JP2002234957A - 磁気記録媒体用ポリエステルフィルム、その製造方法および磁気記録テープ - Google Patents

磁気記録媒体用ポリエステルフィルム、その製造方法および磁気記録テープ

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JP2002234957A
JP2002234957A JP2001033959A JP2001033959A JP2002234957A JP 2002234957 A JP2002234957 A JP 2002234957A JP 2001033959 A JP2001033959 A JP 2001033959A JP 2001033959 A JP2001033959 A JP 2001033959A JP 2002234957 A JP2002234957 A JP 2002234957A
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polyester film
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Masaaki Ono
雅章 小野
Katsuya Okamoto
克哉 岡本
Kazuyoshi Fukada
一吉 深田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 梅雨〜夏の時季にフィルムを製造、保管して
DVCテープを製造しても、DOが少ないDVCテープ
とすることができる磁気記録媒体用ポリエステルフィル
ムを提供する。 【解決手段】 磁気記録媒体製造時に強磁性金属薄膜層
が設けられる表面Aは表面粗さRa値が1〜5nmであ
り、かつ、30Paの真空下に7分間放置した後のフィ
ルム表面における長径0.1μm以上のポリエステルオ
リゴマー個数が、前記表面Aとは反対側の表面Bにおい
て2万個/mm2 以下である磁気記録媒体用のポリエス
テルフィルムである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体用ポ
リエステルフィルム、特に、デジタルビデオカセットテ
ープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータ
を記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を高品質で製
造するために好適な磁気記録媒体用ポリエステルフィル
ムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】1995年に実用化された家庭用デジタ
ルビデオ(DVC)テープは、ベースフィルム上にCo
の金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイ
ヤモンド状カーボン膜をコーティングし、更にその上に
コーティングにより潤滑剤層を設け、そして、そのベー
スフィルムの反対面側にビデオテープレコーダー内での
テープの走行性と耐久性を確保するために、バックコー
ト層が設けられたものである。この家庭用デジタルビデ
オ(DVC)テープは、1989年に実用化された世界
初の8ミリビデオ蒸着テープHi8用MEテープに比べ
て表面性がはるかに平滑化したにもかかわらず、良好な
耐久性をもっている。そのベースフィルムとしては、次
の(1)、(2)、(3)等のポリエステルフィルムが用いら
れ、Hi8MEテープ用ベースに比べ、はるかに表面粗
度の小さいベースフィルムが利用されている。
【0003】(1) ポリエステルフィルムと、該ポリエス
テルフィルムの少なくとも片面に密着された厚さ500
オングストローム以下の水溶性高分子化合物を主体とす
る不連続皮膜とからなるポリエステルフィルム(例え
ば、特公平2−1005号公報)。
【0004】(2) ポリエステルフィルムと、該フィルム
の少なくとも片面に密着されたポリマーブレンド体と粒
径50〜500オングストロームの微細粒子を主体とし
た不連続皮膜とからなり、該不連続皮膜には水溶性ポリ
エステル共重合体が含有され、微細粒子により不連続皮
膜上に微細突起が形成されたポリエステルフィルム(例
えば、特公昭63−57238号公報)。
【0005】(3) 粒径10〜300nmの微細粒子を含
有し、該微細粒子により高さ50〜900オングストロ
ームの微細表面突起が形成されたポリエステルフィルム
と、該ポリエステルフィルムの少なくとも片面に密着さ
れた厚さ500オングストローム以下の有極性高分子化
合物を主体とする不連続被膜とからなり、該微細表面突
起の高さが該不連続被膜の高さよりも高いポリエステル
フィルム(例えば、特公平6−51401号公報)。
【0006】しかしながら、このようなベースフィルム
は製膜後、経時的にポリエステルフィルム内のオリゴマ
ーがフィルム表面に析出しがちであり、該ベースフィル
ムより作成されるテープのドロップアウト(DO)が増
加しがちであった。
【0007】そこで、製膜後の経時でポリエステルフィ
ルム内のオリゴマーがフィルム表面に析出しにくい磁気
記録媒体用ポリエステルフィルムを与えることを目的と
して、次の(4)、(5)等の提案がなされている。
【0008】(4) ポリエステルフイルムの一方の片側表
面Aに、高さ10〜50nmの微細表面突起が存在する
ポリエステルフイルムであって、高さ10〜50nmの
微細表面突起の密度が100万〜1億個/mm2であ
り、30℃、30日間の放置で片側表面A上に析出する
径0.5μm以上のポリエステルオリゴマーが500個
/mm2以下であるポリエステルフィルム(例えば、特
開2000−187830号公報)。
【0009】(5) ポリエステルフイルムの一方の片側表
面Aが、セルロース誘導体を含有する被膜により被覆さ
れており、該セルロース誘導体の数平均分子量が1万〜
10万であるポリエステルフィルム(例えば、特開20
00−173044号公報)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(4)、(5)等のベースフィルムでは、通常条件下では、ポ
リエステルフィルム内のオリゴマーが製膜後に経時的に
フィルム表面Aから析出することはなく、該ベースフィ
ルムより作成されたDVCテープのDOが、ベースフィ
ルムの経時的要因により増加することはなかったが、D
VCテープのDOはDVCテープを製造する季節により
大幅に変動することが明らかになってきた。すなわち、
梅雨〜夏の時季に製造されたDVCテープはDOが増加
しがちであった。DOが増加したDVCテープを観察す
るとテープ表面に異物があり、その異物はポリエステル
フィルムの表面B側から析出した長径0.1μm以上の
ポリエステルオリゴマーに起因することが判ってきた。
【0011】そこで本発明は、梅雨〜夏の時季に製造さ
れるDVCテープであってもDOが少ないDVCテープ
とすることができ、年間を通じて良品質のDVCテープ
を製造できる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを与
えることを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成からなるものである。 [1]磁気記録媒体製造時に強磁性金属薄膜層が設けら
れる表面Aは表面粗さRa値が1〜5nmであり、か
つ、30Paの真空下に7分間放置した後のフィルム表
面における長径0.1μm以上のポリエステルオリゴマ
ー個数が、前記表面Aとは反対側の表面Bにおいて2万
個/mm2以下である磁気記録媒体用ポリエステルフィ
ルム。 [2]ポリエステルフィルムを構成するポリエステル
が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−
2,6−ナフタレートである上記[1]記載の磁気記録
媒体用ポリエステルフィルム。 [3]デジタル記録方式のビデオカセットレコーダーテ
ープ用に用いられる上記[1]または[2]記載の磁気
記録媒体用ポリエステルフィルム。 [4]表面Bが、表面形態を持たない薄い皮膜からなる
上記[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気記録媒体用
ポリエステルフィルム。 [5]ポリエステル原料を溶融押出し、冷却し、一方向
に延伸し、一方向延伸フィルムの表面Bに皮膜形成用の
塗液を塗布した後に、乾燥し、該乾燥の後あるいは乾燥
させながら、上記延伸方向と直角をなす方向に延伸し、
必要に応じて更なる延伸を任意方向に施した後に、熱処
理を行うことにより、請求項3に記載の磁気記録媒体用
ポリエステルフィルムを製造する方法であって、かつ、
溶融押出されるポリエステル原料が3kPa以下の真空
度で3時間以上真空乾燥されたものであることを特徴と
する磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの製造方法。 [6]上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエス
テルフィルムの表面Aの外側に強磁性金属薄膜層を設け
てなる磁気記録テープ。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体用ポリエス
テルフィルムを構成するポリエステルは、分子配向によ
り高強度フィルムとなり得るポリエステルであればよい
が、なかでもポリエチレンテレフタレートとポリエチレ
ン−2,6−ナフタレートが特に好ましく用いられる。
好適には、その構成成分の80%以上がエチレンテレフ
タレート、エチレンナフタレートであるポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレートである。エチ
レンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリ
エステル共重合成分としては、例えば、ジエチレングリ
コール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコー
ル、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコー
ル、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオー
ル成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタ
ル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカル
ボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多
官能ジカルボン酸成分およびp−オキシエトキシ安息香
酸などが挙げられる。
【0014】さらに、上記のポリエステルは、他に、ポ
リエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘
導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレン
グリコールなどの少なくとも一つを5重量%を超えない
程度に混合していてもよい。
【0015】本発明のポリエステルフィルムの片側表面
Aの表面粗さRa値は、1〜5nm、好ましくは2〜4
nmである。表面粗さRa値が1nm未満であると、表
面A上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が
平滑すぎて、DVCビデオテープレコーダー内の記録、
再生時にビデオヘッドによりDVCテープの強磁性金属
薄膜が磨耗してしまい好ましくない。また、Ra値が5
nmを超えると、該強磁性金属薄膜層が粗面すぎて、D
VCテープの出力特性が低下し好ましくない。
【0016】本発明のポリエステルフィルムは、30P
aの真空下に7分間放置した後のフィルム表面における
長径0.1μm以上のポリエステルオリゴマー個数(以
下、単に析出オリゴマー個数という)が、表面Aとは反
対側の表面Bにおいて2万個/mm2以下であり、好ま
しくは1.5万個/mm2以下である。表面Bでのポリ
エステルオリゴマー個数が2万個/mm2を上回ると、
蒸着機内にポリエステルフィルムロールを搬入、セット
し、所定の真空度まで減圧し、蒸着を開始するまでの間
に、表面Bからポリエステルオリゴマーが析出し、この
析出したオリゴマーは、ロール状に巻かれている故にロ
ール内において表面Bから表面Aへと転写するので、蒸
着時、その析出、転写したオリゴマー上に強磁性膜が形
成され、ポリエステルオリゴマー部が磁性面上の粗大表
面突起となり、DVCテープの電磁変換特性を悪化させ
DOをおこすことになる。この現象は、特に、梅雨から
夏の高温・高湿環境時に加工する際に顕著であって、問
題が顕在化する。
【0017】本発明において、フィルム表面に存在して
問題となるポリエステルオリゴマーは、減圧、真空下
に、ポリエステルフィルムロールを放置しておくとポリ
エステルフィルム内から表面に析出してくる低分子量物
であり、具体的には、ポリエステル内に存在するポリエ
ステル形成モノマー、ダイマー、トリマー、低分子量
体、ポリエステル内粒子周りに存在するポリエステル破
壊物、触媒残渣、ポリエステル加水分解物等である。
【0018】フィルム表面Bの析出オリゴマー個数を2
万個/mm2以下に低減させるためには、その表面Bに
は、表面形態を持たない薄い皮膜を形成しておくことが
好ましい。皮膜の厚さは10nm以下、より好ましくは
5nm以下が望ましい。厚さが10nmを上回るとポリ
エステルフィルムを蒸着する際に皮膜が冷却キャンで削
られ、削れ物がDO発生の一因となるので好ましくな
い。
【0019】皮膜を構成する成分は、製膜性を持ち、表
面形態を持たない薄い皮膜とし得る高分子化合物であれ
ば材質は問わないが、水溶性高分子化合物、水分散型高
分子にシリコーン化合物が混合されたものが好ましい一
例である。皮膜内には、皮膜表面に表面形態をもたらす
添加物類、例えば微細粒子等は、含まないことを要す
る。表面形態を持つと皮膜が薄い故にその形態を作る構
造部分が皮膜より脱落しやすくなり、ポリエステルフィ
ルムを蒸着する際に冷却キャンを汚し、汚れ物がDO発
生の一因となるので好ましくない。皮膜厚さの下限は、
フィルム表面Bの析出オリゴマー個数を2万個/mm2
以下とし得る限り特に限定されない。
【0020】この皮膜において表面形態を持たないと
は、横倍率1000倍の微分干渉顕微鏡観察を行なって
も皮膜の表面構造が確認されないことである。すなわ
ち、微分干渉顕微鏡レベルの分解能で調べても皮膜厚み
が全体的に一定で、フィルム表面の地肌を均一に覆って
いると観察され、横倍率1000倍の微分干渉顕微鏡写
真では、皮膜を設けていないフィルムの表面と同等の表
面形態が観察されるものである。これに対し、皮膜の表
面観察において、不連続部分がある、網目状、粒状、島
状、微細な突起状がみられる場合は、表面形態を持つも
のと言える。
【0021】さらに、溶融押出されるポリエステル原料
が特定条件下で真空乾燥されたものであることがフィル
ム表面Bの析出オリゴマー個数を低減させるのに有効で
ある。
【0022】本発明のポリエステルフィルムは、単一層
フィルムであってもよいし、層aとより大きな微細粒子
を含有する層bとが積層された積層フィルムであっても
よいし、更により多層の積層フィルムでもよい。
【0023】本発明のポリエステルフィルムは、DVC
テープのDVミニカセットの録画時間を1時間以上とす
るために、厚さ7μm未満であることが好ましく、さら
に好ましくは、厚さ4.0〜6.5μmの範囲内であ
る。
【0024】ポリエステルフィルムのA側表面には、平
均粒径が5〜30nm好ましくは8〜25nmの微細粒
子を、0.5〜12.0重量%好ましくは0.6〜1
0.0重量%含む有機化合物からなる被覆層が形成され
ていることが望ましい。微細粒子としては、シリカ、炭
酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチ
レン球が挙げられ、また、有機化合物としては、ポリビ
ニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチ
ン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレ
タン等の有極性高分子化合物とこれらのブレンド体を好
ましく使用することができる。被覆層の厚さは好ましく
は3〜50nmであり、より好ましくは5〜30nmで
ある。
【0025】また、DVCテープの磁気ヘッドによる耐
久性をさらに増すためには、表面Aを形成するポリエス
テル層内に、平均粒径が30〜90nm好ましくは40
〜80nmの微細粒子を、0.01〜1.0重量%好ま
しくは0.02〜0.8重量%含ませ、表面A上に表面
突起をもたせることが好ましい。微細粒子としては、シ
リカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、
ポリスチレン球等を好ましく使用することができる。
【0026】本発明の磁気記録テープは、本発明のポリ
エステルフィルムの片側表面Aの外側表面上(前記被覆
層が設けられている場合、その被覆層上)に、真空蒸着
により形成される強磁性金属薄膜層を設けてなることを
特徴とするが、使用する金属薄膜は公知のものを使用す
ることができ、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれら
の合金の強磁性体からなる金属薄膜が好ましい。金属薄
膜層の厚さは、好ましくは100〜300nmである。
【0027】本発明の磁気記録テープは、DVCビデオ
テープレコーダー内の各種ガイド、ピンとの走行におけ
る走行性や、耐久性を確保するために、フィルム表面B
上に、固体微粒子および結合剤からなり、必要に応じて
各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成され
るバックコート層を設けることが好ましく、バックコー
ト層を構成する成分としての固体微粒子、結合剤、添加
剤等は公知のものを使用することができる。バックコー
ト層の厚さは、通常0.3〜1.5μm程度である。
【0028】次に、本発明の磁気記録媒体用ポリエステ
ルフィルムおよび磁気記録テープの製法を例示する。
【0029】本発明のポリエステルフィルムは、表面A
側原料として含有粒子を可能な限り除いたポリエステル
を用い、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常の
プラスチックフィルム製造工程において、縦、横方向に
90〜140℃で、それぞれ2.7〜5.5倍、3.5
〜7.0倍に延伸し、190〜220℃の温度で熱固定
を行うプロセスによって、さらに下記操作を行うことに
より製造することができる。
【0030】表面AのRa値を調整するために、一方向
に延伸後の平滑なポリエステルフィルムの表面A側に、
平均粒径が5〜30nm好ましくは8〜25nmの微細
粒子を、0.5〜12.0重量%好ましくは0.6〜1
0.0重量%含む有機化合物からなる塗液を塗布して表
面A側に被覆層を形成させ、表面Aに微細表面突起を形
成する。被覆層は、連続皮膜形状あるいは不連続皮膜形
状のいずれであってもかまわない。被膜構成成分にその
滑り性、耐久性向上のためにシリコーン、シランカップ
リング剤、チタンカップリング剤を少量添加してもよ
い。
【0031】DVCテープの磁性層の耐久性を更に増す
ことが望まれるときは、表面Aを形成するポリエステル
層内に、平均粒径が30〜90nm好ましくは40〜8
0nmの微細粒子を、1.0重量%以下好ましくは0.
8重量%以下、含ませることにより、表面A上に表面突
起をもたせることが好ましい。微細粒子としては、既述
のシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸
球、ポリスチレン球等を使用することができる。
【0032】表面AのRa値は、前記被覆層内、ポリエ
ステル層内の微細粒子の種類、平均粒径、添加量を調整
することにより調節することができる。
【0033】フィルム表面Bにおける析出オリゴマー個
数を2万個/mm2以下に低減させるためには、溶融押
出に供されるポリエステル原料が、真空度3kPa以下
で3時間以上の条件下で、好ましくは、真空度3kPa
以下、温度150℃以上で3時間以上の条件下で真空乾
燥されたものであること、及び、表面Bにポリエステル
オリゴマーバリアー性皮膜の薄い(厚さ10nm以下)
皮膜が存在すること、が有効である。
【0034】この表面Bにおける皮膜は、一方向に延伸
後の平滑なポリエステルフィルムにおける表面B側に、
有機化合物を主体とする塗液を塗布して乾燥することに
より形成され、有機化合物の種類や塗布厚さを調整する
ことにより、その厚さや表面性状を調節することができ
る。有機化合物としては、セルロース誘導体等の水溶性
高分子化合物や、ポリ塩化ビニリデン等の水分散型高分
子化合物に、シリコーン化合物が混合されたものが好ま
しい例である。
【0035】本発明のポリエステルフィルムは、表面A
と表面Bとをそれぞれの好ましい表面性状とするため
に、前記したA面側原料(a層用)と積極的により大き
な微粒子を含有させた原料(b層用)を用い、共押出し
技術によってa/b積層フィルムを溶融押出しし製膜し
てもよい。また、より多層の積層フィルムとしてもよ
い。
【0036】二軸延伸は、例えば、逐次二軸延伸法や同
時二軸延伸法で行なうことができるが、必要に応じて、
熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向
に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タ
イプとすることもできる。
【0037】表面A側の被覆層、表面B側の皮膜の形成
方法については、前述のとおり、1軸方向への延伸を終
えた段階で、所定の塗液を基層フィルム上に塗布する。
塗布方法としては、ドクターブレード方式、グラビア方
式、リバースロール方式、メタリングバー方式、エアー
ナイフ方式のいずれであってもよい。
【0038】本発明のポリエステルフィルムは、磁気記
録媒体のベースフィルムとして、特にデジタルビデオテ
ープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ好適
である。また、データストレージテープ用途に使用して
も優れた結果を得ることができ好適である。
【0039】なお本発明のポリエステルフィルムは、常
温で1年程度の長期間保管した後に使用しても、また4
0℃程度の高温度、80%RH程度の高湿度下、保管し
た後に使用しても、DOが少ないDVCテープとするこ
とができる。
【0040】本発明の磁気記録テープは、本発明のポリ
エステルベースフィルムの表面A側に、強磁性金属薄膜
を真空蒸着により設けて構成される。強磁性金属薄膜に
使用される強磁性金属は、既述のとおり、鉄、コバル
ト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなる
ものが好ましく、強磁性金属薄膜の厚さは100〜30
0nmが好ましい。本発明においては、この強磁性金属
薄膜上に、保護のためにダイヤモンド状カーボン(DL
C)膜を保護膜として5〜20nm程度の厚みで設け、
さらにその上にフッ素系潤滑剤を2〜10nm程度の厚
みで潤滑層として形成することが好ましい。強磁性金属
薄膜厚み、DLC保護膜、潤滑層が107〜330nm
と極めて薄いため、強磁性金属薄膜表面はベースフィル
ム表面形状をそのまま反映する。
【0041】また、本発明の磁気記録テープでは、ビデ
オテープレコーダー内の各種ガイド、ピンとの走行にお
ける走行性や、耐久性を確保するために、ベースフィル
ムの層B側表面上に固体微粒子および結合剤からなり、
必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することに
より形成されるバックコート層を設けられるが、固体微
粒子、結合剤、添加剤はカーボンブラック、ポリウレタ
ン樹脂、シリコーン等、公知のものを使用することがで
きる。
【0042】[測定法] (1)表面粗さRa値 ポリエステルフィルム表面の表面粗さRa値は、原子間
力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。
セイコーインスツルメント社製の走査型プローブ顕微鏡
(SPI3800シリーズ)を用い、ダイナミックフォ
ースモードでフィルムの表面を30μm角の範囲で原子
間力顕微鏡計測走査を行ない、得られる表面のプロファ
イル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術
平均粗さより求めた。面内方向の拡大倍率は、1万〜5
万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
【0043】(2)30Paの真空下に7分間放置した
後のフィルム表面における長径0.1μm以上のポリエ
ステルオリゴマー個数(析出オリゴマー個数) ポリエステルフィルムを真空蒸着機ベルジャー中に入
れ、空気を抜き、30Pa到達後、7分間放置する。そ
の後、ベルジャー内の真空引きを止め、大気圧に戻し、
ポリエステルフィルムを取り出す。フィルム表面を高分
解能の走査型電子顕微鏡を用いて倍率1万倍以上で観察
する。最低10枚の写真をとり、そのフィルム表面に析
出した、長径0.1μm以上の異物を観測する。その異
物をポリエステルオリゴマーとみなし、フィルム表面1
mm2あたりの個数に換算し、析出オリゴマー個数とし
た。
【0044】(3)表面B側の皮膜の厚さ 皮膜の厚さは、塗布液塗布時の塗布液厚さに固形分濃度
を掛け、固形分密度、塗布後の延伸倍率で除して求め
る。なお、この皮膜厚さをフィルムから求める場合に
は、下記のa)、b)手法等により求めることができ
る。a)フィルムの少片を樹脂で固定し、フィルムの長
手方向に平行に切断しフィルム断面の超薄切片を作成
し、透過型電子顕微鏡により10万倍程度以上の倍率で
観察し、皮膜/フィルム、皮膜/樹脂界面の距離より皮
膜厚さを求める。b)フィルムB面表面より特定の無機
元素(例えば、シリコン)の濃度分布を表面からの深さ
方向に二次イオン質量分析(SIMS)装置を用いて測
定し、その濃度が表面の10%程度になった深さを皮膜
厚みとする。
【0045】(4)表面B側の皮膜の表面形態 皮膜の表面形態は、フィルム表面Bにアルミニウム蒸着
を施し、微分干渉顕微鏡で1000倍の拡大倍率で写真
をとり観測する。表面形態を持たない皮膜では、形態、
構造は観測されない。すなわち、皮膜を設けていないフ
ィルム表面Bも、皮膜が設けられたフィルム表面Bも1
000倍の横倍率の微分干渉顕微鏡写真では表面形態の
差が判別できないし、また、皮膜が不連続であるとか、
網目状であるとか、粒状であるとか、島状であるとか、
微細な突起を含むとかも観察されない。さらにまた、微
分干渉顕微鏡レベルの分解能においては厚みが一定でフ
ィルム表面Bの地肌を均一に覆っていると、観察され
る。
【0046】(5)磁気テープ(DVCテープ)の特性
評価 市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーの
LPモードを用いて静かな室内で録画し、1分間の再生
をして画面にあらわれたブロック状のモザイク個数(ド
ロップアウト(DO)個数)を数えることによって、D
VCテープ特性を評価した。DO個数は、テープ製造後
の初期特性と100回繰返し走行後に、測定した。DO
個数は小さい値の方が良い。
【0047】
【実施例】次に、実施例に基づき、本発明を説明する。
【0048】[実施例1]実質的に不活性粒子を含有し
ないポリエチレンテレフタレートに平均粒径60nmの
シリカを0.02重量%含有させた原料Aと、実質的に
不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに
平均粒径210nmのケイ酸アルミニウムと粒子径30
0nmのポリスチレン球とをそれぞれ0.30重量%、
0.03重量%含有させた原料Bとを、別々に真空乾燥
し(真空条件はともに170℃、2kPa、5時間)、
厚み比5:1の割合で共押出しし、ロール延伸法で11
0℃で3.0倍に縦延伸した。縦延伸の後の工程で、原
料Aからなる層aの外側に下記組成・濃度の水溶液を塗
布濃度(固形分濃度)25mg/m2で塗布した。ま
た、原料Bからなる層bの外側に下記組成・濃度の水溶
液を塗布濃度(固形分濃度)0.5mg/m2で塗布し
た。
【0049】 層a外側:ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.10重量% 水溶性ポリエステル共重合体(テレフタル酸70モル%、5−ナト リウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1 の共重合体) 0.32重量% アミノエチルシランカップリング剤 0.01重量% 平均粒径 18nmの極微細シリカ 0.03重量% 層b外側:ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.10重量% 水溶性ポリエステル共重合体(テレフタル酸70モル%、5−ナト リウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1 の共重合体) 0.15重量% アミノエチルシランカップリング剤 0.01重量% ポリジメチルシロキサン(両末端アミノ基変性体) 0.02重量%
【0050】その後、ステンターにて横方向に105℃
で3.5倍に延伸し、210℃で熱処理し、中間スプー
ルに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアー
にロール状に巻取り、厚さ6.3μm、幅600mmの
蒸着用のポリエステルフィルムの、長さ15000m巻
取りロールを製造した。
【0051】得られたフィルムロールをポリエチレンチ
ューブで包みダンボール箱で梱包し、倉庫内に移動、保
管した。一か月後、このロールから引出したポリエステ
ルフィルムの表面Aに、コバルト−酸素薄膜を真空蒸着
により110nmの膜厚で形成し強磁性金属薄膜層とし
た。次に、コバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング
法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで
形成させた。次に、フッ素系潤滑剤層を6nmの厚みで
設けた。続いて、表面B上に、カーボンブラック、ポリ
ウレタン、シリコーンからなるバックコート層を400
nm厚さで設け、スリッターにより幅6.35mmにス
リットしリールに巻き取りDVCテープを作成した。
【0052】5〜9月に製造したポリエステルフィルム
の特性を真空蒸着処理する前に測定し、表1(フィルム
表面AのRa値)及び表2(フィルム表面Bにおける析
出オリゴマー個数、製造月ごとの平均値)に示した。さ
らに、それから一か月後に製造したDVCテープの品質
を測定し、表3(その製造月ごとの平均値)に示した。
なお、1〜4月及び10〜12月に製造したポリエステ
ルフィルムは、表面Bにおける析出オリゴマー個数が
0.1万〜0.2万個/mm2と少なく、それから得ら
れたDVCテープは、DO値が初期、100回走行後とも
に0個/分と、優れた品質を有していた。
【0053】[実施例2]実施例1のベースフィルム製
造において、原料Aより平均粒径60nmのシリカを除
いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ6.3μ
m、幅600mm、長さ15000mのポリエステルフ
ィルムロールを製造し、梱包して保管し、一か月後に、
幅6.35mmのDVCテープを製造した。得られたポ
リエステルフィルムの表面AのRa、表面Bの析出オリ
ゴマー個数、DVCテープの特性を実施例1と同様に測
定した結果は、下記の表1、2、3に示すとおりであっ
た。なお、1〜4月及び10〜12月に製造したポリエ
ステルフィルムからのDVCテープも実施例1と同様、
優れた品質を有していた。
【0054】[実施例3]実施例2のベースフィルム製
造において、ポリエチレンテレフタレートをポリエチレ
ン−2,6−ナフタレートに変更し、原料B内のケイ酸
アルミニウムの含有量を1.1重量%とし、縦延伸温
度、倍率を135℃で5.0倍とし、層a外側の水溶液
塗布濃度(固形分濃度)を40mg/m2とした。層b
外側の水溶液塗布濃度(固形分濃度)を1.0mg/m
2とした。横延伸温度、倍率を135℃、6.5倍と
し、200℃での熱処理に変更し、その他は実施例2と
同様にして、厚さ4.2μm、幅600mm、長さ15
000mのポリエステルフィルムロールを製造した。そ
の他は実施例1と同様にして、梱包して保管し、一か月
後に、幅6.35mmのDVCテープを製造した。得ら
れたポリエステルフィルムの表面AのRa、表面Bの析
出オリゴマー個数、DVCテープの特性を実施例1と同
様に測定した結果は、下記の表1、2、3に示すとおり
であった。なお、1〜4月及び10〜12月に製造した
ポリエステルフィルムからのDVCテープも実施例1と
同様、優れた品質を有していた。
【0055】[比較例1]実施例1のベースフィルム製
造において、層a外側水溶液のシリカの平均粒径を4n
mとした。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μ
mの幅600mm、長さ15000mのポリエステルフ
ィルムロールを製造した。その他は実施例1と同様にし
て、梱包して保管し、一か月後に、幅6.35mmのD
VCテープを製造した。得られたポリエステルフィルム
の表面AのRa、表面Bの析出オリゴマー個数、DVC
テープの特性を実施例1と同様に測定した結果は、下記
の表1、2、3に示すとおりであった。
【0056】[比較例2]実施例1のベースフィルム製
造において、層a外側水溶液のシリカの平均粒径を60
nmとした。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3
μmの幅600mm、長さ15000mのポリエステル
フィルムロールを製造した。その他は実施例1と同様に
して、梱包して保管し、一か月後に幅6.35mmのD
VCテープを製造した。得られたポリエステルフィルム
の表面AのRa、表面Bの析出オリゴマー個数、DVC
テープの特性を実施例1と同様に測定した結果は、下記
の表1、2、3に示すとおりであった。
【0057】[比較例3]実施例1のベースフィルム製
造において、原料の真空乾燥の時間を2時間とした。そ
の他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmの幅60
0mm、長さ15000mのポリエステルフィルムロー
ル製造した。その他は実施例1と同様にして、梱包して
保管し、一か月後に、幅6.35mmのDVCテープを
製造した。得られたポリエステルフィルムの表面AのR
a、表面Bの析出オリゴマー個数、DVCテープの特性
を実施例1と同様に測定した結果は、下記の表1、2、
3に示すとおりであった。
【0058】[比較例4]実施例1のベースフィルム製
造において、原料の真空乾燥の温度を130℃、真空度
を10kPa、時間を2時間とした。その他は実施例1
と同様にして、厚さ6.3μmの幅600mm、長さ1
5000mのポリエステルフィルムロール製造した。そ
の他は実施例1と同様にして、梱包して保管し、一か月
後に、幅6.35mmのDVCテープを製造した。得ら
れたポリエステルフィルムの表面AのRa、表面Bの析
出オリゴマー個数、DVCテープの特性を実施例1と同
様に測定した結果は、下記の表1、2、3に示すとおり
であった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】[テープ特性] テープ DO、 初期/100回走行後(個/分) 製造月 6月 7月 8月 9月 10月 実施例1 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0 〃 2 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0 〃 3 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0 比較例1 0/25 0/26 0/27 0/21 0/24 〃 2 35/39 47/49 38/42 29/30 25/29 〃 3 16/22 24/35 29/42 19/24 18/24 〃 4 22/26 35/42 35/52 27/35 25/32
【0062】上記の表1、2、3の結果から明らかなよ
うに、本発明のポリエステルフィルムの片側表面Aに強
磁性金属薄膜層を設けて製造したDVCテープは、5月
〜9月の梅雨から夏の高温多湿時期に製造保管されたフ
ィルムを用いて6月〜10月に製造された製品でも、D
Oの発生の無い優れたDVCテープであった。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、梅雨〜夏の時季にフィ
ルムを製造、保管してDVCテープを製造しても、DO
が少ないDVCテープとすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F071 AA45 AG12 AG34 AH14 BA01 BB07 BB08 BC01 BC10 BC16 5D006 BB01 CB01 CB07 FA03

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録媒体製造時に強磁性金属薄膜層
    が設けられる表面Aは表面粗さRa値が1〜5nmであ
    り、かつ、30Paの真空下に7分間放置した後のフィ
    ルム表面における長径0.1μm以上のポリエステルオ
    リゴマー個数が、前記表面Aとは反対側の表面Bにおい
    て2万個/mm2 以下であることを特徴とする磁気記録
    媒体用ポリエステルフィルム。
  2. 【請求項2】 ポリエステルフィルムを構成するポリエ
    ステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチ
    レン−2,6−ナフタレートであることを特徴とする請
    求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  3. 【請求項3】 デジタル記録方式のビデオカセットレコ
    ーダーテープ用に用いられることを特徴とする請求項1
    または2記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  4. 【請求項4】 表面Bが、表面形態を持たない薄い皮膜
    からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
    載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  5. 【請求項5】 ポリエステル原料を溶融押出し、冷却
    し、一方向に延伸し、一方向延伸フィルムの表面Bに皮
    膜形成用の塗液を塗布した後に、乾燥し、該乾燥の後あ
    るいは乾燥させながら、上記延伸方向と直角をなす方向
    に延伸し、必要に応じて更なる延伸を任意方向に施した
    後に、熱処理を行うことにより、請求項3に記載の磁気
    記録媒体用ポリエステルフィルムを製造する方法であっ
    て、かつ、溶融押出されるポリエステル原料が3kPa
    以下の真空度で3時間以上真空乾燥されたものであるこ
    とを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの
    製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエ
    ステルフィルムの表面Aの外側に強磁性金属薄膜層を設
    けてなる磁気記録テープ。
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