JP2016108286A - 抗菌剤 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、モンモリロナイト及び合成アルミノケイ酸亜鉛とからなる粒状物の表面に、銀化合物や銅化合物を添着させた抗菌性消臭剤が提案されている。
しかしながら、銀は、非常に高価であるため、これを抗菌性成分として含む剤は、コスト的に、その使用量が限定されてしまう問題がある。また、銅は、コスト的な問題はないが、青等に着色するという問題があり、その用途が限定されるという問題がある。
これに対して、亜鉛は、コスト的な問題はなく、また着色の問題もないので、抗菌剤としての分野で着目されており、その研究開発も進められている。
しかしながら、この文献で提案されている亜鉛含有の抗菌性ケイ酸アルミニウム組成物は、抗菌性を有する亜鉛の量がかなり制限されてしまうため、十分な亜鉛量を確保することができず、結局、抗菌性がかなり不満足なものとなってしまうという問題がある。
しかしながら、かかる亜鉛化合物も、その抗菌性は、さほど高くなく、さらなる抗菌性の向上が求められている。
mSiO2・nZnO・Al2O3 ・・・(1)
式中、mは0.08〜80の数であり、
nは0.5〜65の数である、
で表されるモル組成を有しており、且つ100m2/g以上のBET比表面積と、0.2〜1.0cm3/gの細孔容積を有している低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子からなることを特徴とする抗菌剤が提供される。
(1)前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、比圧0.75、温度25℃での飽和水蒸気吸着率が15質量%以上であること、
(2)前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、比圧0.20、温度25℃での飽和水蒸気吸着率が5質量%以上であること、
(3)前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、XRD分析において、面間隔6.40〜8.40Åの領域に回折ピークを有していないが、面間隔2.56〜2.71Åの領域に回折ピークを示すこと、
が好適である。
また、この抗菌剤は、従来の亜鉛系抗菌剤に比して高い抗菌性を示す。例えば、亜鉛華(酸化亜鉛)に比して高い抗菌性を示すばかりか、酸性のアルミニウム塩と亜鉛化合物(例えばZnCl2)とケイ酸アルカリとを中和して得られるZn含有ケイ酸アルミニウム組成物(例えば特許文献2の実施例4参照)や、SiO2成分、ZnO成分及びAl2O3成分を含む非晶質シリカ−含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛(特許文献3参照)と比較しても高い抗菌性を示す。
さらに、この抗菌剤は、ZnO等と比較して、屈折率がポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂に近い屈折率を示すという利点がある。即ち、熱可塑性樹脂に配合したとき、ZnOなどの酸化物では白濁してしまうが、本発明の抗菌剤では、その透明性を維持できる。
本発明の抗菌剤は、低結晶性のシリカ亜鉛アルミニウム複合粒子からなるが、この複合粒子は、Si、Zn及びAlの三成分酸化物基準で表して、下記式(1):
mSiO2・nZnO・Al2O3 ・・・(1)
式中、mは0.08〜80、好ましくは1〜25の数であり、
nは0.5〜65、好ましくは1〜15の数である、
で表されるモル組成を有している。
さらに、SiO2量を示すmの値が、上記範囲よりも大きいと、この複合粒子中のZnO成分がSiO2成分で覆われてしまい、表面に露出しているZnO成分量が少なくなる結果として、抗菌性の低下を生じてしまう。また、mの値が上記範囲よりも小さい場合にも、上記3つの成分のバランスが崩れ(例えばAl成分の増大)、十分な複合化が困難となり、大きなBET比表面積や大きな細孔容積を得ることができず、これに起因して、やはり抗菌性が低下してしまう。
例えば、上記三成分を単に混合したに過ぎない混合物では、各成分が複合化していないため、そのBET比表面積や細孔容積は、かなり小さく、本発明のような優れた抗菌性は示さない。
本発明では、低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子が吸着により粒子内に水分を保有しており、これにより、ZnOの抗菌性が如何なく発揮されることとなる。例えば、ZnO単独では、水中では抗菌性を如何なく発揮するが、大気中では水分に対する吸着性を示さず、水分を保有できないため、本発明ほどの抗菌性は示さないこととなる。このことは、後述する実施例にも明確に示されている。
このような低レベルの結晶化は、XRDにより確認することができ、この複合粒子を、XRD分析に供したとき、面間隔6.40〜8.40Åの領域に回折ピークを有していないが、面間隔2.56〜2.71Åの領域に回折ピークを示すことから判る。
面間隔dx(Å) 相対強度(I/I0)
7.00 100
3.52 70
2.63 30
2.48 20
2.36 20
2.25 10
2.12 10
1.99 10
1.76 10
1.65 10
1.53 20
一方、本発明のシリカ亜鉛アルミニウム複合粒子(実施例1)は、図1に示すX線回折像を示す。このX線回折像では、上記のフライポンタイトに類似の回折ピークを示し、例えば、面間隔6.40〜8.40Åの領域には回折ピークを有していないが、面間隔2.56〜2.71Åの領域には、上記の面間隔d=2.63Åに対応するルーズな回折ピークが存在している。
このことから、本発明のシリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、基本二層構造のC軸方向への積み重ねはないものの、低度に結晶化されており、フライポンタイトに類似の結晶構造がルーズに形成されていることが判る。
上記でも簡単に述べたように、上述した低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、合成フライポンタイトに類似する方法によって製造される。
具体的には、Si、Zn及びAlの三成分酸化物基準で表して、前記式(1)で示されるモル組成を有するように、ケイ酸ソーダ等の水溶性ケイ酸塩(SiO2源)、硫酸亜鉛等の水溶性亜鉛塩(ZnO源)及びアルミン酸ソーダ(Al2O3源)を、水の存在下に複分解反応させ、生成する沈殿をろ過し、水洗し、乾燥することにより、低結晶性のシリカ亜鉛アルミニウム複合体を得ることができる。
複分解による反応は、50℃以下の低い温度で行われる。この温度が高いと、結晶化が進行してしまい、C軸方向に積み重ねられた結晶構造が生成し、この結果、高い抗菌性を有する低結晶性のシリカ亜鉛アルミニウム複合粒子を得ることができなくなってしまう。
尚、上記の乾燥は、熱風乾燥等により行われるが、一般に、過度の高温での乾燥を避けることが望ましく、例えば350℃以上での加熱は避けるのがよい。即ち、結晶化が進行してしまうからである。
例えば、家電製品、台所用品、トイレタリー、玩具、紙製品、皮革製品、文房具、建材、住宅用品、包装体等に抗菌性を付与するために使用される。特に、樹脂に配合した場合には、その透明性を損なうことがないので、樹脂フィルム等の用途にも好適に使用することができる。
尚、以下の実験に用いた各種の測定方法は次の通りである。
Si、Alの測定はJIS.M.8853に、ZnはJIS.K.1410に準拠して測定した。
リガク社製ultima4を用いて、Cu−Kαにて下記の条件でX線回折測定を行った。
ターゲット:Cu
フィルター:湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器:SC
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
計数時間:0.6sec/step
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
Micromeritics社製TriStarII 3020を用いて窒素吸着法にて測定を行った。比表面積は比圧が0.05から0.20の吸着側窒素吸着等温線からBET法で解析した。細孔容積は、BJH法を用いて細孔直径1.7nmから300nmまでの窒素脱離量から求めた。
Malvern社製Mastersizer 3000を用いてレーザー回折・散乱法による測定を行った。分散媒として水を使用し、粒子屈折率1.50、分散媒屈折率1.33、光散乱モデルをMie理論で解析した。
日本ベル製ベルソープMAXを用いて25℃における比圧0.20および0.75の水蒸気吸着率(質量%)を測定した。
日本ポリプロ製ポリプロピレンペレット(ノバテックPP)に下に記した実施例1、比較例1、比較例2を表2に示す添加率で添加し、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて230℃で混練し、チップ状に裁断することで抗菌剤添加ポリプロピレンペレットを得た。これの一部を650℃で焼成してポリプロピレンを燃焼除去し、各試料の実添加率およびZnO濃度を求め、実施例1よりもZnO濃度が高い試料については実施例1と同等のZnO濃度となるように日本ポリプロ製ポリプロピレンペレット(ノバテックPP)を添加して希釈混合した。得られた抗菌剤添加ポリプロピレンペレットは射出成型機を用いて縦4cm×横4cm×厚さ0.2cmのプレートに加工した。このプレートに直径2cmの金型を250℃に熱して押し当て、深さ約0.5mmの溝を成型することで下記抗菌試験時の菌液溜とし、これを抗菌試験用プレートとした。
ウェット雰囲気およびドライ雰囲気の二つの条件で抗菌試験を行った。ウェット雰囲気の抗菌試験はJIS.Z.2801に準じて行った。ドライ雰囲気の抗菌試験は、JIS.Z.2801を参考に、試験菌液の生菌数は107〜108/cm3とし、菌液の保存期間中は被覆ポリエチレン(PE)フィルムを載せずに乾燥剤を入れたデシケータに静置して35℃、24時間保存し、菌液は試験開始から6時間以内に乾くようにして行った。
3号ケイ酸ソーダ(SiO2:22.9%,Na2O:7.3%)600gを水に溶かして全量を1Lとし、これをA液とした。又、酸化亜鉛100gと75%硫酸100cm3を水に溶かして全量を1Lとし、これをB液とした。さらに、アルミン酸ソーダ(Al2O3:23.8%、Na2O:19.2%)105gと49%水酸化ナトリウム33gを水に溶かして全量を0.5Lとし、これをC液とした。10Lのビーカーに水2Lを入れ、撹拌下液温を35℃に保ちつつ、A液とB液とC液を同時に注加した。以上の注加反応中に49%水酸化ナトリウム6.4gを添加した。
さらに撹拌を続け、20時間熟成した後、反応液をろ過、水洗し、140℃で乾燥した。得られた乾燥ケーキを粉砕し、平均粒子径2.1μmの低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子を得た。
市販品の酸化亜鉛を使用した。
特願2013−160665の実施例1に従って非晶質シリカ亜鉛を得た。
Claims (4)
- Si、Zn及びAlの三成分酸化物基準で表して、下記式(1):
mSiO2・nZnO・Al2O3 ・・・(1)
式中、mは0.08〜80の数であり、
nは0.5〜65の数である、
で表されるモル組成を有しており、且つ100m2/g以上のBET比表面積と、0.2〜1.0cm3/gの細孔容積を有している低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子からなることを特徴とする抗菌剤。 - 前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、比圧0.75、温度25℃での飽和水蒸気吸着率が15質量%以上である請求項1に記載の抗菌剤。
- 前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、比圧0.20、温度25℃での飽和水蒸気吸着率が5質量%以上である請求項1または2に記載の抗菌剤。
- 前記低結晶性シリカ亜鉛アルミニウム複合粒子は、XRD分析において、面間隔6.40〜8.40Åの領域に回折ピークを有していないが、面間隔2.56〜2.71Åの領域に回折ピークを示す請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌剤。
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