JP2003020439A - 生分解性オーバープリントニス組成物、および、生分解性複合体 - Google Patents

生分解性オーバープリントニス組成物、および、生分解性複合体

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JP2003020439A
JP2003020439A JP2001207817A JP2001207817A JP2003020439A JP 2003020439 A JP2003020439 A JP 2003020439A JP 2001207817 A JP2001207817 A JP 2001207817A JP 2001207817 A JP2001207817 A JP 2001207817A JP 2003020439 A JP2003020439 A JP 2003020439A
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泰業 堀田
Toshiyuki Kaku
俊行 賀来
Kazunori Okuyama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 印刷フィルム巻き取り時における耐ブロッキ
ング性が良好であり、同時に、生分解性を有するオーバ
ープリントニス組成物を提供する。 【解決手段】 A成分として、乳酸残基が80モル%以
上であり、L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/
D)が1〜9であり、還元粘度が0.3〜1.0dl/
gである、脂肪族ポリエステルと、B成分として、有機
溶剤可溶性多糖類と、C成分として、溶剤と、を含有す
る、生分解性オーバープリントニス組成物。前記の有機
溶剤可溶性多糖類としては,ニトロセルロースが特に好
ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性オーバー
プリントニス組成物に関する。さらに詳しくは、生分解
性オーバープリントニス組成物、および、生分解性基材
と生分解性インキ組成物と生分解性オーバープリントニ
ス組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む
生分解性複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、廃棄物量の激増が大きな環境問題
となっている。また、プラスチック製品は、家庭廃棄物
および産業廃棄物の多くを占めている。そのため、一般
的なプラスチック製品は、その半永久的に分解しない特
性から、極めて処理困難な、環境に負荷をかける素材と
して指摘されている。このような社会的ニーズから、天
然素材または生分解性合成素材を利用した、土中の微生
物などによって自然分解可能な生分解性プラスチックの
開発が、現在、盛んに行なわれている。
【0003】また、近年、プラスチック類で覆われた天
然素材製品の激増も大きな環境問題となっている。本来
なら生分解性を有するはずの紙、生分解性繊維布、生分
解性不織布、木材などの生分解基質が、プラスチック類
で覆われた結果、生分解されないためである。そのた
め、生分解性プラスチックのみならず、天然素材と生分
解性プラスチックの複合体の開発も、現在、盛んに行な
われている。
【0004】生分解性プラスチックの中でも特に、ポリ
乳酸はコストおよび物性面で最も有望視され、透明性を
持つ熱可塑性樹脂として大いに期待されている。
【0005】ポリ乳酸は、燃焼熱量はポリエチレンの半
分以下と低いため、焼却処理をしても焼却炉に負担をか
けず、有毒ガスも発生しない。また、ポリ乳酸は、土中
または水中において、自然に加水分解が進行し、次いで
微生物により分解され、無害な物質となる。また、ポリ
乳酸には、融点が170℃〜180℃付近と高く、透明
性に優れるという特徴も有する。しかし、ポリ乳酸に
は、剛直な分子構造のために、伸びや柔軟性に劣り、耐
衝撃性が低いという欠点も存在する。
【0006】このようなポリ乳酸の欠点を改善する目的
で、ポリ乳酸にポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルをブ
レンドしたり共重合することで、柔軟性に優れ、かつ、
耐衝撃性に優れた生分解性プラスチックが数多く開発さ
れている。最も身近な例としては、包装用フィルムなど
にも、ポリ乳酸系フィルムなどを用いた生分解性フィル
ムが使用され始めている(特開2001−123055
号、特開2001−122289号、特開2001−1
22288号、特開2001−123371号、特開2
001−114997号、特開2001−31853
号)。そのため、ポリ乳酸系フィルムなどの生分解性フ
ィルムに対して良好な印刷性を有するポリ乳酸系樹脂バ
インダなどを使用した生分解性インキ組成物の開発も盛
んに行われている(特開平8−92518号公報、特開
平8−319445号公報、特開平9−132709号
公報、特開平10−251368号公報、特開平10−
25439号公報)。
【0007】しかし、前記のような生分解性を有する印
刷フィルムのインキ層においては、製造工程において、
巻き取り耐ブロッキング性が不足する場合が多い。
【0008】このように、巻き取りブロッキング性に問
題がある場合、一般に、印刷面を保護するために、印刷
面をオーバープリントニス組成物で被覆することが多
い。すなわち、印刷インキ各色(黄、紅、藍、黒、な
ど)を基材に印刷した後、その印刷面上に透明なオーバ
ープリントニス組成物を印刷するのである(特開200
1−2969号、特開2000−327709号、特開
平11−279441号公報、特開平11−11687
4号公報)。
【0009】また、従来は、印刷面に光沢性を付与する
には、いわゆるビニール引き、プレスコート、プリント
ラミネート、などの手法が用いられていた。しかし、近
年では、耐ブロッキング性、耐磨耗性、耐擦傷性、接着
強度、透明度、耐薬品性、耐水性、耐熱性、耐汚染性、
に優れると同時に光沢性に優れた印刷面を得られるオー
バープリントニス組成物で印刷面を被覆することも多
い。光沢性および耐汚染性を得るための、オーバープリ
ントニス組成物を用いた加工の例としては、紙器類、ラ
ベル、シール、レコードジャケット、書籍のカバーやサ
ック、雑誌類やカタログの表紙、絵葉書、ポスター、な
どの艶出しが挙げられる。
【0010】しかし、現在一般に使用されているオーバ
ープリントニス組成物は、十分な耐ブロッキング性、耐
磨耗性、耐擦傷性、接着強度、透明度、耐薬品性、耐水
性、耐熱性、耐汚染性、を有しており、優れた光沢性を
示すものの、十分な生分解性を有していない。
【0011】そのため、生分解性基材および生分解性イ
ンキ組成物を用いた印刷面に対して十分な耐ブロッキン
グ性、耐磨耗性、耐擦傷性、接着強度、透明度、耐薬品
性、耐水性、耐熱性、耐汚染性、あるいは、光沢性を付
与しようとすれば、非生分解性オーバープリントニス組
成物を用いざるを得ない場合がある。その結果、せっか
くの生分解性基材および生分解性インキ組成物の、環境
負荷の削減効果が十分生かされないという問題が生じて
いる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記の現状に基づき、
本発明の課題は、印刷フィルム巻き取り時における耐ブ
ロッキング性が良好であり、同時に、生分解性を有する
オーバープリントニス組成物を提供することである。
【0013】また、本発明の他の課題は、耐磨耗性、接
着強度、透明度、耐水性、耐熱性、に優れ、同時に、生
分解性を有するオーバープリントニス組成物を提供する
ことである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するには、優れた生分解性と透明性を有するポ
リ乳酸系樹脂に、耐ブロッキング性を付与すればよいこ
とに着目し、鋭意検討した結果、特定のポリ乳酸系樹脂
に、有機溶剤可溶性多糖類を加えることにより、優れた
耐ブロッキング性が付与できることを見いだし、本発明
を完成させた。
【0015】すなわち、本発明の生分解性オーバープリ
ントニス組成物は、A成分として、乳酸残基が80モル
%以上であり、L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比
(L/D)が1〜9であり、還元粘度が0.3〜1.0
dl/gである、脂肪族ポリエステルと、B成分とし
て、有機溶剤可溶性多糖類と、C成分として、溶剤と、
を含有する。
【0016】また、前記の有機溶剤可溶性多糖類として
は、ニトロセルロースを含有することが好ましい。
【0017】さらに、本発明は、前記の生分解性オーバ
ープリントニス組成物を用いた生分解性塗膜を含む。ま
た、本発明は、生分解性基材と、その上面に印刷される
生分解性インキ組成物と、さらにその上面を被覆する前
記の生分解性オーバープリントニス組成物を用いた生分
解性塗膜と、を構成要素として含む、生分解性複合体を
含む。
【0018】ここで、前記の生分解性基材としては、生
分解性フィルム、生分解性プラスチック、紙、生分解性
繊維布、生分解性不織布、木材、からなる群のうちの1
種または2種以上を構成要素として含むことが望まし
い。
【0019】さらに、前記の生分解性基材としては、ポ
リ乳酸系フィルムを構成要素として含むことが特に望ま
しい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態を示して本発明
をより詳細に説明する。
【0021】本発明の生分解性オーバープリントニス組
成物は、A成分として、特定の脂肪族ポリエステルと、
B成分として、有機溶剤可溶性多糖類と、C成分とし
て、溶剤と、を含有する。
【0022】本発明の生分解性オーバープリントニス組
成物は、生分解性を有する。ここで、生分解性とは、分
解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量
化合物に変換する性質をいう。
【0023】また、オーバープリントニス組成物とは、
紙、プラスチックフィルム、などの印刷面を保護し、耐
ブロッキング性、耐磨耗性、接着強度、透明度、耐水
性、耐熱性、などを向上させる目的で、塗布、または、
印刷されるコーティング剤をいう。
【0024】本発明における脂肪族ポリエステル(A成
分)は、乳酸残基を80モル%以上含有し、L−乳酸残
基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜9の範囲で
あり、還元粘度が0.3〜1.0dl/gの範囲である
ことを特徴とする。
【0025】脂肪族ポリエステル(A成分)は、乳酸残
基を80モル%以上含有していることが必要であり、9
0モル%以上含有していることが好ましい。乳酸残基が
80モル%未満であると、良好な塗膜物性、生分解性を
得ることが出来ない。
【0026】なお、脂肪族ポリエステル(A成分)の原
料として用いる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、D
L−乳酸のいずれも用いることが出来る。ここで、L−
乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜9の範囲であ
ることが好ましく、1〜5.6の範囲であればさらに好
ましい。
【0027】L/Dが9を超えると、脂肪族ポリエステ
ル(A成分)の使用溶剤に対する溶解性が悪くなり、オ
ーバープリントニス組成物として使用できない。
【0028】また、L/Dが1未満、すなわち、D−乳
酸過剰であると原料コストが高くなる。なぜなら、一般
には、L−乳酸またはLD−乳酸の方が大量かつ安価に
入手しやすいためである。もっとも、D−乳酸過剰の配
合で前記の脂肪族ポリエステルを製造しても、L/Dが
1〜9の範囲となる条件で製造した脂肪族ポリエステル
(A成分)と同様の物性のものを得ることができる。
【0029】脂肪族ポリエステル(A成分)において、
乳酸に加えて使用可能なヒドロキシ酸としては、グリコ
ール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪
酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ
−2−メチル酪酸、12−ヒドロキシステアリン酸、な
どが挙げられる。カプロラクトンのようなヒドロキシ酸
の分子内エステル、ラクチドのようなα−ヒドロキシ酸
から水分子を失って生成した環状エステル、も用いられ
る。
【0030】脂肪族ポリエステル(A成分)において、
乳酸に加えて使用可能な、脂肪族系のジカルボン酸とし
ては、コハク酸、アジピン酸等が挙げられ、ジオール成
分としては、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ブタンジオール、ヘキサンジオール、などが挙げら
れる。
【0031】次に、脂肪族ポリエステル(A成分)の製
造方法について説明する。脂肪族ポリエステル(A成
分)の製造方法としては、特に限定されず、従来の公知
の方法を用いることが出来る。たとえば、乳酸の二量体
であるラクチドと他のオキシ酸、ポリグリセリン、など
を溶融混合し、公知の開環重合触媒(例えば、オクチル
酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナート)を使用し
て加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧により直
接脱水重縮合を行う方法等が挙げられる。
【0032】しかし、ラクチドの加熱開環重合反応は工
程がシンプルで容易であり、高純度生成物が得られやす
いため、脂肪族ポリエステル(A成分)の製造方法とし
ては、ラクチドの加熱開環重合反応を用いることが好ま
しい。
【0033】また、ラクチドの加熱開環重合反応におい
て、重合開始剤としてポリグリセリンを添加する場合
は、ポリグリセリンの重合度は3〜20の範囲にあるこ
とが好ましく、ポリグリセリンの配合量は、0.1〜5
重量%の範囲にあることが好ましい。
【0034】次に、得られた脂肪族ポリエステル(A成
分)の特性について説明する。本発明における脂肪族ポ
リエステル(A成分)の還元粘度(ηsp/c)は、0.
3〜1.0dl/gの範囲である必要がある。還元粘度
が0.3dl/gよりも低いと、コーティング時のハジ
キなどの原因となり、還元粘度が1.0dl/gよりも
高いと、オーバープリントニス組成物の粘度が高くなり
すぎて、塗装作業性が悪くなる。
【0035】なお、本発明において、還元粘度は、サン
プル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホル
ム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定
した値である。
【0036】本発明における脂肪族ポリエステル(A成
分)のガラス転移点(Tg)は、40〜60℃の範囲に
あることが好ましく、45〜60℃の範囲にあればさら
に好ましい。Tgが40〜60℃の範囲にあれば、生分
解性インキ塗膜および生分解性フィルムへの付着強度が
良好となり、優れた耐ブロッキング性が得られる。
【0037】また、ガラス転移点Tgは、たとえば、ポ
リエステルの共重合体の構成成分の割合を変化させるこ
とにより調整することができる。なお、ここで述べるガ
ラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査熱量計)法に
より測定した値である。
【0038】次に、本発明の生分解性オーバープリント
ニス組成物について説明する。本発明の生分解性オーバ
ープリントニス組成物は、A成分として、特定の脂肪族
ポリエステルと、B成分として、有機溶剤可溶性多糖類
と、C成分として、溶剤と、を含有する。
【0039】ここで、本発明における有機溶剤可溶性多
糖類(B成分)としては、酢酸セルロース、ニトロセル
ロース、各種の疎水化澱粉、各種のエステル化澱粉など
が挙げられる。この中でも、耐ブロッキング性の観点か
らニトロセルロースが特に好ましい。また、本発明にお
ける溶剤(C成分)としては、特に限定されず、一般に
オーバープリントニス組成物に用いられる公知の溶剤を
用いることができる。具体例としては、メチルエチルケ
トン、シクロヘキサノン、などのケトン系溶剤や、酢酸
エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、などのエステル系
溶剤や、ブチル化エチレングリコールなどのアルコール
系溶剤や、トルエン、キシレン、などの芳香族系溶剤が
挙げられる。なお、本発明の生分解性オーバープリント
ニス組成物には、必要に応じて、たとえば、酸化防止
剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス剤、着色
顔料、結晶化促進剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静
電気防止剤、香料、抗菌剤、撥水剤、親水剤、消泡剤、
分散剤、重合禁止剤、蛍光顔料、などの各種添加剤を、
本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができ
る。
【0040】さらに、本発明の生分解性オーバープリン
トニス組成物における上記成分の配合量は、脂肪族ポリ
エステル(A成分)100重量部に対して、有機溶剤可
溶性多糖類(B成分)は5〜40重量部の範囲、溶剤
(C成分)は100〜2000重量部の範囲であること
が好ましい。
【0041】有機溶剤可溶性多糖類(B成分)の配合量
が5重量部未満の場合には、耐ブロッキング性が不足す
る傾向があり、40重量部を超える場合には、ポリ乳酸
フィルムなどへの密着性が不良となる問題が生じること
がある。
【0042】また、溶剤(C成分)の配合量が100重
量部未満の場合には、オーバープリントニス組成物の粘
度が高くなりすぎ、コーティング不良となる傾向があ
り、2000重量部を超える場合には、乾燥膜厚が薄く
なりすぎるという問題が生じることがある。
【0043】また、本発明の生分解性オーバープリント
ニス組成物の製造方法は、特に限定されず、従来の公知
の方法を用いることができる。具体例を挙げると、本発
明の脂肪族ポリエステル(A成分)と、有機溶剤可溶性
多糖類(B成分)と、溶剤(C成分)と、を混合して攪
拌するだけで得ることができる。
【0044】次に、本発明の生分解性塗膜および生分解
性複合体について説明する。本発明の生分解性複合体
は、生分解性基材と、その上面に印刷される生分解性イ
ンキ組成物と、さらにその上面を被覆する生分解性塗膜
と、を構成要素として含む。
【0045】ここで、本発明における生分解性基材は、
シート状で、生分解性を有し、生分解性インキ組成物の
受容性を有するものであれば、任意の基材が利用でき
る。
【0046】また、本発明における生分解性基材は、シ
ート状のものに限定されるわけではなく、立体的な形状
を持つものにも適用可能である。
【0047】本発明における生分解性基材としては、た
とえば、生分解性フィルム、生分解性プラスチック、
紙、生分解性繊維布、生分解性不織布、木材、などが使
用可能である。また、本発明における生分解性基材とし
ては、ポリ乳酸系フィルム、および、パルプを主成分と
する紙が、特に好ましい。
【0048】そして、前記のポリ乳酸系フィルムとして
は、ポリL−乳酸系フィルムが、特に好ましい。
【0049】さらに、前記のポリ乳酸系フィルムを生分
解性インキ組成物の受容性が高まるように加工したもの
を用いてもよい。たとえば、(i)ポリ乳酸系フィルム
を発泡させて微細な孔を多数設け、この微細孔によって
生分解性インキ組成物の受容性を改善させたもの、(i
i)溶剤溶解性の微粉末を混合して製膜したプラスチッ
クフィルムから微粉末を溶剤により溶解除去し、こうし
て除去された微粉末存在部位を微細な孔として、この微
細孔によって生分解性インキ組成物の受容性を改善させ
たもの、あるいは、(iii)微粉末を混合して製膜し
たプラスチックフィルムを延伸し、この延伸によって微
粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生ぜしめ、こ
の微細な亀裂によって生分解性インキ組成物の受容性を
改善させたもの、などが好適に利用できる。
【0050】前記のパルプを主成分とする紙としては、
更紙、中質紙、上質紙、段ボールなどの板紙、などが特
に好ましい。
【0051】本発明における生分解性インキ組成物は、
特に限定されず、生分解性を有し、生分解性基材に好適
に印刷あるいは塗布することができ、インキ組成物とし
ての特性を持つものであれば、任意のインキ組成物を利
用することができる。
【0052】本発明における生分解性インキ組成物とし
ては、たとえば、ポリ乳酸系樹脂バインダと、顔料と、
溶剤と、を含有する生分解性インキ組成物などが好適に
使用可能である。
【0053】本発明における生分解性インキ組成物の印
刷あるいは塗布の方法は、特に限定されず、従来の公知
の方法を利用可能である。たとえば、シルクスクリーン
印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、グラ
ビアオフセット印刷、フレキソ印刷、バーコーター塗
工、エアナイフ塗工、などの方法を用いることができ
る。また、1色に限らず、多色の印刷インキで刷り重ね
られていてもよい。
【0054】本発明における生分解性オーバープリント
ニス組成物の印刷あるいは塗布の方法も、特に限定され
ず、従来の公知の方法を利用可能である。たとえば、シ
ルクスクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラ
ビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、バ
ーコーター塗工、エアナイフ塗工、などの方法を用いる
ことができる。
【0055】本発明の生分解性オーバープリントニス組
成物は、自然に、あるいは、温風によって乾燥させるこ
とができる。乾燥後、本発明の生分解性オーバープリン
トニス組成物は、実質的に透明な塗膜を形成する。
【0056】また、本発明の生分解性塗膜の膜厚は、用
途に応じ、任意であるが、たとえば、一般的な使用方法
の場合には、5〜100μmの範囲にあることが好まし
い。
【0057】本発明の生分解性複合体は、包装用材料、
医療用材料、産業資材、工業用材料、漁業用材料、農業
用材料、建築用材料、衣料用材料、家庭用材料、などの
各種用途に使用可能である。
【0058】具体例を挙げれば、本発明の生分解性複合
体は、印刷ラベル、包装用フィルム、紙器類、シール、
レコードジャケット、書籍のカバーやサック、雑誌類や
カタログの表紙、絵葉書、ポスター、などに好適に利用
できる。
【0059】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】<実施例1>DLラクチド1000重量
部、重合度が10であるポリグリセリン10重量部、開
環重合触媒として、アルミニウムアセチルアセトナート
1重量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、1
80℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合さ
せ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、ポリ
エステル(I)を得た。得られたポリエステルの特性値
を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】次にポリエステル(I)100重量部を酢
酸エチル150重量部と酢酸プロピル150重量部から
なる混合溶剤に溶解させ、ニトロセルロース20重量部
を配合することにより、オーバープリントニス組成物
(I)を得た。得られたオーバープリントニス組成物の
配合を表2に示す。
【0063】<比較例1>ポリエステル(I)100重
量部を酢酸エチル100重量部と酢酸プロピル100重
量部からなる混合溶剤に溶解させることにより、オーバ
ープリントニス組成物(II)を得た。得られたオーバ
ープリントニス組成物の配合を表2に示す。
【0064】<実施例2>ポリエステル(I)100重
量部を酢酸エチル150重量部と酢酸プロピル150重
量部からなる混合溶剤に溶解させ、ニトロセルロース5
0重量部を配合することにより、オーバープリントニス
組成物(III)を得た。得られたオーバープリントニ
ス組成物の配合を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】<実施例3>ポリエステル(I)100重
量部を酢酸エチル150重量部と酢酸プロピル150重
量部からなる混合溶剤に溶解させ、酢酸セルロース20
重量部を配合することにより、オーバープリントニス組
成物(IV)を得た。得られたオーバープリントニス組
成物の配合を表3に示す。
【0067】<実施例4>ポリエステル(I)100重
量部を酢酸エチル150重量部と酢酸プロピル150重
量部からなる混合溶剤に溶解させ、疎水化澱粉20重量
部を配合することにより、オーバープリントニス組成物
(V)を得た。得られたオーバープリントニス組成物の
配合を表3に示す。
【0068】<実施例5>ポリエステル(I)100重
量部を酢酸エチル150重量部と酢酸プロピル150重
量部からなる混合溶剤に溶解させ、エステル化澱粉20
重量部を配合することにより、オーバープリントニス組
成物(VI)を得た。得られたオーバープリントニス組
成物の配合を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】<実施例6>DLラクチド1000部、重
合度が10であるポリグリセリン5.6部、開環重合触
媒として、アルミニウムアセチルアセトナート1部を4
つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時
間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチ
ドを減圧下留去させることにより、ポリエステル(I
I)を得た。得られたポリエステルの特性値を表1に示
す。次にポリエステル(II)100重量部を酢酸エチ
ル150重量部と酢酸プロピル150重量部からなる混
合溶剤に溶解させ、ニトロセルロース20重量部を配合
することにより、オーバープリントニス組成物(VI
I)を得た。得られたオーバープリントニス組成物の配
合を表4に示す。
【0071】<実施例7>DLラクチド1000部、重
合度が10であるポリグリセリン16.5部、開環重合
触媒として、アルミニウムアセチルアセトナート1部を
4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3
時間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラク
チドを減圧下留去させることにより、ポリエステル(I
II)を得た。得られたポリエステルの特性値を表1に
示す。次にポリエステル(III)100重量部を酢酸
エチル150重量部と酢酸プロピル150重量部からな
る混合溶剤に溶解させ、ニトロセルロース20重量部を
配合することにより、オーバープリントニス組成物(V
III)を得た。得られたオーバープリントニス組成物
の配合を表4に示す。 <実施例8>ポリエステル(I)100重量部を酢酸エ
チル150重量部と酢酸プロピル150重量部からなる
混合溶剤に溶解させ、ニトロセルロース20重量部とT
PA100(脂肪族イソシアネートを含有する架橋剤
「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」)1重
量部を配合することにより、オーバープリントニス組成
物(IX)を得た。得られたオーバープリントニス組成
物の配合を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】<性能評価>オーバープリントニス組成物
(I)〜(IX)を乾燥膜厚10μmでポリL−乳酸系
フィルムにコーティングし、40℃で1時間乾燥後、コ
ーティングフィルムの耐ブロッキング性、耐磨耗性、接
着強度、透明度、耐水性、耐熱性、生分解性、を下記の
試験方法に基づいて評価した。評価結果を表5〜7に示
す。 (i)耐ブロッキング性試験 巻き取りを想定し、ポリL−乳酸系フィルムとコーティ
ング面でのブロッキング性に着目し、室温下、500g
/cm2の加重をかけて、ブロッキング性の評価を実施
し、下記の基準に従って評価した。 ◎:ブロッキング性優秀(容易に剥離可能)。 ○:ブロッキング性良好(剥離後外観異常なし)。 △:ブロッキング性に劣る(剥離後、一部の印刷面に損
傷あり)。 ×:ブロッキング性なし(剥離不可能)。
【0074】(ii)耐磨耗性試験 塗膜をポリエステルの布で強く擦り、擦り後を目視にて
観察し,下記の基準に従って評価した。 ◎:傷跡無し。 ○:かすかに傷跡が残る。 △:はっきりと傷跡が残る。 ×:塗膜が一部剥がれ落ちる。
【0075】(iii)接着強度試験 塗膜に碁盤目状の切込を入れ、ニチバンセロテープ
(R)を貼り付けた後、剥がし、塗膜の剥れ状態を目視
にて観察し、下記の基準に従って評価した。 ◎:剥れ無し。 ○:一部剥れる。 △:半分以上剥れる。 ×:ほとんどすべて剥れる。
【0076】(iv)透明度試験 塗膜を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。 ◎:印刷面が鮮明に読み取れる。 ○:印刷面が少し滲んで見える。 △:印刷面がかなりぼやけて見える。 ×:印刷面がぼやけて読み取れない。
【0077】(v)耐水性試験 サンプルを25℃の水に1時間浸し、白化、膨潤の有無
を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。 ◎:白化、膨潤が全く見られない。 ○:白化、膨潤がわずかに見られる。 △:白化、膨潤がかなり見られる。 ×:大部分が白化、膨潤して見える。
【0078】(vi)耐熱性試験 80℃に加熱したアルミ箔と塗膜を接触させ、オーバー
プリントニス塗膜の剥れ具合を目視にて観察し、下記の
基準に従って評価した。 ◎:外観異常無し。 ○:一部外観異常あり。 △:塗膜の一部がアルミ箔側にとられる。 ×:塗膜の大部分がアルミ箔側にとられる。
【0079】(vii)生分解性試験 積層体10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理
機、三井ホーム社製「MAM」)中に入れ、経時的にサ
ンプルの形態(分解の速度)を目視観察し、7日後に下
記の基準に従って評価した。 ◎:サンプルの形態が完全になし。 ○:サンプルの形態がほとんどなし。 △:サンプルの断片あり。 ×:サンプルの形態がほとんど残っている。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】評価結果より、有機溶剤可溶性多糖類とし
てニトロセルロースを含有する本発明の実施例1〜8
は、比較例1に比べて、耐ブロッキング性が顕著に優れ
ていることがわかる。また、実施例1〜8は、その他の
項目においても、比較例1に比べて優れている項目が多
いことがわかる。
【0084】今回開示された実施の形態および実施例は
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
【0085】
【発明の効果】本発明の生分解性オーバープリントニス
組成物は、優れた生分解性を有し、印刷フィルム巻き取
り時における耐ブロッキング性が顕著に良好である。
【0086】また、本発明の生分解性オーバープリント
ニス組成物は、耐磨耗性、接着強度、透明度、耐水性、
耐熱性、にも優れている。
【0087】そして、生分解性基材の上面に生分解性イ
ンキを印刷し、さらにその上面に本発明の生分解性オー
バープリントニス組成物を被覆することにより、優れた
生分解性、耐磨耗性、接着強度、透明度、耐水性、耐熱
性、を持つ生分解性複合体を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 貴志 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 堀田 泰業 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 賀来 俊行 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内 (72)発明者 奥山 和紀 東京都中央区京橋二丁目3番13号 東洋イ ンキ製造株式会社内 Fターム(参考) 4J038 BA011 BA081 DD011 NA01 NA04 NA05 NA10 NA11 NA14 PC06 PC08 PC10 4J039 AE06 BE01 BE12 GA01 GA02 GA03 GA04 GA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 A成分として、乳酸残基が80モル%以
    上であり、L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/
    D)が1〜9であり、還元粘度が0.3〜1.0dl/
    gである、脂肪族ポリエステルと、B成分として、有機
    溶剤可溶性多糖類と、C成分として、溶剤と、を含有す
    る、生分解性オーバープリントニス組成物。
  2. 【請求項2】 有機溶剤可溶性多糖類として、ニトロセ
    ルロースを含有することを特徴とする、請求項1に記載
    の生分解性オーバープリントニス組成物。
  3. 【請求項3】 生分解性基材と、その上面に印刷される
    生分解性インキ組成物と、さらにその上面を被覆する請
    求項1または請求項2に記載の生分解性オーバープリン
    トニス組成物を用いた生分解性塗膜と、を構成要素とし
    て含む、生分解性複合体。
  4. 【請求項4】 生分解性基材として、生分解性フィル
    ム、生分解性プラスチック、紙、生分解性繊維布、生分
    解性不織布、木材、からなる群のうちの1種または2種
    以上を構成要素として含むことを特徴とする、請求項3
    に記載の生分解性複合体。
  5. 【請求項5】 生分解性基材として、ポリ乳酸系フィル
    ムを構成要素として含むことを特徴とする請求項3に記
    載の生分解性複合体。
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