JP6647676B2 - ストロンチウムイオン吸着剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
ストロンチウムイオン吸着剤中に、カリウムKとマンガンMnがKxMn(0.3≦x≦0.7)で表される割合で存在し、
600℃の温度で加熱してもホランダイト型トンネル構造に変化しないことを特徴とするストロンチウムイオン吸着剤が提供される。
(A)前記マンガン酸化物は、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.2〜13.2度、24〜26度及び35〜38度の領域に、前記層状結晶構造に特有の回折ピークを示すこと。
(F)前記式(1)及び(2)において、xが、0.35≦x≦0.6を満足する数であること。
(G)層間内にカリウムイオンを含む層状結晶構造を有するマンガン酸化物として、K2Mn4O8層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいること。
(H)600℃の温度で加熱しても、K2Mn8O16トンネル構造へ変化しないこと。
(I)ストロンチウムイオン吸着量が、0.78mg/g以上であること。
(L)前記層間金属源化合物として炭酸カリウムを使用し、且つ、前記マンガン源化合物として炭酸マンガンを使用すること。
(M)得られた混合物を350〜500℃の温度で焼成すること。
尚、本発明のSr吸着剤は、製造時から製造直後にかけては層間に水分子を実質的に有さないので、上述の通り層間に多くのカリウムイオンを有することができるのである。
本発明のストロンチウムイオン吸着剤(以下、単に「Sr吸着剤」と略すことがある)は、マンガン焼成物からなり、層状結晶構造(以下、単に「層状構造」と略すことがある)を有し、層間にカリウムイオン(以下、「Kイオン」と略すことがある)が存在しているマンガン酸化物を含んでいる。
このような層状構造を有する代表的な物質は、K2Mn4O8、より詳しくは(K2){Mn(III)2Mn(IV)2}O8で表される組成を有している。かかる層状構造の存在は、XRDにより、(001)面に由来する2θ=12.2度近辺の回折ピークが発現していることから確認することができ、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.2〜13.2度、24〜26度及び35〜38度の領域に、該層状構造に特有の回折ピークを示すことから確認できる。このような層状構造においては、Mn原子の一部が他の金属原子で置換されてもその層状構造が維持されることがある。この場合、層状構造の組成は、K2TαMn4―αO8(T:他の金属、α:0より大きく4より小さい数)で表される。
例えば、Srイオンの有効イオン半径は1.16Åであるのに対し、Kイオンの有効イオン半径は1.38Åであり、Srイオンの有効イオン半径と同程度である。
また、層間にKイオンが存在している場合、(001)面の面間隔は、6.9〜7.2Å程度である。この面間隔は、水分子の大きさにも近いため、層間に水分子が侵入することができ、これにより、この面間隔はわずかに増大する(7.0〜7.3Å程度)。
但し、トンネル構造を有するマンガン酸化物が示すSrイオンに対する選択吸着性は、層状構造を有するマンガン酸化物ほどではない。トンネル内へのSrイオンの出入りは、層間に比して制限されるからである。
(1) KxTyMn1−y
式中、Tは多価金属を示し、
x及びyはそれぞれ0.25≦x≦1、0≦y≦0.45を満足する数である。
(2) KXLiZMn1−Z
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ0.25≦x≦1、0<z≦0.33を満足する数である。
Ni、CuおよびMgの中では、Sr吸着性の点で、NiまたはMgが特に好適であり、Niが最適である。これらの金属で置換されたSr吸着剤は、置換の有無以外同じ条件で合成される未置換型Sr吸着剤と同等乃至それ以上のSr吸着性を獲得できる。更に、これらの金属で置換されたSr吸着剤であって合成時の焼成温度が500〜600℃のSr吸着剤は、本発明のSr吸着剤の中で特に優れたSr吸着性を示す。
Ni置換型の場合、少量置換とすることで、Sr吸着性が特に向上し、しかも、Sr吸着性が維持されることが実験的にわかっている。具体的には、上記式(1)において0.1≦y≦0.3、特に0.1≦y≦0.2が好ましい。
このタイプのSr吸着剤は、前記式(1)においてy=0に相当する金属原子組成を有する焼成物からなる。即ち、結晶骨格中のMnサイトは、他の金属(例えば多価金属TやLi原子)で置換されたサイトを含んでいないMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物を含む焼成物の組成は、下記式(1a)で表される。
(1a) KXMnO2+q
式中、xは、前記式(1)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプのSr吸着剤は、前記式(1)において、y>0である金属原子組成を有するものであり、Mnの結晶骨格中のMnサイトの一部が、前述した多価金属Tで置換されているMn酸化物を含む焼成物からなる。このようなMn酸化物を含む焼成物の組成は、例えば下記式(1b)で表される。
(1b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、前記式(1)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、前記式(1a)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプのSr吸着剤は、前記式(2)に相当する金属原子組成を有するマンガン酸化物を含む焼成物からなる。このような焼成物の組成は、下記式(2a)で表される。
(2a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、x及びzは、前記式(2)と同様、0.25≦x≦1及び
0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、前記式(1a)及び(1b)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
即ち、かかる式で表されるSr吸着剤は、結晶骨格中のMnサイトの一部がリチウム(Li)で置換されている結晶構造を有するマンガン酸化物を含むものである。この場合、Liは、その半径がMnに近いため、後述する焼成によって、層間やトンネル内にはほとんど導入されず、MnO6八面体のMnサイトの一部にMnと置換して導入されることとなる。
本発明のSr吸着剤において、最も高いSr吸着性を示すものは、層間にKイオンが存在している層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいるものである。トンネル結晶構造を有するMn酸化物のSr吸着性は、層状結晶構造のマンガン酸化物が示すほどではない。
従って、本発明のSr吸着剤においては、トンネル結晶構造のマンガン酸化物の含有量が少ない程、より高いSr吸着性を示す。このため、前述した式(1)或いは式(2)(或いは式(1a)、(1b)又は(2a))中のxの値が0.25以上であることが好ましく、例えば、0.3≦x≦0.7がより好ましく、0.35≦x≦0.6が特に好ましく、0.35≦x≦0.55が最も好ましい。前述したxの範囲(0.25≦x≦1)の中で、xの値が小さい程、K/Mn(Mn置換型ではK/(T+Mn)或いはK/(Li+Mn))が0.25のモル組成を有するトンネル結晶構造を多く含んでいることを意味しているからである。
本発明のSr吸着剤は、層間金属源化合物とMn源化合物とを固相で反応させることにより製造され、結晶骨格中のMnサイトの一部を多価金属T或いはLi原子で置換する場合には、上記の層間金属源化合物及びMn源化合物と共に、多価金属源化合物或いはLi源化合物が使用される。
さらに、Li源化合物としては、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム等のLi塩;酸化リチウム等のLi酸化物;及び水酸化リチウム等のLi水酸化物;好適には、炭酸リチウムが使用される。
即ち、上記の原料化合物の仕込み比は、各式におけるxの値が0.25〜1.00の範囲となるように設定されるが、層状結晶構造のマンガン酸化物を多く含み、トンネル結晶構造の生成が抑制された酸化物を得るためには、xの値が、0.30〜0.70、より好ましくは0.35〜0.60、特に好ましくは0.35〜0.55の範囲となるように、上記の原料化合物の仕込み比が調整され、これにより、前述したX線回折ピークのピーク強度比α/βを所定の範囲とすることが可能となる。
以下、このマンガン酸化物のタイプに応じた製造条件を説明する。
このタイプのSr吸着剤を構成する、マンガン酸化物を含む焼成物は、前述した式(1a)、即ち、
(1a) KXMnO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、
より好ましくは0.35≦x≦0.6、特に好ましくは0.35
≦x≦0.55)を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される。
このタイプのSr吸着剤の製造では、上述したように、層間金属源化合物とMn源化合物との仕込み量を、上記式(1a)のxの値が上記範囲を満足するように設定して固相で反応が行われるが、このときの焼成温度は、350℃以上、特に400℃以上が好ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が十分な量で生成しない虞がある。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
尚、後述の実施例では、焼成温度400〜600℃でカリウムを含むマンガン酸化物が得られることが確認されている。焼成温度700〜800℃の場合については直接的には確認されていないが、カリウムの代わりにナトリウムを含むマンガン酸化物の場合、400〜600℃でも700〜800℃でも得られることが本出願人による別の出願で確認されていることから(PCT/JP2016/080081 例えば図3参照)、カリウムを含むマンガン酸化物も焼成温度700〜800℃で得られることは必至である。
また、焼成は、少なくとも原料に用いた層間金属源化合物やMn源化合物のX線回折ピークが消失し且つ層状結晶構造に特有のX線回折ピークが発現するまで行われ、焼成温度によっても異なるが、通常、2〜8時間程度である。
このタイプのSr吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(1b)、即ち、
(1b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、
より好ましくは0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される。
この場合の焼成温度は、多価金属の種類等に応じて適宜決定すればよいが、一般的には350℃以上であり、400℃以上が好適であり、500℃以上がより好適である。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、特に600℃以下が好ましい。
即ち、かかるSr吸着剤においても、K/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。このことは、後述の実験とともに、本出願人による別の出願(PCT/JP2016/080081)のNaに関する実験(例えば実験1(2)(3)や実験4)から明らかである。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を所定の範囲に調整するために、式(1b)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高いストロンチウムイオン吸着性を得ることができる。
さらに、この場合も、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
このタイプのSr吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(2a)、即ち、
(2a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、
より好ましくは0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
zは、0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される。
更に、この場合においても、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
更に、TEM装置で観察すると、本発明のSr吸着剤は、バーネサイト型マンガン酸化物と異なる晶構造を有することもわかっている。
以下の手順で未置換型のマンガン酸化物を固相法により合成した。
炭酸カリウム(K2CO3、和光純薬工業株式会社製、試薬番号:162−03495、分子量138.21、試薬純度:99.5%)の粉末と、炭酸マンガン(MnCO3・nH2O、和光純薬工業株式会社製、試薬番号:136−00695、分子量:114.95、試薬純度:88%)の粉末とを以下の割合で混合した。
K/Mn(モル)=0.2;炭酸カリウム0.4861g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.3;炭酸カリウム0.7292g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.4;炭酸カリウム0.9722g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.5;炭酸カリウム1.215g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.6;炭酸カリウム1.457g、
炭酸マンガン4.354g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで300rpm・2h混合した。得られた試料を乾燥した後、乳鉢ですりつぶし、空気中温度400℃で4時間焼成して焼成物を得た。
K/Mn(モル)=0.2; K0.2Mn(IV)O2.1
K/Mn(モル)=0.3; K0.3Mn(IV)O2.15
K/Mn(モル)=0.4; K0.4Mn(IV)O2.2
K/Mn(モル)=0.5; K0.5Mn(IV)O2.25
K/Mn(モル)=0.6; K0.6Mn(IV)O2.3
このXRDの結果から、α/βを算出したところ、以下の通りであった。
K/Mn(モル)=0.2;
α/β=1/0
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)が生成したが、層状構造(K2Mn4O8)は生成しなかった。
K/Mn(モル)=0.3;
α/β=2.2
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)と層状構造(K2Mn4O8)が両方生成した。
K/Mn(モル)=0.4;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)のみ生成した。
K/Mn(モル)=0.5;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)のみ生成した。
K/Mn(モル)=0.6;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成したが、少量の未知の不純物Aも生成した。
尚、ここで言う「層状構造のK2Mn4O8」や「トンネル構造のK2Mn8O16」とは、理論上このような組成を有する層状構造を意味する。現実には、合成条件によって、欠陥が存在していたり、3価と4価マンガンの割合が変動する等するため、実際の組成は理論上の組成と少し違っている場合がある。以下、実験2,3,7〜10においても同様である。
焼成温度を500℃とし、以下の割合で炭酸カリウムと炭酸マンガンとを混合した点以外は、実験1と同様にして、K/Mn(モル)=0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0の焼成物(合成物)を得た。
K/Mn(モル)=0.2;炭酸カリウム0.4861g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.3;炭酸カリウム0.7292g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.4;炭酸カリウム0.9716g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.5;炭酸カリウム1.214g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.6;炭酸カリウム1.457g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.7;炭酸カリウム1.700g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.8;炭酸カリウム1.666g、
炭酸マンガン3.732g
K/Mn(モル)=0.9;炭酸カリウム1.874g、
炭酸マンガン3.732g
K/Mn(モル)=1.0;炭酸カリウム2.082g、
炭酸マンガン3.732g
このXRDの結果から、α/βを算出したところ、以下の通りであった。
K/Mn(モル)=0.2;
α/β=1/0
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)が生成し、層状構造(K2Mn4O8)は生成しなかった。
K/Mn(モル)=0.3;
α/β=8.4
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)と層状構造(K2Mn4O8)が両方生成した。
K/Mn(モル)=0.4;
α/β=0.45
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。
K/Mn(モル)=0.5;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)のみ生成した。
K/Mn(モル)=0.6;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=0.7;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=0.8;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=0.9;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=1.0;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
焼成温度を600℃とし、以下の割合で炭酸カリウムと炭酸マンガンとを混合した点以外は、実験1と同様にして、K/Mn(モル)=0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0の焼成物(合成物)を得た。
K/Mn(モル)=0.2;炭酸カリウム0.4861g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.3;炭酸カリウム0.7292g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.4;炭酸カリウム0.9716g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.5;炭酸カリウム1.214g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.6;炭酸カリウム1.457g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.7;炭酸カリウム1.700g、
炭酸マンガン4.354g
K/Mn(モル)=0.8;炭酸カリウム1.666g、
炭酸マンガン3.732g
K/Mn(モル)=0.9;炭酸カリウム1.874g、
炭酸マンガン3.732g
K/Mn(モル)=1.0;炭酸カリウム2.082g、
炭酸マンガン3.732g
このXRDの結果から、α/βを算出したところ、以下の通りであった。
K/Mn(モル)=0.2;
α/β=1/0
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)が生成した。層状構造(K2Mn4O8)は生成しなかった。
K/Mn(モル)=0.3;
α/β=7.0
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)と層状構造(K2Mn4O8)が両方生成した。
K/Mn(モル)=0.4;
α/β=0.43
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。
K/Mn(モル)=0.5;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)のみ生成した。
K/Mn(モル)=0.6;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=0.7;
α/β=0/1
主に層状構造(K2Mn4O8)が生成した。少量の不純物Aも生成した。
K/Mn(モル)=0.8;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)と不純物Aが生成した。
K/Mn(モル)=0.9;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)と不純物Aが生成した。
K/Mn(モル)=1.0;
α/β=0/1
層状構造(K2Mn4O8)と不純物Aが生成した。
(実験4−1:Sr吸着量)
上記実験1〜3で得られた未置換型のマンガン酸化物について、以下の試験を行い、Srイオン吸着性を評価し、更に分配係数Kdを求めた。
Na+濃度:10800ppm
Ca2+濃度:412ppm
K+濃度:400ppm
Mg2+濃度:1280ppm
この標準海水にSrイオンを添加し、Srイオン濃度を10ppmとした。このSr含有標準海水50mlに、試料のマンガン酸化物0.05gを加え、スターラーで2日間撹拌して、吸着処理を行った。
吸着量=ストロンチウム減少量[mg]/吸着剤重量[g]
次式に従い分配係数Kdを求めた。分配係数Kdは、吸着剤の選択性を示す指標である。結果を下記表1〜3に示す。
Kd=((C0−Ct)/Ct)×V/m
C0:吸着処理前の海水のストロンチウム濃度(ppm)
Ct:吸着処理後の海水のストロンチウム濃度(ppm)
V:吸着溶液の体積(mL)
m:吸着剤の添加量(g)
Sr吸着率(%)は、以下の式に基づき算出した。結果を下記表1〜3に示す。
Sr吸着率(%)=((C0−Ct)/C0)×100
式中、C0およびCtは、前記した通りの意味である。
上記実験4でSrイオンを吸着した後の500℃焼成未置換型Sr吸着剤(実験2のKMO)を取り出し、吸引濾過し、乾燥させた。乾燥後の吸着剤をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100、Cu−Kα)により測定した。XRD測定結果を図8に示す。図8には、(001)面に由来する2θ=12.1度での面間隔dの値が示されている。
実験2と同様にして、K/Mn(モル)=0.2、0.4、0.6、0.8、1.0の焼成物(合成物)を得た。
さらに、水洗後の試料について、上記と同様に標準海水での吸着試験により、Srイオン吸着量、分配係数KdおよびSr吸着率を測定した。結果を図10および表5に示す。
尚、水洗した試料は脱水すると、元の構造に戻ることを確認した。
(実験7−1:Co置換、KCoMO、焼成温度400℃)
下記処方により、原料混合物を調製した。
炭酸カリウム(K2CO3) 1.215g
炭酸コバルト(CoCO3) 0.991g
炭酸マンガン(MnCO3・nH2O) 3.266g
尚、本実験で使用した炭酸マンガンおよび炭酸カリウムは、実験1で使用したものと同じであった。本実験で使用した炭酸コバルトは、関東科学株式会社製CoCO3(試薬番号:07992−01、分子量:118.94、試薬純度:Coとして40〜48%)であった。試薬のCo含有量を44%と想定した場合の原料混合物におけるK/Co/Mnモル比は、0.70/0.30/1.0であった。
得られた混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで300rpm・2h混合・粉砕した。得られた試料を乾燥させて乳鉢ですり潰した後、400℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。尚、焼成物(合成物)には、実際には複数の価数のマンガン、例えば4価のマンガンと3価のマンガンが含まれる場合があるが、4価のマンガン含有量が高いため、ここでは、計算上4価のマンガンに換算した原子組成を示すものとする。以後の実験で得られる焼成物(合成物)についても同様に、全て4価のマンガンであると仮定した場合の組成を示すものとする。
K0.54Co(II)0.23Mn(IV)0.77O2.04
(x=0.54、y=0.23、q=0.04)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.996gの塩基性炭酸銅{和光純薬工業株式会社製CuCO3・Cu(OH)2・H2O(試薬番号:035−19142、分子量:239.13、試薬純度:100%(Cuとして48〜56.0%))}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。原料混合物におけるK/Cu/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53Cu(II)0.25Mn(IV)0.75O2.02
(x=0.53、y=0.25、q=0.02)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.840gの塩基性炭酸マグネシウム{和光純薬株式会社製、試薬番号:138−14445、分子量:記載なし、試薬純度:MgOとして40.0〜45.0%}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。試薬のMgO含有量を42.5%と想定した場合の原料混合物におけるK/Mg/Mnモル比は、0.70/0.35/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.52Mg(II)0.26Mn(IV)0.74O2.00
(x=0.52、y=0.26、q=0.00)
炭酸コバルト0.991gの代わりに1.045gの塩基性炭酸ニッケル(II){和光純薬工業株式会社製NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O(試薬番号:144−01035、分子量:376.18、試薬純度:記載無し)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。試薬純度を100%と想定した場合の原料混合物におけるK/Ni/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53Ni(II)0.25Mn(IV)0.75O2.02
(x=0.53、y=0.25、q=0.02)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.787gの酸化亜鉛{和光純薬工業株式会社製ZnO(試薬番号:267−00355、分子量:81.39、試薬純度:min.99.0%)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。試薬純度を100%と想定した場合の原料混合物におけるK/Zn/Mnモル比は、0.70/0.38/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.50Zn(II)0.28Mn(IV)0.72O1.97
(x=0.50、y=0.28、q=−0.03)
尚、この実験7−5で得られた焼成物(合成物)の原子組成において、qは、見かけ上マイナスの値となっているが、これは、この焼成物に4価のマンガン以外に3価のマンガン等他の価数のマンガンが含まれているところ、計算上は、マンガンが全て4価であると仮定したためである。
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.520gの水酸化アルミニウム{和光純薬工業株式会社製Al(OH)3(試薬番号:014−01925、分子量:78.00、試薬純度:記載なし)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。試薬純度を100%と想定した場合の原料混合物におけるK/Al/Mnモル比は、0.70/0.27/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.55Al(III)0.21Mn(IV)0.79O2.17
(x=0.55、y=0.21、q=0.17)
下記処方により、原料混合物を調製した。
炭酸カリウム(K2CO3) 1.215g
炭酸リチウム(Li2CO3) 0.155g
炭酸マンガン(MnCO3・nH2O) 3.701g
尚、本実験で使用した炭酸マンガンおよび炭酸カリウムは、実験1で使用したものと同じであった。本実験で使用した炭酸リチウムは、和光純薬工業株式会社製Li2CO3(試薬番号:126−01135、分子量:73.89、試薬純度:min.99.0%)であった。試薬純度を100%と想定した場合の原料混合物におけるK/Li/Mnモル比は、0.62/0.15/1.0であった。
実験7−1と同様にして焼成物を得た。得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.54Li(I)0.13Mn(IV)0.87O2.08
(x=0.54、z=0.13、q=0.08)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.700gの酸化鉄(III){和光純薬工業株式会社製、Fe2O3(試薬番号:096−04825、分子量:159.69、試薬純度:min.95.0%)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。原料混合物におけるK/Fe/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53Fe(III)0.25Mn(IV)0.75O2.14
(x=0.53、z=0.25、q=0.14)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.676gの酸化チタン(IV){和光純薬工業株式会社製TiO2(試薬番号:205−01715、分子量:79.87、試薬純度:min.98.5%)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。原料混合物におけるK/Ti/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53Ti(IV)0.25Mn(IV)0.75O2.27
(x=0.53、z=0.25、q=0.27)
炭酸コバルト0.991gの代わりに1.109gの酸化ニオブ(V){和光純薬工業株式会社製Nb2O5(試薬番号:148−05335、分子量:265.81、試薬純度:min.99.9%)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。原料混合物におけるK/Nb/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53Nb(V)0.25Mn(IV)0.75O2.39
(x=0.53、z=0.25、q=0.39)
炭酸コバルト0.991gの代わりに0.765gの酸化バナジウム(V){和光純薬工業株式会社社製V2O5(試薬番号:222−00122、分子量:181.88、試薬純度:min.99.0%)}を用いた点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。原料混合物におけるK/V/Mnモル比は、0.70/0.33/1.0であった。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりである。
K0.53V(V)0.25Mn(IV)0.75O2.39
(x=0.53、z=0.25、q=0.39)
参考のために、表6には、実験1(未置換型、焼成温度400℃)のK/Mn=0.4の吸着剤の値を併記した。
実験8−1〜実験8−11においては、焼成温度を500℃とした点以外は、それぞれ実験7−1〜実験7−11と同様の方法により、焼成物を得た。焼成物の原子組成は、いずれの金属で置換する場合も、焼成温度400℃の場合(即ち、実験7で得られる焼成物の原子組成)と略一致していた。
実験9−1〜実験9−11においては、焼成温度を600℃とした点以外は、それぞれ実験7−1〜実験7−11と同様の方法により、焼成物を得た。焼成物の原子組成は、いずれの金属で置換する場合も、焼成温度400℃の場合(即ち、実験7で得られる焼成物の原子組成)と略一致していた。
表6及び図14より、焼成温度400℃の未置換型試料の中で最もSr吸着性に優れていたK/Mn=0.4のKMO(以下、最良KMO−400℃(K/Mn=0.4)と略称することがある。)と実験7(焼成温度400℃)で得られたSr吸着剤を比べると、最良KMO−400℃(K/Mn=0.4)より優れたSr吸着率を示すSr吸着剤は無かったが、KMgMOが最良KMO−400℃(K/Mn=0.4)と同等のSr吸着率を示した。400℃は、KMOの最適合成温度であるが、第3金属置換型吸着剤の最適合成温度ではないため、吸着量が低めである。
第3金属を添加すると、第三金属がマンガンサイトの三価マンガンと置換するため、未置換型に比べてSrイオン吸着性の向上が期待されるが、第三金属の種類によってはSr吸着性が向上しないケースもあった。おそらく、金属と三価マンガンとの置換効果が低い、不純物の生成および層状構造の欠損生成等の不都合が生じており、その結果、Srイオン吸着性が向上しなかったと推察される。
実験7〜9より、本発明のSr吸着剤のうち焼成温度500℃または600℃のNi置換型が特に優れたSr吸着性を示すことがわかった。そこで、このNi置換型について詳しく検討すべく実験10を行った。具体的には、焼成温度を500℃とし、炭酸カリウムと炭酸ニッケルと炭酸マンガンとを以下の原料モル比となるように混合した点以外は、実験7−1と同様にして焼成物を得た。
K/Ni/Mnモル比=0.42/0/1.0;
炭酸カリウム1.459g
炭酸マンガン6.531g
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.1/0.9;
炭酸カリウム1.459g
炭酸ニッケル0.627g
炭酸マンガン5.878g
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.2/0.8;
炭酸カリウム1.459g
炭酸ニッケル1.254g
炭酸マンガン5.225g
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.3/0.7;
炭酸カリウム1.459g
炭酸ニッケル1.881g
炭酸マンガン4.572g
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.4/0.6;
炭酸カリウム1.459g
炭酸ニッケル2.508g
炭酸マンガン3.919g
尚、本実験で使用した炭酸カリウム、炭酸ニッケルおよび炭酸マンガンは、実験7−4
で使用したものと同じであった。
K/Ni/Mnモル比=0.42/0/1
K0.42Mn(IV)O2.21
(x=0.42、y=0、q=0.21)
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.1/0.9
K0.42Ni(II)0.1Mn(IV)0.9O2.11
(x=0.42、y=0.1、q=0.11)
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.2/0.8
K0.42Ni(II)0.2Mn(IV)0.8O2.01
(x=0.42、y=0.2、q=0.01)
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.3/0.7
K0.42Ni(II)0.3Mn(IV)0.7O1.91
(x=0.42、y=0.3、q=−0.09)
K/Ni/Mnモル比=0.42/0.4/0.6
K0.42Ni(II)0.4Mn(IV)0.6O1.81
(x=0.42、y=0.4、q=−0.19)
尚、この実験10で得られた、K/Ni/Mnモル比=0.42/0.3/0.7の焼成物(合成物)とK/Ni/Mnモル比=0.42/0.4/0.6の焼成物(合成物)の原子組成において、qは、見かけ上マイナスの値となっているが、これは、これらの焼成物に4価のマンガン以外に3価のマンガン等他の価数のマンガンが含まれているところ、計算上は、マンガンが全て4価であると仮定したためである。
本発明のSr吸着剤の構造上の特徴を確認すべく、本実験を行った。
K―バーネサイトを比較対象とし、本発明のSr吸着剤とK―バーネサイトをTG−DTA測定装置(SHIMADZU DTG−60H)を用いて、空気雰囲気下、10℃/minの昇温速度で25〜1100℃の範囲で測定した。
K―バーネサイトのTG−DTAを参照すると、80℃と170℃付近で吸熱ピークと重量減少が観測された。これは、表面の吸着水と層間の水の脱水に対応する。また、900℃付近に重量減少に伴う吸熱ピークが示されていた。
続けてKMO−500℃のTG−DTAを参照すると、400℃付近に緩やかな重量減少が見られた。しかし、上述の論文に掲載されたバーネサイト型マンガン酸化物のように470℃付近に発熱ピークは見られなかった。XRDを参照すると、500℃加熱処理後には構造変化が見られないが、600℃加熱処理後には少量のMnO2が生成したことがわかった。これは、層状構造の一部がMnO2へ変化したことを意味している。しかし、バーネサイト型マンガン酸化物と異なり、ホランダイト型トンネル構造(K2Mn8O16)化合物の生成がみられない。
更にKMO−500℃のTG−DTAを参照すると、900℃付近に吸熱ピークと重量減少が観察されている。ここで、1000℃加熱処理後のXRDを参照すると、この加熱処理によりMnO2からMn3O4への変化が生じていたことがわかる。MnO2がMn3O4へ変わる反応は、酸素ガス(O2)の放出を伴うことから、TG−DTAの900℃付近の吸熱ピークと重量減少は、この酸素ガスの放出に由来するものと推察される。
引き続きKNiMO−500℃のTG−DTAを参照すると、400℃付近に緩やかな重量減少が見られた。しかし、上述の論文に掲載されたバーネサイト型マンガン酸化物のように470℃付近に発熱ピークは見られなかった。XRDを参照すると、加熱処理温度800℃までは層状構造が変化していなかった。よって、KNiMO−500℃は、KMO−500℃と比べ、熱安定性が向上したことがわかる。また、バーネサイト型マンガン酸化物と異なり、600℃および800℃で加熱処理してもホランダイト型トンネル構造(K2Mn8O16)化合物の生成がみられない。
尚、1000℃で加熱処理した後のKNiMO−500℃のXRDを参照すると、かかる加熱処理により、一部の層状構造がMn3O4へ変化したことがわかる。
引き続きKMgMO−500℃のTG−DTAを参照すると、400℃付近で重量減少と吸熱ピークが見られた。しかし、上述の論文に掲載されたバーネサイト型マンガン酸化物のように470℃付近に発熱ピークは見られなかった。XRDを参照すると、加熱温度600℃までは層状構造が変化していなかった。よって、KMgMO−500℃は、KMO−500℃と比べ、熱安定性が向上したことがわかる。また、バーネサイト型マンガン酸化物と異なり、600℃および800℃で加熱処理してもホランダイト型トンネル構造(K2Mn8O16)化合物の生成がみられない。
尚、800℃で加熱処理した後のKMgMO−500℃のXRDを参照すると、かかる温度での加熱処理により少量のMnO2が生成したことがわかる。更に、1000℃で加熱処理した後のKMgMO−500℃のXRDを参照すると、かかる温度での加熱処理により少量のMn3O4が生成したことがわかる。
未置換/第三金属置換に関わらず、本発明のSr吸着剤は、比較対象であるバーネサイト型マンガン酸化物に比べて加熱処理に対する構造の安定性が高いことがわかった。更に、未置換型の本発明のSr吸着剤と第三金属置換型の本発明のSr吸着剤を比べると、第三金属置換型の方が、加熱処理に対する構造の安定性が高いこともわかった。バーネサイト型マンガン酸化物より高い構造安定性を有する理由は、K2Mn4O8層状構造がバーネサイト型マンガン酸化物の層状構造と異なるためであると考えられる。
更に、TEM装置により、実験11−1で用いたものと同じKMO−500℃とバーネサイト型マンガン酸化物の結晶構造を解析した。KMO−500℃のTEM写真と電子線回折パターンをそれぞれ図25に示す。バーネサイト型マンガン酸化物のTEM写真と電子線回折パターンをそれぞれ図26に示す。その結果、本発明のSr吸着剤は、バーネサイト型マンガン酸化物とは異なる電子線回折パターンを示すことがわかった。これは両者が異なる結晶構造を有することを示す。
実験10のK/Ni/Mn=0.4/0/1.0、0.4/0.1/0.9および0.4/0.2/0.8と同様にして製造したKNiMOについて、そのSr吸着速度を測定した。結果を図27に示す。Niを添加しないx=0の試料は、吸着初期の立ち上がりが遅いうえに48hの吸着率が24hの吸着率を少し下回っており、吸着速度が遅く吸着安定性が悪い。それに対してNiを添加したx=0.1,0.2の場合は、吸着速度が速く48hの吸着率の低下が見られない。特にx=0.1のときは初期段階での吸着速度が非常に速いことが分かった。従って、Niを添加すると、Sr吸着性と吸着安定性が向上し、そのNiの添加量はK0.4NiyMn4−yO2のy=0.1のときが最適合成条件であることが示唆された。
吸着剤の使用量を0.5gとした点以外は実験4と同様にして、KMO(焼成温度500℃、K/Mn=0.4)、KNiMO(焼成温度500℃、K/Ni/Mn=0.4/0.1/0.9)、従来の吸着剤であるA型ゼオライト、近年高性能のSr吸着剤として開発されたK2Ti2O5の分配係数Kdを求めた。結果を図28に示す。図28が示す通り、KNiMOおよびKMOは、A型ゼオライトとK2Ti2O5より高い分配係数Kdの値を示した。特にKNiMOは非常に高い分配係数Kdの値を示した。具体的に、KNiMOは、A型ゼオライトの約20倍、K2Ti2O5の約7倍の分配係数Kdを示した。K2Mn4O8層状構造の層間スペースが、Sr2+とほぼ同じであることから、イオンふるい効果により高いSr吸着量とSr選択吸着性が達成されたと考えられる。
Claims (8)
- 層状結晶構造を有しており、層間内にカリウムイオンが存在しているマンガン酸化物を含むストロンチウムイオン吸着剤であって、
ストロンチウムイオン吸着剤中に、カリウムKとマンガンMnがKxMn(0.3≦x≦0.7)で表される割合で存在し、
600℃の温度で加熱してもホランダイト型トンネル構造に変化しないことを特徴とするストロンチウムイオン吸着剤。 - 前記マンガン酸化物は、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.2〜13.2度、24〜26度及び35〜38度の領域に、前記層状結晶構造に特有の回折ピークを示す請求項1に記載のストロンチウムイオン吸着剤。
- 前記式において、xが、0.35≦x≦0.6を満足する数である請求項1または2に記載のストロンチウムイオン吸着剤。
- 層間内にカリウムイオンを含む層状結晶構造を有するマンガン酸化物として、K2Mn4O8層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のストロンチウムイオン吸着剤。
- Srイオン濃度10ppmの海水におけるストロンチウムイオン吸着量が、0.78mg/g以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のストロンチウムイオン吸着剤。
- 前記層間内に水分子が存在していないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のストロンチウムイオン吸着剤。
- 固相法により、カリウム塩、カリウム酸化物及びカリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物とを混合し、得られた混合物を350℃〜600℃の温度で焼成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のストロンチウムイオン吸着剤の製造方法。
- 前記層間金属源化合物として炭酸カリウムを使用し、且つ、前記マンガン源化合物として炭酸マンガンを使用する、請求項7に記載のストロンチウムイオン吸着剤の製造方法。
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