JP5352853B1 - 放射性Cs汚染水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の放射性Cs汚染水の処理方法は、水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(但し、M(I)は1価のカチオン)と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させて、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)6]3(但し、xは0又は1)で表されるプルシアンブルーの含有液を得る工程(A)と、プルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程(B)と、工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)は2価の遷移金属)で表される水酸化物を含有させる工程(C)とを含む。
【選択図】なし
Description
また、プルシアンブルー色素顔料は微粉体の状態で用いられるため、Csイオンを吸着させても濾過によって取り除くことが困難である(篩目を通過してしまう)。そのため、沈殿・濾過工程では硫酸バンドなどの凝集剤の併用が必須であった。
この場合、Csイオンが該結晶格子内を拡散する必要がある。つまり、プルシアンブルー色素顔料によるCsイオンの吸着速度はCsイオンの該結晶格子内への拡散が律速になっているものと考えられる。
しかし、結晶格子内でのCsイオンの拡散係数は極めて小さいため、Csイオンに対する優れた吸着選択性にも係わらず、Cs汚染水からCsイオンを効果的に吸着・除去するには24時間以上の時間を要していたものと理解される。
なお、以下では、「プルシアンブルー」を「PB」と略記することがある。
なお、本発明において、各種薬剤の添加方法は、粒剤、粉末、水溶液、分散液など、いずれの形態で使用しても良く、特に限定されない。
工程(A)は、水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させることにより、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)6]3で表されるPB分子及び/又はそのクラスターの含有液を得る工程である。
2価及び/又は3価の鉄塩化合物は、特に限定するわけではないが、(2価又は3価の)鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが好ましく挙げられる。
また、xは0又は1である。
工程(B)は、工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うか、及び/又は、工程(A)でPB含有液を得た後に放射性Cs汚染水と混合することにより、PB分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程である。
すなわち、工程(B)は、工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うことによって工程(A)と同時に行っても良いし、工程(A)の後に放射性Cs汚染水と混合して行っても良く、その両方であってもよい。
このように、本発明では、上記反応(1)〜(4)で生成する上記(PB1)及び/又は上記(PB2)を水溶液から分離することなくCsイオンに作用させるので、微粉末のPBを添加する従来法と異なり、Csイオンの吸着が短時間(例えば、1時間程度)で平衡に達する。
軟らかい Cs+≫K+>Na+〜Mg2+〜Ca2+ 硬い
HSAB規則は量子化学で説明されている(G.Klopman (1968). "Chemical Reactivity and Concept of Charge- and Frontier-Controlled Reactions" J. Am. Chem. Soc. 90(2):223-234.を参照)。
それによると、酸と塩基の結合形成による安定化エネルギー(−ΔE)は式(6)で表される。
ε:反応場の誘電率 rab:M(I)とPBの結合距離
Γab:クーロン反発項
Em *:PBイオンbの最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー
En *:陽イオンaの最低非占有原子軌道(LUAO)エネルギー
cm:PBイオンのHOMOを構成する原子軌道関数の係数の最大値
cn:M(I)イオンのLUAO関数の係数
β:M(I)のLUAOとPBイオンのHOMOの共鳴積分項
電荷密度が小さいCsイオンとPBイオンの場合、第1項及び第2項の−ΔE値への寄与は小さい。一方、第3項は軟らかい酸と軟らかい塩基の相互作用を意味しており、軟らかい酸CsイオンのLUAOと軟らかい塩基のPBイオンFe(III)Fe(II)(CN)6 -の最高占有分子軌道(LUMO)間の強い相互作用が−ΔE値の増加に大きく寄与するのである。つまり、この場合、第3項の|Em *−En *|が小さくβ2が大きくなるので、第3項が−ΔE値の増加に寄与することになる。
硬い酸であるNaイオン,Kイオン,Mgイオン,Caイオンと軟らかい塩基であるPBイオンとの相互作用では式(6)の第1項〜第3項による−ΔE増加への寄与は小さい。つまり、これらのカチオンとPBイオンは強い結合を形成しない。
M(I)+: Cs+≫K+>Na+
すなわち、工程(A)において生成したPBは、生成直後では分子の状態であるか及び/又は数分子が集合した微小な集合体(クラスター)の状態にある。
そして、生成したPB分子とCsイオンとの接触表面が水溶液中で絶えず更新される結果、CsイオンとPB分子及び/又はそのクラスターとの接触が効率的に行われ、短時間で吸着平衡が達成されるものと考えられる。撹拌条件下においては、特に迅速な吸着が可能である。
これに対して、従来のように、成長した結晶構造を有する微粉末のPBを添加する場合、Csイオンの吸着速度はCsイオンの結晶格子内での拡散が律速となるため、吸着平衡に達するまでに1日以上を要していたものと考えられる。
工程(C)は、工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)は2価の遷移金属である)で表される水酸化物(以下、単に、「Me(II)水酸化物」ということがある)を含有させる工程である。
上記Me(II)塩化合物は、予め処理液中に含有させておいても良いし、工程(B)を経た後に別途添加するなどして含有させても良く、その両方であっても良い。
また、3価の遷移金属塩、例えば塩化鉄(III)を処理液に含有させておいてこれを還元剤で塩化鉄(II)に還元したり、あるいは、1価の遷移金属塩、例えば塩化銅(I)を処理液に含有させておいてこれを塩化銅(II)に酸化したりすることによって、Me(II)塩化合物を含有させるようにする方法も本発明の範疇に入る。
従って、鉄シアノ錯体の量をα(mol)とし、Me(II)塩化合物の量をβ(mol/L)とするとき、αとβの比(α/β)はPB分子数とMe(II)水酸化物の数の比に相関するパラメーターとなる。
Csイオンを吸着したPB分子の不溶化や凝集の効果を得る上では、α/βを0.1より小さくしてもそれ以上の改善効果は期待できず、むしろ、過剰のMe(II)塩化合物によって処理液の水質を損なうおそれがある。一方、α/βが10を超えると、Me(II)水酸化物によるCsイオンを吸着したPB分子の不溶化、凝集効果が不十分となり、濾過工程において、Csイオンを吸着したPB分子及び/又はそのクラスターがフィルターの篩目を透過するおそれがある。
特に、処理液の全シアン濃度の排水基準値を考慮する場合には、α/βが0.1〜1.0であることが好ましい。
従って、PB量(mol)とMe(II)水酸化物の量(mol)はそれぞれ鉄シアノ錯体の量(mol)とMe(II)塩化合物の量(mol)で代表される。
本発明によって、例えば、Csイオン濃度が10mg/LのCs汚染水1000mLからCsイオンを効果的に除去する場合、α+βが2.5mmol以上であれば、本発明の目的を十分に達成することができる。
pHが3未満であると、Me(II)塩化合物の加水分解が進まずに意図した効果が得られないおそれがある。また、加水分解のpHが高すぎると、PB分子の分解が起こり、処理液のシアン濃度が環境基準値もしくは排水基準値を超えるおそれがあるとともに、凝集構造が壊れ、不溶化したCs吸着PBが再溶解したり、PB分子のクラスターを再生したりするおそれがある。
また、鉄粉や亜鉛粉などを処理液に含有させておいて、これを空気や腐食などで酸化することによって、Fe(OH)2やZn(OH)2などのMe(II)水酸化物を含有させるようにする方法も本発明の範疇に入る。
そして、本発明のMe(II)水酸化物は六方晶の結晶構造を取るので、PB分子及び/又はそのクラスターのシアノ基を介して架橋構造を形成しながら、該結晶のc軸方向に層状に結晶成長し、1μm以上の粗大粒子を形成する。
以上の結果、該粗大粒子は、Csと結合したPB分子及び/又はそのクラスターがMe(II)水酸化物の層状構造の層間にインターカレートした構造を有していると考えられる。
そして、剥離した該結晶面はPB分子及び/又はそのクラスターを層間にインターカレートした形で層状に結晶成長して、粒子径1μm以上の粗大粒子が形成されるものと考えられる。
工程(C)でMe(II)水酸化物によりPB分子及び/又はそのクラスターを凝集・沈殿させた後は、通常、濾過による沈殿物の除去を行う。
この場合、濾過する際の処理液についてもpH調整を行うことが好ましい。その範囲はpH3〜11であることが好ましく、pH5〜10であることがより好ましく、pH6〜8であることが特に好ましい。
なお、放射性Cs汚染水の入手には制約があるため、実施例の多くを入手可能な安定同位体133Csで代用して実施した。
しかし、以下で観察される化学的、物理的な事象は、133Csの放射性同位体である137Cs、134Csのそれと完全に一致する。
従って、133Csを含む模擬汚染水、模擬海水及び放射性Cs汚染水からCsを除去した以下の実施例は、同時に、放射性同位体である137Cs、134Csについての効果も実証するものである。
以下の実施例及び比較例で用いた薬品のうち、フェロシアン化ナトリウム10水和物以外の薬品は全てキシダ化学社製のものを使用した。
Csイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lにフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.55mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を加えてPBを生成させた。
次に、硫酸マンガン(II)1水和物1.0g(5.9mmol)を添加した。
5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.0に調整しながら攪拌を続けた。処理開始から1時間後、攪拌を止めて静置した。篩目1μm、5Cの濾紙を用いて、処理液を濾過し、濾液を得た。
濾液のCsイオン濃度はアジレント社の誘導結合型プラズマ質量分析装置(ICP−MS)7000xで測定を行った。また、濾液の全シアン濃度はJIS K0102 38.1.2及び38.2に準拠して実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/L(定量下限値0.001mg/L)であり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
実施例1で、硫酸マンガン(II)1水和物0.06g(0.355mmol)を添加したほかは実施例1と同じ方法で実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.1mg/Lであり、除去率は99.9%であった。
10mLの蒸留水にフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.55mmol)と塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を加えPBを合成して、その水溶液をそのままCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lに加えたほかは実施例1と全て同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.004mg/Lであり、除去率は99.996%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
実施例1のPBの合成をフェリシアン化カリウム無水物1.2g(3.6mmol)、塩化鉄(II)4水和物0.72g(3.6mmol)を混合して実施したほかは、実施例1と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.002mg/Lであり、除去率は99.998%であった。また、全シアン濃度は0.02mg/Lであった(定量下限0.01mg/L)。
実施例1でフェリシアン化カリウム無水物0.6g(1.8mmol)、フェロシアン化カリウム3水和物0.76g(1.8mmol)に、還元剤として亜硫酸ナトリウム無水物0.5gを加えた後、塩化鉄(II)4水和物0.72g(3.6mmol)を加えてPBの合成を行ったほかは、全て実施例1と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/Lであり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は0.8mg/Lであった。
Csイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物(Alfa Aesar社製)1.45g(3mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.87g(3.2mmol)を加えてPBを生成させた。
次に、塩化ニッケル(II)0.39g(3.0mmol)の水溶液10mLを添加した。
5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.0に調整しながら1時間攪拌をつづけた。pH調整を止めて更に1時間攪拌を行った後静置した。処理液のpHは7.2であった。
処理液を篩目1μmの5Cの濾紙で濾過して濾液を得た。濾液のCsイオン濃度及び全シアン濃度を実施例1と同様に測定した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/L(定量下限値0.001mg/L)であり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は0.9mg/Lであった。
実施例6で塩化コバルト(II)0.2g(1.5mmol)と塩化ニッケル(II)0.2g(1.5mmol)を含む水溶液10mLを模擬Cs汚染水に加えたほかは、全て実施例6と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.004mg/Lであり、除去率は99.996%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.87g(1.8mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.54g(2.0mmol/L)を加えてPBを合成した後、塩化コバルト(II)0.4g(3.1mmol)を添加した。
5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で処理液のpHを8〜9の間に維持しながら30分間攪拌を行った。さらに攪拌を続けると、1時間後に処理液のpHは7.0になった。攪拌を止め、処理液を篩目1μmのガラスフィルターで吸引濾過し、濾液を得た。
濾液について実施例1と同様の方法でCsイオン濃度及び全シアン濃度を測定した結果、Csイオン濃度は0.001mg/Lであり、除去率は99.99%であった。全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに塩化鉄(II)4水和物0.7g(3.5mmol)を加え、また、処理液を還元条件にするため亜硫酸ナトリウム無水物1.0g(8mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.008mg/Lであり、除去率は99.92%であった。全シアン濃度は0.02mg/Lであった。
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに硫酸亜鉛(II)0.7g(3.5mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.012mg/Lであり、除去率は99.88%であった。全シアン濃度は0.02mg/Lであった。
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに塩化鉄(III)無水物0.52g(3.2mmol)を加え、続いて亜硫酸ナトリウム無水物6.3g(5mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.008mg/Lであり、除去率は99.92%であった。全シアン濃度は0.03mg/Lであった。
実施例8のCs汚染模擬海水1Lを、Csイオン1mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lに代えたほかは、全て実施例8と同様に実施した。
また、硫酸マンガン(II)、塩化鉄(II)4水和物、塩化ニッケル(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛(II)、硝酸カドミウム(II)についても塩化コバルト(II)に等しい当量を加えてそれぞれ同様に実施した。
いずれの濾液についてもCsイオンは検出されなかった(定量下限値0.001mg/L)。全シアン濃度についても全て環境基準値(0.05mg/L)未満であった。
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.8g(1.65mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.45g(1.66mmol/L)を加えてPBを合成した後、水酸化コバルト(II)0.3g(3.3mmol)を加えてpHを7〜8に調整して攪拌を続けた。
3時間後に攪拌を止めて静置した。5Cの濾紙で処理液を濾過し、濾液について実施例1と同じ方法でCsイオン濃度と全シアン濃度を測定した。
さらに、水酸化コバルト(II)の代わりに水酸化銅(II)、水酸化ニッケル(II)、酸化マンガン(II)、酸化亜鉛(II)、酸化鉄(II)についても同様に実施した。但し、酸化鉄(II)の添加の場合は、亜硫酸水素ナトリウムにより処理液の溶存酸素濃度を0ppmに維持しながら実施した。
表1に測定結果を示した。
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物1.05g(2.17mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.6g(2.2mmol/L)を加えてPBを合成した後、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)についてα/β値を変えた条件でそれぞれ添加した後、処理液のpHを7〜8に調整して攪拌を続けた。1時間後に攪拌を止めて静置した。5Cの濾紙で処理液を濾過し、濾液について実施例1と同じ方法でCsイオン濃度と全シアン濃度を測定した。
α/β、α+β及び測定結果を表2に示した。
放射性Csで汚染された焼却灰を水で洗浄して、放射能濃度490Bq/kgの放射能Cs汚染水を調製した。
Csの放射能濃度の内訳はCs137:290Bq/kg、Cs134:200Bq/kg汚染水の各種イオン濃度は次の通り:
カチオン: Ca2+:2400mg/L K+:2.0% Na+:8700mg/L
アニオン: SO4 2-:1800mg/L Cl-:2.6%
汚染水のpHは11.5であった。
この汚染水1kgに4mol/Lの硫酸を加えてpH7に調整した後、フェロシアン化ナトリウム10水和物0.5g(1mmol)を加えた。続いて、攪拌しながら塩化鉄(III)4水和物0.4g(1.2mmol)を添加した。
次に、硫酸マンガン(II)1水和物0.3g(1.8mmol)を添加した。
5mol/L水酸化ナトリウムでpHを8に調整しながら攪拌を0.5時間続けた。
0.5時間後、攪拌を止め、処理液を篩目1μmテフロン(登録商標)製フィルターで吸引濾過し、濾液を得た。
濾液について放射能濃度を測定した。放射能濃度の測定は、日立アロカ社製放射能測定装置CAN−OSP−NAIで所定の時間行った。
測定時間:30分間
放射能濃度:490Bq/kg(検出限界20Bq/kg)
測定時間:1時間
放射能濃度:ND(検出限界:10Bq/kg)
また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限値0.01mg/L)。
実施例15で硫酸マンガン(II)1水和物を硫酸鉄(II)7水和物0.5g(1.8mmol)に代え、硫酸ナトリウム無水物0.5gを加えたほかは、実施例15と同様に実施した。
処理濾液の放射能Csによる放射能濃度は検出されなかった(検出限界:137Cs、134Csともに10Bq/kg)。また、全シアン濃度は検出されなかった。
実施例15で硫酸マンガン(II)1水和物を硫酸銅(II)0.29g(1.8mmol)に代えたほかは、実施例15と同様に実施した。
処理濾液の放射能Csによる放射能濃度は検出されなかった(検出限界:137Cs、134Csともに10Bq/kg)。また、全シアン濃度は検出されなかった。
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB4g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加えて2時間攪拌を行った。硫酸バンドAl2(SO4)3を1g添加し、攪拌しながら5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で処理液のpHを9.0に調整した。続いて、アニオン系高分子凝集剤(MTアクアポリマー社製のアコフロックA115)の0.1%水溶液を1mL添加し、フロックを形成させた後、処理液を5Cの濾紙で濾過した。
濾液についてCsイオン濃度の測定を実施例1と同様にして実施した。
濾液のCsイオン濃度は55.6mg/Lであり、除去率は44.4%であった。
Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水1Lについて、比較例1と同様、大日精化工業製のPB1gを添加し、pHを8に調整して攪拌を24時間実施した。PB添加から1時間、6時間、8時間経過の処理液100mLをそれぞれ採取した。採取した処理液それぞれに比較例1と同様のアニオン系高分子凝集剤を添加した後、5Cの濾紙で濾過を行い、濾液についてCsイオン濃度を比較例1と同様にして測定した。24時間経過については残処理液について、凝集剤を添加して沈殿形成後、同様に濾過を行ないCsイオン濃度の測定を実施した。各経過時間採取試料の濾液のCsイオン濃度を表3に示した。
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB4g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加えて1時間攪拌を行った。
攪拌終了後、処理液を5Cの濾紙で濾過したところ、PBも濾紙を通過してしまい、紺青の濾液が得られた。
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB1g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加え、続いて硫酸マンガン(II)1.0gを加えて攪拌を2時間行った。その間、処理液のpHを5mol/L水酸化ナトリウム水溶液により9.0に調整した。攪拌終了後、処理液を5Cの濾紙で濾過を実施した。
濾液についてCsイオン濃度の測定を実施例1と同様にして実施した。
濾液のCsイオン濃度は64.5mg/Lであり、除去率は35.5%であった。
実施例8の模擬海水1Lに、攪拌下、フェロシアン化ナトリウム10水和物1g(2.1mmol)、続いて、塩化鉄(III)4水和物0.57g(2.1mmol)を加えてPBを合成した。15分攪拌後、凝集剤として塩化鉄(III)4水和物1.14g(4.2mmol)を加えた。5mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整しながら塩化鉄(III)の加水分解を行った。PB合成から1時間後に攪拌を止め静置し、処理液を5Cの濾紙で濾過を行い、濾液についてCsイオン濃度と全シアン濃度をそれぞれ測定した。
比較例5で凝集剤を硫酸マグネシウム(II)1.0g(8.3mmol)に代えて加水分解をpH9.5に調整して実施したほかは比較例5と同様に実施した。
比較例5で凝集剤を硫酸アルミニウム(III)0.75g(5.0mmol)に代えて加水分解をpH8.5に調整して実施したほかは比較例5と同様に実施した。
Csイオン濃度10mg/LのCs汚染模擬海水1Lに天然ゼオライト10gを添加し1時間攪拌後5Cの濾紙で濾過を行った。
濾液について実施例1と同様の方法でCsイオン濃度を測定した結果、Csイオン濃度は8.0mg/Lであり、除去率は20%であった。
安定元素133Csからなる炭酸セシウムCs2CO3を蒸留水1Lに溶解してCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水を調製した。
該模擬Cs汚染水にフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.5mmol)を添加し、続いて、攪拌しながら塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を添加した。添加と同時に模擬水溶液は紺青色に変化しPBが生成した。次に、硫酸マンガン(II)1水和物を0.68g(4mmol)添加し、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整しながら3時間攪拌を行った後、処理液を5Cの濾紙で濾過した。
濾液についてアジレント社の誘導結合型プラズマ質量分析装置(ICP−MS)7000xでCsイオン濃度を定量した。処理液のpHに対する処理液のCsイオン濃度を図1に示す。
pH4〜11の広い範囲で本発明技術が高いCs除去能率を有することが分かった。
また、本発明によれば、Cs汚染水中のアルカリイオンやアルカリ土類金属イオンの影響は少なく、Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水で迅速かつ高効率にCsイオンを除去できることが確認された。
1)模擬海水の調製
蒸留水に塩化ナトリウム3%、塩化カリウム0.5%を溶解するとともに、炭酸セシウムを添加し、Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水を調製した。
模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.87g(1.8mmol)を添加し、攪拌した。続いて攪拌しながら塩化鉄(III)6水和物540mg(2.0mmol/L)を添加した。
添加と同時に模擬海水は紺青色に変化した。
15分間攪拌後、Me(II)塩化合物として硫酸マンガン(II)1水和物0.5g(3mmol)を処理液に添加した。続いて、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて処理液のpH6〜9の範囲でMe(II)塩化合物の加水分解を行った。
さらにpHを8に調整しながら攪拌を続けた。処理開始後1時間、3時間、6時間、24時間後に処理液100mLを採取した。
各処理時間で採取した処理液を5Cの濾紙で濾過した。濾液をICP−MSによるCsイオン濃度測定試料に供した。
硫酸マンガン(II)1水和物の他に塩化コバルト(II)、塩化鉄(II)、塩化ニッケル(II)、塩化銅(II)、酢酸亜鉛(II)についてもそれぞれ3mmolを添加して上記処理を実施した。その結果を図2に示す。図2では、比較のために、上記比較例2の結果も併せて図示した(図2中の「PB」)。
Claims (7)
- 水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(但し、M(I)は1価のカチオンである)と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させることにより、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)6]3(但し、xは0又は1である)で表されるプルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターの含有液を得る工程(A)と、
前記工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うか、及び/又は、前記工程(A)でプルシアンブルー含有液を得た後に放射性Cs汚染水と混合することにより、前記プルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程(B)と、
前記工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)は2価の遷移金属である)で表される水酸化物(但し、Fe(II)/Fe(III)≦4となる鉄の水酸化物が生成される場合にあっては、当該水酸化物中の第一鉄の水酸化物を除く)を含有させる工程(C)と、
を含む、放射性Cs汚染水の処理方法。 - 前記M(I)がNa+及び/又はK+である、請求項1に記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
- 前記鉄塩化合物が、塩化物、硝酸塩、硫酸塩及び有機酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
- 前記Me(II)が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びカドミウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3までのいずれかに記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
- 前記工程(C)では、予め及び/又は前記工程(B)の後にMe(II)塩化合物を含有させておくとともに該Me(II)塩化合物を加水分解することにより、前記水酸化物を処理液中に含有させるようにする、請求項1から4までのいずれかに記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
- 前記工程(C)におけるMe(II)塩化合物の加水分解を、前記工程(B)を経た処理液のpHを3〜11に調整することにより行う、請求項5に記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
- 前記工程(C)では、前記工程(B)の後に、前記水酸化物及び/又はMe(II)の酸化物を添加することにより、前記水酸化物を処理液中に含有させるようにする、請求項1から4までのいずれかに記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
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