JP3954826B2 - 生分解性ヒートシールラッカー組成物および生分解性複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性ヒートシールラッカー組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、生分解性ポリエステルと、アンチブロッキング剤と、溶剤とを含有する生分解性ヒートシールラッカー組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、生分解性基材と、その上面に塗布される生分解性ヒートシールラッカー組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む生分解性複合体に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、廃棄物量の激増が大きな環境問題となっている。また、プラスチック製品は、家庭廃棄物および産業廃棄物の多くを占めている。そのため、一般的なプラスチック製品は、その半永久的に分解しない特性から、極めて処理困難な、環境に負荷をかける素材として指摘されている。このような社会的ニーズから、天然素材または生分解性合成素材を利用した、土中の微生物などによって自然分解可能な生分解性プラスチックの開発が、現在、盛んに行なわれている。
【0004】
また、近年、プラスチック類で覆われた生分解性素材製品の激増も大きな環境問題となっている。本来なら生分解性を有するはずの紙、生分解性繊維布、生分解性不織布、木材などの生分解性素材が、プラスチック類で覆われた結果、生分解されないためである。そのため、生分解性プラスチックのみならず、生分解性素材と生分解性プラスチックの複合体の開発も、現在、盛んに行なわれている。
【0005】
生分解性プラスチックの中でも特に、ポリ乳酸はコストおよび物性面で最も有望視され、透明性を持つ熱可塑性樹脂として大いに期待されている。
【0006】
ポリ乳酸は、燃焼熱量はポリエチレンの半分以下と低いため、焼却処理をしても焼却炉に負担をかけず、有毒ガスも発生しない。また、ポリ乳酸は、土中または水中において、自然に加水分解が進行し、次いで微生物により分解され、無害な物質となる。また、ポリ乳酸には、融点が170℃〜180℃付近と高く、透明性に優れるという特徴も有する。しかし、ポリ乳酸には、剛直な分子構造のために、伸びや柔軟性に劣り、耐衝撃性が低いという欠点も存在する。
【0007】
このようなポリ乳酸の欠点を改善する目的で、ポリ乳酸にポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルをブレンドしたり共重合することで、柔軟性に優れ、かつ、耐衝撃性に優れた生分解性プラスチックが数多く開発されている。
【0008】
最も身近な例としては、特開2001−123055号公報、特開2001−122289号公報、特開2001−122288号公報、特開2001−123371号公報、特開2001−114997号公報、特開2001−31853号公報、などに開示されているように、包装用フィルムなどにも、ポリ乳酸系フィルムなどを用いた生分解性フィルムが使用され始めている。
【0009】
また、このような包装用フィルムにおいては、一般に、ヒートシール性を付与する目的で、包装用フィルムの表面にヒートシール接着剤組成物を塗布することが多い。ここで、ヒートシール性とは、高温条件下で接着する性質を指し、ヒートシール接着剤組成物とは、ヒートシール性を有する接着剤組成物を指す。
【0010】
さらに、ヒートシール接着剤組成物には、非溶液タイプとして、ホットメルト接着剤組成物がある。ホットメルト接着剤組成物は、常温で固体であって、加熱することで溶融し、基材に塗布後冷却するだけで、短時間で接着が完了する性質を有する。ホットメルト接着剤組成物を塗布後、短時間の圧着で接着が完了できるのは、ホットメルト接着剤組成物は水や溶剤などを含んでいないため、乾燥時間や乾燥装置を必要としないからである。
【0011】
ホットメルト接着剤組成物を基材へ塗布する方法としては、一般に、ホットメルトコータ法が用いられる。あるいは、エクストルーダを用いた押出しラミネーション法により、基材同士をホットメルト接着剤組成物を用いて直接貼合せることも行なわれる。
【0012】
また、ヒートシール接着剤組成物には、溶液タイプとして、ヒートシールラッカー組成物がある。ヒートシールラッカー組成物は、一般に、常温で液体であって、基材に塗布後乾燥させ、さらにその上に基材を圧着した状態で熱をかけることにより、短時間で接着が完了する性質を有する。ヒートシールラッカー組成物は、一般に、溶剤を含んでいるため、乾燥工程を必要とするが、基材への塗布の際に加熱することを要しないため塗布工程が簡単であるという長所がある。
【0013】
ヒートシールラッカー組成物を基材へ塗布する方法としては、グラビアコータ法、ロールコータ法、バーコータ法、などが用いられる。本発明は、この溶液タイプのヒートシールラッカー組成物に関する。
【0014】
ここで、従来より使用されているホットメルト接着剤組成物あるいはヒートシールラッカー組成物用樹脂は、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、芳香族系ポリエステルなどの非生分解性樹脂である。そのため、前記樹脂成分を含むホットメルト接着剤組成物あるいはヒートシールラッカー組成物を生分解性フィルムに塗布した場合、せっかくの生分解性素材が十分生かされないという問題がある。また、ホットメルト接着剤組成物あるいはヒートシールラッカー組成物は、透明なフィルム状基材上に塗布されることが多いため、透明性を有することが好ましい。そこで、生分解性を有する透明なホットメルト接着剤組成物あるいは生分解性を有する透明なヒートシールラッカー組成物の開発が待ち望まれている。
【0015】
上記の現状に基づき、現在、生分解性ホットメルト接着剤組成物、あるいはヒートシールラッカー組成物の研究開発は、各方面において活発に行なわれている。たとえば、米国特許5,169,889号公報には、3−ヒドロキシ酪酸およびヒドロキシペンタン酸を含むポリエステル樹脂(商品名バイオポール、ゼネカ社製)を組み合わせることによるホットメルト接着剤組成物が開示されているが、当該生分解性ホットメルト接着剤組成物に用いられている樹脂は、樹脂混合物内に非生分解性の物質を含むため完全に生分解性ではなく、硬くて脆いという性質があるので、生分解性ホットメルト接着剤組成物、あるいは生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用することはできない。
【0016】
また、特開昭57−150393号公報、特開昭59−220192号公報、特開平5−105736号公報、特開平5−148352号公報、特開平5−179016号公報などに開示されているような、土中の微生物などにより生分解可能な生分解性プラスチックが開発されている。具体的な商品名としては、ビオノーレ(昭和高分子株式会社製)、ラクティー(株式会社島津製作所製)、マタービー(ノバモント社製)、ノボン、デグラスター(エコスター社製)、などが挙げられる。しかし、前記生分解性樹脂は一般的に汎用溶剤に不溶であるため、射出成形などの溶融成形以外の用途には利用し難いものであり、また生分解性ホットメルト接着剤組成物、あるいはヒートシールラッカー組成物のバインダとして使用した場合には、接着強度が十分満足できる水準ではない。
【0017】
さらに、特開平5−339557号公報には、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸から誘導された乳酸共重合樹脂を用いたホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性ホットメルト接着剤組成物に用いられている樹脂は、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、溶解性、接着性の面で十分満足できる水準ではない。
【0018】
そして、特開平5−339557号公報には、分子量1万以上のポリ乳酸をジイソシアネート化合物により変性させた、アルカリ水崩壊性および生分解性に優れたホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性ホットメルト接着剤組成物に用いられている樹脂も、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、接着性の面で十分満足できる水準ではない。
【0019】
さらに、特開平8−81897号公報には、乳酸残基を65〜95モル%含み、カプロラクトン、オキシ酸、コハク酸、プロピレングリコール、グリセリンにて変性させたポリエステル接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性ポリエステル接着剤組成物に用いられている樹脂も、生分解性ホットメルト接着剤組成物、あるいは生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、接着性の面で十分満足できる水準ではない。
【0020】
また、特開平10−251612号公報には、脂肪族ジカルボン酸あるいはその酸無水物あるいはそのジエステルと、側鎖にアルキル基、またはアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸あるいはその酸無水物あるいはそのジエステルと、脂肪族グリコールとを重縮合反応させて生成してなる脂肪族ポリエステルを用いたホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性ホットメルト接着剤組成物に用いられている樹脂は、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、溶解性、接着性の面で十分満足できる水準ではない。
【0021】
また、特開平7−278510号公報には、生ロジンと天然ゴムと植物系もしくは鉱物系ワックスとからなる生分解性ホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性ホットメルト接着剤組成物に用いられている樹脂もまた、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、透明性、溶解性、接着性の面で十分満足できる水準ではない。
【0022】
さらに、特開平8−92359号公報には、ポリ乳酸系の生分解性ポリエステル樹脂を用いた、ホットメルト接着剤組成物として使用可能な生分解性接着剤組成物が開示されている。しかし、前記生分解性接着剤組成物に用いられている樹脂は、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に使用するには、耐ブロッキング性の面で十分満足できる水準ではない。
【0023】
上記のように、生分解性ホットメルト接着剤組成物のバインダ用樹脂に求められる特性と、生分解性ヒートシールラッカー組成物のバインダ用樹脂に求められる特性とは必ずしも一致しない。そのため、透明性、塗布性、ヒートシール強度、耐ブロッキング性において、十分に満足できる生分解性ヒートシールラッカー組成物は未だ得られていないのが現状である。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、優れた透明性、塗布性、ヒートシール強度、耐ブロッキング性を有し、同時に優れた生分解性を有するヒートシールラッカー組成物を提供することである。
また、本発明の他の課題は、生分解性基材と、その上面に塗布される生分解性ヒートシールラッカー組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む、優れた透明性、ヒートシール強度、耐ブロッキング性を有する生分解性複合体を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するには、優れた生分解性と透明性を有するポリ乳酸系樹脂に、アンチブロッキング剤を含有させることにより、耐ブロッキング性を付与すればよいことに着目し、鋭意検討を行なった。そして、特定のポリ乳酸系樹脂を用いて、アンチブロッキング剤の凝集、分離、沈殿などを防ぐことにより、アンチブロッキング剤をヒートシールラッカー組成物中に安定に保持できることを見出した。その結果、従来公知のヒートシールラッカー組成物と同程度の透明性、塗布性、ヒートシール強度、耐ブロッキング性を有しながら、従来公知のヒートシールラッカー組成物よりも著しく優れた生分解性を有するヒートシールラッカー組成物を得ることに成功した。
【0026】
さらに、各種アンチブロッキング剤のなかでも、特定のアンチブロッキング剤を用いることにより、前記生分解性ヒートシールラッカー組成物の優れた特性を損なうことなく、耐ブロッキング性をさらに向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0027】
すなわち、本発明の生分解性ヒートシールラッカー組成物は、A成分として乳酸残基を80〜100質量%含有し、乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜19であり、還元粘度(ηSP/C)が0.4〜1.5dl/gである生分解性ポリエステルと、B成分としてアンチブロッキング剤と、C成分として溶剤とを含有し、A成分100質量部に対してB成分の配合量は0.1〜30質量部の範囲である。また、この生分解性ポリエステルの水酸基濃度は100〜500eq/106gの範囲にあることが好ましい。
【0028】
そして、このアンチブロッキング剤は無機系粒子であることが好ましい。さらに、このアンチブロッキング剤はシリカゲル粒子であることが好ましい。また、このアンチブロッキング剤の平均粒径は1.0〜12.0μmの範囲にあることが好ましい。そして、このアンチブロッキング剤の比表面積は50〜700m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0029】
加えて、本発明は、生分解性基材と、その上面に塗布される前記生分解性ヒートシールラッカー組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む生分解性複合体を含む。
【0030】
また、この生分解性基材としては、生分解性フィルム、生分解性プラスチック、紙、生分解性繊維布、生分解性不織布、木材、からなる群のうちの一種または二種以上を構成要素として含むことが好ましい。さらに、この生分解性基材としては、ポリ乳酸系フィルムを構成要素として含むことが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0032】
<生分解性ヒートシールラッカー組成物の説明>
まず、本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物について説明する。
【0033】
本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物は、A成分として特定の生分解性ポリエステルと、B成分としてアンチブロッキング剤と、C成分として溶剤とを含有する。
【0034】
ここで、ヒートシールラッカー組成物とは、溶液タイプのヒートシール接着剤組成物のことをいう。ヒートシールラッカー組成物は、一般に常温で液体であって、基材に塗布後乾燥させさらにその上に基材を圧着した状態で熱をかけることにより、短時間で接着が完了する。ヒートシールラッカー組成物は、一般に溶剤を含んでいるため乾燥工程を必要とするが、基材への塗布の際に加熱することを要しないため塗布工程が簡単である。
【0035】
また、本発明に係るヒートシールラッカー組成物は、生分解性を有する。ここで、生分解性とは、分解の一過程において生物の代謝が関与して低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0036】
≪本発明に使用する生分解性ポリエステルの説明≫
次に、本発明に使用する生分解性ポリエステル(A成分)について説明する。
【0037】
生分解性ポリエステル(A成分)は、乳酸残基を80〜100質量%含有し、乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜19であり、還元粘度(ηSP/C)が0.4〜1.5dl/gである。
【0038】
生分解性ポリエステル(A成分)において原料として使用可能な乳酸以外のヒドロキシ酸としては、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸などが挙げられる。カプロラクトンのようなヒドロキシ酸の分子内エステル、ラクチドのようなα−ヒドロキシ酸から水分子を失って生成した環状エステルも用いられる。また、生分解性ポリエステル(A成分)において、乳酸に加えて原料として使用可能な、脂肪族系のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0039】
さらに、生分解性ポリエステル(A成分)は、乳酸残基を80質量%以上含有していることが好ましく、より好ましくは、90質量%以上である。80質量%未満では、十分に良好な生分解性および塗膜物性が得られにくい。
【0040】
なお、生分解性ポリエステル(A成分)の原料として用いる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれも用いることができる。ここで、L−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜19であることが好ましく、より好ましくは、4〜9である。
【0041】
モル比(L/D)が19を超えると、生分解性ポリエステル(A成分)の使用溶剤に対する溶解性が悪くなり、ヒートシールラッカー用樹脂として十分な性能が得られない。一方、モル比(L/D)が1未満(D−乳酸過剰)であると、原料コストが高くなる。なぜなら、一般には、L−乳酸またはDL−乳酸の方が大量かつ安価に入手しやすいためである。
【0042】
もっとも、D−乳酸過剰の配合で生分解性ポリエステル(A成分)を製造しても、L/Dが1〜19の範囲となる条件で製造した脂肪族ポリエステル(A成分)と同様の物性のものを得ることができる。
【0043】
生分解性ポリエステル(A成分)の還元粘度(ηSP/C)は、0.4〜1.5dl/gの範囲にある必要がある。還元粘度が0.4dl/gよりも低いと、印刷時のハジキの原因となったり、ヒートシール強度低下の原因となる。また、還元粘度(ηSP/C)が1.5dl/gよりも高いと、ヒートシールラッカー組成物の塗布性が低下したり、ヒートシール時の溶融性が低下し、結果的にヒートシール強度が低下する。
【0044】
前記還元粘度は、たとえば、ポリエステルの重合時間、重合温度、減圧の程度(減圧しながら重合させる場合)を変化させたり、共重合成分としてのアルコール成分の使用量を変化させたりすることにより、調整することができる。
【0045】
なお、本発明において、還元粘度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0046】
生分解性ポリエステル(A成分)の水酸基濃度は、100〜500eq/106gの範囲で含まれていることが望ましい。水酸基濃度が100eq/106g未満であると、アンチブロッキング剤(B成分)がシリカゲル粒子などの無機系粒子の場合、十分に良好な分散性、安定性が得られにくい。また、水酸基濃度が500eq/106gを超えると塗膜の耐水性が悪化する傾向にある。
【0047】
ここで、水酸基濃度は、原料の仕込量および生分解性ポリエステル(A成分)の酸価の測定値から計算によって求めることができるが、計算方法は、使用する原料および得られる生分解性ポリエステル(A成分)の種類により異なる。また、水酸基濃度の測定は、過剰のフェニルイソシアネートを加え生分解性ポリエステル(A成分)の水酸基と反応させ、次に未反応のフェニルイソシアネートを過剰のジエチルアミンと反応させ、未反応ジエチルアミン量を酸により滴定するなどの公知の滴定法で求めることもできる。
【0048】
≪本発明に使用する生分解性ポリエステルの製造方法の説明≫
続けて、生分解性ポリエステル(A成分)の製造方法について説明する。
【0049】
生分解性ポリエステル(A成分)の製造方法としては、特に限定されず、従来の公知の方法を用いることができる。たとえば、ヒドロキシ酸の二量体であるラクチドと、他のヒドロキシ酸、ポリグリセリンなどを溶融混合し、公知の開環重合触媒(たとえばオクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナートなど)を使用して、窒素雰囲気下、加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧により直接脱水重縮合を行う方法等が挙げられる。
【0050】
なお、ラクチドの加熱開環重合反応は工程がシンプルで容易であり、高純度生成物が得られやすいため、生分解性ポリエステル(A成分)の製造方法としては、ラクチドの加熱開環重合反応を用いることが好ましい。
【0051】
また、ラクチドの加熱開環重合反応において、重合開始剤としてポリグリセリンを添加する場合は、ポリグリセリンの重合度は3〜20の範囲にあることが好ましく、生分解性ポリエステル原料中のポリグリセリンの配合量は0.1〜5質量%の範囲にあることが好ましい。
【0052】
前記諸条件を満たすポリエステルは、生分解性ポリエステルである。ここで生分解性とは、分解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0053】
従来は、本発明に使用する生分解性ポリエステルのようなポリ乳酸系樹脂は、耐ブロッキング性に難点があるとされていた。そのため、ポリ乳酸系樹脂がヒートシールラッカー組成物のバインダとして用いられた実績は、現在までのところない。本発明において初めて、ポリ乳酸系樹脂は、ヒートシールラッカー組成物のバインダとして好適に用いることができるようになった。
【0054】
その理由は、以下に述べるように、アンチブロッキング剤をポリ乳酸系樹脂と溶剤の混合物中に安定的に分散させることができるようになったため、ポリ乳酸系樹脂に耐ブロッキング性を付与することが可能となったからである。
【0055】
≪本発明に使用するアンチブロッキング剤の説明≫
次に、本発明に使用するアンチブロッキング剤(B成分)について説明する。
【0056】
アンチブロッキング剤(B成分)としては、特に限定されず、従来公知の無機系粒子、有機系粒子、ワックス類、などからなるアンチブロッキング剤を用いることができる。
【0057】
ここで、無機系粒子の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、チタン、などの金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、などを含有する無機系粒子が挙げられる。さらに詳細な具体例としては、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、珪藻土、ゼオライト、アルミノシリケート、タルク、ホワイトカーボン、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭酸バリウム、ドロマイト、二硫化モリブデン、砂鉄、カーボンブラック、などを含有する無機系粒子が挙げられる。
【0058】
前記無機系粒子の中でも、土壌中での環境負荷などの観点からシリカゲル粒子が特に好ましい。また、前記無機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状、など、どのような形状であってもよい。
【0059】
また、有機系粒子の具体例としては、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂、などのポリマー粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉、などが挙げられる。
【0060】
前記ポリマー粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法、などの重合法により得ることができる。また、前記有機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状、など、どのような形状であってもよい。
【0061】
そして、ワックス類の具体例としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、ポリエチレンワックス、などの炭化水素系ワックス類、ステアリン酸などの脂肪酸系ワックス類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、などの脂肪酸アミド系ワックス、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、などのエステル系ワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコール、などのアルコール系ワックス、オレフィン系ワックス、カスターワックス、カルナバワックス、などの天然物ワックス、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導される金属石鹸類など、が挙げられる。
【0062】
前記ワックス類の中でも、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックスが、生分解性に優れるため特に好ましい。また、前記ワックス類は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、前記ワックス類は、アンチブロッキング剤としての目的ではなく、滑剤としての目的で、無機系粒子や有機系粒子とともに配合されてもよい。
【0063】
さらに、前記アンチブロッキング剤(B成分)としては、前記無機系粒子、有機系粒子、ワックス類のうち一種のみでなく二種以上を併用してもよい。
【0064】
また、アンチブロッキング剤(B成分)が無機系粒子あるいは有機系粒子の場合、当該粒子の平均粒径の下限は、1.0μmであることが好ましく、1.5μmであればさらに好ましく、2.0μmであれば最も好ましい。また、当該粒子の平均粒径の上限は、12.0μmであることが好ましく、10.0μmであればさらに好ましく、8.0μmであれば最も好ましい。平均粒径が1.0μm未満では、耐ブロッキング性の向上効果が小さくなり、粒子が凝集しやすくなる傾向がある。一方、平均粒径が12.0μmを超えると、塗膜の透明性や平滑性が損なわれ塗膜外観が不良となる場合がある。
【0065】
そして、アンチブロッキング剤(B成分)が無機系粒子の場合、当該粒子の比表面積の下限は、50m2/gであることが好ましく、80m2/gであればさらに好ましく、100m2/gであるのが最も好ましい。また、当該粒子の比表面積の上限は、700m2/gであることが好ましく、600m2/gであればさらに好ましく、500m2/gであるのが最も好ましい。比表面積が50m2/g未満である場合、あるいは比表面積が700m2/gを超える場合には、塗膜の透明性が悪くなる場合がある。
【0066】
そして、生分解性ポリエステル(A成分)100質量部に対して、アンチブロッキング剤(B成分)の配合量は0.1〜30質量部の範囲にある必要がある。前記配合量が0.1質量部未満のときは、耐ブロッキング性が不十分となり、前記配合量が30質量部を超えると、ヒートシール強度が低下するという問題が生じる。
【0067】
≪本発明に使用する溶剤の説明≫
次に、本発明に使用する溶剤(C成分)について説明する。
【0068】
溶剤(C成分)としては、特に限定されず、ヒートシールラッカー組成物に通常に用いられる溶剤を使用することができる。具体例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、などのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、などのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、前記グリコールエーテルのアセチル化物であるグリコールエーテルエステル系溶剤などが挙げられる。前記溶剤は、一種でも二種以上でも用いることができる。
【0069】
また、生分解性ポリエステル(A成分)100質量部に対して、溶剤(C成分)の配合量は100〜2000質量部の範囲にあることが好ましい。配合量が100質量部未満のときは、ヒートシールラッカー組成物の粘度が高くなりすぎ、塗布作業性が低下する傾向があり、2000質量部を超える場合には、乾燥膜厚が薄くなりすぎ、ヒートシール性不良となる場合がある。
【0070】
≪その他の成分≫
なお、本発明の生分解性ヒートシールラッカー組成物には、必要に応じて、たとえば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、香料、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0071】
≪本発明の生分解性ヒートシールラッカー組成物の製造方法≫
次に、本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物の製造方法を説明する。
【0072】
本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物の製造方法としては、従来の公知の方法であれば、特に限定されない。たとえば、生分解性ポリエステル(A成分)を溶剤(C成分)に溶解させ、これにアンチブロッキング剤(B成分)を配合し、ボールミルやペイントシェーカーなどを用いて分散させることにより、本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物を製造することができる。
【0073】
<本発明の生分解性複合体>
次に、本発明に係る生分解性複合体について説明する。
【0074】
本発明に係る生分解性複合体は、生分解性基材と、その上面に塗布される本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む。
【0075】
ここで、前記生分解性基材としては、生分解性を有し、生分解性ヒートシールラッカー組成物の塗布が可能なものであれば、任意の基材が利用できる。
【0076】
また、前記生分解性基材は、シート状であることが好ましいが、シート状のものに限定されるわけではなく、生分解性ヒートシールラッカー組成物の塗布が可能な一定の広さの面を有していれば、立体的な形状を持つものにも適用可能である。また、前記一定の広さの面は、曲面であってもよく、凹凸を有していてもよい。
【0077】
前記生分解性基材としては、たとえば、生分解性フィルム、生分解性プラスチック、紙、生分解性繊維布、生分解性不織布、木材、などが使用可能である。また、本発明における生分解性基材としては、ポリ乳酸系フィルム、および、パルプを主成分とする紙が、特に好ましい。
【0078】
そして、前記ポリ乳酸系フィルムとしては、ポリL−乳酸系フィルムが、特に好ましい。また、前記パルプを主成分とする紙としては、更紙、中質紙、上質紙、段ボールなどの板紙、などが特に好ましい。
【0079】
さらに、前記ポリ乳酸系フィルムを生分解性ヒートシールラッカー組成物の受容性が高まるように加工したものを用いてもよい。たとえば、(i)ポリ乳酸系フィルムを発泡させて微細な孔を多数設け、この微細孔によって生分解性インキ組成物の受容性を改善させたもの、(ii)溶剤溶解性の微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムから微粉末を溶剤により溶解除去し、こうして除去された微粉末存在部位を微細な孔として、この微細孔によって生分解性ヒートシールラッカー組成物の受容性を改善させたもの、あるいは、(iii)微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムを延伸し、この延伸によって微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生ぜしめ、この微細な亀裂によって生分解性ヒートシールラッカー組成物の受容性を改善させたもの、などが好適に利用できる。
【0080】
本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物の塗布の方法も、特に限定されず、従来の公知の方法を利用可能である。たとえば、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、ロールコータ塗工法、バーコータ塗工法、エアナイフ塗工法、ドクターブレード法、などの方法を用いることができる。
【0081】
本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物は、自然に、あるいは、温風によって乾燥させることができる。乾燥後、本発明の生分解性ヒートシールラッカー組成物は、実質的に透明な塗膜を形成する。
【0082】
また、本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物の塗膜の膜厚は、用途に応じ、任意であるが、たとえば、一般的な使用方法の場合には、5〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0083】
また、本発明に係る生分解性複合体を他の生分解性基材と接着させる方法としては、特に限定されず、従来公知のヒートシールラッカー組成物を用いた接着方法を用いることができる。
【0084】
具体例としては、本発明に係る生分解性複合体の本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物を塗布した面を、他の生分解性基材と接触させ、温度条件50〜250℃、圧力条件49〜294kPaの範囲で、0.01〜5秒間圧着させることにより、容易に当該生分解性複合体と他の生分解性基材を接着させることができる。なお、他の生分解性基材の接着面にも同様に本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物が塗布されていてもよい。
【0085】
本発明の生分解性複合体のうち、ポリ乳酸系フィルムなどの生分解性フィルムを基材とするものは、オーバーラッピングフィルムなどの包装材料として好適に使用可能である。
【0086】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<実施例1>
L−ラクチド500部、DL−ラクチド500部、乳酸1質量部、アルミニウムアセチルアセトナート1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより、開環重合させ、その後、残留ラクチドを減圧下留去し、ポリエステル(I)を得た。
【0088】
次に、ポリエステル(I)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ平均粒径4.5μm、比表面積95m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(I)を得た。
【0089】
さらに、ヒートシールラッカー組成物(I)を、グラビア印刷機を用いて、縦300mm×横150mmの大きさのポリL−乳酸フィルム上に乾燥膜厚2μmとなるように塗布し、ポリL−乳酸フィルムとヒートシールラッカー組成物の塗膜との複合体(以下、単に複合体と称する)(I)を得た。
【0090】
<実施例2>
L−ラクチド500質量部、DL−ラクチド500質量部、重合度が10であるポリグリセリン(ダイセル化学PGL10:水酸基濃度850KOHmg/g)10質量部、開環重合触媒として、アルミニウムアセチルアセトナート1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、ポリエステル(II)を得た。
【0091】
次に、ポリエステル(II)を用い、実施例1と同様な方法でヒートシールラッカー組成物(II)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(II)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(II)を得た。
【0094】
<比較例1>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、実施例1と同じシリカゲル粒子35質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(III)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(III)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(III)を得た。
【0095】
<比較例2>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部、酢酸エチル100質量部からなる混合溶剤に溶解させることにより、ヒートシールラッカー組成物(IV)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(IV)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(IV)を得た。
【0096】
<実施例3>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径1.0μm、比表面積130m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(V)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(V)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(V)を得た。
【0097】
<実施例4>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径2.5μm、比表面積110m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(VI)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(VI)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(VI)を得た。
【0098】
<実施例5>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径3.0μm、比表面積110m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(VII)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(VII)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(VII)を得た。
【0099】
<実施例6>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径4.5μm、比表面積95m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(VIII)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(VIII)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(VIII)を得た。
【0100】
<実施例7>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径7.0μm、比表面積330m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(IX)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(IX)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(IX)を得た。
【0101】
<実施例8>
ポリエステル(II)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、平均粒径12.0μm、比表面積225m2/gであるシリカゲル粒子3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することによりヒートシールラッカー組成物(X)を得た。さらに、ヒートシールラッカー組成物(X)を用い、実施例1と同様な方法で複合体(X)を得た。
前記ポリエステル(I)〜(II)の組成および特性を表1に示す。また、前記ヒートシールラッカー組成物(I)〜(X)の配合を表2〜3に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
なお、表1において、還元粘度は、サンプル濃度0.125mg/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃、ウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0106】
また、表1において、ポリエステル組成中の乳酸残基は仕込み量を規定している。ただし、500MHzのNMRによりポリエステル中にも、同じ量が含まれることが確認された。
【0107】
さらに、表1において、ポリエステル中のL−乳酸とD−乳酸のモル比は、仕込み量から求めているが、ポリエステル中のL−乳酸とD−乳酸のモル比を旋光度計(堀場製作所SEPA−200)を用い決定したものと同じであることを確認した。
【0108】
<性能評価>
前記複合体(I)〜(X)を用いて、前記複合体の生分解性ヒートシール材としての性能である、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、さらに、透明性、生分解性を下記の試験方法に基づいて評価した。評価結果を表4〜5に示す。また、前記ヒートシールラッカー組成物(I)〜(X)を用いて、アンチブロッキング剤の分散性を下記の試験方法に基づいて評価した。評価結果を表2〜3に示す。
【0109】
(i)ヒートシール強度の測定
複合体同士をヒートシールラッカー組成物を塗布した面同士で重ね合わせ、110℃、98.1kPa加圧、加圧時間0.5秒の条件でヒートシールした。その後、25℃、相対湿度65%の条件下、引張り速度100mm/分で、T剥離強度(N/15mm)を測定した。
【0110】
(ii)耐ブロッキング性試験
複合体同士をヒートシールラッカー組成物を塗布した面同士で重ね合わせ、40℃、相対湿度65%の条件下、98.1kPaの荷重をかけた。1日後、25℃、相対湿度65%の条件下、複合体同士を引き剥がし、接着面の塗膜の外観を目視にて観察し、耐ブロッキング性の程度を下記の基準に従って4段階で評価した。
◎:耐ブロッキング性優秀(容易に剥離可能、塗膜に異常なし)
○:耐ブロッキング性良好(塗膜表面が多少荒れている)
△:耐ブロッキング性に劣る(一部の塗膜に損傷あり)
×:耐ブロッキング性なし(大部分の塗膜に損傷あり)
(iii)透明性試験
ヒートシールラッカー組成物の塗膜を通して、あらかじめ基材表面に印刷されている文字を目視にて観察し、下記の基準に従って透明性を4段階で評価した。
◎:文字が鮮明に観察できる。
○:文字が少し滲んで見える。
△:文字がかなりぼやけて見える。
×:文字がぼやけて読み取れない。
【0111】
(iv)生分解性試験
複合体10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム社製(MAM))中に入れ、7日後にサンプル形態を目視にて観察し、生分解性の程度を下記の基準に従って4段階で評価した。
◎:サンプルの形態が完全になし
○:サンプルの形態がほとんどなし
△:サンプルの断片あり
×:サンプルの形態がほとんど残っている
(v)アンチブロッキング剤の分散性
ヒートシールラッカー組成物1000mLを加圧式の農薬用噴霧器で吹き付け、ノズルの詰まり具合を目視で観察し、次の評価基準に従って評価した。
○:良好
△:やや詰まり気味である
×:詰まりが激しい
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
上記の結果より、本発明のヒートシールラッカー組成物は、優れた透明性、塗布性、ヒートシール強度および耐ブロッキング性を有し、さらには生分解性にも優れていることがわかる。
【0115】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないとかんがえられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0116】
【発明の効果】
本発明に係るヒートシールラッカー組成物は、優れた生分解性を有し、シール強度、耐ブロッキング性、透明性、塗布性においても優れている。
【0117】
また、本発明に係る生分解性複合体も、優れた生分解性を有し、シール強度、耐ブロッキング性、本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物の塗膜の透明性に優れている。
【0118】
さらに、本発明に係る生分解性複合体は包装材料として好適に用いることができる。前記包装材料は、生分解性を有し、かつ、容易に内容物を密封することができるため、生産性の向上、生活の利便の向上、および環境への負荷の低減が実現できる。
Claims (9)
- A成分として乳酸残基を80〜100質量%含有し、乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜19であり、還元粘度(ηSP/C)が0.4〜1.5dl/gである生分解性ポリエステルと、B成分としてアンチブロッキング剤と、C成分としてトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルのアセチル化物、エチレングリコールモノエチルエーテルのアセチル化物、エチレングリコールモノブチルエーテルのアセチル化物、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルのアセチル化物からなる群より選ばれた一種または二種以上の溶剤とを含有し、A成分100質量部に対してB成分の配合量は0.1〜30質量部の範囲であることを特徴とする生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- 生分解性ポリエステルの水酸基濃度が100〜500eq/106gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- アンチブロッキング剤が無機系粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- アンチブロッキング剤がシリカゲル粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- アンチブロッキング剤の平均粒径が1.0〜12.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- アンチブロッキング剤の比表面積が50〜700m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物。
- 生分解性基材と、その上面に塗布される請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物を用いた生分解性塗膜とを構成要素として含む生分解性複合体。
- 生分解性基材として、生分解性フィルム、生分解性プラスチック、紙、生分解性繊維布、生分解性不織布、木材、からなる群のうちの一種または二種以上を構成要素として含むことを特徴とする請求項7に記載の生分解性複合体。
- 生分解性基材として、ポリ乳酸系フィルムを構成要素として含むことを特徴とする請求項7に記載の生分解性複合体。
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