素複合体は、抗菌性フィルター、例えば空気清浄機用のフィルターの用途に使用することができる。
例えば、病院内でまき散らされたMRSAは、乾燥状態で1週間は生存し、空中に浮遊・拡散し、不特定多数の人がこれを吸い込んで保菌者となる可能性がある。このような院内の感染ル−トを断つ手段として、例えば集中治療室内の空気を、本発明の抗菌剤を装填した空気清浄機に通気循環させて、室内の汚染空気を浄化(抗菌環境化)させることができる。抗菌処理には、例えば前項G)で述べたラッシヒリングにヨウ素複合体を担持させたものをフィルターとして用いることができる。
【0080】
図1はこのラッシヒリング型抗菌剤を用いた空気清浄機用フィルターの抗菌試験装置を説明するための図であって、エアーポンプ1の排気側に、容器3が接続される。容器3には、使用済み動物飼育用チップ6が充填されており、容器3には2本のパイプ2が接続されていて、一方は、直接、対照培地8を収容する容器に接続されている。他方は、抗菌剤試料7、即ち、試料(GI−9)を収容する容器を介して、試験培地9を収容する容器に接続されている。対照培地8及び試験培地9を収容する容器は、ゴム栓4で密栓されており、排気チュウブには、菌が入り込まないように、綿栓10が施されている。
チップ6に接触した空気は、対照培地8と接触し、菌のコロニーが発生したのに対して、本発明のラッシヒリングと接触した後、試験培地と接触した場合には、菌のコロニーの発生は全く認められなかった。
【0081】
[抗菌性シート]
本発明の徐放性ヨウ素複合体の粒子を、無機繊維、動植物繊維、合成樹脂繊維等からなる通気性の織布又は不織布に充填した少なくとも1層からなるシートは、抗菌性シートとして、フィルター或いは後述するマット等の用途に用いることができる。例えば、上下のサンドイッチされた繊維シートの間に、ヨウ素複合体の充填部を形成し、抗菌性シートとすることができる。また、織布、不織布、紙や多孔性樹脂シートにヨウ素複合体を内填して、この用途に用いることもできる。
【0082】
図2は抗菌シートを説明するための斜視図であり、図3はこの抗菌シートのA-A断面図である。この抗菌性シートは、凹凸部を有する上面シートと12と平面状の下面シート13とから成り、シート凸部11における上面シート12と下面シート13との間には、ヨウ素複合体粒子の充填部14が形成されている。この具体例では、試料(GI−10)を用いた。
上記抗菌性シートは、フィルターの他、マット、敷物、病院ベッド用シーツ、床材、壁材、その他の用途に使用できる。
【0083】
図4は抗菌シートの使用状態を説明するための図であり、ベッドの敷き布団18上に、抗菌性シート17を載せ、その上に通常のシーツ16を敷いて、病人15が寝るようにすることができる。
本発明の抗菌性シートにおいて、ヨウ素複合体として、前述した消臭作用を有するものを用いると、抗菌性の付与と同時に、脱臭作用も得られるので、環境も一層好適なものとなるいう利点がある。
【0084】
[用途]
以上から、本発明による徐放性ヨウ素複合体は、以下に示す種々の用途に、消毒剤や抗菌剤としては勿論のこと、その他にも防腐、防黴、消臭剤及びその組成物として使用されることが期待されるものである。
(1)畜舎用及び畜産器具用消毒剤:例えば、牛舎、豚舎、鶏舎等の床、壁、天上の消毒、搾乳器具、ふ卵器具、家畜診療・繁殖用器具等の消毒、搾乳後の乳頭消毒剤、
(2)食品、醸造等の製造機器の消毒・抗菌剤:例えば、その設備、施設、機械器具、原料・製品の保管倉庫、冷蔵庫、容器・包装材料、作業者の手袋・履物等の消毒剤、抗菌剤
(3)木材等の消毒剤:例えば、輸入木材、製材、チップ、合板、皮革、繊維、塗料等の防腐、防黴剤、
(4)環境消毒・抗菌剤:例えば、浄化槽、屎尿浄化槽、配水・排水管、腐敗沼・池等の消毒、抗菌剤、
(5)公共施設の消毒・抗菌剤:例えば、病院のトイレ、病室、ベット等の消毒剤、学校、保育園の給食室、トイレ、砂場の消毒、給食センタ−、劇場、公衆便所、公衆浴所、乗物内の消毒、抗菌剤、
(6)植物消毒・抗菌剤:例えば、輸入植物、茶葉、生薬等の防黴、防虫、それらの保管倉庫・冷蔵庫の消毒、抗菌剤、
(7)家庭用消毒・抗菌剤:例えば、浴室、浴槽等の防腐、防黴、洗濯機の消毒剤、台所、流し台、冷蔵庫内、生ごみ箱等の消毒剤、便器、簡易便器(乳児、老人、病人)等の消毒剤、ペット用の消毒、抗菌剤、ペット用トイレ砂。
【0085】
【実施例】
本発明は以下の例で詳細に説明する。なお本発明に用いる徐放性ヨウ素化合物、抗菌剤等の物性及び評価方法は以下の通りである。
(1)見掛密度
JIS K−6220.6.8に準拠して測定した。
【0086】
(2)吸油量
JIS K−5101.19に準拠して測定した。
(3)pH
試料10gをイオン交換水100mlに加え撹拌後、25℃に1時間放置し、その上澄液のpHを測定する。
(4)比表面積、細孔容積
カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法による比表面積、細孔容積を測定した。また水銀圧入式ポロシメ−タ−(マイクロメリテイクス社製オ−トポア9220)を用いて、18乃至43500Åのポアサイズを測定し、細孔容積を求めた。
(5)粒度
コ−ルターカウンター(コールターエレクトロニクス社製TA−II型)法により、アパーチャーチューブ50μmを用いて測定した。
(6)SEMによる粒径
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた写真像から、代表的な粒子を選んで、スケールを用いて粒子像の長径と短径を測定し、一次粒子径とした。
(7)真球度
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた写真像から、代表的な粒子を選んで、スケールを用いて粒子像の長径と短径を測定し以下の式から求めた。
真球度 = 短径(DS )/ 長径(DL )
(8)ヨウ素の溶出速度
所定量のヨウ素(I2 )を担持させたヨウ素複合体の所定量をカラムにとり、20℃のイオン交換水を5ml/分の速度で通流させ、ポビドンヨ−ドの色調が消失し、流出液のヨウ素−デンプン反応の青色が認められなく時点を終点として、本発明の徐放性ヨウ素複合体のヨウ素の溶出速度(meq/hr・100g)を算出する。
(9)抗菌試験
被験株を生理食塩水に約1×106 個/mlに懸濁した液1mlを、予め50℃に保温したペプトン0.2%、食塩0.7%、寒天0.8%よりなる培地2mlに混合し、寒天1.5%より成る同一組成の寒天平板培地に重層する。次いで重層部分の上に本発明の試料を載せ、完全に固化した後37℃にて24時間培養後、試料の周囲に生じる増殖阻止帯の幅を測定する(図5参照)。なおNIP 4000 の細菌では、培地成分として更にグルコ−スを0.1%を追加する。
【0087】
(10)有効ヨウ素及びヨウ化物イオン量
ヨウ素化合物の消毒、抗菌効果はヨウ素(I2 )自体であり、従って当該供試体の全ヨウ素のうち、イオン性ヨウ素量とそれ以外の有効ヨウ素量(ヨウ素分子自体)とを下記の方法で評価する必要がある。
1. 有効ヨウ素は、2gの試料粉末を水30mlに懸濁させ、0.005Nチオ硫酸ナトリウム液でのヨウ素−デンプン反応滴定で有効ヨウ素%(Ia)を定量する。
2. ヨウ化物イオンは、2gの試料粉末を水100mlに懸濁させ、ヨウ素の色が消失するまで亜硫酸水素ナトリウム液を加え、次いで0.1N硝酸銀液10mlと硝酸4mlとを加え、過量の硝酸銀を用いて0.05Nチオシアン酸アンモニウム液で滴定(指示薬:硫酸第二鉄アンモニウム)して全ヨウ素量%(I)を求め、(I)−(Ia)の差がヨウ化物イオン(%)量である。
【0088】
(実施例1)
本発明による各種の徐放性ヨウ素複合体について以下に説明する。担持材(A)としては、多孔性非晶質シリカで不定形のミズカソ−ブ(水澤化学製:比表面積400m2 /g、細孔容積1.5ml/g、pH5)、シルトンA(水澤化学製:比表面積250m2 /g、細孔容積0.3ml/g、pH5.3)及び2−八面体型スメクタイトの酸性白土シルトンLP(水澤化学製:比表面積90m2 /g、細孔容積0.2ml/g、pH5)、3−八面体型スメクタイトのフィロケイ酸マグネシウムのミズカライフ(水澤化学製:比表面積650m2/ g、細孔容積0.8ml/g、pH8.5)の粉末それぞれ100重量部にヨウ素化合物(B)としてポビドンヨ−ド(日宝化学製)の粉末10重量部を加え、水で調湿しながら混合・混練し、次いで押出し造粒法で円柱状(1.5mm径のペレット)に造粒し、60乃至120℃条件で乾燥させ、試料番号それぞれPI−1、PI−2、PI−3、PI−4の本発明による徐放性ヨウ素複合体を得た。
【0089】
なおPI−1、PI−3の一部について、それぞれ市販のシリコンオイル及びPEG−800を有機表面処理剤として(A)と(B)の合量100重量部にそれぞれ20及び10重量部を上記混練時に加えて得られたものを、それぞれ試料番号PI−1S、PI−3Sとした。
【0090】
同じく担持材(A)として定形の球状粒子のミズパ−ル(水澤化学製:平均粒径3μm、比表面積500m2 /g、細孔容積1.0ml/g、pH7)、MSシリカ(水澤化学製:平均粒径30μm、比表面積350m2 /g、細孔容積1.5ml/g、pH7.5)、微小球シリカ(水澤化学製:平均粒径3mm、比表面積750m2 /g、細孔容積1.1ml/g、pH5)同じく微小球シリカ(水澤化学製:平均粒径1mm、比表面積300m2 /g、細孔容積1.5ml/g)の100重量部に、ヨウ素化合物(B)としてポビドンヨ−ド固形分の10重量部に相当するポビドンヨ−ド(日宝化学製)の10%水溶液を含浸させて以下同様にして得た球状の本発明による徐放性ヨウ素複合体を、それぞれ試料番号SI−5S(シリコンオイル)、SI−6S(PEG−800)、SI−7S(シリコンオイル)、SI−8S(PEG−800)とした。なおいずれもポビドンヨ−ド含浸後に転動下にシリコンオイル及びPEG−800で表面処理した後、60乃至90℃で乾燥させた。
【0091】
次いでSI−6Sの球状徐放性ヨウ素複合体の一部を使用し、圧縮(打錠)成型機の(株)菊水製作所の粉末成型機(コレクトD555−C15R)を用いて外径5mm、内径2mm、高さ6mmのラッシヒイリング型の成型体徐放性ヨウ素複合体を調製し、これを試料番号GI−9とした。
【0092】
(実施例2)
本発明による徐放性ヨウ素複合体のヨウ素の徐放性を評価するために、水に寒天を1.5%、可溶性デンプンを0.1%の割合で加え、完全溶解させた後、シャ−レに厚さ3乃至4mm程度に加え、放冷固化した寒天上に実施例1で得られたPI−1、PI−2、PI−3、PI−3S、SI−5S、SI−6S、SI−8S及び比較のためにポビドンヨ−ドの粉末をそれぞれ載せた。その結果、本発明の試料の周辺に生じたヨウ素−デンプン反応による青色は、数日間持続したが、ポビドンヨ−ド原末周辺の青色は試験翌日に消失した。以上から本発明のヨウ素複合体は、持続してヨウ素を放出する徐放性体であることが判った。
【0093】
(実施例3)
実施例1で得られた試料番号PI−1、PI−2、PI−3、PI−4、PI−1S、PI−3S、SI−5S、SI−6S、SI−7S、SI−8S、GI−9の本発明による徐放性ヨウ素複合体について、その有効ヨウ素量(%)とヨウ化物イオン量(%)を測定し、各試料の有効ヨウ素量(%)とStaphylococcus aureus NIP 2019(MRSA)、Pseudomonas aeruginosa IFM 3011 及びCandia albicans NIP4000、更にIFM 2058、IFM 3039、IFM 3029、IFM 3041、IFM 3048の各菌に対する抗菌試験結果を下記の表1、2に示した。
なお、MRSA、IFM 3011は特に院内感染において問題にされ、何れも抗生物質に耐性を示す細菌であり、NIP4000は、日和見感染の原因となっている病原性酵母である。またIFM 2058、IFM 3039、IFM 3029、IFM 3041は食中毒原因菌であり、IFM 3048は赤痢菌である。
【0094】
なお下記に示す寒天培地上の阻止帯の周辺は、各細菌がコロニーを作って増殖している状況がよく観察されるものである。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例4)
エアーポンプ(風量1.5l/min)を用いて、動物飼育汚物を詰めた容器内に送風し、容器からの排気を、試料GI−9を充填したカラム(担体部分長さ43cm、内径25mm)に通す。カラムより出た空気を、底部にBrain Heart Infusion 寒天培地を作成した容器に2日間通す。対象として汚物を詰めた同一の容器からの排気を、直接、底部にBrain Heart Infusion寒天培地を作成した容器に平行して通す。通気後、それぞれの培地作成容器を37℃にて2日間好気的条件下で放置したところ、対照培地には500個以上の菌のコロニーが生じたのに対し、試験培地には10個のコロニーが生じたのみだった。図1に試験装置を図示する。
【0098】
(実施例5)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)に試料SI−5S,を下記配合で撹拌混練(ヘンシェルミキサー)し、得られた混練物を2軸押し出し機に供給して加熱温度150℃でペレットにし、次いでインフレーション成形を行い、幅250mm、厚さ100μのフィルムを得た。
このフィルム及び抗菌試験結果を表3に示す。
【0099】
(実施例6)
不織布を立体加工したシートの内部にセピオライト100部にポビドンヨード10部を担持した物(GI−10)を充填したシート(充填量800g/m2,日栄工業製:コルケミシート)を作成した。(図2、図3参照)
シートの平面を上向きに設置し緑膿菌或いはMRSAの被検液を2ml載せ、1時間マットに吸収させた後、シートの下に濾紙を敷き、上方よりスパーテルを用いて押しつけ(圧力)、シートに吸収させた被検液を濾紙に強制的にしみ出させた。この濾紙を菌検出用の標準寒天培地にはりつけ、一晩のおいた後、濾紙をはがし、寒天培地を37℃、24時間培養し、菌の検出を行った。その結果、ポリビニルピロリドン含有マットでは、吸着された緑膿菌或いはMRSAの被検液がマット内で殺菌され、液を強制的にしみ出させても菌は検出されなかった。一方、比較シート(試料にセピオライト単独で使用)の方は、吸収されても殺菌されず、吸収された被検液を強制的にしみ出させると菌は漏れだし寒天培地上に菌が検出された。
【0100】
(実施例7)
実施例6で用いた抗菌シートを、何らかの慢性疾患を有する在宅療養中の71から80歳の高齢者(男3名、女2名)の使用している布団もしくはベッドの上に敷き、その上にシーツを敷く(図4参照)、尚、この抗菌シートは1ヶ月に1回新しい物とした。3ヶ月間使用し、その褥そうの形成を予防できるかどうか、臨床的に評価した。
褥そうについては、試験開始時5名中2名が軽度、1名は中等度の褥そうを既に形成しており、これら5名の褥そう形成の経過を1ヶ月おきに観察した結果を表4に脱臭試験の結果を表5に示す。
褥そうの程度を下記に示した。
中等度 :++
軽度 :+
無し :−
脱臭試験の評価基準を下記に示した。
++:強い臭いあり
+:弱い臭いあり
−:臭い無し
【0101】
さらに、布団にMRSAが、しみこんでいるのかを確認するために次の試験を行った。上記で使用したシーツと布団の表面布を適当に切断し、これを適量の生理食塩水でリンスする。生理食塩水にて10倍段階に稀釈した各液0.1mlをオキサシリン(MPIPC)4μg/ml添加卵黄加マンニット食塩寒天培地及び卵黄加マンニット食塩寒天培地に塗抹後、37℃、40時間好気培養する。
生じたコロニーのうち以下に示したものをMRSAとして検出し、定量培養を行いその結果を表6に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
褥そう臨床的試験
【0104】
【表5】
脱臭試験
【0105】
【表6】
MRSA検出結果
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、ヨードホールを選択し、これを多孔性の無機担体に担持させたことにより、有効ヨウ素を長期にわたって安定に保持することができ、しかも有効ヨウ素を徐々に放出させることが可能なヨウ素複合体が提供される。このヨウ素複合体は、広範囲の抗菌スペクトルを有すると共に、抗菌作用に優れており、安全性も高く、抗菌剤として、また抗菌性フィルター、抗菌性シート或いはマット等として有用である。また、無機担体として、消臭作用を有するものを使用することにより、消臭作用も同時に達成されるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】空気清浄機用フィルターの抗菌試験装置を説明するための図である。
【図2】抗菌シートを説明するための斜視図である。
【図3】図1の抗菌シートのA-A断面図である。
【図4】抗菌シートの使用状態を説明するための図である。
【図5】菌の増殖の阻止帯幅を説明するための図である。
【符号の説明】
1 エアーポンプ
2 ガスパイプ
3 容器
4 ゴム栓
5 ガラス管
6 使用済み動物飼育用チップ
7 試料(GI−9)
8 対照培地
9 試験培地
10 綿栓
11 シート凸部
12 シートの凹凸状上面部材面
13 シートの平面状下面部材
14 試料(GI−10)
15 被験者
16 シーツ
17 抗菌シート
18 布団
21 シャーレ
22 試料
23 菌の増殖の阻止帯幅(mm)
24 菌のコロニー
Claims (26)
- 80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が多孔質の非晶質シリカ粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機坦体(A)が、全細孔容積当たり、細孔半径7.5乃至150オングストロームの範囲にある細孔容積が20乃至90%であることを特徴とする請求項2記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が多孔質の活性アルミナまたは活性シリカアルミナの粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)がフィロケイ酸塩またはフィロアルミノケイ酸塩である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)がスメクタイト族粘土鉱物または酸処理されたスメクタイト族粘土鉱物の粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)がベントナイトまたはベントナイトと硫酸アルミニウムの混合物の粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)がフライポンタイト或いはフライポンタイトを表面に担持した多孔質の非晶質シリカの粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)がホルマイト系粘土鉱物の粉粒体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が0.0001乃至4mmの平均粒径を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が非晶質シリカ、活性アルミナ、活性シリアル皆、スメクタイト族粘土鉱物、フライポンタイト及びホルマイト系粘土鉱物から成る群より選択された少なくとも1種から成る多孔質の成形体である請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が非晶質シリカ多孔質体であって、コ−ルタ−カウンタ法で測定して10乃至100μmの体積基準メジアン径を有する球状粒子であり、見掛密度(JIS K−6220法)が0.2乃至0.5ml/gの範囲にあり、且つ水銀圧入法による細孔容積が細孔半径18乃至43500オングストロームの範囲で0.5乃至3.5ml/gであることを特徴とする請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記球状非晶質シリカ粒子が水銀圧入法で測定して細孔半径75乃至1000オングストロームのメソポアを有し、該細孔容積が0.2ml/g以上である請求項12記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)が非晶質シリカであって、走査型電子顕微鏡法による一次粒子径が0.2乃至20μmであり、個々の粒子の真球度が0.9以上の明確な球状粒子であり、見掛密度(JISK−6220法)が0.1乃至0.5ml/gであり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.5乃至2ml/gの範囲にあり且つ吸油量が100乃至400ml/100gであることを特徴とする請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記ヨードホール(B)が5乃至20重量%の有効ヨウ素量を有することを特徴とする請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記ヨードホール(B)がポビドンヨ−ドであることを特徴とする請求項1記載のヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)100重量部当たりヨードホール(B)が0.05乃至30重量部の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1記載のヨウ素複合体。
- 80乃至800m2 /gのBET比表面積を有し且つ0.2乃至2.3ml/gの窒素吸着法による細孔容積を有する無機坦体(A)と、該担体に担持されたヨードホール(B)と、これらを被覆するオイル、ワックス及び樹脂の少なくとも1種から成る被覆層とから成り且つ有効ヨウ素の徐放性を有することを特徴とするヨウ素複合体。
- 上記無機担体(A)100重量部当たりヨウ素化合物(B)が0.05乃至30重量部の範囲で含有され且つ(A)と(B)の合計量100重量部当たり被覆層が1乃至30重量部の範囲で含有されることを特徴とする請求項18記載のヨウ素複合体。
- 請求項1乃至19の何れかに記載の徐放性ヨウ素複合体から成る抗菌剤。
- 請求項1乃至19の何れかに記載の徐放性ヨウ素複合体を含有して成る空気清浄機用フィルター。
- 熱可塑性樹脂またはエラストマーに請求項1乃至19の何れかに記載の徐放性ヨウ素複合体を配合して成る熱可塑性重合体組成物。
- 熱可塑性樹脂またはエラストマー100重量部当たりヨウ素複合体0.1乃至30重量部配合して成る請求項22記載の熱可塑性重合体組成物。
- 請求項22または23記載の熱可塑性重合体組成物から成る敷物。
- 無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る通気性の織布又は不織布に請求項1乃至19の何れかに記載のヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性フィルタ−。
- 無機繊維、動植物繊維及び合成樹脂繊維から成る織布又は不織布に請求項1乃至19の何れかに記載のヨウ素複合体を充填したシ−トの少なくとも1層から成る抗菌性マット。
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