JP2020093251A - 重金属イオン吸着剤およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】海水や高塩濃度溶液中から重金属イオンを吸着する能力が高い重金属イオン吸着剤およびその製造方法を提供することである。【解決手段】本発明の重金属イオン吸着剤は、層状結晶構造を有し、層間にナトリウムイオンが存在しているマンガン酸化物を含んでいることを特徴とする。重金属として特にコバルトが有効である。【選択図】なし
Description
本発明は、重金属イオン吸着剤およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、特に海水や高塩濃度溶液中の重金属イオンを選択的に吸着する金属イオン吸着剤およびその製造方法に関する。
原子力発電所の事故初期には冷却水として大量の海水を格納容器に注入した。この汚染水中には、ストロンチウムとセシウムのような放射性物質のみならず、コバルト、ルテニウム、アンチモン、ニッケルのような放射性重金属イオンも含まれ、それらを吸着剤などにより効率よく除去することが望まれている。しかし、海水には高濃度のナトリウムイオン(Na+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、カリウムイオン(K+)が含まれている。上記のイオンは、前記重金属イオンの吸着を妨害するため、このような放射能汚染水から放射性重金属イオンを除去するには、高選択性の吸着剤が必要である。
ストロンチウム吸着剤については下記非特許文献でいくつか知られている。出願人は、特許文献1において、ストロンチウム吸着に有効なマンガン酸化物を見出した。このマンガン酸化物は層状結晶構造を有しており、その層間内に存在するナトリウムイオンがストロンチウムイオンとイオン交換することによりストロンチウムイオンに対する高い吸着性を示すことが開示されている。
上記のような汚染水は、現状では、ストロンチウムやセシウムやコバルト・ルテニウム・アンチモンなどの重金属イオンなど、放射性金属イオンをそれぞれ別々に吸着除去するために複数の吸着塔を順次通過させ、吸着除去していた。このため、それらの放射性金属イオンをより単純な設備で効率よく吸着除去できるようにするために、それらの物質に対して共通して選択的に吸着能力がある吸着剤が望ましい。すなわち、複数の放射性金属イオンを同時吸着できる吸着剤を使用すれば、汚染水処理は効率的に行え、処理コストを低減させることができる。特に、コバルトイオンは原子力発電所の事故により発生した汚染水のみならず、運転中の原発の冷却水、さらに工業排水中にも含まれるために吸着除去することが望まれる。
本発明は上記事情に鑑み、海水や高塩濃度溶液中から重金属イオンを吸着する能力が高い重金属イオン吸着剤およびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は特にコバルトイオンに対して高い吸着性を示す吸着剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前述のように特許文献1において、ストロンチウム吸着に有効な層状結晶構造を有するマンガン酸化物を見出したが、このマンガン酸化物はストロンチウムイオンのみならず、特定の重金属元素、特にCoにも特異的に優れた吸着性能を示すことを発見し、本発明に至った。すなわち、本発明によれば、層状結晶構造を有しており、層間内にナトリウムイオンが存在しているマンガン酸化物を含む重金属イオン吸着剤であり、当該重金属イオンが、Pb、Cd、Co、Hg、Ni、Sb、Ruの何れかから選択される金属の重金属イオンであり、当該マンガン酸化物が、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15〜17度、31〜34度及び35〜38度の領域に、前記層状結晶構造に特有の回折ピークを示すことを特徴とする重金属イオン吸着剤が提供される。
本発明の重金属イオン吸着剤は、以下の態様が好適である。
(A)前記重金属イオン吸着剤は、下記(1a)式で表され、
NaXMnO2+q (1a)
式中、xは、0.6≦x≦0.9を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
前記重金属イオンがCoであること。
(B)前記層状結晶構造の(001)面の面間隔は、5.55〜5 .57Åであること。
(C)Na0.7MnO2.05層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含むこと。
(A)前記重金属イオン吸着剤は、下記(1a)式で表され、
NaXMnO2+q (1a)
式中、xは、0.6≦x≦0.9を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
前記重金属イオンがCoであること。
(B)前記層状結晶構造の(001)面の面間隔は、5.55〜5 .57Åであること。
(C)Na0.7MnO2.05層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含むこと。
(D)前記重金属イオン吸着剤は、下記式(1):
(1) NaxTyMn1−yO2+q
式中、Tは、多価金属を示し、
x及びyは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.44であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、前記重金属イオンがCoまたはCdであること。
(E)前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Co、Ni、CuまたはMgであること。
(F)前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Mgであること。
(1) NaxTyMn1−yO2+q
式中、Tは、多価金属を示し、
x及びyは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.44であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、前記重金属イオンがCoまたはCdであること。
(E)前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Co、Ni、CuまたはMgであること。
(F)前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Mgであること。
(G)前記重金属イオン吸着剤は、下記式(2):
(2) NaXLiZMn1−ZO2+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、前記重金属イオンがCoまたはCdであること。
(2) NaXLiZMn1−ZO2+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、前記重金属イオンがCoまたはCdであること。
(H)上記(A)の態様の重金属イオン吸着剤の製造方法は、ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物とを混合し、得られた混合物を400℃以上、900℃未満の温度で焼成することを含むこと。
(I)上記(G)の態様の重金属イオン吸着剤の製造方法は、ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物と、多価金属塩、多価金属酸化物及び多価金属水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の多価金属源化合物を混合し、得られた混合物を400℃以上の温度で焼成することを含むこと。
(I)上記(G)の態様の重金属イオン吸着剤の製造方法は、ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物と、多価金属塩、多価金属酸化物及び多価金属水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の多価金属源化合物を混合し、得られた混合物を400℃以上の温度で焼成することを含むこと。
(J)上記(H)の態様の重金属イオン吸着剤の製造方法は、ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物と、リチウム塩、リチウム酸化物及びリチウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のリチウム源化合物を混合し、得られた混合物を400℃以上、900℃未満の温度で焼成することを含むこと。
本発明の重金属イオン吸着剤は、重金属イオン、特にコバルトまたはコバルトとカドミウムに対する選択吸着性が高く、特に海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンを有効に吸着することができる。また、この重金属イオン吸着剤は、溶媒を使用せず、Naを含む層間金属源化合物とマンガン源化合物との混合物を焼成する(即ち、固相で反応させる)ことにより製造することができるため、溶媒の除去のための負荷がなく、製造コストなどの面でも極めて優れている。
本発明の吸着剤は、本出願人の過去の出願によりストロンチウムの吸着除去に有効であることが知られているが、本発明によりコバルト、カドミウムなどの重金属イオンの吸着除去にも有効であることが見出されたので、単一の吸着剤でそれらを同時に吸着除去することができる。それゆえ、本発明の吸着剤は原子力発電所の汚染水の処理に極めて有効となり、吸着塔などの設備を簡略化することができる。
本発明の吸着剤は、本出願人の過去の出願によりストロンチウムの吸着除去に有効であることが知られているが、本発明によりコバルト、カドミウムなどの重金属イオンの吸着除去にも有効であることが見出されたので、単一の吸着剤でそれらを同時に吸着除去することができる。それゆえ、本発明の吸着剤は原子力発電所の汚染水の処理に極めて有効となり、吸着塔などの設備を簡略化することができる。
<吸着対象の重金属>
本発明の重金属吸着剤により吸着される重金属は、主に、原子力発電所から生じる汚染に含まれている重金属であり、特に、Co、Ru、Sb、Ni、Pb、Cd、Hgである。特にCo、Ru、Sbは強い放射性物質であるために、除去が要求される。本発明の
金属吸着剤により吸着除去に適している重金属は、Cd、Co、Ruである。
本発明の重金属吸着剤により吸着される重金属は、主に、原子力発電所から生じる汚染に含まれている重金属であり、特に、Co、Ru、Sb、Ni、Pb、Cd、Hgである。特にCo、Ru、Sbは強い放射性物質であるために、除去が要求される。本発明の
金属吸着剤により吸着除去に適している重金属は、Cd、Co、Ruである。
<ナトリウム含有重金属イオン吸着剤>
本発明の重金属イオン吸着剤は、層状結晶構造(以下、単に「層状構造」と略すことがある)を有し、層間にナトリウムイオンを含む結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいる。
本発明の重金属イオン吸着剤は、層状結晶構造(以下、単に「層状構造」と略すことがある)を有し、層間にナトリウムイオンを含む結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいる。
図1には、層状構造を有しており且つ層間にNaイオンが存在している上記マンガン酸化物の結晶構造が示されている。
図1から理解されるように、かかるマンガン酸化物の結晶構造は、3価または4価のMnを6つのOイオンが取り囲んだ八面体(MnO6)を有しており、このMnO6八面体が稜共有により層状に連なって八面体層を形成しており、この八面体層の層間に電荷のバランスを補う形でナトリウムイオンが存在している。
このような層状構造を有する代表的な物質としては、Na0.7MnO2.05で表される組成を有しており、XRDにより、(001)面に由来する2θ=16度近辺の回折ピークが発現していることから確認することができ、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15〜17度、31〜34度及び35〜38度の領域に、該層状構造に特有の回折ピークを示す。このような層状構造においては、Mn原子の一部が他の金属原子で置換されてもその層状構造が維持されることがある。
このような層状構造を有する代表的な物質としては、Na0.7MnO2.05で表される組成を有しており、XRDにより、(001)面に由来する2θ=16度近辺の回折ピークが発現していることから確認することができ、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15〜17度、31〜34度及び35〜38度の領域に、該層状構造に特有の回折ピークを示す。このような層状構造においては、Mn原子の一部が他の金属原子で置換されてもその層状構造が維持されることがある。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、その層状構造により陽イオン交換性を有しているが、特に層間に存在するNaイオンが、重金属イオンとイオン交換することにより、重金属イオンに対する吸着性を示す。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、層間のナトリウムイオンの含有量が多いため、MnO6八面体層の負電荷密度が高い。ゆえに、二価以上の重金属イオンとの静電的相互作用、すなわち結合が強い。それに加えて、マンガン酸化物は重金属イオンとの結合親和性も高い。したがって、上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を有する。
本願の層状構造の重金属吸着剤化合物と類似の吸着剤化合物として、バーネサイト型構造を有し且つナトリウムイオンを担持させたマンガン酸化物が知られている(Alan Dyer, Martyn Pillinger, Risto Harjule, Suheel Amin ”Sorption characteristics of radionuclides on synthetic birnessite−type layered manganese oxides” J. Master. Chem.“Vol.10, pp1867−1874, January 2000)。このバーネサイト型構造を有するマンガン酸化物は、マンガン酸化物層の間にナトリウムイオンとともに水分子が含まれている。一方、本願の製造方法により製造した重金属吸着剤化合物は、水分子を層間に含まないように製造することができる。このため、本願の重金属吸着剤化合物は、バーネサイト型構造を有するマンガン酸化物と比べてより多くのナトリウムイオンを層間に担持することが可能となる。例えば、Mnに対するNaの比Na/Mnは、0.7より高く、さらには0.8〜1.0にすることが可能である。Na/Mnは、後述する式(1)及び(3)におけるxに対応する。また、層間にNaイオンが存在している場合、(001)面の面間隔は、5.55〜5.57Å程度である。この面間隔は、水分子の大きさよりすこし小さいため、層間に水分子が侵入することにより、この面間隔は多少拡大し(7.0〜7.2Å程度)、これにより、海水中に存在する重金属イオンが容易に導入される。即ち、このような層間にNaイオンが存在する層状マンガン酸化物は、二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を発揮し、種々のイオンが存在する海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対して優れた選択吸着性を示し、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンを有効に吸着することができる。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、層間のナトリウムイオンの含有量が多いため、MnO6八面体層の負電荷密度が高い。ゆえに、二価以上の重金属イオンとの静電的相互作用、すなわち結合が強い。それに加えて、マンガン酸化物は重金属イオンとの結合親和性も高い。したがって、上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を有する。
本願の層状構造の重金属吸着剤化合物と類似の吸着剤化合物として、バーネサイト型構造を有し且つナトリウムイオンを担持させたマンガン酸化物が知られている(Alan Dyer, Martyn Pillinger, Risto Harjule, Suheel Amin ”Sorption characteristics of radionuclides on synthetic birnessite−type layered manganese oxides” J. Master. Chem.“Vol.10, pp1867−1874, January 2000)。このバーネサイト型構造を有するマンガン酸化物は、マンガン酸化物層の間にナトリウムイオンとともに水分子が含まれている。一方、本願の製造方法により製造した重金属吸着剤化合物は、水分子を層間に含まないように製造することができる。このため、本願の重金属吸着剤化合物は、バーネサイト型構造を有するマンガン酸化物と比べてより多くのナトリウムイオンを層間に担持することが可能となる。例えば、Mnに対するNaの比Na/Mnは、0.7より高く、さらには0.8〜1.0にすることが可能である。Na/Mnは、後述する式(1)及び(3)におけるxに対応する。また、層間にNaイオンが存在している場合、(001)面の面間隔は、5.55〜5.57Å程度である。この面間隔は、水分子の大きさよりすこし小さいため、層間に水分子が侵入することにより、この面間隔は多少拡大し(7.0〜7.2Å程度)、これにより、海水中に存在する重金属イオンが容易に導入される。即ち、このような層間にNaイオンが存在する層状マンガン酸化物は、二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を発揮し、種々のイオンが存在する海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対して優れた選択吸着性を示し、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンを有効に吸着することができる。
尚、上記のように層間に水分子が導入されている場合、(001)面の面間隔が多少拡大することに関連して、層状構造に特有のX線回折ピークの一部は、若干低角側にシフトし、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.5〜13.5度、24〜26度及び35〜38度の領域に、特有の回折ピークを示す。勿論、乾燥等により水分子を除去した後は、再び、前述した位置に特有の回折ピークを示すこととなる。
また、上述した層状構造を有するマンガン酸化物は、その製法上、他のマンガン酸化物などと共存する状態で得られ、例えば、トンネル内にナトリウムイオンが存在しているトンネル結晶構造を有しているマンガン酸化物が共存していることがある。このようなトンネル結晶構造(以下、単に「トンネル構造」と呼ぶことがある)は、後述する固相反応により上記の層状結晶構造のマンガン酸化物を合成する際の加熱により、層間に存在するナトリウムイオンがテンプレートとなって、層状構造からトンネル構造が形成されることとなる。
図2には、層間にNaイオンが存在している層状構造から誘導されるトンネル構造の結晶形態が模式的に示されている。この結晶構造は、マンガン酸化物のMn6八面体とMnO5五面体とが連結することによってトンネル空間を形成する骨格が構築されている。このようなトンネル構造の形成は、例えばXRDにより、2θ=34度付近にトンネル構造に特有の回折ピークが発現することから確認でき、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=13〜15度、15〜18度、18〜21度、33〜35度、36〜39度及び50〜53度の領域に、上記のトンネル結晶構造に特有の回折ピークを示す。
上述したトンネル構造を有するマンガン酸化物においても、同様に重金属イオンに対して高い選択吸着性を示す。
但し、トンネル構造を有するマンガン酸化物が示す重金属イオンに対する選択吸着性は、層状構造を有するマンガン酸化物ほどではない。トンネル内への重金属イオンの出入りは、層間に比して制限されるからである。
但し、トンネル構造を有するマンガン酸化物が示す重金属イオンに対する選択吸着性は、層状構造を有するマンガン酸化物ほどではない。トンネル内への重金属イオンの出入りは、層間に比して制限されるからである。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、前述した層状構造のマンガン酸化物と共にトンネル構造のMn酸化物を含んでいてもよいが、トンネル構造の生成が抑制されていることが望ましい。例えば、前述したトンネル構造に特有の2θ=35度近辺のX線回折ピークの強度αと、層状構造の存在を示す(001)面のX線回折ピークの強度βとの比α/βが10以下、特に0〜1の範囲にあることが好適である。
本発明において、上述した八面体層状構造及びトンネル構造を有しているマンガン酸化物は、MnO6八面体或いはトンネル構造中のMnサイトの一部が他の金属で置換されていてもよい。このようなマンガン酸化物を含む本発明の重金属イオン吸着剤は、下記式(1)または(2)で表される原子組成を有している。
(1) NaxTyMn1−yO1+q
式中、Tは多価金属を示し、
x及びyは、それぞれ、0.4≦x≦1、0≦y≦0.44であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
(2) NaXLiZMn1−ZO1+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ、0.4≦x≦1、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
(1) NaxTyMn1−yO1+q
式中、Tは多価金属を示し、
x及びyは、それぞれ、0.4≦x≦1、0≦y≦0.44であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
(2) NaXLiZMn1−ZO1+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ、0.4≦x≦1、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
また、LiもNaと同様アルカリ金属であるが、Liの半径が小さくMnの半径に近いため、層間やトンネル内に存在するというよりも、Mnと置換し、式(2)で示されるように、結晶骨格中のMnサイトに存在することとなる。
さらに、式(1)中の多価金属Tは、結晶骨格中のMnサイトの一部にMnと置換して存在するものである。このような多価金属Tとしては、これに限定されるものではないが、例えば、Mg、Zn、Ni、Co、Cu、Al、Fe、Ti、V及びNbを挙げることができ、複数の多価金属が、Mnの一部に置き換わっていてもよい。特に、Al、Zn,Co、Ni、Cu及びMgが好適であり、さらにはAl、Zn及びMgが好適である。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤は、その組成によって、未置換型、多価金属置換型及びLi置換型に分類される。
未置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(1)において、y=0に相当する金属原子組成を有している。即ち、結晶骨格中のMnサイトは、他の金属(例えば多価金属TやLi原子)で置換されたサイトを含んでいないMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、下記式(1a)で表される。
NaXMnO2+qO1+q (1a)
式中、xは、前記式(1)と同様、0.4≦x≦1を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(1)において、y=0に相当する金属原子組成を有している。即ち、結晶骨格中のMnサイトは、他の金属(例えば多価金属TやLi原子)で置換されたサイトを含んでいないMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、下記式(1a)で表される。
NaXMnO2+qO1+q (1a)
式中、xは、前記式(1)と同様、0.4≦x≦1を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
多価金属置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(1)において、y>0である金属原子組成を有するものであり、Mnの結晶骨格中のMnサイトの一部が、前述した多価金属Tで置換されているMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、例えば下記式(1b)で表される。
NaXTyMn1−yO2+q (1b)
式中、Tは、前記多価の金属であり、
xは、前記式(1)と同様、0.4≦x≦1を満足する数であり、
yは、0<y≦0.44を満足する数であり、
qは、前記式(1a)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(1)において、y>0である金属原子組成を有するものであり、Mnの結晶骨格中のMnサイトの一部が、前述した多価金属Tで置換されているMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、例えば下記式(1b)で表される。
NaXTyMn1−yO2+q (1b)
式中、Tは、前記多価の金属であり、
xは、前記式(1)と同様、0.4≦x≦1を満足する数であり、
yは、0<y≦0.44を満足する数であり、
qは、前記式(1a)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
Li置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(2)に相当する金属原子組成を有するマンガン酸化物を含んでいる。このようなマンガン酸化物の組成は、下記(2a)で表される。
NaXLiZMn1−ZO2+q (2a)
式中、x及びzは、前記式(2)と同様、0.4≦x≦1及び
0<z≦0.33 を満足する数であり、
qは、前記式(1a)及び(1b)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
即ち、かかる式で表される重金属イオン吸着剤は、結晶骨格中のMnサイトの一部がリチウム(Li)で置換されている結晶構造を有するマンガン酸化物を含むものである。この場合、Liは、その半径がMnに近いため、後述する焼成によって、層間(或いはトンネル内)にはほとんど導入されず、MnO6八面体或いはトンネル構造のMnサイトの一部にMnと置換して導入されることとなる。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(2)に相当する金属原子組成を有するマンガン酸化物を含んでいる。このようなマンガン酸化物の組成は、下記(2a)で表される。
NaXLiZMn1−ZO2+q (2a)
式中、x及びzは、前記式(2)と同様、0.4≦x≦1及び
0<z≦0.33 を満足する数であり、
qは、前記式(1a)及び(1b)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
即ち、かかる式で表される重金属イオン吸着剤は、結晶骨格中のMnサイトの一部がリチウム(Li)で置換されている結晶構造を有するマンガン酸化物を含むものである。この場合、Liは、その半径がMnに近いため、後述する焼成によって、層間(或いはトンネル内)にはほとんど導入されず、MnO6八面体或いはトンネル構造のMnサイトの一部にMnと置換して導入されることとなる。
ところで、先にも述べたように、上述した式(1a)、(1b)及び(2a)で表されるマンガン酸化物は、MnO6八面体の層状結晶構造を有するものであり、このような層状構造に由来して生成するトンネル結晶構造を有するMn酸化物を含んでいる。即ち、後述する固相反応により上記結晶構造のマンガン酸化物を合成する際の加熱により、層間に存在するナトリウムイオンがテンプレートとなって、層状構造からトンネル構造が形成されるからである。
上記のようなトンネル構造を有するマンガン酸化物は、理想的には、トンネル内に存在するナトリウムイオンとマンガンとのモル比Na/Mnが0.44であり、その組成は、Na0.44MnO2で表される。
本発明の重金属イオン吸着剤において、最も高い重金属イオン吸着性を示すものは、層間にナトリウムイオンが存在している層状結晶構造を有するマンガン酸化物であり、トンネル結晶構造を有するMn酸化物の重金属イオン吸着性は、層状結晶構造のマンガン酸化物が示すほどではない。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、トンネル結晶構造のマンガン酸化物の含有量が少ない程、より高い重金属イオン吸着性を示す。このため、前述した式(1)或いは式(2)(或いは式(1a)、(1b)及び(2a))中のxの値が大きいことが好ましく、例えば、0.44≦x≦1、より好ましくは、0.44<x≦1、さらに好ましくは、0.6≦x≦1、を満足していることが好適である。即ち、前述したxの範囲(0.4≦x≦1)の中で、xの値が小さい程、Na/Mn(Mn置換型ではNa/(T+Mn)或はNa/(Li+Mn))が0.44のモル組成を有するトンネル結晶構造を多く含んでいることを意味しているからである。後述の実験例からすれば、未置換型ではNa/Mnが0.6以上で、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶相が生成することが、XRDのピーク位置からわかっている。また、Li置換型の場合は、後述の実験例より、0.4<Na/(Li+Mn)≦0.9、特に、0.6≦Na/(Li+Mn)≦0.9の場合には、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶層が生成することが、XRDのピーク位置からわかっている。また、多価金属置換型の場合は、Na/(T+Mn)が0.6≦Na/(T+Mn)≦0.9の場合、少なくとも0.6〜0.7の場合には、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶層が生成することが分かっている。
本発明の重金属イオン吸着剤において、最も高い重金属イオン吸着性を示すものは、層間にナトリウムイオンが存在している層状結晶構造を有するマンガン酸化物であり、トンネル結晶構造を有するMn酸化物の重金属イオン吸着性は、層状結晶構造のマンガン酸化物が示すほどではない。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、トンネル結晶構造のマンガン酸化物の含有量が少ない程、より高い重金属イオン吸着性を示す。このため、前述した式(1)或いは式(2)(或いは式(1a)、(1b)及び(2a))中のxの値が大きいことが好ましく、例えば、0.44≦x≦1、より好ましくは、0.44<x≦1、さらに好ましくは、0.6≦x≦1、を満足していることが好適である。即ち、前述したxの範囲(0.4≦x≦1)の中で、xの値が小さい程、Na/Mn(Mn置換型ではNa/(T+Mn)或はNa/(Li+Mn))が0.44のモル組成を有するトンネル結晶構造を多く含んでいることを意味しているからである。後述の実験例からすれば、未置換型ではNa/Mnが0.6以上で、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶相が生成することが、XRDのピーク位置からわかっている。また、Li置換型の場合は、後述の実験例より、0.4<Na/(Li+Mn)≦0.9、特に、0.6≦Na/(Li+Mn)≦0.9の場合には、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶層が生成することが、XRDのピーク位置からわかっている。また、多価金属置換型の場合は、Na/(T+Mn)が0.6≦Na/(T+Mn)≦0.9の場合、少なくとも0.6〜0.7の場合には、Na0.7MnO2.05層状結晶構造相と同じ結晶構造を有する結晶層が生成することが分かっている。
<ナトリウム含有重金属イオン吸着剤の製造方法>
本発明の重金属イオン吸着剤は、層間金属源化合物とMn源化合物とを固相で反応させることにより製造され、結晶骨格中のMnサイトの一部を多価金属T或いはLi原子で置換する場合には、上記の層間金属源化合物及びMn源化合物と共に、多価金属源化合物或いはLi源化合物が使用される。
本発明の重金属イオン吸着剤は、層間金属源化合物とMn源化合物とを固相で反応させることにより製造され、結晶骨格中のMnサイトの一部を多価金属T或いはLi原子で置換する場合には、上記の層間金属源化合物及びMn源化合物と共に、多価金属源化合物或いはLi源化合物が使用される。
層間金属源化合物としては、当然、ナトリウム化合物が使用される。
ナトリウム化合物の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩;酸化ナトリウム等の酸化物;及び水酸化ナトリウム等のナトリウム水酸化物;の少なくとも1種を使用することができ、特に炭酸ナトリウムが好適に使用される。
ナトリウム化合物の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩;酸化ナトリウム等の酸化物;及び水酸化ナトリウム等のナトリウム水酸化物;の少なくとも1種を使用することができ、特に炭酸ナトリウムが好適に使用される。
Mn源化合物としては、炭酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン等のマンガン塩;酸化マンガン等のマンガン酸化物;水酸化マンガン等のマンガン水酸化物;の少なくとも1種を使用することができ、特に炭酸マンガンが好適に使用される。
また、多価金属源化合物としては、前述した多価金属T(例えばAl)等の塩、酸化物及び水酸化物等、特に水酸化物が、Mnと置換する多価金属の種類に応じて使用される。
さらに、Li源化合物としては、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム等のLi塩;酸化リチウム等のLi酸化物;及び水酸化リチウム等のLi水酸化物;好適には、炭酸リチウムが使用される。
さらに、Li源化合物としては、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム等のLi塩;酸化リチウム等のLi酸化物;及び水酸化リチウム等のLi水酸化物;好適には、炭酸リチウムが使用される。
前述した層間金属源化合物とMn源化合物との固相反応は、両者の混合物或いはこの混合物に多価金属源化合物或いはリチウム源化合物を適宜加え、さらにエタノール等の揮発性溶媒を少量添加してペースト状とし、適宜粉砕及び乾燥を行った後、400℃以上の温度で大気中あるいは酸素雰囲気中で焼成することにより行われ、反応終了後、必要に応じて水洗し、さらに乾燥することにより、前述した層状結晶構造を有し且つ層間にナトリウムイオンが存在するマンガン酸化物を含む本発明の重金属イオン吸着剤を得ることができる。
上記のようにして重金属イオン吸着剤を製造するに際して、各種原料化合物の仕込み比は、例えば、前述した式(1)或いは式(2)で示される原子組成を満足するように、各種の化合物を使用すればよく、これにより、各原料化合物が有する酸素或いは大気中の酸素が酸素源となり、式(1a),(1b)或いは(2a)で表される組成のマンガン酸化物を主体とする重金属イオン吸着剤が得られる。即ち、上記の原料化合物の仕込み比は、各式におけるxの値が0.4〜1の範囲となるように設定されるが、層状結晶構造のマンガン酸化物を多く含み、トンネル結晶構造の生成が抑制された酸化物を得るためには、xの値が、0.44〜1、より好ましくは0.44より大きく1以下、最も好ましくは0.6〜1の範囲となるように、上記の原料化合物の仕込み比が調整され、これにより、前述したX線回折ピークのピーク強度比α/βを所定の範囲とすることが可能となる。
焼成温度等は、目的とする重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物のタイプに応じて適宜の範囲に設定される。以下、このマンガン酸化物のタイプに応じた製造条件を説明する。
未置換型重金属イオン吸着剤(以下、NMOと略す);
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(1a)、即ち、
NaXMnO2+q (1a)
式中、xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは
0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、上述したように、層間金属源化合物とMn源化合物との仕込み量を、上記式(1a)のxの値が上記範囲を満足するように設定して固相で反応が行われるが、このときの焼成温度は、400℃以上、特に500℃以上が好ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が十分な量で生成せず、また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は1000℃以下、特に600℃以下が好ましい。
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(1a)、即ち、
NaXMnO2+q (1a)
式中、xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは
0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、上述したように、層間金属源化合物とMn源化合物との仕込み量を、上記式(1a)のxの値が上記範囲を満足するように設定して固相で反応が行われるが、このときの焼成温度は、400℃以上、特に500℃以上が好ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が十分な量で生成せず、また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は1000℃以下、特に600℃以下が好ましい。
尚、層状結晶構造の生成と共に前述した式(1a)で表されるトンネル構造を有するマンガン酸化物も生成するが、Na/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を前述した範囲(10以下、特に0〜1)に調整するために、前述したように原料化合物の仕込み量を設定すると同時に、焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。また、焼成は、少なくとも原料に用いた層間金属源化合物やMn源化合物のX線回折ピークが消失し且つ層状結晶構造に特有のX線回折ピークが発現するまで行われ、焼成温度によっても異なるが、通常、2〜8時間程度である。
多価金属置換型重金属イオン吸着剤(以下、NTMOと略す);
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(1b)、
即ち、
NaXTyMn1−yO2+q (1b)
式中、Tは、前記多価の金属であり、
xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは
0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
yは、0<y≦0.44を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(1b)、
即ち、
NaXTyMn1−yO2+q (1b)
式中、Tは、前記多価の金属であり、
xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは
0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
yは、0<y≦0.44を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプのマンガン酸化物からなる重金属イオンン吸着剤の製造においても、上述したように、xの値が所定の範囲となるように各原料化合物の仕込み比が設定されるが、かかる酸化物では、Mnの一部を多価金属Tで置換するため、焼成温度が若干異なった範囲となる。例えば、焼成温度は、一般的には400℃よりも高温であるが、500℃以上が好適である。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は1000℃以下、特に800℃以下が好ましい。即ち、かかる重金属イオン吸着剤においても、Na/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を所定の範囲に調整するために、式(1b)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。
さらに、この場合も、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
さらに、この場合も、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
Li置換型重金属イオン吸着剤(以下、RLMOと略す);
このタイプの2価重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(2a)、即ち、
NaXLiZMn1−ZO2+q (2a)
式中、xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは 0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
zは、0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの2価重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(2a)、即ち、
NaXLiZMn1−ZO2+q (2a)
式中、xは、0.4≦x≦1(好ましくは0.44≦x≦1、より好ましくは 0.44<x≦1、さらに好ましくは0.6≦x≦1)を満足する数であり、
zは、0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、Mnの一部をLiで置換するため、これに伴い、焼成温度は、400℃よりも高いが、特に1000℃以下、より好ましくは650℃以下の範囲とすることが望ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が生成しない。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造の量が増大するためである。即ち、式(2a)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とすることにより、トンネル構造の生成を抑制し、より高い2価重金属イオン吸着性を得ることができる。
上記のようにして製造される本発明の重金属イオン吸着剤は、必要に応じて粉砕、造粒等により、適宜の粒度に粒度調整して使用に供される。
この重金属イオン吸着剤は、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対しても優れた選択吸着性を示し、A型ゼオライト等の吸着剤と比較しても同等以上の性能を示し、さらにその吸着速度も速いため、少ない量でA型ゼオライトと同等以上の吸着性を示し、コスト的に極めて有利である。
この重金属イオン吸着剤は、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対しても優れた選択吸着性を示し、A型ゼオライト等の吸着剤と比較しても同等以上の性能を示し、さらにその吸着速度も速いため、少ない量でA型ゼオライトと同等以上の吸着性を示し、コスト的に極めて有利である。
従って、本発明の吸着剤は、適宜の粒度に粒度調整した後、吸着塔に充填し、この吸着塔に重金属イオンを含む海水や高塩濃度溶液を流すことにより、海水や高塩濃度溶液中からの重金属イオンを効果的に除去することができる。
また、使用に際しては、予め、水洗等によって、層状結晶構造の層間に水分子を導入することにより、さらに高い重金属イオン吸着性を発揮させることもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、マンガン酸化物が有する層状結晶構造が破壊されない程度の弱酸処理によって層間に存在しているナトリウムイオンをプロトン(H+)にイオン交換して使用に供することもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、前述したタイプの異なるMn酸化物成分が混合されていてもよいし、また、Na0.7MnO2.05層状結晶構造またはそれと同じ結晶構造をする結晶相のMn酸化物による優れた重金属イオン吸着性が損なわれない範囲で、他の酸化物成分を含んでいてもよい。
また、使用に際しては、予め、水洗等によって、層状結晶構造の層間に水分子を導入することにより、さらに高い重金属イオン吸着性を発揮させることもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、マンガン酸化物が有する層状結晶構造が破壊されない程度の弱酸処理によって層間に存在しているナトリウムイオンをプロトン(H+)にイオン交換して使用に供することもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、前述したタイプの異なるMn酸化物成分が混合されていてもよいし、また、Na0.7MnO2.05層状結晶構造またはそれと同じ結晶構造をする結晶相のMn酸化物による優れた重金属イオン吸着性が損なわれない範囲で、他の酸化物成分を含んでいてもよい。
<カリウム含有重金属イオン吸着剤>
本発明の重金属イオン吸着剤は、層状結晶構造(以下、単に「層状構造」と略すことがある)を有し、層間にカリウムイオン(以下、「Kイオン」と略すことがある)を含む結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいる。
本発明の重金属イオン吸着剤は、層状結晶構造(以下、単に「層状構造」と略すことがある)を有し、層間にカリウムイオン(以下、「Kイオン」と略すことがある)を含む結晶構造を有するマンガン酸化物を含んでいる。
図3には、層状構造を有しており且つ層間にKイオンが存在している上記マンガン酸化物の結晶構造が示されている。
図3から理解されるように、かかるマンガン酸化物の結晶構造は、3価または4価のMnを6つのOイオンが取り囲んだ八面体(MnO6)を有しており、このMnO6八面体が稜共有により層状に連なって八面体層を形成しており、この八面体層の層間に電荷のバランスを補う形でKイオンが存在している。
このような層状構造を有する代表的な物質は、K2Mn4O8、より詳しくは(K2){Mn(III)2Mn(IV)2}O8で表される組成を有している。かかる層状構造の存在は、XRDにより、(001)面に由来する2θ=12.2度近辺の回折ピークが発現していることから確認することができ、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.2〜13.2度、24〜26度及び35〜38度の領域に、該層状構造に特有の回折ピークを示すことから確認できる。このような層状構造においては、Mn原子の一部が他の金属原子で置換されてもその層状構造が維持されることがある。この場合、層状構造の組成は、K2TαMn4―αO8(T:他の金属)で表される。
このような層状構造を有する代表的な物質は、K2Mn4O8、より詳しくは(K2){Mn(III)2Mn(IV)2}O8で表される組成を有している。かかる層状構造の存在は、XRDにより、(001)面に由来する2θ=12.2度近辺の回折ピークが発現していることから確認することができ、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.2〜13.2度、24〜26度及び35〜38度の領域に、該層状構造に特有の回折ピークを示すことから確認できる。このような層状構造においては、Mn原子の一部が他の金属原子で置換されてもその層状構造が維持されることがある。この場合、層状構造の組成は、K2TαMn4―αO8(T:他の金属)で表される。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、その層状構造により陽イオン交換性を有しているが、特に層間に存在するKイオンが、重金属イオンとイオン交換することにより、重金属イオンに対する吸着性を示す。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、層間のKイオンの含有量が多いため、MnO6八面体層の負電荷密度が高く、二価以上の重金属イオンとの静電的相互作用、すなわち結合が強く、それに加えてマンガン酸化物の重金属イオンに対する結合親和性が高いため、二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を有する。
また、層間にKイオンが存在している場合、(001)面の面間隔は、6.9〜7.2Å程度である。この面間隔は、水分子の大きさにも近いため、層間に水分子が侵入することができ、これにより、この面間隔はわずかに増大する(7.0〜7.3Å程度)。
上述した層状結晶構造を有するマンガン酸化物は、層間のKイオンの含有量が多いため、MnO6八面体層の負電荷密度が高く、二価以上の重金属イオンとの静電的相互作用、すなわち結合が強く、それに加えてマンガン酸化物の重金属イオンに対する結合親和性が高いため、二価以上の重金属イオンを強く吸着する特徴を有する。
また、層間にKイオンが存在している場合、(001)面の面間隔は、6.9〜7.2Å程度である。この面間隔は、水分子の大きさにも近いため、層間に水分子が侵入することができ、これにより、この面間隔はわずかに増大する(7.0〜7.3Å程度)。
尚、上記のように層間に水分子が導入されている場合、(001)面の面間隔が多少拡大することに関連して、層状構造に特有のX線回折ピークの一部は、若干シフトし、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=11.5〜13.5度、24.2〜26.2度及び35.1〜38.1度の領域に、特有の回折ピークを示す。乾燥等により水分子を除去した後は、再び、前述した位置に特有の回折ピークを示すこととなる。
また、上述した層状構造を有するマンガン酸化物は、その製法上、他のマンガン酸化物などと共存する状態で得られ、例えば、トンネル内にKイオンが存在しているトンネル結晶構造を有しているマンガン酸化物が共存していることがある。このようなトンネル結晶構造(以下、単に「トンネル構造」と呼ぶことがある)は、後述する固相反応により上記の層状結晶構造のマンガン酸化物を合成する際の加熱により、層間に存在するKイオンがテンプレートとなって、層状構造からトンネル構造が形成されることとなる。
図4には、層間にKイオンが存在している層状構造から誘導されるトンネル構造のホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)の結晶形態が模式的に示されている。この結晶構造は、マンガン酸化物のMnO6八面体が連結することによってトンネル空間を形成する骨格が構築されている。このようなトンネル構造の形成は、例えばXRDにより、2θ=34度付近にトンネル構造に特有の回折ピークが発現することから確認でき、例えば、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12〜13度、17.5〜18.5度、28〜29度、37〜38度、41.3〜42.3度、49〜50度及び55.5〜56.5度の領域に、上記のトンネル結晶構造に特有の回折ピークを示す。
トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物においても、同様に重金属イオンに対して選択吸着性を示す。
但し、トンネル構造を有するマンガン酸化物が示す重金属イオンに対する選択吸着性は、層状構造を有するマンガン酸化物ほどではない。トンネル内への重金属イオンの出入りは、層間に比して制限されるからである。
但し、トンネル構造を有するマンガン酸化物が示す重金属イオンに対する選択吸着性は、層状構造を有するマンガン酸化物ほどではない。トンネル内への重金属イオンの出入りは、層間に比して制限されるからである。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、前述した層状構造のマンガン酸化物と共にトンネル構造のMn酸化物を含んでいてもよいが、トンネル構造の生成が抑制されていることが望ましい。例えば、前述したトンネル構造に特有のX線回折ピーク(即ち、2θ=17.5〜18.5度に示されるピーク)の強度αと、層状構造に特有のX線回折ピーク(即ち、2θ=24〜26度に示されるピーク)の強度βとの比α/βが10以下、特に0〜2の範囲にあることが好適である。
上述した層状構造を有しているマンガン酸化物およびトンネル構造を有しているマンガン酸化物においては、結晶骨格中のMnO6八面体のMnサイトの一部、主に3価のマンガンが他の金属で置換されていてもよい。このようなマンガン酸化物を含む本発明の重金属イオン吸着剤は、下記式(3)または(4)で表される原子組成を有している。
(3) KxTyMn1−yO2+q
式中、Tは多価金属を示し、
x及びyはそれぞれ0.25≦x≦1、0≦y≦0.45であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
(4) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ0.25≦x≦1、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、を満足する数である。
(3) KxTyMn1−yO2+q
式中、Tは多価金属を示し、
x及びyはそれぞれ0.25≦x≦1、0≦y≦0.45であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
(4) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ0.25≦x≦1、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、を満足する数である。
また、LiもKと同様アルカリ金属であるが、Liの半径が小さくMnの半径に近いため、層間やトンネル内に存在するというよりも、Mnと置換し、式(4)で示されるように、結晶骨格中のMnサイトに存在することとなる。
さらに、式(3)中の多価金属Tは、結晶骨格中のMnサイトの一部のMn、主にMn(III)と置換して存在するものである。このような多価金属Tとしては、これに限定されるものではないが、例えば、Mg、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Fe、Ti、V及びNbを挙げることができる。複数の多価金属が、Mnの一部に置き換わっていてもよい。Ni、Cu、Mg、Co、ZnまたはAlが好適であり、Ni、CuまたはMgがより好適であり、NiまたはMgが特に好適であり、Niが最適である。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤は、その組成によって、未置換型、多価金属置換型及びLi置換型に分類される。これら3タイプのうち、特に多価金属置換型は、重金属イオン吸着性に優れる傾向にある。
未置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(3)においてy=0に相当する金属原子組成を有している。即ち、結晶骨格中のMnサイトは、他の金属(例えば多価金属TやLi原子)で置換されたサイトを含んでいないMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、下記式(3a)で表される。
(3a) KXMnO2+q
式中、xは、前記式(3)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(3)においてy=0に相当する金属原子組成を有している。即ち、結晶骨格中のMnサイトは、他の金属(例えば多価金属TやLi原子)で置換されたサイトを含んでいないMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、下記式(3a)で表される。
(3a) KXMnO2+q
式中、xは、前記式(3)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である。
多価金属置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(3)において、y>0である金属原子組成を有するものであり、Mnの結晶骨格中のMnサイトの一部が、前述した多価金属Tで置換されているMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、例えば下記式(3b)で表される。
(3b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、前記式(3)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、前記式(3a)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(3)において、y>0である金属原子組成を有するものであり、Mnの結晶骨格中のMnサイトの一部が、前述した多価金属Tで置換されているMn酸化物を含んでいる。このようなMn酸化物の組成は、例えば下記式(3b)で表される。
(3b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、前記式(3)と同様、0.25≦x≦1を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、前記式(3a)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
Li置換型;
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(4)に相当する金属原子組成を有するマンガン酸化物を含んでいる。このようなマンガン酸化物の組成は、下記(4a)で表される。
(4a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、x及びzは、前記式(4)と同様、0.25≦x≦1及び
0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、前記式(3a)及び(3b)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
即ち、かかる式で表される重金属イオン吸着剤は、結晶骨格中のMnサイトの一部がリチウム(Li)で置換されている結晶構造を有するマンガン酸化物を含むものである。この場合、Liは、その半径がMnに近いため、後述する焼成によって、層間やトンネル内にはほとんど導入されず、MnO6八面体のMnサイトの一部にMnと置換して導入されることとなる。
このタイプの重金属イオン吸着剤は、前記式(4)に相当する金属原子組成を有するマンガン酸化物を含んでいる。このようなマンガン酸化物の組成は、下記(4a)で表される。
(4a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、x及びzは、前記式(4)と同様、0.25≦x≦1及び
0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、前記式(3a)及び(3b)と同様、0≦q≦0.5を満足する数である。
即ち、かかる式で表される重金属イオン吸着剤は、結晶骨格中のMnサイトの一部がリチウム(Li)で置換されている結晶構造を有するマンガン酸化物を含むものである。この場合、Liは、その半径がMnに近いため、後述する焼成によって、層間やトンネル内にはほとんど導入されず、MnO6八面体のMnサイトの一部にMnと置換して導入されることとなる。
ところで、先にも述べたように、上述した式(3a)、(3b)及び(4a)で表されるマンガン酸化物は、MnO6八面体の層状結晶構造を有するものであり、このような層状構造に由来して生成するトンネル結晶構造を有するMn酸化物を含んでいる場合がある。後述する固相反応により上記結晶構造のマンガン酸化物を合成する際の加熱により、層間に存在するKイオンがテンプレートとなって、層状構造からトンネル構造が形成されるからである。
上記のようなトンネル構造を有するマンガン酸化物は、理想的には、トンネル内に存在するKイオンとマンガンとのモル比K/Mnが0.25であり、その組成は、K2Mn8O16表される。
本発明の重金属イオン吸着剤において、最も高い重金属イオン吸着性を示すものは、層間にKイオンが存在している層状結晶構造を有するマンガン酸化物であり、トンネル結晶構造を有するMn酸化物の重金属イオン吸着性は、層状結晶構造のマンガン酸化物が示すほどではない。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、トンネル結晶構造のマンガン酸化物の含有量が少ない程、より高い重金属イオン吸着性を示す。このため、前述した式(3)或いは式(4)(或いは式(3a)、(3b)又は(4a))中のxの値が0.25以上であることが好ましく、例えば、0.3≦x≦0.7がより好ましく、0.35≦x≦0.6が特に好ましく、0.35≦x≦0.55が最も好ましい。前述したxの範囲(0.25≦x≦1)の中で、xの値が小さい程、K/Mn(Mn置換型ではK/(T+Mn)或いはK/(Li+Mn))が0.25のモル組成を有するトンネル結晶構造を多く含んでいることを意味しているからである。
本発明の重金属イオン吸着剤において、最も高い重金属イオン吸着性を示すものは、層間にKイオンが存在している層状結晶構造を有するマンガン酸化物であり、トンネル結晶構造を有するMn酸化物の重金属イオン吸着性は、層状結晶構造のマンガン酸化物が示すほどではない。
従って、本発明の重金属イオン吸着剤においては、トンネル結晶構造のマンガン酸化物の含有量が少ない程、より高い重金属イオン吸着性を示す。このため、前述した式(3)或いは式(4)(或いは式(3a)、(3b)又は(4a))中のxの値が0.25以上であることが好ましく、例えば、0.3≦x≦0.7がより好ましく、0.35≦x≦0.6が特に好ましく、0.35≦x≦0.55が最も好ましい。前述したxの範囲(0.25≦x≦1)の中で、xの値が小さい程、K/Mn(Mn置換型ではK/(T+Mn)或いはK/(Li+Mn))が0.25のモル組成を有するトンネル結晶構造を多く含んでいることを意味しているからである。
<カリウム含有重金属イオン吸着剤の製造法>
本発明の重金属イオン吸着剤は、層間金属源化合物とMn源化合物とを固相で反応させることにより製造され、結晶骨格中のMnサイトの一部を多価金属T或いはLi原子で置換する場合には、上記の層間金属源化合物及びMn源化合物と共に、多価金属源化合物或いはLi源化合物が使用される。
本発明の重金属イオン吸着剤は、層間金属源化合物とMn源化合物とを固相で反応させることにより製造され、結晶骨格中のMnサイトの一部を多価金属T或いはLi原子で置換する場合には、上記の層間金属源化合物及びMn源化合物と共に、多価金属源化合物或いはLi源化合物が使用される。
層間金属源化合物としては、当然、カリウム化合物が使用される。カリウム化合物の例としては、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム等の塩;酸化カリウム等の酸化物;及び水酸化カリウム等の水酸化物;の少なくとも1種を使用することができ、特に炭酸カリウムが好適に使用される。
Mn源化合物としては、炭酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン等のマンガン塩;酸化マンガン等のマンガン酸化物;水酸化マンガン等のマンガン水酸化物;の少なくとも1種を使用することができ、入手容易性および取扱い容易性の観点から、特に炭酸マンガンが好適に使用される。
特に炭酸カリウムと炭酸マンガンを組み合わせると、本発明の重金属イオン吸着剤を効率よく製造することができる。
また、多価金属源化合物としては、前述した多価金属T(例えばMg)等の塩、酸化物及び水酸化物等、特に水酸化物が、Mnと置換する多価金属の種類に応じて使用される。 さらに、Li源化合物としては、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム等のLi塩;酸化リチウム等のLi酸化物;及び水酸化リチウム等のLi水酸化物;好適には、炭酸リチウムが使用される。
前述した層間金属源化合物とMn源化合物との固相反応は、両者の混合物或いはこの混合物に多価金属源化合物或いはリチウム源化合物を適宜加え、さらにエタノール等の揮発性溶媒を少量添加してペースト状とし、適宜粉砕及び乾燥を行った後、350℃以上の温度で大気中あるいは酸素雰囲気中で焼成することにより行われ、反応終了後、必要に応じて水洗し、さらに乾燥することにより、前述した層状結晶構造を有し且つ層間にKイオンが存在するマンガン酸化物を含む本発明の重金属イオン吸着剤を得ることができる。
上記のようにして重金属イオン吸着剤を製造するに際して、各種原料化合物の仕込み比は、例えば、前述した式(3)或いは式(4)で示される原子組成を満足するように、各種の化合物を使用すればよく、これにより、各原料化合物が有する酸素或いは大気中の酸素が酸素源となり、式(3a)、(3b)或いは(4a)で表される組成のマンガン酸化物を主体とする重金属イオン吸着剤が得られる。
即ち、上記の原料化合物の仕込み比は、各式におけるxの値が0.25〜1.00の範囲となるように設定されるが、層状結晶構造のマンガン酸化物を多く含み、トンネル結晶構造の生成が抑制された酸化物を得るためには、xの値が、0.30〜0.70、より好ましくは0.35〜0.60、特に好ましくは0.35〜0.55の範囲となるように、上記の原料化合物の仕込み比が調整され、これにより、前述したX線回折ピークのピーク強度比α/βを所定の範囲とすることが可能となる。
即ち、上記の原料化合物の仕込み比は、各式におけるxの値が0.25〜1.00の範囲となるように設定されるが、層状結晶構造のマンガン酸化物を多く含み、トンネル結晶構造の生成が抑制された酸化物を得るためには、xの値が、0.30〜0.70、より好ましくは0.35〜0.60、特に好ましくは0.35〜0.55の範囲となるように、上記の原料化合物の仕込み比が調整され、これにより、前述したX線回折ピークのピーク強度比α/βを所定の範囲とすることが可能となる。
焼成温度等の製造条件は、目的とする重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物のタイプに応じて適宜の範囲に設定される。
以下、このマンガン酸化物のタイプに応じた製造条件を説明する。
以下、このマンガン酸化物のタイプに応じた製造条件を説明する。
未置換型重金属イオン吸着剤(以下、KMOと略す);
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(3a)、即ち、
(3a) KXMnO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは 0.35≦x≦0.6、特に好ましくは0.35≦x≦0.55)を満足する数であり、qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、上述したように、層間金属源化合物とMn源化合物との仕込み量を、上記式(3a)のxの値が上記範囲を満足するように設定して固相で反応が行われるが、このときの焼成温度は、350℃以上、特に400℃以上が好ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が十分な量で生成しない虞がある。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、特に500℃以下が好ましい。
尚、後述の実施例では、焼成温度400〜600℃でカリウムを含むマンガン酸化物が得られることが確認されている。焼成温度700〜800℃の場合については直接的には確認されていないが、カリウムの代わりにナトリウムを含むマンガン酸化物の場合、400〜600℃でも700〜800℃でも得られることが本出願人による別の出願で確認されていることから(PCT/JP2016/080081 例えば図3参照)、カリウムを含むマンガン酸化物も焼成温度700〜800℃で得られることは必至である。
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(3a)、即ち、
(3a) KXMnO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは 0.35≦x≦0.6、特に好ましくは0.35≦x≦0.55)を満足する数であり、qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、上述したように、層間金属源化合物とMn源化合物との仕込み量を、上記式(3a)のxの値が上記範囲を満足するように設定して固相で反応が行われるが、このときの焼成温度は、350℃以上、特に400℃以上が好ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が十分な量で生成しない虞がある。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、特に500℃以下が好ましい。
尚、後述の実施例では、焼成温度400〜600℃でカリウムを含むマンガン酸化物が得られることが確認されている。焼成温度700〜800℃の場合については直接的には確認されていないが、カリウムの代わりにナトリウムを含むマンガン酸化物の場合、400〜600℃でも700〜800℃でも得られることが本出願人による別の出願で確認されていることから(PCT/JP2016/080081 例えば図3参照)、カリウムを含むマンガン酸化物も焼成温度700〜800℃で得られることは必至である。
尚、層状結晶構造の生成と共に前述した式(3a)で表されるトンネル構造を有するマンガン酸化物も生成するが、K/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を前述した範囲(10以下、特に0〜2)に調整するために、前述したように原料化合物の仕込み量を設定すると同時に、焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。
また、焼成は、少なくとも原料に用いた層間金属源化合物やMn源化合物のX線回折ピークが消失し且つ層状結晶構造に特有のX線回折ピークが発現するまで行われ、焼成温度によっても異なるが、通常、2〜8時間程度である。
また、焼成は、少なくとも原料に用いた層間金属源化合物やMn源化合物のX線回折ピークが消失し且つ層状結晶構造に特有のX線回折ピークが発現するまで行われ、焼成温度によっても異なるが、通常、2〜8時間程度である。
多価金属置換型重金属イオン吸着剤(以下、KTMOと略す);
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(3b)、即ち、
(3b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは
0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(3b)、即ち、
(3b) KXTyMn1−yO2+q
式中、Tは、前記多価金属であり、
xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは
0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
yは、0<y≦0.45を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプのマンガン酸化物からなる重金属イオン吸着剤の製造においても、上述したように、xの値が所定の範囲となるように各原料化合物の仕込み比が設定されるが、かかる酸化物では、Mnの一部を多価金属Tで置換する。
この場合の焼成温度は、多価金属の種類等に応じて適宜決定すればよいが、一般的には350℃以上であり、400℃以上が好適である。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、特に500℃以下が好ましい。
即ち、かかる重金属イオン吸着剤においても、K/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。このことは、後述の実験とともに、本出願人による別の出願(PCT/JP2016/087009)から明らかである。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を所定の範囲に調整するために、式(3b)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。さらに、この場合も、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
この場合の焼成温度は、多価金属の種類等に応じて適宜決定すればよいが、一般的には350℃以上であり、400℃以上が好適である。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造が過度に生成してしまうので、通常、焼成温度は800℃以下、特に500℃以下が好ましい。
即ち、かかる重金属イオン吸着剤においても、K/Mn比が小さい程或いは焼成温度が高くなる程、トンネル構造の結晶構造の量が増大する傾向がある。このことは、後述の実験とともに、本出願人による別の出願(PCT/JP2016/087009)から明らかである。従って、トンネル構造のマンガン酸化物の生成を抑制し、前述したピーク強度比α/βの値を所定の範囲に調整するために、式(3b)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とするのがよい。これにより、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。さらに、この場合も、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
Li置換型重金属イオン吸着剤(以下、KLMOと略す);
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(4a)、即ち、
(4a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは
0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
zは、0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤を構成するマンガン酸化物は、前述した式(4a)、即ち、
(4a) KXLiZMn1−ZO2+q
式中、xは、0.25≦x≦1(好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは
0.35≦x≦0.6)を満足する数であり、
zは、0<z≦0.33を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、で表される。
このタイプの重金属イオン吸着剤の製造では、Mnの一部をLiで置換するため、これに伴い、焼成温度は、350℃以上とし、また、特に800℃以下、より好ましくは500℃以下の範囲とすることが望ましい。この焼成温度が低すぎると、目的とする層状結晶構造が生成しない。また、過度に高温とすると、結晶構造の破壊やトンネル構造の量が増大する。即ち、式(4a)中のxの値や焼成温度を、上記の好適範囲とすることにより、トンネル構造の生成を抑制し、より高い重金属イオン吸着性を得ることができる。更に、この場合においても、焼成時間は、通常、2〜8時間程度である。
上記のようにして製造される本発明の重金属イオン吸着剤は、必要に応じて粉砕、造粒等により、適宜の粒度に粒度調整して使用に供される。
この重金属イオン吸着剤は、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対しても優れた選択吸着性を示し、A型ゼオライト等の吸着剤と比較しても同等以上の性能を示し、さらにその吸着速度も速いため、少ない量でA型ゼオライトと同等以上の吸着性を示し、コスト的に極めて有利である。
この重金属イオン吸着剤は、海水や高塩濃度溶液中に存在する重金属イオンに対しても優れた選択吸着性を示し、A型ゼオライト等の吸着剤と比較しても同等以上の性能を示し、さらにその吸着速度も速いため、少ない量でA型ゼオライトと同等以上の吸着性を示し、コスト的に極めて有利である。
従って、本発明の吸着剤を、適宜の粒度に粒度調整した後、吸着塔に充填し、この吸着塔に2価重金属イオンを含む海水を流すことにより、海水中からの2価重金属イオンを効果的に除去することができる。
さらに、本発明の2価重金属吸着剤は、マンガン酸化物が有する層状結晶構造が破壊されない程度の弱酸処理によって層間に存在しているKイオンをプロトン(H+)にイオン交換して使用に供することもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、前述したタイプの異なるMn酸化物成分が混合されていてもよいし、また、K2Mn4O8層状結晶構造のMn酸化物による優れた重金属イオン吸着性が損なわれない範囲で、他の酸化物成分を含んでいてもよい。
さらに、本発明の2価重金属吸着剤は、マンガン酸化物が有する層状結晶構造が破壊されない程度の弱酸処理によって層間に存在しているKイオンをプロトン(H+)にイオン交換して使用に供することもできる。
さらに、本発明の重金属イオン吸着剤は、前述したタイプの異なるMn酸化物成分が混合されていてもよいし、また、K2Mn4O8層状結晶構造のMn酸化物による優れた重金属イオン吸着性が損なわれない範囲で、他の酸化物成分を含んでいてもよい。
<実験例1>
[ナトリウム含有重金属イオン吸着剤の合成]
(1)NLMO(Li置換型)の合成
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.60/0.15/0.85)を調製した。
炭酸ナトリウム(Na2CO3) 3.75g
炭酸リチウム(Li2CO3) 0.67g
炭酸マンガン(MnCO3) 6.54g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。尚、焼成物には、実際には複数の価数のマンガンが含まれるが、ここでは、4価のマンガンに換算した原子組成を示すものとする。以後の実験で得られる焼成物についても同様に、全て4価のマンガンであると仮定した場合の組成を示すものとする。
Na0.60Li0.15Mn0.85O2
(x=0.60、z=0.15、q=0)
[ナトリウム含有重金属イオン吸着剤の合成]
(1)NLMO(Li置換型)の合成
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.60/0.15/0.85)を調製した。
炭酸ナトリウム(Na2CO3) 3.75g
炭酸リチウム(Li2CO3) 0.67g
炭酸マンガン(MnCO3) 6.54g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。尚、焼成物には、実際には複数の価数のマンガンが含まれるが、ここでは、4価のマンガンに換算した原子組成を示すものとする。以後の実験で得られる焼成物についても同様に、全て4価のマンガンであると仮定した場合の組成を示すものとする。
Na0.60Li0.15Mn0.85O2
(x=0.60、z=0.15、q=0)
得られた合成物をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図5に得られた合成物のXRD測定結果を示す。
XRD測定結果から、この合成物は、層状結晶構造(Na0.7MnO2.05)と同じ層状結晶構造を有することが分かる(2θ=16度、32度、及び37度近辺のピーク等参照)。
XRD測定結果から、この合成物は、層状結晶構造(Na0.7MnO2.05)と同じ層状結晶構造を有することが分かる(2θ=16度、32度、及び37度近辺のピーク等参照)。
[カリウム含有重金属イオン吸着剤の合成]
(2)KMO−T(未置換トンネル型)の合成
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.2/1.0)を調製した。尚、炭酸カリウムとしては、和光純薬工業株式会社製、試薬番号:162−03495、分子量138.21、試薬純度:99.5%のものを、炭酸マンガンとしては、MnCO3・nH2O、和光純薬工業株式会社製の炭酸マンガンn水和物であって、試薬番号:136−00695、分子量:114.95、試薬純度:88%のものを用いた。
炭酸カリウム 0.4861g
炭酸マンガン 4.354g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.2MnO2.25
(x=0.2、q=0)
(2)KMO−T(未置換トンネル型)の合成
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.2/1.0)を調製した。尚、炭酸カリウムとしては、和光純薬工業株式会社製、試薬番号:162−03495、分子量138.21、試薬純度:99.5%のものを、炭酸マンガンとしては、MnCO3・nH2O、和光純薬工業株式会社製の炭酸マンガンn水和物であって、試薬番号:136−00695、分子量:114.95、試薬純度:88%のものを用いた。
炭酸カリウム 0.4861g
炭酸マンガン 4.354g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.2MnO2.25
(x=0.2、q=0)
得られた合成物をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図6に得られた合成物のXRD測定結果を示す。この合成物では、トンネル構造を有するホランダイト型マンガン酸化物(K2Mn8O16)のみが生成していた(2θ=12〜13度、17.5〜18.5度のピーク等参照)。
(3)KMO−L(未置換層状型)の合成
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.5/1.0)を調製した。尚、炭酸カリウムと炭酸マグネシウムは、(2)の合成と同じものを用いた。
炭酸カリウム 1.214g
炭酸マンガン 4.354g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.5MnO2.25
(x=0.5、q=0.25)
下記処方により、原料混合物(Na/Li/Mnモル比=0.5/1.0)を調製した。尚、炭酸カリウムと炭酸マグネシウムは、(2)の合成と同じものを用いた。
炭酸カリウム 1.214g
炭酸マンガン 4.354g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.5MnO2.25
(x=0.5、q=0.25)
得られた合成物をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図5に得られた合成物のXRD測定結果を示す。この合成物では、層状構造(K2Mn4O8)のみが生成していた(2θ=12.2度のピーク等参照)。
(4)KNiMOl(ニッケル置換型)の合成
下記処方により、原料混合物を調製した。尚、炭酸カリウムと炭酸マグネシウムは、(2)の合成と同じものを用いた。また、炭酸ニッケルとしては、塩基性炭酸ニッケル(II){和光純薬工業株式会社製NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O(試薬番号:144−01035、分子量:376.18、試薬純度:記載無し)を用いた。
炭酸カリウム 1.215g
炭酸ニッケル 1.045g
炭酸マンガン 3.266g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.5Ni(II)0.25Mn(IV)0.75O2 (x=0.5、y=0.25、q=0)
下記処方により、原料混合物を調製した。尚、炭酸カリウムと炭酸マグネシウムは、(2)の合成と同じものを用いた。また、炭酸ニッケルとしては、塩基性炭酸ニッケル(II){和光純薬工業株式会社製NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O(試薬番号:144−01035、分子量:376.18、試薬純度:記載無し)を用いた。
炭酸カリウム 1.215g
炭酸ニッケル 1.045g
炭酸マンガン 3.266g
この混合物に少量のエタノールを添加しペースト状にして、ボールミルで1日間混合・粉砕した。得られた試料を乾燥した後、空気中、温度500℃で4時間焼成した。
得られた焼成物(合成物)の原子組成は、以下のとおりであった。
K0.5Ni(II)0.25Mn(IV)0.75O2 (x=0.5、y=0.25、q=0)
得られた合成物をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図6に得られた合成物のXRD測定結果を示す。この合成物では、層状構造(K2TαMn4−αO8)のみが生成していた(2θ=12.2度のピーク等参照)。
[重金属イオン吸着性の評価]
上記で得られたマンガン酸化物について、以下の試験を行い、重金属イオン吸着性を評価した。
上記で得られたマンガン酸化物について、以下の試験を行い、重金属イオン吸着性を評価した。
(1)標準海水での吸着試験
下記の組成の標準海水を用意した。
Na+濃度:10800ppm
Ca2+濃度:412ppm
K+濃度:400ppm
Mg2+濃度:1280ppm
重金属イオン濃度:10ppm
使用した重金属イオンは、それぞれPb(II)、Cd(II)、Co(II)、Hg(II)、Ni(II)、Sb(III)、Ru(III)であった。
前述した実験で合成されたマンガン酸化物を用いて、以下の手順で重金属イオンの吸着量を求めた。
上記の重金属イオン濃度10ppmを含有する標準海水50mlに、試料のマンガン酸化物0.05gを加え、スターラーで2日間撹拌して、吸着処理を行った。
また、比較のため、従来の吸着剤として、A型−ゼオライトについても同じ吸着試験を行った。
下記の組成の標準海水を用意した。
Na+濃度:10800ppm
Ca2+濃度:412ppm
K+濃度:400ppm
Mg2+濃度:1280ppm
重金属イオン濃度:10ppm
使用した重金属イオンは、それぞれPb(II)、Cd(II)、Co(II)、Hg(II)、Ni(II)、Sb(III)、Ru(III)であった。
前述した実験で合成されたマンガン酸化物を用いて、以下の手順で重金属イオンの吸着量を求めた。
上記の重金属イオン濃度10ppmを含有する標準海水50mlに、試料のマンガン酸化物0.05gを加え、スターラーで2日間撹拌して、吸着処理を行った。
また、比較のため、従来の吸着剤として、A型−ゼオライトについても同じ吸着試験を行った。
(2)吸着率の算出
吸着処理前後の海水の重金属イオン濃度をICPで測定し、吸着率を式(5)により求めた。
吸着率:((C0−Ct)/C0)×100 (5)
C0:吸着処理前の海水の重金属イオン濃度(ppm)
Ct:吸着処理後の海水の重金属イオン濃度(ppm)
吸着処理前後の海水の重金属イオン濃度をICPで測定し、吸着率を式(5)により求めた。
吸着率:((C0−Ct)/C0)×100 (5)
C0:吸着処理前の海水の重金属イオン濃度(ppm)
Ct:吸着処理後の海水の重金属イオン濃度(ppm)
(3)分配係数(Kd)の算出
分配係数Kdを式(6)により求めた。
Kd=((C0−Ct)/Ct)×V/m (6)
V:吸着溶液の体積(mL)
m:吸着剤の添加量(g)
標準海水を用いて求めた各吸着剤の分配係数Kdを表2に示す。マンガン酸化物系吸着剤は、従来のA型−ゼオライト吸着剤と比べ、特にCo(II)、Cd(II)、Sb(III)、Ru(III)、Hg(II)に対する吸着性能が高い。特に層状構造を有するNLMO、KNiMO、KMO−L吸着剤は、Co(II)、Cd(II)、Ru(III)に対する吸着性能が高い。
分配係数Kdを式(6)により求めた。
Kd=((C0−Ct)/Ct)×V/m (6)
V:吸着溶液の体積(mL)
m:吸着剤の添加量(g)
標準海水を用いて求めた各吸着剤の分配係数Kdを表2に示す。マンガン酸化物系吸着剤は、従来のA型−ゼオライト吸着剤と比べ、特にCo(II)、Cd(II)、Sb(III)、Ru(III)、Hg(II)に対する吸着性能が高い。特に層状構造を有するNLMO、KNiMO、KMO−L吸着剤は、Co(II)、Cd(II)、Ru(III)に対する吸着性能が高い。
<実験例2>
(1)NMO(未置換型)の合成
モル比Na/Mn=0.6:1の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした。その後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
(1)NMO(未置換型)の合成
モル比Na/Mn=0.6:1の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした。その後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
(2)NLMO(Li置換型)の合成
モル比Na/Li/Mn=0.6:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした。その後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
モル比Na/Li/Mn=0.6:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした。その後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
(3)NTMO多価金属(T)置換型の合成
多価金属(T)としてCo(II), Cu(II), Mg(II), Ni(II), Zn(II), Al(III), Fe(III), Ti(IV), Nb(V), V(V)を用いてそれぞれ、Na0.6T0.22Mn(IV)0.78O2を固相法により合成した。ここで、モル比Na/T/Mn=0.60:0.22:0.78の割合でNa2CO3とT金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物とMnCO3をそれぞれ秤量した。ここで多価金属Tの原料としてそれぞれCoCO3, CuCO3, MgO, NiCO3, ZnO, Al(OH)3, Fe2O3, TiO2, Nb2O5, V2O5を用いた。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、各試料を合成した。
多価金属(T)としてCo(II), Cu(II), Mg(II), Ni(II), Zn(II), Al(III), Fe(III), Ti(IV), Nb(V), V(V)を用いてそれぞれ、Na0.6T0.22Mn(IV)0.78O2を固相法により合成した。ここで、モル比Na/T/Mn=0.60:0.22:0.78の割合でNa2CO3とT金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物とMnCO3をそれぞれ秤量した。ここで多価金属Tの原料としてそれぞれCoCO3, CuCO3, MgO, NiCO3, ZnO, Al(OH)3, Fe2O3, TiO2, Nb2O5, V2O5を用いた。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、各試料を合成した。
得られた合成物をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。上記の方法で合成した吸着剤のXRD測定結果を図10に示す。第三金属無添加NMO吸着剤、Li添加NLMO吸着剤および多価金属Co, Cu, Mg, Ni, Zn, Al, Fe, Tiを添加したNTMO吸着剤では、2θ=16度、32度、及び37度近辺のピーク位置からNa0.7MnO2.05結晶相と同じ構造の結晶構造が生成していることがわかる。また、Zn, Al, Fe, Tiを添加した試料においては、原料の酸化物のピークが見られる。これは、原料に炭酸塩ではなく酸化物を使用したために、反応がしにくく、未反応の原料が残ってしまったからだと考えられる。5価のNbとVを添加した試料においては、Na0.7MnO2.05結晶相と同じ結晶構造は生成されておらず、Nb添加した試料ではNaNbO3とMn2O3が生成し、V添加した試料ではNaVO3とMn2O3が生成したことがそれぞれの試料のXRDのピーク位置から確認された。それらの生成した結晶層を同定したピーク位置について図10に示す。
[Coイオン吸着性能の比較]
各吸着剤0.04gを計量して、50 ppmのCo2+を含む溶液(40mL、pH4.4)を用いてCo2+吸着を行った。吸着実験後、溶液をろ過し、ろ液中のCo2+の濃度をICPで測定することで吸着量、吸着率、分配係数(Kd)を、それぞれ式(7)、(5)、(6)で算出した。
吸着量:((C0−Ct))×V/m (7)
ここで、C0:吸着前の重金属イオン濃度(ppm)、Ct:2日間攪拌吸着後の重金属イオン濃度(ppm)、V:試験溶液体積(ml)、m:吸着剤質量(g)である。
吸着結果を表3に示す。Li添加(NLiMO)、Fe添加(NFeMO)、Ti添加(NTiMO)吸着剤は、特に高いCo吸着性能を示し、無添加(NMO)吸着剤より高いCo吸着性能を有する。Li添加(NLiMO)、Fe添加(NFeMO)、Ti添加(NTiMO)、無添加(NMO)吸着剤は従来吸着剤のA−ZeoliteやNa−Birnessite系吸着剤より高い吸着性能を示した。
各吸着剤0.04gを計量して、50 ppmのCo2+を含む溶液(40mL、pH4.4)を用いてCo2+吸着を行った。吸着実験後、溶液をろ過し、ろ液中のCo2+の濃度をICPで測定することで吸着量、吸着率、分配係数(Kd)を、それぞれ式(7)、(5)、(6)で算出した。
吸着量:((C0−Ct))×V/m (7)
ここで、C0:吸着前の重金属イオン濃度(ppm)、Ct:2日間攪拌吸着後の重金属イオン濃度(ppm)、V:試験溶液体積(ml)、m:吸着剤質量(g)である。
吸着結果を表3に示す。Li添加(NLiMO)、Fe添加(NFeMO)、Ti添加(NTiMO)吸着剤は、特に高いCo吸着性能を示し、無添加(NMO)吸着剤より高いCo吸着性能を有する。Li添加(NLiMO)、Fe添加(NFeMO)、Ti添加(NTiMO)、無添加(NMO)吸着剤は従来吸着剤のA−ZeoliteやNa−Birnessite系吸着剤より高い吸着性能を示した。
<実験例3>
この実験では、NMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
3−1:NMO系吸着剤の合成
最初に、NMO系吸着剤を以下のようにして合成した。
モル比Na/Mn=0.4:1〜1:1の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
この実験では、NMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
3−1:NMO系吸着剤の合成
最初に、NMO系吸着剤を以下のようにして合成した。
モル比Na/Mn=0.4:1〜1:1の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
3−2:NMO系吸着剤のXRD
得られた合成試料をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図11にはそのXRD測定結果を示す。NMO(Na/Mn=0.4)では、2θ=16.3度、30.2度、及び30.8度付近のピーク位置からNa0.4MnO2トンネル構造の結晶相が生成し、Na/Mn=0.6以上では2θ=16度、32度、及び37度付近ピークよりNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成したことが分かった。
得られた合成試料をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図11にはそのXRD測定結果を示す。NMO(Na/Mn=0.4)では、2θ=16.3度、30.2度、及び30.8度付近のピーク位置からNa0.4MnO2トンネル構造の結晶相が生成し、Na/Mn=0.6以上では2θ=16度、32度、及び37度付近ピークよりNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成したことが分かった。
3−3:NMO系吸着剤の海水中における重金属に対する吸着性能
上記のように合成したNMO系試料0.05gを、10ppmの重金属イオンCo(II)、Ni(II), Cd(II), Hg(II),Sr(II)をそれぞれ含有する海水溶液50 mlに入れ、スターラーを用いて2日間攪拌し、重金属イオンの吸着実験を行った。その後、ろ過して吸着剤と試験溶液を分離した。ろ過した試験溶液の重金属イオン濃度をICPで測定した。重金属イオン吸着率(%)は、吸着前と吸着後の重金属イオン濃度から式(5)により求めた。
上記のように合成したNMO系試料0.05gを、10ppmの重金属イオンCo(II)、Ni(II), Cd(II), Hg(II),Sr(II)をそれぞれ含有する海水溶液50 mlに入れ、スターラーを用いて2日間攪拌し、重金属イオンの吸着実験を行った。その後、ろ過して吸着剤と試験溶液を分離した。ろ過した試験溶液の重金属イオン濃度をICPで測定した。重金属イオン吸着率(%)は、吸着前と吸着後の重金属イオン濃度から式(5)により求めた。
吸着結果を表4に示す。Na/Mn=0.4のNMO試料は、重金属イオンの吸着率が低く、その他の吸着剤は高い吸着率を示す傾向が見られた。前述のようにXRD測定のピーク位置からNa/Mn=0.4のNMO試料ではNa0.4MnO2トンネル構造と同じ構造の結晶相が生成し、Na/Mn=0.6以上の試料ではNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成していたことが分かっているので、Na0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造はNa0.4MnO2トンネル構造の結晶相より重金属イオンの吸着に有効であると言える。さらにNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造は、他の重金属イオンと比べ、Co2+に対して、Srと同程度に高い吸着率を示した。また、Co2+の吸着では、NMO(Na/Mn=0.7)がもっとも高い吸着率を示し、Na/Mn=0.7付近の組成が吸着剤に最適である。Na/Mnの範囲としては、0.6≦Na/Mn≦0.9、特に0.6≦Na/Mn<0.9が好ましい。
上記実験により、焼成温度500℃ではNa/Mn=0.7付近の組成が最も吸着性能が高いことが分かったので、今度は、Na/Mn=0.7の試料組成で焼成温度を変化させて吸着剤試料を作成して、吸着性能を比較した。
3―4::異なる焼成温度でのNMO系吸着剤の合成
モル比Na/Mn=0.7の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃〜1100℃で4時間焼成し、試料を合成した。これらの試料についてXRD測定装置を用いてXDRを観測した。図12には合成した試料のXRDを示す。すべての温度ではNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成した。
3―4::異なる焼成温度でのNMO系吸着剤の合成
モル比Na/Mn=0.7の割合でNa2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃〜1100℃で4時間焼成し、試料を合成した。これらの試料についてXRD測定装置を用いてXDRを観測した。図12には合成した試料のXRDを示す。すべての温度ではNa0.7MnO2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成した。
各試料について上述と同じ方法で海水中における重金属の吸着性能を測定した。吸着結果を表5に示す。合成温度の増加に伴い、重金属の吸着率が低下する傾向が見られた。同じ合成温度では他の重金属イオンと比べ、Co2+に対しては、Srに対する吸着性能と同程度に高い吸着率を示した。この中でも、500℃で合成した試料は、Co2+に対する吸着率がもっとも高いことから、この焼成温度が最適であることが分かる。焼成温度の範囲としては、400℃以上で且つ900℃未満、好ましくは400℃〜600℃が適切と考えられる。
<実験例4>
この実験では、NLMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
4−1:NLMO系吸着剤の合成
最初に、NLMO系吸着剤を以下のようにして合成した。
モル比Na/Li/Mn=0.4:0.15:0.85〜1.0:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
この実験では、NLMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
4−1:NLMO系吸着剤の合成
最初に、NLMO系吸着剤を以下のようにして合成した。
モル比Na/Li/Mn=0.4:0.15:0.85〜1.0:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合・粉砕した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃で4時間焼成し、試料を合成した。
4−2:NLMO系吸着剤のXRD
得られた合成試料をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図13にはそのXRD測定結果を示す。Na/(Li+Mn)=0.6以上のNLMOでは、2θ=16度、32度、及び37度付近ピークよりNa0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成したことが分かった。Na/(Li+Mn)=0.5以下のNLMOでは、その他の結晶相も生成したことが分かった。
得られた合成試料をXRD測定装置(SHIMADZU XRD−6100)により測定した。図13にはそのXRD測定結果を示す。Na/(Li+Mn)=0.6以上のNLMOでは、2θ=16度、32度、及び37度付近ピークよりNa0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造が生成したことが分かった。Na/(Li+Mn)=0.5以下のNLMOでは、その他の結晶相も生成したことが分かった。
4−3:NLMO系吸着剤の海水中における重金属に対する吸着性能
上記のように合成したNLMO系試料0.05gを、実験例3で行ったのと同様の方法で10ppmの重金属イオンCo(II)、Ni(II), Cd(II), Hg(II), Sr(II)をそれぞれ含有する海水溶液50 mlに入れ、それぞれの重金属の吸着性を評価した。評価結果を表6に示す。
上記のように合成したNLMO系試料0.05gを、実験例3で行ったのと同様の方法で10ppmの重金属イオンCo(II)、Ni(II), Cd(II), Hg(II), Sr(II)をそれぞれ含有する海水溶液50 mlに入れ、それぞれの重金属の吸着性を評価した。評価結果を表6に示す。
表6の吸着結果からすれば、NLMO(Na/(Li+Mn)=0.4)は、重金属イオンの吸着率が低く、その他の吸着剤は高い吸着率を示す傾向が見られた。また、上記XRD測定結果を考えると、Na0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造は重金属イオンの吸着に有効である。さらにNa0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相またはそれと同じ結晶構造の結晶相は他の重金属イオンと比べ、Co2+に対して特に高い吸着率を示した。また、Co2+の吸着では、NLMO(Na/(Li+Mn)=0.6)がもっとも高い吸着率を示し、Na/(Li+Mn)=0.6付近の組成が吸着剤に最適であるが、0.4<Na/(Li+Mn)≦0.9が適切であろう。さらにNMO系吸着剤よりも高いCo2+吸着率を示しており、NMO系の組成物にLiを添加することによって一層Co2+吸着性能が高い吸着剤を製造することができることが分かる。
上記実験により、焼成温度500℃ではNa/(Li+Mn)=0.6付近の組成が最も吸着性能が高いことが分かったので、今度は、Na/(Li+Mn)=0.6の試料組成で焼成温度を変化させて吸着剤試料を作成し、吸着性能を評価した。
4―4:異なる焼成温度でのNLMO系吸着剤の合成
モル比Na/Li/Mn=0.6:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃〜1100℃で4時間焼成し、試料を合成した。これらの試料についてXRD測定装置を用いてXDRを観測した。図14には合成した試料のXRDを示す。すべての温度でNa0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造の結晶相が生成した。
モル比Na/Li/Mn=0.6:0.15:0.85の割合でNa2CO3とLi2CO3とMnCO3をそれぞれ秤量した。秤量した粉末をエタノールでペースト状にし、ボールミルで混合した。これを乾燥させ、その粉末を乳鉢ですりつぶした後、500℃〜1100℃で4時間焼成し、試料を合成した。これらの試料についてXRD測定装置を用いてXDRを観測した。図14には合成した試料のXRDを示す。すべての温度でNa0.7(Li+Mn)O2.05層状構造結晶相と同じ結晶構造の結晶相が生成した。
各試料について上述と同じ方法で海水中における重金属の吸着性能を測定した。吸着結果を表7に示す。合成温度の増加に伴い、重金属の吸着率が低下する傾向が見られた。同じ合成温度では他の重金属イオンと比べ、Co2+に対しては、Srに対する吸着性能と同程度に高い吸着率を示した。この中でも、500℃及び600℃で合成した試料は、Co2+に対する吸着率が900℃で焼成したものより高いことから、少なくともこの焼成温度500〜600℃が最適であることが分かる。適切な焼成温度範囲としては、400℃以上で且つ900℃未満、好ましくは400℃〜600℃と考えられる。
<実験例5>
この実験では、NTMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
5−1:NTMO系吸着剤の合成
多価金属(T)としてAl(III),Co(II), Cu(II),Mg(II), Nb(II),Ni(II), Zn(II)をそれぞれ用いて、モル比Na/T/Mn=0.60:0.22:0.78の割合でNa2CO3とT金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物とMnCO3をそれぞれ秤量し実験例2と同様の方法で、Na0.6T0.22Mn(IV)0.78O2を固相法により合成した。合成した試料を実験4と同じ方法で海水中における重金属の吸着性能を測定した。吸着結果を表8に示す。
この実験では、NTMO系吸着剤の組成による重金属イオン吸着への影響を調べた。
5−1:NTMO系吸着剤の合成
多価金属(T)としてAl(III),Co(II), Cu(II),Mg(II), Nb(II),Ni(II), Zn(II)をそれぞれ用いて、モル比Na/T/Mn=0.60:0.22:0.78の割合でNa2CO3とT金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物とMnCO3をそれぞれ秤量し実験例2と同様の方法で、Na0.6T0.22Mn(IV)0.78O2を固相法により合成した。合成した試料を実験4と同じ方法で海水中における重金属の吸着性能を測定した。吸着結果を表8に示す。
海水中の重金属の吸収試験の結果からすれば、多価金属(T)としてNb(II)を除く多価金属で置換されたNTMO系吸着剤は、Co及びCdに対してNi及びHgよりも高い吸着性能を示した。これらの多価金属のうち、特に、Al(III)、Mg(II)及びZn(II)で置換されたNTMO系吸着剤は、Srに対する吸着と同等の吸着性能を示した。なお、実験例2では、Na/(T+Mn)=0.6の場合に、Na0.7MnO2.05結晶相と同じ結晶構造を有する結晶相が生成していることからすれば、少なくともNa/(T+Mn)=0.6以上が有効な組成比であると考えられる。
<実験例6>
ここで、実験2で合成したNLMO系吸着剤のCoイオンの吸着等温線を測定した。
NLMO系吸着剤の0.04gを計量して、それぞれ25,50,75,100,120,150 ppmのCo2+を含む溶液(40mL、pH4.4)を用いてCo2+イオンの吸着を行った。吸着実験後、溶液をろ過し、ろ液中のCo2+の濃度をICPで測定することで吸着量を、式(7)で算出し、吸着等温線を作成し、図15に示す。
吸着等温線はラングミュア式(実線)に対応することから、Co2+の吸着は化学吸着であることがわかった。ラングミュア式から飽和吸着量と吸着反応定数を求めた。Co2+の飽和吸着量と吸着反応定数はそれぞれ98.7 mg/gと0.75L/molであり、高い吸着量を示した。
ここで、実験2で合成したNLMO系吸着剤のCoイオンの吸着等温線を測定した。
NLMO系吸着剤の0.04gを計量して、それぞれ25,50,75,100,120,150 ppmのCo2+を含む溶液(40mL、pH4.4)を用いてCo2+イオンの吸着を行った。吸着実験後、溶液をろ過し、ろ液中のCo2+の濃度をICPで測定することで吸着量を、式(7)で算出し、吸着等温線を作成し、図15に示す。
吸着等温線はラングミュア式(実線)に対応することから、Co2+の吸着は化学吸着であることがわかった。ラングミュア式から飽和吸着量と吸着反応定数を求めた。Co2+の飽和吸着量と吸着反応定数はそれぞれ98.7 mg/gと0.75L/molであり、高い吸着量を示した。
本発明の重金属イオン吸着剤は、原子力発電所の事故により排出された放射線汚染水などの重金属イオンを含む海水や、高塩濃度溶液から重金属イオンを除去するのに利用できる。特に、層間内にナトリウムイオンが存在しているマンガン酸化物を含む重金属イオン吸着剤のうち、NMO系吸着剤は、コバルトイオンをストロンチウムイオンと同程度に吸着除去することができ、NLMO系吸着剤及びNTMO系吸着剤は、コバルトイオンとカドミウムイオンをストロンチウムイオンと同程度に吸着除去することができるため、原子力発電所の事故により排出された放射線汚染水の浄化に極めて有効である。また、そのような放射線汚染水の浄化のみならず、運転中の原発の冷却水や工業排水の浄化にも有効となる。よって本発明は原子力発電産業の発達に貢献することができる。
Claims (11)
- 層状結晶構造を有しており、層間内にナトリウムイオンが存在しているマンガン酸化物を含む重金属イオン吸着剤であり、
当該重金属イオンが、Pb、Cd、Co、Hg、Ni、Sb、Ruの何れかから選択される金属の重金属イオンであり、
当該マンガン酸化物が、X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15〜17度、31〜34度及び35〜38度の領域に、前記層状結晶構造に特有の回折ピークを示すことを特徴とする重金属イオン吸着剤。 - 前記重金属イオン吸着剤は、下記(1a)式で表され、
NaXMnO2+q (1a)
式中、xは、0.6≦x≦0.9を満足する数であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
前記重金属イオンがCoである請求項1に記載の重金属イオン吸着剤。 - 前記層状結晶構造の(001)面の面間隔は、5.55〜5 .57Åである請求項1または2に記載の重金属イオン吸着剤。
- Na0.7MnO2.05層状結晶構造を有するマンガン酸化物を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の重金属イオン吸着剤。
- 前記重金属イオン吸着剤は、下記式(1):
(1) NaxTyMn1−yO2+q
式中、Tは、多価金属を示し、
x及びyは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.44であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、
前記重金属イオンがCoまたはCdである請求項1に記載の重金属イオン吸着剤。 - 前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Co、Ni、CuまたはMgである請求項5に記載の重金属イオン吸着剤。
- 前記式(1)における多価金属TがAl、Zn、Mgである請求項6に記載の重金属イオン吸着剤。
- 前記重金属イオン吸着剤は、下記式(2):
(2) NaXLiZMn1−ZO2+q
式中、Liは、Mnと置換されたリチウム原子であり、
x及びzは、それぞれ、0.6≦x≦0.9、0<z≦0.33であり、
qは、0≦q≦0.5を満足する数である、
で表される原子組成を有し、
前記重金属イオンがCoまたはCdである請求項1に記載の重金属イオン吸着剤。 - ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物とを混合し、得られた混合物を400℃以上、900℃未満の温度で焼成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の重金属イオン吸着剤の製造方法。
- ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物と、多価金属塩、多価金属酸化物及び多価金属水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の多価金属源化合物を混合し、得られた混合物を400℃以上の温度で焼成することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の重金属イオン吸着剤の製造方法。
- ナトリウム塩、ナトリウム酸化物及びナトリウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の層間金属源化合物と、マンガン塩、マンガン酸化物及びマンガン水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のマンガン源化合物と、リチウム塩、リチウム酸化物及びリチウム水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種のリチウム源化合物を混合し、得られた混合物を400℃以上、900℃未満の温度で焼成することを特徴とする請求項8に記載の重金属イオン吸着剤の製造方法。
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Cited By (1)
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CN114804210A (zh) * | 2022-05-13 | 2022-07-29 | 成都大学 | 一种层型锰系氧化物及其制备方法与应用 |
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2019
- 2019-12-03 JP JP2019218739A patent/JP2020093251A/ja active Pending
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