JP4431850B2 - 酸化物磁性材料とその製造方法および積層チップインダクタ - Google Patents

酸化物磁性材料とその製造方法および積層チップインダクタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、小型の電子機器などにおいて、電磁波干渉ノイズ対策のためなどに使用されるチップインダクタ用のソフトフェライトすなわち高透磁率酸化物磁性材料、その製造方法、およびそれら酸化物磁性材料を用いた積層チップインダクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータや携帯電話等に代表される小型のOA機器あるいは移動通信機器の発達に伴い、これらの機器に搭載される電子部品においても、小型化、高性能化、低価格化などが強く要望されている。それらの部品の一つに、EMIノイズフィルタとして使用される積層チップインダクタがある。
【0003】
インダクタとは、空芯または軟質磁性材料を芯材とするような巻線の要素に対応するもので、そのインダクタンスに基づく交流抵抗、すなわちインピーダンスは周波数が高くなるほど増加する特性を有する。したがって、必要な信号は通過させるが、その信号より高い周波数のノイズが阻止されるローパスフィルタの機能があり、電子機器間の電磁波干渉や、外部ノイズ侵入による誤作動防止に活用される。
【0004】
近年、情報量の増大や信号処理速度の上昇から、上述の電子機器で取り扱う信号の周波数が高くなっており、またデジタル化も進み、より高い周波数域のノイズ抑止の必要性が増してきている。一方、これら高い周波数の信号は、他の相対的に低い周波数域で作動する機器においてはノイズであるため、外部からのノイズの侵入を防止するとともに、外部に信号が漏れないようにしなければならない。このような状況から、より高い周波数域において有効に作動するインダクタが必要になっている。
【0005】
インダクタを小型化かつ高性能化して、電子回路部品に適応させたものが積層チップインダクタである。図1にその内部構造例を模式的に示すが、直方体形状のソフトフェライト1の内部に、導電体3の巻き線状の線路が形成されており、両対向面が入出力端部電極2となっている。これはソフトフェライトのグリーンシート上に導電体ペーストの線路を印刷し、このシートを各シートの導電体線路が接続されるよう、図ではスルーホール5を設けて中に導電体ペーストを充填して積み重ね、一体化焼成して製造される。内部の導電体は接続部分4により入出力端部電極2に接続されている。
【0006】
このようなインダクタの性能は、用いられるソフトフェライトすなわち軟質酸化物磁性材料(以下単にフェライトと略称する)の特性に大きく支配される。このフェライトに要求される特性は、目的とする高周波数帯域で十分高い透磁率を有することはいうまでもないが、それに加えて(1)低い焼成温度で十分な焼結密度が得られること、および(2)高い体積抵抗率を有することが重要である。
【0007】
フェライトは、一般的にXFeの形で表される組成のXが、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の1種、あるいはこれらの元素の複数種の混合物であるスピネル型酸化物の固溶体である。たとえば、XがMnとZnで構成されたフェライトは、きわめて高い透磁率を示す。しかし、このMnZnフェライトは電気絶縁抵抗が高くない上に、低周波域ではすぐれていても高周波域では透磁率が減少するので、高周波域のノイズ対策を目的とするチップインダクタには適用できない。これに対し、高周波帯域に使用可能なフェライトとして、NiZnフェライトやCuNiZnフェライトがある。
【0008】
通常、透磁率の高い緻密なフェライトを得るためには、酸化物の素材を十分に混合し700〜1000℃で仮焼合成したものを粉砕して原料粉とし、バインダ(結合材)を加えて混練し所定形状に圧縮成形後、1000℃以上の高温で焼成する。積層チップインダクタの場合は、焼成前のグリーンシート上に内部導体となる導体素材を印刷し、このシ−トを積層成形してからフェライトと導体とを同時に焼成して一体化する。用いる内部導体の融点に比し焼成温度が高すぎると、導体は流れ出たりフェライト内部へ拡散したりして、導体の断面積減少や消失を来すようになる。
【0009】
このために、内部導体としてAg−Pd合金が多く採用される。AgにPdを含有させると融点が上昇するので、溶融や拡散を抑止でき、その上、焼結後のフェライトとの熱収縮差を低減できる効果もある。しかしながら、AgはPdなど他金属元素が添加されると電気抵抗が高くなり、これを導体とするインダクタは内部抵抗が増加する。内部抵抗の増加はインダクタの挿入損失の増大、すなわち品質指標であるQ値を大きく低下させる。さらにノイズ対策用としての積層チップインダクタは、電源部など大電流部位への採用が急増しており、導体抵抗増加による使用時の発熱も問題となってくる。
【0010】
積層インダクタの内部抵抗は、このような点からできる限り小さいことが望ましく、内部導体としては、Pdなど他金属元素を低く抑えたAg、可能ならAg単体の適用が最良である。しかしAgの融点は961℃と低く、Ag単体を内部導体に用いるためには、積層インダクタないしはフェライトの焼成温度を900℃以下に抑えなければならず、このような低温で十分焼結可能なフェライト材が必要である。
【0011】
たとえば、特公平7-87149号公報には、Agを内部導体とし、CuNiZnフェライトを主成分にして、これにBi、Vまたは珪酸鉛ガラスの少なくとも1種を第二成分として加えた、積層チップインピーダンス素子の発明が開示されている。これには、Ag導電体を用い焼成温度を900℃とすることにより、許容電流が増加したことは示されているが、成分組成は一例しかなくその範囲限界は不明であり、許容電流以外のチップインダクタとしての諸性能も明らかにされていない。
【0012】
焼結密度を十分高くしてフェライトの焼成温度を低下させる手段には、主成分の組成変更、適当な副成分の添加、原料粉の微細化などが考えられる。たとえば主成分のCuO量を増せば焼結温度を低下させることができるが、解離Cuが素子のメッキ耐性を低下させるなどの問題が現れるだけでなく、磁気特性が変化してくるので、主成分組成変更には限界がある。BiやPbOなど低融点ガラスの副原料添加は焼結温度低下に効果がある。しかし、Agと反応して内部導体を縮小し消失させることもあるので、適用には十分な注意が必要である。また、原料粉末の粒子微細化は、焼結温度を低下できるほど微細化すると、比表面積増大によりバインダの効果が低下して良好なグリーンシートが得られなくなる。このように、焼結温度の低下は必ずしも容易ではない。
【0013】
積層チップインダクタは、フェライトに直接導体が接して一体化されている。このためフェライトの電気抵抗値が十分高くない場合、漏洩電流が増してインダクタとしての機能が著しく低下し、さらに信号通過によってフェライト内に渦電流が発生して、挿入損失の増加を招く結果となる。したがって、フェライトの電気抵抗は、絶縁体としてできるだけ高くなければならない。
【0014】
フェライトの電気抵抗は、その組成に大きく依存する。前述のように、MnZnフェライトはきわめて高い透磁率を示すが、電気絶縁抵抗が高くないため、高周波用にはNiZnフェライトやより低温で焼結が可能なCuNiZnフェライトが適用される。
【0015】
このCuNiZnフェライトを用い、とくに電気抵抗を高くすることを配慮した例として、特開平6-295811号公報の発明がある。この発明はMoOを少量添加して透磁率を向上させたものであるが、とくにFeの量を48〜50モル%の範囲に限定し、体積抵抗率(比抵抗)の向上を図っている。また、特開平11-219812号公報に開示された発明は、CuNiZnフェライトにMnOを含有させており、この場合もFeの量を48〜49.5モル%のせまい範囲に管理し、高い体積抵抗率を実現させている。
【0016】
これら2つの発明は、焼結密度は十分高く、体積抵抗率も1×1010Ω-cm以上のものも提示されており、すぐれたフェライトが得られていると思われる。しかしながら、いずれの場合も950〜1300℃の温度で焼成をおこなっており、このような温度での焼成でなければ十分な特性が発現されないとすれば、他の成分を含まないAgを内部導体とする積層チップインダクタには用いることができない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、内部抵抗が低く大電流仕様に適応できる高性能の積層チップインダクタを得ることを目的とし、内部導体にAgを用い、そのために低温で焼結でき、しかも高周波域における高い透磁率と高い体積抵抗率の得られる酸化物磁性材料、およびその製造方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
積層チップインダクタの内部導体は、ペースト状の素材の形でフェライトのグリーンシート上に印刷され、乾燥後シートを積層圧着成形して一体化焼成される際、フェライトとともにその焼結がおこなわれる。
【0019】
この内部導体について、電気抵抗をできるだけ小さくするためにAgの単一体を用いることを目標とし、まずAgペーストの所要焼成温度を調査した。その結果、グリーンシート上のAg素材の焼結が十分進行し、導体の抵抗値が最小となる焼成温度は830〜900℃であることが確認された。この温度範囲より高くなると、Ag導体は拡散や反応を起こしやすくなって、断面積の減少や他元素の侵入などが発生し、低くければ焼結不十分になって、いずれの場合もインダクタ内部導体としての電気抵抗値が増加してくる。
【0020】
フェライトには、このAg導体の最適焼結温度範囲で十分緻密に焼結できて高透磁率となり、しかもできるだけ高い体積抵抗率を示すものが必要である。そこで、このような性能のフェライトを得るための組成に関して、種々検討をおこなった。その際、焼成後のフェライトの性能としては、焼結密度は5.0g/cm以上、1MHzにおける透磁率は300以上、そして体積抵抗率は1000MΩcm以上を目標値とした。
【0021】
まず、高周波域での透磁率など磁気特性にすぐれ、焼結温度を低下できると考えられるCuNiZnフェライトをベースとし、Fe、NiO、ZnOおよびCuOの配合比率を種々変え、磁気的特性が十分確保できる範囲での、焼結温度の低下と体積抵抗率向上の可能性を検討した。しかしながら、これらの組成だけでは、焼結密度を十分高くするための焼結温度が、Ag導体を使用できる温度まで低下できなかった。そこで次に、助剤ないしは副成分の添加に関して検討した。
【0022】
含有させる副成分としては、焼結温度を低下できるばかりでなく、体積抵抗率を向上させ、さらに導体のAgとの相互作用などがないことも重要である。このような観点から種々の副成分を添加してその効果を調査した結果、BiとLiOとを複合添加することが上記の目標値を実現させるために、きわめて好ましいことを見出したのである。
【0023】
Biはその融点がAg導体の焼結温度近傍にあり、わずかな液相を生ずることにより低温での焼結を促進すると推定される。ところがBiの含有は、Ag導体を拡散させ細くさせる傾向がある。これに対し、LiOを同時に含有させると、Agの拡散を多少抑止できる効果がある。しかし、LiOの含有は、このような効果よりも、体積抵抗率を増大させる作用が顕著である。
【0024】
フェライトの電気伝導性は、そのスピネル型結晶構造において、Fe原子が二価と三価のイオンの形を取り得ることから、Fe2+=Fe3++eの電子交換反応が生じ、電子の移動が生じることによると推測される。これに対しLiOを含有する場合は、Feの一部に一価のLiイオンが置き換わり、上記電子交換反応に関与するFeイオンが減少して、移動可能な電子数が減じ、体積抵抗率が上昇したと考えられる。
【0025】
含有させる副成分をさらに調べていくと、MoO、Nb、TaまたはWOの、イオン半径がFe3+に近い五価または六価の多価イオンを同時に含有させれば、LiOによる体積抵抗向上効果がより一層増大することがわかってきた。これらのイオン添加による体積抵抗増大理由は不明であるが、Liと同様、置換によって移動可能な電子を減少させたためではないかと思われる。
【0026】
以上のような検討結果から、ほぼ目標とする焼結密度、透磁率および体積抵抗率を得ることのできる組成がわかったので、さらにそれらの組成範囲限界、および製造条件等を明確にし、積層チップインダクタを作製して性能を確認し発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【0027】
(1) Fe:43.0〜51.0モル%、CuO:5.0〜12.0モル%、NiO:8.0〜39.0モル%およびZnO:残部である主成分と、この主成分100質量部に対し副成分としてBi:0.5〜2.0質量部、LiO:0.08〜0.32質量部、ならびにMoO、Nb、TaおよびWOの内の1種以上が合わせて0.1〜0.5質量部を含むことを特徴とする酸化物磁性材料。
【0028】
(2) 酸化物原料を混合して仮焼合成し、粉砕整粒した粉末にバインダを加え混練して所要形状に成形した後、830〜900℃にて1〜5時間焼成することを特徴とする上記(1)の酸化物磁性材料の製造方法。
【0029】
(3) Agの内部導体と、上記(1)の酸化物磁性材料とからなることを特徴とする積層チップインダクタ。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明において、フェライトの組成を上述のように限定するのは、以下の理由による。
【0031】
Feは、フェライトの基幹成分であり、そのフェライトの主成分をXFe(XはCu、Fe、Ni、Zn等)として示される逆スピネル構造の固溶体とすれば、その内の43.0〜51.0モル%を構成していなければならない。43.0モル%未満の場合、十分な透磁率が得られず、積層チップインダクタとしたときのインピーダンスが不足する。他方、51.0モル%を超えて存在すると、十分な焼結密度が得られず、体積抵抗率が低くなる。その上、積層チップインダクタ素子の機械的強度が不足し、長期使用による性能劣化の耐性、すなわち耐候性の劣化をもたらすおそれがある。
【0032】
CuOはフェライトの主成分の内の、5.0〜12.0モル%を構成していることとする。CuOは、焼結温度の低温化に大きく寄与しているからである。5.0モル%を下回ると、本発明の目的とする低温度域での焼成をおこなう場合に焼結密度が不十分になり、機械的強度の不足に加えて耐候性が劣る原因となる。また、12.0モル%を超えると、焼成時、表面にガラス状混合相が形成されて保持台に溶着しやすくなり、生産性が低下することの他、体積抵抗率も低下する。
【0033】
NiOはフェライトの高周波域における透磁率を確保するために含有させる。その量は8.0モル%未満でも、また逆に多すぎて39.0モル%を超える場合でも、高周波域での透磁率が低下してくるので、フェライトの主成分中の含有量は8.0〜39.0モル%に限定する。
【0034】
ZnOはフェライトの透磁率向上のために重要な元素であり、フェライト主成分の上記Fe、CuOおよびNiOを除いた、残りの部分を構成するものとする。ただし、その含有比率が6.0モル%を下回ると、得られたフェライトの磁気特性不十分や焼結密度不足等の問題を生じ、逆に36.0モル%を超えても磁気特性が悪くなるので、望ましいのは6.0〜36.0モル%の範囲とすることである。
【0035】
上記のフェライトを構成する主要成分に対し、助剤として下記組成の副成分を含有させる。各副成分それぞれの含有量は、上記フェライトの主成分の合計量を100質量部としたときの質量部で示す。
【0036】
Biは、フェライトの低温での焼結を促進させるため、0.5〜2.0質量部含有させる。Biの量が0.5質量部未満の場合、目標とする温度では焼結が不十分となり、焼成後のフェライトの十分な焼結密度および透磁率が得られない。一方、2.0質量部を超える場合は、焼成の際にAg内部導体の断面積減少が顕著になり、内部抵抗を大きくさせたり、さらには導体消失により素子機能を失うおそれがある。
【0037】
LiOはフェライトの体積抵抗率増大のため、0.08〜0.32質量部含有させる。これは、0.08質量部未満の含有あるいは0.32質量部を超える含有は、いずれも堆積抵抗率向上の効果が十分得られないからである。
【0038】
上記の組成に対し、さらにMoO、Nb、TaまたはWOの内の1種以上を合計量で0.1〜0.5質量部含有させる。これらの成分は、いずれもLiOと複合して含有させることにより、フェライトの体積抵抗率を増大させる効果がある。この場合、合計の含有量が0.1質量部未満ではその向上効果が大きくなく、0.5質量部を超える含有は、磁気特性を悪くするばかりでなく、焼結性も低下させるので好ましくない。
【0039】
さらにAgOまたはRhのいずれか、あるいは両方を含有させると、焼成の際にAgの拡散が抑止され、Ag内部導体の断面積減少を低減することができる。したがって、必要に応じこれらの酸化物を含有させることが好ましい。その場合、少なければ効果がなく多すぎると焼結性を悪くするので、AgOでは0.01〜0.07質量部、Rhでは0.2〜1.5質量部の範囲とする。そして、他の成分を混合仮焼した後の仮焼合成粉に添加してグリ−ンシートを作製し、一体化の焼成をおこなうのがよい。
【0040】
これらの組成の他、フェライトの特性に大きく影響しない限りにおいて、多少の不可避的不純物の混在は許容できる。
【0041】
上記組成の酸化物磁性材料の製造は、一般的な方法に従っておこなえばよいが、積層チップインダクタの製造を例にとって説明すれば次のとおりである。まず、主成分と副成分とを混合して大気中800℃前後の温度にて仮焼し、仮焼粉を粉砕して整粒する。この整粒粉にバインダを加えて十分混練し、ドクターブレード法などにより、グリーンシートに成形する。
【0042】
グリーンシート上に導電体ペーストを印刷し、シートを積層して所定形状に切断後、830〜900℃にて1〜5時間焼成する。焼成温度は830℃を下回ると、焼結不十分で磁気特性および機械的強度とも劣ったものになり、900℃を超えると、内部導体が細くなったり消失したりして、良好なチップインダクタが得られなくなる。焼成時間は、1時間未満では焼結が不十分となる一方、必要以上に加熱を続けても性能の向上はほとんど認められず、加熱の時間およびエネルギーの無駄になるので、長くても5時間までとする。焼成後、内部導体と接続する導体部分に入出力用端部電極を取り付け、チップインダクタとする。
【0043】
【実施例】
〔実施例1〕
表1に示す調合組成比とした原料を、各々合計量にて250gとなるように秤量し、1リットルの純水とともにジルコニア製粉砕用ボールを使用したボールミルにて24時間混合後、原料粉を分別乾燥し、ジルコニア製るつぼに移して800℃にて仮焼合成をおこなった。なお、LiOについては炭酸塩の形で配合した。仮焼後X線回折により所要の化合物が得られていることを確認した。
【0044】
仮焼合成粉はボールミルにて湿式粉砕後、分別乾燥して粒径が0.8〜1.0μmになるようメッシュふるいにて整粒した。これにバインダとして10質量%のPVA溶液を添加し、ライカイ機にて造粒して、造粒粉を金型にてプレスし成形した後、大気中にて850℃、2.0時間の焼成をおこない、外径10mm、厚さ3mmの円柱状試験片および外径16mm、内径8mm、厚さ3mmのトロイダル試験片を作製した。
【0045】
また、上記の仮焼合成粉からドクターブレード法により、厚さ70μmのグリーンシートを作製して、シート表面に内部導体とするAg単一組成のペーストを線幅150μm、厚さ20μmで内部導体相当のパターンにて印刷し、その上にグリーンシートを乗せて圧着後チップ形状に切断し、上記と同じく大気中にて850℃、2.0時間の焼成をおこなった。この試験片は焼成後断面を研磨し、走査型電子顕微鏡にて導体形状を観察した。
【0046】
得られた円柱状試験片は、液浸秤量法にて密度を測定した後、上下面にIn−Ga合金を塗布して電極を設け、直流定電圧電源(日本ヒューレットパッカード社製HP4140B)を利用して、直流50V、1分値の絶縁抵抗を測定し、電極面積と電極間距離とから体積抵抗率を計算して求めた。また、トロイダル試験片は、インピーダンス測定装置(日本ヒューレットパッカード社製HP4291A)および透磁率測定装置(日本ヒューレットパッカード社製HP16454A)を用い、1MHzにおける透磁率を求めた。
【0047】
表1に焼結密度、体積抵抗率および透磁率の測定結果を合わせて示す。これらの結果から明らかなように、主成分の組成比と、副成分の量が本発明に定める範囲内にあるものは、密度および透磁率が高く、体積抵抗率の高いフェライトが得られている。すなわち、当初の目標とした焼結密度が5.0g/cm以上、1MHzにおける透磁率は300以上、そして体積抵抗率は1000MΩcm以上のフェライトとなっている。
【0048】
【表1】
Figure 0004431850
【0049】
フェライト内部のAg導体については、Biの含有の多い試番14を除いては、いずれも減少や拡散等は認められなかった。これは焼成温度を低くできた効果である。
【0050】
〔実施例2〕
表1に示した試料番号5の組成のフェライトを用い、ドクターブレード法にて厚さ70μmのグリーンシートを作製した。シート表面に導体パターンを、Ag単一組成のペーストにてスクリーン印刷し、積層して図1に模式的に示す内部構造となるチップインダクタを形成させた。この場合のチップは2125サイズ(長さ2.0mm、幅1.25mm、厚さ0.5mm)で、ペーストの印刷線幅は150μm、厚さは20μm、内部の導体ターン数は8とし、積層シート間の導体接続はスルーホールとして、そこに導電ペーストを充填した。
【0051】
シートを積層圧着後上記チップサイズに切断し、大気中にて850℃、2.0時間の焼成をおこなった。この場合のフェライトの透磁率は320(1MHz)であった。
【0052】
焼成後のチップの両端に入出力電極を取り付け、実施例1で用いたインピーダンス測定装置により、インピーダンスとインダクタンスを測定した。また許容電流値は、種々電流を変えて、表面温度の上昇幅が+3℃以内である最大電流値を求めた。これらの結果は次のとおりである。
【0053】
インピーダンス|Z|:1000 Ω(100MHz)
インダクタンス Ls :400 nH(100MHz)
最大許容電流 Ip :3.0 A
以上のように、本発明による積層チップインダクタは、インピ−ダンス、インダクタンスとも高い値を示しており、許容電流値も十分大きい。
【0054】
【発明の効果】
本発明の酸化物磁性材料すなわちソフトフェライトは、高周波領域にても十分に高い透磁率を有し、体積抵抗率が高く、かつ従来のものよりも低温での焼成により焼結が可能であり、Agの拡散による内部導体消失を抑止できる。このフェライトによる積層チップインダクタは、内部導体に電気抵抗の小さいAgを用いることができるので、とくに大電流仕様に最適であり、高周波特性にすぐれ、内部抵抗が低いことから、電子機器の高性能化に効果的に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層チップインダクタの内部導体の構造を模式的に例示した図である。
【符号の説明】
1.フェライトの積層焼結体部分
2.入出力用端部電極
3.内部導体
4.入出力電極と接続する導電部分
5.内部導体間の接続用スルーホール

Claims (3)

  1. Fe:43.0〜51.0モル%、CuO:5.0〜12.0モル%、NiO:8.0〜39.0モル%およびZnO:残部である主成分と、この主成分100質量部に対し副成分としてBi:0.5〜2.0質量部、LiO:0.08〜0.32質量部、ならびにMoO、Nb、TaおよびWOの内の1種以上が合わせて0.1〜0.5質量部を含むことを特徴とする酸化物磁性材料。
  2. 酸化物原料を混合して仮焼合成し、粉砕整粒した粉末にバインダを加え混練して所要形状に成形した後、830〜900℃にて1〜5時間焼成することを特徴とする請求項1に記載の酸化物磁性材料の製造方法。
  3. Agの内部導体と、請求項1に記載の酸化物磁性材料とからなることを特徴とする積層チップインダクタ。
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