JP2002252109A - 磁性フェライト材料および積層型フェライト部品 - Google Patents
磁性フェライト材料および積層型フェライト部品Info
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Abstract
成可能な磁性フェライト材料およびこれを用いた積層型
フェライト部品を提供する。 【解決手段】 磁性フェライト層2と内部電極3とが交
互に積層されるとともに、内部電極3と電気的に接続さ
れた外部電極5とを有する積層型チップビーズ1であっ
て、磁性フェライト層2はBi2O3系ガラスを含む磁性
フェライト焼結体から構成されている。
Description
ズ、積層型インダクタなどの積層型チップフェライト部
品、LC複合積層型部品を代表とする複合積層型部品に
用いられる磁性フェライト材料および積層型フェライト
部品に関するものである。
積層型部品(本明細書中では積層型フェライト部品と総
称する。)は、体積が小さいこと、信頼性が高いことな
どから、各種電気機器に用いられている。この積層型フ
ェライト部品は、通常、磁性フェライトからなる磁性層
用のシートまたはペーストと内部電極用のペーストとを
厚膜積層技術によって積層一体化した後、焼成し、得ら
れた焼結体表面に外部電極用ペーストを印刷または転写
した後に焼き付けて製造される。なお、積層一体化した
後に焼成することを同時焼成と呼んでいる。内部電極用
の材料としてはその低抵抗率からAgまたはAg合金が
用いられているため、磁性層を構成する磁性フェライト
材料としては、同時焼成が可能、換言すればAgまたは
Ag合金の融点以下の温度で焼成ができることが絶対条
件となる。したがって、高密度、高特性の積層型フェラ
イト部品を得るためには、AgまたはAg合金の融点以
下の低温で磁性フェライトを焼成できるかが鍵となる。
AgまたはAg合金の融点以下の低温で焼成できる磁性
フェライトとしてNiCuZnフェライトが知られてい
る。つまり、微粉砕によって比表面積を6m2/g程度
以上とした原料粉末を用いたNiCuZnフェライト
は、Agの融点(961.93℃)以下で焼成できるた
め、積層型フェライト部品に広く用いられている。
イトをAgまたはAg合金の融点以下の低温で焼成する
ためには、主成分自体の検討のみならず、焼結助剤も重
要である。CuOが低温焼成化に有効であることは以前
から知られているが、CuOの他にも様々な焼結助剤が
開発されている。なお、本願明細書において、「低温」
とはAgまたはAg合金の融点以下の温度を意味する。
特開平8−319155号公報では焼結助剤としてBi
2O3およびMnO2を所定量添加すること、また特開平
9?7814号公報では焼結助剤としてSiO2および
Bi2O3を所定量添加すること、が提案されている。し
かしながら、より高い収縮率が得られる焼結助剤が要求
されている。そこで、本発明は低温焼成に有効な焼結助
剤を提案し、低温焼成可能な磁性フェライト材料および
これを用いた積層型フェライト部品を提供することを課
題とする。
する添加物について様々な検討を行い、Bi2O3系ガラ
スを添加することにより加熱した際の収縮率が向上する
こと、すなわちBi2O3系ガラスが低温焼成に有効に寄
与することを知見した。ここで収縮率とは焼成のしやす
さの目安となるもので、同一の温度において収縮率が高
いほど焼成しやすいとみなすことができる。また本発明
者は、Bi2O3系ガラスが低温焼成に有効であるのみな
らず、Bi2O3系ガラスを添加した場合には複素透磁率
の虚数部分μ''(以下、適宜「μ''」という。)が高周
波域側にシフトすることを知見した。よって、Bi2O3
系ガラスによれば、高周波特性に優れかつ低温焼成可能
な磁性フェライトを得ることができる。したがって、本
発明は、磁性フェライト材料に焼結助剤としてBi2O3
系ガラスを添加したことを特徴とする磁性フェライト材
料を提供する。Bi2O3系ガラスによれば、Agまたは
Ag合金の融点以下の低温で焼成した場合においても磁
性フェライトの磁気特性は維持される。なお、本発明に
おいてBi2O3系ガラスとは、ガラス成分中にBi2O3
を20〜90wt%含むガラスをいう。Bi2O3系ガラ
スの望ましい添加量は0.5〜12wt%である。この
範囲でBi2O3系ガラスを添加した場合には、焼成のし
やすさの目安となる収縮率が向上するため、焼成温度の
低減を図ることができる。
助剤としてBi2O3系ガラスとCuOを複合添加した場
合には、特に同時焼成に有効である。具体的には、Bi
2O3系ガラスおよびCuOを合計で1〜20wt%添加
すればよい。CuOの低温焼成効果は既知であるが、焼
結助剤としてCuOを単独で添加した場合には磁気特性
が下がる場合がある。ところが、Bi2O3系ガラスおよ
びCuOを複合添加することによって、所定の磁気特性
を維持しつつ低温焼成可能な磁性フェライトを得ること
ができる。特に、Bi2O3系ガラスおよびCuOを合計
で3〜15wt%添加した場合には、焼成のしやすさの
目安となる収縮率が向上する。また、Bi2O3系ガラス
を3〜7wt%およびCuOを3〜7wt%添加した場
合には、μ''が高周波域側にシフトするため、高周波特
性に優れた磁性フェライトを得ることができる。
化に伴い六方晶系フェライトが注目をあびている。六方
晶系フェライトの中には、M型、U型、W型、X型、Y
型およびZ型の6種類があり、これらはMn系やNi系
などの立方晶系フェライトと異なった特徴を有してい
る。すなわち、六方晶系フェライトは結晶方向により異
なる異方性磁界をもつために、透磁率が高周波域側にシ
フトするという特徴を有している。上記特開平8−31
9155号公報では、Ni系の立方晶系フェライトにB
i2O3およびMnO2を所定量添加することにより、ま
た上記特開平9?7814号公報では、同じく立方晶系
フェライトにSiO2およびBi2O3を所定量添加する
ことにより、いずれも同時焼成を可能としている。とこ
ろが、特開平8−69713号公報および特開平9?7
814号公報に記載の焼結助剤は、立方晶系フェライト
を同時焼成する上では有効であるものの、立方晶系フェ
ライトよりも焼成温度が高い六方晶系フェライトに適用
した場合には十分な収縮率が得られず、助剤添加による
焼成温度の低減が不十分であるという問題点があった。
として、特開平9−110432号公報はSiO2、C
aOを所定量添加することを提案している。しかしなが
ら、特開平9−110432号公報に開示された六方晶
系フェライトは、1150〜1350℃で焼成がなされ
ることを前提にしている。よって、同時焼成することが
できず、積層型フェライト部品への適用は困難である。
したがって本発明は、立方晶系フェライトのみならず、
六方晶系フェライトに適用した場合においても良好な収
縮率が得られる焼結助剤を提案し、低温焼成可能な磁性
フェライト材料およびこれを用いた積層型フェライト部
品を提供することを課題とする。すなわち本発明は、六
方晶系フェライトを主相とする焼結体からなり、Bi2
O3系ガラスを構成する成分が前記焼結体中に存在する
ことを特徴とする磁性フェライト材料を提供する。本発
明の磁性フェライト材料において、Bi2O3系ガラスの
添加量を1〜20wt%とした場合、低温焼成に特に有
効である。
Fe24O41の一般式を有している。ここで、Mはアルカ
リ土類金属、Meは2価の金属イオンである。Z型の六
方晶系フェライトの中でもコバルト金属イオンを含有し
たZ型の六方晶系フェライトは、異方性が大きいために
立方晶系フェライトより高周波領域まで高透磁率を有す
ることが可能である。このコバルト金属イオンを含有し
たZ型の六方晶系フェライトは、Co2Zと呼ばれてい
る。Z型の六方晶系フェライトが優れた高周波特性を有
することは以前から知られていたが、いくつかの問題点
を有するために実用化には未だ到っていない。つまり、
Z相生成に到るまでにM、W、Y相が出現し、この異相
の生成により透磁率が低下するのである。また、Z型の
六方晶系フェライト焼結体は焼結体密度が低いことも指
摘されている。焼結体密度が低いと、表面実装部品とし
て用いられる場合の機械的強度が問題となる。また、焼
結体密度と透磁率は密接な関係があり、焼結体密度が低
いと透磁率自体も低くなり、本来の磁気特性を発揮する
ことができない。しかも、ギガ帯域で使用できるZ型の
六方晶系フェライトは1250〜1350℃の高温焼成
を行わなければ磁気特性が得られないため、内部電極用
材料であるAgの融点以下である960℃以下では焼成
することができず、Agとの同時焼成が必要な積層型チ
ップフェライト部品を得ることができなかった。
焼結体密度を上げ、かつ高周波領域においても透磁率の
減少が抑制された六方晶系フェライト材料が開示されて
いる。ところが、特開平9−110432号公報に開示
された六方晶系フェライト材料は、Z相を主相とするも
のではなく、上述の通り1150〜1350℃で焼成が
なされることを前提にしており、同時焼成することがで
きないため積層型フェライト部品への適用は困難であ
る。前記課題を解決すべく、本発明者は、主組成に対す
る添加物、仮焼き温度、焼成前の粉末の粒度分布、粉体
比表面積について検討を行い、Z相を主相としかつ低温
焼成が可能な六方晶系フェライト材料を得るに到った。
すなわち、Z相を主相とするためには、粒度分布のピー
ク値を0.1〜3μmの範囲とし、粉体比表面積を5〜
30m2/gとすること、仮焼き温度を1220〜13
30℃とすること、低温焼成化のために添加物成分とし
て硼珪酸ガラス、硼珪酸亜鉛ガラス、CuO、Bi2O3
のうち1種類以上を0.5〜20wt%添加することが
有効であることを提案している。そして本発明者は、さ
らなる鋭意研究の結果、Bi2O3系ガラスがZ型の六方
晶系フェライトの低温焼成に極めて有効であることを知
見した。
のZ相(M3Me2Fe24O41:M=アルカリ土類金属の
1種または2種以上、Me=Co,Ni,Mn,Zn,
MgおよびCuのうち1種または2種以上)がX線回折
において主相とする焼結体からなり、Bi2O3系ガラス
を構成する成分が前記焼結体中に存在することを特徴と
する磁性フェライト材料を提供する。本発明によれば、
ギガ帯域でのノイズ吸収に優れた効果を発揮する磁性フ
ェライト材料を得ることができる。また、本発明の磁性
フェライト材料において、Z相のピーク強度比を30%
以上とすることができる。さらにまた、本発明における
磁性フェライト材料によれば、960℃以下での低温焼
成が可能である。特に、Bi2O3系ガラスおよびCuO
を複合添加することが同時焼成に有効である。また、誘
電率が20〜30になるようにBi2O3系ガラスおよび
CuOを添加することによって、六方晶系フェライトの
高周波特性を一層のばすことができる。
電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極と電
気的に接続された外部電極とを有する積層型フェライト
部品であって、前記磁性フェライト層はBi2O3系ガラ
スを含む磁性フェライト焼結体から構成され、前記内部
電極はAgまたはAg合金から構成されることを特徴と
する積層型フェライト部品を提供する。本発明の積層型
フェライト部品において、前記磁性フェライト層を、六
方晶系フェライトを主相とする磁性フェライト焼結体か
ら構成することができる。前記磁性フェライト焼結体に
おいて、副成分としてさらにCuOを含むことが同時焼
成に有効である。
て説明する。主成分をなす磁性フェライト材料として
は、Ni系やMg系などの立方晶系フェライト、もしく
は六方晶系フェライト等、公知の磁性フェライト材料を
選択できる。立方晶系フェライトは、一般にMe2Fe2
O4の一般式を有している。ここで、MeはNi,M
g,Mn,Zn,Cuなどの2価の金属イオンである。
本発明の磁性フェライト材料において、立方晶系フェラ
イトを用いる場合には、原料粉末として、Fe2O3粉
末、ならびにMeについては酸化物または炭酸塩粉末を
用意する。組成は目的に応じ選択すればよいが、NiC
uZnフェライトを用いる場合には、Fe2O3:40.0
〜51.0mol%,CuO:5.0〜30.0mol%,
ZnO:0.5〜35.0mol%およびNiO:5.0〜
50.0mol%の範囲とすればよい。
る。Fe2O3が40.0mol%より少ないと透磁率が
小さく、フェライトとしての化学量論組成に近づくにし
たがって透磁率は上昇するが、化学量論組成をピークと
して急激に低下する。したがって、上限を51.0mo
l%とする。望ましいFe2O3の量は45.0〜49.8
mol%、さらに望ましいFe2O3の量は49.2〜4
9.8mol%である。CuOは、本発明において焼結
温度低減に寄与する化合物であり、5.0mol%未満
ではAgの融点以下の温度域における焼結が実現できな
くなる。ただし、30.0mol%を超えるとフェライ
トの固有抵抗が低下して品質係数Qが劣化するので5.
0〜30.0mol%とする。望ましいCuO量は7.0
〜25.0mol%、さらに望ましいCuO量は10.0
〜20.0mol%である。NiOの減少あるいはZn
Oの増加により透磁率μを向上させることができるが、
ZnOが多すぎるとキュリー温度が100℃以下とな
り、電子部品に要求される温度特性を満足することがで
きなくなる。したがって、ZnO量は0.5〜35.0m
ol%とする。望ましいZnO量は15.0〜30.0m
ol%、さらに望ましいZnO量は18.0〜25.0m
ol%である。またNiO量は5.0〜50.0mol%
とする。望ましいNiOの量は5.0〜45.0mol
%、さらに望ましいNiOの量は7.0〜35.0mol
%である。
型、W型、X型、Y型およびZ型の6種類がある。以
下、六方晶系フェライトの代表として、Z型(M3Me2
Fe24O 41:M=アルカリ土類金属の1種または2種以
上、Me=2価の金属イオンの1種または2種以上)を
中心として説明するが、本発明はこれに限定される物で
はなく、他の構造の六方晶系フェライト、すなわちM型
(MFe12O19),U型(M4Me2Fe36O60),W型
(MMe2Fe16O27),X型(M2Me2Fe
28O4 6),Y型(M2Me2Fe12O22)の各型、あるい
はこれらが混在した場合においても適用できる。
型の六方晶系フェライトを用いる場合には、原料粉末と
して、Fe2O3粉末、ならびにMおよびMeについては
酸化物または炭酸塩粉末を用意する。MはBa,Sr等
のアルカリ土類金属であり、特にBaが望ましい。ま
た、MeはCo,Ni,Mn,Zn,MgおよびCuの
うち1種または2種以上であり、特にCoが望ましい。
本発明において、組成は目的に応じ選択すればよいが、
特に高周波数特性に優れた透磁率を得るためには、Fe
2O3が65〜75mol%、BaCO3が17〜27m
ol%(またはBaCO3とSrCO3の合計が17〜2
7mol%)、Co3O4,NiO,MnO,ZnO,M
gOおよびCuOの1種または2種以上が5〜15mo
l%の配合組成とすることが望ましい。より望ましく
は、Fe2O3が67〜70mol%、BaCO3(また
はBaCO3とSrCO3の合計)が18〜20mol
%、Co3O4,NiO,MnO,ZnO,MgOおよび
CuOの1種または2種以上が7〜12mol%であ
る。
副成分としてBi2O3系ガラスを含む。0.5wt%未
満では十分な収縮率が得られず、Agの融点以下での焼
成が困難である。ただし、12wt%を超えると透磁率
の実数部分であるμ'が低下し、磁性材料の所定の磁気
特性を維持できない。よって、Bi2O3系ガラスの望ま
しい添加量は、0.5〜12wt%、さらには2〜9w
t%、より望ましくは3〜7wt%である。Bi2O3系
ガラスとCuOを複合添加した場合には、同時焼成に特
に有効である。Bi2O3系ガラスとCuOを複合添加す
ることが望ましいのは、それぞれ低温焼成に寄与する機
構が異なるためであると考えられる。Bi2O3系ガラス
とCuOを複合添加する場合にはBi2O3系ガラスおよ
びCuOを合計で1〜20wt%、さらには合計で3〜
15wt%添加することが望ましい。特に、Bi2O3系
ガラスを3〜7wt%およびCuOを3〜7wt%添加
した場合には、2以上の高い透磁率μ'を得ることがで
きるとともに、μ''のピーク値が高周波域側にシフトす
るという効果を奏する。
は、原料粉末を混合する混合工程と、混合された前記原
料粉末を仮焼きする仮焼き工程と、前記仮焼き工程によ
り得られた仮焼き体を粉砕して粉砕粉末を得る粉砕工程
と、焼結助剤であるBi2O3系ガラスを仮焼き後の粉砕
粉末に添加する工程と、前記粉砕工程により得られた前
記粉砕粉末を用いて成形体を得る成形工程と、前記成形
工程で得られた成形体を焼結する焼結工程により得るこ
とができる。以後、主成分をなす磁性フェライト材料と
してZ型の六方晶系フェライトを選択した場合について
説明する。
3粉末およびCo3O4粉末を用意する。これらの主成分
をなす粉末に加えて、副成分であるBi2O3系ガラス粉
末を用意する。Bi2O3系ガラスとCuOを複合添加す
る場合にはCuO粉末も用意する。本発明の磁性フェラ
イト材料においてZ相を主相とするためには、焼成前の
粉末の平均粒度分布(本明細書中では、単に粒度分布と
いう)のピーク値を0.1〜3μmの範囲とする。粒度
分布が3μmを超えると、同時焼成が困難となるからで
ある。しかし、0.1μm未満となると、本発明の積層
型フェライト部品を得るために必要なペースト塗料やシ
ート塗料化が困難になる。つまり、塗料がゲル化してし
まうのである。また、用意された原料粉末は例えばボー
ルミルを用いて湿式混合する。混合は、ボールミルの運
転条件にも左右されるが、20時間程度行えば均一な混
合状態を得ることができる。
方晶系フェライトにおいてZ相を主相とするためには、
仮焼きは1200℃以上の高温で行う必要がある。しか
しながら、高温での仮焼きを行うと粒子が固くなり後の
粉砕工程が長時間かかり組成ずれ等がおこってくるため
細心の注意が必要となる。また、1350℃を超える温
度範囲で仮焼きをしてもZ相が生成しなくなり優れた透
磁率の周波数特性を得ることができない。したがって、
望ましい仮焼き温度は1250〜1330℃である。仮
焼きの時間は特に限定されず、組成、仮焼き温度に応じ
て適宜定めればよいが、0.1〜5時間程度で十分であ
る。
末の比表面積を5m2/g程度以上とすることがAgの
融点以下の温度域での焼結にとって重要である。このよ
うな微細な粉末を得るためには粉砕条件を制御すればよ
いが、特に条件を制御することなく粉砕した粉末からこ
のような粒度分布の粉末を採集することもできる。ボー
ルミルを用いた場合、粉砕は60〜80時間程度必要で
ある。以上で得られた粉砕粉末にBi2O3系ガラス粉末
を添加し、さらにバインダ等を添加した後に所定の形状
に成形し、しかる後に焼結に供される。なお、副成分と
してさらにCuO粉末を添加する場合には、Bi2O3系
ガラス粉末と同じタイミングで添加すればよい。
品の一実施形態である積層型チップビーズの一例を示す
概略断面図であり、図4は平面部分断面図である。この
積層型チップビーズは印刷積層工法を用いて製造された
ものである。他の製造方法としてシート積層工法もあ
る。図3および図4において、積層型チップビーズ1
は、磁性フェライト層2と内部電極3とが交互に積層一
体化された多層構造のチップ体4を有し、このチップ体
4の端部には、内部電極3と電気的に導通する外部電極
5,5が設けられている。積層型チップビーズ1を構成
する磁性フェライト層2は、本発明の六方晶系フェライ
ト焼結体で構成される。すなわち、本発明の磁性フェラ
イト粉末をエチルセルロース等のバインダとテルピネオ
ール、ブチルカルビトール等の溶剤とともに混練して得
た磁性フェライト層2用ペーストと内部電極3用ペース
トと交互に印刷積層した後、焼成して形成することがで
きる。なお、本実施の形態においては、磁性フェライト
粉末としてコバルト金属イオンを含有したZ型の六方晶
系フェライト、すなわちCo2Zに、Bi2O3系ガラス
粉末およびCuO粉末を添加した粉末を用いている。
ンダおよび溶剤の含有量には制限はなく、例えば、バイ
ンダの含有量は1〜10重量%、溶剤の含有量は10〜
50重量%程度の範囲で設定することができる。また、
ペースト中には、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電
体、絶縁体等を10重量%以下の範囲で含有させること
ができる。また、磁性フェライト層2は、磁性フェライ
ト層用シートを用いて形成することもできる。すなわ
ち、本発明の磁性フェライト粉末、すなわちCo2Zに
Bi2O3系ガラス粉末およびCuO粉末を添加した粉末
を、ポリビニルブチラールやアクリルを主成分としたバ
インダとトルエン、キシレン、エチルアルコール等の溶
媒とともにボールミル中で混練して得たスラリーを、ポ
リエステルフィルム等の上にドクターブレード法等で塗
布、乾燥して磁性フェライト層用シートを得る。この磁
性フェライト層用シートを、内部電極用ペーストと交互
に積層した後、焼成する。なお、磁性フェライト層用シ
ート中のバインダの含有量には制限はなく、例えば、1
〜20重量%程度の範囲で設定することができる。ま
た、磁性フェライト層用シート中には、必要に応じて分
散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等を10重量%以下の範
囲で含有させることができる。
3は、インダクタとして実用的な品質係数Qを得るため
に抵抗率の小さいAgを主体とした導電材を用いて形成
する。内部電極3は、各層が長円形状であり、隣接する
内部電極3の各層は、スパイラル状に導通が確保されて
いるので、内部電極3は閉磁路コイル(巻線パターン)を
構成し、その両端に外部電極5,5が接続されている。
積層型チップビーズ1のチップ体4の外形や寸法には特
に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、
通常、外形をほぼ直方体形状とし、寸法は1.0〜4.5
mm×0.5〜3.2mm×0.6〜1.9mm程度とする
ことができる。また、磁性フェライト層2の電極間厚み
およびベース厚みには特に制限はなく、電極間厚み(内
部電極3,3の間隔)は10〜100μm、ベース厚み
は250〜500μm程度で設定することができる。さ
らに、内部電極3の厚みは、通常、5〜30μmの範囲
で設定でき、巻線パターンのピッチは10〜100μm
程度、巻数は1.5〜20.5ターン程度とすることがで
きる。磁性フェライト層用ペーストあるいはシートと内
部電極用ペーストとを交互に印刷積層した後の焼成時の
温度は、800〜960℃、好ましくは850〜930
℃とする。焼成温度が800℃未満であると焼成不足と
なり、一方、960℃を超えると内部電極材料であるA
gが磁性フェライト層2中に拡散して、電磁気特性を著
しく低下させることがある。また、焼成時間は0.05
〜5時間、好ましくは0.1〜3時間の範囲で設定する
ことができる。本発明ではこのような低温で焼成される
ため、磁性フェライト層2の結晶粒径は平均で1〜5μ
mと微細である。
実施形態であるLC複合部品の一例を示す概略断面図で
ある。図5において、LC複合部品11は、チップコン
デンサ部12とチップフェライト部13とを一体化した
ものであり、この端部には外部電極15が設けられてい
る。チップコンデンサ部12は、セラミック誘電体層2
1と内部電極22とが交互に積層一体化された多層構造
を有する。セラミック誘電体層21としては特に制限は
なく、種々の誘電体材料を用いることができ、焼成温度
が低い酸化チタン系誘電体が好ましい。また、チタン酸
系複合酸化物、ジルコン酸系複合酸化物、あるいは、こ
れらの混合物を使用することもできる。さらに、焼成温
度を下げるために、硼珪酸ガラス等の各種ガラスが含有
されてもよい。また内部電極22は、抵抗率の小さいA
gを主体とした導電材を用いて形成されており、内部電
極22の各層は、交互に別の外部電極に接続されてい
る。
インダクタであり、フェライト磁性層32と内部電極3
3とが交互に積層一体化された多層構造のチップ体であ
る。フェライト磁性層32は、本発明の磁性フェライト
で構成されたものである。すなわち、本発明の磁性フェ
ライト粉末、すなわちCo2ZにBi2O3系ガラス粉末
およびCuO粉末を添加した粉末を、エチルセルロース
等のバインダとテルピネオール、ブチルカルビトール等
の溶剤とともに混練して得たフェライト磁性層用ペース
トを、内部電極用ペーストと交互に印刷積層した後、焼
成して形成することができる。あるいは、本発明の磁性
フェライト粉末を、ポリビニルブチラールやアクリルを
主成分としたバインダ中とトルエン、キシレン等の溶媒
とともにボールミル中で混練してスラリーを作成し、こ
のスラリーをポリエステルフィルム等の上にドクターブ
レード法等で塗布し乾燥して得たフェライト磁性層用シ
ートを、内部電極用ペーストと交互に積層した後、焼成
して形成することができる。また、内部電極33はスパ
イラル状に導通が確保されて閉磁路コイル(巻線パター
ン)を構成し、その両端は外部電極15に接続されてい
る。この内部電極33は、抵抗率の小さいAgを主体と
した導電材を用いて形成される。チップフェライト部1
3のフェライト磁性層32の電極間厚みおよびベース厚
みには特に制限はなく、電極間厚み(内部電極33,3
3の間隔)は10〜100μm、ベース厚みは10〜5
00μm程度で設定することができる。さらに、内部電
極33の厚みは、通常、5〜30μmの範囲で設定で
き、巻線パターンのピッチは10〜400μm程度、巻
数は1.5〜50.5ターン程度とすることができる。本
発明のLC複合部品11の外形や寸法には特に制限はな
く、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形
はほぼ直方体形状とし、寸法は1.6〜10.0mm×
0.8〜15.0mm×1.0〜5.0mm程度とすること
ができる。
詳細に説明する。 (実施例1)表1に示す組成になるように、主成分をな
すFe2O3,BaCO3およびCo3O4の原料粉末を配
合した後に、仮焼きおよび粉砕を行った。この仮焼粉に
Bi2O3系ガラスである助剤A〜Cまたは硼珪酸亜鉛ガ
ラスを添加し、バインダと共に湿式混合、粉砕して試料
No.1〜13を得た(以下、仮焼粉にBi2O3系ガラ
ス等の助剤を添加して粉砕した粉末を、適宜「粉砕粉
末」という。)。試料No.1〜13はいずれも六方晶
系フェライトである。なお、原料粉末の平均粒度はFe
2O3,:0.8μm、BaCO3:1.3μm、Co
3O4:3.5μmである。助剤A〜Cおよび硼珪酸亜鉛
ガラスの組成は表2に示している。配合、仮焼きおよび
粉砕の条件は以下の通りである。また、各試料の粉砕粉
末の平均粒度分布のピーク値は1.0μm、比表面積は
9m2/gである。 配合及び粉砕用ポット:ステンレスボールミルポット使
用(粉砕時ポリポット) 配合及び粉砕用メディア:スチールボール使用(粉砕時
ZrO2ボール) 配合時間:16時間 仮焼成条件:試料No.1〜13=1300℃×2時間 粉砕時間:90時間
折法により相の同定を行い、同定された相のX線ピーク
強度比を求めた。その結果を図1に示す。なお、X線ピ
ーク強度比は、同定された相についての回折線の最高ピ
ーク強度の和に対する各相の最高ピーク強度の比として
定義される。また、X線回折の条件は以下の通りであ
る。 X線発生装置:3kW、管電圧:45kV、管電流:4
0mA サンプリング幅:0.02deg、走査速度:4.00
deg/min 発散スリット:1.00deg、散乱スリット:1.0
0deg 受光スリット:0.30mm
℃では、M相、Y相、Z相、Ba2Fe2O5相(Baフ
ェライト相)及びBaCO3相が同定された。この仮焼
き温度において、最もピーク強度比が高いのはM相であ
る。仮焼き温度が1250℃では、やはり、M相、Y
相、Z相、Baフェライト相及びBaCO3相の5つの
相が同定されたが、Z相のピーク強度比が35%と最も
高く、Z相が主相をなしていることがわかる。仮焼き温
度1200〜1250℃の間の各相の挙動を見ると、Z
相が主相、つまりZ相のピーク強度比が他の相のピーク
強度比よりも大きくなるためには1220℃以上の温度
で仮焼きする必要がある。また、Z相のピーク強度比を
30%以上とするためには、1240℃以上の温度で仮
焼きする必要がある。仮焼き温度が1300℃になる
と、同定された相はZ相、Baフェライト相及びBaC
O3相の3相となり、Z相のピーク強度比は60%に達
している。仮焼き温度が1330℃を超えるとZ相のピ
ーク強度比が低下し、Baフェライト相のピーク強度比
が最も高くなる。以上より、Z相を主相とするために
は、仮焼き温度は望ましくは1220℃以上、さらに望
ましくは1250℃以上であり、かつ1330℃以下、
望ましくは1320℃以下とすべきである。
℃で2時間焼成した後にX線回折パターンを測定した。
その結果を図2に示す。図2において、Z相、Y相およ
びBaフェライト相が同定された。各相の最高の強度を
示すピークは図2に示す通りであり、Z相の最高ピーク
強度が最も大きく、Z相が主相をなしていることがわか
る。また、各相の最高ピーク強度からZ相のピーク強度
比を算出したところ41.93%であった。次に、試料
No.1〜13の粉砕粉末を用いて所定温度まで加熱し
た際の収縮率(△L/L)を測定した。この収縮率は、
焼成のしやすさの目安となるもので、同一の温度におい
て収縮率が大きいほど焼成しやすいとみなすことができ
る。結果を表3に示す。なお、試料No.1〜10につ
いては930℃焼成の際の収縮率、試料No.11〜1
3については950℃焼成の際の収縮率を示している。
「助剤A量」という。)が増加するに伴い、収縮率が向
上することが示されている。この傾向は助剤BおよびC
についても同様であり、助剤Bの量(以下、「助剤B
量」という。)、助剤Cの量(以下、「助剤C量」とい
う。)が増加するに伴い、収縮率が向上する。次に、B
i2O3系ガラスである助剤A〜Cを添加した場合(N
o.1〜10)と、助剤として硼珪酸亜鉛ガラスを添加
した場合(No.11〜13)との比較を行う。助剤A
〜Cを添加した場合(No.1〜10)の収縮率は11
〜17%である。一方、硼珪酸亜鉛ガラスを添加した場
合(No.1〜10)の収縮率は12.30〜14.12
%である。ここで、助剤A〜Cは焼結助剤として実績の
ある硼珪酸亜鉛ガラスと同等の収縮率が得られているか
ら、Bi2O3系ガラスが焼結助剤として有効であること
がわかった。
で2時間焼成し、焼結密度を測定した。また試料No.
11〜13の粉砕粉末については950℃で2時間焼成
し、焼結密度を測定した。その結果を表3に示す。表3
において、助剤A〜Cを添加した試料No.1〜10は
いずれも4.0g/cm3以上の焼結密度を示している。
また、上述の収縮率の場合と同様に、助剤A〜Cの量が
増加するに伴って焼結密度も向上する。一方、硼珪酸亜
鉛ガラスについては、硼珪酸亜鉛ガラスの量(以下、
「硼珪酸亜鉛ガラス量」という。)が増加するに伴い、
焼結密度が減少する傾向にある。以上の結果より、助剤
A〜C、すなわちBi2O3系ガラスを添加した場合に
は、添加量に伴い、収縮率および焼結密度が向上するこ
とがわかった。つまり、Bi2O3系ガラスが焼結助剤と
して有効であることが明らかとなった。なお、Bi 2O3
系ガラスの望ましい添加量は0.5〜12wt%程度と
推測される。
て、ディスク形状の試料を作製し、比抵抗の測定を行っ
た。また、表1の組成を有する試料No.14〜19に
ついても上述と同様の条件により配合、粉砕、仮焼きを
行い、粉砕後の試料No.14〜19を用いてディスク
形状の試料を作製し、比抵抗の測定を行った。なお、試
料No.14〜19は比較例であり、CuO、Bi2O3
はともに焼結助剤として実績がある。測定された結果を
表4に示す。
端面にIn-Gaの電極を施し、ヒューレットパッカー
ド(株)製の抵抗測定器(HP4329A)を用い、2
5Vの電圧を1分15秒間印加して測定した後、試料の
有効体積を測定し比抵抗を算出した。
場合(試料No.1〜10)については、添加量の増加
に伴い、比抵抗も増加する。特に、助剤Aを添加した試
料No.1〜4については、いずれも300MΩ・cm
以上の高い比抵抗を示している。一方、CuO、Bi2
O3をそれぞれ単独添加した場合(試料No.14〜1
8)には、CuOまたはBi2O3の添加量が増加すると
比抵抗が減少した。つまり、助剤A〜Cを添加した場合
(試料No.1〜10)と逆の傾向が確認された。以上
の結果より、Bi2O3系ガラスを添加した場合には良好
な比抵抗が得られること、またその添加量に伴って比抵
抗が増加する傾向があることがわかった。
Oを複合添加した場合の効果を確認するために、実施例
2を行った。表5に示す組成になるように主成分の原料
粉末を配合した後に、仮焼きおよび粉砕を行った。この
仮焼粉にBi2O3系ガラスおよびCuOを添加して試料
No.20〜28を得た。なお、配合、仮焼き、粉砕の
条件、各試料の原料粉末の平均粒度、粉砕粉末の平均粒
度分布のピーク値および比表面積はすべて実施例1の場
合と同様である。ここで、試料No.20〜22は試料
No.1〜3にCuOを3.0〜7.0wt%添加したも
の、試料No.23〜25は試料No.5〜7にCuOを
3.0〜7.0wt%添加したもの、試料No.26〜2
8は試料No.8〜10にCuOを3.0〜7.0wt%
添加したものである。
て、930℃まで加熱した際の収縮率(△L/L)を測
定した。また、試料No.20〜28の粉砕粉末を93
0℃で2時間焼成し、焼結密度を測定した。試料No.
20〜28の収縮率(△L/L)および焼結密度の測定
条件は実施例1と同様である。その結果を表6に示す。
なお、比較の便宜のため、実施例1で測定した試料N
o.1〜3、5〜10の収縮率(△L/L)および焼結
密度についても表6に示してある。
(試料No.20〜28)の添加量による収縮率の変化
を表6および図6に示す。なお、図6中の線図を加熱収
縮曲線と呼ぶ。また比較のために、焼結助剤として硼珪
酸亜鉛ガラスを3.0〜7.0wt%添加した場合(試料
No.11〜13)の加熱収縮曲線を図6に合わせて示
す。なお、試料No.11〜13の組成は表5、硼珪酸
亜鉛ガラスの組成は表2に示す通りである。試料No.
11〜13の配合、粉砕、仮焼きの条件、原料粉末の平
均粒度、粉砕粉末の平均粒度分布のピーク値および比表
面積については、試料No.20〜28と同様である。
図6において、助剤A+CuO、助剤B+CuO、助剤
C+CuOの曲線の中で、収縮率は助剤A〜Cの順位と
なっている。ここで表2を見ると、助剤A〜Cの中でB
i2O3の含有量が最も多いのは助剤A、次いでB、Cと
なっている。よって、Bi2O3系ガラス中のBi2O3の
含有量と収縮率は比例関係にあるといえる。
10、20〜28の粉砕粉末を用いてトロイダル形状の
焼結体試料を作製した。作製したトロイダルコアを同軸
管サンプルホルダーに挿入し高周波数帯域(1MHz〜
1.8GHz)における複素透磁率(μ'、μ")をインピ
ーダンスアナライザー(ヒューレットパッカード(株)製
のHP4291A)を用いて測定した。なお、いずれの
試料についても930℃、2時間の焼成によりトロイダ
ルコアを作成した。
(以下、適宜「μ'」という。)の欄を見ると、助剤A
〜Cを単独で添加した場合(試料No.1〜3,5〜1
0)のμ'は2.25〜3.81となっている。真空の透
磁率μ'が1であることから、μ'が2以上であれば磁性
材料として使用可能であるといえる。よって、助剤A〜
C、すなわちBi2O3系ガラスを添加した場合において
も、磁性フェライト材料の所定の磁気特性が維持される
ことがわかった。次に、試料No.3と試料No.20と
を比較すると、試料No.3のμ'は2.25であり、試
料No.20のμ'は3.12である。ここで、試料No.
3には助剤Aが7.0wt%添加されており、試料No.
20には助剤AおよびCuOがそれぞれ3.0wt%ず
つ、合計6.0wt%添加されている。添加物の合計量
が7.0wt%である試料No.3のμ'よりも、添加物
の合計量が6.0wt%である試料No.20の方が高い
μ'を示していることから、助剤AとCuOを複合添加
した場合には、より少ない添加量でμ'を増加させるこ
とができることがわかった。試料No.7と試料No.2
3、試料No.10と試料No.26についても、試料N
o.3と試料No.20と同様のことがいえる。複素透磁
率の虚数部分μ''(以下、適宜「μ''」という。)につ
いては、以下の傾向が見られた。すなわち、助剤A〜C
とCuOを複合添加した試料No.20〜28はいずれ
も助剤A〜C単独の場合(試料No.1〜3,5〜1
0)よりも透磁率μ''が向上した。以上の結果より、B
i2O3系ガラスとCuOを複合添加することにより、B
i 2O3系ガラス単独の場合よりも透磁率μ'、μ''が向
上することがわかった。良好な透磁率μ'、μ''を得る
ためには、Bi2O3系ガラスとCuOを合計で1〜20
wt%、さらには3〜15wt%程度添加することが望
ましい。
22(助剤A+CuO)、試料No.23〜25(助剤
B+CuO)、試料No.26〜28(助剤C+Cu
O)の粉砕粉末を用いて、実施例2と同様の工程により
トロイダル形状のコアを作成した。また、各試料の平均
粒度分布のピーク値は1.0μm、比表面積は9m2/
gである。得られたコアについて実施例2と同様に透磁
率を測定した。なお、この実施例3では、10GHzま
での周波数帯域まで測定を行った。その結果を試料N
o.19(Bi2O3およびCuOを5wt%ずつ添加)
の測定結果と合わせて図7〜9に示す。図7は、試料N
o.19、20〜22のμ'およびμ"の周波数特性を示
すグラフである。図8は、試料No.19、23〜25
のμ'およびμ"の周波数特性を示すグラフである。図9
は、試料No.19、26〜28のμ'およびμ"の周波
数特性を示すグラフである。なお、図7〜9中、19−
μ'との表示は試料No.19の複素透磁率の実数部分、
19−μ"との表示は試料No.19の複素透磁率の虚数
部分を意味し、他も同様である。
るトロイダルコアはμ'の平坦部が試料No.19よりも
高周波帯域まで伸びており、より高周波帯域での使用が
可能であることを示唆している。また、Bi2O3系ガラ
スを添加していない試料No.19については周波数約
1.5GHzでμ"のピーク値が得られた。これに対し
て、試料No.20(助剤AおよびCuOを3wt%ず
つ添加)のμ"のピーク値は周波数約2.8GHzで、試
料No.21(助剤AおよびCuOを5wt%ずつ添
加)のμ"のピーク値は周波数約2.0GHzで、また試
料No22(助剤AおよびCuOを7wt%ずつ添加)
のμ"のピーク値は周波数7.0GHzで得られた。ここ
で試料No.19(Bi2O3およびCuOを5wt%ず
つ添加)と試料No.21(助剤AおよびCuOを5w
t%ずつ添加)とを比較すると、両者は主成分が等し
く、かつ助剤のCuO量が5wt%、助剤の合計量が1
0wt%である点で共通している。よって、試料No.
21のμ"のピーク値が試料No.19のμ"のピーク値
よりも高周波域側にシフトしたのは、助剤A、すなわち
Bi2O 3系ガラスを添加したためであると考えられる。
がある。図8において、Bi2O3系ガラスを添加してい
ない試料No.19については周波数約1.5GHzで
μ"のピーク値が得られた。これに対して、試料No.2
3(助剤BおよびCuOを3wt%ずつ添加)のμ"の
ピーク値は周波数約4.0GHzで得られた。また、試
料No.24(助剤BおよびCuOを5wt%ずつ添
加)のμ"のピーク値は周波数約2.0GHz、試料N
o.25(助剤BおよびCuOを7wt%ずつ添加)の
μ"のピーク値は周波数約3.0GHzで得られた。ここ
で試料No.19(Bi2O3およびCuOを5wt%ず
つ添加)と試料No.24(助剤BおよびCuOを5w
t%ずつ添加)とを比較すると、上述の場合と同様に試
料No.24のμ"のピーク値が試料No.19のμ"のピ
ーク値よりも高周波域側にシフトしている。
CおよびCuOを3wt%ずつ添加)のμ"のピーク値
は周波数約3.0GHz、試料No.27(助剤Cおよび
CuOを5wt%ずつ添加)のμ"のピーク値は周波数
約2.0GHz、試料No.28(助剤CおよびCuOを
7wt%ずつ添加)のμ"のピーク値は周波数約4.0G
Hzで得られた。つまり、助剤BおよびCにおいても、
上述の助剤Aの場合と同様に、μ"のピーク値が高周波
域側にシフトしている。特に、助剤BとCuOを5wt
%ずつ添加した試料No.24、助剤CとCuOを5%
ずつ添加した試料No.27においては、透磁率が高く
かつ高周波域側にシフトしていることが注目される。以
上の結果から、Bi2O3系ガラスおよびCuOを3wt
%ずつ、合計で6〜14wt%添加することにより、高
周波特性に優れた磁性フェライト材料が得られることが
わかった。Bi2O3系ガラスおよびCuOの複合添加量
としては、1〜20wt%、さらには3〜15wt%、
より望ましくは6〜14wt%程度添加すればよいと考
えられる。また、Bi2O3系ガラスおよびCuOを合計
で8〜12wt%添加した場合には、μ"のピーク値が
高周波域側にシフトするという効果のみならず、3以上
という高い透磁率μ'を得ることができる。
加量とクロスポイントの関係について図10〜12を用
いて説明する。ここで、クロスポイントとは、複素透磁
率の実数部分μ'と複素透磁率の虚数部分μ"との交点を
いう。なお、図10〜12における直線は、助剤A〜C
およびCuOを複合添加した場合の傾向を示している。
図10〜12において、試料No.20〜22(助剤A
+CuO)、試料No.23〜25(助剤B+Cu
O)、試料No.26〜28(助剤C+CuO)のクロ
スポイントはいずれもBi2O3系ガラスを添加していな
い試料No.19(Bi2O3およびCuOを5wt%ず
つ添加)よりも高くなっている。ここで表6に示すよう
に、CuOを単独添加した場合(試料No.14〜1
6)の複素透磁率μ'およびμ"は、ともに低い値となっ
ている。つまり、CuOはμ'およびμ"の増加にほとん
ど寄与してないといえる。よって、図10〜12におい
てクロスポイントが高周波側にシフトしたのはBi2O3
系ガラスを添加したためであると考えられる。特に、図
11の試料No.24(助剤BおよびCuOを5wt%
ずつ添加)、および図12の試料No.26(助剤Cお
よびCuOを3wt%ずつ添加)、試料No.27(助
剤CおよびCuOを5wt%ずつ添加)は、μが3.5
以上と非常に高くしかも高周波域側にシフトしているこ
とが注目される。
よびCuOを7wt%ずつ添加)、図11の試料No.
23(助剤BおよびCuOを3wt%ずつ添加)、試料
No.25(助剤BおよびCuOを7wt%ずつ添
加)、図12の試料No.28(助剤CおよびCuOを
7wt%ずつ添加)については周波数約5.0GHz以
上の地点でクロスポイントが得られていることから、こ
れらの試料についてはかなりの高周波帯域でも使用可能
であるといえる。本実施例において、Bi2O3系ガラス
を添加することにより、μ'とμ"との交点、すなわちク
ロスポイントが高周波域側にシフトすることがわかっ
た。また、Bi2O3系ガラスの添加量を適宜設定するこ
とにより、μ'およびμ"のピークを所望する周波数帯域
に位置するようにできる。
o.1〜3、5〜10、20〜28およびBi2O3系ガ
ラスを添加していない試料No.19の誘電率εを示
す。
およびCuOを5wt%ずつ添加)の誘電率εは40で
ある。一方、Bi2O3系ガラスを添加した試料No.1
〜3、5〜10、20〜28の誘電率εはおよそ20〜
30の範囲で推移していることがわかった。本実施例に
よる焼結組織の概念を図13に示す。Bi2O3系ガラス
は、図13(a)に示すように、焼結組織中の三重点
(図中、黒丸で示す)に主に存在する。そして、例えば
三重点〜において、Bi2O3系ガラスを構成する各
物質の含有量はほぼ均一になる。つまり、三重点〜
における、例えばBi2O3の含有量は図13(b)に示
すようにほぼ一定となる。なお、図13(b)におい
て、横軸が三重点の位置を、また縦軸は当該物質の濃度
を示している。他の構成物質も同様である。これに対し
て、例えば、Bi2O3系ガラスを構成する各物質を個別
に添加した場合の焼結組織の概念図を図14に示す。B
i2O3系ガラスを構成する各物質が、図14(a)に示
すように、焼結組織中の三重点(図中、黒丸で示す)に
主に存在する点ではBi2O3系ガラスを添加した本実施
例と同様である。ところが、各物質を個別に添加した場
合には、各三重点ごとに各物質の含有量にばらつきが生
じる。例えば、図14(b)に示すように、Bi2O3の
含有量が、三重点、三重点および三重点でそれぞ
れ異なることになろう。したがって、Bi2O3系ガラス
を添加したことは、例えばTEM−EDXを用いること
により、同定することができる。
低温焼成可能な磁性フェライト材料およびこれを用いた
積層型フェライト部品を提供することができる。
フである。
施形態である積層型チップビーズの一例を示す概略断面
図である。
分断面図である。
LC複合部品の一例を示す概略断面図である。
縮曲線を示すグラフである。
の周波数特性を示すグラフである。
の周波数特性を示すグラフである。
の周波数特性を示すグラフである。
ントを示すグラフである。
ントを示すグラフである。
ントを示すグラフである。
織の概念図である。
に添加した場合の焼結組織の概念図である。
内部電極、4…チップ体、5…外部電極、11…LC複
合部品、12…チップコンデンサ部、13…チップフェ
ライト部、15…外部電極、21…セラミック誘電体
層、22…内部電極、32…フェライト磁性層、33…
内部電極
Claims (15)
- 【請求項1】 磁性フェライト材料に焼結助剤としてB
i2O3系ガラスを添加したことを特徴とする磁性フェラ
イト材料。 - 【請求項2】 Bi2O3系ガラスを0.5〜12wt%
添加したことを特徴とする請求項1に記載の磁性フェラ
イト材料。 - 【請求項3】 焼結助剤としてさらにCuOを添加した
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性フェライト材
料。 - 【請求項4】 Bi2O3系ガラスおよびCuOを合計で
1〜20wt%添加したことを特徴とする請求項3に記
載の磁性フェライト材料。 - 【請求項5】 Bi2O3系ガラスおよびCuOを合計で
3〜15wt%添加したことを特徴とする請求項3に記
載の磁性フェライト材料。 - 【請求項6】 Bi2O3系ガラスを3〜7wt%および
CuOを3〜7wt%添加したことを特徴とする請求項
3に記載の磁性フェライト材料。 - 【請求項7】 六方晶系フェライトを主相とする焼結体
からなり、Bi2O3系ガラスを構成する成分が前記焼結
体中に存在することを特徴とする磁性フェライト材料。 - 【請求項8】 Bi2O3系ガラスの添加量が1〜20w
t%であることを特徴とする請求項7に記載の磁性フェ
ライト材料。 - 【請求項9】 前記六方晶系フェライトのZ相(M3Me
2Fe24O41:M=アルカリ土類金属の1種または2種
以上、Me=Co,Ni,Mn,Zn,MgおよびCu
のうち1種または2種以上)がX線回折において主相を
なすことを特徴とする請求項7または8に記載の磁性フ
ェライト材料。 - 【請求項10】 Z相のピーク強度比が30%以上であ
ることを特徴とする請求項9に記載の磁性フェライト材
料。 - 【請求項11】 960℃以下の温度で焼成されること
を特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の磁性フ
ェライト材料。 - 【請求項12】 誘電率が20〜30であることを特徴
とする請求項7〜11のいずれかに記載の磁性フェライ
ト材料。 - 【請求項13】 磁性フェライト層と内部電極とが交互
に積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続さ
れた外部電極とを有する積層型フェライト部品であっ
て、 前記磁性フェライト層はBi2O3系ガラスを含む磁性フ
ェライト焼結体から構成され、 前記内部電極はAgまたはAg合金から構成されること
を特徴とする積層型フェライト部品。 - 【請求項14】 前記磁性フェライト層は、六方晶系フ
ェライトを主相とする磁性フェライト焼結体から構成さ
れることを特徴とする請求項13に記載の積層型フェラ
イト部品。 - 【請求項15】 前記磁性フェライト焼結体が、副成分
としてCuOを含むことを特徴とする請求項13または
14に記載の積層型フェライト部品。
Priority Applications (7)
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