明 細 書 選択吸着剤およびその製造方法 技術分野
本発明は、 水溶液から硝酸イオン、 リンおよびヒ素を同時かつ選択的に吸着除 去できる吸着剤およびその製造方法に関する。 背景技術
ヒ素は急性毒性のみならず発がん性および慢性毒性を有するため、 環境基本法 「公共水域の水質基準」 において、 または 「水道法に基づく水質基準に関する省 令」 において 0. 0 l mgZL以下という基準が設けられている。 従って地下水、 河川水、 湖沼水等を飲料水として利用するためには、 これら被処理水中のヒ素を 除去する必要がある。 ヒ素は工場排水由来よりも、 地殻起源であることが多く地 下水脈に溶出し井戸水等を汚染する問題がある。
河川水または地下水中においてヒ素はそのほとんどが 3価の亜ヒ酸または 5価 のヒ酸として存在し、 特に地下水等の還元雰囲気中では 3価の亜ヒ酸が支配的で ある。 従来、 3価の亜ヒ酸は吸着処理による除去が困難であるとされ、 前処理と して 5価のヒ酸に酸化してから処理されることが多かった。
ヒ素の代表的な除去法としては、 凝集沈殿法と吸着法が知られている。 凝集沈 殿法は、 被処理水にアルミニウム塩や鉄塩などの無機質凝集剤を添加した後、 P H調整して金属水酸化物の凝集体を沈殿させる際に、 該凝集体にヒ素を取り込ん で共沈させて分離する方法である。 しかし、 凝集沈殿法は、 ヒ素濃度によっては その処理に多量の凝集剤を必要とし、 生成するヒ素含有スラッジは嵩高いァモル ファス状であるため沈降させるのに大掛かりな設備と多大な時間を要する他、 多 量に生成するスラッジやろ材の処理が煩雑で手数を要する。 また、 凝集沈殿法で は 3価の亜ヒ酸をあらかじめ酸化剤を用いて 5価のヒ酸に酸化した後に除去処理 を行う必要があった。
吸着法は、 ヒ素を含む被処理水を吸着剤に接触させて吸着除去する方法であり、 吸着剤としては活性炭、 活性アルミナ、 ゼォライト、 チタン酸、 ジルコニウム水 和物など力使用される。
セリウム、 鉄粉および活性アルミナ等の周知のヒ素吸着剤を使用する方法は、 凝集沈殿法に較べて優れた除去効率を得られるが、 ヒ素に対する選択性の面で不 十分であり、 実用面で満足できる程のヒ素除去効果は得られていない。 また、 セ リゥム、 鉄粉および 性アルミナ等の周知のヒ素吸着剤においては等電点が中性 付近にあるため、 処理水の p Hが 7〜 8を超えると表面電荷が負になりヒ素の吸 着能を失うという欠点があつた。
ジルコニウム系吸着剤としては、 ジルコニウム、 酸化ジルコニウム、 炭酸ジル コニゥム、 リン酸ジルコニウム、 含水酸化ジルコニウム等が知られており、 これ らジルコニウム化合物を造粒したり、 担体に担持させて用いることが行なわれて いる (特許文献 1および非特許文献 3 )。 担体としては、 リン酸基を有する反応 性モノマーをグラフト重合して得た不織布 (特許文献 2 )、 アルミニウム ·マグ ネシゥム複合酸化物 (特許文献 3 )、 ゲ一夕イト (特許文献 4 ) および陽イオン 交換基結合型シリカゲル (非特許文献 3 )、 球形樹脂ビーズ (非特許文献 4 ) 等 が挙げられる。
ハイドロタルサイトゃパイ口ライトを用いた水溶液中の亜ヒ酸イオンまたはヒ 酸イオン吸着剤は、 非特許文献 1、 特許文献 5および特許文献 9に開示されてい るように公知である。 非特許文献 1、 特許文献 6および特許文献 7にはハイド口 タルサイ卜の炭酸イオンの一部を塩化物イオンに置換した化合物をヒ素の除去に 用いることが記載されている。 しかしながら、 上記文献には競合イオンが存在す る場合のヒ素に対する吸着選択性については述べられていない。
特許文献 8には、 空気中の二酸化炭素による炭酸汚染や処理水中の炭酸イオン との競合の影響を受けずに処理水中の陰イオン吸着能を維持するハイドロタルサ ィ卜が開示されている。
特許文献 8の段落 0 0 0 6および実施例 1には、 硝酸マグネシウムと硝酸アル ミ二ゥムの混合酸性溶液と水酸化ナトリゥム水溶液とを、 反応系が常に p H 8以
下となるように N a +ZM g 2 +の m o 1比を 2 . 5〜3 . 0の範囲に調整して一 気に混合、 攪拌し、 得られたスラリーをろ過、 洗浄および乾燥することで、 高い 陰イオン交換能を有し、 二酸化炭素や炭酸イオン、 硫酸イオン、 硝酸イオン、 塩 化物イオン等が存在する環境でも期待される陰イオン交換能を発揮するハイドロ タルサイト力 s得られることが記載されている。 し力、し、 非特許文献 1、 特許文献 6〜8のいずれにもヒ素と硝酸の同時吸着性についての記載はない。
近年農耕地の肥料や生活排水に含まれるアンモニア力酸化されて生成した硝酸 態窒素による地下水汚染が問題となっている。 硝酸態窒素を多量に摂取した場合、 一部が消化器内の微生物により還元されて、 体内に亜硝酸態窒素として吸収され、 血中でヘモグロビンと結合してメトヘモグロビンとなり、 メトヘモグロビン血症 を引き起こしたり、 また硝酸態窒素は胃の中で発ガン性の N—二トロソ化合物を 生成する。 そのため環境基本法 「公共水域の水質基準」 において、 または 「水道 法に基づく水質基準に関する省令」 において 1 O m gZL以下という基準が設け られている。 従って地下水、 河川水および湖沼水等を飲料水として利用するため には、 これら被処理水中の硝酸イオンを除去する必要がある。
硝酸イオンを除去する技術としては、 微生物による生物学的方法およびイオン 交換法、 電気透析法、 逆浸透法、 吸着法等の物理化学的方法力知られている。 上 記のなかでも吸着法は簡便性の点で優れている除去方法である。 吸着剤としては、 塩化鉄処理した木炭や黒ポク土等がよく知られている、 より安価な素材で硝酸ィ オンを効率よく除去することのできる技術の開発が望まれていた。
非特許文献 2には、 例えば下記式 (2 ) で表わされる g— F e— A 1— C 1 型ハイドロタルサイ卜のリン酸、 硝酸イオン除去能力について記載されている。
Mg。.666Fe (111) o. 162A10. m (OH) 2 (C1) 0.14。 · (C03) 0.。l21 · 0. 328H20 ( 2 ) しかし、 リン酸や炭酸イオンが共存するときには、 式 (2 ) のハイド口タルサ イトの硝酸イオンに対する選択性力低いために、 硝酸イオンをほとんど除去でき ない。
特許文献 1 0には、 下記式 (3 ) で例示される結晶性複合金属水酸化物、 その 水熱処理物およびそれらの加熱処理物の中から選ばれた少なくとも 1種を有効成
分とすることを特徴とする硝酸イオン吸着剤が開示されている。
[Ni (I I) 0.79Fe (111) 0.21 (OH) 2] [(Cl)0.21 - 0.63H20] ( 3 )
特許文献 10の段落 0009によれば、 N iのかわりに Co (1 1)、 Zn (I 1)、 F e (I 1)、 Cu (I I) であってもよく、 Fe (I I I) を A 1 (I I I) 等他の 3価金属で置き換えてもよい。 さらに段落 0010によれば、 硝酸イオンとのイオン交換性を考慮すると C 1—が HC〇3-、 〇H―、 C〇3 2一ま たは N03—に置き換わっていてもよい。 しかし、 特許文献 10には、 ヒ素を同 時に吸着する吸着剤についての記載はない。
(非特許文献 1 ) 「ハイド口タルサイトの水環境保全 ·浄化への応用」 亀 田知人、 吉岡敏明、 梅津良昭、 奥脇昭嗣; Th e Chemi c a l T ime s 2005 No. 1 通算 200号 p. 10— 16 (関東化学株式会社発 行)
(非特許文献 2) 「Remova l Cha r a c t e r i s t i c s o f Pho s pha t e and N i t r a t e I on s wi t h a n Mg-F e -A 1 -C 1 Fo rm Hy d r o t a 1 c i t e」 Tomi y u k i Kuwaba r a, H i de o Kimu r a、 S h u n z i Sun a y ama> A r i um i Kawamo t o、 H i s ami t s u O s h i ma and To s h i o S a t o ; J ou r na l o f Soc i e t y o f I no r gan i c Ma t e r i a l s, J apan 14, 17 - 25 (2007)
(非特許文献 3) 「固相抽出法による環境水中のヒ素 (I I I) およびヒ素 (V) の簡単な現場同時補集濃縮/定 SJ 奥村稔、 藤永薫、 清家泰、 永田美香、 松尾修士; BUNSEKI KAGAKU vo l. 52、 No. 12 pp. 1147-1152 (2003)
(非特許文献 4) 「R emo v a 1 o f As (I I I) and As
(V) by a Po r ous Sphe r i c a l Re s i n Load e d wi t h Mo n o c 1 i n i c Hyd r ou s Z i r c on i um 〇x i de」 To s h i s h i ge M. Suz uk i, J ohn O.
B oma n i , H i d e y u k i Ma t s un aga and To s h i
Y o k o y ama ; C h e m l s t ry Le t t e r s v o 1. 2
No. 11 p. 111 9一 1 1 2 0 (1997)
(特許文献 1) 特開平 1 0一 1 6 5 948号公報
(特許文献 2) 特開 20 0 4一 1 8 8307号公報
(特許文献 3) 特開 20 0 0— 7 0 927号公報
(特許文献 4) 特開 20 0 7- 1 9 6170号公報
(特許文献 5) 特開 20 0 0— 3 3 387号公報
(特許文献 6) 特開 20 0 7一 7 4 1号公報
(特許文献 7) 特開 20 0 0— 2 3 3188号公報
(特許文献 8) 特開 20 0 6— 3 3 4456号公報
(特許文献 9) 特開 20 0 1一 2 3 3619号公報
(特許文献 10) 特開 2 0 04 ― 1 30200号公報 発明の開示
ハイド口タルサイト (以下 「HT」 と略称することがある) 微粒子は、 イオン 交換反応により、 無機ァニオンおよび有機ァニオンを素早く吸着する吸着剤であ ることが知られている。
しかし、 通常の HTのイオン交換選択性は多価陰イオンに大きく、 1価陰ィォ ンに対しては小さく、 荷電密度の小さい硝酸イオンに対してはとりわけ小さく、 他の陰イオンとの共存系ではほとんど吸着除去することは望めないのが実状であ た。
従って本発明の目的は、 硝酸イオンおよびヒ素の吸着容量が大きいハイドロ夕 ルサイト系の吸着剤を提供することにある。 また本発明の目的は、 硝酸イオンお よびヒ素の選択性が大きい吸着剤を提供することにある。 また本発明の目的は、 共存する陰イオンの妨害をさほど受けずに硝酸イオンおよびヒ素を効果的に除去 することができる吸着剤を提供することにある。 さらに、 本発明の目的は、 硝酸 イオンおよびヒ素を同時に吸着除去できる安全な選択吸着剤を提供することにあ
る。
また本発明の目的は、 該吸着剤の製造方法を提供することにある。
本発明者は、 優れた硝酸イオンの吸着剤を見出すため、 ハイド口タルサイトを 構成する 2価金属イオン、 3価金属イオンおよびァニオン種の種類並びに金属ィ オンのモル比に着目して検討した。 その結果、 Mg— A 1— C 1型ハイド口タル サイ卜微粒子において A 1 / (Mg+A 1 ) が 0. 16〜0. 20の範囲のもの が最も硝酸イオン吸着性に優れているという知見を得た。 すなわち図 24に示す ように、 MgZAlが 4〜5. 26の範囲のときに硝酸イオンの選択係数が 10 0を超え、 選択吸着性に優れるという実験データを得た。
さらにこの粒子を、 多価金属の可溶性塩水溶液で処理し、 多価金属化合物を表 面に存在させると、 優れた硝酸イオン吸着性を維持しつつ、 優れたヒ素およびリ ン酸イオンの吸着性を示すことを見出し、 本発明を完成した。
即ち、 本発明は、
1. 下記式 (1)
Mg^ XA 1 x (OH) 2 (C 1) x— ny · (An— ) y · mH2〇 (1)
(式中、 xは 0. 15<x<0. 34を満足する正数であり、 An—は C 1—以外 の n価の陰イオンであり、 yは正数であり、 mは 0. 1 <m< 0. 7を満足する 正数である。)
で表わされるハイドロタルサイト微粒子およびその表面に存在する X線回折で非 晶質の多価金属化合物からなる吸着剤、
2. 多価金属化合物が、 酸化物、 水酸化物、 またはそれらの複合物である前項 1 記載の吸着剤、
3. 多価金属化合物が、 Z r (IV), Fe (1 1 1)、 T i (IV) および C e ( I V) 力、らなる群より選ばれる少なくとも 1種の化合物である前項 1に記載の 吸着剤、
4. ハイド口タルサイト微粒子が、 100で以上の温度で水熱合成されたもので ある前項 1に記載の吸着剤、
5. ハイドロタルサイト微粒子が、 150〜180での温度で 2時間以上、 水熱
合成されたものである前項 1に記載の吸着剤、
6. 多価金属化合物の量が、 吸着剤の総量に対し多価金属の酸化物換算で 2〜 3 0重量%である前項 1に記載の吸着剤、
7. 式 (1) において Xが、 0. 16≤x≤0. 20を満足する前項 1に記載の 吸着剤、
8. 式 (1) において (X— ny) /xが、 0. 6≤ (x-n y) / ≤ 1. 0 を満足する前項 1に記載の吸着剤、
9. 硝酸イオン、 リン酸イオンおよびヒ素に対して同時吸着性を有する前項 1に 記載の吸着剤、
10. 下記式 (1)
Mgx_xA 1 x (OH) 2 (C I) x一 ny ' (An- ) y -mH20 (1)
(式中、 xは 0. 15<x<0. 34を満足する正数であり、 An—は C 1—以外 の n価の陰イオンであり、 yは正数であり、 mは 0. l<m<0. 7を満足する 正数である。)
で表されるハイド口タルサイト微粒子の懸濁水溶液中に、 温度 60で以下、 撹拌 下で多価金属の可溶性塩を注加して、 ハイドロタルサイト微粒子の表面に多価金 属化合物を析出させることよりなる吸着剤の製造方法、
11. 多価金属の可溶性塩が、 Fe (1 1 1)、 Z r (I V)、 T i (I V)、 C e (I I I) および Ce (I V) からなる群より選ばれる少なくとも 1種の金属 の塩化物または硫酸塩である前項 10に記載の製造方法、
である。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例の合成例 1にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 2は、 実施例の合成例 3にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 3は、 実施例の合成例 5にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 4は、 実施例の合成例 9にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 5は、 実施例の合成例 10にかかる吸着剤の SEM写真である。
図 6は、 実施例の合成例 1 3にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 7は、 実施例の合成例 1 9にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 8は、 実施例の合成例 2 1にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 9は、 実施例の合成例 2 2にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 1 0は、 実施例の合成例 2 5にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 1 1は、 実施例の合成例 2 6にかかる吸着剤の S EM写真である。
図 1 2は、 実施例の合成例 2 7にかかる吸着剤の S E M写真である。
図 1 3は、 実施例の合成例 1にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 4は、 実施例の合成例 5にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 oは、 実施例の比較例 1にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 6は、 実施例の比較例 2にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 7は、 実施例の合成例 9にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 8は、 実施例の合成例 1 3にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 1 9は、 実施例の合成例 2 3にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 2 0は、 実施例の合成例 2 5にかかる吸着剤の回折 X線図である。
図 2 1は、 実施例の合成例 2 1にかかる吸着剤の板状結晶の端面を観察した T
E M写真である。
図 2 2は、 実施例の合成例 2 7にかかる吸着剤の板状結晶の端面を観察した T EM写真である。
図 2 3は、 実施例の吸着実験例 1の吸着速度を示すグラフである。
図 2 4は、 実施例の吸着実験例 2における M g— A 1— C 1型ハイドロタルサ ィト微粒子における組成比 M gZA 1と硝酸イオンの選択係数の関係を示すダラ フである。 発明を実施するための最良の形態
〈吸着剤〉
(八イド口タルサイト微粒子)
ハイド口タルサイト微粒子は、 下記式 (1 ) で表されるハイド口タルサイ卜の
微粒子である。 式 (1) に示すように主要構成元素はマグネシウムとアルミニゥ ムで、 白色で安全な化合物である。
M i_xA 1 x (OH) 2 (C I) x-ny ' (An— ) y *mH2〇 (1) 式 (1) 中、 xは 0. 15<x<0. 34を満足する正数である。 Xが 0. 1 5<x<0. 34を満足する範囲 (すなわち 1. 94ぐ MgZA l<5. 67) でほぼ H Tの結晶相のみが得られる。
1価陰イオン、 とりわけ硝酸イオン交換選択性の点から、 Xは、 0. 16≤x ≤0. 20を満足すること力好ましい。 この範囲ではプラス電荷の中心である A 1の固溶量が少ないため A 1は互いに格子定数の 2倍以上の間隔をもって配置さ れており、 多価陰イオンを直接に電気的に中和することができないため多価陰ィ オンを安定化できない。 このため 1価陰イオンには有利となり、 とりわけ同一平 面に酸素原子があるォキソ酸の硝酸ィオンには有利となり選択吸着性が高くなる。 このことは MgZA 1の変化に対する硝酸イオンの分配係数 Kd NO 3値の測定 結果を示した図 24から明らかである。
An—は C 1—以外の n価の陰イオンである。 An—として、 吸着剤の製造中に不 可避的に入ってくる大気由来の炭酸イオン力 s挙げられる。 yは正数である。 yは、 0<y<0. 4 Xであること力 S好ましい。 具体的には yは 0〜0. 13であるこ と力好ましい。 nは陰イオンの価数である。 nは好ましくは、 1、 2または 3で ある。
本発明において HTは、 塩化物イオンを層間陰イオンとして有するので、 式 (1) において X— ny = x (つまり y = 0である) が理想的である。 塩化物ィ オン mo 1数 x— nyが小さいと吸着容量は小さくなる。 (x— ny) /xは、 0. 6≤ (x-ny) /x≤ 1. 0を満足することが好ましい。
式 (1) において、 mH2〇は、 層間水を表わす。 mは 0. 1 <m< 0. 7を 満足する。 すなわち、 本発明で用いられる HTは層間水を有する含水型である。 HTの層間隔を決めているのは層間の陰イオンと層間水であり、 硝酸イオンをィ オン交換で選択的にィン夕一力レー卜する最適の層間隔に維持するため、 この層 間水も役割を担っている。
本発明において用いられる HT微粒子は、 共沈反応法で得られた反応生成物を そのまま用いることもできる力 100で以上の温度で水熱合成されたものが好 ましい。 150〜180での温度で 2時間以上、 水熱合成されたものがより好ま しい。
HT微粒子は、 個々の板状結晶粒子が独立して存在し、 層間での陰イオン交換 の際のイオンの出入口である粒子端面が全部開放されているもの力好ましい。 (多価金属化合物)
本発明の吸着剤は、 多価金属化合物が上述の HT微粒子の表面に存在している。 本発明において多価金属化合物とは、 具体的には、 Z r (IV), Fe (1 1 1)、 C e (I V)、 T i (I V)、 V (V)、 Mn (I 1)、 Mn (I I 1)、 Mn ( I V)、 Mn (V I)、 Mn (V I 1)、 C u (I 1)、 Co (I 1)、 Co (I I 1)、 Mo (I 1)、 Mo (I I 1)、 Mo (IV), Mo (V)、 Mo (VI)、 N i (I 1)、 N i (I I I) 等の化合物である。
多価金属化合物は、 多価金属の含水酸化物、 すなわち、 酸化物、 水酸化物、 ま たはそれらの複合物である。 金属化合物として、 選択吸着性やコスト面から
Z r (IV), Fe (I I 1)、 C e (IV) または T i (IV) の酸化物、 水酸 化物、 またはそれらの複合物である。
本発明において HT微粒子の表面 ίこ析出した多価金属化合物は非晶質である。 「非晶質」 とは X線回折で非晶質であることを意味する。
本発明の吸着剤の X線回折図においては、 多価金属の酸化物結晶または水酸化 物結晶のピークが認められず Η Τの回折線のみが認められるので、 該 金属化 合物が X線回折で非晶質であることが確認できる。 また、 このことは該吸着剤が 多価金属化合物量の増加に伴い出発物質である Η Τより格段に大きな Β Ε Τ比表 面積を持つようになることからも支持される。
一般にジルコニウム、 鉄、 セリウムおよびチタン等の 金属の酸化物結晶ま たは水酸化物結晶には陰イオン吸着性があるとされているが、 これらは結晶構造 を有するので、 BET比表面積が小さく、 吸着サイトである表面水酸基も少ない ので吸着剤としては不十分であった。 一方、 本願発明の吸着剤は BET比表面積
が大きく吸着サイ卜である表面水酸基も多いので吸着能が高い。
本発明の吸着剤は、 上述の HTを多価金属の可溶性塩の水溶液で処理すること により得られる。 即ち多価金属化合物は、 多価金属の可溶性塩の加水分解によつ て生成した非晶質の化合物である。
HT微粒子の表面に析出した多価金属化合物は、 結晶化が阻止されている非晶 質の含水酸化物である。 詳しくは、 沈殿 p Hが酸性域である (4付近と低い) ァ ルミニゥムイオンは多価金属化合物と共沈物を少量形成しているととともに、 生 成 p H力低いことから^ ffi金属化合物は少量の塩化物イオンを含有していると推 測され、 これにより非晶質カ^!持されている。 更に^ ffi金属化合物の 3価および 4価の金属イオンサイ卜の一部に 3価であるアルミニウムイオンが同形置換的に 入った 水酸化物も形成されていると考えられ、 これら複数の要因で結晶化が阻 止されていると推測される。
多価金属化合物の重量は、 吸着剤の全重量に対し、 金属酸化物換算で 2〜4 0 重量%の範囲で良好な吸着性能が得られ、 より好ましくは 2〜3 0重量%の範囲 である。 2重量%未満であると吸着能が低くなり、 4 0重量%を超えると HTが その構造を維持できなくなる。
本発明の選択吸着剤は、 特徴的には、 硝酸イオン、 リンイオンおよびヒ素のよ うな人の健康にとつて有害もしくは水環境の富栄養化の原因となる複数の溶質成 分を 1つの吸着剤で同時選択的に吸着することができる。
〈吸着剤の製造方法〉
本発明の吸着剤は、 下記式 (1 )
M gト XA 1 X (OH) 2 (C 1 ) 一 η ν · (Αη— ) y ' mH2〇 ( 1 ) (式中、 Xは 0 . 1 5 < x < 0. 3 4を満足する正数であり、 An—は C 以外 の n価の陰イオンであり、 yは正数であり、 mは 0. 1 <m< 0. 7を満足する 正数である。)
で表されるハイド口タルサイト微粒子の懸濁水溶液中に、 温度 6 0 以下、 撹拌 下で多価金属の可溶性塩を注加して、 ハイドロタルサイト微粒子の表面に多価金 属化合物を析出させ製造することができる。
ハイドロタルサイト微粒子は吸着剤の項で説明した通りである。 ハイドロタル サイト微粒子は 100 以上の温度で 2時間以上、 水熱合成されたものが好まし い。
懸濁水溶液中のハイドロタルサイ卜微粒子の含有量は、 好ましくは 2〜1 Ow /v%、 より好ましくは 4〜6wZv%である。 2wZv%未満では生産性力低 く、 1 Ow v%を超えるとハイドロタルサイト粒子の表面に多価金属化合物を 均一に析出させることが困難になる。 ここで、 wZv%とは懸濁水溶液中のハイ ドロタルサイトの重量 w (g単位) と該懸濁液に用いた水の体積 V (mL単位) の比を百分率で表したものである。
多価金属の可溶性塩として、 Z r (I V)、 F e (1 1 1)、 Ce (1 1 1)、 C e (IV)、 T i (I V)、 V (V)、 Mn (I 1)、 Mn (I I 1)、 Mn (I V)、 Mn (V I)、 Mn (V I I)、 Cu (1 1)、 Co (1 1)、 Co (I I 1)、 Mo (I 1)、 Mo (I I 1)、 Mo (IV), Mo (V)、 Mo (VI)、 N i (1 1)、 N i (I I I) 等の可溶性塩力挙げられる。
なかでも F e (1 1 1)、 Z r ( I V)、 T i ( I V)、 C e (I I I) および C e (IV) からなる群より選ばれる少なくとも 1種の金属の可溶性塩が好まし い。
可溶性塩として塩化物または硫酸塩力 S好ましい。 従って、 多価金属の可溶性塩 として、 ォキシ塩化ジルコニウム、 塩化鉄(I 1 1)、 塩化チタン (I V)、 硫酸 セリウム (IV)、 塩化セリウム (I I 1)、 ォキシ塩化バナジウム (I V)、 塩 化マンガン (IV)、 塩化銅 (I 1)、 塩化コバルト (I 1)、 ォキシ塩化モリブ デン (I I I) および塩化ニッケル (I I) 等の塩化物または硫酸塩力好ましい。 塩化物のかわりに硫酸塩等を使用すると若干選択吸着性が低下することがある。 多価金属の可溶性塩が、 Fe U I I)、 Z r (IV), T i (IV), Ce (I I I) および Ce (IV) から選ばれる少なくとも 1種の金属の塩化物または硫 酸塩であることが好ましい。
多価金属の可溶性塩を注加する懸濁水溶液の温度は、 60T:以下、 好ましくは 10〜50 :、 より好ましくは 20〜40でである。 本発明の製造方法では、 懸
濁水溶液を撹拌しつつ多価金属の可溶性塩を注加する。
本発明の製造方法で得られた吸着剤の回折 X線図は、 HTの典型的な回折線を 示すのみであり、 多価金属の酸化物または水酸化物結晶の回折線は認められなレ^ このことは多価金属化合物が非晶質であることを示している。
多価金属イオンは一般に沈殿 p Hが低く、 強アルカリとの均一反応系では、 急 激に反応して水酸化物を形成し、 さらに結晶化ないしは酸化物化が進行しやすい。 し力、し、 本発明の製造方法においては弱アルカリでかつ結晶成長した HTがアル カリの役割を果たしているため、 非常に柔和なアルカリとして働き、 多価金属化 合物の生成は緩やかに進行して非晶質になりやすい。
さらに多価金属化合物は、 HT微粒子の表面に存在しなければ本発明における 課題は解決できない。 本発明においては HT微粒子の結晶表面が沈殿析出の核と しての役割を果たし、 非晶質の多価金属化合物を効率よく HT微粒子の表面に析 出させている。 これらの点で本発明において HTは非晶質の多価金属化合物をリ ン酸およびヒ素の吸着に最適化するため二重の役割をしているといえる。
通常、 6 0で以下において HT微粒子の懸濁水溶液に多価金属の可溶性塩の水 溶液を注加すると、 HT微粒子の表面には非晶質の金属水酸化物あるいは金属酸 化物、 またはこれらの複合物、 すなわち金属含水酸化物が析出する。 従って、 本 発明において HT微粒子の表面に析出する 「多価金属化合物」 とは、 非晶質の多 価金属含水酸化物である。 実際、 本発明の吸着剤を加熱処理した場合、 脱水によ る重量減少が認められ、 結晶性酸化物を生成することが X線構造解析で確認され た。 .
本発明の吸着剤の回折 X線図では、 回折線のシフト、 半価幅等の変化が認めら れないことから、 元の HT構造が保持されていることが分る。 本発明の吸着剤が 硝酸イオンの選択的吸着性能を保持している理由は、 HT微粒子の表面層の一部 は多価金属の可溶性塩水溶液との反応で溶解消費されるが、 残った本体では元の HTの形状 ·性質が維持されているためである。 従来は、 酸性の強い多価金属の 可溶性塩水溶液で処理された HTは酸溶解による結晶構造の破壊と溶解後別物質 の析出により、 硝酸イオンの吸着能等はないと推測されていたが、 本発明の方法
によれば良好な吸着性能が得られる。
本発明の吸着剤において、 非晶質多価金属化合物は HT微粒子の表面に存在す る。 このことは TEM写真において HT微粒子内部は層状構造を呈しているのに 対し、 HT微粒子の表面には層構造を持たない別の相が認められることからも確 認できる。 具体的には、 HTに対して非晶質多価金属化合物の mo 1比が小さい ときは、 HT微粒子の表面が均一に非晶質多価金属化合物で被覆された状態であ る。 非晶質多価金属化合物の mo 1比が大きくなると、 HT微粒子の表面が被覆 されるだけでなく粒子状の非晶質多価金属化合物も担持された状態になる。 実施例
以下本発明の吸着剤の製造方法および効果を実施例に基づいて具体的に説明す る。 実施例において用いた装置、 方法は以下のとおりである。
(1) 平均二次粒子径測定
レーザ回折散乱法粒度分布測定装置 MT— 3300 (日機装 (株) 製)) を用 いて測定した。
(2) BET法比表面積の測定
湯浅アイォニクス (株) 製の 12検体全自動表面測定装置マルチソープ一 12 で測定した。
(3) 粒子形状の観察
走査型電子顕微鏡 (SEM写真) で観察した。
方法:加速電圧 15 k V、 作動距離 10 mm、 倍率 2万倍
装置 ·· S— 300 ON (日立)
(4) 粒子構造の解析
X線回折により行なった。
方法: Cu— Κα、 角度 (20): 5〜65° 、 ステップ: 0. 02° 、 スキャンスピード: 4 ° 分、 管電圧: 40 k V、 管電流: 20 mV。
装置: R I NT 2200 VX線回折システム (理学電機 (株) 製)
(5) 成分分析
MgO、 A l 2〇3、 Fe2〇3、 Ce〇2:キレート滴定法による。
Z r〇2:重量法による (マンデル酸ジルコニウム沈殿)
T i〇2: UV吸収法による
C 1 :ホルハルト法による
C〇2 : J I S R9101に準ずる方法による
(6) HT粒子表面の観察
透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察した。
方法:加速電圧 200 kV (電子線照射による試料の損傷を避ける為) 装置: J EM- 3010 (日本電子 (株) 製)
本発明の吸着剤の製造方法と吸着剤の特性を実施例で説明する。 特に明記する 以外は、 反応を常温でおこない、 薬品は和光純薬 (株) の試薬 1級を用いた。 合成例 1
1. 194mo 1 ZLの塩化マグネシウムと 0. 265mo 1 ZLの塩化アル ミニゥムを含む混合水溶液 (A液: Mgノ A 1 =4. δ) を 4. 5Lおよび 3. 4mo 1 ZLの水酸化ナトリウム水溶液 (Β液) 4Lを各々調製した。
オーバーフロー管の付いた反応槽に脱イオン水 50 OmLを入れ、 勝しつつ 定量ポンプで A液 ZB液 = 1. 134/1. 00の容量比となる流量速度で 14 0分間注入して沈殿生成物を含有する懸濁液を得た。 得られた懸濁液 75 OmL を 150でで 8時間、 水熱反応させ反応懸濁液 Aを得た。
反応懸濁液 Aを濾過、 水洗および、 105でで 18時間乾燥した。 サンプルミ ルで粉碎後、 150 mの金網で篩過して吸着剤を得た。 吸着剤は粉末 X線回折、 組成分析、 粒度分布測定より Mg— Al— C 1系 (MgZA l =4. 65) の H T微粒子であった。
合成例 2
反応懸濁液 Aを室温に冷却した後、 下記の表面被覆処理操作を行い、 吸着剤を 得た。 試薬 Z r〇C 12 · 8H20、 2. 84 gを脱イオン水 100 mLに溶解 して Z r OC 12溶液を調製した後、 上記反応懸濁液 A中に滴下し 1時間反応さ せた。 生成物を濾過、 水洗、 乾燥、 粉砕および篩過して吸着剤を得た。 得られた
吸着剤の組成 mo 1比 (MgZA l) は 4. 79であった。
合成例 3
試薬 Z r〇C 12 · 8H20の量を 5. 1 1 gに変更した以外は合成例 2と同 様の方法により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZA l) は 4. 51であった。
合成例 4
試薬 Z r OC 12 · 8H2〇の量を 8. 51 gに変更した以外は合成例 2と同 様の方法により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (Mg/A l) は 4. 39であった。
合成例 5
試薬 Z r OC 12 · 8^^〇の量を14. 18 gに変更した以外は合成例 2と 同様の方法により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 MgZA l =4. 5であった。
合成例 6
1. 138mo 1 の塩化マグネシウムと 0. 285mo 1 ZLの塩化アル ミニゥムを含む混合水溶液 (C液: MgZA 1 =4. 0) を 5Lおよび上記 B液 4. 3Lを各々調製した。 容量比 (C液 ZB液) =1. 17X1. 00とする以 外は合成例 1と同様の方法により反応懸濁液 Bを得た。 さらに合成例 1と同様の 操作により吸着剤を得た。 吸着剤は、 粉末 X線回折、 組成分析、 粒度分布測定よ り Mg— A 1— C 1系 (MgZA 1 =4. 03 ) の HT微粒子であった。
合成例 7
反応懸濁液 Bを室温まで冷却した後、 試薬 Z r〇C 12 · 8H2〇の量を 7. 65 gに変更し、 反応懸濁液 Aの代わりに反応懸濁液 Bを使用した以外は合成例 2と同様の処理操作を行い、 吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (M g/A 1 ) は 4. 04であった。
合成例 8
試薬 Z r〇C 12 · 8H2〇の量を 1 5. 3 に、 反応懸濁液 Bを反応懸濁液 Dに変更した以外は合成例 2と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸
着剤の組成 mo 1比 (Mg Al) は 3. 87であった。
比較例 1
F e C 13 · 6H2〇水溶液 65 OmL ( 92 mm o 1 ) を室温で撹拌しつつ Mg〇粉末 (460mmo l) を添加し、 40分間撹拌後、 沈殿生成物懸濁液を 170でで 8時間水熱反応させた。 水熱反応液を冷却後濾過し、 脱イオン水 1 L で水洗し、 105 で 20時間乾燥させた。 乾燥物をサンプルミルで粉砕後、 1 50 mの金網で篩過して吸着剤を得た。 吸着剤は粉末 X線回折、 組成分析より、 Mg— Fe— C 1型 (MgZFe = 4. 0) のパイ口ライト ·タイプ層状複水酸 化物であった。
比較例 2
塩化マグネシウム 0. 28mo 1と塩化アルミニウム 0. 07mo lを含む混 合水溶液 30 Omlを室温下で撹捽しつつ、 上記 B液 257mLを注加し、 1時 間撹拌して沈殿生成物懸濁液を得た。
得られた沈殿生成物懸濁液を撹拌しつつ室温下、 試薬 Z r OC 12 · 8H20 ( 0. 07mo 1 ) を含む水溶液 10 OmLを加えた後、 150でで 8時間水熱 反応させた。 水熱反応液を冷却、 濾過、 水洗、 乾燥、 粉砕および篩過して吸着剤 を得た。 吸着剤は、 粉末 X線回折、 組成分析により、 Mg— A 1— C 1型 (Mg A 1=3. 65) の HTと結晶性の酸化ジルコニウムであることがわかった。 合成例 1〜 8および比較例 1〜 2で得られた吸着剤の特性を表 1に、 合成例 1 および 5、 比較例 1および 2の吸着剤の X線回折図を図 13、 14、 15および 16に、 合成例 1、 3および 5の吸着剤の SEM写真を図 1、 2および 3に各々 示す。
表中の BQ (006) および B。 (1 10) を比較することにより、 各吸着剤 の c軸方向および a b軸方向の結晶構造の変化を知ることができる。 また面間隔 は (003) 面から算出された面間隔である。
粉末 X線回折、 組成分析より合成例 2〜 5、 7および 8の吸着剤は非晶質のジ ルコニゥム化合物を表面に有する Mg— A 1 -C 1型 HT微粒子であった。
すなわち、 粉末 X線回折図からは HTの存在以外は認められないが、 化学分析
結果からジルコニウムの存在は確認できており、 さらに S E M写真および粒度分 布から HT微粒子の粒子径ばらつき、 粒子形状が本発明の処理前後で大きく変化 していないこと力確認できることより、 ジルコニウムは非晶質の化合物で HT微 粒子の表面に偏在していることがわかる。
図 1〜3 ( S EM写真) から、 ジルコニウム化合物の量力 S約 1 2 %以下の範囲 では、 HT表面は非晶質のジルコニウム化合物によって均一に被覆されているこ と力 Sわかる。
表 1 合成例 1 合成例 2 合成例3 合成例 4 合成例 5 合成例 6 合成例 7 合成例 8 比較例 1 比較例 2 gO 43.90 41.57 40.45 38.18 35.58 42.29 37.01 33.93 39.94 26.84
Al203 11.95 10.98 11.33 11.01 10.12 13.28 11.61 11.11 ― 9.32 分
析 Fe203 一 ― ― ― ― ― ― ― 19.87 ―
Zr02 一 2.66 4.76 8.04 12.10 ― 6.52 12.60 ― 22.80
CI 779 7.97 8.19 8.11 7.16 8.24 8.03 8.18 8.55 5.72
C02 ― ― ― ― ― ― ― ― 0.81 ―
MgO/AI203 9.30 9.58 9.03 8.77 9.00 8.06 8.07 7.73 ― 7.29 eO/Fe203 ― ― ― ― ― ― ― ― 7.96 ― モ Zr02/Al203 ― 0.20 0.35 0.60 0.99 ― 0.46 0.94 ― 2.03 ル
比 Cl/Al203 1.87 2.09 2.08 2.12 2.04 1.88 1.99 2.12 ― 1.77
Cl/Zr02 ― 10.45 5.94 3.53 2.06 ― 4.33 2.26 ― 0.87
Cl/Fe203 ― ― ― ― ― ― 一 ― 1.96 ― 平均' 子 ¾ m 0.451 0.623 0.709 0.591 1.284 0.504 1.626 1.641 11.230 7.420
BET比表面稹 mVg ― 27.6 28.4 32.0 ― 16.0 37.2 50.1 33.9 56.0
Bo(006) 0.261 0.268 0.271 0.297 0.254 0.208 0.207 0.207 ― 0.241
X Bo(110) 0.303 0.299 0.300 0.303 0.298 0.282 0.282 0.286 ― 0.327 線
回 格子定数 nm ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 折
面間隔 nm 0.8148 0.8158 0.8142 0.8134 0.8160 0.8126 0.8134 0.8130 ― ―
合成例 9
-1. 17mo 1ZLの塩化マグネシウムと 0. 259mo 1 ZLの塩化アルミ 二ゥムを含む混合水溶液 (Mg/A 1 =4. 5) 363mLを室温下で撹捽しつ つ前記 B液 318mLを注加し、 40分間撹拌後、 沈殿生成物を 170 で 8時 間水熱反応させて得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、 さらに濾過、 水洗、 乾 燥した。 サンプルミルで粉砕後、 15 O mの金網で篩過して吸着剤を得た。 吸 着剤は粉末 X線回折、 組成分析より Mg— Al— C 1型 (Mg/Al =4. 5) の HT微粒子であった。
合成例 10
B液の量を 32 lmLに変更した以外は合成例 9と同様の操作を実施して反応 懸濁液 Cを得た。 28. 2mmo 1の F e C 13 · 6H2〇を脱イオン水 100 mLに溶解して FeC 13水溶液を調製した。 75 OmLの反応懸濁液 Cに上記 FeC l 3水溶液を滴下し 1時間反応させた。 生成物を濾過脱水し、 脱イオン水 1 Lで水洗し、 105でで 20時間乾燥した。 サンプルミルで粉碎後、 150 mの金網で篩過して吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZA 1 ) は 4. 19であった。
合成例 11
試薬 F eC 13 · 6H20の量を 47. Ommo 1とした以外は、 合成例 10 と同様に処理操作を行い、 吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (Mg ノ A 1 ) は 3. 84であった。
合成例 12
試薬 F e C 13 · 6H2〇の量を 56. 4mmo 1とした以外は、 合成例 10 と同様に処理操作を行い、 吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (Mg ZA 1 ) は 3. 82であった。
合成例 13
試薬 F e C 13 · 6H2〇の量を 70. 5mmo 1とした以外は、 合成例 10 と同様に処理操作を行い、 吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (Mg ノ A 1 ) は 3. 72であった。
合成例 14
1. 187mo 1/Lの塩化マグネシウムと 0. 29mo 1 ZLの塩化アルミ 二ゥムを含む混合水溶液 (Mg/A 1 =4. δ) 345mLを室温下で撹拌しつ つ B液 304mLを注加し、 40分間撹拌後、 沈殿生成物懸濁液を 170でで 8 時間水熱反応させた以外は合成例 9と同様の操作により吸着剤を得た。 吸着剤は 粉末 X線回折、 組成分析より Mg— Al— C 1型 (MgZAl =4. 1) の HT 微粒子であった。
合成例 15
B液の量を 313 mLに変更した以外は合成例 9と同様の操作を実施して反応 懸濁液 Dを得た。 さらに、 反応懸濁液 Cを反応懸濁液 Dにした以外は、 合成例 1 0と同様に操作し吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZAl) は 3. 6であった。
合成例 16
Mg濃度を 1. 36mo 1ZLに調製した、 工業原料用塩化マグネシウムの水 溶液と 1 mo 1 /Lの硫酸アルミニウム水溶液を含む混合水溶液 (Mg/A 1 = 5. 0) を室温で撹拌しつつ前記 B液 326mLを注加し、 合成例 9と同様にし て水熱反応させた。 得られた反応懸濁液 Eを合成例 9と同様に操作して吸着剤を 得た。 得られた吸着剤は粉末 X線回折、 組成分析、 粒度分布測定より、 Mg— A 1— C 1型 (MgZA 1 =4. 94) の HT微粒子であった。
合成例 17
試薬 F e C 13 · 6H20の量を 54. Ommo 1に、 反応懸濁液 Cを反応懸 濁液 Eに変更した以外は合成例 10と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得ら れた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZAl) は 4. 19であった。
合成例 18
F e C 13 · 6H2〇の量を 81. Ommo 1に、 反応懸濁液 Cを反応懸濁液 Eに変更した以外は合成例 10と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた 吸着剤の組成 mo 1比 (MgZAl) は 3. 66であった。
合成例 19
F e C 13 · 6H2〇の量を 9 Ommo 1に、 反応懸濁液 Cを反応懸濁液 Eに 変更した以外は合成例 10と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸着 剤の組成 mo 1比 (MgZA l) は 3. 48であった。
合成例 20
F e C 13 · 6H20の量を 141mm o 1に、 反応懸濁液 Cを反応懸濁液 E に変更した以外は合成例 10と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸 着剤の組成 mo 1比 (MgZAl) は 2. 52であった。
比較例 3
F e C 13 · 6H2〇水溶液 65 OmL (104mmo 1 ) を室温で撹拌しつ つ市販品の Mg (OH) 2粉末 (484mmo l) を添加し、 40分間撹拌後、 沈殿生成物を 170 で 8時間水熱反応させた。 水熱反応液を冷却後濾過し、 脱 イオン水 1 Lで水洗し、 105でで 20時間乾燥させた。 サンプルミルで粉碎後、 150// mの金網で篩過して吸着剤を得た。 吸着剤は粉末 X線回折、 組成分析よ り、 Mg— Fe—C 1型 (MgZFe = 3. 6 δ) の層状複水酸化物 (パイロラ イト ·タイプ) であった。
合成例 9〜 20および比較例 3で得られた吸着剤の性質を表 2に、 合成例 9お よび 13の吸着剤の X線回折図を図 17および 18に、 合成例 9、 10、 13お よび 19の吸着剤の S ΕΜ写真を図 4〜 7に各々示す。
粉末 X線回折、 組成分析より合成例 10〜13、 15および 17〜20の吸着 剤は非晶質の第二鉄化合物を表面に有する Mg— A 1 -C 1型 HT微粒子である ことがわかった。
すなわち、 粉末 X線回折図からは HTの存在以外は認められないが、 化学分析 結果から第二鉄の存在は確認できており、 さらに S EM写真および粒度分布から HT微粒子の粒子径ばらつきおよび粒子形状が本発明の処理前後で大きく変化し ていないことが確認できることより、 第二鉄は非晶質の化合物で HT微粒子の表 面に偏在していることがわかる。
図 4〜6 (SEM写真) から、 第二鉄化合物の量が約 15%以下の範囲では H T微粒子の表面は非晶質の第二鉄化合物によって均一に被覆されているが、 この
範囲を超えると HT微粒子の表面に粒子状の第二鉄化合物も担持された状態にな ることがわかる (図 7 )。
表 2
合成例 21
2. 069mo 1 ZLの塩化マグネシウム溶液 204. 4mlと 1. 038m o 1ZLの塩化アルミニウム溶液 90. 6mLとの混合水溶液 (Mg/A 1=4. 5) を室温下攪拌しつつ 3. 38 mo 1ZLの水酸化ナトリウム水溶液 320m Lを注加し、 30分間攪拌後沈殿生成物を 170でで 8時間水熱反応させた。 得られた反応懸濁液 Fを室温まで冷却し、 さらに濾過、 水洗、 乾燥した。 サン プルミルで粉碎後、 150 z/mの金網で篩過して吸着剤を得た。 吸着剤は粉末 X 線回折、 組成分析より Mg— A 1 _C 1型 (MgZA 1 =4. 42) の HT微粒 子であった。
合成例 22
冷却後 1 L容器に反応懸濁液 Fを入れ、 攪拌しつつ 0. 47mo lZLの T i (S〇4) 2溶液 33mL (14mmo 1 ) を滴下し 1時間反応させた。 生成物 を濾過し、 脱イオン水 1 Lで水洗し 105 :で 20時間乾燥した。 サンプルミル で粉砕後、 15 O zmの金網で篩過して吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 m o 1比 (MgZA 1 ) は 3. 68であった。
合成例 23
0. 471110 1 の丁 1 (S04) 2溶液の滴下量を 7 OmLに変更した以 外は合成例 22と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 m o 1比 (MgZA 1 ) は 3. 31であった。
合成例 24
0. ymo lZLの T i (S〇4) 2溶液の滴下量を 10 OmLに変更した 以外は合成例 22と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZA 1 ) は 2. 84であった。
合成例 25
0. 471110 1 /1^の丁 1 (S〇4) 2溶液の滴下量を 15 OmLに変更した 以外は合成例 22と同様の処理操作により吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (MgZA 1 ) は 2. 11であった。
反応懸濁液 Fを 1 L容器に入れ、 攪拌しつつ 0. 141mo l/Lの Ce (S 〇4) 2溶液 l O OmL (14. lmmo l) を滴下し 1時間反応させた。 その 後は合成例 22と同様に処理して吸着剤を得た。 得られた吸着剤の組成 mo 1比 (Mg/A 1) は 4. 37であった。
合成例 27
0. S i ymo lZLの C e (S〇4) 2溶液 130mL (28. 2mmo 1) を滴下すること以外は合成例 25と同様にして吸着剤を得た。 得られた吸着 剤の組成 mo 1比 (MgZAl) は 4. 00であった。
合成例 21〜 27で得られた吸着剤の性質を表 3に、 合成例 23および 25の 吸着剤の X線回折図を図 19および 20に、 合成例 21、 22、 25、 26およ び 27の吸着剤の SEM写真を図 8〜12に各々示す。 また、 合成例 21および 27の吸着剤の TEM写真を図 21および 22に示す。
粉末 X線回折、 組成分析より合成例 22〜 25および合成例 26〜 27の吸着 剤は各々非晶質のチタンまたはセリウム化合物を表面に有する Mg— A 1一 C 1 型 HT微粒子であることがわかった。
すなわち、 粉末 X線回折図からは HTの存在以外は認められないが、 化学分析 結果からチタンまたはセリゥムの存在は確認できており、 さらに S EM写真およ び粒度分布から HT微粒子の粒子径ばらつきおよび粒子形状が本発明の処理前後 で大きく変化していないこと力確認できることより、 チタンまたはセリゥムは非 晶質の化合物で HT微粒子の表面に偏在していることがわかる。 図 8〜10 (SEM写真) から、 チタン化合物の量が約 3重量%以下の範囲では HT微粒子 の表面は非晶質のチタン化合物によって均一に被覆されているが、 約 17重量% を超えると HT微粒子の表面に粒子状のチタン化合物も一部担持された状態にな ることがわかる。 また、 図 10、 11および 12 (SEM写真) から、 セリウム 化合物の量が約 12重量%以下の範囲では HT微粒子の表面は非晶質のセリゥム 化合物によって均一に被覆されていることがわかる。
図 21および 22は合成例 21および 27から得られた HT微粒子を、 その層 状構造をとる HT成分の層に平行な方向から観測した TEM写真である。 図 21
(T EM写真) から本発明の処理を行う前の HTにおいては HT微粒子の内部か ら表面まで層構造が認められるが、 一方図 2 2に示す本発明の吸着剤の T EM写 真においては、 H T微粒子の内部では層構造が維持されているがその表面にはセ リゥム含水酸化物の微結晶または非晶質と推察される像 (層構造一縞模様一を持 たない強いコントラスト) が観察される。 これはジルコニウム、 鉄およびチタン 等他の多価金属の場合にも同じように観察される特徴である。
表 3
次に本発明の吸着剤の効果を以下実施例で説明する。
吸着実験例 1
各 2mmo 1 ZLの NaC 1、 NaN〇3、 Na2C〇3、 NaH2P〇4、 N 2S04と 4ppmの As ( I I I ) の混合溶液 ( p H= 7. 5) 50mLに対 して、 合成例 1〜 27 (合成例 21を除く) および比較例 1〜 3で得られた各吸 着剤 0. 4 gを用いて吸着実験を行った。 2時間後に 15mLを採取し、 0. 2 mのフィルターで固液分離し、 各陰ィォン濃度はィオンクロマトグラフィーで 測定した。 ヒ素の濃度のみ I CP— MSで測定した。 分配係数 Kdは下記式によ り求めた。
Kd (mL/g) =陰イオン吸着量 (mgZg) Z陰イオン濃度 (mgZm L)
吸着実験結果をもとに計算した Kd値を表 4、 5、 および 6に示す。 表中の N 03—、 HP〇4 2-、 H2As〇3—、 S04 2—はそれぞれ硝酸イオン、 リン酸ィォ ン、 ヒ素および硫酸イオンを意味する。
また、 時間に対するヒ素濃度の変化 (吸着速度) を図 23に示す。
吸着実験例 2
合成例 1の方法にならい、 MgZAl比が 2、 3、 4、 4. 5および 5である 本発明の吸着剤を調製した。 それぞれの吸着剤につき上記方法で分配係数 Kdを 求めた結果を図 24に示す。
表 4 合成例 1 合成例 2 合成例 3 合成例 4 合成例 5 合成例 6 合成例 7 合成例 8 比較例 1 比較例 2
N03- 3,046 2,677 2,405 1,990 2,215 2,420 2,850 2,160 1,310 1,070 分
配 HP04 2" 75 128 180 218 647 80 214 771 263 610 係
数 H2As03— 269 475 702 960 2,212 ― . 692 1,884 355 一
Kd
S04 2— 11 9 9 9 12 9 9 8 57 8
合成例 9および 1 4 (または 1および 6 ) と、 比較例 1および 3の吸着剤の硝 酸イオンの分配係数 K d値を比べると、 M g— A 1一 C 1型の本発明の吸着剤は 組成が類似の従来のパイ口ライト型吸着剤に比べて硝酸イオンの選択吸着性に優 れていることがわかる。
また、 合成条件が同じである合成例 1 4、 9および 1 6の硝酸イオンの分配係 数 K d値を比較すると、 (M g ZA l ) の比が 4. 5の合成例 9で最大となり、 比がこれより小さい 4. 0の合成例 1 4ではやや低くなり比が 4. 9の合成例 1 6ではかなり低下している。 (M gZA l ) の比が 4. 5の場合に硝酸イオンの 選択吸着性に優れていること力 Sわかる。 図 2 2に示す別の実験結果からも、 硝酸 イオンの分配係数は (M gZA l ) の比が 2から 4. 5付近までの範囲では上昇 し、 約 4. 5のときがピークであり、 5では分配係数が急速に下降している。 表 1の合成例 1〜5の Z r 02含有量と表 4のヒ素の分配係数の関係、 および 表 2の合成例 9〜 1 3の F e 2〇 3含有量と表 5のヒ素の分配係数の関係より、 本発明の吸着剤は、 硝酸イオンの高い選択性を保ちながら、 HT微粒子の表面に 存在している多価金属化合物の量が多くなるほどヒ素およびリン酸イオンの選択 吸着性に優れた吸着剤となることがわかる。 一般に、 K d値が大きくなり 1, 0 0 0近くになると、 そのイオンの選択吸着剤であるとされる。
非晶質の多価金属化合物にかわって結晶性の多価金属水酸化物または酸化物を 有する場合、 リン酸イオンゃヒ素の選択吸着性が劣るだけでなく、 硝酸イオンの 選択吸着性も劣ることが、 比較例 1、 2および 3で得られた分配係数との比較よ りわかる。 すなわち結晶性のジルコニウム化合物を有する比較例 2の吸着剤の上 記 3陰イオンの K d値と合成例での K d値の比較より、 非晶質のジルコニウム化 合物を有する本発明の吸着剤が優れていることがわかる。
また、 合成例 1 0〜1 3、 1 7〜2 0および 1 5と比較例 1および 3の上記 3 陰イオンの K d値の比較より、 非晶質の第二鉄化合物を有する本発明の吸着剤が 優れていること力わかる。
同様に、 表 3の合成例 2 2〜2 5の非晶質のチタン化合物を表面に有する HT 微粒子および合成例 2 6〜2 7の非晶質のセリウム化合物を表面に有する HT微
粒子についても、 表 6の結果が示すように硝酸イオン、 ヒ素およびリン酸イオン の選択吸着剤であることがわかる。
以上のように、 本発明の非晶質の多価金属化合物を表面に有する HTは, 硝酸 イオン、 ヒ素およびリン酸イオンに対して同時吸着性を示す選択吸着剤であるこ と力 Sわかる。 発明の効果
本発明の吸着剤は、 硝酸イオンおよびヒ素の吸着容量が大きい。 また本発明の 吸着剤は、 硝酸イオンおよびヒ素の選択性が大きい。 また本発明の吸着剤は、 共 存する陰イオンの妨害をさほど受けずに硝酸イオンおよびヒ素を効果的に除去す ることができる。 また本発明の吸着剤は、 人体に対する安全性が高い。 本発明の 吸着剤は、 リン酸イオンを吸着することができる。
従って本発明の吸着剤は、 他の陰イオンの共存する溶液中において、 硝酸ィォ ン、 ヒ素およびリン酸イオンをひとつの吸着剤で同時にかつ効果的に除去できる。 本発明の吸着剤によれば、 一般淡水から硝酸イオン、 ヒ素およびリン酸イオン等 を吸着除去して安全な飲料水を製造することができる。
本発明の吸着剤は、 ヒ素の吸着の初期段階において吸着容量 ·吸着速度が著し く大きい。 この吸着現象は、 表面に多価金属化合物を有しないハイド口タルサイ ト微粒子単体では認められないものである。
本発明の製造方法によれば、 吸着剤を製造することができる。
ヒ素には、 5価あるいは 3価のヒ素からなるイオン性あるいは中性化学種が含 まれる。 硝酸イオン (N〇3 ) は硝酸およびその化合物の電離、 分解によって 主に生じる 1価の陰イオンである。
リン酸イオンには、 リン酸イオン (P〇4 )、 リン酸水素イオン (H P 04 2 一)、 リン酸二水素イオン (H2 P〇4-)、 二リン酸 (P 2〇7 )、 三リン酸 (P 3 〇1 0 5— ) などが含まれる。 産業上の利用可能性
本発明の吸着剤は、 浄水装置などに用いることができる。