JP2004339016A - 非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来、高い絶縁抵抗を得るために非磁性フェライト中の酸化鉄の組成を低減すると、ZnO,CuOの析出量が増大し、還元雰囲気にさらされた場合に低抵抗相が析出し、絶縁不良の危険性が増大する。
【解決手段】Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンを添加することにより、CuOやZnOの析出が抑制され、安定した高絶縁抵抗を有する非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品を実現することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンを添加することにより、CuOやZnOの析出が抑制され、安定した高絶縁抵抗を有する非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品を実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に用いられる非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe2O3とZnOのみを含むZnフェライトは非磁性フェライト材料であり、積層トランスあるいは磁気ヘッドの構成材料としてNi−Znフェライトなどと組み合わせて用いられてきた。
【0003】
さらに、このZnフェライトに数10mol%以下のCuOを含有させることによって、非磁性の特性を備えたまま900℃前後までの低温焼成化が可能であることは良く知られている。このような低温焼成化を図ることによって、Ag,Cuなどの導電率の高い電極材料との同時焼結を可能とすることができ、フェライトグリーンシートあるいはフェライトペーストなどと組み合わせることによって、インダクタンス部品あるいはノイズ対策部品などの小型で実装性に優れた積層電子部品を構成することが行われている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−77022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような用途で用いられる場合、用いられる磁性層および非磁性層にはAgなどの導体に接触する構造となることから高い絶縁抵抗が要求される。この高い絶縁抵抗を得るためには非磁性フェライト中のFe2O3の組成比を低減する必要がある。このFe2O3の組成比を低減していくとZnO,CuOの結晶粒界への析出量が増大してくる傾向がある。特に還元雰囲気中にさらされた場合には結晶粒界に析出したZnO,CuOが還元されて低抵抗相が析出することが問題であり、この材料を用いて作製した積層電子部品の内層部で絶縁不良が生じる危険性が増大するという課題があった。
【0007】
本発明の目的はZnO,CuOの結晶粒界への析出を抑制し、特性の向上および結晶構造の安定化を図ることができる絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンが添加した非磁性フェライトであり、酸化チタンの添加により、CuOやZnOの析出が抑制され、還元雰囲気にさらされた場合においても絶縁抵抗の高い非磁性フェライトを実現することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、酸化チタンがTiO,Ti2O3,Ti3O4,TiO2のうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライトであり、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトを実現することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、酸化チタンをTiO2換算で0.5〜6.0wt%添加した請求項1に記載の非磁性フェライトであり、還元雰囲気中においても絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明は、フェライトの組成としてFe2O3:42〜49mol%、CuO:6〜14mol%、残りがZnOと酸化チタンであり、絶縁抵抗が1E+9Ω・cm以上である請求項1に記載の非磁性フェライトであり、絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明は、磁性絶縁体層と、磁性絶縁体層に挟まれた非磁性絶縁体層と、磁性絶縁層と非磁性絶縁層の境界もしくは境界に接して内蔵される2条の渦巻き導体コイルとで構成された積層電子部品であって、前記非磁性絶縁体層が請求項1〜4のいずれか一つに記載の非磁性フェライトを用いて形成された積層電子部品であり、絶縁性能に優れ、小型で生産性に優れた積層電子部品を実現することができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したコモンモードチョークコイルとしての積層電子部品であり、絶縁性能に優れ、小型で生産性に優れたコモンモードチョークコイルを実現することができる。
【0014】
本発明の請求項7に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したチップトランスとしての積層電子部品であり、小型で生産性に優れたチップトランスを実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品について実施の形態および図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1により請求項1に記載の発明を説明する。
【0017】
本発明の非磁性フェライトの出発原料である市販のFe2O3粉とCuO粉とZnO粉を(表1)で示した組成比で配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後、120℃で乾燥して混合粉を得る。この混合粉を850℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。
【0018】
このフェライト仮焼粉に(表1)に示す添加量のTiO2の粉末を加え、さらにバインダーとしてブチラール樹脂(PVB)、可塑剤(BBP)および溶媒である酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。
【0019】
次に、このセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート状に成形して厚み約50μmのセラミックグリーンシートを得る。このセラミックグリーンシートを5cm□のシートに切断し、このシートを用いて約1mmの厚みになるように複数枚重ねて積層して非磁性フェライトの積層成形品を得る。この積層成形品を所望のサイズに個片化したものを930℃−2Hrの条件で焼成して非磁性フェライトを得た(本発明品)。
【0020】
比較のために、フェライト仮焼粉のみからなる組成を有する非磁性フェライトを前記プロセスと同じ方法により作製した(比較品)。
【0021】
得られた非磁性フェライトの組成と特性の評価結果を比較して(表1)に示す。
【0022】
なお、ZnO,CuOの析出の観察はX線回折装置を用いた構造解析により評価した。
【0023】
また、絶縁抵抗は銀ペーストなどを用いて対向する電極として形成した後測定治具を用いて個片状の非磁性フェライトを挟み込み、100Vの電圧を加えて絶縁抵抗計を用いて測定した。また焼成収縮率は成形品と焼成品の寸法を測り焼成前後での寸法変化から算出した。
【0024】
【表1】
【0025】
(表1)の結果より、比較品はCuOやZnOの析出が認められるが本発明品では焼成収縮率は15%前後、絶縁抵抗は1E+09Ω・cm以上でありながら、かつCuOやZnOの析出は認められず、絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、脱バイなどの過程において局部的に還元雰囲気にさらされたときに低抵抗相となるCuOやZnOの析出が防止されていることが分かる。
【0026】
これは、Fe2O3組成が少なくなったことによるCuOもしくはZnOの析出に対して、TiO2の添加によりTiO2がFe2O3の代わりにCu2+もしくはZn2+をスピネル結晶中に固溶させたものと思われる。
【0027】
一方、比較品は絶縁抵抗の低い個片がかなりの確率で混入していることが分かった。これは個片化した非磁性フェライトを電気炉の中で一括同時に焼成するときなどに脱バイや残留炭素の影響で局部的に雰囲気が還元雰囲気となり、一部の粒界に析出したCuOやZnOが還元されて絶縁抵抗の低い個片ができるものと考えられる。この結果、大気中の焼成であっても一部絶縁抵抗の低い非磁性フェライトができることから生産性の観点で大きな課題を有している。
【0028】
さらに、電極材料として銅電極を用いる場合には窒素雰囲気焼成が不可欠であり、前記のようなCuOやZnOの析出による低抵抗相の発生はより顕著となり、本発明のTiO2の添加効果はより効果的となる。
【0029】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2により請求項2,3,4に記載の発明を説明する。
【0030】
実施の形態1と同様な製造プロセスを経て作製した非磁性フェライトの積層成型品を930℃−2時間の焼成条件で焼成し、(表2)に示した各種組成の非磁性フェライトを得た。
【0031】
比較のために、実施の形態1と同じようにフェライト仮焼粉のみからなる組成を有する非磁性フェライトを比較品として作製した(比較品)。
【0032】
得られた非磁性フェライトの組成と特性を比較して(表2)に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
(表2)の結果より、比較品はCuOやZnOの析出が認められるかもしくはCuOやZnOの析出は認められないが焼成収縮率が10%未満となり十分に焼結しておらず、絶縁抵抗も1E+09Ω・cm未満に低下してしまう。
【0035】
しかしながら、本発明品では焼成収縮率は15%前後と十分に焼結しており、CuOやZnOの析出は認められず、その結果として絶縁抵抗も1E+09Ω・cm以上が得られている。
【0036】
これらの結果より、非磁性の絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、局部的な還元雰囲気にさらされても低抵抗相の析出が防止されていることが分かる。
【0037】
なお、CuOもしくはZnOの析出を防止するためにはFe2O3組成の不足を補う以上のTiO2の添加は必要なく、むしろ過剰添加は焼結の阻害要因となり、TiO2の添加量が少ないとCuOもしくはZnOの析出を防止する効果は得られないことが分かった。
【0038】
また、Fe2O3組成は42〜49mol%の範囲が好ましい。このFe2O3組成が50mol%以上ではFe2+とFe3+の共存状態を招き、この価数の異なるイオン間で電子の移動が起こることが絶縁抵抗の低下の原因となり、Fe2O3組成が41mol%以下では多くのTiO2の添加が必要となり、この過剰のTiO2の添加が焼結を阻害してしまい、Agと同時焼成可能な焼成温度で焼結できなくなるためである。これらの結果よりTiO2の添加量はFe2O3組成により0.5〜6wt%の範囲から最適な量を選択することが好ましい。またこの添加物として用いる酸化チタンはTiO2である必要はなくTiO,Ti2O3,Ti3O4のうち少なくともいずれか一つを用いることによってもTiO2と同様の効果を有していることを確認している。
【0039】
また、CuO組成が6mol%未満ではAgと同時焼成できる温度で十分に焼結が進行せず、またCuOの組成が15mol%以上では磁性を示すようになることからCuOの最適な組成比は6〜14mol%の範囲内であることが望ましい。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3および図1〜図3により請求項5,6,7に記載の発明を説明する。
【0041】
図1(a)は本発明の積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層成型品の構造図であり、図1(b)はその等価回路を示す回路図である。また図2はその斜視図であり、図3(a)は本発明の積層電子部品の他の一例である積層トランスの積層構造図であり、図3(b)はその等価回路を示す回路図である。
【0042】
次に、積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層構造について製造方法を説明しながら詳細に説明する。
【0043】
まず始めに、非磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化亜鉛と酸化銅を用いてFe2O3:ZnO:CuO=48:42:10mol%の組成比になるように配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後、120℃で乾燥させて混合粉を得る。
【0044】
この混合粉を880℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。このフェライト仮焼粉にTiO2の粉末を加え、さらにブチラール樹脂と酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。このセラミックスラリーをドクターブレード法により約50μmの非磁性フェライト用グリーンシート1を得た。
【0045】
一方、磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化ニッケルと酸化亜鉛と酸化銅をFe2O3:NiO:ZnO:CuO=48:21:21:10mol%の組成比になるよう配合し、前記非磁性フェライト用グリーンシート1と同様なプロセスを経て磁性フェライト用グリーンシート3を得た。それぞれのグリーンシート1,3を多数個取りとするために5cm□に切断した。
【0046】
次に、5cm□に切断された磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み400μmとし、さらにこの上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成されるコイルパターン2−1,2−2として形成した。
【0047】
その後、この上に層間のコイルパターン2−1,2−2を接続するビア5を形成した非磁性フェライト用グリーンシート1を積層した後、この上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成される上層のコイルパターン2−1,2−2として印刷し、非磁性フェライト用グリーンシート1のビア5を介して接続された2本の螺旋状のコイルを形成した。
【0048】
この2本の螺旋状のコイルはコイルパターン2−1と2−2が磁性フェライト用グリーンシート3の上面にほぼ並行な渦巻き状に設けられるとともに、さらに非磁性フェライト用グリーンシート1を挟むようにして非磁性フェライト用グリーンシート1の上部に設けられたコイルパターン2−1と2−2は非磁性フェライト用グリーンシート1に設けられたビア5を介して接続されてほぼ並行な渦巻き状に設けられた構成となっている。
【0049】
次に、この上に磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み約1mmの積層成形品を得た。
【0050】
その後、この積層成形品を128個のコモンモードチョークコイルの個片に切断した後930℃−2時間で焼成し、その後端面部に表出した引出電極部2−1a,2−1b,2−2a,2−2bにAgあるいはCuの端面電極4を厚膜プロセスあるいはめっきプロセスにより形成することにより図2に示すような1.2×1.0×0.8mmの128個のコモンモードチョークコイルを得ることができた(本発明品9)。
【0051】
この得られたコモンモードチョークコイルの電気的な特性は結合係数が0.9以上、コモンモードインピーダンスが90Ω以上であった。
【0052】
以上説明してきた本発明によるコモンモードチョークコイルは内蔵する2つのコイルを形成するコイルパターン2−1,2−2の間の少なくとも一部に非磁性フェライト1が介在し、この非磁性フェライト1がコイル近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間の磁気的な結合を強化する作用を有する構造を実現している。
【0053】
その結果、このコモンモードチョークコイルは結合係数が大きくなり、コモンモードノイズフィルターとしてコモンモードノイズを効率良く除去することが可能となる。
【0054】
また、2つのコイル間の絶縁不良はノイズ以外に伝送すべき信号レベルを低下させてしまうために二つのコイル間の絶縁抵抗は少なくとも1E+09Ω以上が必要であることが分かった。
【0055】
また、非磁性フェライト用グリーンシート1は薄いほど結合係数の大きなコモンモードチョークコイルが得られるが、特に厚さ50μm以下が望ましく、結合係数が0.9以上の優れたコモンモードチョークコイルを得ることができた。
【0056】
また、比較のためにTiO2を添加しない非磁性フェライトを用いて同様なプロセスを経て得たコモンモードチョークコイル(比較品16)を作製した。
【0057】
得られたコモンモードチョークコイルの特性を比較して(表3)に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
(表3)の結果より、比較品16の絶縁不良率が6.25%であったのに対して、本発明品9では絶縁不良率が0%であることがわかる。このことはTiO2の添加が脱脂後の残留炭素や大量焼成などに起因する焼成工程における局所的な還元雰囲気の発生にもかかわらず、非磁性フェライト中のCuOもしくはZnOの析出を抑制することにより還元雰囲気中にて発生するCuOもしくはZnOの低抵抗相の出現を防止して二つのコイル間の絶縁抵抗を確保し、量産性の安定化に有効であることを示唆している。
【0060】
なお、絶縁不良率は全数128個に対して、平行ライン間に15Vの電圧を加えたときの絶縁抵抗が1E+09Ω未満の積層電子部品の比を算出して表した。
【0061】
また、コモンモードチョークコイルのコイルパターン2−1,2−2は所望するインダクタンス特性やクロストーク特性によってさまざまな形態を取ることができるが、非磁性フェライト1が2つのコイルで形成するコイルパターン2−1,2−2に接触している限り、いずれの場合も同様な効果を得ることができ、特に2つのコイルパターン2−1,2−2間が狭くなるほど効果は大きくなる。
【0062】
次に、図3(a)、図3(b)を用いて本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの例を示す。
【0063】
図3(a)に示す本発明による積層型のチップトランスは磁性フェライト30で挟まれた内蔵する一次コイル21(引出電極部21a、引出電極部21b)と二次コイル22(引出電極部22a、引出電極部22b)を形成するコイル間の少なくとも一部に非磁性フェライト10が非磁性フェライト10のビア5を介して接続された2本のAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する電極ラインから構成される螺旋状の一次コイル21、二次コイル22を形成することを特徴とし、その結果としてそれぞれのコイルの近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間21,22の磁気的な結合を強化することかできる。
【0064】
その結果、積層型のチップトランスの結合係数が大きくなり、トランスとして高効率なエネルギーの授受が可能となる。また本発明による非磁性フェライト10を用いることにより、高絶縁抵抗を安定して得ることができることからエネルギー損失の小さな優れた結合係数を有する小型の積層トランスを得ることができる。
【0065】
なお、磁性フェライト30は六方晶フェライトを用いた場合においても同様の効果が認められた。
【0066】
また、本発明に用いる磁性フェライト用グリーンシート3は所望する厚さの積層電子部品になるように複数枚積層するが、厚みの厚いグリーンシートを用いるならば一枚でもよい。
【0067】
また、すべてのコイルパターン2−1,2−2,21,22の形成方法はスクリーン印刷でもよく、さらにファインパターンを形成するためには、めっき転写、凹版転写工法が有効であり、これらの技術と組み合わせることにより直流抵抗の小さな小型のコモンモードチョークコイルあるいは積層チップトランスを実現することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、さらに酸化チタンが添加されている非磁性フェライトおよびそれを用いて積層電子部品であり、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよび絶縁不良の抑制された積層電子部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施の形態3におけるコモンモードチョークコイルの一例を示す構成図
(b)同等価回路図
【図2】同斜視図
【図3】(a)同本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの構成図
(b)同等価回路図
【符号の説明】
1 非磁性フェライト用グリーンシート
2−1 コイルパターン
2−2 コイルパターン
2−1a,2−1b 引出電極部
2−2a,2−2b 引出電極部
3 磁性フェライト用グリーンシート
4 端面電極
5 ビア
10 非磁性フェライト
21 一次コイル
21a,21b 引出電極部
22 二次コイル
22a,22b 引出電極部
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に用いられる非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe2O3とZnOのみを含むZnフェライトは非磁性フェライト材料であり、積層トランスあるいは磁気ヘッドの構成材料としてNi−Znフェライトなどと組み合わせて用いられてきた。
【0003】
さらに、このZnフェライトに数10mol%以下のCuOを含有させることによって、非磁性の特性を備えたまま900℃前後までの低温焼成化が可能であることは良く知られている。このような低温焼成化を図ることによって、Ag,Cuなどの導電率の高い電極材料との同時焼結を可能とすることができ、フェライトグリーンシートあるいはフェライトペーストなどと組み合わせることによって、インダクタンス部品あるいはノイズ対策部品などの小型で実装性に優れた積層電子部品を構成することが行われている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−77022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような用途で用いられる場合、用いられる磁性層および非磁性層にはAgなどの導体に接触する構造となることから高い絶縁抵抗が要求される。この高い絶縁抵抗を得るためには非磁性フェライト中のFe2O3の組成比を低減する必要がある。このFe2O3の組成比を低減していくとZnO,CuOの結晶粒界への析出量が増大してくる傾向がある。特に還元雰囲気中にさらされた場合には結晶粒界に析出したZnO,CuOが還元されて低抵抗相が析出することが問題であり、この材料を用いて作製した積層電子部品の内層部で絶縁不良が生じる危険性が増大するという課題があった。
【0007】
本発明の目的はZnO,CuOの結晶粒界への析出を抑制し、特性の向上および結晶構造の安定化を図ることができる絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンが添加した非磁性フェライトであり、酸化チタンの添加により、CuOやZnOの析出が抑制され、還元雰囲気にさらされた場合においても絶縁抵抗の高い非磁性フェライトを実現することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、酸化チタンがTiO,Ti2O3,Ti3O4,TiO2のうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライトであり、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトを実現することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、酸化チタンをTiO2換算で0.5〜6.0wt%添加した請求項1に記載の非磁性フェライトであり、還元雰囲気中においても絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明は、フェライトの組成としてFe2O3:42〜49mol%、CuO:6〜14mol%、残りがZnOと酸化チタンであり、絶縁抵抗が1E+9Ω・cm以上である請求項1に記載の非磁性フェライトであり、絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明は、磁性絶縁体層と、磁性絶縁体層に挟まれた非磁性絶縁体層と、磁性絶縁層と非磁性絶縁層の境界もしくは境界に接して内蔵される2条の渦巻き導体コイルとで構成された積層電子部品であって、前記非磁性絶縁体層が請求項1〜4のいずれか一つに記載の非磁性フェライトを用いて形成された積層電子部品であり、絶縁性能に優れ、小型で生産性に優れた積層電子部品を実現することができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したコモンモードチョークコイルとしての積層電子部品であり、絶縁性能に優れ、小型で生産性に優れたコモンモードチョークコイルを実現することができる。
【0014】
本発明の請求項7に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したチップトランスとしての積層電子部品であり、小型で生産性に優れたチップトランスを実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品について実施の形態および図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1により請求項1に記載の発明を説明する。
【0017】
本発明の非磁性フェライトの出発原料である市販のFe2O3粉とCuO粉とZnO粉を(表1)で示した組成比で配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後、120℃で乾燥して混合粉を得る。この混合粉を850℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。
【0018】
このフェライト仮焼粉に(表1)に示す添加量のTiO2の粉末を加え、さらにバインダーとしてブチラール樹脂(PVB)、可塑剤(BBP)および溶媒である酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。
【0019】
次に、このセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート状に成形して厚み約50μmのセラミックグリーンシートを得る。このセラミックグリーンシートを5cm□のシートに切断し、このシートを用いて約1mmの厚みになるように複数枚重ねて積層して非磁性フェライトの積層成形品を得る。この積層成形品を所望のサイズに個片化したものを930℃−2Hrの条件で焼成して非磁性フェライトを得た(本発明品)。
【0020】
比較のために、フェライト仮焼粉のみからなる組成を有する非磁性フェライトを前記プロセスと同じ方法により作製した(比較品)。
【0021】
得られた非磁性フェライトの組成と特性の評価結果を比較して(表1)に示す。
【0022】
なお、ZnO,CuOの析出の観察はX線回折装置を用いた構造解析により評価した。
【0023】
また、絶縁抵抗は銀ペーストなどを用いて対向する電極として形成した後測定治具を用いて個片状の非磁性フェライトを挟み込み、100Vの電圧を加えて絶縁抵抗計を用いて測定した。また焼成収縮率は成形品と焼成品の寸法を測り焼成前後での寸法変化から算出した。
【0024】
【表1】
【0025】
(表1)の結果より、比較品はCuOやZnOの析出が認められるが本発明品では焼成収縮率は15%前後、絶縁抵抗は1E+09Ω・cm以上でありながら、かつCuOやZnOの析出は認められず、絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、脱バイなどの過程において局部的に還元雰囲気にさらされたときに低抵抗相となるCuOやZnOの析出が防止されていることが分かる。
【0026】
これは、Fe2O3組成が少なくなったことによるCuOもしくはZnOの析出に対して、TiO2の添加によりTiO2がFe2O3の代わりにCu2+もしくはZn2+をスピネル結晶中に固溶させたものと思われる。
【0027】
一方、比較品は絶縁抵抗の低い個片がかなりの確率で混入していることが分かった。これは個片化した非磁性フェライトを電気炉の中で一括同時に焼成するときなどに脱バイや残留炭素の影響で局部的に雰囲気が還元雰囲気となり、一部の粒界に析出したCuOやZnOが還元されて絶縁抵抗の低い個片ができるものと考えられる。この結果、大気中の焼成であっても一部絶縁抵抗の低い非磁性フェライトができることから生産性の観点で大きな課題を有している。
【0028】
さらに、電極材料として銅電極を用いる場合には窒素雰囲気焼成が不可欠であり、前記のようなCuOやZnOの析出による低抵抗相の発生はより顕著となり、本発明のTiO2の添加効果はより効果的となる。
【0029】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2により請求項2,3,4に記載の発明を説明する。
【0030】
実施の形態1と同様な製造プロセスを経て作製した非磁性フェライトの積層成型品を930℃−2時間の焼成条件で焼成し、(表2)に示した各種組成の非磁性フェライトを得た。
【0031】
比較のために、実施の形態1と同じようにフェライト仮焼粉のみからなる組成を有する非磁性フェライトを比較品として作製した(比較品)。
【0032】
得られた非磁性フェライトの組成と特性を比較して(表2)に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
(表2)の結果より、比較品はCuOやZnOの析出が認められるかもしくはCuOやZnOの析出は認められないが焼成収縮率が10%未満となり十分に焼結しておらず、絶縁抵抗も1E+09Ω・cm未満に低下してしまう。
【0035】
しかしながら、本発明品では焼成収縮率は15%前後と十分に焼結しており、CuOやZnOの析出は認められず、その結果として絶縁抵抗も1E+09Ω・cm以上が得られている。
【0036】
これらの結果より、非磁性の絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、局部的な還元雰囲気にさらされても低抵抗相の析出が防止されていることが分かる。
【0037】
なお、CuOもしくはZnOの析出を防止するためにはFe2O3組成の不足を補う以上のTiO2の添加は必要なく、むしろ過剰添加は焼結の阻害要因となり、TiO2の添加量が少ないとCuOもしくはZnOの析出を防止する効果は得られないことが分かった。
【0038】
また、Fe2O3組成は42〜49mol%の範囲が好ましい。このFe2O3組成が50mol%以上ではFe2+とFe3+の共存状態を招き、この価数の異なるイオン間で電子の移動が起こることが絶縁抵抗の低下の原因となり、Fe2O3組成が41mol%以下では多くのTiO2の添加が必要となり、この過剰のTiO2の添加が焼結を阻害してしまい、Agと同時焼成可能な焼成温度で焼結できなくなるためである。これらの結果よりTiO2の添加量はFe2O3組成により0.5〜6wt%の範囲から最適な量を選択することが好ましい。またこの添加物として用いる酸化チタンはTiO2である必要はなくTiO,Ti2O3,Ti3O4のうち少なくともいずれか一つを用いることによってもTiO2と同様の効果を有していることを確認している。
【0039】
また、CuO組成が6mol%未満ではAgと同時焼成できる温度で十分に焼結が進行せず、またCuOの組成が15mol%以上では磁性を示すようになることからCuOの最適な組成比は6〜14mol%の範囲内であることが望ましい。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3および図1〜図3により請求項5,6,7に記載の発明を説明する。
【0041】
図1(a)は本発明の積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層成型品の構造図であり、図1(b)はその等価回路を示す回路図である。また図2はその斜視図であり、図3(a)は本発明の積層電子部品の他の一例である積層トランスの積層構造図であり、図3(b)はその等価回路を示す回路図である。
【0042】
次に、積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層構造について製造方法を説明しながら詳細に説明する。
【0043】
まず始めに、非磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化亜鉛と酸化銅を用いてFe2O3:ZnO:CuO=48:42:10mol%の組成比になるように配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後、120℃で乾燥させて混合粉を得る。
【0044】
この混合粉を880℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。このフェライト仮焼粉にTiO2の粉末を加え、さらにブチラール樹脂と酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。このセラミックスラリーをドクターブレード法により約50μmの非磁性フェライト用グリーンシート1を得た。
【0045】
一方、磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化ニッケルと酸化亜鉛と酸化銅をFe2O3:NiO:ZnO:CuO=48:21:21:10mol%の組成比になるよう配合し、前記非磁性フェライト用グリーンシート1と同様なプロセスを経て磁性フェライト用グリーンシート3を得た。それぞれのグリーンシート1,3を多数個取りとするために5cm□に切断した。
【0046】
次に、5cm□に切断された磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み400μmとし、さらにこの上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成されるコイルパターン2−1,2−2として形成した。
【0047】
その後、この上に層間のコイルパターン2−1,2−2を接続するビア5を形成した非磁性フェライト用グリーンシート1を積層した後、この上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成される上層のコイルパターン2−1,2−2として印刷し、非磁性フェライト用グリーンシート1のビア5を介して接続された2本の螺旋状のコイルを形成した。
【0048】
この2本の螺旋状のコイルはコイルパターン2−1と2−2が磁性フェライト用グリーンシート3の上面にほぼ並行な渦巻き状に設けられるとともに、さらに非磁性フェライト用グリーンシート1を挟むようにして非磁性フェライト用グリーンシート1の上部に設けられたコイルパターン2−1と2−2は非磁性フェライト用グリーンシート1に設けられたビア5を介して接続されてほぼ並行な渦巻き状に設けられた構成となっている。
【0049】
次に、この上に磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み約1mmの積層成形品を得た。
【0050】
その後、この積層成形品を128個のコモンモードチョークコイルの個片に切断した後930℃−2時間で焼成し、その後端面部に表出した引出電極部2−1a,2−1b,2−2a,2−2bにAgあるいはCuの端面電極4を厚膜プロセスあるいはめっきプロセスにより形成することにより図2に示すような1.2×1.0×0.8mmの128個のコモンモードチョークコイルを得ることができた(本発明品9)。
【0051】
この得られたコモンモードチョークコイルの電気的な特性は結合係数が0.9以上、コモンモードインピーダンスが90Ω以上であった。
【0052】
以上説明してきた本発明によるコモンモードチョークコイルは内蔵する2つのコイルを形成するコイルパターン2−1,2−2の間の少なくとも一部に非磁性フェライト1が介在し、この非磁性フェライト1がコイル近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間の磁気的な結合を強化する作用を有する構造を実現している。
【0053】
その結果、このコモンモードチョークコイルは結合係数が大きくなり、コモンモードノイズフィルターとしてコモンモードノイズを効率良く除去することが可能となる。
【0054】
また、2つのコイル間の絶縁不良はノイズ以外に伝送すべき信号レベルを低下させてしまうために二つのコイル間の絶縁抵抗は少なくとも1E+09Ω以上が必要であることが分かった。
【0055】
また、非磁性フェライト用グリーンシート1は薄いほど結合係数の大きなコモンモードチョークコイルが得られるが、特に厚さ50μm以下が望ましく、結合係数が0.9以上の優れたコモンモードチョークコイルを得ることができた。
【0056】
また、比較のためにTiO2を添加しない非磁性フェライトを用いて同様なプロセスを経て得たコモンモードチョークコイル(比較品16)を作製した。
【0057】
得られたコモンモードチョークコイルの特性を比較して(表3)に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
(表3)の結果より、比較品16の絶縁不良率が6.25%であったのに対して、本発明品9では絶縁不良率が0%であることがわかる。このことはTiO2の添加が脱脂後の残留炭素や大量焼成などに起因する焼成工程における局所的な還元雰囲気の発生にもかかわらず、非磁性フェライト中のCuOもしくはZnOの析出を抑制することにより還元雰囲気中にて発生するCuOもしくはZnOの低抵抗相の出現を防止して二つのコイル間の絶縁抵抗を確保し、量産性の安定化に有効であることを示唆している。
【0060】
なお、絶縁不良率は全数128個に対して、平行ライン間に15Vの電圧を加えたときの絶縁抵抗が1E+09Ω未満の積層電子部品の比を算出して表した。
【0061】
また、コモンモードチョークコイルのコイルパターン2−1,2−2は所望するインダクタンス特性やクロストーク特性によってさまざまな形態を取ることができるが、非磁性フェライト1が2つのコイルで形成するコイルパターン2−1,2−2に接触している限り、いずれの場合も同様な効果を得ることができ、特に2つのコイルパターン2−1,2−2間が狭くなるほど効果は大きくなる。
【0062】
次に、図3(a)、図3(b)を用いて本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの例を示す。
【0063】
図3(a)に示す本発明による積層型のチップトランスは磁性フェライト30で挟まれた内蔵する一次コイル21(引出電極部21a、引出電極部21b)と二次コイル22(引出電極部22a、引出電極部22b)を形成するコイル間の少なくとも一部に非磁性フェライト10が非磁性フェライト10のビア5を介して接続された2本のAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する電極ラインから構成される螺旋状の一次コイル21、二次コイル22を形成することを特徴とし、その結果としてそれぞれのコイルの近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間21,22の磁気的な結合を強化することかできる。
【0064】
その結果、積層型のチップトランスの結合係数が大きくなり、トランスとして高効率なエネルギーの授受が可能となる。また本発明による非磁性フェライト10を用いることにより、高絶縁抵抗を安定して得ることができることからエネルギー損失の小さな優れた結合係数を有する小型の積層トランスを得ることができる。
【0065】
なお、磁性フェライト30は六方晶フェライトを用いた場合においても同様の効果が認められた。
【0066】
また、本発明に用いる磁性フェライト用グリーンシート3は所望する厚さの積層電子部品になるように複数枚積層するが、厚みの厚いグリーンシートを用いるならば一枚でもよい。
【0067】
また、すべてのコイルパターン2−1,2−2,21,22の形成方法はスクリーン印刷でもよく、さらにファインパターンを形成するためには、めっき転写、凹版転写工法が有効であり、これらの技術と組み合わせることにより直流抵抗の小さな小型のコモンモードチョークコイルあるいは積層チップトランスを実現することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、さらに酸化チタンが添加されている非磁性フェライトおよびそれを用いて積層電子部品であり、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよび絶縁不良の抑制された積層電子部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施の形態3におけるコモンモードチョークコイルの一例を示す構成図
(b)同等価回路図
【図2】同斜視図
【図3】(a)同本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの構成図
(b)同等価回路図
【符号の説明】
1 非磁性フェライト用グリーンシート
2−1 コイルパターン
2−2 コイルパターン
2−1a,2−1b 引出電極部
2−2a,2−2b 引出電極部
3 磁性フェライト用グリーンシート
4 端面電極
5 ビア
10 非磁性フェライト
21 一次コイル
21a,21b 引出電極部
22 二次コイル
22a,22b 引出電極部
Claims (7)
- Fe2O3とCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンが添加されている非磁性フェライト。
- 酸化チタンがTiO,Ti2O3,Ti3O4,TiO2のうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライト。
- 酸化チタンをTiO2換算で0.5〜6.0wt%添加した請求項1に記載の非磁性フェライト。
- フェライト組成がFe2O3:42〜49mol%、CuO:6〜14mol%、残りがZnOと酸化チタンであり、絶縁抵抗が1E+9Ω・cm以上である請求項1に記載の非磁性フェライト。
- 磁性絶縁体層と、磁性絶縁体層に挟まれた非磁性絶縁体層と、並列する2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルが磁性絶縁層と非磁性絶縁層の境界もしくは境界に接して内蔵した構造を有する積層電子部品であって、前記非磁性絶縁体層を請求項1〜4のいずれか一つに記載の非磁性フェライトを用いて形成した積層電子部品。
- 磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したコモンモードチョークコイルとしての積層電子部品。
- 磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したチップトランスとしての積層電子部品。
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