JP4914541B2 - 機能性フィルタ濾材およびそれを用いた機能性フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気清浄のために使用されるフィルタ濾材に関し、詳しくは、集塵機能に加え、抗菌性および消臭性等の機能をも有するフィルタ濾材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、病院や食品・医薬品・半導体工場のクリーンルーム等では、無塵かつ無菌に近い状態まで空気を清浄化する必要があり、このため、超高性能フィルタ(ULPA)、高性能フィルタ(HEPA)若しくは中性能フィルタが使用されている。このようなフィルタにおいて、捕捉した微生物を殺菌するために、フィルタ濾材に抗菌性が要求されている。
【0003】
従来、フィルター濾材には、無機抗菌剤を練り込んだ合成繊維により形成された不織布が使用されている。前記無機抗菌剤としては、金属イオン(銀、銅、亜鉛等)をイオン交換によりゼオライトに担持させたものがある。また、フィルタの高性能化に伴って繊維径が微細になると、無機抗菌剤の繊維への練り込みが困難になるため、湿式不織布にバインダで無機抗菌剤を付着したものも使用されている。しかし、無機抗菌剤は、これに微生物が接触しないと殺菌作用を発現しないため、この種フィルタでは、捕捉された微生物が濾材内で増殖し、再飛散して、二次汚染を生じるおそれがあった。
【0004】
他方、ヨウ素化殺菌剤樹脂を含浸または添着した不織布を中性能フィルタの少なくとも一方の面に貼着した抗菌フィルタ(以下「ヨウ素樹脂フィルタ」という)が提案されている(特開平11−276823号公報)。このヨウ素樹脂フィルタに使用されるヨウ素化殺菌剤樹脂は、ヨウ素イオンをイオン交換により樹脂に担持させたものである(同公報第3頁第3欄第9行目から第12行目)。しかし、イオン結合の熱力学的安定性は低いため、ヨウ素化殺菌剤樹脂は熱に対し不安定である。このため、不織布の製造工程の熱風乾燥や加熱加圧において、ヨウ素化殺菌剤樹脂の抗菌性が失活し、不織布に抗菌性を付与することは困難であった。また、ヨウ素化殺菌剤樹脂をビーズ状に加工し、これをバインダにより不織布表面に接着する技術が、同公報に記載されている(同公報第4頁第5欄第24行目から第27行目)。しかし、このような形態では、不織布内部まで抗菌性を付与することは不可能であり、不織布内部で菌が増殖するおそれがある。また、不織布と中性能フィルタを組み合わせることは、その構造が複雑となり、構成部品数および組立工数等が増え、コスト的にも好ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、構成が単純で、しかもその全体において抗菌性が発揮されるフィルタ濾材の提供を、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の機能性フィルタ濾材は、集塵機能を有する多孔質シートの表面および細孔内に多孔質粒子が付着したフィルタ濾材であって、前記多孔質粒子の表面および細孔内には電解質錯体が付着しており、前記電解質錯体は、水分に触れるとヨウ素を溶出するという構成を有する。
【0007】
ヨウ素は、常温常圧で昇華するため、そのまま不織布等に殺菌作用を維持して固着することは困難である。そこで、本発明者らは、ヨウ素の担持方法を中心に一連の研究を重ねた。その過程で、ヨウ素がKIのような水溶性ヨウ化物の溶液に容易に溶けて溶媒分子と結合した電解質錯体となることに着目した。そして、この溶液の前記錯体を高い吸着能を示す活性炭等の多孔質粒子に付着させ、この多孔質粒子を多孔性シートの表面および細孔内に付着させるという着想を得て、これに基づきさらに検討を重ねた。その結果、加熱工程を経ても、ヨウ素の殺菌作用を維持した状態で、不織布やウレタンフォーム等の多孔質シートにヨウ素を担持できることを見出し、本発明に到達したのである。
【0008】
このように、本発明のフィルタ濾材は、その内部にまでヨウ素による抗菌作用を発揮できるため、捕捉した微生物の増殖を防止することができる。また、本発明のフィルタ濾材は、多孔質シート自身が、集塵機能と抗菌機能を有するため、構造が簡単であり、コスト的に有利となる。また、本発明のフィルタ濾材では、ヨウ素が水を媒介として微生物と接触するため、この接触効率がよくなり抗菌性が従来より高い。なお、前記水分は、例えば、空気中の水分などである。さらに、前記多孔質粒子は、吸着機能を有するから、本発明のフィルタ濾材は、消臭等の機能も備える。
【0009】
本発明のフィルタ濾材において、前記多孔質粒子は、多孔質シートの表面および細孔内にバインダにより付着していることが好ましい。前記バインダは、反応性乳化剤を用いて得られる共重合体水性エマルジョンが好ましい。
【0010】
前記多孔質シートは、不織布またはウレタンフォームシートであることが好ましい。なお、本発明のフィルタ濾材において、多孔質粒子に前記電解質錯体が強力に吸着しているから、不織布等の製造における加熱工程で、ヨウ素が流出することがない。
【0011】
前記電解質錯体は、アルカリ金属ヨウ化物水溶液またはアルカリ土類金属ヨウ化物水溶液に、ヨウ素を溶解して得られる物質であることが好ましく、特に好ましくは、三ヨウ化カリウム、三ヨウ化ナトリウムである。
【0012】
前記多孔質粒子は、活性炭、活性白土、ゼオライト、シリカ、活性アルミナ等が好ましく、特に活性炭が好ましいが、本発明は、これらに限定されない。
【0013】
本発明のフィルタ濾材の形状は、シート状の他に、プリーツ状、ハニカム状、コルゲート状または円筒状であってもよい。
【0014】
つぎに、本発明の機能性フィルタは、前記本反発明のフィルタ濾材が、枠体内部に配置されたものである。この機能性フィルタは、集塵性、抗菌性および消臭性等の機能に優れる。前記枠体は、金属製、紙製、合成樹脂製などであってもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の機能性フィルタ濾材は、例えば、水分に接触するとヨウ素が溶出する電解質錯体を多孔質粒子の表面および細孔に吸着させ、この多孔質粒子をバインダにより多孔質シートに付着することにより製造できる。前記多孔質粒子は、少なくともその一部が露出しておく必要がある。
【0016】
前記多孔質シートとしては、例えば、不織布、ウレタンフォームシートが使用できる。前記多孔質シートの厚み、平均孔径等の諸条件は、後述のフィルタ濾材の性能に合わせて調整する。
【0017】
前記不織布は、カーディング法、エアレイ法、抄紙法等によりウェブを形成し、繊維間をケミカルボンド、サーマルボンド法等によって結合することにより製造できる。ケミカルボンドによるときは、繊維結合剤をスプレー加工、含浸加工又はカレンダー加工等を適用することができる。繊維結合剤としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができるが、発ガス性の少ないアクリル酸エステル系樹脂が好適である。
【0018】
前記不織布の構成繊維としては、特に限定されるものではないが、合成繊維が好ましく、特に、熱可塑性樹脂繊維が好ましい。熱可塑性樹脂繊維を混綿すると、濾材としての必要な厚みをだすことができる。またバインダ繊維を混綿するとプリーツ加工性を向上することができる。
【0019】
前記バインダ繊維及び熱可塑性繊維の材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン等の化学繊維があげられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記バインダ繊維としては、単一成分型、複合成分型(並列型、芯鞘型)のいずれでも使用することができる。
【0020】
そして、不織布の構成繊維の繊維径、密度、厚さを適宜変更することにより、粉じん捕集率、圧力損失及び粉じん保持容量等のフィルタ濾材性能を、所望範囲に調整できる。以下に、各フィルタグレード毎の不織布の条件の一例を示す。
(HEPA)
不織布構成繊維の繊維径:5〜20μm
不織布の密度:0.1〜2.0g/cm3
不織布の厚み:0.1〜1.0mm
(中性能フィルタ)
不織布構成繊維の繊維径:20〜60μm
不織布の密度:0.01〜0.1g/cm3
不織布の厚み:0.1〜1.0mm
【0021】
前記不織布の構成としては、全体を略均一密度にした構成だけでなく、微細な塵埃を効率よく捕集、除去するために、密度の異なる複数の層で構成したり、または、前記多孔質粒子が付着した不織布の片面又は両面に、密度の異なる集塵機能のみを有する不織布を積層した構成にしてもよい。さらに、フィルタ濾材の強度を向上するために、前述の各構成において、不織布の外面や中間に補強用ネットを配置してもよい。
【0022】
ウレタンフォームシートは、特に制限されず、フィルタ濾材としての性能を有していればよい。ウレタンフォームシートの平均孔径は、例えば、0.1〜5.0mmであり、好ましくは0.5〜3.0mmである。ウレタンフォームシートの厚みは、例えば、1〜20mmであり、好ましくは2〜10mmである。
【0023】
前記バインダとしては、反応性乳化剤により得られた共重合体水性エマルジョンが好ましい。このようなバインダは、活性炭等の多孔質粒子を多孔性シート、特に不織布に付着させるために、本発明者等が特別に開発したものである。これ以外のバインダを用いることも可能であるが、本発明者等が開発したバインダを用いれば、より効率的に本発明の機能性フィルタ濾材を製造できる。
【0024】
この共重合体水性エマルジョンは、反応性乳化剤の存在下、水性媒体中で乳化重合したものや、乳化重合以外の方法により反応性乳化剤と単量体とを重合した共重合体を、後乳化して得られたものであってもよい。共重合体水性エマルジョンは、一種類で使用してもよく、複数種類を混合したものであってもよい。また、普通の乳化剤を併用してもよい。
【0025】
前記反応性乳化剤は、特に、限定されず、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム等のアルケニルベンゼンスルホン酸塩類、アクリル酸エステルスルホン酸塩類、メタクリル酸エステルスルホン酸塩類、ビニルスルホン酸ナトリウム等のアルケニルスルホン酸塩類、アリルアルキルイタコネート硫酸エステル等のイタコン酸、フマル酸、マレイン酸骨格を有するイオン性反応性乳化剤や、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル誘導体、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル誘導体、ポリオキシプロピレンアルケニルエーテル誘導体、ポリオキシプロピレンアルケニルフェニルエーテル誘導体等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このなかで、混和性、貯蔵安定性の性能上、スチレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。また、反応性乳化剤と併せて、通常の乳化剤を使用することも可能であり、その配合割合は、例えば、反応性乳化剤100重量部に対し、通常の乳化剤0〜500重量部、好ましくは50〜200重量部である。反応性乳化剤は、独自に合成して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。反応性乳化剤は、単量体に対して、例えば、0.1〜10重量%の範囲で用いられ、好ましくは0.5〜5重量%の範囲で用いられる。
【0026】
また、前記共重合体としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。接着性、耐水性等を考慮すると、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体が特に好適である。
【0027】
前記電解質錯体は、アルカリ金属ヨウ素化物またはアルカリ土類金属ヨウ素化物(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のヨウ素塩等)水溶液にヨウ素を溶解させて得られる物質が好ましい。このような電解質錯体としては、三ヨウ化カリウム、三ヨウ化ナトリウム等が好適である。
【0028】
前記多孔質粒子は、前述のとおりであるが、活性炭が特に好ましい。活性炭としては、液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積が、例えば、300〜3000m2/g,好ましくは500〜2000m2/gのものがあげられる。活性炭の粒子径は、例えば、0.25mm以下、好ましくは0.01〜0.15mmであり、活性炭の細孔径は、例えば、1.0〜30nm(10〜300オングストローム)、好ましくは1.5〜5.0nm(15〜50オングストローム)であり、活性炭の細孔容積は、例えば、0.1〜1.5cm3/g,好ましくは0.2〜1.0cm3/gであるものが好ましい。
【0029】
また、活性炭の原料としては、木粉、椰子殻等の植物系、無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭又は石炭系、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂系等のものを用いることができるが、椰子殻炭や石炭が好適である。これらの活性炭原料は、例えば固定床、移動床、流動床等で賦活化される。賦活化は、例えば水蒸気、塩素、塩化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素等を用いるガス賦活の他、アルカリ、酸、塩化亜鉛等を用いる薬品賦活等いずれのものでもよい。さらに、活性炭の形状としては、粉末状、破砕状のものが好適である。
【0030】
前記多孔質粒子への電解質錯体の添着方法としては、例えば、噴霧含浸法(常温下で噴霧器、散布器を用いて薬品を多孔質粒子に散布するか、窒素等のキャリアガスを用いて噴霧する)、浸漬法(常温下で薬品中に多孔質粒子を浸漬する)等がある。
【0031】
前記多孔質粒子に対する電解質錯体の付着割合は、特に制限されず、フィルタの用途などにより適宜決定される。例えば、ヨウ素およびヨウ化カリウムの活性炭への付着量は、活性炭無水重量当たり、ヨウ素が1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、ヨウ化カリが1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0032】
前記「活性炭無水重量」は、活性炭を乾燥させて水を除去した重量である。例えば、「JIS K 1474 活性炭試験方法」にある乾燥減量の測定において、115℃(±5℃)に保った恒温乾燥機中で3時間乾燥させるとある。本発明もそのようにして乾燥させて秤量したものを「活性炭無水重量」としてもよいし、若しくは予め乾燥減量を測定し、wet品を秤量して、これを換算して「活性炭無水重量」としてもよい。
【0033】
多孔性粒子を多孔性シートに付着させる方法としては、例えば、多孔性粒子とバインダを配合した加工液に、多孔性シートを浸漬し、その後乾燥させる方法がある。
【0034】
前記加工液全体に対し、多孔質粒子の割合は、例えば、10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%であり、バインダの割合は、例えば、3〜15質量%、好ましくは5〜10質量%である。前記加工液には、分散剤等のその他の成分を配合してもよい。前記分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸高分子界面活性剤があり、前記加工液全体に対する配合割合は、例えば、0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。前記加工液の溶媒は、例えば、水等である。また、多孔性粒子の多孔性シートへの付着割合は、特に制限されず、例えば、30〜300g/m2、好ましくは50〜150g/m2である。
【0035】
このようにして、本発明の機能性フィルタ濾材が製造できるが、本発明はこの製造方法に制限されず、その他の方法により製造してもよい。
【0036】
本発明のフィルタ濾材の性能は、フィルタのグレードにより適宜決定される。以下に、各フィルタグレード毎に、フィルタ濾材の性能の一例を示す。
(ULPA)
粉塵捕集率 :99.999%以上
初期圧力損失:245Pa以上
(HEPA)
粉塵捕集率 :99.97%以上
初期圧力損失:150〜245Pa
(中性能フィルタ)
粉塵捕集率 :65〜98%
初期圧力損失:70〜150Pa
粉塵保持容量:100〜600g/unit
【0037】
つぎに、本発明の機能性フィルタは、前記フィルタ濾材を所定形状の枠体に、接着剤若しくは密閉剤などを用いて装着することにより製造できる。フィルタ濾材の形状は、特に制限されず、シート状、プリーツ状、ハニカム状、コルゲート状または円筒状等であってもよい。この抗菌フィルタは、空気清浄装置や送風機内蔵形空気清浄機等の通風路の適所に設置することができる。なお、本発明の機能性フィルタは、プレフィルタとしても使用できる。
【0038】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。
【0039】
(実施例1)
以下のようして、電解質錯体を活性炭に付着して機能性活性炭を製造し、これをバインダーで不織布に付着させた。
【0040】
(機能性活性炭の製造)
蒸留水64.8gにヨウ化カリウム64.0gを加えたヨウ化カリウム水溶液に、ヨウ素41.6gを溶解して電解質錯体を含む水溶液を調製した。また、BET比表面積1540m2 /g,平均細孔径1.88nm(18.8オングストローム),細孔容積0.73cm3/g,粒子径0.05〜0.15mmの粉末状椰子殻活性炭200gを2リットル容量の回転容器に入れ、卓上ミキサーで攪拌(30〜100rpm)しながら、先に調整した水溶液の全量を窒素気流下で噴霧することによって機能性活性炭を得た。
【0041】
(バインダの製造)
攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、イオン交換水240g、スチレンスルホン酸ナトリウム(商品名スピノマーNaSS、東ソー(株)製)1.5g、ラウリル硫酸ナトリウム1gを入れ、70℃で加熱溶解した。容器を窒素置換した後80℃に昇温し、その温度を維持しながら2エチルヘキシルアクリレート360g、アクリロニトリル40g、スチレンモノマー75g、メタクリル酸10gの混和物、イオン交換水160gにスピノマーNaSS3g、ラウリル硫酸ナトリウム1g、アクリルアミド6gを溶解した水溶液、3%過硫酸カリウム水溶液70gを4時間で連続的に添加し乳化重合を行なった後、アンモニア水で中和した。得られた共重合体水性エマルジョンは、固形分約50%、pH8.0、粘度約600mPa・s(25℃、30rpm)の乳白色エマルジョンであり、共重合体のガラス転移温度(Tg)は−42℃であった。
【0042】
(不織布の製造)
6.7dtex×51mmの熱融着性ポリエステル繊維80%と16.7dtex×51mmのポリエステル繊維とを目付85g/m2になるように混綿して繊維ウェブを形成した後、150℃にてカレンダー加工を施して、厚さ0.5mmのサーマルボンド不織布を作製した。
【0043】
(フィルタ濾材の製造)
前記サーマルボンド不織布を、下記配合割合で混合分散した加工剤液(濃度30質量%)に、固形分付着量が67.3g/m2になるように浸漬加工した後、乾燥(100℃×10分間)してフィルタ濾材を得た。
【0044】
【0045】
(実施例2)
16.7dtex×51mmの6.6ナイロン繊維30%と16.7dtex×51mmのポリエステル繊維とを混綿して目付130g/m2の繊維ウェブを形成した。続いて、上記繊維ウェブに繊維結合剤(アクリル酸エステル系樹脂)を固形分付着量が100g/m2になるようにスプレー加工し、150℃×10分間に乾燥して厚さ13mm、総目付230g/m2のレジンボンド不織布を作製した。このレジンボンド不織布を、実施例1と同様の加工剤液に、加工剤固形分が109.4g/m2になるように浸漬加工した後、乾燥(100℃×10分間)してフィルタ濾材を得た。
【0046】
このようにして得られた実施例1および実施例2の各フィルタについて、殺菌性能の評価試験を、湿潤環境下と室内に近い環境下で行なった。湿潤環境の評価方法はシェークフラスコ法によった。
【0047】
(湿潤環境下の殺菌性能評価)
200mlねじ付フラスコに生理食塩水40mlを秤量してオートクレーブ滅菌後、滅菌したフラスコに約5mm角に裁断した試料A,B,C,Dを0.5g秤量して夫々投入した。なお、試料Aは実施例1の濾材、試料Bは実施例2の濾材、試料Cは実施例1の加工剤液無添加の濾材(比較例1)、試料Dは実施例2の加工剤液無添加の濾材(比較例2)である。
【0048】
次に、大腸菌及びMRSA(黄色ブドウ球菌)の懸濁液を添加し、30℃、24時間振とう培養し、培養開始前と24時間培養後の生菌数を測定した。この結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、実施例1および2の濾材は、殺菌性能を有することが分かる。
【0051】
(室内環境の殺菌性能評価)
MRSAをトリプチケースソイ寒天培地に35℃、24時間培養し、滅菌生理食塩水に約109CFU/mlの濃度になるように懸濁し、これを滅菌ガーゼでろ過し、ろ液を医療用噴霧器で空気箱中へ噴霧した。この空気を上記試料A,B,C,D(3×12cm)に通過させて試料表面に細菌を付着させ、温度25℃、湿度55±5%の条件下で、1時間及び24時間保存した。
【0052】
保存後、試料A,B,C,Dに付着した細菌を、20mlのSCDLPブイヨン培地に取出し、これを滅菌生理食塩水で10倍希釈液を作製し、その1mlを標準寒天培地に混合して混釈平板培地を作製した。そして、この培地を、35℃×48時間培養後、発生したコロニー数を計数し、試料A,B,C,Dの3×4cm当たりの生菌数を算出した。その結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2から明らかなように、実施例1および2の濾材は、実際の使用環境下においても殺菌、滅菌効果を十分に示すことが確認できた。この結果と前記結果とから、本発明のフィルタ濾材は実用化に適するといえる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフィルタ濾材は、簡単な構成であり、かつ全体的に抗菌性を発揮できる。したがって、本発明のフィルタ濾材は、捕捉した菌が増殖することが防止でき、しかも低コストで製造可能である。また、本発明のフィルタ濾材は、水を媒介にしてヨウ素と微生物が接触するため、抗菌性能に優れ、しかも脱臭等の他の機能も備える。したがって、本発明のフィルタ濾材を用いたフィルタによれば、清浄度が高い空気を長期間供給することが可能となる。
Claims (8)
- 集塵機能を有する多孔質シートの表面および細孔内に多孔質粒子が付着したフィルタ濾材であって、前記多孔質粒子の表面および細孔内には、ヨウ素が電解質錯体の形態で、かつヨウ素およびヨウ化カリウムの多孔質粒子に対する付着量がそれぞれ1〜40重量%となるように付着しており、該多孔質粒子は、多孔質シートにおいて50〜150g/m 2 の付着量で付着し、前記電解質錯体は、水分に触れるとヨウ素を溶出する、抗菌性フィルタ濾材。
- 多孔質シートの表面および細孔内に、バインダにより多孔質粒子が付着している、請求項1記載のフィルタ濾材。
- バインダが、反応性乳化剤を用いて得られる共重合体水性エマルジョンであって、該共重合体が、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル共重合体およびエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1または2記載のフィルタ濾材。
- 多孔質シートが、不織布またはウレタンフォームシートである、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ濾材。
- 電解質錯体が、ヨウ化カリウム水溶液にヨウ素を溶解して得られる、請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ濾材。
- 電解質錯体が三ヨウ化カリウムである、請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ濾材。
- 多孔質粒子が活性炭である、請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルタ濾材。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ濾材が枠体内部に配置されてなる、抗菌性フィルタ。
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