[第1実施形態]
<1.積層セラミックコンデンサ>
1.1 積層セラミックコンデンサの全体構成
本実施形態に係る電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1が図1Aおよび図1Bに示される。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、素子本体10の寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
1.2 誘電体層
誘電体層2は、後述する本実施形態に係る誘電体組成物から構成されている。
誘電体層2の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意に設定することができる。通常は、層間厚みは30μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは2μm以下である。また、誘電体層2の積層数は特に限定されないが、本実施形態では、たとえば20以上であることが好ましい。
1.3 内部電極層
本実施形態では、内部電極層3は、各端部が素子本体10の対向する2端面の表面に交互に露出するように積層してある。
内部電極層3の厚みは特に限定されないが、たとえば1μm以下であり、好ましくは0.8μm以下である。
内部電極層3に含有される導電材としては特に限定されない。導電材として用いられる貴金属としては、たとえばPd、Pt、Ag-Pd合金等が挙げられる。導電材として用いられる卑金属としては、たとえばNi、Ni系合金、Cu、Cu系合金等が挙げられる。なお、Ni、Ni系合金、CuまたはCu系合金中には、Pおよび/またはS等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
1.4 外部電極
外部電極4に含有される導電材は特に限定されない。たとえばNi、Cu、Sn、Ag、Pd、Pt、Auあるいはこれらの合金、導電性樹脂等公知の導電材を用いればよい。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
<2.誘電体組成物>
図2に示すように、本実施形態に係る誘電体層2を構成する誘電体組成物は、主相14の間に第1偏析相16および第2偏析相18を含む。ここで、REは希土類元素を表す。
2.1 主相
本実施形態の主相14はABO3で表される化合物を主成分として含む。なお、主相14の主成分とは、主相100質量部に対して、80~100質量部を占める成分であり、好ましくは、90~100質量部を占める成分である。
(Aのモル比/Bのモル比)で表されるAとBとのモル比は1であってもよいし、1でなくてもよい。AとBのモル比は0.9~1.2であることが好ましい。
なお、(Aのモル比/Bのモル比)が1より大きいと、Ba-RE-Si-O偏析相および後述するBa-RE-Si-Ti-O偏析相が形成され易くなる傾向となる。
Aはバリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)から選ばれる少なくともいずれか1つを含む。本実施形態では、Aはバリウム(Ba)であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
また、Aがバリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)である場合には、バリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)の合計を1モル部とした場合に、バリウム(Ba)の含有量が0.9~1モル部であることが好ましい。
Bはチタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる少なくともいずれか1つを含む。本実施形態では、Bはチタン(Ti)であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より高い抵抗率を示すことができる。
また、Bがチタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)である場合には、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の合計を1モル部とした場合に、チタン(Ti)の含有量が0.8~1モル部であることが好ましい。
本実施形態では、主相14にマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)から選ばれる少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。本実施形態では、主相にマグネシウム(Mg)およびマンガン(Mn)を含むことが好ましい。
本実施形態では、主相14のチタン(Ti)100モル部に対して、マグネシウム(Mg)を0.05~2モル部含むことが好ましい。
本実施形態では、主相14のチタン(Ti)100モル部に対して、マンガン(Mn)もしくはクロム(Cr)を0.05~0.4モル部含むことが好ましい。
本実施形態では、主相14のチタン(Ti)100モル部に対して、ケイ素(Si)を0.5~5モル部含むことが好ましい。
本実施形態では、主相14のチタン(Ti)100モル部に対して、希土類元素(RE)を0.5~5モル部含むことが好ましい。
本実施形態では、主相14は必要に応じて、バナジウム(V)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)等の元素を含有してもよい。
本実施形態では、主相14のチタン(Ti)100モル部に対して、主相14に含まれるバナジウム(V)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)の合計は1モル部未満であることが好ましい。
2.2 第1偏析相
図2に示すように、本実施形態に係る誘電体層2を構成する誘電体組成物は、上記の主相14の間に、第1偏析相16を含む。本実施形態に係る第1偏析相16は、実質的に{RExCa(1-x)}TiO{3+(x/2)}で表される化合物で構成される。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、高い抵抗率を示すことができる。その理由としては、第1偏析相16の抵抗率が高いことと、主相14と第1偏析相16の接合面の抵抗が高いことが考えられる。
ここで、「第1偏析相16が、実質的に{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物で構成される。」とは、以下に示すことを意味する。すなわち、これは、第1偏析相16に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、第1偏析相16に含まれる希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)が合計で70モル%以上の場合であり、好ましくは80モル%以上の場合であり、なおかつ、バリウム(Ba)のモル比が10モル%未満であり、好ましくは5モル%の場合である。
本実施形態において、誘電体層2を構成する誘電体組成物が第1偏析相16を有するか否かを判断する方法としては、特に限定されないが、以下に具体的な方法を例示する。
まず、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて誘電体組成物の断面を撮影し、明視野(BF)像を得る。撮影する視野の広さは特に限定されないが、たとえば、1~10μm四方程度の広さである。この明視野像において主相14とは異なるコントラストを有する領域を異相であると認定する。異なるコントラストを有するか否か、すなわち異相を有するか否かの判断は、目視により行ってもよいし、画像処理を行うソフトウェア等により判断してもよい。
そして、上記の異相について、EDS分析により、希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の各量を測定する。
異相の同じ位置に希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれる希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の合計が70モル%以上であり、なおかつ、バリウム(Ba)のモル比が10モル%未満である場合には、その異相は実質的に{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物で構成されており、第1偏析相16であると判断する。
この他にも、マッピング画像により第1偏析相16の有無を判断してもよい。具体的には、希土類元素(RE)のマッピング画像と、カルシウム(Ca)のマッピング画像と、チタン(Ti)のマッピング画像と、を比較して、同じ位置に希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)が存在している箇所を特定する。そして、特定された箇所に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、特定された箇所に含まれる希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびケイ素(Si)の合計が70モル%以上であり、バリウム(Ba)のモル比が10モル%未満である場合には、その特定された箇所は実質的に{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物で構成されており、第1偏析相16であると判断する。
本実施形態では、第1偏析相16の面積比率を「(第1偏析相16の面積/第2偏析相の面積)×100[%]」の式で表す。
本実施形態では、第1偏析相16の面積比率が0.1~10%であることが好ましく、1~8%であることがより好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16の円相当径が0.05~1μmであることが好ましく、0.1~0.5μmであることがより好ましい。なお、円相当径とは、当該形状の面積と同じ面積を有する円の径を示す。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16は略矩形であることが好ましい。これにより、第1偏析相16と主相14の界面の整合性を高くすることで界面の抵抗を高くすることができ、誘電体組成物全体の抵抗率を高くすることができる。
本実施形態では、{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}において、xは好ましくは0.8~1であり、より好ましくは0.9~1であり、さらに好ましくは1である。
本実施形態では、{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}において、mは好ましくは0.833~1.250であり、より好ましくは1である。
本実施形態では、第1偏析相16に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、第1偏析相16には、希土類元素(RE)が36~55モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
希土類元素(RE)の種類は、特に限定されないが、たとえばイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)またはホルミウム(Ho)を用いることができる。希土類元素(RE)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態では、第1偏析相16に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、第1偏析相16には、カルシウム(Ca)が11モル%以下含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、第1偏析相16には、チタン(Ti)が44~55モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
なお、本実施形態では、第1偏析相16は上記の元素以外の元素を含んでいてもよく、たとえばマグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等の元素を含有してもよい。
本実施形態では、第1偏析相16には、バリウム(Ba)が実質的に含まれないことが好ましい。第1偏析相16に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、第1偏析相16には、バリウム(Ba)が10モル%未満含まれてもよい。
本実施形態では、第1偏析相16を実質的に構成する{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物のxが1である場合、すなわち、カルシウム(Ca)が含まれない場合は、RE2mTiO7で表される化合物の結晶系は立方晶であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16を実質的に構成する{RE
xCa
(1-x)}
mTiO
{2+m(1+x)}で表される化合物のxが1である場合、すなわち、カルシウム(Ca)が含まれない場合は、RE
mTiO
2+3m/2で表される化合物の空間群は
あることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16を実質的に構成する{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物のxが1未満である場合、すなわち、カルシウム(Ca)が含まれる場合は、{RExCa(1-x)}mTiO{2+m(1+x)}で表される化合物の結晶系は斜方晶であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、第1偏析相16を実質的に構成する{RE
xCa
(1-x)}
mTiO
{2+m(1+x)}で表される化合物のxが1未満である場合、すなわち、カルシウム(Ca)が含まれる場合は、{RE
xCa
(1-x)}
mTiO
{2+m(1+x)}で表される化合物の空間群は
であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
2.3 第2偏析相
図2に示すように、本実施形態に係る誘電体層2を構成する誘電体組成物は、上記の主相14の間に、第1偏析相16の他に、第2偏析相18を含む。本実施形態に係る第2偏析相18は、前記Ba-RE-Si-O偏析相および前記Ba-RE-Si-Ti-O偏析相のうちの少なくともいずれか1つである。Ba-RE-Si-O偏析相は、実質的にBa-RE-Si-O系化合物で構成される。また、前記Ba-RE-Si-Ti-O偏析相は、実質的にBa-RE-Si-Ti-O系化合物で構成される。これにより、本実施形態の誘電体組成物の密度を高くできる。
誘電体組成物の断面の10μm四方におけるBa-RE-Si-O偏析相の数をN1とし、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相の数をN2とする。
本実施形態では、「N1/(N1+N2)×100(%)」が70%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。すなわち、本実施形態の誘電体組成物は、第2偏析相18として、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に比べて、Ba-RE-Si-O偏析相を多く含む。
なお、焼成後に第1偏析相16を構成する第1添加剤にチタン(Ti)が含まれていなくても、主相14に含まれるチタン(Ti)が拡散して、Ba-RE-Si-O偏析相に含まれることがある。
ここで、「Ba-RE-Si-O偏析相18が、実質的にBa-RE-Si-O系化合物で構成される。」とは、以下に示すことを意味する。すなわち、これは、Ba-RE-Si-O偏析相18に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-O偏析相に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)が合計で97モル%を超える場合である。
ここで、「Ba-RE-Si-Ti-O偏析相が、実質的にBa-RE-Si-Ti-O系化合物で構成される。」とは、以下に示すことを示す。すなわち、これは、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれるチタン(Ti)のモル比が3モル%以上であり、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)が合計で98モル%以上含まれることである。
本実施形態において、誘電体層2を構成する誘電体組成物がBa-RE-Si-O偏析相を有するか否かを判断する方法としては、特に限定されないが、以下に具体的な方法を例示する。
まず、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて誘電体組成物の断面を撮影し、明視野(BF)像を得る。撮影する視野の広さは特に限定されないが、たとえば、1~10μm四方程度の広さである。この明視野像において主相14とは異なるコントラストを有する領域を異相であると認定する。異なるコントラストを有するか否か、すなわち異相を有するか否かの判断は、目視により行ってもよいし、画像処理を行うソフトウェア等により判断してもよい。
そして、上記の異相について、EDS分析により、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の各量を測定する。
異相の同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の合計が97モル%を超える場合には、その異相はBa-RE-Si-O偏析相であると判断する。
この他にも、マッピング画像によりBa-RE-Si-O偏析相の有無を判断してもよい。具体的には、バリウム(Ba)のマッピング画像と、希土類元素(RE)のマッピング画像と、ケイ素(Si)のマッピング画像と、を比較して、同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)が存在している箇所を特定する。そして、特定された箇所に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、特定された箇所に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の合計が97モル%を超える場合には、その特定された箇所はBa-RE-Si-O偏析相であると判断する。
Ba-RE-Si-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-O偏析相には、バリウム(Ba)が10~25モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
Ba-RE-Si-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-O偏析相には、希土類元素(RE)が33~59モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
希土類元素(RE)の種類は、特に限定されないが、たとえばイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)またはホルミウム(Ho)を用いることができる。希土類元素(RE)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
Ba-RE-Si-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-O偏析相には、ケイ素(Si)が16~50モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
なお、Ba-RE-Si-O偏析相は上記の元素以外の元素を含んでいてもよく、たとえばカルシウム(Ca)等の元素を含有してもよい。
Ba-RE-Si-O偏析相には、カルシウム(Ca)が実質的に含まれないことが好ましい。Ba-RE-Si-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、カルシウム(Ca)は2モル%以下含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、Ba-RE-Si-O系化合物の結晶系は正方晶であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、Ba-RE-Si-O系化合物の空間群は
であることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、より密度が高く、なおかつ、より高い抵抗率を示すことができる。
結晶系が正方晶であり、空間群が
であるBa-RE-Si-O系化合物としては、たとえばBa
5Y
13Si
8O
41が挙げられる。
<3.積層セラミックコンデンサの製造方法>
次に、図1に示す積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について以下に説明する。
本実施形態では、上記の誘電体組成物を構成する主相14の主成分であるABO3粒子の仮焼き粉末と、第1添加剤の仮焼き粉末と、第2添加剤の仮焼き粉末と、を用意する。
第1添加剤の仮焼き粉末とは、焼成後に第1偏析相16を構成する希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の仮焼き粉末である。
第2添加剤の仮焼き粉末とは、焼成後に第2偏析相18を構成するバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の仮焼き粉末である。
また、第3添加剤とは、焼成後に主相14に含まれることになるマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)の仮焼き粉末である。なお、第3添加剤には、さらにバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)を含めることもできる。第3添加剤に含まれたバリウム、希土類元素およびケイ素は主相14に含まれることになる。
上記の各元素の原料としては特に限定されず、各元素の酸化物を用いることができる。また、焼成により各元素の酸化物を得ることができる各種化合物を用いることができる。各種化合物としては、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等が例示される。本実施形態では、上記の出発原料は粉末であることが好ましい。
準備した出発原料のうち、ABO3粒子の原料を所定の割合に秤量した後、ボールミル等を用いて所定の時間、湿式混合を行う。混合粉を乾燥後、大気中において700~1300℃の範囲で熱処理を行い、ABO3粒子の仮焼き粉末を得る。また、仮焼き粉末はボールミル等を用いて所定の時間、粉砕を行ってもよい。
焼成後に第1偏析相16を構成する希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の酸化物等の各種化合物等を準備し、熱処理した後にボールミル等を用いて所定の時間で粉砕して第1添加剤の仮焼き粉末を得る。たとえば、粉砕時間を変えることで、第1偏析相16の円相当径を変えることができる。
焼成後にBa-RE-Si-O偏析相を構成するバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の酸化物等の各種化合物等を準備し、熱処理した後にボールミル等を用いて所定の時間で粉砕して第2添加剤の仮焼き粉末を得る。たとえば、粉砕時間を変えることで、第2偏析相18の円相当径を変えることができる。
焼成後に主相14に含まれることになるマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)の酸化物や炭酸塩等の各種化合物等を準備し、熱処理して第3添加剤の仮焼き粉末を得る。
続いて、グリーンチップを作製するためのペーストを調製する。得られたABO3粒子の仮焼き粉末と、第1添加剤の仮焼き粉末と、第2添加剤の仮焼き粉末と、第3添加剤の仮焼き粉末と、バインダと、溶剤と、を混練し塗料化して誘電体層用ペーストを調製する。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。
誘電体層用ペーストは、必要に応じて、可塑剤や分散剤等の添加物を含んでもよい。
内部電極層用ペーストは、上述した導電材の原料と、バインダと、溶剤と、を混練して得られる。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。内部電極層用ペーストは、必要に応じて、共材や可塑剤等の添加物を含んでもよい。
外部電極用ペーストは、内部電極層用ペーストと同様にして調製することができる。
得られた各ペーストを用いて、グリーンシートおよび内部電極パターンを形成し、これらを積層してグリーンチップを得る。
得られたグリーンチップに対し、必要に応じて、脱バインダ処理を行う。脱バインダ処理条件は、たとえば、保持温度を好ましくは200~350℃とする。
脱バインダ処理後、グリーンチップの焼成を行い、素子本体10を得る。本実施形態では、焼成時の雰囲気は特に限定されず、空気中であってもよいし、還元雰囲気下であってもよい。本実施形態では、焼成時の保持温度は特に限定されず、たとえば1200~1350℃である。
焼成後、得られた素子本体10に対し、必要に応じて、再酸化処理(アニール)を行う。アニール条件は、たとえば、アニール時の酸素分圧を焼成時の酸素分圧よりも高い酸素分圧とし、保持温度を1150℃以下とすることが好ましい。
上記のようにして得られた素子本体10の誘電体層2を構成する誘電体組成物は、上述した誘電体組成物である。この素子本体10に端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けし、外部電極4を形成する。そして、必要に応じて、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1が製造される。
回路基板に搭載されている積層セラミックコンデンサ1は、回路基板の撓み等の変形により応力が印加されることがある。そのため、誘電体組成物には、機械的強度が高いことが求められる。
これに対して、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、上記の通り密度が高い誘電体組成物を含む誘電体層2を備えることにより、高い強度を示すことができる。
本実施形態では、素子本体10の縦寸法L0(図1A参照)は、3.5~0.4mmであることが好ましい。本実施形態では、素子本体10の幅寸法W0(図1B参照)は、2.7~0.2mmであることが好ましい。本実施形態では、素子本体10の高さ寸法H0(図1B参照)は、2.7~0.2mmであることが好ましい。素子本体10のサイズを小さくすることで、積層セラミックコンデンサ1を実装した基板がひずんだ際に、積層セラミックコンデンサ1に機械的な故障が生じにくくなる。すなわち、本実施形態に係る誘電体組成物から構成される素子本体10は、そのサイズを小さくすることで、機械的強度がより向上する傾向となる。
素子本体10の具体的なサイズとしては、L0×W0が(3.2±0.3)mm×(2.5±0.2)mm、(3.2±0.3)mm×(1.6±0.2)mm、(2.0±0.2)mm×(1.2±0.1)mm、(1.6±0.2)mm×(0.8±0.1)mm、(1.0±0.1)mm×(0.5±0.05)mm、(0.6±0.06)mm×(0.3±0.03)mm、(0.4±0.04)mm×(0.2±0.02)mmの場合等が挙げられる。また、H0は特に限定されず、たとえばW0と同等以下程度である。
[第2実施形態]
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1と同様である。
本実施形態では、「N1/(N1+N2)×100(%)」が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。すなわち、本実施形態の誘電体組成物は、第2偏析相18として、Ba-RE-Si-O偏析相に比べて、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相を多く含む。
本実施形態において、誘電体層を構成する誘電体組成物がBa-RE-Si-Ti-O偏析相を有するか否かを判断する方法としては、特に限定されないが、たとえば第1実施形態と同様の方法により判断することができる。
まず、第1実施形態と同様にして、STEMを用いて誘電体組成物の断面中に異相を認定する。
そして、上記の異相について、EDS分析により、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の各量を測定する。
異相の同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれるチタン(Ti)のモル比が3モル%以上であり、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の合計が98モル%以上である場合には、その異相はBa-RE-Si-Ti-O偏析相であると判断する。
この他にも、マッピング画像によりBa-RE-Si-Ti-O偏析相の有無を判断してもよい。具体的には、バリウム(Ba)のマッピング画像と、希土類元素(RE)のマッピング画像と、ケイ素(Si)のマッピング画像と、チタン(Ti)のマッピング画像と、を比較して、同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)が存在している箇所を特定する。そして、特定された箇所に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、特定された箇所に含まれるチタン(Ti)が3モル%以上であり、特定された箇所に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の合計が98モル%以上である場合には、その特定された箇所はBa-RE-Si-Ti-O偏析相であると判断する。
本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相には、バリウム(Ba)が10~25モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相には、希土類元素(RE)が33~59モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相には、ケイ素(Si)が12~50モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相には、チタン(Ti)が3~17モル%含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
なお、本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相は上記の元素以外の元素を含んでいてもよく、たとえばカルシウム(Ca)等の元素を含有してもよい。
本実施形態では、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相には、カルシウム(Ca)が実質的に含まれないことが好ましい。Ba-RE-Si-Ti-O偏析相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、カルシウム(Ca)が2モル%以下含まれることが好ましい。これにより、本実施形態の誘電体組成物は、密度が高く、高い抵抗率を示すことができる。
本実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法は特に限定されないが、たとえば第2添加剤にさらに、チタン(Ti)を含ませて、第1実施形態と同様の方法により製造することで、本実施形態の積層セラミックコンデンサを得ることができる。
この他に、たとえばBがチタン(Ti)を含み、(Aのモル比/Bのモル比)で表されるAとBのモル比が1未満であるABO3を主相14の主成分として用いる。これにより、主相14に含まれるチタン(Ti)が第2偏析相18に拡散するため、第2添加剤の仮焼き粉末の原料にチタン(Ti)の酸化物を含めなくてもBa-RE-Si-Ti-O偏析相を得ることができる。
[第3実施形態]
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、以下に示す以外は、第1実施形態および第2実施形態の積層セラミックコンデンサと同様である。
本実施形態の誘電体組成物では、第2偏析相18として、Ba-RE-Si-O偏析相と、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相と、が混在している。
本実施形態の誘電体組成物において、Ba-RE-Si-O偏析相と、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相と、が混在しているか否かを判断する方法としては、特に限定されないが、たとえば以下のように、第1実施形態および第2実施形態と同様にして判断することができる。
まず、第1実施形態と同様にして、Ba-RE-Si-O偏析相を認定し、第2実施形態と同様にして、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相を認定する。
本実施形態では、「N1/(N1+N2)×100(%)」が10~90%である場合を「Ba-RE-Si-O偏析相と、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相とが混在している」と判断する。
本実施形態では、「N1/(N1+N2)×100(%)」が30%超70%未満である場合を「Ba-RE-Si-O偏析相と、Ba-RE-Si-Ti-O偏析相とが混在している」と判断することが好ましい。
本実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法としては、特に限定されないが、たとえばチタン(Ti)を含まない第2添加剤の仮焼き粉末と、チタン(Ti)を含む第2添加剤の仮焼き粉末と、を準備し、これらを組み合わせる。この他は第1実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法と同様にして、本実施形態の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
[変形例]
上述した実施形態では、本発明に係る電子部品が積層セラミックコンデンサである場合について説明したが、本発明に係る電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、上述した誘電体組成物を有する電子部品であれば何でもよい。
たとえば、上述した誘電体組成物に一対の電極が形成された単板型のセラミックコンデンサであってもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変してもよい。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
誘電体組成物に含まれる複合酸化物粒子の出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)の粉末を準備した。焼成後の主相の主成分化合物が表1、3、5、7、9および11に記載の通りになるように、準備した出発原料を秤量した。
次に、秤量した各粉末を、分散媒としてのイオン交換水を用いてボールミルにより16時間湿式混合し、混合物を乾燥して混合原料粉末を得た。その後、得られた混合原料粉末を、大気中において保持温度900℃、保持時間2時間の条件で熱処理を行い、主相の主成分化合物の仮焼き粉末を得た。
また、第1添加剤の原料として、希土類元素(RE)の酸化物、炭酸カルシウム(CaCO3)および酸化チタン(TiO2)の粉末を準備した。第1添加剤の添加量が表1、3、5、7、9および11に記載の通りになるように、準備した出発原料を秤量した。
また、第2添加剤の原料として、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、希土類元素(RE)の酸化物、酸化ケイ素(SiO2)および/または酸化チタン(TiO2)の粉末を準備した。第2添加剤の添加量が表1、3、5、7、9および11に記載の通りになるように、準備した出発原料を秤量した。
なお、表1、3、5、7、9および11に記載の第2添加剤の添加量は、主相の主成分化合物を100質量%としたときの第2添加剤の添加量を示している。
炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、希土類元素(RE)の酸化物、酸化ケイ素(SiO2)および/または酸化チタン(
TiO2)の粉末に対して、大気中において保持温度900℃、保持時間2時間の条件で熱処理を行い、第2添加剤の仮焼き粉末を得た。
また、第3添加剤の原料として、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マンガン(MnO)および酸化クロム(Cr2O3)の粉末を準備した。主相のチタン(Ti)100モル部に対するマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)の含有量が表1、3、5、7、9および11に記載の通りになるように、準備した出発原料を秤量した。
炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マンガン(MnO)および酸化クロム(Cr2O3)の粉末に対して、大気中において保持温度900℃、保持時間2時間の条件で熱処理を行い、第3添加剤の仮焼き粉末を得た。
得られた主相の主成分化合物の仮焼き粉末、第1添加剤、第2添加剤の仮焼き粉末および第3添加剤の仮焼き粉末を分散媒としてのイオン交換水を用いてボールミルにより16時間湿式粉砕し、粉砕物を乾燥した。
粉砕物100質量%に対して、バインダとしてのポリビニルアルコール樹脂を6質量%含む水溶液を10質量%加えて造粒し、造粒粉を得た。
得られた造粒粉をφ12mmの金型に投入し、0.6ton/cm2の圧力で仮プレス成形し、さらに、1.2ton/cm2の圧力で本プレス成形して、円盤状のグリーン成形体を得た。
得られたグリーン成形体を還元雰囲気下で焼成し、さらにアニール処理を行い、還元雰囲気下で焼成した焼結体(誘電体組成物)を得た。焼成条件は、昇温速度を200℃/h、保持温度を1250℃、保持時間を2時間とした。雰囲気ガスは、露点20℃に加湿した窒素と水素との混合ガス(水素濃度3%)とした。また、アニール処理条件は、保持温度を1050℃、保持時間を2時間とした。雰囲気ガスは、露点20℃に加湿した窒素ガスとした。
得られた焼結体の両主面にIn-Ga合金を塗布して、一対の電極を形成することにより、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
得られた誘電体組成物の断面の10μm×10μmの視野について、STEMにより異相を認定し、EDSを用いて、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の各量を測定した。
同じ位置に希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれる希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)および(Ti)の合計が70モル%以上であり、バリウム(Ba)のモル比が10モル%未満である場合には、その異相は第1偏析相であると判断した。
同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素(RE)およびケイ素(Si)の合計が97モル%を超える場合には、その異相はBa-RE-Si-O偏析相18であると判断した。
同じ位置にバリウム(Ba)、希土類元素、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)が存在しており、異相に含まれる酸素以外の元素の合計を100モル%としたとき、異相に含まれるチタン(Ti)のモル比が3モル%以上であり、バリウム(Ba)、希土類元素(RE)、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の合計が98モル%以上である場合には、その異相はBa-RE-Si-Ti-O偏析相であると判断した。
表2、4、6、8、10および12では、「N1/(N1+N2)×100(%)」が70%以上の場合は、「Ba-RE-Si-O偏析相」と記載しており、「N1/(N1+N2)×100(%)」が30%以下の場合は、「Ba-RE-Si-Ti-O偏析相」と記載しており、「N1/(N1+N2)×100(%)」が30%超70%未満の場合は、「Ba-RE-Si-O偏析相およびBa-RE-Si-Ti-O偏析相の混在」と記載している。
なお、希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の第1添加剤のモル比と、第1偏析相に含まれる希土類元素(RE)、カルシウム(Ca)およびチタン(Ti)の平均のモル比は一致していた。
また、バリウム(Ba)、希土類元素、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の第2添加剤のモル比と、第2偏析相に含まれるバリウム(Ba)、希土類元素、ケイ素(Si)およびチタン(Ti)の平均のモル比はそれぞれ一致していた。
得られた誘電体組成物に含まれていた第1偏析相について,電子線回折を行い、電子線回折図形を分析することで結晶系を解析した。結果を表1、3、5、7、9および11に示す。
なお、表9および表10の試料では、第1偏析相の面積比率を測定した。結果を表9に示す。
表11および表12の試料番号111~118では、第1偏析相の円相当径および第2偏析相の円相当径を測定した。結果を表11および表12に示す。
なお、第1添加剤の仮焼き粉末を得る際の粉砕時間は表11に記載の通りであった。
また、第2添加剤の仮焼き粉末を得る際の粉砕時間は表12に記載の通りであった。
コンデンサ試料の密度は以下のようにして測定した。焼成後の円盤状のコンデンサ試料の直径を3か所測定して直径Rを得た。次に円盤状のコンデンサ試料の厚みを3か所測定して厚みhを得た。得られたRとhを使用し、円盤状のコンデンサ試料の体積V(=1/4・π・R2・h)を算出した。ここでのπは円周率を示す。続いて、円盤状のコンデンサ試料の質量mを測定し、m/Vを計算することで円盤状のコンデンサ試料の密度を得た。3個の試料について評価した密度の結果の平均値を表2、4、6、8、10および12に示す。
表1~12より、第1偏析相および第2偏析相を有する場合(試料番号5~32、41~78、81~84、91~94、101、111~118)は、第1偏析相を有していない場合(試料番号1および4)に比べて、抵抗率が高いことが確認できた。
表1~12より、第1偏析相および第2偏析相を有する場合(試料番号5~32、41~78、81~84、91~94、101、111~118)は、第2偏析相を有していない場合(試料番号1~3)に比べて、密度が高いことが確認できた。