JP2002321642A - 自動車の後部車体構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の後突時において、スペアタイヤを強制
的に下方へ移動させ、シート乗員並びに燃料タンク等を
確実に保護することができる自動車の後部車体構造を提
供する。 【解決手段】 各リヤサイドメンバ１の後端を連結する
後端部材２と、各リヤサイドメンバ１に架設されたクロ
スメンバ３とにサブセンタメンバ６を架設し、車両の後
突時に、サブセンタメンバ６がその下方のスペアタイヤ
４を略下方へ押圧する形状に変形するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、スペアタイヤが収
納される自動車の後部車体構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の自動車の後部車体構造と
して、例えば、特開平１１−１７１０４８号公報に記載
されたものが知られている。この後部車体構造は、車体
の左右両側に設けられ前後に延びる一対のリヤサイドメ
ンバと、各リヤサイドメンバの後端を連結し左右に延び
る後端部材と、後端部材の前方に配され各リヤサイドメ
ンバに架設されたクロスメンバとを備え、車体の下面側
にスペアタイヤが収納されている。各リヤサイドメンバ
の内側にはリンフォースメントが配置され、リンフォー
スメントの前側上部と後側下部とには、それぞれ凹部が
形成されている。また、スペアタイヤの前方には、車両
の後突時にスペアタイヤが前方へ移動した際に、スペア
タイヤを下方へ移動させる方向転換部材が設けられてい
る。

【０００３】この自動車の後部車体構造によれば、車両
の後突時において、リヤサイドメンバ及びリンフォース
メントが各凹部の位置において屈曲し、全体としてＺ型
に変形する。従って、後突加害車のエネルギがリヤサイ
ドメンバの変形により吸収されるようになっている。ま
た、方向転換部材によりスペアタイヤは下方に案内さ
れ、スペアタイヤ前方に位置する燃料タンク等が保護さ
れるようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記自
動車の後部車体構造では、スペアタイヤの上方が略開放
されており、車両の後突時にスペアタイヤが上方へ移動
するおそれがあった。スペアタイヤが上方へ移動する
と、リヤシートが突き上げられるおそれがある。

【０００５】また、前記方向転換部材では、スペアタイ
ヤに大きな負荷が加わった場合に、スペアタイヤの前方
への移動を十分に規制することはできない。

【０００６】本発明は、前記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、車両の後突時におい
て、スペアタイヤを強制的に下方へ移動させ、シート乗
員並びに燃料タンク等を確実に保護することができる自
動車の後部車体構造を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、請求項１記載の発明では、車体の左右両側に設けら
れ略前後に延びる一対のリヤサイドメンバ１と、前記各
リヤサイドメンバの後端を連結する後端部材（例えば、
リヤスカート２等）と、前記後端部材の前方に配され前
記各リヤサイドメンバに架設されたクロスメンバ３とを
備え、前記車体の下面側にスペアタイヤ４が収納される
自動車の後部車体構造において、前記スペアタイヤの上
方に前記クロスメンバと前記後端部材に架設されたサブ
センタメンバ６を配し、前記サブセンタメンバを、車両
の後突時に前記スペアタイヤを略下方へ押圧するよう変
形する形状としたことを特徴とする。

【０００８】請求項１記載の発明によれば、車両の後突
時において、後端部材に加わる前方向への衝撃は、各リ
ヤサイドメンバ及びサブセンタメンバに伝達する。この
とき、サブセンタメンバはスペアタイヤを略下方へ押圧
するよう変形し、スペアタイヤはサブセンタメンバによ
り強制的に略下方へ移動される。即ち、スペアタイヤが
上方または前方へ移動することはないので、スペアタイ
ヤの上方に位置するリヤシート、スペアタイヤの前方に
位置するデファレンシャルギヤ等にスペアタイヤからの
衝撃が加わることはない。

【０００９】従って、車両の後突時において、リヤシー
トがスペアタイヤに突き上げられてシート乗員に危害が
加えられたり、デファレンシャルギヤ等が前方に移動し
て燃料タンク等を損壊することは無く、シート乗員並び
に燃料タンク等を確実に保護することができる。

【００１０】また、請求項２記載の発明では、請求項１
記載の自動車の後部車体構造において、前記サブセンタ
メンバの下面から前記スペアタイヤの前方に延びるガー
ド部材（例えば、ガードプレート１１等）を備えたこと
を特徴とする。

【００１１】請求項２記載の発明によれば、請求項１の
作用に加え、車両の後突時において、ガード部材により
スペアタイヤの前方への移動が阻止される。従って、よ
り効果的にスペアタイヤ前方の燃料タンク等を保護する
ことができる。

【００１２】また、請求項３記載の発明では、請求項１
または２記載の自動車の後部車体構造において、前記車
体は後部にリヤシート５が配されるものであり、前記サ
ブセンタメンバは、前記車両の後突時における変形の略
起点となる変形起点部（例えば、ビード１０等）を有す
るものであって、前記変形起点部を前記リヤシートの略
後方に配したことを特徴とする。

【００１３】請求項３記載の発明によれば、請求項１ま
たは２の作用に加え、サブセンタメンバの変形起点部が
リヤシートの略後方に配されているので、万が一、車両
の後突時等にサブセンタメンバが上方に向かって変形し
たとしても、リヤシートがサブセンタメンバにより突き
上げられるおそれはない。従って、シート乗員の安全性
を飛躍的に向上させることができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１乃至図４は、本発明の一実施
形態を示すもので、図１は本発明の一実施形態を示す自
動車の後部車体構造の概略斜視図、図２は自動車の後部
車体構造の概略平面図である。尚、各図とも、フロアパ
ネルを省略した図となっている。

【００１５】図１及び図２に示すように、この自動車の
後部車体構造は、車両の左右両側を略前後に延びる一対
のリヤサイドメンバ１と、これら各リヤサイドメンバ１
の後端を連結するリヤスカート２と、このリヤスカート
２の前方に配され各リヤサイドメンバ１に架設されたク
ロスメンバ３とを備え、車両の下面側にスペアタイヤ４
が収納されるようになっている。また、図３に示すよう
に、クロスメンバ３の上方にはリヤシート５が配されて
いる。

【００１６】スペアタイヤ４は、車両の下面に設けられ
たスペアタイヤキャリア４ａに収納される。スペアタイ
ヤキャリア４ａはスペアタイヤ４を下方より覆うよう形
成され、その前部はクロスメンバ３に、その後部はリヤ
スカート２に、それぞれ着脱自在に固定される。即ち、
本実施形態においては、スペアタイヤ４は車両の外部か
ら取出自在となっている。

【００１７】スペアタイヤ４の上方には、リヤスカート
２とクロスメンバ３に架設されたサブセンタメンバ６が
配されている。サブセンタメンバ６は前後に延び略逆ハ
ット状に形成され、スペアタイヤ４との間隙が微小とな
るよう配置されている。サブセンタメンバ６は、それぞ
れ略水平に形成された前部７及び後部８と、前部７と後
部８の間で前下がりに傾斜する傾斜部９等とから構成さ
れる。また、サブセンタメンバ６の前部７及び傾斜部９
の会合部と、後部８及び傾斜部９の会合部には、それぞ
れビード１０が形成される。各ビード１０は、サブセン
タメンバ６の側面に上下に延びるよう形成されている。
即ち、サブセンタメンバ６に圧縮方向の力が加わると、
サブセンタメンバ６は各ビード１０を起点として変形す
る。本実施形態においては、各ビード１０はリヤシート
５の略後方に配されている。また、サブセンタメンバ６
は、前部７が後部８に比して断面係数が大きくなるよう
形成されており、本実施形態においては、前部７は後部
８より断面積が大きくなっている。

【００１８】また、サブセンタメンバ６には、その下面
からスペアタイヤキャリア４ａの前方に延びるガードプ
レート１１が設けられている。本実施形態においては、
ガード部材としてのガードプレート１１はスペアタイヤ
キャリア４ａの前方にて、サブフレーム１２に固定され
ている。このサブフレーム１２は、リヤサスペンション
の各コントロールリンクを支持するとともに、デファレ
ンシャルギヤ１３を支持している。サブフレーム１２は
各リヤサイドメンバ１に固定され、左右一対のフレーム
サイドメンバ１４及び前後一対のフレームクロスメンバ
１５とを有している。後側のフレームクロスメンバ１５
の側面断面は略上下に延びる板状であり、その前部にデ
ファレンシャルギヤ１３が取り付けられている。本実施
形態においては、デファレンシャルギヤ１３には前方に
延びるプロペラシャフト１３ａが連結されている。図３
に示すように、前述のガードプレート１１は、このデフ
ァレンシャルギヤ１３とスペアタイヤ４の間に配されて
いる。

【００１９】以上のように構成された自動車の後部車体
構造における、車両の後突時の作用について説明する。

【００２０】車両の後突時においては、リヤスカート２
に加わる前方向への衝撃は、各リヤサイドメンバ１及び
サブセンタメンバ６に伝達する。従って、サブセンタメ
ンバ６に後端側から前方へ圧縮する力が加わり、サブセ
ンタメンバ６は各ビード１０を起点として変形する。こ
のとき、傾斜部９が前下がりに傾斜していることから、
前部７及び傾斜部９の会合部と、後部８及び傾斜部９の
会合部とが屈曲し、図４に示すように、サブセンタメン
バ６は真横から見て略Ｚ型に圧縮変形する。即ち、後部
８は圧縮しつつ前方に移動し、傾斜部９の後端側が前方
に移動して傾斜部９は立ち上がった状態となって、前部
７と傾斜部９の会合部付近が略下方へ移動する。これに
より、スペアタイヤ４はサブセンタメンバ６により略下
方に押圧され、スペアタイヤ４はサブセンタメンバ６と
ともに強制的に略下方に移動される。本実施形態におい
ては、スペアタイヤ４とサブセンタメンバ６との間隙は
微小であるので、サブセンタメンバ６の変形が開始する
とスペアタイヤ４は直ちに略下方へ移動する。さらに、
ガードプレート１１によりスペアタイヤ４の前方への移
動が阻止されているので、スペアタイヤ４は略下方に確
実に移動するようになっている。

【００２１】このように、本実施形態の自動車の後部車
体構造によれば、車両の後突時において、スペアタイヤ
４が上方または前方へ移動することはないので、シート
乗員並びに燃料タンク等を確実に保護することができ
る。

【００２２】また、本実施形態の自動車の後部車体構造
によれば、ガードプレート１１によりスペアタイヤ４の
前方への移動が阻止されるので、効果的にスペアタイヤ
前方の燃料タンク等を保護することができる。

【００２３】また、本実施形態の自動車の後部車体構造
によれば、傾斜部９及び各ビード１０をリヤシート５の
略後方に配したので、万が一、車両の後突時等にサブセ
ンタメンバが上方に向かって変形したとしても、リヤシ
ートがサブセンタメンバにより突き上げられるおそれは
ない。従って、シート乗員の安全性を飛躍的に向上させ
ることができる。

【００２４】また、本実施形態の自動車の後部車体構造
によれば、スペアタイヤ４とサブセンタメンバ６との間
隙が微小であり、サブセンタメンバ６が変形するとスペ
アタイヤ４が直ちに略下方へ移動するので、スペアタイ
ヤ４を確実に略下方へ移動させることができる。

【００２５】また、本実施形態の自動車の後部車体構造
によれば、サブセンタメンバ６の前部７を後部８よりも
断面係数が大きくなるようにしたので、サブセンタメン
バ６を確実に略Ｚ型に変形させることができるし、車両
の後突時のエネルギーを後部８にて効率的に吸収するこ
とができる。

【００２６】尚、前記実施形態においては、サブセンタ
メンバ６が略Ｚ型に変形するものを示したが、例えばサ
ブセンタメンバ６が略Ｖ型に変形するものであってもよ
く、車両の後突時にスペアタイヤを略下方に押圧するも
のであれば、サブセンタメンバ６がどのような形状であ
ってもよいことは勿論である。

【００２７】また、前記実施形態においては、スペアタ
イヤ４がスペアタイヤキャリア４ａに収納されているも
のを示したが、スペアタイヤが車体フロア等に収納され
ているものであってもよい。

【００２８】また、前記実施形態においては、各ビード
１０がサブセンタメンバ６の各側面に形成されたものを
示したが、ビードがサブセンタメンバの下面、或いは、
サブセンタメンバの各側面及び下面に形成されたもので
あってもよい。また、ビードでなく切欠、穴等を形成し
たものであってもよいことは勿論である。

【００２９】また、前記実施形態においては、各ビード
１０を設けたものを示したが、各ビード１０を設けずと
も、サブセンタメンバ６の前部７と傾斜部９との会合
部、後部８と傾斜部９との会合部がそれぞれ変形起点部
となり、車両の後突時にサブセンタメンバ６は略Ｚ型に
変形する。

【００３０】また、前記実施形態においては、スペアタ
イヤ４とサブセンタメンバ６とを微小な間隙を介して配
置したものを示したが、スペアタイヤとサブセンタメン
バとの間にゴム部材等の弾性部材を介在させたものであ
ってもよい。

【００３１】また、前記実施形態においては、ガードプ
レート１１をサブフレーム１２に固定したものを示した
が、クロスメンバ等に固定したものであってもよい。さ
らに、ガードプレートの形状等も任意であり、その他、
具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であるこ
とは勿論である。

【００３２】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
車両の後突時においてシート乗員並びに燃料タンク等を
確実に保護することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態を示す自動車の後部車体構
造の概略斜視図である。

【図２】自動車の後部車体構造の概略平面図である。

【図３】自動車の後部車体構造の概略側面図である。

【図４】車両の後突時におけるスペアタイヤの動きを示
す自動車の後部車体構造の概略側面図である。

【符号の説明】

１ リヤサイドメンバ ２ リヤスカート ３ クロスメンバ ４ スペアタイヤ ５ リヤシート ６ サブセンタメンバ １０ ビード １１ ガードプレート

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車体の左右両側に設けられ略前後に延び
   る一対のリヤサイドメンバと、前記各リヤサイドメンバ
   の後端を連結する後端部材と、前記後端部材の前方に配
   され前記各リヤサイドメンバに架設されたクロスメンバ
   とを備え、前記車体の下面側にスペアタイヤが収納され
   る自動車の後部車体構造において、 前記スペアタイヤの上方に前記クロスメンバと前記後端
   部材に架設されたサブセンタメンバを配し、 前記サブセンタメンバを、車両の後突時に前記スペアタ
   イヤを略下方へ押圧するよう変形する形状としたことを
   特徴とする自動車の後部車体構造。
2. 【請求項２】 前記サブセンタメンバの下面から前記ス
   ペアタイヤの前方に延びるガード部材を備えたことを特
   徴とする請求項１記載の自動車の後部車体構造。
3. 【請求項３】 前記車体は後部にリヤシートが配される
   ものであり、 前記サブセンタメンバは、前記車両の後突時における変
   形の略起点となる変形起点部を有するものであって、 前記変形起点部を前記リヤシートの略後方に配したこと
   を特徴とする請求項１または２記載の自動車の後部車体
   構造。