JP6901807B1 - セレン酸イオンを含む水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】先行技術の持つ問題を解決しようとするものであり、セレン酸イオン除去のための反応が常温で速やかに進行し、セレン酸イオンよりもはるかに高濃度の硫酸イオンが共存する水からも効率的にセレン酸イオンおよびその他いくつかの重金属類を除去でき、汎用の薬剤を用いて、対象水の水質に応じて、現場で柔軟に各種薬剤の添加量を変更できるようなセレン酸イオンを含む水の処理方法を提供すること。【解決手段】セレン酸イオンを含む処理対象水に、カルシウム化合物及びアルミニウム化合物を添加し、処理対象水に初めから共存する硫酸イオン又は後から添加する硫酸イオンと共に、セレン酸イオンを、エトリンガイトの固溶体として除去することを特徴とするセレン酸イオンを含む水の処理方法。【選択図】なし

Description

本発明は、セレン酸イオンを含む水の処理方法に関し、詳しくはセレン酸イオンを含む地下水、湧水、産業排水などからセレン酸イオンを除去し、それらの濃度を排水基準または環境基準以下にする方法に関する。
セレンは微量元素であり,地殻における平均含有量は0.05mg/kgに過ぎない。
しかし、堆積物における平均含有量は0.4mg/kg程度と、かなり高いことが知られている。
地殻や堆積物中では、各種セレン化物鉱物や亜セレン酸塩鉱物として、そして硫化物鉱物のイオウを置換して存在する。
このため、セレン含有量の高い堆積物層を通過した地下水や湧水のセレン濃度は高くなることがある。また、セレン含有量の高い堆積物や堆積岩からなる掘削ずりを地表に放置すると、セレン化物鉱物、亜セレン酸塩鉱物、セレンを含む硫化物鉱物などに含まれるセレンが、大気中の酸素によって酸化され、セレン酸イオンとして溶出することがある。
また、金属硫化物からの金属精錬や、硫酸製造などの産業活動においてセレンを含む廃液が排出される。
セレンは動物にとっては必須元素であるが、その必要量は微量であり、過剰に摂取すると、ヒ素に類似した害作用を呈することが知られている。
このため、水質汚濁に関する環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準においては、セレン濃度は0.01mg/L以下と定められている。
また一律排水基準においては、セレン及びその化合物の濃度はセレン換算で0.1mg/L以下とされている。
それゆえ、上記基準以上の濃度のセレンを含む地下水、湧出水、浸透水、産業活動に伴う排水からセレンを除去し、セレン濃度を0.1mg/L以下あるいは0.01mg/L以下にするための技術が必要とされる。
地下水、湧出水、浸透水、排水などに溶存するセレンの主要な形態は、亜セレン酸イオンとセレン酸イオンである。しばしば前者は四価のセレン、後者は六価のセレンともよばれる。
これらのうち亜セレン酸イオンは金属酸化物や水酸化物、例えば酸化水酸化鉄鉱物との反応性が高く、これらの鉱物の表面ヒドロキシ基部分に表面錯体として強く結合する。それゆえ、このような性質を持つ鉱物を、亜セレン酸イオンを含む水に投入したり、適当な金属塩を水に投入したりして水中で加水分解させて水酸化物を生成させることにより、比較的容易に除去することができる。
一方、セレン酸イオンは、その化学的性質が硫酸イオンに類似しており、金属酸化物や水酸化物上で安定な表面錯体を形成しにくく、亜セレン酸に対して有効な除去技術では除去が困難である。
そのため、セレン酸イオンを還元して亜セレン酸イオンに転換し、亜セレン酸イオンに対する除去技術を適用する方法が開発されている。
特許文献1と特許文献2には、鉄(II)塩を用いた還元法が記載され、特許文献3には、金属鉄を用いた還元法が記載され、特許文献4には金属チタンを用いた還元法が記載されている。
また、セレン酸イオンを亜セレン酸イオンに還元することなく除去するため、セレン酸イオンに比較的選択性の高い吸着材を用いる方法も開発されている。
例えば特許文献5には、イットリウム、ランタン、セリウム又はイッテルビウムの酸化物あるいは水酸化物、メチルグルカミン基を有する素材などが記載されている。特許文献6には酸化水酸化鉄鉱物の1種であるシュベルトマナイトを用いる方法が記載されている。
この他、セレン酸イオンを亜セレン酸イオンに還元することなく溶解度の低いセレン酸化合物として沈殿除去する方法も開発されている。
例えば特許文献7には沈殿材として水溶性バリウム塩を用いる方法が記載され、特許文献8には、アルミン酸カルシウム、硫酸アルミニウム、石灰およびアルカリ金属リン酸塩を併用する方法が記載されている。
特開平10−99874号公報 特開2004−275903号公報 特開2009−220102号公報 特開2009−11914号公報 特開2013−244450号公報 特開2005−95732号公報 特開2018−158307号公報 特開2013−119056号公報
上記のように、基準を超えた濃度のセレン酸イオンを含む水からセレンを除去するため、様々な技術が開発されているが、どの技術も、セレン酸イオン含有水の処理のために広く利用されているという状況ではない。それには次のような理由があると考えられる。
セレン酸イオンを亜セレン酸イオンに還元する場合、還元反応は比較的遅い反応であり、処理目標を達成するためには、少なくとも数時間、好ましくは24時間以上の反応時間を必要とする。反応速度は処理水温度を高くすれば上昇するが、そのためには最低でも35℃、好ましくは数十℃以上に加温する必要がある。そのためには多くのエネルギーが必要である。
セレン酸に対する選択性の高い吸着材は、希元素を原料とする場合には入手が容易でなかったり高価であったりする。また、これまで開発されている吸着材はセレン酸イオンのみを完全に選択的に吸着するというものではなく、セレン酸イオンと化学的性質の類似する硫酸イオンが競合する。そのため、硫酸イオン濃度がセレン酸イオン濃度の10000倍(物質量比)以上もある場合には、硫酸イオンとの競合のためセレン酸イオンの除去効率が低下する。
水溶性バリウム塩やアルミン酸カルシウムを主剤とした沈殿除去法は、反応速度が速く、除去反応が20分程度以内に進行するという点で優れている。しかし、バリウム塩を用いる方法においては、バリウム塩が比較的高価であるという問題があり、処理後の溶液にバリウムイオンが残留しないように付加的な処理を行う必要がある。また、硫酸イオンとの競合のため除去効率が低下するという問題もある。
アルミン酸カルシウムを用いる沈殿除去法は、処理水については、アルカリ性の矯正以外の後処理は不要であるものの、この処理のために用いられるアルミン酸カルシウムは、その目的のために特別に製造されるものであり、その組成を、対象水の水質に合わせてその場で変更することはできない。また、常時市場で容易に入手できるものでもない。
本発明は、先行技術の持つ上記のような問題を解決しようとするものであり、セレン酸イオン除去のための反応が常温で速やかに進行し、セレン酸イオンよりもはるかに高濃度の硫酸イオンが共存する水からも効率的にセレン酸イオンおよびその他いくつかの重金属類を除去でき、汎用の薬剤を用いて、対象水の水質に応じて、現場で柔軟に各種薬剤の添加量を変更できるようなセレン酸イオンを含む水の処理方法を提供することを課題とする。
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
セレン酸イオンを含む処理対象水に共存する硫酸イオンの濃度範囲が、0.5〜15mmol/Lとなるように調整した上で、前記処理対象水にカルシウム化合物及びアルミニウム化合物を添加し、
前記処理対象水に含まれる硫酸イオンとセレン酸イオンの合計量1物質量部に対して、4物質量部以上の前記カルシウム化合物と、4/3物質量部以上の前記アルミニウム化合物を添加し、
前記硫酸イオンと前記セレン酸イオンよりエトリンガイトの固溶体を形成する際に、前記セレン酸イオンを含む処理対象水に、該セレン酸イオンの物質量よりも多量の物質量の硫酸イオンを共存させ、
前記セレン酸イオンを、硫酸イオンと共にエトリンガイトの固溶体として、少なくとも0.1mg/L以下の濃度まで除去することを特徴とするセレン酸イオンを含む水の処理方法。
(請求項2)
前記カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は塩化カルシウムから選ばれる少なくとも1種であり、前記アルミニウム化合物が、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のセレン酸イオンを含む水の処理方法。
(請求項3)
前記硫酸イオンと前記セレン酸イオンよりエトリンガイトの固溶体を形成する際に、前記カルシウム化合物及び前記アルミニウム化合物の添加後、10分以上撹拌して反応させることを特徴とする請求項1又は2記載のセレン酸イオンを含む水の処理方法。
本発明によれば、セレン酸イオンを亜セレン酸イオンに還元して除去する方法よりも、短時間でセレン酸イオンの除去が可能である。
また、本発明によれば、単純かつ容易に入手できるカルシウム化合物およびアルミニウム化合物を用いるので、それらの投入量を独立に調節することにより多様な水質の水に対して適用可能である。
セレンを含む井水を水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムを用いて処理した時に発生した沈殿の粉末X線回折図
以下、本発明のセレン酸イオンを含む水の処理方法の実施の形態を説明する。
本発明の処理方法は、セレン酸イオンを含む処理対象水(以下、原水ともいう)に、カルシウム化合物及びアルミニウム化合物を添加し、前記処理対象水に初めから共存する硫酸イオン又は後から添加する硫酸イオンと共に、前記セレン酸イオンを、エトリンガイトの固溶体として除去する。
エトリンガイトの固溶体としては、例えば以下の式で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006901807
ここで、結晶水の数mは例示的に26と表されるが、結晶水の数は限定されない。また、式中、xは3以下の数である。
セレン酸イオンをエトリンガイトの固溶体として除去するためには、硫酸イオンの共存が必要である。
硫酸イオンの共存という場合は、処理対象水に初めから共存する硫酸イオンが存在していてもよいし、あるいは後から硫酸イオンを添加して共存する硫酸イオンを存在させるようにしてもよい。
共存硫酸イオンの濃度は、エトリンガイトの固溶体を作成する上で必要になるカルシウム化合物及びアルミニウム化合物の添加量が過大にならないようにし、セレン酸イオン除去に適した組成となるように適宜調節されることが好ましい。
本発明において、硫酸イオンとセレン酸イオンよりエトリンガイトの固溶体を形成する際に、セレン酸イオンを含む処理対象水に、セレン酸イオンよりも多量の硫酸イオンが共存することが好ましい。
トリンガイト構造の中に硫酸イオンとセレン酸イオンのどちらが取り込まれやすいのかについて、本発明者の実験によると、セレン酸イオンは硫酸イオンよりも取り込まれにくいというデータを得ている。セレン酸イオンを含む水に、セレン酸イオンよりもはるかに多量の硫酸イオンが共存するような条件を作れば、硫酸イオンとセレン酸イオンを全部エトリンガイトとして沈殿させることが可能となる。
セレン酸イオンと共存する硫酸イオンの濃度は、処理対象水において、0.5mmol/Lから15mmol/Lの範囲にあることが好ましい。
処理対象水に、共存する硫酸イオンに存在していない場合や、0.5mmol/L未満である場合には、上記範囲に入るように、水溶性硫酸塩を添加することが好ましい。セレン酸イオンの除去率を上げるためである。
処理対象水の硫酸イオンの濃度が、15mmol/Lを超える場合には、硫酸イオンの除去を行う。例えば、硫酸イオンと難溶性化合物を形成する物質を添加し、硫酸イオンの一部を難溶性塩として沈殿させ除去することができる。具体的には、水溶性カルシウム塩、ケギン型構造を持つ多核ヒドロキソアルミニウムイオンの塩化物塩、キトサンなどが好ましい。このとき沈殿の沈降を促進するため、高分子凝集剤を添加することができる。かかる硫酸イオンの除去は、後段で添加すべきカルシウム化合物とアルミニウム化合物の量を減らすことができるので好ましい。
硫酸イオンが所定の濃度範囲になったら、カルシウム化合物及びアルミニウム化合物を処理対象水に添加する。そして必要に応じてアルカリを添加する。
カルシウム化合物及びアルミニウム化合、並びにアルカリは、それぞれ別個に、あるいは同時に、更には事前に混合して、添加して反応させ、上記式で表されるエトリンガイトの固溶体を得る。
カルシウム化合物として、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのうちから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、またアルミニウム化合物として、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムのうちから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明において、アルミニウム化合物として、硫酸アルミニウムは、硫酸イオンが処理対象水に含まれる場合には、用いない方がよい。その理由を以下に述べる。硫酸イオンが処理対象水に存在する場合、それに対して、硫酸アルミニウムを添加すると、処理対象水の硫酸イオンと、硫酸アルミニウムとして、後から添加した硫酸イオンの両方を沈殿させることが必要になり、非効率である。
更に言及すれば、原水に相当濃度の硫酸イオンが含まれる場合、アルミニウムを硫酸アルミニウムとして加えると、添加量にかかわらず(硫酸イオン+セレン酸イオン)/アルミニウムイオンのモル比が2/3よりも大きくなり、水酸化カルシウムを加えても、硫酸イオンの全量をエトリンガイトにすることはできない。ここで2/3というのはエトリンガイトの硫酸イオン/アルミニウムイオンのモル比である。
セレン酸イオンは硫酸イオンよりも固溶体に取り込まれにくいので、水中の残留硫酸イオン濃度が高い場合、セレン酸イオンも残留しがちとなる。
本発明では、硫酸イオンを含まないアルミニウム化合物を用いることで、(硫酸イオン+セレン酸イオン)/アルミニウムイオンのモル比を2/3以下にすることができ,硫酸イオン濃度を十分下げることができる。
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのうちから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
すなわち、原水が都合の良い濃度(おおよそ2〜8mmol/L)の硫酸イオンを含む場合には、硫酸イオンを含まないアルミニウム化合物(塩化アルミニウムやアルミン酸ナトリウム)と酸化カルシウムや水酸化カルシウムを加える。
原水がほとんど硫酸イオンを含まない場合には、 (1)硫酸イオンを加えるため,硫酸ナトリウムなどの硫酸塩を加えたのち,硫酸イオンを含まないアルミニウム化合物と酸化カルシウムや水酸化カルシウムを加える。(2)または,アルミニウム化合物として塩化アルミニウムと硫酸アルミニウムの混合物を用いる。混合比は硫酸イオン濃度による。
原水の硫酸イオン濃度が非常に高い場合には、硫酸イオンを含まないアルミニウム化合物(塩化アルミニウムやアルミン酸ナトリウム)と酸化カルシウムや水酸化カルシウムを加える方法をそのまま適用することが可能ではあるが、薬剤投入量が多くなり、その結果、沈殿量も多くなって固液分離が難しくなることもあるので、前処理として硫酸イオンを除去する。
本発明において、処理対象水に含まれる硫酸イオンとセレン酸イオンの合計量1物質量部に対して、4物質量部以上の前記カルシウム化合物と、4/3物質量部以上の前記アルミニウム化合物を添加することが好ましい。
本発明においては、添加するカルシウム化合物及びアルミニウム化合物の量は、処理対象水に含まれる硫酸イオンとセレン酸イオン合計濃度と処理時間(撹拌時間)によって決定される。
好ましい態様としては、合計量1物質量部に対して4物質量部以上のカルシウム化合物と、4/3物質量部以上のアルミニウム化合物を添加する。
本発明において、処理対象水(原水)に、上記のカルシウム化合物と、上記のアルミニウム化合物、および、必要により上記のアルカリを添加し、処理時間(撹拌)10分以上で、撹拌して反応させ、硫酸イオンと共にセレン酸イオンを、エトリンガイトの固溶体とすることが好ましい。本発明において、処理時間は、10分以上30分以下が好ましく、15分以上25分以下がより好ましい。
ここで添加するカルシウム化合物やアルミニウム化合物および水酸化ナトリウムは、粉体でもよく、溶液あるいは水に懸濁した懸濁液でもよい。
処理対象水(原水)が、中性ないし弱酸性であり、カルシウム化合物として塩化カルシウムを用いた場合を除けば、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計1物質量部に対して、カルシウム化合物2物質量部、アルミニウム化合物2/3物質量部の添加で、処理対象水のpHは11以上となり、エトリンガイトの固溶体の生成にとって好適な条件となる。
上述のようにカルシウム化合物およびアルミニウム化合物を添加し、ほぼ平衡に達するまで反応させた場合には、セレン酸イオン濃度は、少なくとも一律排水基準以下にすることが可能である。水温が10℃〜30℃の場合、ほぼ平衡に達するには数時間程度以上を要する。
なお、カルシウム化合物およびアルミニウム化合物の添加量を、上記で記載した量よりも多くすることにより、処理時間を短縮することができる。
原水(処理対象水)の酸性度が強い場合、およびカルシウム化合物として塩化カルシウムを用いた場合には、カルシウム化合物とアルミニウム化合物の添加後のpHがエトリンガイトの固溶体の生成に好適な値に達しない場合がある。この場合には、追加でアルカリ、好ましくは酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの中から選ばれる少なくとも1種以上のアルカリを、対象水のpHが少なくとも11以上になるように添加する。
次に、本発明では、高分子凝集剤、あるいは高分子凝集剤に加えてセレン酸イオンやその他の共存有害物質を吸着する能力のある物質を添加して、あるいは水中でそのような能力を発揮する物質に変化しうる物質を添加して、生成させたエトリンガイトの固溶体およびその他の懸濁物質を凝集沈殿させ固液分離する。
凝集剤を用いなくても沈降が十分早い場合には、凝集剤の添加は省略できる。
沈降部は容器から抜き出して脱水し、スラッジとして処理する。上澄み部は別容器に移送し、処理液として放流する。
上記において、セレン酸イオンやその他の共存有害物質を吸着する能力のある物質を添加して、あるいは水中でそのような能力を発揮する物質に変化しうる物質を添加し、生成したエトリンガイトとともに、凝集沈殿させて除去することもできる。
そのような物質としては、鉄またはアルミニウムの酸化物および水酸化物、鉄及びアルミニウムの水溶性塩がある。
鉄またはアルミニウムの水溶性塩を添加する場合には、その添加量は添加溶解後の水のpHが11を下回らないような量に留めなければならない。
次に、本発明では、固液分離後の水のpHを調節して、放流するか、あるいは再利用する。すなわち、固液分離後の処理水に、酸を添加し、pHが排水基準内になるように調節して放流し、あるいは何らかの目的に再利用する。
pH調節のために用いる酸の種類には、一般的には制限はないが、pH調節後の水質が排水基準を満たすような種類の酸を用いる。
以上、本発明の処理方法を説明したが、本発明の処理方法は、セレン酸イオンを含む地下水、湧水、掘削土砂からの滲出水、土壌洗浄プラント排水、工場排水などの、セレンおよび、鉛、水銀、ヒ素、ホウ素、フッ素の除去に広く利用することができる。
以下、実施例により本発明の効果を例証する。
実施例1
1.処理対象水
セレン酸イオン濃度が、セレンとして0.91mg/L、共存硫酸イオン濃度が58mg/Lの井水を用いた。
2.試験及び評価結果
この処理対象水に対して、カルシウム化合物として水酸化カルシウムを添加し、またアルミニウム化合物としてアルミン酸ナトリウムを添加して、セレン酸イオンの除去を行った。
この処理対象水の硫酸イオン濃度は、約0.5mmol/L〜約15mmol/Lの範囲にあったので、濃度調整はおこなわなかった。
原水100mLをプラスチック容器にとり、マグネチックスタラーで撹拌しながら、水酸化カルシウム粉末と、5.87mol/Lのアルミン酸ナトリウム溶液を添加して、さらに15分間撹拌し、非イオン性高分子凝集剤を添加して凝集沈降させ、上澄みの一部を0.45μmのメンブランフィルタでろ過した後、ろ液の硫酸イオン濃度及びセレン濃度を測定した。
水酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウムの添加量と処理後の水の硫酸イオン濃度とセレン濃度を表1に示す。
原水100mLに対して、水酸化カルシウム75mgの添加は、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計1物質量部に対して、約17物質量部、アルミン酸ナトリウム溶液0.06mLの添加は、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計1物質量部に対して、約5.8物質量部に相当する(以上は、参考例)
また、水酸化カルシウム150mgの添加は、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計1物質量部に対して、約34物質量部、アルミン酸ナトリウム溶液0.12mLの添加は、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計1物質量部に対して、約12物質量部に相当する(以上は、実施例)
共存硫酸イオン濃度が低い場合でも、硫酸イオンとセレン酸イオンの合計に対するカルシウム化合物およびアルミニウム化合物の添加量比を増すことにより、反応時間を20分と短くしても、セレン酸イオン濃度を一律排水基準以下にすることができた。
Figure 0006901807
図1は、実施例1に記載の処理において生成した沈殿の粉末X線回折図形を示す。
Eを付した回折ピークはエトリンガイト由来のものであり、Cを付したピークは炭酸カルシウム由来のものである。
沈殿物は、ほぼエトリンガイトと炭酸カルシウムからなることが示された。
エトリンガイトは、処理対象水に含まれる硫酸イオンとセレン酸イオン、添加した水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムの反応によって生成したものである。
共存する炭酸カルシウムは、未反応のまま残留した水酸化カルシウムが、反応中およびX線回折用試料作成中に大気由来の二酸化炭素と反応して生成したものと考えられる。

Claims (3)

  1. セレン酸イオンを含む処理対象水に共存する硫酸イオンの濃度範囲が、0.5〜15mmol/Lとなるように調整した上で、前記処理対象水にカルシウム化合物及びアルミニウム化合物を添加し、
    前記処理対象水に含まれる硫酸イオンとセレン酸イオンの合計量1物質量部に対して、4物質量部以上の前記カルシウム化合物と、4/3物質量部以上の前記アルミニウム化合物を添加し、
    前記硫酸イオンと前記セレン酸イオンよりエトリンガイトの固溶体を形成する際に、前記セレン酸イオンを含む処理対象水に、該セレン酸イオンの物質量よりも多量の物質量の硫酸イオンを共存させ、
    前記セレン酸イオンを、硫酸イオンと共にエトリンガイトの固溶体として、少なくとも0.1mg/L以下の濃度まで除去することを特徴とするセレン酸イオンを含む水の処理方法。
  2. 前記カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は塩化カルシウムから選ばれる少なくとも1種であり、前記アルミニウム化合物が、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のセレン酸イオンを含む水の処理方法。
  3. 前記硫酸イオンと前記セレン酸イオンよりエトリンガイトの固溶体を形成する際に、前記カルシウム化合物及び前記アルミニウム化合物の添加後、10分以上撹拌して反応させることを特徴とする請求項1又は2記載のセレン酸イオンを含む水の処理方法。
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