JP3725011B2 - 磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは電磁変換特性、走行耐久性に優れた強磁性金属薄膜型磁気記録媒体、特にデジタルビデオカセットテープ、データストレージ用テープ等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体のベースフィルムに有用な複合ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは、ベースフィルム上にCoの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングした構造からなり、Hi8用ME(蒸着)テープに比べて表面が平坦化しているにもかかわらず、良好な耐久性をもつという利点を有する。このベースフィルムとしては、 Hi8MEベースに比べ金属磁性膜形成表面粗度の小さいフィルム、例えばポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの少なくとも片面に密着されたポリマーブレンド体と粒径5〜50nmの微細粒子を主体とした不連続皮膜とからなり、該不連続皮膜には水溶性ポリエステル共重合体が使用され、かつ該微細粒子により不連続皮膜上に微細突起が形成された複合ポリエステルフィルム(例えば、特公昭63−57238公報)が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、記録容量アップのために、テープには長尺化が必要とされてきており、そのためにはベースフィルムの薄膜化が必要となってきている。また、蒸着テープの生産性をあげるために、蒸着のスピードを速くする必要性も出てきている。蒸着には、通常、ベースフィルムの非磁性層側表面を冷却キャンに密着させてベースフィルムを冷却する方法を用いるが、ベースフィルムの薄膜化や蒸着スピードのアップにつれて、蒸着時のベースフィルムに対する熱負荷はますます高くなってきている。従来のベースフィルムでは熱を受けた際にオリゴマーが発生し、それがエラーになってしまったり、蒸着時に皮膜が熱で変形し、結果としてその上に形成された蒸着層の表面粗化が起こり、電磁変換特性が劣化してしまう問題があった。この問題を防ぐ方法として、冷却キャンにより密着させるために、ベースフィルムの非磁性層側表面を平坦にする技術も用いられるが、この場合はベースフィルムの製膜工程や蒸着時のハンドリング性が著しく劣るという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、蒸着工程でオリゴマーの発生や皮膜層の変形を防ぎ、得られた磁気テープのエラーや電磁変換特性が優れ、且つハンドリング性が良好な磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる問題を解決するために、以下の構成からなる。
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの片面に皮膜層Aを積層せしめた複合フィルムであって、該皮膜層Aが、(1)アクリル−ポリエステル樹脂40重量%以上89重量%以下、(2)平均粒径が5nm以上50nm以下の不活性粒子0.5重量%以上20重量%以下及び(3)界面活性剤10重量%以上50重量%以下からなる成分を主成分とし、該アクリル−ポリエステル樹脂(1)のポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分のモル比が1/9以上5/5以下であり、該アクリル樹脂成分が(A)アルキルメタクリレート成分50モル%以上94モル%以下、(B)エポキシ基含有アクリル系モノマー成分3モル%以上30モル%以下及び(C)アルキルアクリレート成分3モル%以上30モル%以下からなる成分を主成分とし、該皮膜層A表面のAFM(原子間力顕微鏡)によるRa(中心面平均粗さ)が0.5nm以上5nm以下、Rz(10点平均粗さ)が5nm以上50nm以下であり、かつRz/Raの比が10以上30以下であり、さらにポリエステルフィルムの皮膜層A形成面の他方の表面(B面)の中心線平均表面粗さRaが2nm以上10nm以下であり、かつ該皮膜層Aの外面に強磁性金属薄膜層を設けて使用されることを特徴とする磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルムである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリマーは、分子配向により高強度フィルムを形成するポリエステルである。中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。このポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、それぞれ、全構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるものである。エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート以外の共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合)、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ポリエチレンテレフタレートの場合)、2,7−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多価カルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。上記ポリエステルは、また、ポリエステルとは非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を超えない範囲で混合してもよい。
【0007】
本発明におけるポリエステルは実質的に不活性粒子を含有しないか、あるいは含有したとしても0.5重量%以下、更には0.3重量%以下であることが好ましい。この不活性粒子としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンに代表される不活性無機粒子あるいは、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子に代表される有機粒子などが挙げられる。不活性粒子の含有量が0.5重量%を超えると、テープにしたときに電磁変換特性が悪化する。不活性粒子の平均粒径は30〜300nm、さらには50〜200nmであることが好ましい。この粒径が30nm未満であると、凝集しやすく、結果として表面が粗くなって電磁変換特性が低下し、一方300nmを超えても電磁変換特性が低下するので、好ましくない。
【0008】
本発明におけるポリエステルフィルムは単層構造であっても、共押出法等による2層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合は、磁性層形成面側表面層のポリエステルが実質的に不活性粒子を含有しないか、あるいは含有したとしても0.5重量%を超えない範囲であることが好ましい。
【0009】
前記ポリエステルフィルムは、二軸配向フィルムであることが好ましく、その厚さは7μm未満、さらには0.65μm未満であることが特に有効である。また、この厚みは0.2μm以上、さらには0.3μm以上でることが好ましい。
【0010】
本発明におけるポリエステルフィルムの片面に積層する皮膜層Aは、(1)アクリル−ポリエステル樹脂、(2)平均粒径が5nm以上50nm以下の不活性粒子及び(3)界面活性剤からなる成分を主成分とする。
【0011】
前記アクリル−ポリエステル樹脂(1)の皮膜層A中の割合は、40重量%以上89重量%以下である必要があり、好ましくは50重量%以上75重量%以下である。この割合が40重量%未満であると、ポリエステルフィルムとの密着性が低下し、皮膜層Aが削れやすくなり、一方、89重量%を超えると(2)、(3)成分の割合が低下し、テープ特性や皮膜層Aの塗工性に支障をきたす。このアクリル−ポリエステル樹脂(1)中のポリエステル樹脂成分により皮膜層Aとポリエステルフィルムの接着性を確保し、アクリル樹脂成分により皮膜層Aの耐削れ性、ベースフィルムのオリゴマー抑制効果を確保する。
【0012】
前記アクリル−ポリエステル樹脂(1)は、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリエステル変性アクリル樹脂を包含する意味で用いらており、アクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分とが互いに結合したものである。この結合は、例えばグラフトタイプ、ブロックタイプを包含する。かかるアクリル−ポリエステル樹脂は、例えばポリエステル樹脂成分の両端にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、ポリエステル樹脂成分の側鎖にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、あるいはアクリル樹脂成分の側鎖に水酸基をつけ、末端にイソシアネート基やカルボキシル基を有するポリエステル樹脂成分と反応させる等によって製造することができる。
【0013】
前記アクリル−ポリエステル樹脂(1)のポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分のモル比は1/9以上5/5以下、好ましくは2/8以上4/6以下である。この比が1/9未満であると、皮膜層Aのポリエステルフィルムとの密着性が不足し、一方5/5を超えると皮膜層Aの耐削れ性、ベースフィルムのオリゴマー抑制効果が劣る。
【0014】
前記アクリル−ポリエステル樹脂(1)を構成するポリエステル樹脂成分は、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とポリオールまたはそのエステル形成性誘導体の反応から製造できる。すなわち、多塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が好ましく挙げられる。これら酸成分は1種または2種以上を用いることができる。また、若干量ながら不飽和多塩基酸成分のマレイン酸、イタコン酸等及びp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1,4ーブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が好ましく挙げられる。これらモノマーは1種または2種以上用いることができる。
【0015】
前記アクリル−ポリエステル樹脂を構成するアクリル樹脂成分は、(A)アルキルメタクリレート成分50モル%以上94モル%以下、(B)エポキシ基含有アクリル系モノマー成分3モル%以上30モル%以下及び(C)アルキルアクリレート成分3モル%以上30モル%以下からなる成分を主成分とする必要がある。
【0016】
前記アルキルメタクリレート成分(A)の割合は50モル%以上94モル%以下、好ましくは60モル%以上90モル%以下である。この割合が50モル%に満たないと、アクリル−ポリエステル樹脂の重合が難しくなる。一方、94モル%を超えると、(B)、(C)成分の割合が減少し、削れ性や平坦性が悪化する。(A)成分中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が例示される。
【0017】
前記エポキシ基含有アクリル系モノマー成分(B)の割合は3モル%以上30モル%以下、好ましくは7モル%以上25モル%以下である。この割合が3モル%に満たないと、樹脂の架橋密度が低下し、皮膜層Aの耐削れ性が悪化したり、蒸着時に皮膜層Aが熱で変形し、結果としてその上に形成された蒸着層の粗化が起こり磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が劣化してしまう。一方、30モル%を超えると、皮膜層Aのフィラー突起間の地肌樹脂部が粗くなり、磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が劣化してしまう。エポキシ基含有アクリル系モノマーの例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
前記アルキルアクリレート成分(C)の割合は3モル%以上30モル%以下、好ましくは4モル%以上20モル%以下である。この割合が3モル%未満であると、皮膜層A表面のフィラー突起間の地肌樹脂部が粗くなり、磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が劣化してしまう。一方、30モル%を超えると、皮膜層Aの耐削れ性が悪化したり、蒸着時に皮膜層Aが熱で変形し、結果としてその上に形成された蒸着層の表面粗化が起こり、磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が劣化してしまう。(C)成分のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が例示される。
【0019】
本発明における皮膜層Aは不活性粒子(2)を含有するが、該不活性粒子の材質としては、ポリスチレン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン、シリコーン等の有機質、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト等の無機質のいずれを用いてもよい。また内外部のそれぞれの性質が異なる物質で構成される多層構造のコアシェル型粒子を用いてもよい。
【0020】
前記不活性粒子は下記式で定義される体積形状計数(f)が0.1〜π/6であるものが好ましく、更には0.4〜π/6の実質的に球あるいはラグビーボール状の楕円球が好ましい。この体積形状計数(f)が0.1に満たない、例えば薄片状粒子では、磁気記録媒体としたときに電磁変換特性の劣化が起こりやすい。
【0021】
【数1】
f=v/d3
ここで、Vは不活性粒子の体積、dは平均粒径を表す。
【0022】
前記不活性粒子(2)の平均粒径は5〜50nmである必要があり、好ましくは10〜40nmである。この粒径が5nm未満であると、磁気記録媒体としたときにヘッドとの走行耐久性が不足し、一方50nmを超えると、磁気記録媒体としたときにヘッドとのスペーシングが大きくなり、電磁変換特性が低下する。不活性粒子(2)の皮膜層A中の割合は、0.5重量%以上20重量%以下である必要があり、好ましくは3重量%以上10重量%以下である。この割合が0.5重量%未満であると、磁気記録媒体としたときにヘッドとの走行耐久性が不足し、一方20重量%を超えると、皮膜層Aから粒子が脱落しやすくなる。
【0023】
本発明における皮膜層A表面のAFM(原子間力顕微鏡)によるRa(中心面平均粗さ)が0.5nm以上5nm以下、Rz(10点平均粗さ)が5nm以上50nm以下であり、かつRz/Raの比が10以上30以下である必要がある。Ra、Rz、Rz/Ra比がそれぞれこの範囲より小さいと、磁気記録媒体としたときにヘッドとの走行耐久性が不足し、一方この範囲より大きいと、磁気記録媒体としたときにヘッドとのスペーシングが大きくなり、電磁変換特性が低下する。Raは0.5〜4nm、さらには0.5〜3nmであることが好ましく、Rzは10〜40nm、さらには15〜30nmであることが好ましく、Ra/Rzの比は10以上25以下、さらには10以上20以下であることが好ましい。
【0024】
本発明における皮膜層Aを構成する界面活性剤(3)としては、陰イオン型、陽イオン型、非イオン型のいすれを用いてもよいが、なかでも非イオン型が好ましい。非イオン型界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、アルキルフェノール型のものが挙げられる。かかる界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられる。
【0025】
前記界面活性剤(3)の皮膜層A中の割合は、10重量%以上50重量%以下である必要があり、好ましくは15重量%以上40重量%以下である。この割合が10重量%未満であると、塗工性が悪くなり磁気記録媒体としたときにヘッドとの走行耐久性が不足し、一方50重量%を超えると、皮膜層Aから粒子が脱落しやすくなる。
【0026】
本発明における皮膜層Aの厚さは0.5〜30nm、更には2〜10nmであることが好ましい。この厚さは、バインダ樹脂の組成、AFMによるRa、Rz、Ra/Rzの比、皮膜の耐久性等を考慮して定めるとよい。
【0027】
本発明における皮膜層Aには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により他の成分、例えば安定剤、分散剤、UV吸収剤、増粘剤、離型剤等を添加することができる。
【0028】
本発明における複合ポリエステルフィルムは、皮膜層A形成面の他方の表面(B面)に易滑を目的とする他の皮膜層を設けてもよい。ただし、この他方の表面(B面)の中心線平均表面粗さRaは2nm以上10nm以下である必要があり、好ましくは2nm以上7nm以下である。この表面粗さRaが2nm未満であると、ポリエステルフィルムの製膜工程や蒸着時のハンドリング性が著しく劣る。一方、Raが10nmを超えると、蒸着時にポリエステルフィルムが冷却キャンに充分に密着しないので熱負荷が高くなり、オリゴマーが発生し、それがエラーになってしまったり、蒸着時に皮膜層Aが熱で変形し、結果としてその上に形成された蒸着層の表面粗化が起こり、電磁変換特性が劣化してしまう。
【0029】
本発明の複合ポリエステルフィルムは、溶融成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルムの製造工程において、一方向に延伸後のポリエステルフィルムの片面に皮膜層A形成塗液を塗布し、乾燥した後、直角方向に延伸を行い、熱固定することで製造できる。
【0030】
たとえば、単層フィルムで説明すると、ポリエステルを口金より融点Tm℃〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に押出した後、冷却ドラムに密着させて急冷して未延伸フィルムを得る。しかる後、該未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)において2.5〜7.0倍の倍率、好ましくは3.0〜6.5倍の倍率、で延伸し、次いで皮膜層Aを形成する塗液をフィルムの片面に塗布し、その後に前記方向と直角方向にTg〜(Tg+70)℃の温度において2.5〜7.0倍の倍率、好ましくは3.0〜6.5倍の倍率で延伸する。更に必要に応じて縦方向及び/または横方向に再度延伸しても良い。すなわち、2段、3段、4段、或いは更に多段に延伸を行うとよい。全延伸倍率は、面積倍率で、通常9倍以上、好ましくは12〜32倍、更に好ましくは15〜30倍である。更に引き続いて、二軸配向フィルムを(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば180〜250℃で熱固定結晶化することによって優れた寸法安定性が付与される。なお、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。また、前記塗布の方法としては公知の方法が適用できる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフ法、含浸法、カーテンコート法等を単独でも組み合わせても適用できる。塗液の固形分濃度は、塗布方法にもよるが、20重量%以下、さらには15重量%以下、特に10重量%以下が好ましい。また。この下限濃度は、0.5重量%、更には1重量%が好ましい。
【0031】
本発明の複合ポリエステルフィルムは、強磁性金属薄膜層からなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムとして、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた効果を得ることができ、好適である。また、データストレージテープ用途にしても優れた効果を得ることができ、好適である。
【0032】
本発明の磁気記録媒体は、前記した複合ポリエステルフィルムの皮膜層Aの上に強磁性金属薄膜層を設けてなることを特徴とする。この金属薄膜層は公知の技術で形成でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。
【0033】
本発明の磁気記録媒体は、また、複合ポリエステルフィルムの皮膜層A形成面の反対面に、固体微粒子及び結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成されるバックコート層を設けてもよい。この固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0034】
[特性の測定方法、評価方法]
本発明におけるフィルム特性の測定方法、評価方法は、次の通りである。
(1)粒子の平均粒径
光散乱法によって求められる全粒子の50重量%点にある粒子の等価球形直径をもって平均粒径とする。
【0035】
(2)体積形状係数
走査型電子顕微鏡により、粒子のサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックスを用い、投影面最大径及び粒子の体積を算出し、次式により算出する。
【0036】
【数2】
f=V/d3
式中、fは体積形状係数、Vは粒子の体積(μm3)、dは投影面の最大径(μm)を表す。
【0037】
(3)AFM(原子間力顕微鏡)によるRa、Rz
デジタルインスツルメンツ製の原子間力顕微鏡NanoScopeIIIにより行う。Jスキャナーを使用し、下記の条件による測定で算出されるRa(中心面平均粗さ)及びRz(10点平均粗さ)を3回測定し、その平均値をAFMによるRa、Rzとする。
深針:単結晶シリコンナイトライド
走査モード:タッピングモード
走査範囲:2μm×2μm
画素数:256×256
スキャン速度:2.0Hz
測定環境:室温、大気中
【0038】
(4)皮膜層の厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成し、この資料を等価型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、層の境界線より層厚みを求める。
【0039】
(5)フィルムの中心線平均表面粗さRa
JIS B0601に準じ、(株)小坂研究所製の触針式表面粗さ計(サーフコーダーSE30FAT)を用い、触針先端半径2μm、測定圧力30mg、カットオフ0.08mm、測定長1.25mmの条件で求める。測定は4回行い、その平均値で表す。
【0040】
(6)塗布斑
塗膜層を下にして下記組成の染色液(温度50℃)に10分間浸漬し、水洗した後、黙視で観察し、染色されていない塗布斑があるもの×、ないものを○として判定する。
染色液:
メチレンブルー:0.5重量%
ベンジルアルコール:1.5重量%
カヤカランレッド:0.1重量%
ローダミンB:0.1重量%
イオン交換水:97.8重量%
【0041】
(7)巻取り性
スリッターにより、巻取張力10kg/m、巻取接圧140kg/m、巻取速度100m/分、オシレーション幅100mm、オシレーション速度10mm/分の条件で、幅500mm、長さ9000mmのポリエステルフィルムロールを10本巻き上げ、24時間放置後に該ロールを検査し、シワのないロールを良品として以下の基準にて巻取り性の評価をする。
Figure 0003725011
【0042】
(8)磁気テープの製造及び特性評価
複合ポリエステルフィルムの皮膜層A面の外側に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を110nmの厚みで形成し、次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボンを10nmの厚みで形成させ、更に含フッ素カルボン酸系潤滑剤を順次設け、続いて反対面にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nm設け、スリッターにより幅8mm及び6.35mmにスリットし、市販のリールに巻き取り、磁気テープを作成する。電磁変換特性は市販のHi8方式8mmビデオテープレコーダーを用いてビデオS/N比を、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーを用いてドロップアウト(DO)個数を求める。S/Nの測定にはTV試験信号発生器から信号を供給し、ビデオノイズメーターを用い、市販のスタンダードHi8MEテープをゼロデシベル(dB)として比較検討する。
○:市販テープ対比+2dB以上
△:市販テープ対比−2dB以上〜+2dB未満
×:市販テープ対比−2dB未満
【0043】
DO個数の測定は、作成した6.35mmテープを市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画後、1分間の再生をして画面に現れたブロック状のモザイクの個数をカウントすることによって行う。
【0044】
走行耐久性は40℃、80%RHで記録再生を500回繰り返した後のS/Nを測定し、初期値からのずれで判定する。
○:初期値に対して+0.0dB以上
△:初期値に対して−1.0dB以上〜+0.0dB未満
×:初期値に対して−1.0dB未満
【0045】
【実施例】
以下に実施例に基づき、本発明をさらに説明する。
【0046】
[実施例1]
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥した後、押出し機に供給して305℃で溶融した。この溶融ポリマーを公知の方法で濾過し、押出し機からシート状に押出し、これをキャスティングドラム上で冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃で予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.7倍に延伸し、続いて下記に示す組成の水溶液をそれぞれフィルムに塗布した。
【0047】
皮膜層A:
(1)アクリル−ポリエステル樹脂 75重量%
・ポリエステル樹脂部:テレフタル酸(70モル%)、イソフタル酸(18モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(12モル%)/エチレングリコール(92モル%)、ジエチレングリコール(8モル%)
・アクリル樹脂部:メチルメタクリレート(80モル%)、グルシジルメタクリレート(15モル%)、n−ブチルアクリレート(5モル%)
・ポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分のモル比=3/7
(2)アクリル樹脂粒子(平均粒径15nm) 5重量%
(3)界面活性剤 日本油脂製 ノニオンNS−240 20重量%
・厚み(乾燥後):4.8nm
【0048】
皮膜層B:
(1)共重合ポリエステル樹脂 60重量%
・テレフタル酸97モル%/イソフタル酸1モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%//エチレングリコール60モル%/ジエチレングリコール8モル%
(2)シリカ粒子(平均粒径60nm) 10重量%
(3)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 20重量%
(4)日本油脂製 ノニオンNS−208.5 10重量%
・厚み(乾燥後):15nm
【0049】
続いて、ステンターに供給し、150℃にて横方向に5.0倍に延伸し、更に200℃で1.12倍横延伸しながら熱処理し、厚み4.7μmの二軸配向フイルムを得た。このポリエステルフィルムの表面A(皮膜層A表面)に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を110nmの厚みで形成した。次に、コバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボンを10nmの厚みで形成した。続いて、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nm設け、スリッターにより幅8mmにスリットし、リールに巻き取り、磁気テープを作成した。得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1、2に示す。
【0050】
[実施例2〜4、比較例1〜7]
実施例1のA面側の塗布剤の種類と比率を表1に示すように変える以外は、実施例1と同様にして複合ポリエステルフィルム、磁気テープを得た。特性を表1、2に示す。
【0051】
[実施例5]
ベースフィルムの製造において、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをポリエチレンテレフタレートに変更し、ペレットの乾燥時間を3時間とし、溶融押出温度を295℃とし、縦延伸予熱温度、倍率をそれぞれ80℃、3.3倍とし、実施例1と同じ塗液を塗布し、更には120℃で4.2倍に横延伸し、さらに210℃で熱処理し、その他は同様にして厚さ6.4μmのフィルムを得、実施例1と同様にして磁気テープを作成した。得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1、2に示す。
【0052】
[実施例6]
実施例1のベースフィルムの製造において、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中に、平均粒径60nmの球状シリカを0.03重量%含有させる以外は実施例1と同様にして、厚さ4.7μmのフィルムを得、実施例1と同様にして磁気テープを作成した。得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1、2に示す。
【0053】
[実施例7]
実施例1のベースフィルムの製造において、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである原料Aと、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに平均粒径300nmのシリカを0.3重量%含有させた原料Bとを厚み5:1の割合で共押出すると変更し、その他は同様にして厚さ4.7μmの複合ポリエステルフィルムを得、実施例1と同様にして磁気テープを作成した。得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1、2に示す。
【0054】
[比較例8]
実施例1のベースフィルムの製造において、皮膜層Bの厚みを3nmとする以外は同様にして厚さ4.7μmの複合ポリエステルフィルムを得、実施例1と同様にして磁気テープを作成した。得られた複合ポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1、2に示す。
【0055】
【表1】
Figure 0003725011
【0056】
【表2】
Figure 0003725011
【0057】
表1、2から明らかなように、本発明の複合ポリエステルフィルムは塗布斑がなく、ハンドリング性に優れ、また磁気テープとしたときに、電磁変換特性、DO特性、走行耐久性に優れるテープとなる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸着工程でオリゴマーの発生や皮膜層の変形を防ぎ、得られた磁気テープのエラーや電磁変換特性が優れ、且つハンドリング性が良好な磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリエステルフィルムの片面に皮膜層Aを積層した複合フィルムであって、該皮膜層Aが、(1)アクリル−ポリエステル樹脂40重量%以上89重量%以下、(2)平均粒径が5nm以上50nm以下の不活性粒子0.5重量%以上20重量%以下及び(3)界面活性剤10重量%以上50重量%以下からなる成分を主成分とし、該アクリル−ポリエステル樹脂(1)のポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分のモル比が1/9以上5/5以下であり、該アクリル樹脂成分が(A)アルキルメタクリレート成分50モル%以上94モル%以下、(B)エポキシ基含有アクリル系モノマー成分3モル%以上30モル%以下及び(C)アルキルアクリレート成分3モル%以上30モル%以下からなる成分を主成分とし、該皮膜層A表面のAFM(原子間力顕微鏡)によるRa(中心面平均粗さ)が0.5nm以上5nm以下、Rz(10点平均粗さ)が5nm以上50nm以下であり、かつRz/Raの比が10以上30以下であり、さらに該ポリエステルフィルムの皮膜層A形成面の他方の表面(B面)の中心線平均表面粗さRaが2nm以上10nm以下であり、かつ該皮膜層Aの外側に強磁性金属薄膜層を設けて使用されることを特徴とする磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルム。
  2. ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるフィルムである請求項1に記載の磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルム。
  3. ポリエステルフィルムの厚さが7μm未満である請求項1または2に記載の磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルム。
  4. デジタル記録方式の磁気テープに用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用複合ポリエステルフィルムをベースとした磁気記録媒体。
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