JP3635412B2 - 磁性フェライトの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、インダクタ、LC複合部品等の複合積層部品および磁心などの各種磁性材料として用いられる磁性フェライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種フェライトが、その優れた磁気特性から各種磁心や複合積層部品として用いられている。
【0003】
積層LC複合部品は、セラミック誘電体層と内部電極層とを積層して構成されるコンデンサチップ体と、フェライト磁性層と内部導体とを積層して構成されるインダクタチップ体とを一体的に形成したものである。
【0004】
このような複合積層部品は、体積が小さいこと、堅牢性および信頼性が高いことなどから、各種電子機器に多用されている。
【0005】
これらの部品、例えばLC複合部品は、通常、内部導体用ペースト、磁性層用ペースト、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを厚膜技術によって積層一体化した後、焼成し、得られた焼結体表面に外部電極用ペーストを印刷ないし転写した後、焼成することにより製造される。この場合、磁性層に用いられる磁性材料としては、低温焼成が可能であることからNi−Cu−Zn系フェライトが一般に用いられている。
【0006】
このようなNi−Cu−Zn系フェライトは、次のようにして製造される。出発原料としては、通常NiO、CuO、ZnOおよびFe2 O3 等を用い、それらを適量秤量し、ボールミル等により湿式混合する。こうして湿式混合したものを、通常スプレードライヤにより乾燥し、その後仮焼し、仮焼体をボールミルにより湿式粉砕してフェライト粉末を得る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
Ni−Cu−Zn系フェライトは、概略上記したようにして製造されるが、上記したように製造されたフェライト粉末を用いて各種電子部品を作製した場合、透磁性の劣化や焼結密度の低下を引き起こす問題が生ずる場合があった。
【0008】
本発明者らはこのような現象につき検討を行なったところ、フェライトの電気的特性は原料の混合度に顕著に左右され、特にNi−Cu−Zn系フェライトにおいては、CuOの分散が困難であり、混合時間が短かった場合に、CuOが充分には分散されず、これがフェライト中に偏析し、この偏析したCuOが磁気ギャップとなり、上記のような問題を引き起こしていることが判明した。
【0009】
したがって、特性の良好なNi−Cu−Zn系フェライトを製造するには、充分な混合時間を取ればよいが、そうすると、当然のことながら製造時間に多くを要し、製造コストが高くなってしまうという問題が生じてくる。
【0010】
そこで、本発明は、電気磁気的な特性を少なくとも維持したまま、比較的短時間で製造することができる磁性フェライトの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
このような目的は、下記の本発明によって達成される。
すなわち、本願発明は、NiO、CuO、ZnOおよびFe 2 O 3 を含み、
フェライトの組成がFe 2 O 3 :45〜50mol%、NiO:4〜50mol%、CuO:3〜30mol%およびZnO:0.5〜35mol%である磁性フェライトを製造する方法において、
Cu成分の出発原料としてCu(OH) 2 の粉末を用いて、Ni成分、Zn成分およびFe成分の出発原料として、それぞれNiO、ZnOおよびFe 2 O 3 の粉末を用い、これらの粉末を湿式混合することを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明の磁性フェライトは、出発原料のCu成分として水酸化銅を用いたことにより、短時間の混合で分散性が良好となり、フェライト中にCuOが析出することがない。したがって、本発明の磁性フェライトを用いてインダクタ等の電子部品を作製した場合、原料の混合時間を短縮しても透磁率の劣化や焼結密度の低下が生じることがない。
【0013】
【具体的構成】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0014】
<フェライトの組成>
本発明の磁性フェライトとしては、Ni−Cu−Zn系磁性フェライトが用いられる。Ni−Cu−Zn系磁性フェライトに特に制限はなく、目的に応じて種々の組成のものを選択すればよいが、Fe2 O3 :45〜50mol%、特に47.5〜49.5mol%、NiO:4〜50mol%、特に5〜45mol%、CuO:3〜30mol%、特に4.5〜15.5mol%およびZnO:0.5〜35mol%、特に1〜31mol%であることが好ましい。
【0015】
この他、Co、Mn等が全体の5wt% 程度以下含有されていてもよく、またCa、Si、Bi、V、Pb等が1wt% 程度以下含有されていてもよい。
【0016】
そして、本発明の特徴は、上記磁性フェライトの出発原料のCu成分として、水酸化銅を用いることにある。ここで、水酸化銅とは、Cu(OH) 2 である。
【0017】
<積層インダクタ>
第1図および第2図には、本発明の積層インダクタすなわち積層型インダクタの好適例が示される。
【0018】
積層型インダクタ1は、磁性体層2と、導電体層3とが交互に積層一体化されて構成されるチップ体10を有する。
【0019】
そして、導電体層3はパターン状に形成されるとともに、隣接する導電体層3は、第2図に示されるように、互いに導通しており、これによりコイルが形成されている。
【0020】
さらに、このチップ体10の表面には、導電体層3と導通する外部電極5が設けられている。
【0021】
チップ体10の外形や寸法には特に制限がなく、用途等に応じて適宜選択すればよいが、通常、外形はほぼ直方体状の形状とし、寸法は(1.0〜5.6)mm×(0.5〜5.0)×(0.6〜1.9)mm程度とすればよい。
【0022】
積層型インダクタ1の磁性体層2の材質としては、上記のようなNi−Cu−Zn系磁性フェライトを使用する。Ni−Cu−Zn系磁性フェライトは、低温焼成材料であり、このような磁性層を用いたとき、本発明の積層型インダクタは焼成時液相の生成が無く、しかも電気抵抗の点で、より優れたものとなる。
【0023】
このような、フェライト系の磁性体層2は、後記の導電体層用ペーストと800〜950℃、特に850〜900℃の焼成温度にて同時焼成して形成できる。
【0024】
磁性体層2の焼成後の厚さには特に制限はないが、通常ベース厚は、250〜500μm 程度、導電体層3、3間の磁性体層厚は、10〜100μm 程度とする。
【0025】
導電体層3の材質としては、従来公知の導電体層材質は何れも使用できる。
【0026】
例えば、Ag、Cu、Pdやこれらの合金等を用いればよいが、このうち、AgまたはAg合金、特にAgが好適である。
【0027】
Ag合金としては、Agを95重量%以上含むAg−Pd合金等が好適である。
【0028】
このような導電体層3は、後述するように導電体層用ペーストを塗布した後、焼成して形成されるものである。
【0029】
この際、通常は、脱バインダ等によって導電体層3内部に、空孔が形成されることが多い。
【0030】
導電体層3は、第2図に示されるように、磁性体層2内にて、通常スパイラル状に配置され、その両端部は一対の各外部電極5、5に接続されている。
【0031】
このような場合、導電体層3の巻線パターン、すなわち閉磁路形状は種々のパターンとすることができ、また、その巻数、厚さ、ピッチ等も用途に応じ適宜選択すればよい。
【0032】
なお、導電体層3の厚さは、通常5〜30μm 程度、巻線ピッチは、通常40〜100μm 程度、巻数は、通常1.5〜50.5ターン程度とすればよい。
【0033】
また、外部電極5、5の材質については、特に制限がなく、各種導電体材料、例えばAg、Ni、Cu等あるいはAg−Pd等のこれらの合金などの印刷膜、メッキ膜、蒸着膜、イオンプレーティング膜、スパッタ膜あるいはこれらの積層膜などいずれも使用可能である。
【0034】
外部電極5、5の厚さは任意であり、目的や用途に応じ適宜決定すればよいが、通常5〜30μm 程度である。
【0035】
<積層型インダクタの製造方法>
次に、本発明の積層型インダクタの製造方法について説明する。
【0036】
まず、磁性体層用ペースト、導電体層用ペーストおよび外部電極用ペーストをそれぞれ製造する。
【0037】
<磁性体層用ペースト>
磁性体層用ペーストは、通常の方法で製造すればよい。
【0038】
例えば、フェライトペーストを製造するには、所定量のNiO、ZnO、Cu(OH)2 、Fe2 O3 等のフェライト原料粉末をボールミル等により湿式混合する。用いる各原料粉末の平均粒径は通常0.1〜10μm 程度とする。
【0039】
こうして湿式混合したものを、通常スプレードライヤー等により乾燥させ、その後仮焼する。これを通常は、平均粒径が0.01〜0.1μm 程度になるまでボールミル等にて湿式粉砕し、スプレードライヤー等により乾燥する。
【0040】
得られた混合フェライト粉末と、エチルセルロース、アクリル樹脂等のバインダーと、テルピネオール、ブチルカルビトール等の溶媒とを混合し、例えば3本ロール等で混練してペーストとする。
【0041】
この場合、ペースト中には各種ガラスや酸化物を含有させることができる。
【0042】
なお、フェライト粉末のほか、各種磁性粒子を用いることも可能である。
【0043】
<導電体層用ペースト>
導電体層用ペーストは、通常、導電性粒子と、バインダーと、溶剤とを含有する。
【0044】
導電性粒子の材質は、従来導電体層用ペーストに用いられるものであれば特に制限がなく、金属や金属酸化物等の焼成後に金属になるものを用いればよい。
【0045】
この場合、金属成分としては、Ag、Cu、Pd等の1種以上を含む金属単体、あるいはこれらの合金が好ましい。
【0046】
そして、特にAg、Ag合金、これらの酸化物が好適である。
【0047】
また、導電性粒子の形状には特に制限がないが、ほぼ球状の形状が好ましい。また、導電性粒子の平均粒径Dは、0.1〜1μm 、特に0.1〜0.4μm であることが好ましい。
【0048】
前記範囲未満ではペースト化が困難であり、また、印刷に適切でない。
【0049】
前記範囲をこえると高密度の導電体層を形成できない。
【0050】
この場合、本発明では導電性粒子の粒径分布がシャープなものを用いることが好ましい。
【0051】
具体的には、導電性粒子の平均粒径をDとするとき、D/2〜2Dの粒径の粒子が、全体の30重量%以上、特に40重量%以上存在することが好ましい。
【0052】
ただし、あまり大きくするのは困難であるため、30〜60重量%、特に40〜60重量%とすることが好ましい。
【0053】
前記範囲未満では高密度の導電体層を形成できない。
【0054】
なお、導電性粒子の粒径は、SEMにて観察し、粒子の投影面積から円換算して算出すればよい。
【0055】
<バインダー>
バインダーとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等公知のものはいずれも使用可能である。
【0056】
また、バインダー含有量は、通常1〜5重量%程度とする。
【0057】
溶剤としては、例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等公知のものはいずれも使用可能である。
【0058】
溶剤含有量は、通常10〜50重量%程度とする。この他、総計10重量%程度以下の範囲で、必要に応じ、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の分散剤や、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルフタリルグリコール酸ブチル等の可塑剤や、デラミ防止、焼結抑制等の目的で、誘電体、磁性体、絶縁体等の各種セラミック粉体等を添加することもできる。
【0059】
このような各組成物を混合し、例えば3本ロール等で混練してペーストとする。
【0060】
この場合、本発明の製造方法では、導電性粒子が過不足なくペースト内に分散されるように混練する。
【0061】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の基材上に、混練後の導電体層用ペーストを塗布し、塗膜の最上面を2000〜10000倍のSEM像にて、観察したとき、塗膜の最外面に導電性粒子が存在しない領域の面積比が20〜60%、好ましくは30〜50%、特に好ましくは35〜45%となるまで混練する。
【0062】
この場合、塗膜最外面とは、導電性粒子の平均粒径Dの1〜5倍程度の領域である。
【0063】
前記範囲未満あるいは前記範囲をこえると、間隙6内にて、導電体層3が占める断面面積比が85%をこえ、また、磁性体層2と、導電体層3との接触率が50%をこえ、また、導電体層3の空孔率が50%をこえる。
【0064】
このような所望の分散性を有する導電体層用ペーストを得るには、例えば3本ロールのロール間隙、粘度、混練時間等を適宜調整すればよい。
【0065】
外部電極用ペーストは、前記の導電体材料粉末を含有する通常のペーストを用いればよい。
【0066】
このような磁性体層用ペーストと導電体層用ペーストは、印刷法、転写法、グリーンシート法等により、積層される。
【0067】
そして、所定の積層体寸法に切断した後、焼成を行なう。
【0068】
焼成条件や焼成雰囲気は、材質等に応じて適宜決定すればよいが、通常下記のとおりである。
【0069】
焼成温度:850〜950℃程度
焼成時間:0.5〜5時間程度
【0070】
また、導電体層にCu、Ni等を用いる場合は、非酸化性雰囲気とし、このほか、Ag、Pd等を用いる場合は大気中でよい。
【0071】
<複合積層部品>
本発明の好適実施例である積層セラミックLC複合部品を図3に示す。
【0072】
図3に示されるLC複合部品20は、セラミック誘電体層21と内部電極層25とを積層して構成されるコンデンサチップ体CTと、セラミック磁性層31と内部導体35とを積層して構成されるインダクタチップ体ITを一体化したものであり、表面に外部電極51を有する。なお、インダクタチップ体IT自体は、上記積層インダクタ1のチップ体10と同じであってよいので、ここではその説明を省略する。
【0073】
<コンデンサチップ体>
コンデンサチップ体CTのセラミック誘電体層21には特に制限がなく種々の誘電体材料を用いてよいが、焼成温度が低いことから、酸化チタン系誘電体を用いることが好ましい。また、その他、チタン酸系複合酸化物、ジルコン酸系複合酸化物、あるいはこれらの混合物を用いることもできる。また、焼成温度を低下させるために、ホウケイ酸ガラス等のガラスを含有させてもよい。
【0074】
具体的には、酸化チタン系としては、必要に応じNiO、CuO、Mn3 O4 、Al2 O3 、MgO、SiO2 等、特にCuOを含むTiO2 等が、チタン酸系複合酸化物としては、BaTiO3 、SrTiO3、 CaTiO3 、MgTiO3 やこれらの混合物等が、ジルコン酸系複合酸化物としては、BaZrO3 、SrZrO3 、CaZrO3 、MgZrO3 やこれらの混合物等が挙げられる。
【0075】
<内部電極層>
本発明において、内部電極層25を構成する導電材に特に制限はなく、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Niや、例えばAg−Pd合金など、これらを1種以上含有する合金等から選択すればよいが、特にAg、Ag−Pd合金などのAg合金等が好適である。
【0076】
<構造>
LC複合部品1のコンデンサチップ体CTは、従来公知の構造とすればよく、外形は通常ほぼ直方体状の形状とする。そして図1に示されるように、内部電極層25の一端は外部電極51に接続されている。
【0077】
コンデンサチップ体CTの各部寸法等には特に制限はなく、用途等に応じ適宜選択すればよい。
【0078】
なお、誘電体層21の積層数は目的に応じて定めればよいが、通常1〜100程度である。また、誘電体層21の一層あたりの厚さは、通常20〜150μm 程度であり、内部電極層25の一層あたりの厚さは、通常5〜30μm 程度である。
【0079】
<外部電極の導電材>
本発明のLC複合部品1の外部電極51を構成する導電材に特に制限はなく、例えば、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、NiやAg−Pd合金などのこれらを1種以上含有する合金等から選択すればよいが、特にAg、Ag−Pd合金などのAg合金等が好適である。また、外部電極51の形状や寸法等には特に制限がなく、目的や用途等に応じて適宜決定すればよいが、厚さは、通常100〜2500μm 程度である。
【0080】
<LC複合部品の構造>
本発明のLC複合部品1の寸法には特に制限がなく、目的や用途等に応じて適宜選択すればよいが、通常(2.0〜10.0mm)×(1.2〜15.0mm)×(1.2〜5.0mm)程度である。
【0081】
<磁心>
磁心材料として、本発明の磁性フェライトを用いることにより、短時間の製造時間で特性の良好な磁心を得ることができる。
【0082】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0083】
なお、本明細書においては、チップインダクタで効果を特定できるので、複合積層部品についての実施例は省略する。
【0084】
下記の各ペーストを調製した。
【0085】
(磁性体層用ペースト)
最終組成でFe2 O3 :49モル%、NiO:8モル%、Cu(OH)2 :13モル%およびZnO:30モル%となるように出発原料を混合した。これらを、ボールミルを用いて5時間湿式混合し、ついで、この湿式混合物をスプレードライヤーにより乾燥し、700℃にて仮焼し、顆粒として、これをボールミルにて湿式粉砕したのちスプレードライヤーで乾燥し、最終平均粒径0.1〜0.3μm のNi−Cu−Znフェライト原料粉末とした。以上により、本発明の実施例によるNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。
【0086】
一方、Cu(OH)2 の代わりに、CuOを用い、16時間と5時間と時間を変えて湿式混合し、その他を上記実施例と同様にして比較例1および2のNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。また、Cu(OH)2 の代わりに、Cu2 Oを用い、5時間湿式混合し、その他を上記実施例と同様にして比較例3のNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。
【0087】
次いで、これらの原料粉末100重量部に対し、エチルセルロース3.84重量部およびテルピネオール78重量部を加え、三本ロールにて混練し、ペーストとした。
【0088】
(内部導体用ペースト)
平均粒径0.8μm のAg100重量部に対し、エチルセルロース2.5重量部およびテルピネオール40重量部を加え、三本ロールにて混練し、ペーストとした。
【0089】
このようにして作製された磁性層用ペーストと内部導体用ペーストとを印刷積層し、積層型チップインダクタを製造した。
【0090】
この場合、焼成温度は890℃、焼成時間は2時間とし、焼成雰囲気は大気中とした。
【0091】
得られた積層型チップインダクタの寸法は、3.2mm×1.6mm×1.1mm、巻数9.5ターンとした。
【0092】
また、試験用に上記フェライト原料粉末を使用して、同様の焼成条件にてトロイダルコアを製造した。このトロイダルコアの外径は11.1mm、内径は5.1mm、厚みは2.4mm、巻数は20ターン、線径は0.35mmとした。
【0093】
上記積層型チップインダクタについて、測定周波数400kHzの条件にてのL(インダクタンス)およびQを、そしてトロイダルコアについて、焼成後における収縮率%、密度g/cm3 、測定周波数400kHzの条件にてのμおよびQ等を求めた。得られた結果を表1および表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表1および表2に示す結果から分かるように、配合の原料を酸化銅から水酸化銅とすることにより、短時間(5時間)の配合混合時間でも、長時間(16時間)配合混合と同等な電磁気特性が得られた。また、表2から分かるように、焼結性が向上し、焼結密度も向上している。この理由として、酸化銅の代わりに水酸化銅を用いることで、短時間(5時間)の配合混合時間でも各原料粉末が均一に分散され、磁気劣化の原因であったCuOの偏析がなくなり、均一なフェライト組織が得られたと考えられる。
【0097】
【発明の効果】
以上から明瞭なように、本発明によれば、原料粉末を短時間で配合混合することができ、しかも良好な電磁気特性を持つ磁性フェライトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型インダクタの一例を示す断面図である。
【図2】上記積層型インダクタの一部破さい平面図である。
【図3】本発明の複合LC積層部品の一部を切り欠いて示した斜視図である。
【符号の説明】
1 積層型インダクタ
2 磁性体層
3 導電体層
5 外部電極
10 チップ体
20 複合LC積層部品
CT コンデンサチップ体
IT インダクタチップ体
21 セラミック誘電体層
25 内部電極
31 セラミックス磁性層
35 内部導体
51 外部電極
本発明は、インダクタ、LC複合部品等の複合積層部品および磁心などの各種磁性材料として用いられる磁性フェライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種フェライトが、その優れた磁気特性から各種磁心や複合積層部品として用いられている。
【0003】
積層LC複合部品は、セラミック誘電体層と内部電極層とを積層して構成されるコンデンサチップ体と、フェライト磁性層と内部導体とを積層して構成されるインダクタチップ体とを一体的に形成したものである。
【0004】
このような複合積層部品は、体積が小さいこと、堅牢性および信頼性が高いことなどから、各種電子機器に多用されている。
【0005】
これらの部品、例えばLC複合部品は、通常、内部導体用ペースト、磁性層用ペースト、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを厚膜技術によって積層一体化した後、焼成し、得られた焼結体表面に外部電極用ペーストを印刷ないし転写した後、焼成することにより製造される。この場合、磁性層に用いられる磁性材料としては、低温焼成が可能であることからNi−Cu−Zn系フェライトが一般に用いられている。
【0006】
このようなNi−Cu−Zn系フェライトは、次のようにして製造される。出発原料としては、通常NiO、CuO、ZnOおよびFe2 O3 等を用い、それらを適量秤量し、ボールミル等により湿式混合する。こうして湿式混合したものを、通常スプレードライヤにより乾燥し、その後仮焼し、仮焼体をボールミルにより湿式粉砕してフェライト粉末を得る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
Ni−Cu−Zn系フェライトは、概略上記したようにして製造されるが、上記したように製造されたフェライト粉末を用いて各種電子部品を作製した場合、透磁性の劣化や焼結密度の低下を引き起こす問題が生ずる場合があった。
【0008】
本発明者らはこのような現象につき検討を行なったところ、フェライトの電気的特性は原料の混合度に顕著に左右され、特にNi−Cu−Zn系フェライトにおいては、CuOの分散が困難であり、混合時間が短かった場合に、CuOが充分には分散されず、これがフェライト中に偏析し、この偏析したCuOが磁気ギャップとなり、上記のような問題を引き起こしていることが判明した。
【0009】
したがって、特性の良好なNi−Cu−Zn系フェライトを製造するには、充分な混合時間を取ればよいが、そうすると、当然のことながら製造時間に多くを要し、製造コストが高くなってしまうという問題が生じてくる。
【0010】
そこで、本発明は、電気磁気的な特性を少なくとも維持したまま、比較的短時間で製造することができる磁性フェライトの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
このような目的は、下記の本発明によって達成される。
すなわち、本願発明は、NiO、CuO、ZnOおよびFe 2 O 3 を含み、
フェライトの組成がFe 2 O 3 :45〜50mol%、NiO:4〜50mol%、CuO:3〜30mol%およびZnO:0.5〜35mol%である磁性フェライトを製造する方法において、
Cu成分の出発原料としてCu(OH) 2 の粉末を用いて、Ni成分、Zn成分およびFe成分の出発原料として、それぞれNiO、ZnOおよびFe 2 O 3 の粉末を用い、これらの粉末を湿式混合することを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明の磁性フェライトは、出発原料のCu成分として水酸化銅を用いたことにより、短時間の混合で分散性が良好となり、フェライト中にCuOが析出することがない。したがって、本発明の磁性フェライトを用いてインダクタ等の電子部品を作製した場合、原料の混合時間を短縮しても透磁率の劣化や焼結密度の低下が生じることがない。
【0013】
【具体的構成】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0014】
<フェライトの組成>
本発明の磁性フェライトとしては、Ni−Cu−Zn系磁性フェライトが用いられる。Ni−Cu−Zn系磁性フェライトに特に制限はなく、目的に応じて種々の組成のものを選択すればよいが、Fe2 O3 :45〜50mol%、特に47.5〜49.5mol%、NiO:4〜50mol%、特に5〜45mol%、CuO:3〜30mol%、特に4.5〜15.5mol%およびZnO:0.5〜35mol%、特に1〜31mol%であることが好ましい。
【0015】
この他、Co、Mn等が全体の5wt% 程度以下含有されていてもよく、またCa、Si、Bi、V、Pb等が1wt% 程度以下含有されていてもよい。
【0016】
そして、本発明の特徴は、上記磁性フェライトの出発原料のCu成分として、水酸化銅を用いることにある。ここで、水酸化銅とは、Cu(OH) 2 である。
【0017】
<積層インダクタ>
第1図および第2図には、本発明の積層インダクタすなわち積層型インダクタの好適例が示される。
【0018】
積層型インダクタ1は、磁性体層2と、導電体層3とが交互に積層一体化されて構成されるチップ体10を有する。
【0019】
そして、導電体層3はパターン状に形成されるとともに、隣接する導電体層3は、第2図に示されるように、互いに導通しており、これによりコイルが形成されている。
【0020】
さらに、このチップ体10の表面には、導電体層3と導通する外部電極5が設けられている。
【0021】
チップ体10の外形や寸法には特に制限がなく、用途等に応じて適宜選択すればよいが、通常、外形はほぼ直方体状の形状とし、寸法は(1.0〜5.6)mm×(0.5〜5.0)×(0.6〜1.9)mm程度とすればよい。
【0022】
積層型インダクタ1の磁性体層2の材質としては、上記のようなNi−Cu−Zn系磁性フェライトを使用する。Ni−Cu−Zn系磁性フェライトは、低温焼成材料であり、このような磁性層を用いたとき、本発明の積層型インダクタは焼成時液相の生成が無く、しかも電気抵抗の点で、より優れたものとなる。
【0023】
このような、フェライト系の磁性体層2は、後記の導電体層用ペーストと800〜950℃、特に850〜900℃の焼成温度にて同時焼成して形成できる。
【0024】
磁性体層2の焼成後の厚さには特に制限はないが、通常ベース厚は、250〜500μm 程度、導電体層3、3間の磁性体層厚は、10〜100μm 程度とする。
【0025】
導電体層3の材質としては、従来公知の導電体層材質は何れも使用できる。
【0026】
例えば、Ag、Cu、Pdやこれらの合金等を用いればよいが、このうち、AgまたはAg合金、特にAgが好適である。
【0027】
Ag合金としては、Agを95重量%以上含むAg−Pd合金等が好適である。
【0028】
このような導電体層3は、後述するように導電体層用ペーストを塗布した後、焼成して形成されるものである。
【0029】
この際、通常は、脱バインダ等によって導電体層3内部に、空孔が形成されることが多い。
【0030】
導電体層3は、第2図に示されるように、磁性体層2内にて、通常スパイラル状に配置され、その両端部は一対の各外部電極5、5に接続されている。
【0031】
このような場合、導電体層3の巻線パターン、すなわち閉磁路形状は種々のパターンとすることができ、また、その巻数、厚さ、ピッチ等も用途に応じ適宜選択すればよい。
【0032】
なお、導電体層3の厚さは、通常5〜30μm 程度、巻線ピッチは、通常40〜100μm 程度、巻数は、通常1.5〜50.5ターン程度とすればよい。
【0033】
また、外部電極5、5の材質については、特に制限がなく、各種導電体材料、例えばAg、Ni、Cu等あるいはAg−Pd等のこれらの合金などの印刷膜、メッキ膜、蒸着膜、イオンプレーティング膜、スパッタ膜あるいはこれらの積層膜などいずれも使用可能である。
【0034】
外部電極5、5の厚さは任意であり、目的や用途に応じ適宜決定すればよいが、通常5〜30μm 程度である。
【0035】
<積層型インダクタの製造方法>
次に、本発明の積層型インダクタの製造方法について説明する。
【0036】
まず、磁性体層用ペースト、導電体層用ペーストおよび外部電極用ペーストをそれぞれ製造する。
【0037】
<磁性体層用ペースト>
磁性体層用ペーストは、通常の方法で製造すればよい。
【0038】
例えば、フェライトペーストを製造するには、所定量のNiO、ZnO、Cu(OH)2 、Fe2 O3 等のフェライト原料粉末をボールミル等により湿式混合する。用いる各原料粉末の平均粒径は通常0.1〜10μm 程度とする。
【0039】
こうして湿式混合したものを、通常スプレードライヤー等により乾燥させ、その後仮焼する。これを通常は、平均粒径が0.01〜0.1μm 程度になるまでボールミル等にて湿式粉砕し、スプレードライヤー等により乾燥する。
【0040】
得られた混合フェライト粉末と、エチルセルロース、アクリル樹脂等のバインダーと、テルピネオール、ブチルカルビトール等の溶媒とを混合し、例えば3本ロール等で混練してペーストとする。
【0041】
この場合、ペースト中には各種ガラスや酸化物を含有させることができる。
【0042】
なお、フェライト粉末のほか、各種磁性粒子を用いることも可能である。
【0043】
<導電体層用ペースト>
導電体層用ペーストは、通常、導電性粒子と、バインダーと、溶剤とを含有する。
【0044】
導電性粒子の材質は、従来導電体層用ペーストに用いられるものであれば特に制限がなく、金属や金属酸化物等の焼成後に金属になるものを用いればよい。
【0045】
この場合、金属成分としては、Ag、Cu、Pd等の1種以上を含む金属単体、あるいはこれらの合金が好ましい。
【0046】
そして、特にAg、Ag合金、これらの酸化物が好適である。
【0047】
また、導電性粒子の形状には特に制限がないが、ほぼ球状の形状が好ましい。また、導電性粒子の平均粒径Dは、0.1〜1μm 、特に0.1〜0.4μm であることが好ましい。
【0048】
前記範囲未満ではペースト化が困難であり、また、印刷に適切でない。
【0049】
前記範囲をこえると高密度の導電体層を形成できない。
【0050】
この場合、本発明では導電性粒子の粒径分布がシャープなものを用いることが好ましい。
【0051】
具体的には、導電性粒子の平均粒径をDとするとき、D/2〜2Dの粒径の粒子が、全体の30重量%以上、特に40重量%以上存在することが好ましい。
【0052】
ただし、あまり大きくするのは困難であるため、30〜60重量%、特に40〜60重量%とすることが好ましい。
【0053】
前記範囲未満では高密度の導電体層を形成できない。
【0054】
なお、導電性粒子の粒径は、SEMにて観察し、粒子の投影面積から円換算して算出すればよい。
【0055】
<バインダー>
バインダーとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等公知のものはいずれも使用可能である。
【0056】
また、バインダー含有量は、通常1〜5重量%程度とする。
【0057】
溶剤としては、例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等公知のものはいずれも使用可能である。
【0058】
溶剤含有量は、通常10〜50重量%程度とする。この他、総計10重量%程度以下の範囲で、必要に応じ、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の分散剤や、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルフタリルグリコール酸ブチル等の可塑剤や、デラミ防止、焼結抑制等の目的で、誘電体、磁性体、絶縁体等の各種セラミック粉体等を添加することもできる。
【0059】
このような各組成物を混合し、例えば3本ロール等で混練してペーストとする。
【0060】
この場合、本発明の製造方法では、導電性粒子が過不足なくペースト内に分散されるように混練する。
【0061】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の基材上に、混練後の導電体層用ペーストを塗布し、塗膜の最上面を2000〜10000倍のSEM像にて、観察したとき、塗膜の最外面に導電性粒子が存在しない領域の面積比が20〜60%、好ましくは30〜50%、特に好ましくは35〜45%となるまで混練する。
【0062】
この場合、塗膜最外面とは、導電性粒子の平均粒径Dの1〜5倍程度の領域である。
【0063】
前記範囲未満あるいは前記範囲をこえると、間隙6内にて、導電体層3が占める断面面積比が85%をこえ、また、磁性体層2と、導電体層3との接触率が50%をこえ、また、導電体層3の空孔率が50%をこえる。
【0064】
このような所望の分散性を有する導電体層用ペーストを得るには、例えば3本ロールのロール間隙、粘度、混練時間等を適宜調整すればよい。
【0065】
外部電極用ペーストは、前記の導電体材料粉末を含有する通常のペーストを用いればよい。
【0066】
このような磁性体層用ペーストと導電体層用ペーストは、印刷法、転写法、グリーンシート法等により、積層される。
【0067】
そして、所定の積層体寸法に切断した後、焼成を行なう。
【0068】
焼成条件や焼成雰囲気は、材質等に応じて適宜決定すればよいが、通常下記のとおりである。
【0069】
焼成温度:850〜950℃程度
焼成時間:0.5〜5時間程度
【0070】
また、導電体層にCu、Ni等を用いる場合は、非酸化性雰囲気とし、このほか、Ag、Pd等を用いる場合は大気中でよい。
【0071】
<複合積層部品>
本発明の好適実施例である積層セラミックLC複合部品を図3に示す。
【0072】
図3に示されるLC複合部品20は、セラミック誘電体層21と内部電極層25とを積層して構成されるコンデンサチップ体CTと、セラミック磁性層31と内部導体35とを積層して構成されるインダクタチップ体ITを一体化したものであり、表面に外部電極51を有する。なお、インダクタチップ体IT自体は、上記積層インダクタ1のチップ体10と同じであってよいので、ここではその説明を省略する。
【0073】
<コンデンサチップ体>
コンデンサチップ体CTのセラミック誘電体層21には特に制限がなく種々の誘電体材料を用いてよいが、焼成温度が低いことから、酸化チタン系誘電体を用いることが好ましい。また、その他、チタン酸系複合酸化物、ジルコン酸系複合酸化物、あるいはこれらの混合物を用いることもできる。また、焼成温度を低下させるために、ホウケイ酸ガラス等のガラスを含有させてもよい。
【0074】
具体的には、酸化チタン系としては、必要に応じNiO、CuO、Mn3 O4 、Al2 O3 、MgO、SiO2 等、特にCuOを含むTiO2 等が、チタン酸系複合酸化物としては、BaTiO3 、SrTiO3、 CaTiO3 、MgTiO3 やこれらの混合物等が、ジルコン酸系複合酸化物としては、BaZrO3 、SrZrO3 、CaZrO3 、MgZrO3 やこれらの混合物等が挙げられる。
【0075】
<内部電極層>
本発明において、内部電極層25を構成する導電材に特に制限はなく、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Niや、例えばAg−Pd合金など、これらを1種以上含有する合金等から選択すればよいが、特にAg、Ag−Pd合金などのAg合金等が好適である。
【0076】
<構造>
LC複合部品1のコンデンサチップ体CTは、従来公知の構造とすればよく、外形は通常ほぼ直方体状の形状とする。そして図1に示されるように、内部電極層25の一端は外部電極51に接続されている。
【0077】
コンデンサチップ体CTの各部寸法等には特に制限はなく、用途等に応じ適宜選択すればよい。
【0078】
なお、誘電体層21の積層数は目的に応じて定めればよいが、通常1〜100程度である。また、誘電体層21の一層あたりの厚さは、通常20〜150μm 程度であり、内部電極層25の一層あたりの厚さは、通常5〜30μm 程度である。
【0079】
<外部電極の導電材>
本発明のLC複合部品1の外部電極51を構成する導電材に特に制限はなく、例えば、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、NiやAg−Pd合金などのこれらを1種以上含有する合金等から選択すればよいが、特にAg、Ag−Pd合金などのAg合金等が好適である。また、外部電極51の形状や寸法等には特に制限がなく、目的や用途等に応じて適宜決定すればよいが、厚さは、通常100〜2500μm 程度である。
【0080】
<LC複合部品の構造>
本発明のLC複合部品1の寸法には特に制限がなく、目的や用途等に応じて適宜選択すればよいが、通常(2.0〜10.0mm)×(1.2〜15.0mm)×(1.2〜5.0mm)程度である。
【0081】
<磁心>
磁心材料として、本発明の磁性フェライトを用いることにより、短時間の製造時間で特性の良好な磁心を得ることができる。
【0082】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0083】
なお、本明細書においては、チップインダクタで効果を特定できるので、複合積層部品についての実施例は省略する。
【0084】
下記の各ペーストを調製した。
【0085】
(磁性体層用ペースト)
最終組成でFe2 O3 :49モル%、NiO:8モル%、Cu(OH)2 :13モル%およびZnO:30モル%となるように出発原料を混合した。これらを、ボールミルを用いて5時間湿式混合し、ついで、この湿式混合物をスプレードライヤーにより乾燥し、700℃にて仮焼し、顆粒として、これをボールミルにて湿式粉砕したのちスプレードライヤーで乾燥し、最終平均粒径0.1〜0.3μm のNi−Cu−Znフェライト原料粉末とした。以上により、本発明の実施例によるNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。
【0086】
一方、Cu(OH)2 の代わりに、CuOを用い、16時間と5時間と時間を変えて湿式混合し、その他を上記実施例と同様にして比較例1および2のNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。また、Cu(OH)2 の代わりに、Cu2 Oを用い、5時間湿式混合し、その他を上記実施例と同様にして比較例3のNi−Cu−Znフェライト原料粉末を得た。
【0087】
次いで、これらの原料粉末100重量部に対し、エチルセルロース3.84重量部およびテルピネオール78重量部を加え、三本ロールにて混練し、ペーストとした。
【0088】
(内部導体用ペースト)
平均粒径0.8μm のAg100重量部に対し、エチルセルロース2.5重量部およびテルピネオール40重量部を加え、三本ロールにて混練し、ペーストとした。
【0089】
このようにして作製された磁性層用ペーストと内部導体用ペーストとを印刷積層し、積層型チップインダクタを製造した。
【0090】
この場合、焼成温度は890℃、焼成時間は2時間とし、焼成雰囲気は大気中とした。
【0091】
得られた積層型チップインダクタの寸法は、3.2mm×1.6mm×1.1mm、巻数9.5ターンとした。
【0092】
また、試験用に上記フェライト原料粉末を使用して、同様の焼成条件にてトロイダルコアを製造した。このトロイダルコアの外径は11.1mm、内径は5.1mm、厚みは2.4mm、巻数は20ターン、線径は0.35mmとした。
【0093】
上記積層型チップインダクタについて、測定周波数400kHzの条件にてのL(インダクタンス)およびQを、そしてトロイダルコアについて、焼成後における収縮率%、密度g/cm3 、測定周波数400kHzの条件にてのμおよびQ等を求めた。得られた結果を表1および表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表1および表2に示す結果から分かるように、配合の原料を酸化銅から水酸化銅とすることにより、短時間(5時間)の配合混合時間でも、長時間(16時間)配合混合と同等な電磁気特性が得られた。また、表2から分かるように、焼結性が向上し、焼結密度も向上している。この理由として、酸化銅の代わりに水酸化銅を用いることで、短時間(5時間)の配合混合時間でも各原料粉末が均一に分散され、磁気劣化の原因であったCuOの偏析がなくなり、均一なフェライト組織が得られたと考えられる。
【0097】
【発明の効果】
以上から明瞭なように、本発明によれば、原料粉末を短時間で配合混合することができ、しかも良好な電磁気特性を持つ磁性フェライトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型インダクタの一例を示す断面図である。
【図2】上記積層型インダクタの一部破さい平面図である。
【図3】本発明の複合LC積層部品の一部を切り欠いて示した斜視図である。
【符号の説明】
1 積層型インダクタ
2 磁性体層
3 導電体層
5 外部電極
10 チップ体
20 複合LC積層部品
CT コンデンサチップ体
IT インダクタチップ体
21 セラミック誘電体層
25 内部電極
31 セラミックス磁性層
35 内部導体
51 外部電極
Claims (1)
- NiO、CuO、ZnOおよびFe2 O3 を含み、
フェライトの組成がFe2 O3 :45〜50mol%、NiO:4〜50mol%、CuO:3〜30mol%およびZnO:0.5〜35mol%である磁性フェライトを製造する方法において、
Cu成分の出発原料としてCu(OH) 2 の粉末を用いて、Ni成分、Zn成分およびFe成分の出発原料として、それぞれNiO、ZnOおよびFe 2 O 3 の粉末を用い、これらの粉末を湿式混合することを特徴とする磁性フェライトの製造方法。
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