JP2002193623A - 磁性フェライト材料および積層型フェライト部品 - Google Patents

磁性フェライト材料および積層型フェライト部品

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JP2002193623A
JP2002193623A JP2000396161A JP2000396161A JP2002193623A JP 2002193623 A JP2002193623 A JP 2002193623A JP 2000396161 A JP2000396161 A JP 2000396161A JP 2000396161 A JP2000396161 A JP 2000396161A JP 2002193623 A JP2002193623 A JP 2002193623A
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JP2000396161A
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Isao Nakahata
功 中畑
Hirohiko Ichikawa
広彦 市川
Atsushi Nakano
敦之 中野
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • H01F41/02Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets
    • H01F41/04Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing coils
    • H01F41/041Printed circuit coils
    • H01F41/046Printed circuit coils structurally combined with ferromagnetic material

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐電圧性,耐久性に優れる磁性フェライト材
料およびこれを用いた積層型フェライト部品を低コスト
で提供する。 【解決手段】 積層型チップインダクタアレイ1は、磁
性フェライト層2および内部電極3とが交互に積層され
た多層構造のチップ体5と、このチップ体5の両端部に
内部電極3と引出し電極4を介して電気的に導通するよ
うに配置した外部電極6とから構成される。積層型チッ
プインダクタアレイ1は、1つのチップ体5内に、複数
の独立した内部電極3を備えている。磁性フェライト層
2として、Fe23:40.0〜51.0mol%,Cu
O:5.0〜30.0mol%,ZnO:0.5〜35.0m
ol%,MgO:5.0〜50.0mol%を主成分と
し、Mn:0.75wt%以下(0を含まず)およびC
o:0.75wt%以下(0を含まず)を副成分として
含む焼結体を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層型チップビー
ズ、積層型インダクタなどの積層型チップフェライト部
品、LC複合積層型部品を代表とする複合積層型部品に
用いられる磁性フェライト材料および積層型フェライト
部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】積層型チップフェライト部品および複合
積層型部品(本明細書中では積層型フェライト部品と総
称する。)は、体積が小さいこと、信頼性が高いことな
どから、各種電気機器に用いられている。この積層型フ
ェライト部品は、通常、磁性フェライトからなる磁性層
用のシートまたはペーストと内部電極用のペーストとを
厚膜積層技術によって積層一体化した後、焼結し、得ら
れた焼結体表面に外部電極用のペーストを印刷または転
写した後に焼き付けて製造される。なお、積層一体化し
た後に焼結することを同時焼結と呼んでいる。内部電極
用の材料としてその低抵抗率からAgまたはAg合金が
用いられているため、磁性層を構成する磁性フェライト
材料としては、同時焼結が可能、換言すればAgまたは
Ag合金の融点以下の温度で焼結(以下、「低温焼結」
ということがある)ができることが絶対条件となる。し
たがって、高密度、高特性の積層型フェライト部品を得
るためには、AgまたはAg合金の融点以下の温度で磁
性フェライトを焼結できるかが鍵となる。
【0003】AgまたはAg合金の融点以下の温度で焼
結できる磁性フェライトとしてNiCuZnフェライト
が知られている。例えば、特開平8−104561号公
報にはFeをFe23に換算して45.0〜50.0mo
l%、NiをNiOに換算して5.0〜10.0mol
%、CuをCuOに換算して5.0〜15.0mol%、
ZnをZnOに換算して25.0〜35.0mol%、M
nをMn34に換算して0.1〜3.0mol%およびL
iをLi2Oに換算して0.01〜3.0mol%を含む
磁性フェライトが開示されている。また、特開平8−1
04562号公報には、FeをFe23に換算して4
5.0〜50.0mol%、NiをNiOに換算して1
5.0〜30.0mol%、CuをCuOに換算して8.
0〜15.0mol%、ZnをZnOに換算して15.0
〜25.0mol%、MnをMn34に換算して0.1〜
3.0mol%およびLiをLi2Oに換算して0.01
〜3.0mol%を含む磁性フェライトが開示されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】最近、高密度実装に対
応するために、一つの積層型フェライト部品の中に複数
の内部電極を配置する例が出てきている。この複数の内
部電極を配置する積層型フェライト部品は、内部電極間
に電位差(電圧)が生ずるために、内部電極間に存在す
るフェライト材料に耐電圧性が要求されるようになって
きた。ここで耐電圧性とは、フェライト部品に電圧が生
じた際に、より高い電圧までフェライト材料が電圧印加
による絶縁破壊に耐え得ることを示している。ところ
が、これまで知られている磁性フェライト材料は、この
ような耐電圧性についての検討がなされていなかった。
ところで、NiCuZnフェライトは、その原料である
NiOが高価であるため、自ずと高価な材料となってし
まう。そこで、NiOよりも安価なMgO、Mg(O
H)2またはMgCO3を用いたMgCuZnフェライト
が注目されている。また、比較的安価なMgCuZnフ
ェライトが耐久性を有し長時間好適に使用しうるもので
あれば、より一層の価格低下につながることとなる。し
たがって本発明は、耐電圧性,耐久性に優れる磁性フェ
ライト材料およびこれを用いた積層型フェライト部品を
低コストで提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は磁性フェライ
ト材料の耐電圧性および耐久性を向上すべく検討を行な
った。その結果、MnおよびCoが所定の範囲で焼結組
織中に存在する場合に、優れた耐電圧性および耐久性を
得ることができることを知見した。本発明は以上の知見
に基づきなされたものであり、Fe23:40.0〜5
1.0mol%,CuO:5.0〜30.0mol%,Zn
O:0.5〜35.0mol%およびMgO:5.0〜50.
0mol%を主成分とし、Mn:0.75wt%以下
(0を含まず)およびCo:0.75wt%以下(0を
含まず)を副成分として含むことを特徴とする磁性フェ
ライト材料を提供する。この磁性フェライト用材料にお
いて、MgOの一部をNiOで置換することができる。
具体的には、MgOを含むことを必須とし、MgOおよ
びNiOの合計量を5.0〜50.0mol%とすればよ
い。本発明の磁性フェライト材料において、組織に占め
るCoの量がCo換算で0.01〜0.6wt%であるこ
とが望ましい。この範囲でCoを含むことにより、耐電
圧性,耐久性に優れた磁性フェライト材料を得ることが
できる。また本発明の磁性フェライト材料において、組
織に占めるMnの量がMn換算で0.3wt%以下(0
を含まず)および組織に占めるCoの量がCo換算で
0.01〜0.75wt%であることが望ましい。この範
囲でMnおよびCoを含むことにより、電位差の生じて
いる導体間の磁性フェライト層1μmあたり50V以上
という非常に優れた破壊電圧(Vb)を得ることができ
る。一方、本発明の磁性フェライト材料において、組織
に占めるMnの量がMn換算で0.3〜0.75wt%の
範囲にある場合には、Coの量を0.01〜0.7wt%
とすることにより電位差の生じている導体間の磁性フェ
ライト層1μmあたり40V以上の良好な破壊電圧(V
b)を得ることができる。また本発明の磁性フェライト
材料において、組織に占めるCuの偏析が面積率で1.
5〜15.0%である焼結体からなることが望ましい。
Cuの偏析が所定の範囲で焼結組織中に存在する場合
に、優れた耐電圧性を得ることができるという知見に基
づくものである。なお、本発明におけるCu偏析の面積
率の算出方法は、後述する実施例で採用した算出方法に
よって特定されるものとする。
【0006】さらにまた、本発明は磁性フェライト層と
内部電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極
と電気的に接続された外部電極とを有する積層型フェラ
イト部品であって、前記磁性フェライト層はFe23:
40.0〜51.0mol%,CuO:5.0〜30.0m
ol%,ZnO:0.5〜35.0mol%およびMgO:
5.0〜50.0mol%を主成分とし、Mn:0.75
wt%以下(0を含まず)およびCo:0.75wt%
以下(0を含まず)を副成分として含む磁性フェライト
焼結体から構成され、前記内部電極はAgまたはAg合
金から構成されることを特徴とする積層型フェライト部
品を提供する。本発明の積層型フェライト部品におい
て、MgOの一部をNiOで置換することができる。具
体的には、MgOを含むことを必須とし、MgOおよび
NiOの合計量を5.0〜50.0mol%とすればよ
い。また本発明の積層型フェライト部品において、前記
磁性フェライト焼結体の組織に占めるCuの偏析が面積
率で1.5〜15.0%であることが望ましい。
【0007】本発明の積層型フェライト部品は、破壊電
圧(Vb)が電位差の生じている導体間の磁性フェライ
ト層1μmあたり30V以上という、優れた耐電圧性を
備えている。なお、本発明における破壊電圧(Vb)
は、後述する実施例で採用した破壊電圧の測定方法に基
づいて特定されるものとする。また本発明の積層型フェ
ライト部品は、品質係数(Q)が40以上という特性を
備えている。なお、本発明における品質係数(Q)は、
後述する実施例で採用した品質係数(Q)の測定方法に
よって特定されるものとする。また本発明は、各々独立
した複数の内部電極を有する積層型フェライト部品に適
用することが望ましい。複数の内部電極を有すると各内
部電極間で電位差が生じ、絶縁破壊に至るおそれがある
からである。
【0008】
【発明の実施の形態】はじめに、本発明における組成の
限定理由を説明する。Fe23の量は透磁率に大きな影
響を与える。Fe23が40.0mol%より少ないと
透磁率が小さく、フェライトとしての化学量論組成に近
づくにしたがって透磁率は上昇するが、化学量論組成を
ピークとして急激に低下する。したがって、上限を5
1.0mol%とする。望ましいFe23の量は45.0
〜49.8mol%、さらに望ましいFe23の量は4
9.2〜49.8mol%である。CuOは、本発明にお
いて焼結温度低減に寄与する化合物であり、5.0mo
l%未満ではAgの融点以下の温度域における焼結が実
現できなくなる。ただし、30.0mol%を超えると
フェライトの固有抵抗が低下して品質係数Qが劣化する
ので5.0〜30.0mol%とする。望ましいCuO量
は7.0〜25.0mol%、さらに望ましいCuO量は
10.0〜20.0mol%である。
【0009】ZnOは、その量の増加とともに透磁率μ
を向上させることができるが、多すぎるとキュリー温度
が100℃以下となり、電子部品に要求される温度特性
を満足することができなくなる。したがって、ZnO量
は0.5〜35.0mol%とする。望ましいZnO量は
15.0〜30.0mol%、さらに望ましい量は18.
0〜25.0mol%である。MgOは、磁性フェライ
トの磁歪定数を下げる効果を有する。この効果を得るた
めには5.0mol%以上の量とすることが必要であ
る。しかし、MgOの量が増加するにつれて透磁率μが
低下する傾向にあるため50.0mol%以下とする。
望ましいMgOの量は7.0〜30.0mol%、さらに
望ましい量は10.0〜26.0mol%である。なお、
本発明の磁性フェライト材料において、MgOの一部を
NiOで置換することもできるが、その際の添加量はM
gOを含むことを必須とし、MgOおよびNiOの合計
量を5.0〜50.0mol%とすればよい。また、Mg
OおよびNiOの合計量が7.0〜30.0mol%とす
るのが望ましく、さらに望ましい量は10.0〜26.0
mol%である。なお、MgOの一部をNiOで置換す
る場合、NiOの量は前記合計量の70%以下とするこ
とが望ましい。70%を超えると得られる磁性フェライ
トの磁歪定数が高くなり、透磁率μの劣化防止効果を得
にくくなるからである。さらに、MgOとともに、また
はMgOに代えてMg(OH)2、MgCO3を用いるこ
ともできる。磁性フェライトの磁気特性は組成依存性が
非常に強く、上記組成範囲をはずれた領域では、透磁率
μや品質係数Qが低くなり、積層型フェライト部品用磁
性材料として適さなくなる。
【0010】次に、本発明による磁性フェライト材料は
副成分としてMnおよびCoを含む。Mnの量はMn換
算で0.75wt%以下(0を含まず)、Coの量はC
o換算で0.75wt%以下(0を含まず)である。M
nおよびCoがこの範囲にある場合に、耐電圧性,耐久
性に優れかつ品質係数Qが向上することを知見したこと
による。望ましいCo量は0.01〜0.6wt%であ
る。このような範囲でCoを含むことにより、本発明の
積層型フェライト部品は磁性フェライト層1μmあたり
30V以上の破壊電圧(Vb)を備えるとともに、40
以上の品質係数Qを得ることができる。またMn量はM
n換算で0.3wt%以下(0を含まず)、さらには0.
2wt%以下(0を含まず)とすることが望ましい。M
nがこの範囲であり、かつCo量が0.01〜0.75w
t%である場合に、電位差の生じている導体間の磁性フ
ェライト層1μmあたり50V以上という非常に優れた
破壊電圧(Vb)を得ることができる。一方、Mn量が
Mn換算で0.3〜0.75wt%の範囲にあるときは、
Co量を0.01〜0.7wt%とすることにより、電位
差の生じている導体間の磁性フェライト層1μmあたり
40V以上という良好な破壊電圧(Vb)を得ることが
できる。ここで、「Mn換算」で、とは焼結体中に存在
する形態によらず純Mnとして含有される量をいう。例
えば、Mn酸化物として含有されている場合でも、Mn
酸化物としての量をいうのではなく、Mn酸化物を構成
するMnの量をいうものである。同様に、「Co換算」
で、とは、焼結体中に存在する形態によらず純Coとし
て含有される量をいう。また、本発明による磁性フェラ
イト材料は、組織に占めるCuの偏析が面積率で1.5
〜15.0%であり、望ましいCu偏析の面積率は5.0
〜15.0%である。本発明者の検討によれば、焼結体
中に含まれるMnおよびCoの量を制御することにより
Cu偏析の量を変動させることができる。組織に占める
Cuの偏析を面積率で1.5〜15.0%の範囲とするた
めには、Mnの量をMn換算で0.75wt%以下(0
を含まず)およびCoの量をCo換算で0.75wt%
以下(0を含まず)とすることが望ましい。
【0011】本発明による磁性フェライト材料は、原料
粉末を混合する混合工程と、混合された前記原料粉末を
仮焼きする仮焼き工程と、前記仮焼き工程により得られ
た仮焼き体を粉砕して粉砕粉末を得る粉砕工程と、前記
粉砕工程により得られた前記粉砕粉末を用いて成形体を
得る成形工程と、前記成形工程で得られた成形体を焼結
する焼結工程により得ることができる。原料粉末とし
て、Fe23粉末、CuO粉末、ZnO粉末およびMg
O粉末を用意する。これらの粉末は本発明の耐電圧性に
優れた磁性フェライト材料の主成分をなす粉末である。
なお、本発明の磁性フェライト材料において、MgOの
一部をNiOで置換する場合には、NiO粉末も用意す
る。これら主成分をなす粉末に加えて、副成分であるM
nおよびCoについての原料粉末を用意する。Mnにつ
いては、Mn酸化物(例えば、Mn23,Mn34)、
あるいはMn炭酸化物(例えば、MnCO3)からなる
粉末が原料粉末となる。もっとも、これはあくまで一態
様であって、焼結体中にMnがMn換算で0.75wt
%以下(0を含まず)含有されていれば、その添加の態
様は問われない。またCoについては、Co酸化物(例
えば、CoO,Co34)、あるいはCo炭酸化物(例
えば、CoCO3)からなる粉末が原料粉末として挙げ
られるが、これに限定されるものではなく、焼結体中に
CoがCo換算で0.75wt%以下(0を含まず)含
有されていればよい。用意する各原料粉末の粒径は0.
1〜10μmの範囲で適宜選択すればよい。また、用意
された原料粉末は例えばボールミルを用いて湿式混合す
る。混合は、ボールミルの運転条件にも左右されるが、
20時間程度行なえば均一な混合状態を得ることができ
る。
【0012】原料粉末を混合した後、仮焼きを行なう。
従来には低温焼結が困難であったMgCuZnフェライ
トの低温焼結を可能とするために、仮焼き温度は900
℃以下とする。MgCuZnフェライトを、焼結前の粉
末の粒度分布のピーク位置を1.2μm以下とすること
により低温焼結が可能となること、そして、このような
粒度分布の粉末を得るためには、仮焼き温度を900℃
以下、望ましくは850℃以下と低く抑えることが有効
である。すなわち、仮焼き温度が900℃を超えてしま
うと仮焼き体が硬くなり、Agの融点以下の温度域での
焼結を可能とする粉末の粒度分布を得ることが困難とな
るからである。望ましい仮焼き温度は730〜850℃
である。仮焼きの時間は5〜15時間の範囲で適宜選択
すればよい。
【0013】仮焼き後に仮焼き体は粉砕され、その粉砕
された粉末が焼結される。その粉末の粒度分布を、その
ピーク位置が0.3〜1.2μmの範囲とすることがAg
の融点以下の温度域での焼結にとって重要である。つま
り、粒度分布のピーク位置が1.2μmを超えると低温
焼結、より具体的には940℃以下の温度での焼結が困
難となる。逆に粒度分布のピーク位置が1.2μm以下
であると、940℃以下の温度での焼結における収縮率
が10%以上を確保できるため、十分な特性を有する磁
性フェライトを得ることができる。ただし、0.3μm
未満になると比表面積が大きくなり、積層型フェライト
部品を得るためのペーストやシートを得ることが困難と
なる。望ましい粒度分布のピーク位置は、0.5〜1.0
μmである。なお、このような粒度分布の粉末を得るた
めには粉砕条件を制御すればよいが、特に条件を制御す
ることなく粉砕した後の粉末からこのような粒度分布の
粉末を採集することもできる。ボールミルを用いた場
合、粉砕は60〜80時間程度必要である。以上で得ら
れた粉砕粉末にバインダ等を添加した後に所定の形状に
成形し、しかる後に焼結に供される。
【0014】次に、本発明の積層型フェライト部品につ
いて積層型チップインダクタアレイ1を例にして説明す
る。図1〜図3は積層型チップインダクタアレイ1を示
す図であり、図1はその平面図、図2は図1のA−A断
面図、図3は図1のB−B断面図である。図1〜図3に
示すように、積層型チップインダクタアレイ1は、磁性
フェライト層2および内部電極3とが交互に積層された
多層構造のチップ体5と、このチップ体5の両端部に内
部電極3と引出し電極4を介して電気的に導通するよう
に配置した外部電極6とから構成される。積層型チップ
インダクタアレイ1は、1つのチップ体5内に、4つの
独立した内部電極3を備えている。このように複数の内
部電極3を有すると、使用時に隣接する内部電極3間に
電位差が生じることになるから、耐電圧性が要求される
ことになる。つまり、各々独立した複数の内部電極3を
有する積層型フェライト部品について本発明を適用する
と、その効果を十分に享受することができる。磁性フェ
ライト層2に本発明による磁性フェライト材料を用い
る。つまり、所定組成の磁性フェライト粉末を、バイン
ダおよび溶剤とともに混練して磁性フェライト層2形成
用のペーストを得る。このペーストと内部電極3および
引出し電極4形成用のペースト、とを交互に印刷、積層
した後に焼結して一体のチップ体5を得る。前記バイン
ダとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラ
ール樹脂等の公知のバインダを用いることができる。ま
た、溶剤も、ターピネオール、ブチルカルビトール、ケ
ロシン等の公知の溶剤を用いることができる。バインダ
および溶剤の添加量には制限はない。ただし、バインダ
については1〜5質量部、溶剤については10〜50質
量部の範囲とすることが推奨される。バインダおよび溶
剤の他に、分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等を10質
量部以下の範囲で添加することもできる。分散剤として
は、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エス
テルを添加することができる。また、可塑剤としては、
ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルフ
タリルグリコール酸ブチルを添加することができる。
【0015】磁性フェライト層2は、磁性フェライト層
用シートを用いて形成することもできる。すなわち、本
発明による所定組成の粉末を、ポリビニルブチラールを
主成分とするバインダと、トルエン、キシレン等の溶媒
とともにボールミル中で混練してスラリを得る。このス
ラリを、ポリエステルフィルム等のフィルム上に、例え
ばドクターブレード法により塗布、乾燥して磁性フェラ
イト層用シートを得ることができる。この磁性フェライ
ト層用シートを、内部電極3用のペーストと交互に積層
した後に、焼結すれば多層構造のチップ体5を得ること
ができる。なお、バインダの量に制限はないが、1〜5
質量部の範囲とすることが推奨される。また、分散剤、
可塑剤、誘電体、絶縁体等を10質量部以下の範囲で添
加することもできる。
【0016】内部電極3は、インダクタとして実用的な
品質係数Qを得るために抵抗率の小さいAgまたはAg
合金、例えばAg−Pd合金を用いることが望ましい。
しかし、これに限るものではなく、Cu、Pdまたはこ
れらの合金を用いることもできる。内部電極3を得るた
めのペーストは、AgまたはAg合金の粉末、若しくは
これらの酸化物粉末と、バインダおよび溶剤とを混合、
混練して得ることができる。バインダおよび溶剤として
は、前記磁性フェライト層2を形成するためのペースト
に用いられていたものと同様のものを適用することがで
きる。内部電極3は、各層が長円形状をなし、厚さ方向
に隣接する内部電極3の各層はスパイラル状になって導
通が確保されるので、閉磁路コイル(巻線パターン)を
構成する。外部電極6の材質としては、Ag、Ni、C
u、Ag−Pd合金といった公知の材料を用いることが
できる。外部電極6は、これら材料を印刷法、メッキ
法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等の
各種の方法により形成することができる。
【0017】積層型チップインダクタアレイ1のチップ
体5の寸法には特に制限はない。用途に応じて適宜設定
することができる。一般的には、外形はほぼ直方体形状
であり、寸法としては1.0〜4.5mm×0.5〜3.2
mm×0.6〜1.9mmの範囲のものが多い。また、磁
性フェライト層2の電極間厚さおよびベース厚さにも特
に制限はなく、電極間厚さとしては10〜100μm、
ベース厚さとしては250〜500μm程度で設定でき
る。さらに内部電極3自体の厚さとしては、通常、5〜
30μmの範囲で設定でき、また、巻線パターンのピッ
チは10〜100μm、巻数は1.5〜20.5ターン程
度とすることができる。
【0018】磁性フェライト層2用のペーストまたはシ
ートと内部電極3用のペーストとを交互に積層した後の
焼結温度は、940℃以下とする。940℃を超える
と、磁性フェライト層2中に内部電極3を構成する材料
が拡散して、磁気特性を著しく低下させるおそれがある
からである。本発明の磁性フェライトが低温焼結に適し
ているとはいえ、800℃未満の温度では焼結が不十分
となる。したがって、焼結は800℃以上とすることが
望ましい。望ましい焼結温度は820〜930℃、さら
に望ましくは875〜920℃である。なお、焼結時間
は、0.05〜5時間、望ましくは0.1〜3時間の範囲
で設定すればよい。
【0019】次に、LC複合積層型部品の一実施形態で
あるLC複合部品について説明する。図4はLC複合部
品11の概略断面図である。図4に示すように、LC複
合部品11は、チップコンデンサ部12とチップフェラ
イト部13とを一体化したものである。チップコンデン
サ部12は、セラミックス誘電体層21と内部電極22
とが交互に積層一体化された多層積層構造を有する。こ
の内部電極22間に電位差が生じ、絶縁破壊を起こすお
それがある。セラミックス誘電体層21の材質に制限は
なく、従来公知の種々の誘電体材料を用いることができ
る。本発明においては、焼結温度の低い酸化チタン系誘
電体が望ましいが、チタン酸系複合酸化物、ジルコン酸
系複合酸化物、あるいはこれらの混合物を用いることが
できる。さらに焼結温度を下げるために、ホウケイ酸ガ
ラス等の各種ガラスを添加してもよい。内部電極22と
しては、先に説明した積層型チップインダクタアレイ1
の内部電極3と同様の材料を用いることができる。各内
部電極22は、交互に別の外部電極15に電気的に接続
されている。
【0020】チップフェライト部13は、磁性フェライ
ト層32と電極層33とが交互に積層した積層型チップ
インダクタから構成されている。この基本構成は先に説
明した積層型チップインダクタアレイ1と同様である。
したがって、ここでの詳細な説明は省略する。LC複合
部品11の寸法に制限がないことは先に説明した積層型
チップインダクタアレイ1と同様である。したがって、
用途に応じて適宜設定することができる。通常、ほぼ直
方体の外形を有し、1.6〜10.0mm×0.8〜15.
0mm×1.0〜5.0mm程度の寸法を有している。
【0021】[実施例1]以下本発明を具体的実施例に
基づき説明する。実施例1は、Fe23,CuO,Zn
OおよびMgOを主成分とし、副成分のMn34および
CoOを変動させ、6パターン(実施例1−a〜1−
e、比較例1)の実験を試みた。なお、Mn 34につい
てはMnに換算されたwt%として表示されており、同
様にCoOについてはCoに換算されたwt%として表
示されている。 <実施例1−a(試料No.1〜6)>Mn34を0.0
35wt%に固定し、CoOを0.000〜1.101w
t%まで変動させた(CoO:0.000wt%,0.0
73wt%,0.183wt%,0.367wt%,0.
735wt%,1.101wt%)。 <実施例1−b(試料No.7〜12)>Mn34を0.
138wt%に固定した(CoOの変動量は実施例1−
aと同一)。 <実施例1−c(試料No.13〜18)>Mn34
0.343wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
1−aと同一)。 <実施例1−d(試料No.19〜24)>Mn34
0.544wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
1−aと同一)。 <実施例1−e(試料No.25〜30)>Mn34
0.747wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
1−aと同一)。 <比較例1(試料No.31〜36)>Mn34を1.0
45wt%に固定した(CoOの変動量は実施例1−a
と同一)。
【0022】実施例1−a〜1−eおよび比較例1の実
験結果を以下に示す。 <実施例1−a>下記の混合〜粉砕条件にしたがって表
1に示す6種類の粉砕粉末を得た。表1中、Fe23
CuO,ZnOおよびMgOが主成分をなし、Mn34
およびCoOが副成分をなす。粉砕粉末の粒度分布のピ
ーク位置は0.6μmである。これら粉末を用いて以下
に示す条件により積層型コンデンサを作製し、破壊電圧
(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定を行なった。ま
た、測定用コアを作製して透磁率(μ)および品質係数
(Q)を測定した。測定された結果を表2に示す。ま
た、Co量による破壊電圧(VB)の変動を示すグラフ
を図7(曲線a)に、Co量による絶縁抵抗(IR)の
変動を示すグラフを図8(曲線a)に、Co量による透
磁率(μ)の変動を示すグラフを図9(曲線a)に、ま
たCo量による品質係数(Q)の変動を示すグラフを図
10(曲線a)にそれぞれ示す。
【0023】[混合〜粉砕条件] 混合および粉砕用ポット:ステンレスボールミルポット 混合および粉砕用メディア:スチールボール 混合時間:16時間 仮焼き条件:760℃×10時間 粉砕時間:69時間 [積層型コンデンサの仕様]表1の組成を有する各粉末
100質量部に対して、エチルセルロース2.5質量
部、ターピネオール40質量部を加え、3本ロールにて
混練して磁性フェライト層用ペーストを調整した。一
方、平均粒径0.8μmのAg100質量部に対して、
エチルセルロース2.5質量部、ターピネオール40質
量部を加え、3本ロールにて混練して内部電極用ペース
トを得た。前記磁性フェライト層用ペーストと前記内部
電極用ペーストとを交互に印刷積層した後、890℃で
2時間の焼結を行なって積層型チップコンデンサ41を
得た。図5および図6に積層型チップコンデンサ41を
示す。なお、図5は積層型チップコンデンサ41の側断
面図、図6は図5のC−C断面図である。図5および図
6に示すように、積層型チップコンデンサ41は、磁性
フェライト層42および内部電極43とが交互に積層さ
れた多層構造のチップ体44と、このチップ体44の両
端部に内部電極43と電気的に導通するように配置した
外部電極45とから構成される。この積層型チップコン
デンサ41の寸法は、3.2mm×1.6mm×1.1m
mであり、内部電極43の層数は4層とし積層方向に隣
接する内部電極43間の磁性フェライト層42の厚さd
(図6参照)を60μmとした。外部電極45はAgを
600℃で焼き付けて形成した。
【0024】[破壊電圧(VB)]作製した積層型チッ
プコンデンサ41に、多摩電測(株)製の自動昇圧破壊
試験機(THK−2011ADMP)を用いて、100
V/sec.の速度で電圧を印加しつづけ、積層型チッ
プコンデンサ41が絶縁破壊される電圧を測定した。 [絶縁抵抗(IR)]作製した積層型チップコンデンサ
41の絶縁抵抗(IR)を、ヒューレットパッカード
(株)製の抵抗測定器(HP4329A)を用い、10
Vの電圧を1分15秒間印加して測定した。 [透磁率(μ)、品質係数(Q)]表1に示す6種類の
粉砕粉末を用いてトロイダル形状の焼結体試料を作製し
た。この試料に銅製ワイヤ(線径0.35mm)を20
ターン巻き、測定周波数100KHz、測定電流0.2
mAでLCRメータ(ヒューレットパッカード(株)製
のHP4192A)を用いてインダクタンスを測定し
た。そして、下記の式を用いて透磁率(μ)を求めた。
また、品質係数(Q)については、複素透磁率の実数
μ'および虚数μ"を求め、Q(品質係数)=μ'/μ"に
より算出した。 透磁率μ=(le×L)/(μ0×Ae×N2) le:磁路長 L:試料のインダクタンス μ0:真空の透磁率=4π×10-7(H/m) Ae:
試料の断面積 N:コイルの巻数
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表2および図7曲線aにおいて、Coを含
まない場合(No.1)には破壊電圧(VB)が1.59
kVであるのに対し、焼結体中に占めるCo換算でのC
oの量(以下、Co量)が0.073wt%(No.2)
になると破壊電圧(VB)は4.51kVまで向上する
ことがわかる。Co量が0.183wt%の場合(No.
3)には、破壊電圧(VB)は更に向上して4.63k
Vとなる。Co量が0.367wt%の場合(No.4)
およびCo量が0.735wt%の場合(No.5)にお
いても破壊電圧(VB)は4.0kV以上と良好な値を
示しているが、Co量が1.101wt%の場合(No.
6)には、破壊電圧(VB)は1.34kVとCoを含
まない場合(No.1)よりも破壊電圧(VB)が低下
した。
【0028】さらに表2には、破壊電圧(VB)を磁性
フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値も示
している。ここで、積層型チップコンデンサ41の場
合、積層方向に隣接する内部電極43同士に電位差が生
じる。したがって、この値は電位差の生じている導体間
に存在する磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊
電圧(Vb=VB/d)であり、No.2〜5では30
V以上の破壊電圧(Vb)を得ている。このなかで、N
o.2〜4では、75V以上の特に優れた破壊電圧(V
b)を得ていることが注目される。
【0029】また表2および図8曲線aにおいて、絶縁
抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。つまり、
Coを含まない場合(No.1)には絶縁抵抗(IR)
が222MΩ(2.22×108Ω)であるのに対し、C
o量が0.073wt%(No.2)になると絶縁抵抗
(IR)が6200MΩ(6.20×109Ω)まで急激
に向上する。Co量が0.183wt%の場合(No.
3)には、絶縁抵抗(IR)は更に向上して8100M
Ω(8.10×109Ω)となる。Co量が0.735w
t%の場合(No.5)においても絶縁抵抗(IR)は
6800MΩ(6.80×109Ω)と良好な値を示して
いるが、Co量が1.101wt%(No.6)になると
絶縁抵抗(IR)は110MΩ(1.10×108Ω)ま
で低下してしまう。
【0030】次に、表2,図9曲線a,図10曲線aを
用いて、実施例1−aによるフェライト焼結部材のCo
量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)の相
関関係について説明する。表2において、Coを含まな
い場合(No.1)には、透磁率(μ)が264と良好
な値を示しているのに対し、品質係数(Q)は39と低
い値となっている。ところが、Co量が0.073wt
%(No.2)になると、透磁率(μ)が255と若干
減少するものの、品質係数(Q)は94まで向上するこ
とがわかる(図9曲線a,図10曲線a参照)。Co量
が0.183wt%の場合(No.3)には品質係数
(Q)は更に向上して112となり、0.367wt%
の場合(No.4)および0.735wt%の場合(N
o.5)においても品質係数(Q)は100以上と良好
な値を示している。しかし、Co量が1.101wt%
の場合(No.6)には、Coを含まない場合(No.
1)と同レベルの品質係数(Q)まで低下してしまう。
【0031】<実施例1−b>実施例1−bは、表3に
示す配合組成で、実施例1−aと同様の製造条件で積層
型コンデンサを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵
抗(IR)の測定を行なった。また、測定用コアを作製
して透磁率(μ)および品質係数(Q)を測定した。測
定された結果を表4に示す。また、Co量による破壊電
圧(VB)の変動を示すグラフを図7(曲線b)に、C
o量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図8
(曲線b)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示す
グラフを図9(曲線b)に、またCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフを図10(曲線b)にそれぞ
れ示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】表4および図7曲線bにおいて、Coを含
まない場合(No.7)には破壊電圧(VB)が2.08
kVであるのに対し、焼結体中に占めるCo量が0.0
73wt%(No.8)になると破壊電圧(VB)は3.
95kVまで向上することがわかる。Co量が0.18
3wt%の場合(No.9)には、破壊電圧(VB)は
更に向上して4.21kVとなる。Co量が0.735w
t%(No.11)を超えると破壊電圧(VB)は急激
に低下し、Co量が1.101wt%の場合(No.1
2)には、1.24kVとCoを含まない場合(No.
7)よりも破壊電圧(VB)が低下した。
【0035】さらに表4には、破壊電圧(VB)を磁性
フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、つ
まり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。Coを含まない場合
(No.7)には破壊電圧(Vb)が34.7Vであるの
に対し、No.8〜11はいずれも50V以上という優
れた破壊電圧(Vb)を得ている。
【0036】また表4および図8曲線bにおいて、絶縁
抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。つまり、
Coを含まない場合(No.7)には絶縁抵抗(IR)
が969MΩ(9.69×108Ω)であるのに対し、C
o量が0.073wt%(No.8)になると絶縁抵抗
(IR)が5500MΩ(5.50×109Ω)まで急激
に向上する。Co量が0.183wt%の場合(No.
9)には、絶縁抵抗(IR)は更に向上して6690M
Ω(6.69×109Ω)となる。Co量が0.367w
t%の場合(No.10)およびCo量が0.735wt
%(No.11)の場合においても絶縁抵抗(IR)は
それぞれ4800MΩ(4.80×109Ω)、3500
MΩ(3.50×109Ω)と良好な値を示しているが、
Co量が0.735wt%(No.11)を超えると絶縁
抵抗(IR)は急激に低下し、Co量が1.101wt
%の場合(No.12)には210MΩ(2.10×10
8Ω)まで低下してしまう。
【0037】次に、表4,図9曲線b,図10曲線bを
用いて、実施例1−bによるフェライト焼結部材のCo
量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)の相
関関係について説明する。表4において、Coを含まな
い場合(No.7)の透磁率(μ)は278、品質係数
(Q)は45である。ところが、Co量が0.073w
t%(No.8)になると、透磁率(μ)が260と若
干低下するものの、品質係数(Q)は86まで向上する
ことがわかる(図9曲線b,図10曲線b参照)。Co
量が0.183wt%の場合(No.9)には品質係数
(Q)は更に向上して88となり、0.367wt%の
場合(No.10)および0.735wt%の場合(N
o.11)においても品質係数(Q)は60以上と良好
な値を示している。しかし、Co量が1.101wt%
の場合(No.12)には、品質係数(Q)は33まで
低下してしまう。
【0038】<実施例1−c>実施例1−cは、表5に
示す配合組成で、実施例1−aと同様の製造条件で積層
型コンデンサを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵
抗(IR)の測定を行なった。また、測定用コアを作製
して透磁率(μ)および品質係数(Q)を測定した。測
定された結果を表6に示す。また、Co量による破壊電
圧(VB)の変動を示すグラフを図7(曲線c)に、C
o量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図8
(曲線c)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示す
グラフを図9(曲線c)に、またCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフを図10(曲線c)にそれぞ
れ示す。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】表6および図7曲線cにおいて、Coを含
まない場合(No.13)には破壊電圧(VB)が3.0
7kVであるのに対し、焼結体中に占めるCo量が0.
073wt%(No.14)になると破壊電圧(VB)
は3.61kVまで向上することがわかる。Co量が0.
183wt%(No.15)になると破壊電圧(VB)
は更に向上し、4.40kVという優れた破壊電圧(V
B)を示す。しかし、この値をピークに破壊電圧(V
B)は次第に低下し、Co量が0.735wt%(No.
17)の場合には2.74kVまで低下した。さらに、
Co量が1.101wt%の場合(No.18)には、破
壊電圧(VB)は1.48kVまで低下した。この値
は、Coを含まない場合(No.13)の破壊電圧(V
B)3.07kVのおよそ1/2である。
【0042】さらに表6には、破壊電圧(VB)を磁性
フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、つ
まり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.14〜17は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ている。その中でも、Co量が0.183wt%の場合
(No.15)には70V以上と特に優れた破壊電圧
(Vb)を得ていることが注目される。
【0043】また表6および図8曲線cにおいて、絶縁
抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。つまり、
Coを含まない場合(No.13)には絶縁抵抗(I
R)が3600MΩ(3.60×109Ω)であるのに対
し、焼結体中に占めるCo量が0.073wt%(No.
14)になると絶縁抵抗(IR)が4800MΩ(4.
80×109Ω)まで向上する。Co量が0.183wt
%の場合(No.15)には、絶縁抵抗(IR)は更に
向上して6100MΩ(6.10×109Ω)となるが、
Co量が0.735wt%(No.17)を超えると絶縁
抵抗(IR)は急激に低下し、Co量が1.101wt
%の場合(No.18)には220MΩ(2.20×10
8Ω)まで低下してしまう。
【0044】次に、表6,図9曲線c,図10曲線cを
用いて、実施例1−cによるフェライト焼結部材のCo
量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)の相
関関係について説明する。表6および図9曲線cに示す
ように、Coを添加することにより透磁率(μ)は若干
減少するものの、No.14〜17においては品質係数
(Q)はいずれも40以上と良好な値を示している(表
6および図10曲線c参照)。このなかで、Co量が
0.073wt%(No.14)の場合およびCo量が
0.183wt%(No.15)の場合には、品質係数
(Q)はともに80以上と特に良好な値を示している。
ところが、Co量が0.735wt%(No.17)を超
えると、品質係数(Q)は大幅に低下し、Co量が1.
101wt%(No.18)の場合には、品質係数
(Q)は32と低い値となってしまう。
【0045】<実施例1−d>実施例1−dは、表7に
示す配合組成で、実施例1−aと同様の製造条件で積層
型コンデンサを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵
抗(IR)の測定を行なった。また、測定用コアを作製
して透磁率(μ)および品質係数(Q)を測定した。測
定された結果を表8に示す。また、Co量による破壊電
圧(VB)の変動を示すグラフを図7(曲線d)に、C
o量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図8
(曲線d)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示す
グラフを図9(曲線d)に、またCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフを図10(曲線d)にそれぞ
れ示す。
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】表8および図7曲線dにおいて、Coを含
まない場合(No.19)には破壊電圧(VB)が2.7
1kVであるのに対し、焼結体中に占めるCo量が0.
073wt%(No.20)になると破壊電圧(VB)
は3.50kVまで向上することがわかる。Co量が0.
183wt%(No.21)になると破壊電圧(VB)
は更に向上して3.67kVとなる。しかし、この値を
ピークに破壊電圧(VB)は次第に低下し、Co量が
0.735wt%(No.23)の場合の破壊電圧(V
B)は2.41kVとなり、Co量が1.101wt%の
場合(No.24)には、1.33kVにまで低下してし
まう。
【0049】さらに表8には、破壊電圧(VB)を磁性
フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、つ
まり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.20〜23は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ている。このなかで、No.20〜22では、50V以
上の特に優れた破壊電圧(Vb)を得ていることが注目
される。
【0050】また表8および図8曲線dにおいて、絶縁
抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。つまり、
Coを含まない場合(No.19)には絶縁抵抗(I
R)が2730MΩ(2.73×109Ω)であるのに対
し、焼結体中に占めるCo量が0.073wt%(No.
20)になると絶縁抵抗(IR)が4500MΩ(4.
50×109Ω)まで急激に向上する。Co量が0.18
3wt%の場合(No.21)には、絶縁抵抗(IR)
は更に向上して5500MΩ(5.50×109Ω)とな
るが、Co量が1.101wt%の場合(No.24)に
は180MΩ(1.80×108Ω)という低い値まで低
下してしまう。
【0051】次に、表8,図9曲線d,図10曲線dを
用いて、実施例1−dによるフェライト焼結部材のCo
量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)の相
関関係について説明する。表8および図9曲線dに示す
ように、Coを添加することにより透磁率(μ)は若干
低下する。一方、表8および図10曲線dに示されるよ
うに、No.20〜23では品質係数(Q)はいずれも
40以上であるのに対し、Co量が1.101wt%
(No.24)の場合には品質係数(Q)は28にまで
低下してしまう。
【0052】<実施例1−e>実施例1−eは、表9に
示す配合組成で、実施例1−aと同様の製造条件で積層
型コンデンサを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵
抗(IR)の測定を行なった。また、測定用コアを作製
して透磁率(μ)および品質係数(Q)を測定した。測
定された結果を表10に示す。また、Co量による破壊
電圧(VB)の変動を示すグラフを図7(曲線e)に、
Co量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図
8(曲線e)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示
すグラフを図9(曲線e)に、またCo量による品質係
数(Q)の変動を示すグラフを図10(曲線e)にそれ
ぞれ示す。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】表10および図7曲線eにおいて、Coを
含まない場合(No.25)には破壊電圧(VB)が2.
35kVであるのに対し、焼結体中に占めるCo量が
0.073wt%(No.26)になると破壊電圧(V
B)は3.08kVまで向上することがわかる。Co量
が0.183wt%(No.27)になると破壊電圧(V
B)は更に向上して3.29kVとなる。しかし、この
値をピークに破壊電圧(VB)は次第に低下し、Co量
が0.735wt%の場合(No.29)には2.20k
Vまで破壊電圧(VB)は低下した。Co量が0.73
5wt%(No.29)を超えると破壊電圧(VB)は
急激に低下し、Co量が1.101wt%(No.30)
になると、破壊電圧(VB)は1.12kVにまで低下
してしまう。
【0056】さらに表10には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.26〜29は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ているが、Co量が1.101wt%の場合(No.3
0)には、破壊電圧(Vb)は18.7Vまで低下して
しまう。
【0057】また表10および図8曲線eにおいて、絶
縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。つま
り、Coを含まない場合(No.25)には絶縁抵抗
(IR)が2100MΩ(2.10×109Ω)であるの
に対し、焼結体中に占めるCo量が0.073wt%
(No.26)になると絶縁抵抗(IR)が3800M
Ω(3.80×109Ω)まで向上する。Co量が0.1
83wt%の場合(No.27)には、絶縁抵抗(I
R)は更に向上して4400MΩ(4.40×109Ω)
となる。この値をピークに絶縁抵抗(IR)は次第に低
下し、Co量が1.101wt%の場合(No.30)に
はわずか100MΩ(1.00×108Ω)まで低下して
しまう。
【0058】次に、表8,図9曲線e,図10曲線eを
用いて、実施例1−eによるフェライト焼結部材のCo
量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)の相
関関係について説明する。表10に示すように、Coを
添加することにより透磁率(μ)は若干低下するもの
の、No.26〜29においては品質係数(Q)はいず
れも40以上と良好な値を示している。ところが、Co
量が0.735wt%(No.29)を超えると品質係数
(Q)は急激に低下し、Co量が1.101wt%(N
o.30)の場合には21と低い値となってしまう。
【0059】<比較例1>比較例1は、表11に示す配
合組成で、実施例1−aと同様の製造条件で積層型コン
デンサを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(I
R)の測定を行なった。また、測定用コアを作製して透
磁率(μ)および品質係数(Q)を測定した。測定され
た結果を表12に示す。また、Co量による破壊電圧
(VB)の変動を示すグラフを図7(曲線f)に、Co
量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図8
(曲線f)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示す
グラフを図9(曲線f)に、またCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフを図10(曲線f)にそれぞ
れ示す。
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
【0062】図7において、実施例1−a〜1−eにか
かる曲線a〜曲線eと比較例1にかかる曲線fを対比す
ると、曲線fではCo添加による破壊電圧(VB)の上
昇率がほとんどみられない。また図8〜10を看ると、
比較例1にかかる曲線fは、絶縁抵抗(IR),透磁率
(μ)および品質係数(Q)においても、曲線a〜曲線
eと比較して低いレベルにあることが明らかである。
【0063】<実施例1の評価>以上、実施例1−a〜
1−e,比較例1の破壊電圧(VB),絶縁抵抗(I
R),透磁率(μ)および品質係数(Q)の測定結果を
示した。以下、これらの結果に基づき、実施例1の評価
を行なう。 破壊電圧(VB)についての評価 最初に図7を用いて、破壊電圧(VB)についての評価
を行なう。図7に示すように、破壊電圧(VB)は曲線
a〜曲線fの順位になっている。そして、曲線a〜曲線
eと比べて、曲線fが低いレベルにあることは一目瞭然
である。ここで曲線aのMn量は0.070wt%、曲
線bのMn量は0.168wt%、曲線cのMn量は0.
357wt%、曲線dのMn量は0.544wt%、曲
線eのMn量は0.732wt%、曲線fのMn量は1.
028wt%である。よって、良好な破壊電圧(VB)
を得るためには、焼結体中に占めるMn量を0.75w
t%以下(0を含まず)とする必要があることがわかっ
た。また、Mn量が本発明で推奨する範囲にある曲線a
〜曲線eにおいて、焼結体中に占めるCo量が0.73
5wt%の場合には、破壊電圧(VB)は2.0kV以
上と良好な値を示していることがわかる。ところがCo
量が0.735wt%を超えて1.101wt%になる
と、破壊電圧(VB)は1.5kV以下にまで低下し
た。この傾向から、2.0kV以上の優れた破壊電圧
(VB)を得るためには、焼結体中に占めるMn量を
0.75wt%以下(0を含まず)とするとともに、焼
結体中に占めるCo量を本発明で推奨する所定の範囲、
すなわち0.75wt%以下(0を含まず)とする必要
があることが明らかとなった。
【0064】次に、焼結体中に占めるMn量およびCo
量がともに本発明で推奨する範囲において、特に優れた
破壊電圧(VB)を得ることができる範囲を検討する。
焼結体中に占めるCo量が0.75wt%以下の範囲に
おいて、曲線aおよび曲線bが極めて良好な破壊電圧
(VB)を得ている。曲線aは4.0kV以上の非常に
優れた破壊電圧(VB)を呈しており、また曲線bも、
曲線aほどではないにしても、広範囲にわたって3.0
kV以上の非常に優れた破壊電圧(VB)を得ているこ
とが注目される。したがって、特に優れた破壊電圧(V
B)を得るためには、焼結体中に占めるMn量を0.3
wt%以下とし、かつCo量を0.75wt%以下との
範囲とすることが望ましい。さらに望ましいMn量は
0.1wt%以下である。また、Co量が約0.2wt%
のときに、曲線aおよび曲線bともにピーク値を得てい
ることから、Co量の最適範囲は0.4wt%以下とい
える。
【0065】曲線c〜曲線eも、曲線aおよび曲線bと
同様に、Co量が約0.2wt%のときに破壊電圧(V
B)がピークとなる。しかもその値はいずれも3.0k
V以上と、良好な値を示している。一方、曲線aおよび
曲線bはCo量が0.75wt%前後のときにおいても
3.0kV以上の高い破壊電圧(VB)を示していたの
に対し、曲線c〜曲線eはCo量が0.735wt%に
なると破壊電圧(VB)が3.0kVより低い値となっ
てしまう。この傾向から、焼結体中に占めるMn量が
0.3wt%以上であるときには、Co量を0.6wt%
以下、さらには0.4wt%以下とすることが望まし
い。より望ましいCo量は0.3wt%以下である。焼
結体中に占めるMn量が0.3wt%以上であるときに
は、Co量を0.3wt%以下とすることにより、3.0
kV以上の優れた破壊電圧(VB)を得ることができ
る。
【0066】絶縁抵抗(IR)についての評価 次に、図8を用いて、破壊電圧(VB)についての評価
を行なう。図8に示されるように、絶縁抵抗(IR)は
曲線a〜曲線fの順位となっている。そして、破壊電圧
(VB)の場合と同様に、曲線a〜曲線fのなかで曲線
fの絶縁抵抗(IR)のレベルは極めて低いものとなっ
ている。したがって、良好な絶縁抵抗(IR)を得るた
めにも、焼結体中に占めるMn量を0.75wt%以下
(0を含まず)とすることが必要であるといえる。ま
た、Mn量,Co量がともに本発明で推奨する範囲、す
なわち0.75wt%以下にある曲線a〜曲線eにおい
て、特に良好な絶縁抵抗(IR)を得ているのは曲線a
および曲線bである。よって、焼結体中に占めるMn量
を0.3wt%以下、さらに望ましくは0.1wt%以下
とすることにより、非常に優れた絶縁抵抗(IR)を得
ることが可能となる。さらに、絶縁抵抗(IR)につい
ても焼結体中に占めるCo量が約0.2wt%のときに
ピーク値を得ていることから、Co量の最適範囲は0.
6wt%以下、さらには0.4wt%以下であるといえ
る。したがって、焼結体中に占めるMn量を0.3wt
%以下とし、かつCo量を0.6wt%以下とすること
によって、特に優れた絶縁抵抗(IR)を得ることがで
きる。
【0067】透磁率(μ)についての評価 次に、図9を用いて、透磁率(μ)についての評価を行
なう。図9では、曲線a〜曲線eがほぼ同等レベルにあ
り、曲線fのみが低いレベルにあることが示されてい
る。したがって、良好な透磁率(μ)を得るためにも、
焼結体中に占めるMn量を0.75wt%以下(0を含
まず)とすることが必要であることが判明した。また、
曲線a〜曲線eにおいても、100以上の良好な透磁率
(μ)を確保するためには、焼結体中に占めるCo量を
本発明で推奨する範囲、すなわち0.75wt%以下と
することが望ましい。Co量が0.75wt%を超えて
1.101wt%になると、曲線a〜曲線eの透磁率
(μ)は100以下の値を示すこととなる。
【0068】品質係数(Q)についての評価 次に、図10を用いて、品質係数(Q)についての評価
を行なう。図10を看ると、曲線aがとりわけ良好な品
質係数(Q)を示しており、その一方で曲線fが低いレ
ベルにあることが一目でわかる。したがって、良好な品
質係数(Q)を得るためには、焼結体中に占めるMn量
を0.75wt%以下(0を含まず)とする必要がある
ことがわかった。また、曲線b〜曲線eは、ほぼ同じよ
うな曲線を描いており、レベルに大差はないが曲線b〜
曲線eの順に優れた品質係数(Q)を得ている。したが
って、良好な品質係数(Q)を得るためには、焼結体中
に占めるMn量を0.75wt%以下、さらには0.3w
t%以下とすればよい。より望ましいMn量は0.1w
t%以下である。この範囲では、特に優れた品質係数
(Q)を得ることができる。
【0069】次にCo量に着目すると、Co量が0.7
5wt%以下(0を含まず)の範囲にある場合には、曲
線a〜曲線eは40以上という優れた品質係数(Q)を
呈する。一方、Co量が0.75wt%を超えて1.10
1wt%になると、品質係数(Q)は40以下となって
しまう。また、曲線a〜曲線eを見れば、Co量が約
0.6wt%のときには60以上の非常に優れた品質係
数(Q)を示し、Co量が約0.2wt%のときに品質
係数(Q)のピーク値を得ていることがわかる。したが
って、優れた品質係数(Q)を得るためには、Co量を
0.75wt%以下、さらにはCo量を0.6wt%以
下、より望ましくは0.4wt%以下とすればよい。
【0070】以上説明の通り、焼結体中に占めるMn量
を0.75wt%以下(0を含まず)とし、かつCo量
を0.75wt%以下(0を含まず)とすることによ
り、40以上の優れた品質係数(Q)を得ることができ
る。しかも、Mn量が0.3wt%以下およびCo量が
0.75wt%以下である場合には、100以上の優れ
た品質係数(Q)を得ることも可能となる。また、Mn
量が0.3wt%以上の場合にも、Co量を0.6wt%
以下、より望ましくはCo量を0.4wt%以下とする
ことによって、Coを含まない場合よりも大幅に良好な
品質係数(Q)を得ることができる。
【0071】<実施例1の総合評価>実施例1により、
焼結体中に占めるMn量が0.75wt%以下(0を含
まず)であり、かつCo量が0.75wt%以下(0を
含まず)の範囲において、優れた破壊電圧(VB),絶
縁抵抗(IR),透磁率(μ)および品質係数(Q)を
得ることができることが明らかとなった。この範囲で特
に優れた破壊電圧(VB),絶縁抵抗(IR)および品
質係数(Q)を得るためには、焼結体中に占めるMn量
を0.3wt%以下とすることが望ましい。また、焼結
体中に占めるMn量が0.3wt%以上の場合において
も、Co量を0.6wt%以下、さらには0.4wt%以
下とすることによって、優れた破壊電圧(VB),絶縁
抵抗(IR)および品質係数(Q)を得ることが可能と
なる。
【0072】以上、実施例1の破壊電圧(VB),絶縁
抵抗(IR),透磁率(μ)および品質係数(Q)の測
定結果を示したが、次に、表13を用いて加速寿命試験
(HALT)およびCu偏析の面積率の測定結果を示
す。試料としては、実施例1−aにおけるNo.1およ
びNo.3、実施例1−cにおけるNo.16、実施例1
−dにおけるNo.21、比較例1におけるNo.36を
用いた。これらの粉末を用いて実施例1と同様の条件に
より積層型コンデンサを作製し、加速寿命試験(HAL
T)の測定を行なった。また、焼結体組織における元素
分布を電子線プローブ・マイクロ・アナライザ(EPM
A)によって観察し、焼結体組織に占めるCu偏析の面
積率を算出した。 [加速寿命試験(HALT)]作製した積層型チップコ
ンデンサ41に、175℃の高温下で80Vの電圧を4
8時間印加した後に不良となるか否か観察した。なお、
観察したサンプルは、各々20個である。 [EPMA測定条件、Cu偏析の面積率]電子線プロー
ブ・マイクロ・アナライザ(EPMA)として、日本電
子(株)製のJCMA733を用いて以下の条件で組織観
察を行なった。また、この条件で測定した場合に、所定
の測定点のカウント数が(測定点全体のカウント数の平
均値×1.3倍)以上になったとき、その測定点をCu
の偏析とし、Cuの偏析の総数を全測定点の数で割って
100をかけた値を組織に占めるCu偏析の面積率(C
u偏析率)とした。 Cu偏析の面積率(%)=100×(Cu偏析の点数)
/(全測定点数) (測定条件) 加速電圧:20kV 照射電流:1×107A 照射時間:50ms/point 測定点:X方向 250点 , Y方向 250点 測定範囲:X方向 250点×0.201μm=50.2
5μm Y方向 250点×0.196μm=49μm 分光結晶:LiF
【0073】
【表13】
【0074】Coを含まないNo.1とCo量が0.18
3wt%であるNo.3を対比すると、No.3において
不良サンプル数が激減していることがわかる。No.1
およびNo.3は主成分の組成が同一であり、副成分と
してのMn量も0.035wt%と等しい。よって、不
良サンプル数の激減には、Co量が関係していることが
明らかとなった。No.16では、175℃の高温下で
80Vの電圧を24時間印加した後においても不良サン
プル数0と、極めて良好な結果を示している。これによ
り、MgCuZnフェライトに副成分としてMnおよび
Coを約0.35wt%ずつ添加することにより、非常
に優れた耐久性を示す部品が得られることがわかった。
また、No.21でも10時間印加した後の不良サンプ
ル数0と、No.3と同等の良好な結果を得ている。一
方、Mn量およびCo量がともに0.75wt%を超え
ているNo.36では、No.1と同レベルにまで不良サ
ンプル数が増加してしまう。この結果から、Mn量およ
びCo量ともに本発明で推奨する所定の範囲、すなわち
Mn量:0.75wt%以下(0を含まず)およびCo
量:0.75wt%以下(0を含まず)の場合に、耐久
性に非常に優れた部品が得られることがわかった。
【0075】さらに表13には焼結体中に占めるCu偏
析の面積率(以下、Cu偏析率)も示してある。Cu偏
析率が1.3%(No.36)から5.6%(No.21)
まで増加すると不良サンプル数が激減する。そして、C
u偏析率が8.4%(No.16)および13.2%(N
o.3)の場合においても不良サンプル数が少ないこと
がわかる。この結果から、Cu偏析率が本発明で推奨す
る所定の範囲、つまり1.5〜15.0%の範囲にあると
きに耐久性に優れた部品が得られることがわかった。次
に、表13のCu偏析率の欄およびMn量,Co量の欄
を対比して、Mn量とCu偏析率との関係、Co量とC
u偏析率との関係について述べる。Coを含まないN
o.1とCo量が0.183wt%であるNo.3を対比
すると、No.3のCu偏析率の方が若干高い値となっ
ている。No.1とNo.3は主成分および副成分として
のMn量が等しいから、Co量の増加に伴ってCu偏析
率が上昇することがわかった。一方、主成分および副成
分としてのCo量が等しく、Mn量のみ異なるNo.3
(Mn量:0.035wt%)とNo.21(Mn量:
0.544wt%)を対比すると、No.21の方がCu
偏析率の値が低くなっている。この結果から、Mn量の
増加に伴ってCu偏析率が低下することがわかった。
【0076】また表13において、Cu偏析率が1.3
%の場合(No.36)には破壊電圧(VB)が1.16
kVであるのに対し、Cu偏析率が5.6%(No.2
1)になると破壊電圧(VB)は3.67kVまで向上
する。Cu偏析率が8.4%(No.16)の場合もCu
偏析率が5.6%(No.21)の場合とほぼ同じレベル
の優れた破壊電圧(VB)を得ている。Cu偏析率が1
3.2%の場合(No.3)には、破壊電圧(VB)は更
に向上して4.63kVとなる。この傾向から、Mnお
よびCoを所定量含み、かつCu偏析率が1.5〜15.
0%の範囲にある場合に、破壊電圧(VB)の向上を図
れることがわかった。また、この範囲で特に高い破壊電
圧(VB)を得るためには、Cu偏析率は5.0〜15.
0%の範囲とすることが望ましい。
【0077】以下に示す実施例2は、MgOの一部をN
iOで置換した場合の破壊電圧(VB),絶縁抵抗(I
R),透磁率(μ)および品質係数(Q)を確認するこ
とを目的として行なわれた。 [実施例2]実施例2では、Fe23,CuO,Zn
O、MgOおよびNiOを主成分とした。そして実施例
1と同様に、副成分のMn34およびCoOを変動さ
せ、6パターン(実施例2−a〜2−e、比較例2)の
実験を試みた。 <実施例2−a(試料No.37〜42)>Mn34
0.055wt%に固定し、CoOを0.004〜1.0
58wt%まで変動させた(CoO:0.004wt
%,0.083wt%,0.195wt%,0.431w
t%,0.718wt%,1.058wt%)。 <実施例2−b(試料No.43〜48)>Mn34
0.155wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
2−aと同一)。 <実施例2−c(試料No.49〜54)>Mn34
0.350wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
2−aと同一)。 <実施例2−d(試料No.55〜60)>Mn34
0.548wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
2−aと同一)。 <実施例2−e(試料No.61〜66)>Mn34
0.739wt%に固定した(CoOの変動量は実施例
2−aと同一)。 <比較例2(試料No.67〜72)>Mn34を1.0
35wt%に固定した(CoOの変動量は実施例2−a
と同一)。
【0078】実施例2−a〜2−eおよび比較例2の実
験結果を以下に示す。 <実施例2−a>表14に示す配合組成で、実施例1と
同様の製造条件で積層型コンデンサを作製し、破壊電圧
(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定を行なった。ま
た、測定用コアを作製して透磁率(μ)および品質係数
(Q)を測定した。測定された結果を表15に示す。ま
た、Co量による破壊電圧(VB)の変動を示すグラフ
を図11(曲線a)に、Co量による絶縁抵抗(IR)
の変動を示すグラフを図12(曲線a)に、Co量によ
る透磁率(μ)の変動を示すグラフを図13(曲線a)
に、またCo量による品質係数(Q)の変動を示すグラ
フを図14(曲線a)にそれぞれ示す。
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】表15および図11曲線aにおいて、焼結
体中に占めるCo量が0.004wt%の場合(No.3
7)の破壊電圧(VB)は1.79kVである。Co量
が0.083wt%(No.38)になると破壊電圧(V
B)は3.75kVまで向上し、Co量が0.195wt
%(No.39)になると破壊電圧(VB)は更に向上
して4.02kVとなる。Co量が0.431wt%の場
合(No.40)およびCo量が0.718wt%の場合
(No.41)においても破壊電圧(VB)は3.5kV
以上と良好な値を示している。ところが、Co量が0.
718wt%(No.41)を超えると破壊電圧(V
B)は急激に低下し、Co量が1.058wt%の場合
(No.42)には、破壊電圧(VB)は1.60kVま
で低下した。
【0082】さらに表15には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.38〜41は
いずれも60V以上という非常に優れた破壊電圧(V
b)を得ている。No.38〜41よりは劣るものの、
Co量が0.004wt%の場合(No.37)にも2
9.9Vという良好な破壊電圧(Vb)を得ている。
【0083】また表15および図12曲線aにおいて、
絶縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。Co
量が0.004wt%の場合(No.37)の絶縁抵抗
(IR)は533MΩ(5.33×108Ω)である。C
o量が0.083wt%(No.38)になると絶縁抵抗
(IR)が8110MΩ(8.11×109Ω)まで向上
し、Co量が0.195wt%の場合(No.39)に
は、絶縁抵抗(IR)は更に向上して9160MΩ
(9.16×109Ω)となる。一方、Co量が0.71
8wt%(No.41)を超えると絶縁抵抗(IR)は
急激に低下し、Co量が1.058wt%の場合(No.
42)には838MΩ(8.38×108Ω)まで低下し
た。ここで、表15と表2(実施例1−a)を比較する
と、表15において絶縁抵抗(IR)が大幅に向上して
いることがわかる。表2において最も良好な結果を得て
いるのは、Co量が0.183wt%(No.3)の場合
であり、このときの絶縁抵抗(IR)は8100MΩ
(8.10×109Ω)である。これに対し、表15では
Co量が0.195wt%の場合(No.39)に絶縁抵
抗(IR)は9160MΩ(9.16×109Ω)、Co
量が0.083wt%(No.38)および0.431w
t%(No.40)の場合にも8100MΩ以上の結果
を得ている。
【0084】次に、表15,図13曲線a,図14曲線
aを用いて、実施例2−aによるフェライト焼結部材の
Co量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)
の相関関係について説明する。表15において、Co量
が0.004wt%の場合(No.37)には、透磁率
(μ)が334、品質係数(Q)が40といずれも良好
な値を示している。Co量が0.083wt%(No.3
8)になると、透磁率(μ)が269と低下するもの
の、品質係数(Q)は104まで向上することがわかる
(図13曲線a,図14曲線a参照)。Co量が0.1
95wt%の場合(No.39)には品質係数(Q)は
更に向上して114となり、0.431wt%の場合
(No.40)および0.718wt%の場合(No.4
1)においても品質係数(Q)は80以上と良好な値を
示している。その中でも、No.38〜40では品質係
数(Q)が100以上という値を示しており、極めて良
好な結果を得ている。また、No.39〜41において
は、透磁率(μ)もすべて100以上と良好な値を示し
ている。一方、Co量が0.718wt%(No.41)
を超えると、透磁率(μ)が大幅に低下し、Co量が
1.058wt%の場合(No.42)には、透磁率
(μ)は93まで低下してしまう。
【0085】<実施例2−b>表16に示す配合組成
で、実施例1と同様の製造条件で積層型コンデンサを作
製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定
を行なった。また、測定用コアを作製して透磁率(μ)
および品質係数(Q)を測定した。また、Co量による
破壊電圧(VB)の変動を示すグラフを図11(曲線
b)に、Co量による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグ
ラフを図12(曲線b)に、Co量による透磁率(μ)
の変動を示すグラフを図13(曲線b)に、またCo量
による品質係数(Q)の変動を示すグラフを図14(曲
線b)にそれぞれ示す。
【0086】
【表16】
【0087】
【表17】
【0088】表17および図11曲線bにおいて、焼結
体中に占めるCo量が0.004wt%の場合(No.4
3)の破壊電圧(VB)は2.27kVであり、良好な
値を示している。Co量が0.083wt%(No.4
4)になると破壊電圧(VB)は3.65kVまで向上
し、Co量が0.195wt%(No.45)になると破
壊電圧(VB)は更に向上して3.70kVとなる。こ
の値をピークとして破壊電圧(VB)は次第に低下する
ものの、Co量が0.431wt%の場合(No.46)
およびCo量が0.718wt%の場合(No.47)に
も、3.0kV以上の優れた破壊電圧(VB)を得てい
る。ところがCo量が0.718wt%(No.47)を
超えると破壊電圧(VB)は急激に低下し、Co量が
1.058wt%の場合(No.48)には1.64kV
まで低下してしまう。
【0089】さらに表17には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.43〜47は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ており、このなかで、No.44〜47がいずれも50
V以上という極めて良好な破壊電圧(Vb)を得ている
ことが注目される。
【0090】また表17および図12曲線bを看ると、
絶縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有していることが
わかる。Co量が0.004wt%の場合(No.43)
の絶縁抵抗(IR)は1310MΩ(1.31×10
9Ω)である。Co量が0.083wt%(No.44)
になると絶縁抵抗(IR)が7560MΩ(7.56×
109Ω)まで向上し、Co量が0.195wt%の場合
(No.45)には、絶縁抵抗(IR)は更に向上して
8220MΩ(8.22×109Ω)となる。Co量が
0.718wt%(No.47)を超えると絶縁抵抗(I
R)は急激に低下し、Co量が1.058wt%の場合
(No.48)には901MΩ(9.01×108Ω)ま
で低下してしまう。
【0091】次に、表17,図13曲線b,図14曲線
bを用いて、実施例2−bによるフェライト焼結部材の
Co量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)
の相関関係について説明する。表17および図13曲線
bを看ると、Co量が0.004wt%の場合(No.4
3)に透磁率(μ)が最も良好であり、Co量の増加に
伴い、透磁率(μ)が次第に低下することがわかる。一
方、表17および図14曲線bに示すように、Co量の
増加に伴い、品質係数(Q)が向上する。Co量が0.
004wt%の場合(No.43)の品質係数(Q)は
49である。このCo量でも良好な値を示しているが、
Co量が0.083wt%(No.44)になると、品質
係数(Q)は93まで向上することがわかる。また、N
o.45〜47においても品質係数(Q)が60以上と
良好な結果を得ているが、Co量が1.058wt%
(No.48)になると、品質係数(Q)は40まで低
下した。
【0092】<実施例2−c>表18に示す配合組成
で、実施例1と同様の製造条件で積層型コンデンサを作
製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定
を行なった。また、測定用コアを作製して透磁率(μ)
および品質係数(Q)を測定した。測定された結果を表
19に示す。また、Co量による破壊電圧(VB)の変
動を示すグラフを図11(曲線c)に、Co量による絶
縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図12(曲線c)
に、Co量による透磁率(μ)の変動を示すグラフを図
13(曲線c)に、またCo量による品質係数(Q)の
変動を示すグラフを図14(曲線c)にそれぞれ示す。
【0093】
【表18】
【0094】
【表19】
【0095】表19および図11曲線cにおいて、焼結
体中に占めるCo量が0.004wt%の場合(No.4
9)の破壊電圧(VB)は2.89kVであり、良好な
値を示している。Co量が0.083wt%(No.5
0)になると破壊電圧(VB)は3.31kVまで向上
し、Co量が0.195wt%の場合(No.51)に
は、破壊電圧(VB)は更に向上して3.72kVとな
る。ところが、Co量が0.718wt%(No.53)
を超えると破壊電圧(VB)は急激に低下し、Co量が
1.058wt%の場合(No.54)には、1.79k
Vまで破壊電圧(VB)が低下してしまう。
【0096】さらに表19には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.49〜53は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ている。このなかでCo量が0.083wt%の場合
(No.50)、Co量が0.195wt%の場合(N
o.51)およびCo量が0.431wt%の場合(N
o.52)にはいずれも50V以上という特に優れた破
壊電圧(Vb)を得ていることが注目される。
【0097】また表19および図12曲線cにおいて、
絶縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。Co
量が0.004wt%の場合(No.49)の絶縁抵抗
(IR)は3410MΩ(3.41×109Ω)である。
Co量が0.083wt%(No.50)になると絶縁抵
抗(IR)が6850MΩ(6.58×109Ω)まで向
上し、Co量が0.195wt%の場合(No.51)に
は絶縁抵抗(IR)は更に向上して7620MΩ(7.
62×109Ω)となる。一方、Co量が0.718wt
%(No.53)を超えると絶縁抵抗(IR)は急激に
低下し、Co量が1.058wt%の場合(No.54)
には592MΩ(5.92×108Ω)まで低下してしま
う。
【0098】次に、表19,図13曲線c,図14曲線
cを用いて、実施例2−cによるフェライト焼結部材の
Co量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)
の相関関係について説明する。表19において、Co量
が0.004wt%の場合(No.49)には、透磁率
(μ)が398、品質係数(Q)が65と、ともに良好
な値を示している。Co量が0.083wt%(No.5
0)になると、透磁率(μ)が307と若干低下するも
のの、品質係数(Q)は84まで向上することがわかる
(図13曲線c,図14曲線c参照)。Co量が0.1
95wt%の場合(No.51)には品質係数(Q)は
更に向上して88となり、0.431wt%の場合(N
o.52)および0.718wt%の場合(No.53)
においても品質係数(Q)は60以上と良好な値を示し
ている。ところが、Co量が0.718wt%(No.5
3)を超えると品質係数(Q)は大幅に低下し、Co量
が1.058wt%の場合(No.54)には、品質係数
(Q)は35まで低下してしまう。
【0099】<実施例2−d>表20に示す配合組成
で、実施例1と同様の製造条件で積層型コンデンサを作
製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定
を行なった。また、測定用コアを作製して透磁率(μ)
および品質係数(Q)を測定した。測定された結果を表
21に示す。また、Co量による破壊電圧(VB)の変
動を示すグラフを図11(曲線d)に、Co量による絶
縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図12(曲線d)
に、Co量による透磁率(μ)の変動を示すグラフを図
13(曲線d)に、またCo量による品質係数(Q)の
変動を示すグラフを図14(曲線d)にそれぞれ示す。
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】表21および図11曲線dにおいて、焼結
体中に占めるCo量が0.004wt%の場合(No.5
5)の破壊電圧(VB)は2.63kVと良好な値を示
している。Co量が0.083wt%(No.56)にな
ると破壊電圧(VB)は3.31kVまで向上する。こ
の値をピークとして破壊電圧(VB)は次第に低下する
ものの、No.57〜59においても、2.5kV以上の
良好な破壊電圧(VB)を得ている。ところが、Co量
が0.718wt%(No.59)を超えると破壊電圧
(VB)は急激に低下し、Co量が1.058wt%の
場合(No.60)には、1.59kVまで破壊電圧(V
B)が低下してしまう。
【0103】さらに表21には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.55〜59は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ている。このなかでCo量が0.083wt%の場合
(No.56)、Co量が0.195wt%の場合(N
o.57)においては50V以上、またCo量が0.43
1wt%の場合(No.58)には45V以上という特
に優れた破壊電圧(Vb)を得ていることが注目され
る。
【0104】また表21および図12曲線dにおいて、
絶縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。Co
量が0.004wt%の場合(No.55)には絶縁抵抗
(IR)が2730MΩ(2.73×109Ω)と良好な
値を得ている。Co量が0.083wt%(No.56)
になると絶縁抵抗(IR)は5950MΩ(5.95×
109Ω)まで向上し、Co量が0.195wt%の場合
(No.57)には、絶縁抵抗(IR)は更に向上して
6920MΩ(6.92×109Ω)となる。Co量が
0.431wt%の場合(No.58)においても絶縁抵
抗(IR)は5090MΩ(5.09×109Ω)と良好
な値を示しているが、Co量が0.718wt%(No.
59)を超えると絶縁抵抗(IR)は急激に低下し、C
o量が1.058wt%の場合(No.60)には496
MΩ(4.96×108Ω)まで低下してしまう。
【0105】次に、表21,図13曲線d,図14曲線
dを用いて、実施例2−dによるフェライト焼結部材の
Co量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)
の相関関係について説明する。表21および図13曲線
dにおいて、Co量が0.004wt%(No.55)の
ときに透磁率(μ)が408と最も良好な値を示してい
る。Co量の増加に伴い次第に透磁率(μ)が減少する
ものの、Co量が0.083wt%の場合(No.56)
は310、Co量が0.195wt%の場合(No.5
7)は268、そしてCo量が0.431wt%の場合
(No.58)は212と、いずれも200以上の良好
な透磁率(μ)を得ていることがわかる。一方、表21
および図14曲線dにおいて、Co量が0.004wt
%の場合(No.55)の品質係数(Q)は60であ
り、Co量が0.083wt%(No.56)になると、
品質係数(Q)は更に向上して78となる。Co量が
0.195wt%の場合(No.57)には品質係数
(Q)はピークとなり、84となる。Co量が0.43
1wt%の場合(No.58)および0.718wt%の
場合(No.59)においても品質係数(Q)は40以
上と良好な値を示しているが、Co量が0.718wt
%(No.59)を超えると品質係数(Q)は大幅に低
下し、Co量が1.058wt%の場合(No.60)に
は、品質係数(Q)は34まで低下してしまう。
【0106】<実施例2−e>表22に示す配合組成
で、実施例1と同様の製造条件で積層型コンデンサを作
製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(IR)の測定
を行なった。また、測定用コアを作製して透磁率(μ)
および品質係数(Q)を測定した。測定された結果を表
23に示す。また、Co量による破壊電圧(VB)の変
動を示すグラフを図11(曲線e)に、Co量による絶
縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図12(曲線e)
に、Co量による透磁率(μ)の変動を示すグラフを図
13(曲線e)に、またCo量による品質係数(Q)の
変動を示すグラフを図14(曲線e)にそれぞれ示す。
【0107】
【表22】
【0108】
【表23】
【0109】表23および図11曲線eにおいて、焼結
体中に占めるCo量が0.004wt%の場合(No.6
1)の破壊電圧(VB)は2.31kVであり、良好な
値を示している。Co量が0.083wt%(No.6
2)になると破壊電圧(VB)は2.90kVまで向上
し、Co量が0.195wt%の場合(No.63)に
は、破壊電圧(VB)は更に向上して3.02kVとな
る。この値をピークとして破壊電圧(VB)は次第に低
下するものの、Co量が0.431wt%の場合(No.
64)には2.70kV、Co量が0.718wt%の場
合(No.65)にも2.32kVと良好な破壊電圧(V
B)を得ている。ところが、Co量が0.718wt%
(No.65)を超えると破壊電圧(VB)は急激に低
下し、Co量が1.058wt%の場合(No.66)に
は、1.56kVまで低下してしまう。
【0110】さらに表23には、破壊電圧(VB)を磁
性フェライト層42の厚さd(60μm)で割った値、
つまり磁性フェライト層42の1μmあたりの破壊電圧
(Vb=VB/d)も示している。No.61〜65は
いずれも30V以上という優れた破壊電圧(Vb)を得
ている。このなかで、Co量が0.083wt%の場合
(No.62)、Co量が0.195wt%の場合(N
o.63)およびCo量が0.431wt%の場合(N
o.64)には45V以上という特に優れた破壊電圧
(Vb)を得ていることが注目される。
【0111】また表23および図12曲線eにおいて、
絶縁抵抗(IR)もCo量と関連性を有している。Co
量が0.004wt%の場合(No.61)の絶縁抵抗
(IR)は1430MΩ(1.43×109Ω)である。
Co量が0.083wt%(No.62)になると絶縁抵
抗(IR)が3910MΩ(3.91×109Ω)まで向
上し、Co量が0.195wt%の場合(No.63)に
は絶縁抵抗(IR)は更に向上して4400MΩ(4.
40×109Ω)となる。Co量が0.431wt%の場
合(No.64)においても絶縁抵抗(IR)は333
0MΩ(3.33×109Ω)と良好な値を示している
が、Co量が0.718wt%(No.65)を超えると
絶縁抵抗(IR)は急激に低下し、Co量が1.058
wt%の場合(No.66)には340Ω(3.40×1
8Ω)まで低下してしまう。
【0112】次に、表23,図13曲線e,図14曲線
eを用いて、実施例2−eによるフェライト焼結部材の
Co量と透磁率(μ)、およびCo量と品質係数(Q)
の相関関係について説明する。表23および図13曲線
eにおいて、Co量が0.004wt%(No.61)の
場合の透磁率(μ)382をピークとして透磁率(μ)
は次第に低下していくものの、No.62〜No.65で
も120以上の良好な透磁率(μ)を得ている。一方、
表23および図14曲線eを看ると、Co量の増加に伴
って品質係数(Q)が向上することがわかる。Co量が
0.004wt%(No.61)から0.083wt%
(No.62)になると、品質係数(Q)は50から6
6まで向上し、Co量が0.195wt%の場合(No.
63)には品質係数(Q)は更に向上して71となる。
Co量が0.431wt%の場合(No.64)およびC
o量が0.718wt%場合(No.65)においても品
質係数(Q)は50以上と良好な値を示しているが、C
o量が0.718wt%場合(No.65)を超えると品
質係数(Q)は大幅に低下する。そして、Co量が1.
058wt%の場合(No.66)には、品質係数
(Q)は28まで低下してしまう。
【0113】<比較例2>比較例2は、表24に示す配
合組成で、実施例1と同様の製造条件で積層型コンデン
サを作製し、破壊電圧(VB)および絶縁抵抗(IR)
の測定を行なった。また、測定用コアを作製して透磁率
(μ)および品質係数(Q)を測定した。測定された結
果を表25に示す。また、Co量による破壊電圧(V
B)の変動を示すグラフを図11(曲線f)に、Co量
による絶縁抵抗(IR)の変動を示すグラフを図12
(曲線f)に、Co量による透磁率(μ)の変動を示す
グラフを図13(曲線f)に、またCo量による品質係
数(Q)の変動を示すグラフを図14(曲線f)にそれ
ぞれ示す。
【0114】
【表24】
【0115】
【表25】
【0116】図11において、実施例2−a〜2−eに
かかる曲線a〜曲線eと比較例2にかかる曲線fを対比
すると、曲線fではCo添加による破壊電圧(VB)の
上昇がほとんどみられない。また図12〜14を看る
と、比較例2にかかる曲線fは、絶縁抵抗(IR),透
磁率(μ)および品質係数(Q)においても、曲線a〜
曲線eと比較して低いレベルにあることが明らかであ
る。
【0117】<実施例2の評価>以上、実施例2−a〜
2−e,比較例2の破壊電圧(VB),絶縁抵抗(I
R),透磁率(μ)および品質係数(Q)の測定結果を
示した。以下、これらの結果に基づき、実施例2の評価
を行なう。 破壊電圧(VB)についての評価 最初に図11を用いて、破壊電圧(VB)についての評
価を行なう。図11に示されるように、破壊電圧(V
B)は曲線a〜曲線fの順位となっている。そして、曲
線a〜曲線eと比べて、曲線fが低いレベルにあること
がわかる。ここで曲線aのMn量は0.055wt%、
曲線bのMn量は0.155wt%、曲線cのMn量は
0.350wt%、曲線dのMn量は0.548wt%、
曲線eのMn量は0.739wt%、曲線fのMn量は
1.035wt%である。よって、MgOの一部をNi
Oで置換した場合においても、焼結体中に占めるMn量
を0.75wt%以下(0を含まず)とすれば良好な破
壊電圧(VB)を得ることができることが明らかとなっ
た。
【0118】また、Mn量が本発明で推奨する範囲にあ
る曲線a〜曲線eにおいて、焼結体中に占めるCo量が
0.718wt%の場合には、破壊電圧(VB)は2.0
kV以上と良好な値を示していることがわかる。ところ
がCo量が0.718wt%を超えて1.058wt%に
なると、破壊電圧(VB)は1.5kV近辺まで低下し
た。この傾向から、MgOの一部をNiOで置換した場
合においても、焼結体中に占めるMn量を0.75wt
%以下(0を含まず)とするとともに、焼結体中に占め
るCo量を本発明で推奨する所定の範囲、すなわち0.
75wt%以下(0を含まず)とする必要がある。
【0119】次に、焼結体中に占めるMn量およびCo
量がともに本発明で推奨する範囲において、特に優れた
破壊電圧(VB)を得ることができる範囲を検討する。
焼結体中に占めるCo量が0.75wt%以下の範囲に
おいて、曲線aおよび曲線bが広範囲にわたって極めて
良好な破壊電圧(VB)を示している。曲線aはCo量
が0.004wt%(試料No.37)の場合を除いて
3.5kV以上の非常に優れた破壊電圧(VB)を示し
ている。また曲線bも、Co量が0.004wt%(試
料No.43)の場合を除いて3.0kV以上の非常に優
れた破壊電圧(VB)を得ていることが注目される。し
たがって、特に優れた破壊電圧(VB)を得るために
は、焼結体中に占めるMn量を0.3wt%以下とし、
かつCo量を0.01〜0.75wt%以下の範囲とする
ことが望ましい。また、Co量が約0.2wt%のとき
に、曲線aおよび曲線bともにピーク値を得ていること
から、Co量の最適範囲は0.01〜0.4wt%といえ
る。
【0120】曲線c〜曲線eも、曲線aおよび曲線bと
同様に、Co量が約0.2wt%のときに破壊電圧(V
B)がピークとなる。しかもその値はいずれも3.0k
V以上と、良好な値を示している。一方、曲線aおよび
曲線bはCo量が0.75wt%前後のときにおいても
3.0kV以上の高い破壊電圧(VB)を示していたの
に対し、曲線c〜曲線eはCo量が0.718wt%に
なると破壊電圧(VB)が3.0kVより低い値となっ
てしまう。この傾向から、焼結体中に占めるMn量が
0.3wt%以上であるときには、Co量を0.6wt%
以下、さらには0.4wt%以下とすることが望まし
い。より望ましいCo量は0.01〜0.3wt%であ
る。焼結体中に占めるMn量が0.3wt%以上である
ときにも、Co量を0.01〜0.3wt%とすることに
より、2.5kV以上の優れた破壊電圧(VB)を得る
ことができる。
【0121】絶縁抵抗(IR)についての評価 次に、図12を用いて、絶縁抵抗(IR)についての評
価を行なう。図12に示されるように、絶縁抵抗(I
R)は曲線a〜曲線fの順位となっている。そして、破
壊電圧(VB)の場合と同様に、曲線a〜曲線fのなか
で曲線fの絶縁抵抗(IR)のレベルが低いものとなっ
ている。したがって、MgOの一部をNiOで置換した
場合においても、良好な絶縁抵抗(IR)を得るために
は焼結体中に占めるMn量を0.75wt%以下(0を
含まず)とすることが必要となる。また、Mn量,Co
量がともに本発明で推奨する範囲、すなわち0.75w
t%以下にある曲線a〜曲線eにおいて、特に良好な絶
縁抵抗(IR)を得ているのは曲線aおよび曲線bであ
る。よって、焼結体中に占めるMn量を0.3wt%以
下、さらに望ましくは0.1wt%以下とすることによ
り、非常に優れた絶縁抵抗(IR)を得ることが可能と
なる。焼結体中に占めるCo量が約0.2wt%のとき
に絶縁抵抗(IR)はピーク値を得ており、Co量が
0.01〜0.6wt%、さらには0.01〜0.4wt%
の範囲で特に優れた値を示している。したがって、焼結
体中に占めるMn量を0.3wt%以下とし、かつCo
量を0.01〜0.6wt%とすることによって、非常に
優れた絶縁抵抗(IR)を得ることができることがわか
った。
【0122】透磁率(μ)についての評価 次に、図13を用いて、透磁率(μ)についての評価を
行なう。図13では、曲線a〜曲線eがほぼ同レベルに
あり、曲線fのみが低いレベルにあることが示されてい
る。したがって、MgOの一部をNiOで置換した場合
においても、良好な透磁率(μ)を得るためには焼結体
中に占めるMn量を0.75wt%以下(0を含まず)
とする必要がある。また、曲線a〜曲線eにおいても、
100以上の良好な透磁率(μ)を確保するためには、
焼結体中に占めるCo量を本発明で推奨する範囲、すな
わち0.75wt%以下とすることが望ましい。Co量
が0.75wt%を超えて1.058wt%になると、曲
線a〜曲線eの透磁率(μ)は100以下の値を示すこ
ととなる。
【0123】品質係数(Q)についての評価 次に、図14を用いて、品質係数(Q)についての評価
を行なう。図14を看ると、曲線aがとりわけ良好な品
質係数(Q)を示しており、その一方で曲線fが低いレ
ベルにあることがわかる。したがって、MgOの一部を
NiOで置換した場合においても、良好な品質係数
(Q)を得るためには焼結体中に占めるMn量を0.7
5wt%以下(0を含まず)とする必要がある。また、
曲線b〜曲線eは、ほぼ同じような曲線を描いており、
レベルに大差はないが曲線b〜曲線eの順に優れた品質
係数(Q)を得ている。そして、曲線aほどではないも
のの、曲線b〜曲線eも良好な品質係数(Q)を示して
いる。したがって、良好な品質係数(Q)を得るために
は、焼結体中に占めるMn量を0.6wt%以下、さら
には0.3wt%以下とすればよい。より望ましいMn
量は0.1wt%以下である。
【0124】次にCo量に着目すると、Co量が0.7
5wt%以下(0を含まず)の範囲にある場合には、曲
線a〜曲線eは40以上という優れた品質係数(Q)を
呈する。また、曲線a〜曲線eは、Co量が約0.6w
t%のときには60以上の非常に優れた品質係数(Q)
を示し、Co量が約0.2wt%のときに品質係数
(Q)のピーク値を得ている。したがって、特に優れた
品質係数(Q)を得るためには、焼結体中に占めるCo
量を0.6wt%以下、さらには0.01〜0.4wt%
とすることが望ましい。
【0125】<実施例2の総合評価>実施例2により、
MgOの一部をNiOで置換した場合においても、焼結
体中に占めるMn量が0.75wt%以下(0を含ま
ず)であり、かつCo量が0.75wt%以下(0を含
まず)の範囲において優れた破壊電圧(VB),絶縁抵
抗(IR),透磁率(μ)および品質係数(Q)を得る
ことができることが明らかとなった。この範囲で特に優
れた破壊電圧(VB),絶縁抵抗(IR)および品質係
数(Q)を得るためには、焼結体中に占めるMn量を
0.3wt%以下とすることが望ましい。また、焼結体
中に占めるMn量が0.3wt%以上の場合において
も、Co量を0.01〜0.6wt%、さらには0.01
〜0.4wt%とすることによって、優れた破壊電圧
(VB),絶縁抵抗(IR)および品質係数(Q)を得
ることが可能となる。
【0126】以上、実施例2の破壊電圧(VB),絶縁
抵抗(IR),透磁率(μ)および品質係数(Q)の測
定結果を示したが、次に、表26を用いて加速寿命試験
(HALT)およびCu偏析の面積率の測定結果を示
す。試料としては、実施例2−aにおけるNo.37お
よびNo.39、実施例2−cにおけるNo.52、実施
例2−dにおけるNo.57、比較例2におけるNo.7
2を用いた。これらの粉末を用いて実施例1と同様の条
件により積層型コンデンサを作製し、上述と同様の方法
で加速寿命試験(HALT)の測定を行なった。また、
焼結体組織における元素分布を電子線プローブ・マイク
ロ・アナライザ(EPMA)によって観察し、焼結体組
織に占めるCu偏析の面積率を算出した。Cu偏析の面
積率の算出方法についても上述と同様である。
【0127】
【表26】
【0128】Co量が0.004wt%であるNo.37
とCo量が0.195wt%であるNo.39を対比する
と、No.39において不良サンプル数が激減している
ことがわかる。No.37およびNo.39は主成分の組
成が同一であり、副成分としてのMn量も0.055w
t%と等しい。よって、MgOの一部をNiOで置換し
た場合において、Mn量が約0.05wt%であるとき
には、Co量を約0.01wt%以上とすることにより
不良サンプル数を減少させることができることがわかっ
た。No.39と同様に、No.52およびNo.57に
おいても不良サンプル数が少ないものとなっている。特
に、No.52では、175℃の高温下で80Vの電圧
を24時間印加した後においても不良サンプル数0と、
極めて良好な結果を示している。一方、Mn量およびC
o量がともに0.75wt%を超えているNo.72で
は、No.37と同レベルにまで不良サンプル数が増加
してしまう。この結果から、MgOの一部をNiOで置
換した場合には、Mn量を0.75wt%以下(0を含
まず)とし、かつCo量を0.01〜0.75wt%の範
囲とすることにより、耐久性に非常に優れた部品が得ら
れることがわかった。
【0129】さらに表26にはCu偏析率も示してあ
る。Cu偏析率が1.3%(No.72)から5.6%
(No.57)まで増加すると不良サンプル数が激減す
る。そして、Cu偏析率が8.3%(No.52)および
13.3%(No.39)の場合においても不良サンプル
数が少ないことがわかる。この結果から、Cu偏析率が
本発明で推奨する所定の範囲、つまり1.5%〜15.0
%の範囲にあるときに耐久性に優れた部品が得られるこ
とがわかった。ここで、表13と表26のCu偏析の欄
および加速寿命試験(HALT)の測定結果を対比して
みる。すると、表13ではCu偏析率が8.4%の場合
(No.16)、表26ではCu偏析率が8.3%の場合
(No.52)の場合に不良サンプル数が最小となって
いることがわかる。この傾向から、Cu偏析率が6.0
%〜10.0%の範囲にあるときに、耐久性に非常に優
れた部品が得られることがわかった。
【0130】また表26において、Cu偏析率が1.3
%の場合(No.72)には破壊電圧(VB)が1.53
kVであるのに対し、Cu偏析率が5.6%(No.5
7)になると破壊電圧(VB)は3.29kVまで向上
する。Cu偏析率が8.3%(No.52)の場合もCu
偏析率が5.6%(No.57)の場合とほぼ同じレベル
の優れた破壊電圧(VB)を得ている。Cu偏析率が1
3.3%の場合(No.39)には、破壊電圧(VB)は
更に向上して4.02kVとなる。この傾向から、Mn
およびCoを所定量含み、かつCu偏析率が1.5〜1
5.0%の範囲にある場合に、破壊電圧(VB)の向上
を図れることがわかった。また、この範囲で特に高い破
壊電圧(VB)を得るためには、Cu偏析率は5.0〜
15.0%の範囲とすることが望ましい。
【0131】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば従
来に比して耐電圧性,耐久性に優れる磁性フェライト材
料およびこれを用いた積層型フェライト部品を低コスト
で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態に係る積層型チップインダクタ
アレイの平面図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 図1のB−B断面図である。
【図4】 本実施の形態に係るLC複合部品である。
【図5】 実施例で用いた積層型チップコンデンサの側
断面図である。
【図6】 図5のC−C断面図である。
【図7】 実施例1で測定したCo量による破壊電圧
(VB)の変動を示すグラフである。
【図8】 実施例1で測定したCo量による絶縁抵抗
(IR)の変動を示すグラフである。
【図9】 実施例1で測定したCo量による透磁率
(μ)の変動を示すグラフである。
【図10】 実施例1で測定したCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフである。
【図11】 実施例2で測定したCo量による破壊電圧
(VB)の変動を示すグラフである。
【図12】 実施例2で測定したCo量による絶縁抵抗
(IR)の変動を示すグラフである。
【図13】 実施例2で測定したCo量による透磁率
(μ)の変動を示すグラフである。
【図14】 実施例2で測定したCo量による品質係数
(Q)の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1…積層型チップインダクタアレイ、2…磁性フェライ
ト層、3…内部電極、4…引出し電極、5…チップ体、
6…外部電極、11…LC複合部品、12…チップコン
デンサ部、13…チップフェライト部、15…外部電
極、21…セラミックス誘電体層、22…内部電極、3
2…磁性フェライト層、33…電極層、41…積層型チ
ップコンデンサ、42…磁性フェライト層、43…内部
電極、44…チップ体、45…外部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 敦之 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4G002 AA07 AA10 AE02 4G018 AA01 AA07 AA21 AA22 AA23 AA24 AA25 AC06 5E041 AB03 AB19 BD01 CA01 NN02 NN06 5E070 AA01 AB10 BA12 CB01 CB13 EA01

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe23:40.0〜51.0mol%,
    CuO:5.0〜30.0mol%,ZnO:0.5〜35.
    0mol%およびMgO:5.0〜50.0mol%を主
    成分とし、Mn:0.75wt%以下(0を含まず)お
    よびCo:0.75wt%以下(0を含まず)を副成分
    として含むことを特徴とする磁性フェライト材料。
  2. 【請求項2】 Fe23:40.0〜51.0mol%,
    CuO:5.0〜30.0mol%,ZnO:0.5〜35.
    0mol%およびMgO+NiO:5.0〜50.0mo
    l%(ただし、MgOは必須)を主成分とし、Mn:
    0.75wt%以下(0を含まず)およびCo:0.75
    wt%以下(0を含まず)を副成分として含むことを特
    徴とする磁性フェライト材料。
  3. 【請求項3】 副成分としてCoを0.01〜0.6wt
    %含むことを特徴とする請求項1または2に記載の磁性
    フェライト材料。
  4. 【請求項4】 副成分としてMnを0.3wt%以下お
    よびCoを0.01〜0〜0.75wt%含むことを特徴
    とする請求項1または2に記載の磁性フェライト材料。
  5. 【請求項5】 副成分としてMnを0.3〜0.75wt
    %およびCoを0.01〜0.7wt%含むことを特徴と
    する請求項1または2に記載の磁性フェライト材料。
  6. 【請求項6】 組織に占めるCuの偏析が面積率で1.
    5〜15.0%であることを特徴とする請求項1〜5の
    いずれかに記載の磁性フェライト材料。
  7. 【請求項7】 磁性フェライト層と内部電極とが交互に
    積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続され
    た外部電極とを有する積層型フェライト部品であって、 前記磁性フェライト層はFe23:40.0〜51.0m
    ol%,CuO:5.0〜30.0mol%,ZnO:0.
    5〜35.0mol%およびMgO:5.0〜50.0mo
    l%を主成分とし、Mn:0.75wt%以下(0を含
    まず)およびCo:0.75wt%以下(0を含まず)
    を副成分として含む磁性フェライト焼結体から構成さ
    れ、 前記内部電極はAgまたはAg合金から構成されること
    を特徴とする積層型フェライト部品。
  8. 【請求項8】 磁性フェライト層と内部電極とが交互に
    積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続され
    た外部電極とを有する積層型フェライト部品であって、 前記磁性フェライト層はFe23:40.0〜51.0m
    ol%,CuO:5.0〜30.0mol%,ZnO:0.
    5〜35.0mol%およびMgO+NiO:5.0〜5
    0.0mol%(ただし、MgOは必須)を主成分と
    し、Mn:0.75wt%以下(0を含まず)およびC
    o:0.75wt%以下(0を含まず)を副成分として
    含む磁性フェライト焼結体から構成され、 前記内部電極はAgまたはAg合金から構成されること
    を特徴とする積層型フェライト部品。
  9. 【請求項9】 前記磁性フェライト焼結体の組織に占め
    るCuの偏析が面積率で1.5〜15.0%であることを
    特徴とする請求項7または8に記載の積層型フェライト
    部品。
  10. 【請求項10】 破壊電圧が、電位差の生じている導体
    間の磁性フェライト層1μmあたり30V以上であるこ
    とを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の積層型
    フェライト部品。
  11. 【請求項11】 品質係数が40以上であることを特徴
    とする請求項7〜10のいずれかに記載の積層型フェラ
    イト部品。
  12. 【請求項12】 各々独立した複数の内部電極を有する
    ことを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の積
    層型フェライト部品。
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