JP2002097359A - 生分解性ポリエステル溶解物 - Google Patents

生分解性ポリエステル溶解物

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知裕 青山
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美奈子 有地
Seishi Hotta
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 乳酸残基を80〜100モル%含有し、
そのうちL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜
9であり、である生分解性ポリエステルが溶媒に溶解さ
れていることを特徴とする生分解性ポリエステル溶解
物。 【効果】 本発明の生分解性ポリエステル溶解物をバイ
ンダーとして使用して製造された生分解性インキは、優
れたインキ性能および生分解性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は生分解性ポリエステ
ル溶解物に関する。さらに詳しくは、生分解性インキ用
のバインダーとして有用な生分解性ポリエステル溶解物
に関する。
【0002】
【従来技術・発明が解決しようとする課題】近年の環境
問題に対する意識の高まりから、天然素材または生分解
性合成素材を利用した商品の開発が盛んに行われてい
る。例えば、生分解性フィルム上に印刷したラベル等で
は、生分解性のインキの使用が必要となってくる。しか
しながら、従来より使用されているインキ用バインダー
は、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、芳香族
系ポリエステル等であり、これらは生分解性を持たない
ものである。そこで、生分解性を有するインキ用バイン
ダーの出現が望まれている。
【0003】本発明の目的は、優れたインキ性能および
生分解性を有する生分解性インキを得ることのできるバ
インダー用の生分解性ポリエステル溶解物を提供するこ
とである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意検討した結果、以下に示す生分解性ポ
リエステル溶解物を見いだし、本発明を完成させた。
【0005】即ち、本発明は、乳酸残基を80〜10
0モル%含有し、そのうちL−乳酸とD−乳酸のモル比
(L/D)が1〜9である生分解性ポリエステル(A)
が溶媒に溶解されていることを特徴とする生分解性ポリ
エステル溶解物であり、また生分解性ポリエステル中
に、乳酸以外のオキシ酸、コハク酸、プロピレングリコ
ールまたはグリセリンの残基が含有されている上記の
生分解性ポリエステル溶解物である。
【0006】本発明における生分解性ポリエステルは、
下式
【0007】
【化1】
【0008】で表される乳酸残基を当該ポリエステル全
体の80〜100モル%含有していることが必要であ
り、好ましくは85〜95モル%である。80モル%未
満では、良好な生分解性および塗膜物性は得られない。
【0009】また、L−乳酸とD−乳酸のモル比(L/
D)が1〜9であることも必要であり、好ましくは1〜
3である。L/Dが9を越えると、使用溶剤(C)に対
する当該ポリエステルの溶解性が悪くなり、インキ用バ
インダーとして使用できなくなる。L/Dが1未満(D
−乳酸過剰)であると原料コストが高くなる。なお、乳
酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれ
も用いることができる。
【0010】当該生分解性ポリエステルには、乳酸以外
にも、例えば乳酸以外のオキシ酸、コハク酸、プロピレ
ングリコールまたはグリセリン等の生分解性を有する化
合物を用いることができる。この場合、乳酸と当該化合
物を共重合させて、生分解性ポリエステルを得ることが
できる。また、当該化合物は1種でも2種以上でも用い
ることができる。なお、乳酸以外の上記生分解性を有す
る化合物の残基は、ポリエステル全体の20モル%以下
含有することができるが、0%でもよい。
【0011】乳酸以外のオキシ酸としては、例えばカプ
ロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、
3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、16−ヒド
ロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪
酸、10−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン
酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0012】当該生分解性ポリエステルの還元粘度(η
SP/C)は通常0.4〜1.5dl/gであり、好ましく
は0.5〜1.2dl/gである。0.4〜1.5dl
/gの範囲内であれば、良好な塗工適性および塗膜物性
が得られる。還元粘度は、例えばポリエステルの重合時
間、重合温度、減圧の程度(減圧しながら重合させる場
合)を変化させたり、共重合成分としてアルコール成分
の使用量を変化させたりすることにより、調整すること
ができる。なお、当該還元粘度は、サンプル濃度0.1
25g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度2
5℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0013】さらに、当該生分解性ポリエステルのTg
(ガラス転移点)は、通常35〜60℃であり、好まし
くは40〜50℃である。35〜60℃の範囲内であれ
ば、良好な塗膜物性(耐ブロッキング性等)が得られ
る。Tgは、例えばポリエステルの共重合成分の割合を
変化させることにより調整することができる。なお、当
該TgはDSC(示差走査熱量計)法により測定した値
である。
【0014】当該生分解性ポリエステルの製造方法とし
ては特に限定されず、従来公知の方法を用いることがで
きる。例えば、乳酸の二量体であるラクチドと、乳酸以
外の前記生分解性を有する化合物を溶融混合し、公知の
開環重合触媒(例えばオクチル酸スズ、アルミニウムア
セチルアセトナート等)を使用して加熱開環重合させる
方法や、加熱および減圧による直接脱水重縮合を行う方
法等が挙げられる。また、乳酸の二量体であるラクチド
のみを用い、上記のようにして当該生分解性ポリエステ
ルを製造することもできる。
【0015】本発明の生分解性ポリエステル溶解物は生
分解性を有するインキ用バインダーとして使用されうる
ものであり、その際生分解性インキ用として使用される
インキ顔料としては、通常使用されるものであれば特に
限定されず、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸
バリウム、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラック、
アルミニウム粉、雲母、チタン粉等が挙げられる。これ
らは、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0016】本発明における生分解性ポリエステル溶解
物用の溶剤としては、生分解性ポリエステルの溶解性、
作業性、乾燥速度等の点から、好ましくはメチルエチル
ケトン、酢酸エチル、トルエン、イソプロピルアルコー
ル等が用いられる。これらは、1種でも2種以上でも用
いることができる。
【0017】本発明の生分解性ポリエステル溶解物にお
ける上記各成分の配合量は、生分解性ポリエステル10
0重量部に対して、好ましくは溶剤100〜2000重
量部、より好ましくは200〜1800重量部である。
これを生分解性インキとする場合には、上記の配合物に
配合されるインキ顔料は50〜1000重量部であり、
好ましくはインキ顔料100〜800重量部である。
【0018】また、本発明に関して、生分解性インキに
は、上記成分以外にも必要に応じて、多官能イソシアネ
ート、多官能エポキシ、メラミン等の架橋剤、顔料分散
剤、粘度調整剤等を配合することができる。
【0019】当該生分解性インキの製造方法としては、
従来公知の方法であれば特に限定されない。例えば生分
解性ポリエステルを溶剤に溶解させた溶解物にインキ顔
料を配合し、ボールミルやペイントシェーカー等を用い
て分散させる等の方法で生分解性インキを製造すること
ができる。
【0020】本発明の生分解性ポリエステル溶解物を使
用して製造された生分解性インキは、例えば生分解性フ
ィルムを基材とした印刷ラベル等に広く用いられる。
【0021】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】実施例1 L−ラクチド100g、DL−ラクチド100g、オク
チル酸スズ50mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気
下、190℃で1時間加熱開環重合させて、ポリエステ
ルAを得た。次に、上記ポリエステル100gをトルエ
ン200gに溶解させて生分解性ポリエステル溶解物を
得た。当該溶解物に、酸化チタン100gとボールミル
中で混合分散化し、これを酢酸エチル100gで希釈
し、白インキを得た。
【0023】実施例2 L−ラクチド100g、DL−ラクチド100g、カプ
ロラクトン20g、グリセリン0.5g、オクチル酸ス
ズ50mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、190
℃で1時間加熱開環重合させて、ポリエステルBを得
た。また、実施例1と同様にして生分解性ポリエステル
溶解物を得、さらに白インキを得た。
【0024】実施例3 L−ラクチド100g、DL−ラクチド100g、カプ
ロラクトン20g、プロピレングリコール3g、オクチ
ル酸スズ50mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、
190℃で1時間加熱開環重合させて、ポリエステルC
を得た。また、実施例1と同様にして生分解性ポリエス
テル溶解物を得、さらに白インキを得た。
【0025】比較例1 L−ラクチド100g、DL−ラクチド100g、カプ
ロラクトン200g、オクチル酸スズ50mgをフラス
コ内に加え、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱開環
重合させて、ポリエステルDを得た。また、実施例1と
同様にして生分解性ポリエステル溶解物を得、さらに白
インキを得た。
【0026】比較例2 芳香族系のポリエステル樹脂であるバイロンRV103
(東洋紡績社製)を用い、実施例1と同様にして生分解
性ポリエステル溶解物を得、さらに白インキを得た。
【0027】上記実施例および比較例で使用されたポリ
エステルの組成および物性を表1に示す。なお、還元粘
度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤
クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を
用いて測定した。また、TgはDSC法により測定し
た。
【0028】
【表1】
【0029】実験例 上記実施例および比較例で得られたインキを用い、フレ
キソ印刷機でポリ乳酸フィルム上に印刷し、印刷フィル
ムを得た。この印刷フィルムを用いて、インキ性能(印
刷性、接着性、耐引掻き性)および生分解性の評価を以
下のようにして行った。なお、接着性、耐引掻き性、生
分解性については5段階評価とし、5(極めて良好)〜
1(不良)で表した。実用上は4以上である。結果を表
2に示す。
【0030】印刷性 インキのにじみ、かすれ、顔料の分散状態等、総合的に
目視で評価した。 接着性 印刷物にセロテープ(登録商標)(ニチバン社製、幅1
2mm)を貼付け、親指で5回強く擦った。セロテープ
(登録商標)を徐々に引き離し、途中から急激に引き離
し、インキ皮膜の剥離の程度を評価した。剥離しない方
が良好である。 耐引掻き性 印刷面を爪先で引掻き、印刷面の引掻き傷の発生を評価
した。引掻き傷のない方が良好である。 生分解性 上記印刷フィルム10cm×10cmをコンポスター
(生ゴミ処理機、三井ホーム社製『MAM』)中に入
れ、7日後にサンプルの形態(分解の程度)を目視で評
価した。分解の程度の大きい方が良好である。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】本発明の生分解性ポリエステル溶解物を
バインダーとして使用して製造された生分解性インキ
は、優れたインキ性能および生分解性を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 武 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 青山 知裕 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 有地 美奈子 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 掘田 清史 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 宇野 敬一 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4J002 CF181 CF191 4J039 AE06 BA04 BA06 BA12 BA16 BA18 BA23 BC04 BC08 BC18 BC22 BE01 BE12 EA45 EA48 GA09

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳酸残基を80〜100モル%含有し、
    そのうちL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜
    9である生分解性ポリエステルが溶媒に溶解されている
    ことを特徴とする生分解性ポリエステル溶解物。
  2. 【請求項2】 生分解性ポリエステル中に、乳酸以外の
    オキシ酸、コハク酸、プロピレングリコールまたはグリ
    セリンの残基が含有されている請求項1記載の生分解性
    ポリエステル溶解物。
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