JP2000258592A - ヨウ素除去フィルタ及びヨウ素除去装置 - Google Patents

ヨウ素除去フィルタ及びヨウ素除去装置

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JP2000258592A JP11059828A JP5982899A JP2000258592A JP 2000258592 A JP2000258592 A JP 2000258592A JP 11059828 A JP11059828 A JP 11059828A JP 5982899 A JP5982899 A JP 5982899A JP 2000258592 A JP2000258592 A JP 2000258592A
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alkyl
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Makoto Komatsu
誠 小松
Hideo Kawazu
秀雄 河津
Shoji Akahori
晶二 赤堀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 原子力発電所や使用済み核燃料再処理施設等
で発生する放射性ヨウ素(129I,131I)を、確実に捕
集することのできるヨウ素除去フィルタを提供する。 【解決手段】 本発明に係るヨウ素除去フィルタは、高
分子素材主鎖上に、少なくともN−アルキル−N−ビニ
ルアルキルアミドから誘導される単位を含む重合体側鎖
を有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気中のヨウ素又
は液中のヨウ素を除去するヨウ素除去フィルタ及びヨウ
素除去装置に関し、特に、原子力発電所及び使用済み核
燃料再処理設備等温原子力施設から放出される129Iや
131Iを効果的に除去するのに好適なヨウ素除去フィル
タ及びヨウ素除去装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所、特に原子炉の排気系にお
いて、各燃料棒にピンホール等の破損があると、129
131Iの核分裂生成物が排出される。このうち、129
は半減期が107年と極めて長いが、排出量が少量で且
つエネルギーも低いという特徴がある。一方、131Iは
半減期が8日と短いが、排出量が多く、エネルギーが高
いという特徴を有している。したがって、原子炉の排気
系において最も危険な核分裂生成物核種は、131Iで、
原子力施設における測定評価の対象となっている。
【0003】また、使用済み核燃料再処理設備において
は、原子炉施設から使用済みの核燃料が運び込まれるま
でには長い日時が経過しており、半減期の短い131Iは
減衰して殆ど存在しないが、半減期の長い129Iは多量
に存在する。
【0004】従来、原子炉施設から排出される131Iを
除去するためには、ヨウ化カリウム(KI)を添着した
添着活性炭を大量に使用して、放射性ヨウ素である131
Iを非放射性のヨウ素と同位体交換することによって捕
集している。また、核燃料再処理設備においては、多量
に発生する放射性ヨウ素である129Iを捕集するため
に、銀ゼオライト(AgX,AgZ)を使用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記に
示すヨウ化カリウムを添着した添着活性炭を使用する方
法は、大量の活性炭を必要とするためにコストが高くな
ると同時に、使用した後の活性炭の処理が問題となる。
また、銀ゼオライトを使用する方法は、銀ゼオライトが
高価であると同時に、脱水や150℃での加熱が必要な
ことなど、プロセスが複雑で、且つ放射性ヨウ素の除去
率が満足できるものではなかった。
【0006】本発明は上記の問題点を解決すべく完成さ
れたもので、原子力発電所や使用済み核燃料再処理設備
等において発生する放射性ヨウ素(129I、131I)を、
確実に捕集することができるヨウ素除去フィルタ及び該
ヨウ素除去フィルタを用いたヨウ素除去装置を提供する
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ヨウ素を吸着
除去する高分子素材を具備するヨウ素除去フィルタであ
って、前記高分子素材は、主鎖上に、少なくともN−ア
ルキル−N−ビニルアルキルアミドから誘導される単位
を含む重合体側鎖を有することを特徴とするヨウ素除去
フィルタに関する。
【0008】N−アルキル−N−ビニルアルキルアミ
ド、例えばN−ビニルピロリドンがヨウ素と結合するこ
とは知られている。しかしながら、このN−アルキル−
N−ビニルアルキルアミド基を、樹脂や不織布等の高分
子基材などに導入して、ヨウ素を吸着・除去する素材を
提供するという試みはこれまでなされていない。
【0009】一般に、有機高分子よりなる吸着剤は、高
分子主鎖に吸着機能を有する官能基を導入して吸着機能
を持たせると共に、この官能基の導入によって生じる物
理的強度の劣化を補うために主鎖同士を架橋している。
この代表的なものはイオン交換樹脂である。イオン交換
樹脂においては、一般にスチレンモノマーを重合したポ
リスチレン主鎖に、スルホン基や4級アンモニウム基な
どのイオン交換基が導入されている。しかしながら、こ
れらのイオン交換基は親水基であり、周辺に水分子を数
個配位して嵩張っているために、このままでは樹脂の物
理的強度が十分でなく、水にも溶解してしまう。イオン
交換樹脂においては、この問題を解決するために、ジビ
ニルベンゼンなどの架橋剤を加えてポリスチレン主鎖同
士を架橋させている。これによって、樹脂の物理的強度
が増し、水への溶解もなくなるが、その反面、架橋構造
が形成されることによって、吸着速度や拡散速度等の吸
着分離機能が低下するという問題が生じる。
【0010】この問題は、放射性ヨウ素吸着用の基とし
てN−アルキル−N−ビニルアルキルアミドを高分子主
鎖中に導入して、放射性ヨウ素吸着材料を製造しようと
する場合にも同様に問題となる。即ち、N−アルキル−
N−ビニルアルキルアミドの基を主鎖上に直接導入する
と、高分子材料の物理的強度が保持できないが、その場
合、物理的強度の保持のために高分子主鎖同士を架橋さ
せると、吸着機能が低下するという相反する問題があ
る。
【0011】本発明においては、高分子素材の高分子主
鎖上に、少なくともN−アルキル−N−ビニルアルキル
アミドから誘導される単位を含む重合体鎖の形態の側鎖
を配置させることによって、高分子主鎖の物理的強度を
そのまま保持しながら、高いヨウ素吸着性能を素材に付
与することが可能なことを見出した。また、本発明に係
るフィルタ材料は、高分子主鎖において架橋構造を有し
ていないので、吸着速度及び拡散速度がともに大きく保
持される。本発明に係るフィルタを構成する高分子材料
においては、主鎖が物理的強度の維持や形状の保持の役
割を担う。
【0012】本発明に係るフィルタを構成する高分子材
料において、高分子主鎖上に、少なくともN−アルキル
−N−ビニルアルキルアミドから誘導される単位を含む
重合体鎖の形態の側鎖を導入する手段としては、グラフ
ト重合法を用いることができる。中でも、放射線グラフ
ト重合法は、ポリマー基材に放射線を照射してラジカル
を生成させ、それにグラフトモノマーを反応させること
によって、所望のグラフト重合体側鎖を基材に導入する
ことのできる方法であり、グラフト鎖の数や長さを比較
的自由にコントロールすることができ、また、各種形状
の既存の高分子材料に重合体側鎖を導入することができ
るので、本発明の目的のために用いるのに最適である。
【0013】本発明において、主としてN−アルキル−
N−ビニルアルキルアミドから誘導される単位を含む重
合体鎖の形態の側鎖を導入する基材として用いることが
できる材料としては、高分子素材繊維やその集合体であ
る織布や不織布を用いることができる。織布/不織布基
材は、放射線グラフト重合用の基材として好適に用いる
ことができ、また、軽量でフィルタ状に加工することが
容易であり、有害なガス成分ばかりでなく、微粒子を除
去することもできるので、フィルタの材料として好適で
ある。また、織布/不織布から製造したフィルタは、従
来用いられている活性炭や架橋構造を有するイオン交換
樹脂が、焼却処理が容易でないのに比較して、使用済み
のフィルタの取り扱いも簡単で、容易に焼却処理するこ
とができる。
【0014】本発明の目的のために好適に用いることの
できる放射線グラフト重合法において、用いることので
きる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外
線などを挙げることができるが、本発明において用いる
のにはγ線や電子線が適している。放射線グラフト重合
法には、グラフト用基材に予め放射線を照射した後、重
合性単量体(グラフトモノマー)と接触させて反応させ
る前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に
放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、
いずれの方法も本発明において用いることができる。ま
た、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液
に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合
法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相
グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後、モ
ノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸
気相グラフト重合法などが挙げられるが、いずれの方法
も本発明において用いることができる。
【0015】繊維や繊維の集合体である織布/不織布は
本発明のフィルタ基材として用いるのに最も適した素材
であるが、これはモノマー溶液を保持し易いので、含浸
気相グラフト重合法において用いるのに適している。
【0016】本発明において、高分子主鎖上に重合体側
鎖の形態で導入するN−アルキル−N−ビニルアルキル
アミドとして用いることのできる化合物の具体的な例と
しては、N−ビニルピロリドン、1−ビニル−2−ピペ
リドン、N−ビニル−N−メチルアセタミド、N−ビニ
ル−N−エチルアセタミド、N−ビニル−N−メチルプ
ロピルアミド、N−ビニル−N−エチルプロピルアミ
ド、及びこれらの誘導体から選択される1種以上の重合
性単量体を挙げることができる。
【0017】本発明に係るフィルタの素材として用いら
れる高分子材料においては、上記のように、高分子主鎖
上に、少なくともN−アルキル−N−ビニルアルキルア
ミドから誘導される単位を含む重合体側鎖を有してお
り、この側鎖上に存在するN−アルキル−N−ビニルア
ルキルアミド基に、129Iや131Iの放射性ヨウ素が付着
して除去される。
【0018】本発明の一例として、高分子基材としてポ
リエチレン製繊維よりなる不織布を用い、N−アルキル
−N−ビニルアルキルアミドとしてN−ビニルピロリド
ンを用いて、放射線グラフト重合法によって、本発明の
一態様に係るフィルタ材料を製造する場合の反応を下記
に示す。
【0019】
【化1】
【0020】上記で示されるように、放射線グラフト重
合法によって、ポリエチレン主鎖上に、主としてN−ビ
ニルピロリドンから誘導される単位を含む重合体側鎖を
有する本発明に係るフィルタ材料が得られる。
【0021】本発明に係るフィルタの素材として用いら
れる高分子材料においては、重合体側鎖に導入するグラ
フトモノマーとして、N−アルキル−N−ビニルアルキ
ルアミドに加えて、アニオン交換基を有するか又はアニ
オン交換基に転換可能な基を有するモノマーを導入する
ことができる。この場合、グラフトモノマー溶液とし
て、N−アルキル−N−ビニルアルキルアミドと、アニ
オン交換基を有するか又はアニオン交換基に転換可能な
基を有するモノマーとの混合溶液と用いることにより、
これらの両方をグラフト基として導入することができ
る。
【0022】この目的で用いることのできるモノマーと
しては、アニオン交換基を有するものとして、ジエチル
アミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、ジメチ
ルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N,
N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを、そ
れ自体はアニオン交換基ではないが、その後更に反応さ
せることによってアニオン交換基に転換させることので
きる基を有するものとして、スチレン、クロロメチルス
チレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)、アクロレ
イン、アクリロニトリルなどを用いることができる。例
えば、メタクリル酸グリシジルをグラフト重合によって
導入した後、エタノールアミンなどを反応させてアミノ
化することによってアニオン交換基に転換させることが
できる。
【0023】このように、N−アルキル−N−ビニルア
ルキルアミドに加えて、アニオン交換基を有するか又は
アニオン交換基に転換可能な基を有するモノマーを用い
てグラフト重合を行うと、得られる高分子材料において
は、グラフト側鎖に、N−アルキル−N−ビニルアルキ
ルアミドの重合体鎖と、アニオン交換基を有する重合体
鎖とが混在することになる。この場合、1本のグラフト
側鎖の中に両方の重合体鎖が混在していてもよいし、N
−アルキル−N−ビニルアルキルアミドの重合体鎖を含
むグラフト側鎖と、アニオン交換基を有する重合体鎖の
グラフト側鎖とが、主鎖上に混在していてもよい。
【0024】アニオン交換基を導入した素材によって製
造されるフィルタは、酸性ガスを効率的に除去すること
ができる。原子力発電所等から排出されるヨウ素は、ヨ
ウ素(I2)、次亜ヨウ素酸(HIO)、ヨウ化メチル
などといった種々の形態をとることが確認されている。
アニオン交換基は、次亜ヨウ素酸等のガスを除去する能
力を有しているので、N−アルキル−N−ビニルアルキ
ルアミドから誘導される単位とアニオン交換基の両方を
グラフト重合体側鎖上に有する材料により形成される本
発明の好ましい態様に係るフィルタは、ヨウ素のみなら
ず、上記のガスも除去することができる複合フィルタと
して有用である。
【0025】また、本発明の好ましい態様においては、
ヨウ素除去フィルタにアルカリ金属のヨウ化物を接触・
担持させることができる。このように、ヨウ素除去フィ
ルタにアルカリ金属のヨウ化物を接触・担持させると、
運転中にフィルタに接触したヨウ素(I2)がヨウ化物
イオンI3 -となって、吸着され易い形態に変化するの
で、ヨウ素の吸着効率が向上する。
【0026】一例として、ポリエチレン主鎖上に、主と
してN−ビニルピロリドンから誘導される単位を含む重
合体側鎖を有する本発明に係るフィルタ材料に、ヨウ化
カリウムを接触・担持させた場合に、フィルタ材料がヨ
ウ素を吸着するメカニズムを下記に示す。
【0027】
【化2】
【0028】上記のように、KIがフィルタ材料上に接
触・担持されていると、まずヨウ素がKIと反応してI
3 -イオンが生成し、一方K+イオンは重合体側鎖におけ
るN−ビニルピロリドン基の酸素原子間に配位される。
これによって、I3 -イオンが吸着され易くなるのであ
る。
【0029】また、雰囲気条件が酸性の場合も、アルカ
リ金属のヨウ化物を接触・担持させることにより、ヨウ
素をより吸着させ易くすることができる。下記に、一例
として、上記と同様のポリエチレン主鎖上に、N−ビニ
ルピロリドンの重合体鎖を含む重合体側鎖を有する本発
明に係るフィルタ材料に、ヨウ化カリウムを接触・担持
させた場合に、酸性条件下においてフィルタ材料がヨウ
素を吸着するメカニズムを下記に示す。
【0030】
【化3】
【0031】本発明のフィルタの素材として用いられる
高分子材料としては、ポリオレフィン系の有機高分子材
料が好ましく用いられる。ポリオレフィン系の有機高分
子材料は、放射線に対して崩壊性ではないので、放射線
グラフト重合法によってグラフト側鎖を導入する目的に
用いるのに適している。更に、フィルタ素材として用い
る高分子材料の形態としては、繊維、又は繊維の集合体
である織布又は不織布、或いはそれらの加工品が好まし
く用いられる。
【0032】本発明に係るヨウ素除去フィルタは、ヨウ
素除去装置におけるヨウ素除去素材として用いることが
できる。即ち、本発明の更なる態様は、ヨウ素除去素材
として、上記に記載の本発明に係るヨウ素除去フィルタ
を用いたヨウ素除去装置に関する。かかるヨウ素除去装
置は、放射性ヨウ素である129Iや131Iが放出される可
能性のある、原子力発電所又は核燃料再処理設備におけ
る排気ダクトに取り付けることができる。
【0033】また、本発明に係るヨウ素除去装置は、図
3に示すように、ヨウ素除去剤として、活性炭、活性炭
素繊維、薬剤添着活性炭、薬剤添着活性炭素繊維、ゼオ
ライト、薬剤添着ゼオライト、シリカゲル、薬剤添着シ
リカゲルなどを用いる従来のヨウ素除去装置11と組み
合わせて用い、従来のヨウ素除去装置11を設置したダ
クト10の下流側に本発明に係るヨウ素除去装置12を
配置することができる。このような複合装置を構成する
と、1段目のヨウ素除去装置(従来のヨウ素除去装置)
から流出するヨウ素を本発明に係るヨウ素除去フィルタ
で完全に除去することができ、従来のヨウ素除去剤の十
分でない除去性能を補って、安全性を更に向上させるこ
とができる。
【0034】また、本発明に係るヨウ素除去フィルタ
は、マスク又は防護装置の表面又は内部に組み込んで用
いることもできる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るヨウ
素除去フィルタは、フィルタ基材を構成する高分子主鎖
上に、少なくともN−アルキル−N−ビニルアルキルア
ミドから誘導される単位を含む重合体側鎖を有すること
を特徴としており、物理的強度が高く、空気中のみなら
ず水中においてもヨウ素を除去することができ、更には
次亜ヨウ素酸等のヨウ素化合物をも同時に除去すること
が可能である。また、N−アルキル−N−ビニルアルキ
ルアミドのアミノ基によってヨウ化メチルを除去するこ
とも期待できる。したがって、本発明に係るヨウ素除去
フィルタ及びヨウ素除去装置を用いれば、原子力発電
所、核燃料再処理設備等の原子力関連施設から放出され
る可能性のある放射性ヨウ素を効率よく除去することが
でき、これらの施設内作業における放射性ヨウ素に起因
する被爆の防止、及び施設外への放射性ヨウ素の放出を
排除することができる。また、本発明のより好ましい態
様によれば、フィルタ基材を構成する高分子主鎖上に、
N−アルキル−N−ビニルアルキルアミドから誘導され
る単位と、アニオン交換基又はアニオン交換基に転換可
能な基を含む重合体側鎖が導入されているので、ヨウ素
のみならず、次亜ヨウ素酸、ヨウ化メチルなども合わせ
て除去することができる。
【0036】以下、本発明の実施の種々の形態例を、図
面を参照しながら説明する。これらの記載は、本発明を
限定するものではない。
【0037】
【実施例】実施例1 高分子基材として、繊維径約16μmのポリエチレン繊
維よりなる目付56g/m2、厚さ0.2mmの不織布
を用いた。この不織布基材に、ガンマ線を窒素雰囲気中
で150kGy照射した後、N−ビニルピロリドン溶液
に浸漬し、溶液を加温して反応させて、グラフト率15
3%のN−ビニルピロリドングラフト不織布を得た。こ
のグラフト不織布を、ヨウ化カリウム(KI)の2%水
溶液に、室温で30分浸漬した後、乾燥させて、ヨウ素
除去フィルタ材料を得た。
【0038】このようにして得られたフィルタ材料を、
5cm角に切断し、50Lのテドラバッグ内に挿入し
た。次に、固体のヨウ素を、供栓付き三角フラスコに入
れて加熱して、ヨウ素の気体を発生させた。発生したヨ
ウ素の気体を注射器で5mlサンプリングし、テドラバ
ッグに注入して、テドラバッグ内のヨウ素濃度の経時変
化を調べた。また、グラフト重合を行わなかった不織布
材料を用いて上記と同様のヨウ素除去実験を行った。こ
れらの結果を図1に示す。
【0039】図1において、曲線Aは、グラフト重合を
行わない不織布基材を用いた場合のヨウ素濃度の経時変
化を示し、曲線Bは、上記に従って製造された本発明の
ヨウ素除去フィルタを用いた場合のヨウ素濃度の経時変
化を示す。図から明らかなように、グラフト重合によっ
てN−ビニルピロリドンを含むグラフト重合側鎖を導入
した本発明のフィルタ材料は、空気中のヨウ素を除去す
るヨウ素除去フィルタとして、極めて有効であった。
【0040】また、上記のようにして製造したヨウ素除
去フィルタ材料を、6cm角に切断し、更にこれを2m
m角に切断した。0.5規定のヨウ素−ヨウ化カリウム
溶液を用いて、ヨウ素200ppmを含む水溶液を調整
した。この水溶液500ml中に、2mm角に切断した
フィルタ材料片を入れ、溶液を撹拌しながら、溶液中の
ヨウ素濃度の経時変化を調べた。結果を図2に示す。図
より明らかなように、本発明のフィルタ材料は、液中の
ヨウ素を除去するヨウ素除去フィルタとして極めて有効
であった。 実施例2 実施例1で用いたものと同様のポリエチレン製繊維より
なる不織布に、電子線を窒素雰囲気で、150kGy照
射した後、ジエチルアミノエチルメタクリレート/N−
ビニルピロリドンの混合溶液に浸漬し、溶液を加温して
反応させて、グラフト率131%のグラフト不織布を得
た。このグラフト不織布を、ヨウ化カリウム(KI)の
2%水溶液に、室温で30分浸漬した後、乾燥させて、
ヨウ素除去フィルタ材料を得た。
【0041】このようにして得られたフィルタ材料を、
5cm角に切断し、50Lのテドラバッグ内に挿入し
た。次に、固体のヨウ素を、供栓付き三角フラスコに入
れて加熱して、ヨウ素の気体を発生させた。発生したヨ
ウ素の気体を注射器で5mlサンプリングし、テドラバ
ッグに注入して、テドラバッグ内のヨウ素濃度の経時変
化を調べた。図1に示す結果と同等の結果が得られ、空
気中のヨウ素を除去するヨウ素除去フィルタとして有効
であることが分かった。
【0042】次に、次亜ヨウ素酸の水溶液を60℃に加
温しながらバブリングして、次亜ヨウ素酸の蒸気を1.
6ppmの濃度で発生させた。上記でヨウ素除去に使用
した後のフィルタを、内径23mmのカラムに装填し
て、上記で発生させた濃度1.6ppmの次亜ヨウ素酸
蒸気を、流量200ml/分で通過させた。カラムの出
口側での次亜ヨウ素酸濃度は0.1pppm以下であっ
た。この結果により、本発明のヨウ素除去フィルタは、
空気中のヨウ化水素酸も除去することができることが確
認された。また、吸着していたヨウ素が脱離しなかった
ことから、このフィルタは、ヨウ化水素酸の共存下にお
いてもヨウ素を有効に吸着除去することができることが
確認された。
【0043】また、上記のようにして製造したヨウ素除
去フィルタ材料を、5cm角に切断し、更にこれを2m
m角に切断した。実施例1と同様に、0.5規定のヨウ
素−ヨウ化カリウム溶液を用いて、ヨウ素を200pp
m含む水溶液を調整した。この水溶液500ml中に、
2mm角に切断したフィルタ材料片を入れ、溶液を撹拌
しながら、溶液中のヨウ素濃度の経時変化を調べたとこ
ろ、図2に示される実施例1における結果と同様の結果
が得られた。
【0044】このフィルタ材料片を含むヨウ素溶液を、
No.5Aの濾紙で濾過分離して、ヨウ素除去に使用済
みのフィルタ材料を回収し、次亜ヨウ素酸を11.8p
pmの濃度で含む水溶液200ml中に浸漬し、5分間
マグネチックスターラーで溶液を撹拌した。撹拌終了後
の次亜ヨウ素酸の濃度は0.1ppm以下であった。こ
の結果より、製造されたヨウ素除去フィルタは、水中の
ヨウ化水素酸も除去することができることが確認され
た。また、吸着していたヨウ素が脱離しなかったことか
ら、このフィルタは、ヨウ化水素酸の共存下においても
水中のヨウ素を有効に吸着除去することができることが
確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るヨウ素除去フィルタ材料の空気中
でのヨウ素の捕集試験結果を示すグラフである。
【図2】本発明に係るヨウ素除去フィルタ材料の水中で
のヨウ素の捕集試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明のヨウ素除去装置を従来のヨウ素除去装
置と共にダクトに組み込む使用例を示す概念図である。
【符号の説明】
10 ダクト 11 従来のヨウ素除去装置 12 本発明に係るヨウ素除去装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 武田 収功 神奈川県藤沢市本藤沢4−2−1 株式会 社荏原総合研究所内 (72)発明者 藤原 邦夫 神奈川県藤沢市本藤沢4−2−1 株式会 社荏原総合研究所内 (72)発明者 小松 誠 神奈川県藤沢市本藤沢4−2−1 株式会 社荏原総合研究所内 (72)発明者 河津 秀雄 神奈川県藤沢市本藤沢4−2−1 株式会 社荏原総合研究所内 (72)発明者 赤堀 晶二 東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社 荏原製作所内 (72)発明者 川本 孝善 東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社 荏原製作所内 Fターム(参考) 4D012 BA01 4G066 AA05B AA10D AA22B AA32B AA61B AB10A AB11A AB12A AC13C AC26B AE10A BA16 BA36 BA42 CA31 DA02 DA03 EA20 FA12 FA31

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヨウ素を吸着除去する高分子素材を具備
    するヨウ素除去フィルタであって、前記高分子素材は、
    主鎖上に、少なくともN−アルキル−N−ビニルアルキ
    ルアミドから誘導される単位を含む重合体側鎖を有する
    ことを特徴とするヨウ素除去フィルタ。
  2. 【請求項2】 少なくともN−アルキル−N−ビニルア
    ルキルアミドから誘導される単位を含む重合体側鎖は、
    放射線グラフト重合法により導入されたものである請求
    項1に記載のヨウ素除去フィルタ。
  3. 【請求項3】 N−アルキル−N−ビニルアルキルアミ
    ドの重合性単量体は、N−ビニルピロリドン、1−ビニ
    ル−2−ピペリドン、N−ビニル−N−メチルアセタミ
    ド、N−ビニル−N−エチルアセタミド、N−ビニル−
    N−メチルプロピルアミド、N−ビニル−N−エチルプ
    ロピルアミド及びこれらの誘導体から選択される1種以
    上の重合性単量体である請求項1又は2に記載のヨウ素
    除去フィルタ。
  4. 【請求項4】 重合体側鎖に導入されるグラフトモノマ
    ーとして、N−アルキル−N−ビニルアルキルアミドに
    加えて、アニオン交換基を有するか又はアニオン交換基
    に転換可能な基を有するモノマーが導入されている請求
    項1〜3のいずれかに記載のヨウ素除去フィルタ。
  5. 【請求項5】 アルカリ金属のヨウ化物が接触・担持さ
    れている請求項1〜4のいずれかに記載のヨウ素除去フ
    ィルタ。
  6. 【請求項6】 高分子素材がポリオレフィン系の有機高
    分子よりなる請求項1〜5のいずれかに記載のヨウ素除
    去フィルタ。
  7. 【請求項7】 高分子素材が、繊維、繊維の集合体であ
    る織布、不織布、及びそれらの加工品から選択される請
    求項1〜6のいずれかに記載のヨウ素除去フィルタ。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載のヨウ素
    除去フィルタを組み込んだことを特徴とするヨウ素除去
    装置。
  9. 【請求項9】 請求項1〜7のいずれかに記載のヨウ素
    除去フィルタを、ヨウ素除去素材として、活性炭、活性
    炭素繊維、薬剤添着活性炭、薬剤添着活性炭素繊維、ゼ
    オライト、薬剤添着ゼオライト、シリカゲル、薬剤添着
    シリカゲルなどを用いる従来のヨウ素除去装置の下流側
    のダクトに設置したことを特徴とするヨウ素除去装置。
  10. 【請求項10】 マスク又は防護装置の表面又は内部に
    請求項1〜7のいずれかに記載のヨウ素除去フィルタを
    組み込んだことを特徴とするヨウ素除去装置。
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