JP2005002201A - ヒートシールラッカー組成物およびそれを用いた生分解性複合体 - Google Patents

ヒートシールラッカー組成物およびそれを用いた生分解性複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、接着性、密着性を損なわず、耐ブロッキング性を備える生分解性のヒートシールラッカー組成物を提供する。
【解決手段】乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が0.5〜30であり、還元粘度が0.3〜1.5dl/gである生分解性ポリエステル(A)とテルペン化合物(B)を含有し、生分解性ポリエステル(A)100質量部に対し、テルペン化合物(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とするヒートシールラッカー組成物に関する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性樹脂、バイオマス素材からなるヒートシールラッカー組成物、更に詳しくは生分解性樹脂であるポリ乳酸の耐熱性、アンチブロッキング性と接着性を両立する生分解性ヒートシールラッカー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物量の激増が大きな環境問題となっている。その中でプラスティック製品は家庭廃棄物及び産業廃棄物の多くを占めている。そのため一般的なプラスティック製品はその半永久的に分解しない性状から、極めて処理困難であり、環境に負荷を掛ける素材として問題視されている。このような社会的問題から、天然素材(バイオマス)または生分解性合成素材を利用したプラスティックの開発が盛んに行われている。
【0003】
しかしながら製品の構成上、生分解性プラスティックも非分解性プラスティック類で覆う場合が多々ある。本来ならば生分解するはずの紙類、木材、生分解性の繊維、不織布、フィルムが非分解性のプラスティックで覆われた結果、分解されなかったり、分解速度が著しく低下したりする。そのため、生分解素材を被覆、コーティングする素材も生分解性を有するタイプのものが積極的に開発されている。
【0004】
生分解性プラスティックの中でも、ポリ乳酸は原料の入手のし易さ、コストおよび樹脂としての物性面(強度、透明性など)が熱可塑系樹脂素材として優れているため、期待されている。
【0005】
またポリ乳酸樹脂の燃焼熱量はポリエチレンの半分以下と低く、焼却処理をしても焼却炉への負荷は小さく、有毒ガスも発生しない。また、ポリ乳酸は土中、水中において自然に加水分解が進行し、次いで微生物分解が進行し、無害な物質となる。しかし、通常の環境では分解は進行しないため、樹脂素材としての強度、透明性等は十分にある。このような利点からポリ乳酸樹脂はフィルム化され、包装用フィルムとして使用され始めている。
【0006】
このような包装フィルムにおいては、一般にヒートシール性を付与する目的で包装用フィルムの表面にヒートシールラッカー組成物を塗布することが多い。ここで、ヒートシールとは高温条件下で接着する方法であり、ヒートシールラッカー組成物とは、ヒートシールに用いる接着性組成物を示す。
【0007】
更にヒートシールラッカー組成物は溶液タイプであるものが多く、基材に塗布・乾燥させ、更にその上に基材を圧着した状態で熱をかけることにより、短時間で接着が完了する性質が必要である。溶液であるこのヒートシールラッカー組成物は塗布時に高温加熱を必要としないため工程が簡単という長所がある。
【0008】
これまで使用されているホットメルト接着剤組成物やヒートシールラッカー組成物はウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、芳香族系ポリエステルなどの非生分解性樹脂であるものがほとんどである。そのため、生分解性基材に塗布した場合、分解されなかったり、基材の分解を妨げたりするなどの要因となる。このような点から生分解性樹脂、特にポリ乳酸ポリエステル樹脂を原料としたヒートシールラッカー組成物の開発が検討されている。
【特許文献1】
特開2003−113344号公報(請求項3、4)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリ乳酸自身のガラス転移温度(Tg)は50℃付近であるため、耐熱性、とくにブロッキングが生じやすいという欠点もある。特にフィルム、紙類、繊維等にコーティングしたものが夏期に高温下に曝された場合、ポリ乳酸樹脂部分の軟化でタックが生じ、ブロッキングが発生する。
【0010】
このようなポリ乳酸樹脂の欠点を改善する目的で無機粒子を添加する方法やワックスを添加する方法等が検討されている(例えば特許文献1参照)。これらの方法ではブロッキング性の解消は可能であるものの、使用に際しての性能、例えばヒートシール性、接着性との両立や、無機粒子を添加することでの透明性低下、ワックスを添加することでのブリードアウトが発生するなど、不十分である場合がある。また、生分解性ポリエステル(A)との相溶化、あるいは分散化のためにボールミル分散、ビーズ分散等の分散化を別途行う必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の現状に基づき本発明の課題はポリ乳酸樹脂の有する透明性、接着性、密着性を損なわず、耐ブロッキング性を備えるというポリ乳酸系ヒートシールラッカー組成物、更には生分解性ポリエステル(A)と相溶性が良いテルペン化合物(B)を使用し、これを溶解、添加するだけで使用でき、上記性能の効果を発揮するヒートシールラッカー組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の目的を達成するため鋭意検討の結果、ポリ乳酸樹脂にテルペン化合物(必要に応じて変性しても良い)を含有させることで、ポリ乳酸樹脂の持つ透明性、生分解性、天然物素材由来、各種素材への密着性を損なわず、耐ブロッキング性を付与することができるに至った。
即ち本発明は以下のヒートシールラッカー組成物、およびそれを用いた生分解性複合体に関する。
【0013】
(1) 乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が0.5〜30であり、還元粘度が0.3〜1.5dl/gである生分解性ポリエステル(A)とテルペン化合物(B)を含有し、生分解性ポリエステル(A)100質量部に対し、テルペン化合物(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とするヒートシールラッカー組成物。
【0014】
(2) テルペン化合物(B)の軟化点が80℃以上であることを特徴とする(1)に記載のヒートシールラッカー組成物。
【0015】
(3) 生分解性基材に(1)または(2)に記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物が塗布された生分解性複合体。
【0016】
(4) 生分解性基材が、生分解性フィルム、生分解性プラスティック、生分解性繊維布、生分解性不織布および木材からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を構成要素として含む(3)に記載の生分解性複合体。
【0017】
(5) 生分解性基材が、ポリ乳酸フィルムを構成要素として含む(3)に記載の生分解性複合体。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する生分解性ポリエステル(A)は乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が0.5〜30であり、還元粘度(ηsp/c)が0.3〜1.5dl/gである。L−、D−乳酸のモル比が上記を外れると溶剤への溶解性が低下したり、テルペン化合物との相溶性が低下したりすることがある。また、還元粘度が0.3dl/g未満だと、接着強度が低下することがあり、1.5dl/gを越えると塗装作業性が困難となる場合がある。尚、生分解性ポリエステル(A)の原料として用いる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸のいずれを用いることができる。また、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチドを用いても良い。L/Dの好ましいモル比は1〜20、より好ましくは4〜9である。還元粘度の好ましい範囲は0.35〜1.0dl/g、より好ましくは0.4〜0.8dl/gである。還元粘度は該ポリエステルの重合時間、温度、重合時の減圧の程度(減圧重合の場合)を変化させたり、後述する共重合するポリアルコール成分の使用量を変化させたりすることで任意に調整することができる。尚、還元粘度はサンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0019】
本発明に使用する生分解性ポリエステル(A)の原料として使用可能な乳酸(ラクチド)以外のヒドロキシ酸(誘導体)としては例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシへキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等が挙げられる。また、カプロラクトンのようなヒドロキシ酸の分子内エステル、ラクチドのようなα−ヒドロキシ酸の環状二量体も用いられる。また、生分解性ポリエステル(A)の製造する際において、乳酸(ラクチド)に加え原料として使用可能な脂肪族系のポリカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられ、ポリオール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。
【0020】
更に生分解性ポリエステル(A)は乳酸残基を70質量%以上含有していることが望ましい。より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。70質量%未満では十分に良好な生分解性、及び塗膜特性が得られないことがある。
【0021】
生分解性ポリエステル(A)の製造方法としては、特に限定はされないが従来の公知の方法を用いることができる。例えば、ヒドロキシ酸の二量体であるラクチドと前記した他のヒドロキシ酸、ポリオール、ラクトン等を加熱下溶融混合し、公知の開環重合触媒(例えば、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナートなど)を使用して、窒素雰囲気下、加熱開環重合させる方法や、加熱及び減圧により直接脱水重縮合を行う方法等が挙げられる。尚、ラクチドの開環重合反応は工程がシンプルで容易であり、高純度生成物が得られ易いため、本発明の生分解ポリエステル(A)の製造方法として好ましい方法である。
【0022】
ラクチドの開環重合反応で生分解性ポリエステル(A)を製造する場合、重合開始剤としてポリグリセリンを使用する場合は、ポリグリセリンの重合度は3〜20の範囲にあることが好ましく、生分解ポリエステル(A)原料中のポリグリセリンの配合量は0.1〜5質量%の範囲にあることが望ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物に使用するテルペン化合物(B)としては、例えば松樹、柑橘樹より得られるテルペン化合物やそれを変性して得られるもので、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられ、任意にこれらから1種、又は2種以上を選択し、使用できる。
【0024】
しかしながら、透明性が必要な用途ではコーティング後の塗膜が白濁するテルペン化合物を使用することは望ましくない。透明な塗膜を得るには生分解性ポリエステル(A)と使用するテルペン化合物(B)を有機溶剤で溶解した後、混合物の溶液が透明であることが望ましい。透明な溶液を作るためには、具体的には分子量700未満のテルペンを使用することが好ましい。分子量が700を超えると溶液の白濁の起こることがある。下限は200以上が好ましい。200未満であるとブロッキング性の効果の発現しにくいことがある。
【0025】
生分解ポリエステル(A)の耐熱性を向上させる上で使用するテルペン化合物(B)の軟化点(環球法 JIS K 5903)は80℃以上であることが望ましい。好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上である。80℃未満だと耐熱性、特に耐ブロッキング性の向上効果が低くなることがある。上限は特に限定されないが、溶解性や相溶性を考慮すると170℃以下が好ましい。
【0026】
本発明のヒートシールラッカー組成物は生分解ポリエステル(A)100質量部に対しテルペン化合物(B)は0.1〜50質量部であり、好ましくは2〜30質量部である。テルペン化合物(B)の質量部が0.1未満だと本発明のヒートシールラッカー組成物の耐ブロッキング性の改善効果は低く、50質量部を越えると、塗膜の濁りが顕著になったり、接着強度が低くなったりする。
【0027】
本発明に使用できるその他のアンチブロッキング剤としては従来公知の無機粒子、有機粒子、ワックス類などが挙げられ、接着性、耐ブロッキング性を落とさない程度で加えることができ、併用できる。
【0028】
無機粒子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、珪素、アンチモン、チタン等の金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩などを含有する無機系粒子が挙げられる。これらの無機系粒子の中でも、土壌中の環境負荷の観点からシリカゲル粒子が特に好ましい。粒子の形状は粉末状、粒状、顆粒状、平板状、針状など、どのような形でも良く限定されない。
【0029】
有機粒子としては例えば、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー粒子、或いはセルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、でんぷんなどが挙げられる。ポリマー粒子は乳化重合、懸濁重合、分散重合、ソープフリー重合、マイクロサスペンジョン重合などの重合法により得ることができる。前記、有機系粒子はその特性を損なわない程度に、また、環境負荷が問題とならない程度に使用できる。粒子の形状は粉末状、粒状、顆粒状、平板状、針状など、どのような形でも良く限定されない。
【0030】
ワックス類の具体例としては流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックス類、ステアリン酸などの脂肪酸系ワックス類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミドなどの脂肪酸系アミドワックス、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなどのエステル系ワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール系ワックス、オレフィン系ワックス、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックス、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導される金属石けん類などが挙げられる。これらワックス類の中でも、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックスが生分解性に優れるため特に好ましい。これらワックス類は滑剤としての目的で配合しても良い。
【0031】
本発明のヒートシールラッカー組成物を溶解する溶剤としては、特に限定はされず、溶解性、揮発性、乾燥速度、レベリング性、環境負荷性等を考慮し、任意に選択が可能である。有機溶剤としては例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソなどの芳香族系炭化水素溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、更にはこれらをアセチルエステル化した、グリコールエーテルエステル系溶剤、乳酸エチル、乳酸メチルなどの乳酸エステル系溶剤などが挙げられる。前記溶剤は1種、又は2種以上でも用いることができる。
【0032】
本発明のヒートシールラッカー組成物には必要に応じ、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、無機顔料、有機顔料、香料、抗菌剤、分散剤、重合禁止剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加できる。
【0033】
本発明のヒートシールラッカー組成物の製造方法としては、生分解性ポリエステル(A)とテルペン化合物(B)を前記した有機溶剤に溶解させることで得られる。この溶解時、あるいは溶解後に前記した無機粒子、有機粒子、ワックスや各種添加剤を加えても良い。粒子系の素材を添加した場合は、溶液の状態でボールミル、ペイントシェーカー等で分散させても良い。
【0034】
本発明のヒートシールラッカー組成物は任意の基材に塗布し、利用できる。基材は塗装上、シート状が好ましいが、これに限定されるわけでない。塗装方法としては公知の方法が利用可能で例えば、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、ロール塗装、バーコーター塗装、エアナイフ塗装、ドクターブレード塗装、スプレー塗装、ディッピングなどが挙げられる。
【0035】
本発明のヒートシールラッカー組成物は生分解性、天然物由来素材が主成分であるため複合体を形成する基材としては生分解性フィルム、およびプラスティック、紙、生分解性不織布、木材などが好適である。本発明における生分解性基材としてはポリ乳酸系フィルム、およびパルプを主成分とする紙が特に好ましい。ポリ乳酸系フィルムで特に好ましくは、ポリL−乳酸系フィルムであり、パルプを主成分とする紙としては更紙、中性紙、上質紙、段ボール紙などの板紙、コート紙、タック紙などが特に好ましい。
【0036】
本発明のヒートシールラッカー組成物は生分解素材以外の基材へも塗装しても、その耐ブロッキング性、接着性は優れている。その基材としてはアルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、およびこれらのメッキ箔などの金属箔、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどのフィルム、亜鉛めっき鋼板、アルミ板、ブリキ、チンフリースチール、マグネシウム合金などの鉄、非鉄金属板などが挙げられる。とくにポリエステルフィルム(PET)への密着性は優れており、好適である。
【0037】
本発明のヒートシールラッカー組成物の塗装後の膜厚は、その用途に応じて任意に選択できるが、一般的には3〜100μmの範囲が好ましい。また、ヒートシールする条件としては、本発明のヒートシールラッカー組成物を塗布した面を他の生分解性基材と接触させ、温度条件50〜250℃、圧力条件49〜294kPaの範囲で、0.01〜5秒間、圧着させることにより、容易に当該発明の生分解性複合体と他の生分解性基材を接着させることができる。なお、他の生分解性基材の接着面にも同様に本発明に係る生分解性ヒートシールラッカー組成物が塗布されても良い。
【0038】
本発明の生分解性複合体の内、ポリ乳酸系フィルムなどの生分解性フィルムを基材とするものは、オーバーラッピングフィルムなどの包装材料として好適である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
<合成例a>
DL−ラクチド500質量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸のエチレングリコールジエステル3.6質量部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明のポリ乳酸樹脂(a)を得た。樹脂特性と組成は表1に示す。
【0041】
<合成例b>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250部、乳酸1質量部、アルミニウムアセチルアセトナート0.5質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明のポリ乳酸樹脂(b)を得た。樹脂特性と組成は表1に示す。
【0042】
<合成例c>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250質量部、カプロラクトン75質量部、オクチル酸錫0.125質量部を4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱溶融させることで開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明のポリ乳酸樹脂(c)を得た。樹脂特性と組成は表1に示す。
【0043】
<合成例d>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250質量部、重合度10のポリグリセリン(ダイセル化学PGL10:水酸基濃度850mgKOH/g)13質量部、アルミニウムアセチルアセトナート0.5質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明のポリ乳酸樹脂(d)を得た。樹脂特性と組成は表1に示す。
【0044】
<樹脂特性値の測定方法>
以下の方法で樹脂の特性値を測定した。結果は表1に示す。
【0045】
(1)生分解ポリエステル樹脂の確認
200MHzの核磁気共鳴スペクトル装置を用い、ポリ乳酸ポリエステルの乳酸残基、他の成分の定量を行った。
【0046】
(2)生分解ポリエステル樹脂の還元粘度測定
ポリエステル樹脂0.125mgを測定溶剤クロロホルム25ccに溶かし、25℃の測定温度、ウベローデ粘度管で測定した。
【0047】
(3)ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
【0048】
【表1】
Figure 2005002201
【0049】
<実施例1>
ポリ乳酸樹脂(a)100質量部、マイティーエースG150(ヤスハラケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂)20質量部、メチルエチルケトン90質量部、酢酸n−プロピル90質量部を1Lのフラスコに仕込み、70℃で溶解し、実施例1で使用するヒートシールラッカー組成物を得た。組成比率は表2に示す。
【0050】
<実施例2>
ポリ乳酸樹脂(a)100質量部、YSポリスターT145(ヤスハラ(株)製、テルペンフェノール樹脂)15質量部、シリカゲル粒子(平均粒子径4.5μm、比表面積95m/g)1質量部、メチルエチルケトン90質量部、酢酸n−プロピル90質量部を1Lのフラスコに仕込み70℃で溶解後、ボールミル中で混合分散化し、ヒートシールラッカー組成物を得た。組成比率は表2に示す。
【0051】
<実施例3>〜<実施例11>
前記した<実施例1>、<実施例2>と同様の方法で<実施例3>〜<実施例11>を得た。各ヒートシールラッカー組成物の組成比率は表2に示す。
【0052】
<比較例1>
ポリ乳酸樹脂(b)100質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこへ、シリカゲル粒子(平均粒子径4.5μm、比表面積95m/g)3質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することで得た。組成比率は表2に示す。
【0053】
<比較例2>
ポリ乳酸樹脂(d)100重量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解させ、そこにカルナバワックス20質量部を加え、ボールミル中で混合分散化し、その後、酢酸エチル100質量部で希釈することにより得た。組成比率は表2に示す。
【0054】
<比較例3>
前記した<実施例1>、<実施例2>と同様の方法で<比較例3>を得た。各ヒートシールラッカー組成物の組成比率は表2に示す。
【0055】
<試験用塗装フィルム試料の作成>
実施例、比較例で用意した樹脂組成物を、バーコーターを用いて、ポリ乳酸フィルム(ユニチカ(株)製、テラマックTSH−25)のコロナ未処理面に5μmの乾燥厚膜となるように塗布した。塗布後は80℃の乾燥機に1分間入れ、本試験に使用するフィルム試料を得た。
【0056】
<試験評価方法>
以下に本発明に関する評価方法を説明する。結果は表2に示す。
【0057】
(1)ヒートシールラッカー組成物外観
樹脂組成物を得た後、225mlのマヨネーズ瓶に入れ、外観の透明性を目視で判断した。判断基準は以下の通りである。
◎:透明
○:わずかなカスミがある
△:透明感は残るがかすんでいる
×:反対側が見えないほど濁る
【0058】
(2)ヒートシールラッカー組成物、複合体の外観
ヒートシールラッカー組成物を塗布した複合体の外観透明性を目視で判断した。判断基準は以下の通りである。
◎:透明
○:わずかなカスミがある
△:かすんでいる
×:反対側が見えないほど濁る
【0059】
(3)ヒートシール強度
試料フィルムのヒートシールラッカー組成物塗布面とポリ乳酸フィルム(ユニチカ(株)社製、テラマックTSH−25)のコロナ処理面を重ね合わせ、100℃×98.1kPa圧×0.5秒(加圧時間)の条件でヒートシールした。この試料を、25℃、相対湿度65%の条件下、引っ張り速度100mm/分で、T剥離強度(N/15mm)を測定した。
同じ条件で、塗布面とコロナ未処理面でも評価を行った。
【0060】
(4)耐ブロッキング性
試料フィルムのヒートシールラッカー組成物塗布面とポリ乳酸フィルム(ユニチカ(株)製、テラマックTSH−25)のコロナ処理面を重ね合わせ、55℃×392.3kPa圧×1分(加圧時間)の条件で貼り合わせた。この試料の融着状況(ブロッキング状態)を手で剥離することで判断し、下記の通り評価した。同じ条件で、塗布面とコロナ未処理面でも評価を行った。
◎:全くブロッキングしていない
○:指で触れるだけで取れる
△:軽く引っ張ると取れる
×:材破するほどブロッキングしている
【0061】
(5)生分解性試験
試料フィルム10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム(株)製(MAM))中に入れ、7日後にサンプル形態を目視にて観察し、生分解の程度を下記の基準で判断、評価した。
◎:サンプルの形態が完全に無し
○:サンプルの形態がほとんど無し
△:サンプルの断片が残る
×:サンプルの形態が殆ど残る
【0062】
(6)製造工程
ヒートシールラッカー組成物を製造する際にボールミル分散等が必要か否かを記述した。
【0063】
【表2】
Figure 2005002201
【0064】
上記の結果より、本発明のヒートシールラッカー組成物は生分解性ポリエステル、天然物由来の素材から構成され、優れた透明性、接着性、耐ブロッキング性、生分解性を有し、簡便に調製できることが分かる。
【0065】
【発明の効果】
本発明のヒートシールラッカー組成物は生分解性ポリエステルとテルペン化合物を含有し、特に生分解性ポリエステルがポリ乳酸の場合、問題であった耐ブロッキング性を改良でき、透明性、接着性、製造性が簡便であり、更にはテルペン化合物が天然物由来の素材(バイオマス)であることから、環境への負荷も無く、生分解性にも優れたヒートシールラッカー組成物であり、特にポリ乳酸フィルムの包材に使用されるヒートシールラッカー組成物として好適である。

Claims (5)

  1. 乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が0.5〜30であり、還元粘度が0.3〜1.5dl/gである生分解性ポリエステル(A)とテルペン化合物(B)を含有し、生分解性ポリエステル(A)100質量部に対し、テルペン化合物(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とするヒートシールラッカー組成物。
  2. テルペン化合物(B)の軟化点が80℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシールラッカー組成物。
  3. 生分解性基材に請求項1または2に記載の生分解性ヒートシールラッカー組成物が塗布された生分解性複合体。
  4. 生分解性基材が、生分解性フィルム、生分解性プラスティック、生分解性繊維布、生分解性不織布および木材からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を構成要素として含む請求項3に記載の生分解性複合体。
  5. 生分解性基材が、ポリ乳酸フィルムを構成要素として含む請求項3に記載の生分解性複合体。
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