JP2002519036A - 変異主要後期プロモーターを有する複製欠損組換えアデノウイルス - Google Patents

変異主要後期プロモーターを有する複製欠損組換えアデノウイルス

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、E1領域を欠損し、且つMLPが変異したゲノムを有する組換えアデノウイルスを提供する。また、本発明は、そのようなウイルスのストック及び本発明のウイルスを含有する組成物を提供する。また、本発明は、該組換えアデノウイルスを増殖させるための細胞株を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の技術分野 本発明は、組換えアデノウイルス、特に改変された主要後期プロモーターを有
するそのようなウイルスに関する。
【0002】 発明の背景 改変アデノウイルスは、遺伝子導入の研究上及び治療上の応用に便利なベクタ
ー系であることがわかっており、アデノウイルスのウイルス系はそのような使用
に幾つかの利点を与える。
【0003】 アデノウイルスベクターの開発は、ウイルス遺伝学及び分子生物学の理解に支
えられている。構造的には、すべてのアデノウイルスビリオンは多くの表面蛋白
質を有する非エンベロープ性のキャプシドである。これらのキャプシド蛋白質と
宿主細胞の表面との相互作用を通じてウイルスは内部移行し、エンドサイトーシ
ス小胞(endocytotic vessel)に類似したクラスリン被覆小器官内に包まれる(
Pastanら, Concepts in Viral Pathogenesis, Notkins及びOldstone編, Springe
r-Verlag, New York, 141-46頁, (1987))。小胞内部の酸性条件によってウイル
ス表面の立体配置が変化し、小胞の破壊と細胞の細胞質中へのウイルスの放出が
起こるが、核に輸送される間ウイルスは部分的に付随蛋白質から解き放たれる。
いったんアデノウイルスゲノムが宿主細胞の核内に入れば、その発現は、高度に
順序づけられた、よく特徴が解析されたカスケードを通して進行する。一群のア
デノウイルス遺伝子(即ち、翻訳単位)が通常共通の転写単位(「領域」)に構
成されており、それぞれが少なくとも1つのはっきりと区別されたプロモーター
を有している。各領域からの転写物は転写後にプロセッシングされて各ウイルス
遺伝子に対応する多数のmRNA種を生じる。初期及び後期で発現する遺伝子も
あるが、一般に、個々の領域は「初期」又は「後期」のいずれかである。
【0004】 細胞の転写因子は、まずアデノウイルスゲノムの第一初期(E1A)領域の上
流エンハンサーに結合する。次いで、E1A遺伝子産物が他の初期プロモーター
の発現を制御し、そのうちの1つ(E2B)がアデノウイルスDNAの複製に関
与する3つの初期遺伝子を含む転写単位の発現を駆動する(Doefler, Adenoviru
s DNA, the Viral Genome, and Expression, 1-95頁, Nojhoff, Boston (1986)
)。これら3つの蛋白質(前駆末端蛋白質(pTP)、一本鎖DNA結合蛋白質
(ssDBP)及びDNAポリメラーゼ(pol))は、少なくとも3つの細胞
蛋白質としっかりとしたユニットを形成して、ウイルスゲノムのプライミング及
び伸長を駆動する(Bodnarら, J. Virol., 63, 4344-53 (1989); Schnackら, Ge
nes Devel., 4, 1197-1208 (1990); Pronkら, Clomosoma, 102, S39-S45 (1992)
; Kellyら, The Adenoviruses (H. S. Ginsberg編), 271-308頁, Plenum Press,
New York (1984))。
【0005】 いったんウイルスDNAの複製が始まると、ウイルスの宿主遮断初期遺伝子産
物の活性のせいで、細胞の遺伝子の発現と同様に初期プロモーターの活性は低下
する(Sharpら, The Adenoviruses (H. S. Ginsberg編), 173-204頁, Plenum Pr
ess, New York (1984))。逆に、後期遺伝子の発現を制御するプロモーターがウ
イルスDNAの複製開始とともに活性になり始める(Thomasら, Cell, 22, 523-
33 (1980))。実際、DNA複製は幾つかの後期遺伝子の発現に必要であるらし
い。例えば、主要後期プロモーター(MLP)は初期にはある活性を示すが、該
プロモーターに近接した遺伝子のみが発現する(Shawら, Cell, 22, 905-16 (19
80); Winterら, J. Virol., 65, 5250-59 (1991))。しかしながら、MLPの活
性はウイルスDNAの複製開始の後に急に増大し(Shawら, 上述)、その結果す
べてのMLP遺伝子産物が発現する(Doellerら, 上述; Thomasら, 上述; Nevin
sら, Nature, 290, 113-18 (1981))。このプロモーターの構造は詳細に特徴が
解析されている(例えばLuら, J. Virol., 71(1), 102-09 (1997); Lutzら, J.
Virol., 70(3), 1396-1405 (1996); Reachら, EMBO J., 10(11), 3439-46 (1991
); Reachら, J. Virol., 64(12), 5851-60 (1990); Brunetら, Mol. Cell. Biol
., 7(3), 1091-1100 (1987); Miyamotoら, EMBO J., 4, 3563-70 (1985)を参照
)。特に、Ad5血清型のMLPは、3つの上流プロモーターエレメント、2つ
の下流エレメント及び開始部位に位置する1つのイニシエーターエレメント(I
NR,配列番号1)を有する。3つの上流エレメントは、開始部位の76塩基対
上流に位置する逆位CAATボックス(即ち、GTTA)、開始部位の63塩基
対上流に位置する上流プロモーターエレメント(UPE,配列番号2)及び開始
部位の31塩基対上流に位置するTATAボックス(配列:TATAAAA)で
ある。2つの下流エレメントは、開始部位の86塩基対下流に位置するDE1(
配列番号3)及び開始部位の101塩基対下流に位置するDE2(配列番号4)
である。これら種々のプロモーターエレメントがウイルス及び細胞の蛋白質と相
互作用してMTLUの後期転写を駆動する。例えば、2つの蛋白質(DEF−A
及びDEF−B)は後期依存的な様式で下流エレメントに結合する。DEF−B
は、クローニングされている(van Beverenら, Gene, 16, 179-89 (1981))アデ
ノウイルス移行期遺伝子IVa2の産物(pIVa2)として同定された(Triboule
yら, J. Virol., 68, 4450-57 (1994))。さらに、言及されるように、E1A遺
伝子産物は、感染の初期段階の間にあるMLP活性を駆動する。
【0006】 主要後期転写単位(MTLU)の転写後のプロセッシングにより、ウイルスキ
ャプシドの構成要素をコードする5つのファミリーの後期mRNAが生じ、それ
ぞれL1からL5と命名されている(Shawら, Cell, 22, 905-916 (1980))。こ
れらの蛋白質は細胞にとって非常に毒性が強く、感染細胞に対する免疫応答を助
長することができる(例えば、Yangら, Proc. Nat. Acad. Sci. (USA), 91, 440
7-11 (1994)を参照)。この免疫応答は、組織の腫脹と形質導入された細胞の破
壊を引き起こし、導入遺伝子が細胞内で発現する期間を短くする。「第1世代」
アデノウイルスベクターは、これらの有害な効果を減ずる目的でアデノウイルス
ゲノムをサイレントにするように設計されていた。言及されるように、E1A遺
伝子産物がウイルス遺伝子発現のカスケードを開始するので、最も初期のアデノ
ウイルスベクターは機能的なE1A領域を欠いていた。例えば、E1領域内に外
因性遺伝子を挿入することにより、当該外因性遺伝子を発現することができるが
EIA遺伝子を発現することができない組換えベクターが作られる。当該組換え
アデノウイルスは、正常に機能しないかもしくは欠失した必須E1産物を供給す
るために、相補的な細胞内で増殖させるか、或いはヘルパーウイルスの存在下で
増殖させなければならない(Davidsonら, J. Virol., 61, 1226-39 (1987); Man
sourら, Mol. Cell Biol., 6, 2684-94 (1986))。
【0007】 このような第1世代ウイルスは幾つかの遺伝子導入の応用に有効であることが
分かってはいるが、すべての使用に最適ではない。特に、それらはE1相補DN
Aの存在下で増殖させねばならないので、組換えにより、ある頻度で複製能力の
あるアデノウイルス(RCA)が生じ得る。RCAは組換えストックをより増殖
させて宿主細胞を形質転換し得るので、ウイルスストックのRCA汚染は問題で
ある。さらに、高感染多重度(m.o.i.)では、幾つかのアデノウイルスプロモー
ターはE1A遺伝子産物がなくとも活性があり、それによって細胞毒性のあるア
デノウイルス蛋白質が産生され得る(Nevins, Cell, 26, 213-20 (1981); Nevin
sら, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 113, 15-19 (1984))。第1世代ベクタ
ーのさらなる欠点は、主としてこの後期遺伝子産物のバックグラウンド発現に起
因する。例えば、そのような後期遺伝子の残存的な発現によってウイルスにより
形質導入された細胞を排除する宿主免疫応答が助長され得る(例えば、Yangら,
上述; Gilgenkrantzら, Hum. Gene. Ther., 6, 1265-74 (1995); Yangら, J. Vi
rol., 69, 2008-15 (1995); Yangら, J. Virol., 70, 7209-12 (1996)を参照)
【0008】 後期遺伝子の発現をブロックするための1つのアプローチは、ウイルスを変異
させて、該ウイルスがウイルスDNA複製に関与する3つのE2B酵素の1つま
たは2つ以上を発現できないようにすることにより、ウイルス複製を選択的にブ
ロックするというものである。しかしながら、E2B機能を欠くE1A欠損ウイ
ルスを創り出すことはできるが、そのアプローチによれば、相補的な細胞株もし
くはヘルパーウイルスを使用して喪失した必須遺伝子産物を供給する必要がある
(Almafitano, J. Virol., 72(2), 926-33 (1998))。上述のように、そのよう
なアプローチの主たる欠点は、パッケージング細胞内で、このようなベクターと
相補遺伝子との間で組換えが起こり、RCAが生じ得ることである。その上、同
一パッケージング細胞内での、必要とされる相補的なssDBP及びE1A遺伝
子産物の同時発現は致死的であるので、3つのE2B遺伝子のうち、ssDBP
遺伝子を完全に欠くウイルスを増殖させることは現在のところ不可能である(Kl
essigら, Mol. Cell Biol., 4, 1354-62 (1984))。ssDBP遺伝子に温度感
受性変異を有するベクターが構築されている(Engelhardtら, Proc. Nat. Acad.
Sci. (USA), 91, 6196-6200 (1994))。このベクターによれば、第1世代ベク
ターよりも長く遺伝子が発現し、免疫炎症応答が低減する系もある(Yangら, Pr
oc. Nat. Acad. Sci. (USA), 92, 7257-61 (1995); Engelhardtら, Hum. Gene T
her., 5, 1217-29 (1994))。しかしながら、温度感受性変異は不完全であり、
とりわけ高m.o.i.では、コアとなる体温においてあるベースレベルのssDBP
活性を有する余地がある(Yangら, Proc. Nat. Acad. Sci. (USA), 92, 7257-61
(1995))。これらの欠点に加え、3つのE2B遺伝子はL1〜L5遺伝子及び
MLPとは正反対の染色体鎖上にあるので(例えば、Almafitanoら, Gene Ther.
, 4, 258-63 (1997)を参照)、E2B領域を破壊するというアプローチはMTL
Uにも影響を及ぼす。
【0009】 前記の問題点に鑑みて、組換えアデノウイルス、特に、パッケージング細胞内
でのRCA産生が低減される傾向を示し、第1世代ベクターよりも宿主細胞内で
後期ウイルス遺伝子産物を少ししか発現できないウイルスが要望されている。
【0010】 発明の簡単な要約 本発明は、E1遺伝子発現を欠くことに加えて、変異MLPを有する組換えア
デノウイルスを提供することにより、前記の要望に取り組むものである。MLP
の変異は非許容宿主細胞内でのL1〜L5遺伝子の発現を大いに低減させる。従
って、このような組換えアデノウイルスは、第1世代ベクターよりも宿主細胞内
で後期ウイルス遺伝子産物を少ししか発現することができない。さらに、このよ
うな組換えアデノウイルスの多くは、野生型アデノウイルスMLPに相補的なD
NAの非存在下にパッケージング細胞内で増殖することができ、そのため、実質
的にRCA産生の可能性が低減される。
【0011】 本発明の組換えアデノウイルスは、生物学的研究に非常に有用であるとわかる
だろう。特に、本発明は、生物学者がより簡単にウイルス分子遺伝学や細胞毒性
を研究できるようになる試薬及び方法を提供する。また、本発明は、生物学者が
ウイルスの増殖及び感染に関する細胞生物学を研究できるようになる試薬及び方
法を提供する。さらに、本発明の組換えアデノウイルスは、新規な遺伝学的バッ
クグラウンドにおける遺伝子の発現及び制御に関する分子細胞生物学を研究する
ための新規なツールを生物学者に提供するだろう。例えば、そのような研究は、
定義したもしくは選択した細胞のバックグラウンドにおける遺伝子産物間の相互
作用、アデノウイルス内に設けたプロモーター、リプレッサーもしくはエンハン
サーエレメントにより転写因子が遺伝子発現をトランスに制御する能力などに焦
点を当てることができる。本発明の組換えアデノウイルスはまた、研究用の、も
しくは臨床の舞台における遺伝子導入ビークルとしても非常に有用であることが
わかるだろう。特に、本発明のアデノウイルスは、組織の発生もしくは修復を研
究するための組織培養細胞もしくは動物細胞に、導入遺伝子を導入するための有
用なベクターである。当該ベクターは、治療遺伝子を導入することにより、さら
に疾患の治療にも応用できることがわかるだろう。
【0012】 本発明のこれらの及び他の利点、並びに本発明のさらなる特徴は、以下の詳細
な説明から明らかとなるだろう。
【0013】 発明の詳細な説明 本明細書に添付する特許請求の範囲を含めて、本明細書において使用する場合
、下記の用語は以下の通り用いられる。
【0014】 「アデノウイルス」とは、宿主の種特異性やウイルスの血清型に関係なく、ア
デノウイルス属に属するいかなるウイルスをも意味する。しかしながら、参照を
明確且つ容易にするために、本発明ではAd5血清型についていうものとする。
【0015】 「パッケージング細胞」とは、効率のよいウイルス増殖に必要とされる産物を
供給することによって、組換えアデノウイルスを増殖させることができる細胞で
ある。例えば、組換えアデノウイルスが効率よい複製に必須の1又は2以上の遺
伝子に欠損を含む場合、パッケージング細胞は、それ自身のゲノムもしくは細胞
内のベクター(例えば、プラスミド、「ヘルパーウイルス」等)上に位置する遺
伝子のいずれかから、喪失したウイルス遺伝子産物を発現する。
【0016】 「遺伝子」は、成熟RNA種に対応する(即ち、コードする)DNAもしくは
RNA配列として定義される。多くの場合、遺伝子は蛋白質をコードするが、成
熟RNA(例えば、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム等)として活性
な遺伝子産物もある。
【0017】 「変異」は、組換えアデノウイルスが由来する血清型本来のDNA配列からの
いかなる変化も意味するものと広く定義される。このような変異は、天然のアデ
ノウイルスゲノムからの少なくとも1つのヌクレオチドの欠失であってよく、ま
た、変異はアデノウイルスゲノム内への1又は2以上の非天然ヌクレオチドの挿
入であってもよい。もちろん、天然の配列を欠失させ且つ非天然配列を挿入して
、天然アデノウイルスDNAの置換変異(例えば、アデノウイルスゲノムへの導
入遺伝子の挿入)をもたらすこともできる。遺伝子もしくは遺伝子機能における
「欠損」は、DNA配列の全部もしくは一部が変異した遺伝子の機能を損なわせ
るかもしくは消失させるように働く、一種の変異である。
【0018】 本発明は、E1領域を欠損し、且つMLPが変異したゲノムを有する組換えア
デノウイルスを提供する。E1領域の欠損は、E1A、E1B、或いはE1A及
びE1Bの両方に影響してもよく、そのような欠損を有する組換えアデノウイル
スは当該技術分野で知られている。さらに、E1領域の変異は、任意に必須でな
いpIX遺伝子に影響を及ぼしてもよい。当該技術分野で知られているように、p
IX遺伝子の変異は大きなアデノウイルスゲノムのパッケージング効率を低下させ
る。その上、pIX遺伝子産物の非存在下に産生されたアデノウイルスは、野生型
アデノウイルスよりも熱に不安定である。これらの表現型にもかかわらず、その
ような変異は、アデノウイルスゲノムと、第1世代アデノウイルスベクターの増
殖用に普通に使用される細胞株(例えば、HEK−293細胞)のE1相補DN
Aとの間の配列のオーバーラップを最小限にする−従って、組換えによりRCA
を生じる可能性を最小限にする−ので、幾つかの適用においては、pIXの発現を
支配する配列の一部を除去することが好ましい。本発明の組換えアデノウイルス
は、好ましくは、領域E2(即ち、E2A、E2B、或いはE2A及びE2Bの
両方)及び/又はE3及び/又はE4の欠損と組み合わせて、領域E1により提
供される機能を少なくとも欠損する。より好ましくは、本発明の組換えアデノウ
イルスは、E1及びE3領域を欠損する。アデノウイルスは、DNA複製及び成
熟化しているアデノウイルスキャプシド内への組換えゲノムのパッケージングを
容易にするために、これらの及び他の(例えば、1又は2以上の後期遺伝子(L
1〜L5)、IVa2等)欠損を有していてもよいが、少なくともウイルスの逆位
末端反復配列とプロモーターの幾つか、或いは少なくともウイルスの逆位末端反
復配列とパッケージングシグナルは、インタクトのままであることが好ましい。
【0019】 言及されるように、欠損変異は、天然の配列をそれと置換することを含めて、
外来遺伝子であってもよい外来DNA(即ち、所定の血清型本来のDNA以外の
DNA)の挿入を含むものであってよい。そのような外来遺伝子は、天然のアデ
ノウイルスプロモーターの制御下に置かれてもよい。例えば、ユニークな制限サ
イトを導入することにより、外来遺伝子産物がE2Aプロモーターから発現し得
るように外来遺伝子をE2A領域内に挿入することが容易になる。反対に、外来
遺伝子を非天然のプロモーターの制御下に置くこともできる。この点において、
いかなる非天然のプロモーターも非天然の転写カセットの発現を駆動するのに使
用することができる。そのようなプロモーター/エンチャンターエレメントは当
該技術分野において周知である。適当なプロモーターの例として、原核プロモー
ター又はウイルスプロモーター(例えば、レトロウイルス移行期末端反復配列エ
レメント(ITR)、ウイルスロングターミナルリピート(LTR);ヘルペス
ウイルスIEプロモーターやサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター
のような前初期ウイルスプロモーター;並びにラウス肉腫ウイルス(RSV)プ
ロモーターやマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターのような他のウイル
スプロモーター)が挙げられる。他の適当なプロモーターは構成的に活性なプロ
モーター(例えば、β−アクチンプロモーター)、シグナル特異的プロモーター
(例えば、主要壊死因子、RU−486、メタロチオネイン、recに応答する
プロモーターのような、誘導及び/又は抑制プロモーター)、組織特異的プロモ
ーター(例えば、表皮組織、真皮組織、消化器の組織(例えば、食道、胃、腸、
結腸等もしくはそれらに関連する腺の細胞)、血管平滑筋等の平滑筋、心筋、骨
格筋、肺組織、肝細胞、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞等)、内
皮細胞、強膜細胞、腎細胞、腺細胞(例えば、胸腺、卵巣、精巣、膵臓、副腎、
下垂体等の細胞)、腫瘍細胞、結合組織の細胞、中枢神経系の細胞(例えば、ニ
ューロン、神経痛等)、末梢神経系の細胞、及び他の目的の細胞で活性なプロモ
ーター)などの真核プロモーターである。
【0020】 少なくともE1領域における前記欠損に加えて、組換えアデノウイルスはML
Pにも変異を有する。MLPの変異は、プロモーターの応答性を変化させるよう
なものであれば、(上述の)MLP制御エレメントのいずれにあってもよい。好
ましくは、該変異はパッケージング細胞以外の細胞内におけるMLP活性をより
小さくするものである。MLP制御エレメントの多くは余分なものなので、少な
くともE1A遺伝子産物の存在下(即ち、該プロモーターは該エレメントの変異
にかかわらず機能する)では、MLPの変異は2以上のMLP制御エレメントに
影響を与えるものであることが望ましい。例えば、INRかTATAボックスエ
レメントのいずれか一方のみを除去してもMLP活性がそれ程変化しないが、I
NRとTATAボックスの両方を変異させるとウイルス増殖はひどく減衰する。
同様に、改変されたCAATボックスを有するウイルスは正常なカイネティック
スで増殖するが、二重変異体であるCAAT−TATA変異体では増殖が損なわ
れる。従って、望ましくは、MLPの変異は少なくとも2つのMLPエレメント
に影響を及ぼすものである。さらにプロモーターを弱めるために、該変異は、3
つもしくはそれよりもさらに多くのMLPエレメント(例えば、4または5以上
のMLPエレメント)に影響を及ぼすものであることが好ましく、また、該変異
は、5つ或いは、実際のところ、すべてのMLPエレメントにさえ影響を及ぼす
ものであってもよい。
【0021】 MLPの変異(例えば、CAATボックスのある特定の変異)の中にはプロモ
ーターを弱めるがウイルス増殖にはそれ程影響を及ぼさないものもある。そのよ
うな変異を有するE1欠損アデノウイルスは本発明の適当な組換えアデノウイル
スである。パッケージング細胞(即ち、E1遺伝子産物を供給する細胞)内では
、MLPの変異はウイルス増殖を阻害しない。しかしながら、MLPの変異は、
E1遺伝子産物のみを欠く「第1世代」アデノウイルスベクターにおいて見られ
る以上に、非相補的な細胞株内でのこのようなウイルスの増殖を効果的に低減さ
せる。他の態様においては、MLPの変異(例えば、CAAT−UPE変異)は
、MLPの活性を大きく低下させることによってウイルス増殖をひどく低減させ
る。そのようなウイルスは、本明細書に記載される細胞(例えば、E1及びL1
〜L5遺伝子産物を発現する細胞株)のようなパッケージング細胞内で増殖させ
ることができる。
【0022】 さらに別のMLP変異は、MLPの応答性を変化させることによって非相補的
な細胞内でのみウイルス増殖を低減させる。例えば、MLPをパッケージング細
胞内には存在するが、標的細胞内には存在しない転写因子に応答するように変異
させることができる。この観点において、TATAボックスを野生型TATA結
合蛋白質(TBP)に結合できないように変異させるか(Wobbeら, Mol. Cell.
Biol. 10, 3859-67 (1990))、或いは上流配列をUSF蛋白質に結合できないよ
うに変異させても(Reachら, 1990, 上述; Reachら, 1991, 上述)、得られるウ
イルスの増殖に変化はない。しかしながら、言及されるように、これらの変異の
両方が存在すると、ウイルスに及ぼす増殖減衰効果は致命的である(Reachら,
上述)。この組み合わせの致命性は、変異体配列を認識する変異型のTBPを発
現するパッケージング細胞において克服される(Bryantら, Genes Dev., 10, 24
91-2501 (1996); Tanseyら, Science, 275, 829-31 (1997); また、Burley, Nat
ure, 381, 112-13 (1996)も参照)。従って、本発明の組換えアデノウイルスは
、MLPをそのような改変されたTBPに応答するようにする変異を有していて
もよい。
【0023】 他の態様においては、MLPの変異はMTLUを外因性プロモーターの制御下
に置くというものである。宿主細胞内でのMTLUの発現を防ぐために、外因性
プロモーターは構成的に活性なプロモーターでないことが望ましい。即ち、外因
性プロモーターは、誘導プロモーターか或いは組織特異的プロモーターのいずれ
かであることが好ましい。プロモーターが組織特異的プロモーターの場合、パッ
ケージング細胞内では活性があるが、所望の宿主細胞内では活性がないことが好
ましい。本発明の組換えアデノウイルスを使用することができる宿主細胞種の範
囲を最大限にするためには、外因性プロモーターは誘導プロモーターであること
が最も好ましい。MLPの変異は、組換えアデノウイルスがpol遺伝子を欠損
しないようにするものであることが最も好ましい。残念ながら、ほとんどの誘導
プロモーターは大きくて複雑であり、それ故、pol遺伝子を破壊することなく
アデノウイルスゲノムにうまく導入されそうにない。しかしながら、適当な誘導
(且つ細胞種特異的)プロモーターの1つはNF−AT1応答エレメントである
。このプロモーターは長さ30ヌクレオチド未満であり、アデノウイルスゲノム
中に導入されると変異pol遺伝子産物を生じるが、該変異はポリメラーゼを機
能的でなくさせてしまうほど重大なものではない。NF−AT1応答エレメント
は、通常、T細胞内にのみ存在する因子に応答する。T細胞において、該因子は
、誘導されて核−そこで該因子は30ヌクレオチドの応答エレメントに結合して
転写を活性化する−に輸送されなければ、細胞質中に存在する(Lohら, J. Biol
. Chem., 271, 10884-91 (1996)を参照)。従って、ほとんどの細胞種において
は、外因性NF−AT1応答エレメントを有する組換えアデノウイルスは、L1
〜L5遺伝子を発現しないだろう。
【0024】 MLP活性に及ぼすMLP変異の影響は、任意の適当な方法によって調べるこ
とができる。例えば、RNAseプロテクションアッセイにより、さまざまなタ
イムコースにおけるプロモーターの相対活性を検出することができる。しかしな
がら、RNAseプロテクションアッセイの結果は、必ずしも所定のMLP変異
がウイルス増殖に及ぼす効果と相関しない(例えば、Reachら, 1991, 上述,を
参照)。従って、プロモーター活性に加えて、所定のMLP変異がウイルス増殖
に及ぼす効果をアッセイすることが望ましい。アデノウイルス増殖のアッセイ法
は当該技術分野において周知である。言及されるように、主要後期遺伝子の産物
は、polコード配列とは正反対の染色体鎖上にある。従って、いかなるウイル
ス増殖のアッセイにおいても、ウイルス増殖に及ぼす変異MLPの効果をpol
遺伝子改変によるいかなる影響からも切り離すために、コントロールとしてアデ
ノウイルスpol遺伝子を発現する細胞を含ませるべきである。
【0025】 好ましくは、該変異はMLPの活性を変化させるが、pol遺伝子−言及され
るように、それはMLPと正反対の染色体鎖上にある−には欠損を生じさせない
ものである。pol遺伝子を相補する細胞株はRCAを産生し得るので、この変
異はそのような細胞株の使用を避けるのに好適である。もちろん、MLPエレメ
ントにおける付加もしくは欠失変異はpolコード配列にフレームシフト変異を
引き起こすべきではない。MLPエレメントの多くの変異は、polアミノ酸配
列を変化させずになされ得る。pol配列の1又は数個のアミノ酸を付加もしく
は欠失させる他の変異は結果として欠損を生じない(例えば、Reachら, 1990,
上述; Reachら, 上述, 1991; Luら, 1997, 上述,を参照)。実際、pol産物
は、化学量論的レベルとは対照的に、単に触媒的な(例えば、比較的少量)レベ
ルでのみ必要とされるので、たとえpol産物が変異によって少々損なわれたと
しても、ウイルスはそれにもかかわらず生育することができる。所定の変異によ
ってpol遺伝子に欠損を生じるかどうかを調べる簡便なアッセイは、ウイルス
が増殖するのにpol遺伝子産物を相補しなければならないかどうかを、例えば
、本明細書に記載される細胞株のような細胞株を用いて調べることである。
【0026】 本発明の組換えアデノウイルスは、任意の適当な方法によって製造することが
でき、それらの多くは当該技術分野において知られている(例えば、Berknerら,
Nucl. Acids Res., 12, 925-941 (1984); Berknerら, Nucl. Acids Res., 11,
6003-6020 (1983); Broughら, Virol., 190, 624-634 (1992)を参照)。しかし
ながら、通常の組換えアデノウイルス製造方法は、適当な宿主細胞内での相同組
換えを利用するというものである。この方法では、まず所望の変異(例えば、M
LP内)を含むアデノウイルス遺伝子又は領域を有するカセットを標準的な分子
生物学的技術によって作製する。次いで、この改変DNAをアデノウイルスゲノ
ムの大きな部分(例えば、約半分まで)を含むもっと大きなプラスミドにクロー
ニングする。次の工程は、(欠失もしくは改変を含む)該プラスミドDNAとア
デノウイルスゲノムの残りの部分を含む他のDNAとを、レシピエント細胞にト
ランスフェクトすることである。これらのDNA片を一緒にすると、アデノウイ
ルスゲノムのすべて及び類似性のある領域を含む。これらの類似性のある領域の
中で組換えが起こり、欠失もしくは改変を有する組換えウイルスゲノムを生じる
だろう。レシピエント細胞は、組換え機能だけでなくトランスフェクトされるウ
イルスゲノムに含まれないすべての喪失したウイルス機能を提供し、それによっ
て組換えウイルスゲノムのいかなる欠損をも相補しなければならない。ITR及
び/又はパッケージングシグナルを変異させることによって、例えば、組換えウ
イルスが相補細胞株内でのみ機能もしくは増殖するように、アデノウイルスをさ
らに改変することができる。
【0027】 一般に、本発明の組換えアデノウイルスは、十分なウイルスが宿主細胞集団に
送達されて、該細胞が多数のウイルスに遭遇することを確実にし得る場合に最も
有用である。従って、本発明は、組換えアデノウイルスのストック、好ましくは
RCAを含まない組換えアデノウイルスストックを提供する。アデノウイルスス
トックの調製及び分析については当該技術分野で周知である。ウイルスストック
は、主にウイルスの遺伝子型、並びにウイルスストックの調製に使用されるプロ
トコール及び細胞株に依存して、力価がかなり変動する。本発明のウイルススト
ックは、少なくとも約107pfu(例えば、約108pfu)の力価を有してい
ればよいが、このようなストックの多くは、より高い力価(例えば、少なくとも
約109pfu、或いは少なくとも約1011pfu(例えば、約1012pfu)
でさえ)を有することができる。組換えウイルス及びパッケージング細胞株の性
質によっては、本発明のウイルスストックは約1013pfuもしくはそれ以上の
力価すら有することができる。好ましくは、本発明のウイルスストックは、少な
くとも約90%が1〜約4個のウイルスベクターで構成される。即ち、本発明の
ウイルスストックは、夾雑ウイルスの複製能に関係なく、実質的に夾雑ウイルス
を含まない。
【0028】 言及されるように、本発明の組換えアデノウイルスは、ウイルス遺伝子の制御
を研究するのに使用することができる。あるいは、言及されるように、本発明の
組換えアデノウイルスは非天然の遺伝子を有していてもよいので、それらは有用
な発現ベクターである。いずれの適用においても、ウイルスが豊富に細胞に感染
するのに適当な条件下で、ウイルス(又はウイルスストック)を所望の標的細胞
(即ち、宿主細胞)に導入する。ウイルスストック力価が既知の場合、予め決め
られた量(例えば、所望のm.o.i.)のウイルスを所望の標的に供給することがで
きる。
【0029】 所望の細胞に送達するために、本発明の組換えアデノウイルス(又はウイルス
ストック)を適当な担体に組み込むことができる。従って、本発明は本発明の組
換えアデノウイルス及び適当な担体を含有する組成物を提供する。宿主細胞が動
物体内にある場合、宿主に対する治療プロトコールの有害な影響を最小限にする
ために、該担体は薬理学上許容される担体であることが好ましい。いかなる適当
な調製も本発明の範囲内であるが、もちろん、的確な製剤は所望の適用(例えば
、標的細胞種、投与様式等)に依って決まり、それは当業者の理解し得る範囲内
である。従って、広範多種の適当な製剤を本発明の用途に利用することができ、
それらの多くのタイプは、他の文献(例えば、公開された国際出願WO 95/
34671号)に記載されている。
【0030】 本発明のウイルスストックを産生させるのにも、本発明の組換えアデノウイル
スを増殖させるのにもパッケージング細胞株を使用することが望ましい。必須の
アデノウイルスE1遺伝子産物を相補し得る多くの細胞株が、当該技術分野にお
いて知られており(例えば、HEK−293細胞、A594細胞、Per.C6
細胞等)、これらの株はいずれも、E1遺伝子以外の必須ウイルス遺伝子を欠損
していない本発明のウイルスを増殖させるのにふさわしい。さらに、pol遺伝
子と向かいあったMLP上の幾つかの変異の特異性を調べるために、E1/po
l相補細胞株を用いることができ、そのような細胞株は当該技術分野で公知であ
る(Almafitanoら, 1996, 上述)。MLPの変異はpol遺伝子を有意に損なわ
ないことが好ましいが、そのような細胞株は、pol遺伝子が損なわれた組換え
ウイルスを増殖させるのに使用することができる。本発明は、E1遺伝子産物以
外の因子が必要なアデノウイルスを増殖させる相補細胞株を提供する。
【0031】 本発明の細胞株は、目的の組換えアデノウイルスから消失したすべての必須の
機能(即ち、E1領域内の遺伝子及び本明細書に記載されるような他の必須アデ
ノウイルス遺伝子)を相補する。そのような細胞は、例えば、公開された国際出
願WO 95/34671号に記載されるように、標準的な分子生物学的技術を
用いて作製される。該細胞株は多数の相補遺伝子をオーバーラップがない様式で
含むことが好ましく、それによりウイルスゲノムと細胞のDNAが組換えを起こ
してRCAが産生される可能性が減少する。該相補細胞株は、高力価の組換えア
デノウイルスストックを生じるのに適当なレベルで、相補遺伝子産物を発現する
ことが望ましい。例えば、アデノウイルスDNAを複製するために、E2A産物
、DBPは化学量論的レベル(即ち、比較的高レベル)で発現されなければなら
ないが、他の遺伝子産物は触媒的レベル(即ち、比較的低レベル)でしか必要と
されない。さらに、該産物の一過的発現は、細胞の正常なウイルス感染において
観察されるのと一致することが望ましい。例えば、ウイルスDNAの複製に必要
な構成成分は、ビリオンのアッセンブリに必要な構成成分の前に発現しなければ
ならない。ウイルス産物の存在による細胞毒性を最小限にするか回避し、且つ該
産物の一過的発現を制御するために、誘導プロモーター系を用いることが望まし
い。例えば、ヒツジメタロチオネイン誘導プロモーター系を用いて、完全なE4
領域、E4領域のオープンリーディングフレーム6及び/又はE2A領域を発現
させることができる。他の適当な誘導プロモーター系の例としては、細菌性la
cオペロン、テトラサイクリンオペロン、T7ポリメラーゼ系、並びに真核及び
原核の転写因子、リプレッサー及び他の構成要素の組み合わせ及びキメラ構築物
が挙げられるが、それらに限定されない。発現させるべきウイルス産物が非常に
毒性が強い場合、インデューサーがウイルスベクターに担持され、誘導産物が相
補細胞株のクロマチンに担持される二者共同(bipartite)誘導系により、さら
に発現を制御する。
【0032】 本発明の細胞株は、MLPに結合する1又は2以上の因子(例えば、転写因子
)を発現してもよい。該細胞株は、DEF−AもしくはDEF−B蛋白質、又は
本明細書で論じるように改変されたMLPに結合する因子を産生するように設計
することができる。例えば、該MLPが改変されたTATAボックスを有する場
合、該細胞株は、該変異TATA配列を認識する変異型のTBP(例えば、TB
Pm3e)を発現することができる(Bryantら, 上述; Tanseyら, 上述; Burley
, Nature, 上述)。同様に、NF−AT1遺伝子を発現してNF−AT1応答エ
レメントを有する組換えアデノウイルスを増殖させるように、細胞を設計するこ
ともできる。E1欠損アデノウイルスの増殖に使用される細胞株(例えば、HE
K−293細胞、A594細胞、Per.C6細胞等)は、TBPm3e及びN
F−AT1遺伝子のいずれも発現しない。しかしながら、これらの遺伝子の配列
は公知であり、cDNAが入手可能である(Bryantら, 上述; Tanseyら, 上述;
Burley, Nature, 上述; Lohら, 上述, van Beverenら, 上述)。従って、適当な
E1相補細胞株への導入用の適当なベクター(例えば、選択マーカーを含む)に
該cDNAを工作することができる。そのような細胞株は、MTLUに機能的に
連結した外因性応答エレメントを有するアデノウイルスを増殖させることができ
【0033】 別の本発明の細胞株は、必須のE1A産物に加えてL1〜L5遺伝子産物をも
発現する。そのような細胞株は、MLP活性を大きく低下させることによってウ
イルス増殖をひどく低減させるMLPの変異を有する本発明の組換えアデノウイ
ルスを増殖させるのに有用である。そのようなパッケージング細胞内のL1〜L
5 DNAコード領域は、MLPプロモーター以外の1つのプロモーター(或い
は、該遺伝子が別個のカセット内にあるならば複数のプロモーター)に連結して
いることが好ましい。相補的なL1〜L5遺伝子産物を駆動するそのような非M
LPプロモーターを使用すると、ウイルスゲノムと相補DNAとの間で組換えが
起こる可能性が最小限になる。さらに、そのようなDNA配列は、もしウイルス
ゲノムと組換えを起こすと、結果として得られるいかなるウイルスもpol遺伝
子産物欠損となるようにするので、そのような非MLPプロモーターを使用する
と、そのようないかなる組換えによっても生育可能なウイルスを生じる危険性は
最小限となる。
【0034】 本明細書で引用した、特許、特許出願及び刊行物を含むすべての文献は、ここ
で言及することによりそのすべてが組み入れられるものである。
【0035】 本発明を、好ましい実施態様を強調して説明してきたが、好ましい実施態様が
変更され得ること、本発明が本明細書に具体的に記載された以外によっても実施
され得ることは、当業者には自明であろう。従って、本発明は以下の特許請求の
範囲によって定義される発明の精神と範囲に包含されるすべての変形を含むもの
である。
【0036】 配列表 <110> ジェンベク、インコーポレイティッド ブロー、ダグラス イー. コウベスディ、イムリ <120> 組換えアデノウイルス <130> 201337 <140> WO <141> 1999-06-24 <150> US 09/105,515 <151> 1998-06-26 <160> 4 <170> パテントイン バージョン2.0 <210> 1 <211> 15 <212> DNA <213> unknown <400> 1 tcctcactct cttcc 15 <210> 2 <211> 12 <212> DNA <213> unknown <400> 2 ggccacgtga cc 12 <210> 3 <211> 11 <212> DNA <213> unknown <400> 3 ttgtcagttt c 11 <210> 4 <211> 15 <212> DNA <213> unknown <400> 4 aacgaggagg attga 15
【配列表】
【手続補正書】特許協力条約第19条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年1月10日(2000.1.10)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項19】 アデノウイルスE1遺伝子産物及び1又は2以上のL1〜
L5遺伝子産物を産生する、請求項16記載の組換え細胞株。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年8月12日(2000.8.12)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項17】 アデノウイルスE1遺伝子産物及び1又は2以上のL1〜
L5遺伝子産物を産生する組換え細胞株。
【手続補正書】
【提出日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】 主要後期転写単位(MTLU)の転写後のプロセッシングにより、ウイルスキ
ャプシドの構成要素をコードする5つのファミリーの後期mRNAが生じ、それ
ぞれL1からL5と命名されている(Shawら, Cell, 22, 905-916 (1980))。こ
れらの蛋白質は細胞にとって非常に毒性が強く、感染細胞に対する免疫応答を助
長することができる(例えば、Yangら, Proc. Nat. Acad. Sci. (USA), 91, 440
7-11 (1994)を参照)。この免疫応答は、組織の腫脹と形質導入された細胞の破
壊を引き起こし、導入遺伝子が細胞内で発現する期間を短くする。「第1世代」
アデノウイルスベクターは、これらの有害な効果を減ずる目的でアデノウイルス
ゲノムをサイレントにするように設計されていた。言及されるように、E1A遺
伝子産物がウイルス遺伝子発現のカスケードを開始するので、最も初期のアデノ
ウイルスベクターは機能的なE1A領域を欠いていた。例えば、E1領域内に外
因性遺伝子を挿入することにより、当該外因性遺伝子を発現することができるが
A遺伝子を発現することができない組換えベクターが作られる。当該組換え
アデノウイルスは、正常に機能しないかもしくは欠失した必須E1産物を供給す
るために、相補的な細胞内で増殖させるか、或いはヘルパーウイルスの存在下で
増殖させなければならない(Davidsonら, J. Virol., 61, 1226-39 (1987); Man
sourら, Mol. Cell Biol., 6, 2684-94 (1986))。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】 言及されるように、欠損変異は、天然の配列をそれと置換することを含めて、
外来遺伝子であってもよい外来DNA(即ち、所定の血清型本来のDNA以外の
DNA)の挿入を含むものであってよい。そのような外来遺伝子は、天然のアデ
ノウイルスプロモーターの制御下に置かれてもよい。例えば、ユニークな制限サ
イトを導入することにより、外来遺伝子産物がE2Aプロモーターから発現し得
るように外来遺伝子をE2A領域内に挿入することが容易になる。反対に、外来
遺伝子を非天然のプロモーターの制御下に置くこともできる。この点において、
いかなる非天然のプロモーターも非天然の転写カセットの発現を駆動するのに使
用することができる。そのようなプロモーター/エンハンサーエレメントは当該
技術分野において周知である。適当なプロモーターの例として、原核プロモータ
ー又はウイルスプロモーター(例えば、レトロウイルス逆位(中型)末端反復配
列エレメント(ITR)、ウイルスロングターミナルリピート(LTR);ヘル
ペスウイルスIEプロモーターやサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモー
ターのような前初期ウイルスプロモーター;並びにラウス肉腫ウイルス(RSV
)プロモーターやマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターのような他のウ
イルスプロモーター)が挙げられる。他の適当なプロモーターは構成的に活性な
プロモーター(例えば、β−アクチンプロモーター)、シグナル特異的プロモー
ター(例えば、主要壊死因子、RU−486、メタロチオネイン、recに応答
するプロモーターのような、誘導及び/又は抑制プロモーター)、組織特異的プ
ロモーター(例えば、表皮組織、真皮組織、消化器の組織(例えば、食道、胃、
腸、結腸等もしくはそれらに関連する腺の細胞)、血管平滑筋等の平滑筋、心筋
、骨格筋、肺組織、肝細胞、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞等)
、内皮細胞、強膜細胞、腎細胞、腺細胞(例えば、胸腺、卵巣、精巣、膵臓、副
腎、下垂体等の細胞)、腫瘍細胞、結合組織の細胞、中枢神経系の細胞(例えば
、ニューロン、神経等)、末梢神経系の細胞、及び他の目的の細胞で活性なプ
ロモーター)などの真核プロモーターである。
【手続補正書】
【提出日】平成13年12月20日(2001.12.20)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】
【配列表】 配列表 <110> ジェンベク、インコーポレイティッド ブロー、ダグラス イー. コウベスディ、イムリ <120> 組換えアデノウイルス <130> 201337 <140> WO <141> 1999-06-24 <150> US 09/105,515 <151> 1998-06-26 <160> 4 <170> パテントイン バージョン2.0 <210> 1 <211> 15 <212> DNA <213> Human adenovirus serotype 5 <400> 1 tcctcactct cttcc 15 <210> 2 <211> 12 <212> DNA <213> Human adenovirus serotype 5 <400> 2 ggccacgtga cc 12 <210> 3 <211> 11 <212> DNA <213> Human adenovirus serotype 5 <400> 3 ttgtcagttt c 11 <210> 4 <211> 15 <212> DNA <213> Human adenovirus serotype 5 <400> 4 aacgaggagg attga 15
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 48/00 C12N 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB ,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,GE,G H,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,Z W Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA80 DA02 EA02 FA02 HA17 4B065 AA90X AA95X AB01 AC14 BA01 BA16 CA44 CA46 4C084 AA13 NA14 ZA591 ZB331 4C085 AA03 BA77 CC08 DD62 DD86 4C087 AA03 BC83 NA14 ZA59 ZB33

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 E1領域を欠損し、且つパッケージング細胞以外の細胞では
    MLP活性がより低いようにMLPが変異したゲノムを含む組換えアデノウイル
    ス。
  2. 【請求項2】 該ゲノムがさらにE3領域を欠損する請求項1記載の組換え
    アデノウイルス。
  3. 【請求項3】 該ゲノムがさらに機能的なアデノウイルスDNAポリメラー
    ゼをコードする遺伝子を含む、請求項1又は2記載の組換えアデノウイルス。
  4. 【請求項4】 該MLPの変異が、逆位CAATボックス、UPE、TAT
    Aボックス、DE1及びDE2からなる制御エレメント群より選択される該ML
    Pの制御エレメント内にある、請求項1〜3のいずれかに記載の組換えアデノウ
    イルス。
  5. 【請求項5】 該変異がMLPを改変されたTBPに応答可能にするもので
    ある、請求項1〜4のいずれかに記載の組換えアデノウイルス。
  6. 【請求項6】 該MLPの変異がMTLUを外因性誘導プロモーターの制御
    下におくものである、請求項1〜5のいずれかに記載の組換えアデノウイルス。
  7. 【請求項7】 該外因性プロモーターがNF−AT1応答配列である請求項
    6記載の組換えアデノウイルス。
  8. 【請求項8】 該ゲノムがMLPに多数の変異を含むものである、請求項1
    〜7のいずれかに記載の組換えアデノウイルス。
  9. 【請求項9】 該MLPの各変異が、逆位CAATボックス、UPE、TA
    TAボックス、DE1及びDE2からなる制御エレメント群より選択される該M
    LPの制御エレメント内にある、請求項8記載の組換えアデノウイルス。
  10. 【請求項10】 非天然の遺伝子をさらに含む請求項1〜9のいずれかに記
    載の組換えアデノウイルス。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の組換えアデノウイルス
    を含むストック。
  12. 【請求項12】 実質的にRCAがない請求項11記載のストック。
  13. 【請求項13】 少なくとも約107pfuの力価を有する請求項11記載
    のストック。
  14. 【請求項14】 請求項1〜10のいずれかに記載の組換えアデノウイルス
    及び薬理学上許容される担体を含有する組成物。
  15. 【請求項15】 アデノウイルスE1及びDEF−AもしくはDEF−B遺
    伝子産物を産生する組換え細胞株。
  16. 【請求項16】 請求項1記載の組換えアデノウイルスが複製する組換え細
    胞株。
  17. 【請求項17】 アデノウイルスE1遺伝子産物及び該組換えアデノウイル
    スの変異TATA配列を認識する変異型TBPを発現する、請求項16記載の組
    換え細胞株。
  18. 【請求項18】 アデノウイルスE1遺伝子産物及びNF−AT1遺伝子を
    発現する、請求項16記載の組換え細胞株。
  19. 【請求項19】 アデノウイルスE1遺伝子産物及び1又は2以上のL1〜
    L5遺伝子産物を発現する、請求項16記載の組換え細胞株。
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