JPH1045609A - 新規包接体、その用途及び樹脂組成物 - Google Patents

新規包接体、その用途及び樹脂組成物

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JPH1045609A
JPH1045609A JP8206259A JP20625996A JPH1045609A JP H1045609 A JPH1045609 A JP H1045609A JP 8206259 A JP8206259 A JP 8206259A JP 20625996 A JP20625996 A JP 20625996A JP H1045609 A JPH1045609 A JP H1045609A
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JP
Japan
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iodine
cyclodextrin
antibacterial
clathrate
povidone
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Application number
JP8206259A
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English (en)
Inventor
Katsuo Takashi
勝男 高師
Akio Maeda
暁男 前田
Itsuki Fujita
逸樹 藤田
Shigeru Hagiwara
滋 萩原
Yasoji Sasaki
八十治 佐々木
Manabu Nakahara
学 中原
Masanori Tanaka
正範 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NITTO SEROFUAN KK
YAMASAN KK
Nippoh Chemicals Co Ltd
Mizusawa Industrial Chemicals Ltd
Original Assignee
NITTO SEROFUAN KK
YAMASAN KK
Nippoh Chemicals Co Ltd
Mizusawa Industrial Chemicals Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗菌活性が長期にわたって持続され、且つ熱
安定性等に優れたヨウ素系の包接体及びそれを用いた抗
菌剤の提供、さらには、これを熱可塑性樹脂に配合して
なる抗菌性に優れた樹脂組成物を提供するにある。 【解決手段】 シクロデキストリンをホスト分子として
ヨードホールをゲスト分子として含んで成り且つ少なく
とも0.005%の有効ヨウ素量を有することを特徴と
する抗菌剤、及びそれを用いた樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なヨードホール包
接体、その用途に関するもので、より詳細にはヨードホ
ールをシクロデキストリン中に組込んでなり、ヨウ素化
合物が持つ抗菌作用を保持し且つその耐熱性を向上させ
た新規包接体に関する。本発明は更に、この包接体を含
有する樹脂組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】ヨウ素は、ハロゲン系の次亜塩素酸に匹
敵する優れた抗菌性を有し、人体に対して比較的安全で
あり、従来より消毒剤として、広く使用されている。例
えば、理容、美容業界のハサミ、カミソリ、バリカン等
の金属器具の消毒等の用途に、布、紙、合成樹脂シ−ト
等の柔軟性材料にヨウ素を含浸、内填させたものが消毒
防錆布として使用され、ペ−スト中にヨウ素を含有させ
たものは塗布可能な創傷治療剤として使用され、更に活
性炭、ゼオライト、ケイ藻土、ケイ酸カルシウム等の担
体にヨウ素を担持、吸蔵させたものは空気浄化、脱臭、
防菌、殺ウイルス等の用途に使用されている。
【0003】特開平5−237171号公報には、アル
コ−ル、エ−テル等の媒体中にヨウ素、ヨウ化物イオン
及び非イオン性界面活性剤を含む殺菌剤組成物を含浸さ
せたポリウレタン発泡体が記載され、このものは外科手
術用洗浄具として有用であることが示されている。特開
平4−174632号公報には、ヨウ素、アルコ−ル、
ポリオ−ル、ポリビニルピロリドン等を含有するヨウ素
系殺菌剤組成物を含浸させたウエットテイツシュが記載
されている。更に、特開昭60−40048号公報に
は、ポビドンヨ−ド(ポリビニルピロリドン−ヨウ素錯
体)を殺菌剤として、吸収性部材に含浸させた衛生ナプ
キン等が記載されている。
【0004】最近、シクロデキストリン(CyD)に防
虫剤、防黴剤、芳香剤等を包接させ、これを熱可塑性重
合体等に配合して、上記各薬剤の作用とその持続性とを
成形品に付与することが行われている(特開昭61−2
7010号公報、特開昭61−65805号公報、特開
昭61−152765号公報、特開平6−248194
号公報)。
【0005】シクロデキストリンを用いたヨウ素の包接
体も既に知られており、香粧会誌第8巻第2号(198
4)には、β−シクロデキストリン・ヨウ素(CDI)
を含む含嗽(うがい)剤の殺菌効果が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ヨウ素は、抗菌性も強
く、広範囲の抗菌スペクトルを有し、しかも安全性に優
れているという利点があるが、特有の臭いと色とを有す
ると共に昇華性があり、水に殆ど溶けず、取り扱いに難
点があることが問題であり、一方ヨードホールは、ヨウ
素と同様な抗菌性及び抗菌スペクトルを有しながら、ヨ
ウ素に特有の臭いが抑制され、取り扱いも容易であると
いう利点を有するが、比較的短時間の内に効果が失われ
る傾向があり、抗菌作用の持続性に関して未だ十分満足
しうるものではなく、更に熱安定性も未だ十分であると
はいえず、種々の樹脂中に配合した場合には、十分な抗
菌性を保持させることが概して困難である。
【0007】また、ヨードホールを種々の担体に担持さ
せた場合には、担体とヨウ素との相互作用が生じ、有効
ヨウ素量が減少することも問題である。
【0008】従って、本発明の目的は、ヨウ素特有の臭
気が抑制されていると共に、有効ヨウ素量が長期にわた
って安定に維持され、しかも抗菌作用の持続性と熱安定
性に優れた新規なヨウ素系の包接体及びそれを用いた抗
菌剤を提供するにある。
【0009】本発明の他の目的は、種々の熱可塑性重合
体に配合して成形することが可能であり、これにより抗
菌性に優れた樹脂成形体とすることが可能な樹脂組成物
を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、シクロ
デキストリンをホスト分子としてヨードホールをゲスト
分子として含んで成る包接体が提供される。
【0011】本発明によれば、シクロデキストリンをホ
スト分子としてヨードホールをゲスト分子として含んで
成り且つ少なくとも0.005%の有効ヨウ素量を有す
ることを特徴とする抗菌剤が提供される。
【0012】本発明において、 1.ヨードホールが5乃至20%の有効ヨウ素量を有す
るものであること、 2.ヨードホールがポビドンヨード(ポリビニルピロリ
ドン・ヨウ素錯体)であること、 3.シクロデキストリンがα型、β型或いはγ型のシク
ロデキストリンまたはマルトシルシクロデキストリンで
あること、 4.シクロデキストリンとヨードホールとが99:1乃
至50:50、特に90:10乃至60:40の重量比
で存在すること、 が好ましい。
【0013】本発明によれば、熱可塑性重合体と、シク
ロデキストリンをホスト分子としてヨードホールをゲス
ト分子として含んで成り且つ少なくとも0.005%の
有効ヨウ素量を有する抗菌剤とから成ることを特徴とす
る抗菌性樹脂組成物が提供される。
【0014】本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹
脂100重量部当たり前記抗菌剤を0.1乃至30重量
部、特に1乃至15重量部の量で含有させるのがよい。
本発明の樹脂組成物は、成形体の少なくとも表面に存在
するように任意の成形方法で樹脂成形体に成形でき、こ
れにより成形体に抗菌性を付与することができる。
【0015】
【発明の実施形態】一般に、ある分子Aが他の分子Bを
内部に取り込み、包接体を形成するとき、分子Aをホス
ト分子、分子Bをゲスト分子と呼ぶ。本発明では、ホス
ト分子としてシクロデキストリンを選択し、ゲスト分子
としてヨードホールを選択し、これらを組み合わせて包
接体とする。これにより、ヨードホールの抗菌性を保持
させながら、耐熱性を向上させ、且つ抗菌性の持続性を
も向上させることができる。また、本発明の包接体にお
ける有効ヨウ素の放出は、包接体からのヨードホールの
解包接と、解包接されたヨードホールからの有効ヨウ素
の放出との2種のプロセスを通して行われる。このた
め、本発明の包接体は、有効ヨウ素の徐放性に優れてお
り、抗菌作用の持続性に極めて優れているものである。
【0016】後述する例を参照されたい。ヨードホール
の代表例であるポビドンヨードをポリエチレン樹脂に配
合した場合、ポビドンヨードの熱分解に起因すると見ら
れる着色が認められ、また樹脂中への分散も不均一にな
る傾向がある。これに対して、上記ポビドンヨードをシ
クロデキストリンに包接させたものをポリエチレン樹脂
に配合すると、上記着色傾向が著しく少なくなり、また
樹脂中への分散も均一なものとなり、得られた樹脂成形
体は、抗菌試験の結果では、優れた抗菌作用と長期にわ
たる抗菌作用の持続性を示すのである。
【0017】更にポビドンヨードの希薄水溶液は安定性
が悪く、短期間の内に有効ヨウ素量が減少する、また有
機物質の存在下では急速に有効ヨウ素量が減少し失活す
る現象がみられる、それに対してポビドンヨードをシク
ロデキストリンに包接させたものは有効ヨウ素の保持率
が大幅に改善され、安定化されている。
【0018】有効ヨウ素量が11.36%のポビドンヨ
ードを、全体当たり10重量%となるように、シクロデ
キストリン包接体とした場合、理論的な有効ヨウ素量は
1.136%となるが、後述する例に示すとおり、実際
のポビドンヨード・シクロデキストリン包接体では、有
効ヨウ素量が0.89ないし1.23%の範囲となって
おり、包接処理により、有効ヨウ素量が実質的に減少し
ていないという驚くべき結果を示している。包接体から
のヨードホールの放出は、解包接と、解包接されたヨー
ドホールからの有効ヨウ素の放出との2種のプロセスを
通して行われる。
【0019】シクロデキストリンは、グルコースがα−
1,4結合で環状に結合した分子式が(C6105)n
で表される非還元性のオリゴ糖であり、グルコースが環
状に結合したドーナツ状の分子となっており、その中心
孔の中に種々の分子が入り得るようになっている。
【0020】グルコースの結合数nが6、7及び8のも
のがそれぞれ、α−、β−及びγ−シクロデキストリン
として知られており、空孔の直径はこの順序に大きくな
っており、これを示すと次の通りとなる。 種類 グルコース単位の数 空孔径(オングストローム) α 6 4.5 β 7 6.0 γ 8 8.5
【0021】シクロデキストリンは、円錐台形の形状を
有しており、狭い方の口にグルコース単位の1級水酸基
が位置しており、広い方の口に2級水酸基が位置してい
て、水になじみやすい構造となっていると共に、両方の
水酸基で挟まれているシクロデキストリンの壁が水をは
じく疎水性の壁となっている。
【0022】ヨードホール(Iodophor)とは、界面活性
剤や重合体を担体としたヨウ素の複合体であり、ヨウ素
に固有の不快臭は取り除かれているが、強い抗菌作用及
び広い抗菌スペクトルを有することが特徴である。
【0023】即ち、ヨードホールは、分子ヨウ素と同様
に、バクテリア、ウィルス、カビ、胞子菌、プロトゾ
ア、イースト菌等の微生物を殺菌するのみならず、ある
種の寄生虫類、線虫類等に対しても駆除能力を有するこ
とが知られており、微生物の耐性が形成されないという
利点をも有している。また、このヨードホールは、古典
的なハロゲン系抗菌剤に比して、安全性が高く、取り扱
いも容易であり、人や動物に対する刺激も少ないという
利点を与える。
【0024】本発明においては、シクロデキストリンを
ホスト分子とし、ヨードホールをゲスト分子として、包
接体を形成させることにより、ヨードホールの熱安定性
が向上し、更に樹脂中への分散性も向上するという作用
が得られるのは、次の理由によると思われる。
【0025】即ち、本発明の包接体では、シクロデキス
トリンの空孔内にヨードホールのヨウ素コンプレックス
部分が少なくとも部分的に収納されており、シクロデキ
ストリンの疎水的な壁が、ヨウ素コンプレックス部分を
保護し、耐熱性を向上させると共に、この疎水的な壁が
樹脂中への分散を助長しているものと思われる。また、
シクロデキストリンの口に位置する水酸基は、ヨードホ
ールのヨウ素コンプレックス部分の空孔内への導入を容
易にすると共に、ヨウ素コンプレックス部分と更に複合
化することにより一層安定した構造としている可能性も
ある。
【0026】[シクロデキストリン]本発明において、
シクロデキストリンとしては、前に述べたものが何れも
使用され、α型、β型或いはγ型のシクロデキストリン
が、単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
これらのシクロデキストリンは、デンプンに耐アルカリ
性菌の1種であるバチルスの酵素を作用させることによ
り、一般に製造されるものである。
【0027】シクロデキストリンの誘導体も各種知られ
ており、これらの誘導体も勿論本発明の目的に使用でき
る。これらの誘導体としては、分岐シクロデキストリン
や修飾シクロデキストリン、更にはシクロデキストリン
ポリマー等が挙げられる。
【0028】分岐シクロデキストリンとしては、シクロ
デキストリンを構成するグルコース単位の1個に、グル
コース或いはマルトースをα−1,6で分岐させたもの
で、グルコシルシクロデキストリン或いはマルトシルシ
クロデキストリンと呼ばれているものが使用される。分
岐シクロデキストリンは、通常のシクロデキストリンに
比して水或いは有機溶媒に対する溶解性に優れており、
本発明の用途に使用した場合には、有効ヨウ素の安定性
にも優れているという利点をも与えるものである。
【0029】修飾シクロデキストリンとは、シクロデキ
ストリンの水酸基の位置に化学修飾基を導入したもので
あり、修飾基には、(−COCH3 )等のアシル基、
(−NHCOR基)[Rはアルキル基]等のアシルアミ
ノ基、(−CONHR)等のアミド基、(−OC
3 )、(−OC25)等のアルコキシル基、(−NH
2 )、(−NHCH3 )等のアミノ基、F、Cl、Br
等のハロゲン原子、(−OCH 2 −CH2 −COOH)
等のカルボキシルエーテル基、ニコチンアミド基、イミ
ダゾリル基、(−OCH2 −CH2 −SO3 −Na
基)、(−OSO3 −Na基)等が挙げられる。シクロ
デキストリンの水酸基には、1級水酸基と2級水酸基と
の2種類があることは既に述べたとおりであるが、一般
に1級水酸基の位置に修飾基を導入しやすく、1級水酸
基の位置に修飾基を導入したものが好適に使用される。
しかしながら、最近では、2級水酸基の位置に修飾基を
導入したものも既に知られており、このものも本発明の
目的に使用することができる。修飾シクロデキストリン
は、溶解性の向上、界面活性的特性の向上、ゲスト分子
の選択性、抗菌性の向上等の一般的作用を有しており、
これらの作用は、本発明の用途の場合にも同様に達成さ
れる。
【0030】シクロデキストリンポリマーとしては、シ
クロデキストリンに架橋剤、例えばアルデヒド、エピク
ロールヒドリン、イソシアネート等を作用させ、分子間
架橋を生じさせたものが使用される。
【0031】[ヨードホール]本発明において、ヨード
ホールとしては、それ自体公知の任意のヨードホール製
剤が使用され、このヨードホールは殺菌作用を有するが
ヨウ素に固有の不快臭を有しない複合体から成ってい
る。この複合体では、重合体や界面活性剤から成る担体
にヨウ素がコンプレックスの形で組み込まれている。
【0032】一例として、ポピドンヨードの場合、下記
式(1)
【化1】 の構造式に示すとおり、ポリビニルピロリドンと分子ヨ
ウ素とがコンプレックスを形成している。
【0033】ヨードホールの担体重合体としては、ポリ
ビニルピロリドンの他に、ポリエーテルグリコール、ポ
リビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポ
リオキシアルキレン等があげれる。また、界面活性剤担
体としては、陰イオン性、陽イオン性、両性、非イオン
性のものが使用される。これらは単独でも或いは2種以
上の組み合わせでも使用でき、例えば、重合体と界面活
性剤との組み合わせも使用できる。
【0034】ヨードホール製剤の具体的なものとして、
ポビドンヨード(ポリビニルピロリドン・ヨウ素錯
体)、ヨウ素・アルキルポリエーテルアルコール錯体
(G.S.I.)、ポリエトキシポリプロポキシポリエ
トキシエタノール・ヨウ素錯体(Iocline)、ノ
ニルフェノキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、
ポリオキシエチレン付加植物油・ヨウ素錯体、ポリオキ
シエチレン付加脂肪酸・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレ
ン付加脂肪アルコール・ヨウ素錯体、脂肪酸アミド・ヨ
ウ素錯体、第4級有機アンモニウム・ヨウ素錯体等が挙
げられるが、ポピドンヨードが好適である。
【0035】ヨードホールが5乃至20%、の有効ヨウ
素量を有するものが、抗菌性やその持続性の点で有利で
あり、有効ヨウ素量が上記範囲よりも少ないものでは、
抗菌性が不十分であり、一方上記範囲よりも多いもので
は安定性が低かったり、臭いの点で不満足である。
【0036】ヨードホールとしては、液体で入手しうる
ものと、粉末で入手しうるものとがあるが、本発明では
どちらも使用可能であるが、粉末のものが水分量を調節
しうる点で有利である。
【0037】ポビドンヨードで代表されるヨードホール
は次の利点を有する。 (1) 冷水、エチルアルコ−ルに容易に溶解し、通常
の使用濃度10%ポビドンヨ−ド水溶液は、室温下で1
年間変化せず安定であり、ポリビニルピロリドンとヨウ
素が錯体を形成したもののpHは2乃至3.5である。 (2) 細菌、真菌(カビ、酵母)、ウイルス、、に抗
菌活性を有し、抗菌力が強く、多くの微生物が数秒から
数分で死滅する。なお真菌に対しては優れた抗菌剤は多
くはない。また、原虫、寄生虫等にも駆除能力がある。 (3) また微生物がポビドンヨ−ドに耐性とならない
ため、抗生物質が効かない耐性菌に対しても有効な抗菌
活性を有する。ちなみにMRSAは、ほとんどの抗生物
質に対して耐性を持つている。 (4) 哺乳類の組織に対する刺激性はほとんど無く、
傷口や粘膜に作用しても、無刺激で痛みを伴わないの
で、取扱いのうえでも安心である。 (5) グラム陽性、グラム陰性の別なく強力な殺菌効
果を示し、更に塩素と同様に、界面活性剤、ビグアナド
誘導体、フェノ−ル系殺菌剤とは異なり、真菌に対して
も強い殺菌力を示す。 (6) 細菌芽胞に対しては100〜500ppmの高
濃度で長時間の接触が必要であるが、塩素やアルデヒド
系以外の殺菌剤では常温では死滅作用は示さない。なお
ポビドンヨ−ド以外で常温で殺芽胞作用を示すのは塩素
やアルデヒドのみである。
【0038】ヨードホールは毒性が少なく、人や動物に
対する刺激も少ないという点で優れたものである。ヨー
ドホールの内、代表的なポピドンヨードについて、その
毒性を示すと次の通りである。
【0039】1)急性経口毒性 一群10頭、12群のラットを用い、ポビドンヨードの
水溶液(有効ヨウ素濃度2.5%)の急性経口毒性を評
価したところ、LD50(2週間後)は有効ヨウ素量とし
て1.300mg/Kgであった。(Journal of The I
nternational College of Surgeons 25,727(1956))
【0040】2)健康皮膚に及ぼす影響 200人の皮膚に対し、パッチテスト法により、ポビド
ンヨード液(10%)を96時間適用したところ、異常
は認められなかった。(Journal of The International
College of Surgeons 25,727(1956))
【0041】3)損傷皮膚に及ぼす影響 人もしくはウサギの皮膚を荒いサンドペーパーで擦りむ
き、パッチテスト法により、ポビドンヨード液(10
%)を適用したところ、健康皮膚と同様に異常は認めら
れなかった。また、その部位では感染は起こらずに、擦
りむきは治癒した。(Journal of The International C
ollege of Surgeons 25,727(1956))
【0042】4)眼に及ぼす影響 10%ポビドンヨード液0.5ccを25羽のウサギの
眼に点眼し、2週間観察したところ、わずかに結膜が赤
くなったが、それは2、3日以内に消失した。25羽の
ウサギならびに25頭のモルモットの眼に10%ポビド
ンヨード液0.1ccを15日間、毎日点眼したとこ
ろ、一時的な紅斑が出現するが、数時間後には消失し
て、15日の試験期間中とくに異常は認められなかっ
た。(Journalof The International College of Surge
ons 25,727(1956))
【0043】5)喉への影響 25人のボランティアに対して、喉にポビドンヨード液
(10%)を塗布したところ、6割の人がピリッとする
刺激を10〜20分間感じ、喉の粘膜がわずかに赤くな
ったが、それも2時間前後で消失した。4割の人には特
に異常は認められなかった。10人に15日間、喉にポ
ビドンヨード液を塗布したところ、5人は異常は認めら
れなかった。他の5人は最初わずかに赤くなったが、悪
化することはなかった。2週間後、同じ人に同じ試験を
行ったところ、全く同じ結果であった。(Journal of T
he International College of Surgeons 25,727(195
6))
【0044】6)特異体質の人への影響 3人のヨードアレルギーを持つ人の皮膚に、ポビドンヨ
ードと、ルゴール液を適用したところ、ルゴール液を塗
布した皮膚は特有の過敏症状が出現したが、ポビドンヨ
ードではいずれの人も特に異常は認められなかった。
(Journal of TheInternational College of Surgeons
25,727(1956)) ポビドンヨードを外用殺菌剤として、3年間に5900
人に使用したところ、本剤に対する特異体質がみられた
のは2名であった。この2名とも、全身的な毒性症状や
ヨード過敏症状はみられなかった。(The Bulletin Ame
rican Societyof Hospital Pharmecists 13,226(195
6))
【0045】[包接体及びその製法]本発明の包接体
は、シクロデキストリンとヨードホールとを水の存在下
に接触させることにより、容易に行われる。一般に、シ
クロデキストリン及びヨードホールを水溶液中で緊密に
混合し、包接を行うことが推奨される。
【0046】包接処理は、一般に常温で行うことが好ま
しく、ホモジナイザー等の混合機を用いて均一な撹拌を
行いながら、処理を行うのがよい。
【0047】シクロデキストリンとヨードホールとを9
9:1乃至50:50、特に90:10乃至60:40
の重量比で混合するのが好ましく、ヨードホールの量が
上記範囲よりも多いと、最終包接体の熱安定性が低下す
る傾向があり、一方上記範囲よりも少ないと、最終包接
体の抗菌作用が上記範囲にあるものよりも低下する傾向
がある。
【0048】得られた包接体を含む溶液は、これを乾燥
して包接体の粉粒体とすることができる。乾燥には、ス
プレードライヤーによる乾燥や、凍結乾燥等を用いるこ
とができる。本発明の包接体は、スプレー乾燥時に13
0℃程度の加熱を受けても、有効ヨウ素量が実質的に低
下することなく、製造が容易であり、抗菌効果が持続さ
れるという利点を与える。
【0049】シクロデキストリンの溶液中に、ヨードホ
ールを添加し撹拌すると、シクロデキストリンの空洞内
に含まれていた水分が放出され、代わりにヨードホール
のヨウ素コンプレックス部分の少なくとも一部が空洞内
に吸引されて、包接体が形成される。この包接に関与す
る力は、水素結合力、イオン双極子間力、ファンデルワ
ールス力等が総合的に作用しているといわれている。
【0050】ポビドンヨードのようなヨードホールの場
合、ポリマー主鎖があり、この主鎖に対してヨウ素コン
プレックス部分(ピロリドン・ヨウ素コンプレックス)
がペンダントな形で結合している。かくして、本発明の
包接体の場合、ヨードホール1分子に対して、多数のシ
クロデキストリンが結合し、1ゲスト分子・多数ホスト
分子包接体を形成していることが明らかである。この1
ゲスト分子・多数ホスト分子包接体では、初期の抗菌作
用もあり、しかも抗菌作用の持続性にも優れているとい
う利点がある。これは、本発明の包接体では、後述する
包接力が広い分布で存在することに関連しているためと
思われる。
【0051】シクロデキストリンの包接体においては、
ゲスト分子が空洞内に存在する確率が高い場合、包接力
が強いと呼び、この確率が低い場合、包接力が弱いと呼
ばれている。ゲスト分子がポビドンヨードである場合、
包接力の強さはシクロデキストリンの空孔の径に密接に
関係する。α−シクロデキストリンあるいはマルトシル
シクロデキストリンはポビドンヨードに対する包接力が
相対的に強く、β−シクロデキストリンはポビドンヨー
ドに対する包接力が相対的に弱い。かくして、α型シク
ロデキストリンあるいはマルトシルシクロデキストリン
を用いたヨードホール包接体の場合、安定性や抗菌作用
の持続性には優れているが、初期の抗菌作用がやや劣る
傾向がある。一方、β型シクロデキストリンを用いたヨ
ードホール包接体では、初期の抗菌作用もあり、抗菌作
用の持続性もある程度有している。従って、用途ならび
に要求される抗菌性に応じて、α、β、γ型シクロデキ
ストリン又はマルトシルシクロデキストリンを適宜選択
使用することができ、さらにはこれらの混合物を用いる
ことができる。
【0052】本発明の一つの態様においては、β型のシ
クロデキストリンが50乃至90重量%及びα或いはγ
型のシクロデキストリン50乃至10重量%の組成物を
使用する。このシクロデキストリン組成物を用いて得ら
れるヨードホール包接体は、初期の抗菌活性、抗菌作用
の持続性及び熱安定性の組み合わせに優れている。
【0053】[抗菌剤]本発明の包接体は、有効ヨウ素
の徐放性を有する抗菌剤乃至環境殺菌剤(サニタイザ
ー)としての用途に有用である。即ち、水に易溶性であ
るが、やや安定性に乏しいヨ−ドホ−ルをシクロデキス
トリンに包接させることにより、有効ヨウ素を安定に維
持することが可能となると共に、後述する実施例からも
明らかなように、ヨウ素が持続して徐々に放出される徐
放性を付与することが可能となった。
【0054】また、本発明によって得られた包接体を抗
菌剤として抗菌試験に供すると、後述する実施例から明
らかなように、寒天培地の表面にはMRSA菌のコロニ
−が無数に増殖しているのが観察されるが、寒天培地上
に置いた包接体の周囲には、上記菌の増殖を阻止したい
わゆる増殖阻止帯が形成されており、その増殖阻止帯が
長時間にわたって安定に観察された事実は、有効ヨウ素
が持続して徐々に放出されるという本発明の作用効果を
示している。
【0055】一方、比較のために、デンプンを含んだ寒
天培地上に、ポビドンヨ−ド原末或いは本発明の包接体
粉末をスポットしたところ、原末の周辺にヨウ素−デン
プン反応による青色が確認されたが、翌日には青色も原
末の茶色も消失していたが、本発明の包接体を用いた場
合には、翌日においてもその周囲の青色が持続してい
た。以上の知見から、本発明の包接体が安定性と徐放性
との組み合わせに優れていることも分かる。
【0056】本発明の包接体は、ポビドンヨ−ドに代表
されるヨードホールと同様の広範な抗菌スペクトルを有
する。
【0057】ポビドンヨ−ドを例に公知のデ−タを参照
すると、細菌種(S.aureus、E.faecalisE.coli K.p
neumoniaeS.marcescensP.mirabilis 、P.aeruginos
a)に対して、抗菌効果(0.01%水溶液、1分、死滅)
があり、真菌種(C.albicans-typeA、-B、 C.tropicali
sC.stellatoideaC.guilliermondiiC.parapsilo
sisC.kruseiT.glabrataCr.neoformans)に対し
て、抗菌効果(0.005%水溶液、5分、死滅)があり、
またウイルス(単純ヘルペス、インフルエンザ、エコ
−、ヒト免疫不全(HIV)、コクサッキ−)に対して抗ウ
イルス効果(0.1-0.02%水溶液、15〜60秒、ウイル
ス感染価10-2.8〜10-1)がある。更に上記以外に下記に
示す細菌種(グラム陰性菌、グラム陽性菌、抗酸菌、真
菌、ウイルス、原生動物)に対しても、抗菌作用を示
す。 (1)グラム 陰性菌:Aerobacter aerogenesAeromo
nas liquefaciens 、Achromobacter xylosoxidansChla
mydia trachomatisCitrobacter freundiiEnteroba
cter aerogenesEnterobacter cloacae。 (2)グラム陽性菌:Bacillus cereusBacillus pumi
lisBacillus subtilis 、Clostridium histolyticumC
lostridium perfringensClostridium septicum 、Clost
ridium tetaniCorynebacterium acnes、 (3)抗酸菌: Mycobacterium fortuitumMycobacter
ium tuberculosis。 (4)真菌:Aspergillus flavusAspergillus niger
Aspergillus fumigatus 、Aspergillus terreusPityro
sporum ovaleTrichophyton rubrum 、Rhodotorula glut
inisTrichophyton interdigitale、 (5)ウイルス:Adenovirus、 CytomegalovirusInflu
enza Virus A 、Herpes simplex Type1&2、 Rabies Viru
s 、 Rubella VirusVaccinia Virus。 (6)プロトゾア:Treponema pallidumEntamoeba hi
stolyticaTrichomonasvaginalis
【0058】本発明の抗菌剤及び環境殺菌剤は、粉体、
粒体或いは成形体等の任意の形で、抗菌作用及び環境殺
菌作用が要求される場所に施すことができる。この抗菌
剤及び環境殺菌剤の使用は、粉粒体を前記場所に直接散
布してもよく、或いは、通気性乃至通水性を有する容器
内に、前記粉粒体或いは成形体を収容させ、この容器を
抗菌作用及び環境殺菌作用が要求される場所に置くだけ
でもよい。
【0059】必要な量は、要求される抗菌作用或いは殺
菌作用の程度によっても相違するが、一般に0.005
乃至3%、特に0.01乃至2%の有効ヨウ素量を供給
するようなものであればよい。
【0060】[熱可塑性重合体組成物]本発明の別の態
様によれば、熱可塑性重合体或いはエラストマーに、前
記包接体を配合して成る熱可塑性重合体組成物が提供さ
れ、これにより抗菌性の熱可塑性重合体成形品が得られ
る。
【0061】熱可塑性重合体としては、メタロセン触媒
を使用して合成した樹脂はもちろんのこと、例えば低密
度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチ
レン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエ
チレン、ピロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペ
ンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロ
ック共重合体等のポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニ
ル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エ
チレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合
物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレ
ン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共
重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化
ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポ
リアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリ
ビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン
6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミ
ド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネー
ト、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合
物のいずれかの樹脂でもよい。勿論、生分解性樹脂を用
いることにより、環境に優しい樹脂成形品を提供するこ
ともできる。
【0062】エラストマー重合体としては、例えばニト
リル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエ
ンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブ
タジエン(BR)、ポリイソプレン(IIB)、ブチル
ゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EP
R)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPD
M)、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリルゴム
等;熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエ
ン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン
−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジ
エン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イ
ソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
これらの内でも、炭化水素系エラストマー、特にEPR
やEPDMは好適なものである。勿論、これらは2種以
上のブレンド物の形で使用することもできる。
【0063】熱可塑性樹脂やエラストマー100重量部
当たり、前記包接体を0.1乃至30重量部配合するこ
とが好ましく、これにより抗菌性を有する重合体成形品
を得ることができる。熱可塑性樹脂にポビドンヨード
0.01乃至20重量部を直接混練することもできるが
分散性が悪く、添加量が多くなるとブリードを起こしや
すくなる。これに対して、本発明の包接体を配合する
と、重合体中への分散性も良好であり、ヨードホール及
び重合体の熱劣化も抑制され、この重合体組成物の成形
品は、種々の特性に優れている。
【0064】重合体への包接体の配合には、いわゆるド
ライブレンドやメルトブレンド方式を採用でき、更に包
接体を比較的高濃度で含有するマスターバッチを作成し
て、未配合の重合体にブレンドする方法を採用すること
もできる。
【0065】混練は、重合体が溶融する温度で、比較的
低温で行うのが望ましく、200℃以下の温度が好まし
い。混練を比較的低温で行うために、可塑剤、分散助剤
を用いるのが好ましく、いわゆる塩化ビニール樹脂等の
プラスチゾルを用いることができる。
【0066】重合体組成物の成形には、押出成形による
フィルム、シート、パイプ、繊維、ネット等の成形、ブ
ロー成形によるタンク、容器等の成形、射出成形による
各種ハウジング、建材、機械部品等の成形、カレンダー
成形によるシートの成形等が用いられ、形成される成形
品は、優れた抗菌性を有している。勿論、同時共押出或
いは同時共射出等により、表面層のみが包接体が配合さ
れている積層体から成る重合体成形品とすることもでき
る。
【0067】重合体成形品における抗菌作用は、包接体
からのヨードホールの解包接と、解包接されたヨードホ
ールからの有効ヨウ素の放出との2種のプロセスを通し
て行われる。また、包接体からのヨードホールの解包接
にも2種の段階があり、第一の段階では、重合体組成物
の加工や成形の際の加熱により、ヨードホールの解包接
が進行する。第二の段階では、重合体組成物中に残留し
た包接体が、時間の経過或いは空気中の湿度等の影響に
より、ヨードホールの解包接が徐々に進行する。これら
の解包接とヨードホールからのヨウ素の放出とが組み合
わされて、有効ヨウ素の放出が徐々に行われ、持続した
抗菌作用が実現することになる。
【0068】本発明の包接体を、それ自体公知の塗料中
に配合して、抗菌剤塗料乃至被覆組成物とすることもで
きる。塗料としては、樹脂の種類から、ニトロセルロー
ス塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、
ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗
料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料の他に、フ
ェノール系レジン、変性フェノール系レジン、アルキド
系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レ
ジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、シリ
コーン系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジ
ン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素
系レジン等の1種或いは2種以上を含有する塗料が挙げ
られる。
【0069】また、用いる塗料は、その用い方によっ
て、溶剤型塗料、水性塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗
料等の任意のものであってよい。塗料乃至被覆材中の包
接体の濃度は、重合体組成物のそれに準じてよい。
【0070】
【実施例】本発明は以下の例で詳細に説明する。
【0071】(有効ヨウ素量測定)含ヨウ素化合物成形
体の消毒、殺菌効果はヨウ素(I2)自体であり、従って
当該供試体の全ヨウ素量のうち、イオン性ヨウ素量とそ
れ以外の有効ヨウ素量(ヨウ素分子自体)とを下記の方
法で評価する必要がある。有効ヨウ素量は、0.5gの
試料粉末を水30mlに懸濁させ、0.005Nチオ硫
酸ナトリウム液でのヨウ素−デンプン反応滴定で試料粉
末中の有効ヨウ素量(AI)%を定量した。(日本薬局方に
準拠)
【0072】(熱安定性測定)試料粉末を130℃に加
熱し、加熱時間15,30,45,60分での有効ヨウ
素の保持率を測定した。
【0073】(溶液安定性測定)各試料の有効要素量が
0.05%となるように水溶液とし、37℃にて2週間放置
し、有効ヨウ素保持率を比較する。有効ヨウ素量の測定
は、水溶液サンプル25mlに対して0.005Nのチ
オ硫酸ナトリウムでのヨウ素−デンプン反応滴定により
行う。尚、後述する試料2と3はヨウ素−デンプン反応
を示さないため、水溶液サンプル自体の色の消失をもっ
て滴定終点とした。
【0074】(有効ヨウ素量を指標とした有機物質に対
する安定性測定)各試料を有効ヨウ素量0.1%又は
0.05%となるように水に溶解し、ゼラチンを0.5
%分加えて懸濁液とし、室温にて1時間振とう又は2日
間放置後、ゼラチンを濾過し、有効ヨウ素保持率を測定
した。有効ヨウ素量の測定は、水溶液サンプル25ml
に対して0.005Nのチオ硫酸ナトリウムでのヨウ素
−デンプン反応滴定により行う、尚、後述する試料2と
3はヨウ素−デンプン反応を示さないため、水溶液サン
プル自体の色の消失をもって滴定終点とした。また試料
3はゼラチンと接すると微粒子のまま溶出するのでゼラ
チン沈殿後の上澄み液の部分を25ml分取して定量し
た。
【0075】(抗菌活性を指標とした有機物質に対する
安定性測定)各試料の10%水溶液に有機物として馬血
清をそれぞれ5%,10%,20%となるように添加し
試料溶液を得る、1時間放置後、抗菌活性を測定した。
比較対照としてポリビニルピロリドン・ヨウ素錯体(ポ
ビドンヨード)の1%水溶液を同様に処理した物を使用
した。有機物質による抗菌活性の失活の度合いは下記の
試験による菌の増殖阻止帯幅の減少率(%)で表す。菌
の増殖阻止帯幅は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(M
RSA)を使用し、シャーレ(直径90mm)に検定用寒天
培地(pH=6.0、ペプトン1g/l、KH2PO4 0.3g
/l、K2HPO4 0.45g/l、NaCl 4g/l、agar 15g/
l)20mlを流し込み凝固後、全面にMRSAを塗抹
した物の中心にステンレスカップ(直径8mm)に上記の
ように調整した試料溶液を0.2ml入れ、37℃で2
日間培養後、菌の増殖阻止帯幅を測定した。
【0076】(抗菌活性測定)各フィルム試料を幅1c
m、長さ3cmの大きさに切り取ったものをBPS(p
H=6.0、Na2 HPO4 0.4g/l、KH2 PO4
3.26g/l、NaCl 5.1g/l)5ml中に浮遊さ
せ、これにMRSAを所定の濃度に懸濁したものを37
℃で24時間放置後、残存生菌数を測定する。生菌数の
測定は、被検液に等量の1%チオ硫酸ナトリウム水溶液
を加え、存在するヨウ素の不活化処理を行った後、標準
寒天培地を使用し、培養後生じたコロニー数より算出し
た。更に放置を続け、3日後の残存生菌数を測定した。
【0077】(分散性測定)低密度ポリエチレン樹脂に
試料1重量%を添加し、ブラベンダーを用いて150
℃、5分間混練し、厚さ0.05mmのシートを得る。
各試料シート中に分散不良となっているスポットの量を
目視にて以下の様に評価した。
【0078】(実施例1)水200gにポリビニルピロ
リドン・ヨウ素錯体(ポビドンヨード)10gとβ−シ
クロデキストリン(β−100:塩水港精糖社製)90
gの混合物を室温でホモジナイザーに入れ、5,000
rpmで10分間、高速撹拌した。得られた乳化物を入
り口温度160℃出口温度70℃のディスクタイプのス
プレードライヤーで乾燥し、包接物乾燥粉末(試料1)
を得た。この試料の有効ヨウ素量と熱安定性を表1に示
す。更に溶液安定性、有機物質に対する安定性を表2乃
至6に示す。
【0079】(実施例2)水200gにポリビニルピロ
リドン・ヨウ素錯体(ポビドンヨード)10gとマルト
シルシクロデキストリン(イソエリートP:塩水港精糖
社製)90gの混合物を室温でホモジナイザーに入れ、
5,000rpmで10分間、高速撹拌した。得られた
乳化物を入り口温度160℃出口温度70℃のディスク
タイプのスプレードライヤーで乾燥し、包接物乾燥粉末
(試料2)を得た。この試料の溶液安定性、有機物質に
対する安定性を表2乃至6に示す。。
【0080】(実施例3)水200gにポリビニルピロ
リドン・ヨウ素錯体(ポビドンヨード)10gとシクロ
デキストリンα,β,γの混合物(K−100:αが70
%以上:塩水港精糖社製)90gの混合物を室温でホモ
ジナイザーに入れ、5,000rpmで10分間、高速
撹拌した。得られた乳化物を入り口温度160℃出口温
度70℃のディスクタイプのスプレードライヤーで乾燥
し、包接物乾燥粉末(試料3)を得た。この試料の溶液
安定性、有機物質に対する安定性を表2、4、5及び6
に示す。
【0081】
【表1】 AI:有効ヨウ素量 ND:測定不能
【0082】
【表2】 AI:有効ヨウ素量
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】(実施例4)実施例1〜3で得られた試料
1,2,3を各10部とポリエチレン樹脂90部をブラ
ベンダーで150℃、5分間混練し、160℃のプレス
シート機で厚さ0.2mmのシートを作成しシート試料
1,2,3を得た。比較用シートとして試料を入れない
ポリエチレン樹脂シート(シート試料4)も同様に作成
した。各シート試料の抗菌活性を表7に示す。
【0088】
【表7】 ND:検出されず(検出限0/ml)
【0089】(実施例5)試料1〜3に用いたのと同等
の粒度を有するポリビニルピロリドン・ヨウ素錯体(ポ
ビドンヨード)10部を実施例4と同様にポリエチレン
樹脂90部に分散させシートを得る(シート試料5)。
シート試料5については表面にポリビニルピロリドン・
ヨウ素錯体がブリードアウトする現象がみられた、また
シート試料1、2、3の色がクリーム色であるのに対し
てシート試料5は焦げ茶色となった。シート試料1,
2,3,5の分散性試験を行い、その結果を表8に示
す。
【0090】
【表8】
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、ホスト分子としてシク
ロデキストリンを選択し、ゲスト分子としてヨードホー
ルを選択し、これらを組み合わせて包接体とする。これ
により、ヨードホールの抗菌性を保持させながら、耐熱
性を向上させ、且つ抗菌性の安定性、持続性をも向上さ
せることができる。また、本発明の包接体における有効
ヨウ素の放出は、包接体からのヨードホールの解包接
と、解包接されたヨードホールからの有効ヨウ素の放出
との2種のプロセスを通して行われる。このため、本発
明の包接体は、有効ヨウ素の徐放性に優れており、抗菌
作用の持続性に極めて優れているものである。更に、本
発明の包接体では、シクロデキストリンの空孔内にヨー
ドホールのヨウ素コンプレックス部分が少なくとも部分
的に収納されており、シクロデキストリンの疎水的な壁
が、ヨウ素コンプレックス部分を保護し、耐熱性を向上
させると共に、この疎水的な壁が樹脂中への分散を助長
している。
フロントページの続き (72)発明者 高師 勝男 東京都中央区日本橋室町3丁目3番3号 日宝化学株式会社内 (72)発明者 前田 暁男 東京都中央区日本橋室町3丁目3番3号 日宝化学株式会社内 (72)発明者 藤田 逸樹 東京都中央区日本橋室町3丁目3番3号 日宝化学株式会社内 (72)発明者 萩原 滋 東京都中央区日本橋室町3丁目3番3号 日宝化学株式会社内 (72)発明者 佐々木 八十治 神奈川県横浜市港南区東永谷1丁目8番12 号 (72)発明者 中原 学 東京都豊島区駒込1丁目42番5号 株式会 社ヤマサン内 (72)発明者 田中 正範 東京都中央区日本橋室町四丁目1番21号 水澤化学工業株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シクロデキストリンをホスト分子として
    ヨードホールをゲスト分子として含んで成る包接体。
  2. 【請求項2】 シクロデキストリンをホスト分子として
    ヨードホールをゲスト分子として含んで成り且つ少なく
    とも0.005%の有効ヨウ素量を有することを特徴と
    する抗菌剤。
  3. 【請求項3】 ヨードホールが5乃至20%の有効ヨウ
    素量を有するものである請求項1または2記載の抗菌
    剤。
  4. 【請求項4】 ヨードホールがポビドンヨードである請
    求項1乃至3記載の抗菌剤。
  5. 【請求項5】 シクロデキストリンがα型、β型或いは
    γ型のシクロデキストリンまたはマルトシルシクロデキ
    ストリンである請求項1乃至4の何れかに記載の抗菌
    剤。
  6. 【請求項6】 シクロデキストリンとヨードホールとが
    99:1乃至50:50の重量比で存在する請求項1乃
    至5の何れかに記載の抗菌剤。
  7. 【請求項7】 熱可塑性樹脂と、シクロデキストリンを
    ホスト分子としてヨードホールをゲスト分子として含ん
    で成り且つ少なくとも0.005%の有効ヨウ素量を有
    する抗菌剤とから成ることを特徴とする抗菌性樹脂組成
    物。
  8. 【請求項8】 熱可塑性樹脂100重量部当たり前記抗
    菌剤を0.1乃至30重量部含有する請求項7記載の樹
    脂組成物。
  9. 【請求項9】 成形体の少なくとも表面が請求項7また
    は8記載の樹脂組成物から形成されていることを特徴と
    する樹脂成形体。
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