JP2001225349A - グラデーション色彩を有する成形品の製造方法 - Google Patents

グラデーション色彩を有する成形品の製造方法

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JP2001225349A
JP2001225349A JP2000036389A JP2000036389A JP2001225349A JP 2001225349 A JP2001225349 A JP 2001225349A JP 2000036389 A JP2000036389 A JP 2000036389A JP 2000036389 A JP2000036389 A JP 2000036389A JP 2001225349 A JP2001225349 A JP 2001225349A
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molding
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Toshimasa Hotaka
寿昌 帆高
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Teijin Ltd
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Teijin Chemicals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィルムやシートなどを予め金型内に装着す
るインモールド成形やインサート成形などを行うことな
く、グラデーション色彩を有し、歪が少なく、界面密着
性の良好な成形品を得るための方法、およびかかる成形
品を提供する。 【解決手段】 肉厚を単調変化させた層を設けることに
よりグラデーション色彩を有する多層構造成形品を、熱
可塑性樹脂の多色成形またはインサート成形により得る
方法であって、前工程で成形され、金型キャビティ内に
設置された樹脂成形品からなる層(以下“A層”とす
る)の表面、および該表面と対向する面との間の空間内
に、樹脂(以下“樹脂B”とする)を300mm/se
c以上の射出速度で充填することにより、A層と隣接す
る層(以下“B層”とする)を形成することを特徴とす
るグラデーション色彩を有する成形品の製造、およびそ
の製品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多層構造を有する成
形品を得るための熱可塑性樹脂の成形法、およびかかる
多層構造成形品に関する。詳しくはグラデーション色彩
を有する多層構造成形品であって、密着性に優れ、外
観、低歪み性にも優れる製品を得るための熱可塑性樹脂
の成形法、およびかかる多層成形品、特に大型の成形品
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、製品の高付加価値化を図るための
製品設計が要望されている。中でも製品の高意匠化の要
求が最も高い。グラデーション色彩による高意匠化もそ
の中の1つである。かかる意匠化の方法の1つとしては
グラデーション模様の印刷等を施したフィルムやシート
などを金型内に予め装着して射出成形するインサート成
形法などの成形法が用いられている。しかしながらこれ
ら成形法はシート作成、印刷、トリミングなどの多数の
工程を必要とする他、意匠性についても十分に魅力的と
は言い難い。
【0003】一方、特開昭53−83884号公報や特
開昭56−123235号公報には、成形品の肉厚比を
変えた層構造を有する成形品により、グラデーション色
彩を施した成形品が記載されている。しかしながらこれ
ら公報においては以下の問題点を十分に認識するもので
はない。すなわち従来の方法ではかかる薄い層部分と厚
い部分を有する場合、熱可塑性樹脂を十分に充填するこ
とが困難であると共に、金型により樹脂が瞬時に冷却さ
れ固化した層を有することになるため、圧力が充填され
た樹脂に十分伝播せず、その結果成形品の外観不良や界
面での密着性が不十分となりやすかった。特に層の界面
部分に立体的パターンが施されたものや、大型のグレー
ジング成形品ではこの点が顕著であり、また歪みが大き
くなるなどの問題もあった。
【0004】すなわち、より高い意匠性を有すると共
に、密着性の良好なグラデーション色彩を有する成形品
の製造が望まれているものの、かかる製造法はこれまで
なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、グラ
デーション色彩を有する成形品を得るための製造方法、
およびかかる成形品を提供することにある。更に詳しく
は印刷等されたフィルム、シートのインサート成形法と
は異なったグラデーション色彩を有し、外観や界面密着
性の良好な成形品を得るための方法、およびかかる成形
品を提供することにある。
【0006】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検
討を重ねた結果、多色成形やインサート成形を使用し、
前工程で成形され金型キャビティ内に設置された樹脂成
形品の表面と該表面と対向する面との間の空間内に熱可
塑性樹脂を充填する際、特定の射出速度以上の高速で充
填することにより、グラデーション色彩を付与するため
肉厚の薄い部分と厚い部分がある場合においても歪が少
なく、また特に界面に立体的パターンが施され樹脂の流
動が複雑になる場合にも、外観や密着性が良好な製品が
得られること、特にかかるキャビティ表面またはコア表
面に樹脂が接している際の温度が特定温度以上となる成
形を行うことにより目的とするより良好な製品が得られ
ることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、肉厚を単調変
化させた層を設けることによりグラデーション色彩を有
する多層構造成形品を、熱可塑性樹脂の多色成形または
インサート成形により得る方法であって、前工程で成形
され、金型キャビティ内に設置された樹脂成形品からな
る層(以下“A層”とする)の表面、および該表面と対
向する面との間の空間内に、樹脂(以下“樹脂B”とす
る)を300mm/sec以上の射出速度で充填するこ
とにより、A層と隣接する層(以下“B層”とする)を
形成することを特徴とするグラデーション色彩を有する
成形品の製造方法、およびその製品に関するものであ
る。
【0008】本発明は、多色成形またはインサート成形
することにより、グラデーション色彩を有する多層構造
を有する製品を得ることを基本とするものである。
【0009】ここで多色成形とは、異材質成形とも呼ば
れる成形方法のことであり、色や材質の異なる複数の成
形材料をそれぞれ異なる射出装置から順次射出し、複数
の成形材料が組み合わされた成形品を成形する方法であ
る。この多色成形を用いて複数の色を組み合わせること
により文字や図形を表示したり、表層あるいは裏層を所
望の色合いに成形することにより塗装レスを行うことが
できるほか、あるいは複数の材質を組み合わせることに
より部分的に各々の材質の特性を生かした成形品を得る
ことができ、機能の異なる部品を一体で成形することが
可能となると同時に組立て工数の削減も可能となる。さ
らに、表層にバージン材、裏層にリサイクル材を用いる
ことで資源保護や環境保全などの社会的ニーズにも対応
することが可能となる。
【0010】多色成形の中で最も一般的に使われている
成形としては、2色成形が挙げられる。すなわち2色成
形の場合には、金型キャビティ内に第1の熱可塑性樹脂
を射出成形により充填し樹脂成形品を形成することで第
1層を構成し、かかる前工程の第1層の表面を有する金
型キャビティ内に第2の熱可塑性樹脂を充填することに
より、第1層と第2層からなる層構造を有する成形品を
得ることができる。
【0011】多色成形機における射出装置の配置方式と
しては、例えば2つ以上の射出装置を水平に並列に配置
する方法や、一方の射出装置を垂直に立てて、他方を水
平に配置する方法、2つ以上の射出装置を水平でかつ直
交に配置する方法などが挙げられるが、いずれの方法も
本発明において使用することができる。またいずれも各
々の射出装置において独立した成形条件の設定により成
形をすることが可能である。
【0012】多色成形における金型機構として通常使わ
れる方法としては、コアバック方式、コア回転方式、お
よびコア移動方式などが挙げられるが、いずれの方法も
本発明において使用することができる。
【0013】コアバック方式の場合は、第1層を形成す
る熱可塑性樹脂を射出成形後、型締状態にてコアの一部
を後退させ、コアが後退することにより形成された空間
に第2層を形成する樹脂Bを射出する方法であり、成形
品の取り数、大きさが通常の射出成形の場合と変わらな
い、あるいは金型の作製が容易という長所をもつ。
【0014】コア回転方式、およびコア移動方式の場合
は、第1層を形成する熱可塑性樹脂を射出成形後、通常
は型開きし、第2層を形成する樹脂Bを射出する射出装
置の方向に、該金型のコア部分を回転又は移動させ、次
いで再度型締めし、第1層の表面を有する金型キャビテ
ィ内に樹脂Bを射出する方法である。尚、金型の構造や
成形品形状によっては型開きが不要の場合もある。
【0015】かかる方法は、第1層と第2層との間でキ
ャビティ形状を自由に変えることができ、さらに第1層
と第2層とでは異なる金型キャビティを使用するため、
複合同時動作のできる成形装置では各々キャビティに同
時に射出することも可能であることから成形サイクルを
短縮することができるという長所を持つ。
【0016】金型内の樹脂流路の構成としては、複数の
射出装置から樹脂を射出し、独立したホットランナーマ
ニホールドを通じてキャビティに充填する方法の他、コ
ールドランナーを通じてキャビティに充填する方法も使
用することができる。
【0017】ここでホットランナーによるゲートシステ
ムとしては、内部加熱方式、外部加熱方式などのいずれ
を使用してもよく、更に外部加熱方式の場合、オープン
ゲート方式、ホットエッジゲート方式、バルブゲート方
式などのいずれを使用してもよい。
【0018】本発明において好ましくは、2本以上の射
出装置を独立に有するとともに、2組以上のホットラン
ナーによるゲートシステムを独立に有するものである。
これにより射出装置、及びホットランナーによるゲート
システムをそれぞれ独立とし、それぞれにおいて射出装
置のシリンダー温度や射出速度、マニホールド温度やホ
ットノズル温度などの条件の選択が可能となることで、
可塑化温度が大きく異なる樹脂の層構造や複雑な成形品
形状の場合にも幅広い条件により対応が可能となる。す
なわちそれぞれの装置について目的とする成形品に最適
の樹脂温度(シリンダー温度、マニホールド温度、ホッ
トノズル温度など)、射出速度およびそのパターン、射
出開始のタイミング、射出容量などを決定する。
【0019】一方、インサート成形においては、前工程
で成形される成形品は各種の方法のより得られたものが
使用でき、例えば射出成形法、押出成形法、回転成形
法、熱圧縮成形法などの方法が挙げられる。また更にこ
れらの方法により得られた成形品を切削、研磨、アニー
ル、熱成形、真空成形などにより2次加工を施したもの
もの使用可能である。インサート成形ではかかる前工程
で成形された成形品を金型キャビティ表面内に各種位置
決め方法や固定方法を用いて設置した後、樹脂を充填し
て成形が行われる。
【0020】本発明は、肉厚を単調変化させた層を設け
ることによりグラデーション色彩を有する多層構造成形
品を得る方法である。かかる構成をとることにより、製
品は肉厚の変化による色調の濃淡が可能となるととも
に、これを単調変化させることによりグラデーション色
彩を可能とすることができる。かかるグラデーションは
実際の成形品の厚みを光が通過して現れるものであるの
で、単にドットの濃淡によりグラデーションを表現した
場合とは異なり、上質な色合いの意匠を達成することが
可能となる。更に各層の色調をそれぞれ適宜選択するこ
とで、任意の色調を自由に表現させることができ高意匠
性を有する製品を得ることができる。
【0021】肉厚の単調変化の内容としては、例えば長
さ方向に対して厚みを直線的に増加もしくは減少、もし
くは曲線的に増加または減少させることが挙げられ、所
望とするグラデーションに応じて適宜選択することが可
能である。また成形品の特定部位にグラデーション色彩
が必要な場合には、かかる部分にのみ上記の肉厚変化を
施せばよい。
【0022】また多くの成形品の場合に、かかるグラデ
ーション色彩を必要とする部位はほぼ肉厚が均一な場合
が多いことから、本発明においてはより好ましい成形品
の対象としては、グラデーション色彩を必要とする部位
の成形品肉厚がほぼ均一なものが挙げられる。
【0023】かかる場合の肉厚変化の比率としては、好
ましくは成形品全体の厚みを1としときの各層の厚み比
が0.02〜0.98、特に好ましくは0.1〜0.9
である。0.02〜0.98の範囲では、本発明の目的
を達成すると共に、高速化により成形品に発生するヤケ
も少ない良好な成形品を得ることが可能となる。
【0024】成形品厚みに対する第1層の厚みの比が
0.02未満、或いは0.98を超える場合には、熱可
塑性樹脂を十分に充填し層を形成することが困難である
と共に、金型により樹脂が瞬時に冷却され固化した層を
有することになるため、保圧過程においてその圧力が充
填された樹脂に十分伝播せず、その結果、前工程の成形
品との界面における密着性が不十分となる。
【0025】本発明は、更に多色成形またはインサート
成形において、前工程で成形され、金型キャビティ内に
設置された樹脂成形品からなる層(以下“A層”とす
る)の表面、および該表面と対向する面との間の空間内
に、樹脂(以下“樹脂B”とする)を300mm/se
c以上の射出速度で充填する(以下“A条件”と称する
ことがある)ことにより、A層と隣接する層(以下“B
層”とする)を形成することを特徴とするものである。
【0026】尚、本発明において前工程と称する場合、
現工程(すなわち樹脂Bを特定の射出速度以上などの条
件で充填する工程)以前のすべての工程を含むものと
し、必ずしも一段階の成形工程などを意味するものでは
ない。
【0027】かかる条件を満足する成形を行うことによ
り、樹脂Bの溶融粘度を低下させると共に、成形品全体
にわたって充填時の樹脂の冷却が極めて少なくすること
によりB層の歪を少なくすることが可能となり、より良
好な意匠性を有することが可能となる。またB層が薄肉
部を有している場合であってもショートショット現象を
起こすことなく、保圧過程において成形品全体に圧力を
十分に伝え、均一かつ十分な界面の密着性を得ることが
可能となる。更に大型成形品においても充填時に成形品
の全体にわたり、成形品の面内方向および厚み方向とも
にほぼ均一な熱の履歴を有する状態が確保される。
【0028】更にA層のB層側表面に立体的パターンを
施し、更に高度な意匠性を有する場合にあっても、かか
るパターンにより樹脂が不規則に回り込むなどの流動挙
動を極力抑制することができ、結果として十分に良好な
外観および密着性を得ることが可能となる。同様に界面
の密着ムラや複雑な流動に伴う歪みを解消することが可
能となる。例えば、樹脂が回り込んで入った場合、かか
る内部に圧縮されたガスの逃げ場がなくなり充填不良を
発生することが多いが、かかる不具合を解消することが
可能となる。
【0029】本発明のA条件においては、300mm/
sec以上の射出速度を有することを条件とし、好まし
くは350mm/sec以上、特に好ましくは400m
m/sec以上である。速度の上限としては800mm
/sec程度を目安とする。300〜800mm/se
cの範囲では、本発明の目的を達成すると共に、高速化
により成形品に発生するヤケも少ない良好な成形品を得
ることが可能となる。尚ここでいう射出速度とは、金型
キャビティ内への充填開始から終了までの平均速度をい
い、必ずしも一定速度である必要はなく、多段階の射出
速度による成形も可能である。
【0030】300mm/sec以上の射出速度を達成
するためには、アキュームレーターの容量を増大した
り、モーターの馬力を増大したりするなどの方法により
射出馬力を増加させることが基本となるが、極めて高速
度および短時間におけるスクリュー速度および位置の制
御や応答を達成するため射出シリンダの構造や油圧制御
システム、モーター制御システム等を適正化することも
必要となる。かかる方式としては現在公知の各種方法を
取ることができる。
【0031】また動力源としては油圧ポンプによる方式
であっても電動モーター(リニア型モーターを含む)に
よる方式であってもよいが、大型の成形品に対しては油
圧ポンプによる方式がより好ましい。更に射出装置は、
一般的な可塑化スクリュの前進によるインライン方式、
可塑化スクリュと充填用のプランジャーが別となったい
わゆるプリプラ方式のいずれも使用可能である。
【0032】一方、金型の面においても、金型内のガス
抜きが円滑に進むよう十分なガス抜きの溝を形成したも
のや、また多孔質の焼結金属や、ベント孔を通して真空
ポンプ等による減圧を行うものが好ましく使用できる。
【0033】尚、本発明において第1層を形成する樹脂
成形品を得る際の射出速度については各種の条件を取る
ことが可能であり、肉厚が薄い場合にはA条件と同様の
高速の射出速度を適用することが好ましく、肉厚が厚い
場合には、射出圧縮成形などの低圧射出成形法を適用す
ることがより好ましい。
【0034】本発明は、更に上記のA条件に加えて、A
層表面と対向する面が金型キャビティ表面である場合に
は、樹脂Bの最も高いガラス転位温度をTg(℃)とし
たとき、主金型温度をTg(℃)より低い温度で保持す
るとともに、かかる樹脂Bが金型のキャビティ表面に接
触している際の最高温度を[Tg+1](℃)〜[Tg
+50](℃)とする(以下B条件と称することがあ
る)ことをより好ましい製造条件とするものである。尚
ここでいうガラス転移温度とはJIS K7121に規
定される方法にて測定されたものであり、かかるDSC
などのチャートにおいて明確に認識できるガラス転移温
度をいう。更に最も高いガラス転移温度とは、樹脂Bが
2種以上の樹脂からなる場合など、2種以上のガラス転
移温度を示す場合には、そのうちの最も高い温度をさ
し、一方樹脂が単一種でガラス転移温度が1つの場合に
はその温度をさす。
【0035】またA層表面と対向する面が金型キャビテ
ィ表面でない場合としては、対向面に樹脂シートや他の
成形品、または樹脂以外の他の部品などがインサートさ
れている場合、また前工程で形成された同一成形品の一
部である場合などが挙げられる。
【0036】主金型温度をTg(℃)未満とすることに
より、金型のキャビティ表面を高温としても、保圧終了
後に速やかに冷却させることが可能となる。主金型温度
がTg以上の場合には、冷却時間が長くなるために生産
効率が低下する。かかる主金型温度の上限は、より好ま
しくは[Tg−20](℃)、更に好ましくは[Tg−
30](℃)、特に好ましくは[Tg−40](℃)で
ある。一方主金型温度の下限としては、より好ましくは
[Tg−100](℃)、更に好ましくは[Tg−8
0](℃)、特に好ましくは[Tg−70](℃)であ
ることが挙げられる。これらの範囲においては、樹脂B
が金型キャビティ表面に接している場合の温度を十分に
[Tg+1](℃)以上の温度にすることが可能となる
と共に、全体の金型温度が安定しやすいため、連続して
成形をした場合により安定した製品を得ることが可能と
なる。
【0037】尚、かかる主金型温度はA層の成形品が有
する耐熱性を超えて設定することは好ましくないため、
かかるA層のうち金型キャビティ表面と接する面の樹脂
における最も高いガラス転移温度より低い温度とするこ
とが好ましい。更に好ましくはかかるガラス転移温度よ
り10℃以上低い場合である。尚、ここで最も高いガラ
ス転移温度とは上記した如く、樹脂が2種以上のガラス
転移温度を有する場合には、その最も高い温度をさし、
ガラス転移温度が1つの場合にはその温度をさす。
【0038】ここで主金型とは、金型の構成全体をさ
し、主金型温度とは金型全体の温度を測定する際の目安
となる温度をいい、必ずしも金型のキャビティ表面部分
以外の温度が正確に均一な一定の温度である必要はな
い。例えば主金型の温度としては、金型を温度調節する
ために金型内を循環させる水または有機化合物などの加
熱媒体または冷媒体の温度を目安とすることができる。
更に該主金型の温度を確認するためには、金型キャビテ
ィ表面部分から5〜10cm程度離れた該キャビティを
有する金型ブロックまたは該ブロックに隣接する金型ブ
ロックの中央部分などの温度を熱電対その他の温度セン
サーにより測定し確認する方法を挙げることができる。
またその他主金型の温度調節方法には加熱ヒーターなど
による方法、空冷方法などが挙げられるが、この場合も
金型全体の温度の目安として適当な部位の温度、例えば
加熱ヒーターの場合にはヒーター部より5〜10cm程
度離れたキャビティを有する金型ブロックまたは該ブロ
ックに隣接する金型ブロックの中央部分などで測定され
る温度とすることができる。
【0039】一方、樹脂Bが金型キャビティ表面に接触
している際のキャビティ表面の最高温度を、[Tg+
1](℃)〜[Tg+50](℃)とすることにより、
例えばB層が薄い場合においても、熱可塑性樹脂が充填
する際の金型からの冷却を遅延させ、固化層の形成をよ
り抑制し、樹脂の流動抵抗を低下させて更に薄肉成形性
が改良される。更に立体的パターンが施された場合であ
っても、微小な部位に対して十分に樹脂Bが入り込むこ
とが可能となる。
【0040】かかる樹脂Bが金型キャビティ表面に接触
している際のキャビティ表面の最高温度は、より好まし
くは[Tg+10]〜[Tg+50](℃)、更に好ま
しくは[Tg+15]〜[Tg+40](℃)である。
[Tg+1](℃)未満では、熱可塑性樹脂が充填する
際の金型からの冷却による固化層の形成を抑制できない
ため樹脂の流動抵抗が低下せず、第1層と第2層との界
面密着性を改善することが困難であり、[Tg+50]
(℃)を超える条件とした場合には、溶融した樹脂が金
型内で冷却するために必要な冷却時間が長くなるため、
生産効率が低下し好ましくない。更には成形サイクルが
長くなることで、射出成形などの場合には滞留時間の増
大に伴う樹脂劣化や、金型表面を高温にするために必要
以上にエネルギーを使用し効率的でないとの問題もあ
る。
【0041】また樹脂Bが金型キャビティ表面に接触し
ている際のキャビティ表面の最高温度が[Tg+1]
(℃)〜[Tg+50](℃)の範囲にある時間として
は、少なくとも0.1秒以上、好ましくは0.5秒以上
であり、更に上限としては保圧時間内であることが好ま
しい。かかる時間内であれば密着性を良好にできるとと
もに無用に成形サイクルを長くすることがない。
【0042】かかる金型キャビティ表面の温度は、かか
る表面に近い場所において熱電対型温度計などで測定し
たものであり、データロガーなどに入力して測定するこ
とが可能である。かかる表面に近い場所とは、かかる表
面から温度計までの材料の熱伝導率をα(W/m・K)
とし、また表面から温度計までの距離をY(m)とした
とき、Y≦(5×10-5)×αの条件を満足するもので
ある。したがって通常熱伝導率の良好な金属層では1m
m以内の距離が目安となり、一方熱伝導率の低い樹脂層
などでは50μm以内の距離が目安となる。
【0043】金型のキャビティ表面またはコア表面の温
度を主金型の温度より高温とし、上記の最高温度を達成
する方法としては、例えば、従来から提案されている該
表面部分に直接ハロゲンランプなどの輻射熱を照射する
方法、高周波誘導加熱を起こさせる方法、薄膜電気抵抗
体により加熱・冷却する方法、超音波を利用する方法な
ど金型表面部分を外部の熱源により加熱する方法の他、
金型キャビティ表面またはコア表面に熱伝導率の低い断
熱層を形成することにより、溶融された熱可塑性樹脂の
有する熱を利用し表面部分の温度を高温化する方法など
を用いることができる。これらは単独で用いても、複数
を組み合わせて用いてもよい。例えば、前者の外部の熱
源により加熱する方法と後者の断熱層を用いる方法は、
外部熱源の効率化にもつながる。
【0044】上記の中でも断熱層を利用する方法は、充
填時よりも充填後において高温の状態に至るため、各種
の歪みが緩和されやすく、また第1層として形成された
層の断熱効果とのバランスがとれ、成形品表面と界面の
熱履歴をより均一にすることが可能であることから本発
明において好ましい方法としてあげることができる。か
かる断熱層の熱伝導率としては、0.05〜1W/m・
Kが好ましい。
【0045】一方、本願発明の条件を満足する断熱層を
設計するためには、実温度を上記の如く常に検証する必
要はなく、熱可塑性樹脂、主金型、成形時の断熱層の温
度、比熱、熱伝導率、密度、結晶化潜熱などから計算す
ることによりかかる表面の温度を算出し利用することが
できる。例えば、ADINAおよびADINA−T(マ
サチューセッツ工科大学で開発されたソフトウエアの名
称)などを用いて、非線形有限要素法による非定常熱伝
導解析により計算できる。
【0046】すなわち、本発明によれば、熱可塑性樹脂
の多色成形またはインサート成形において、肉厚を単調
変化させた層を設けることによりグラデーション色彩を
有する多層構造成形品を得る方法であって、前工程で成
形され、金型キャビティ内に設置された樹脂成形品から
なる層(以下“A層”とする)の表面、および該表面と
対向する面との間の空間内に、樹脂(以下“樹脂B”と
する)を300mm/sec以上の射出速度で充填し、
更に上記該表面と対向する面が金型キャビティ表面であ
る場合に、樹脂Bのガラス転移温度のうち最高温度をT
g(℃)としたとき、主金型温度をTg(℃)より低い
温度で保持するとともに、かかる樹脂Bがキャビティ表
面等に接触している際のキャビティ表面等の最高温度
を、かかるキャビティ表面等に熱伝導率0.05〜1W
/m・Kの断熱層を形成することにより[Tg+1]
(℃)〜[Tg+50](℃)とすることを特徴とする
グラデーション色彩を有する成形品の製造方法が提供さ
れる。
【0047】断熱層の熱伝導率としては、より好ましく
は、0.1〜0.8W/m・K、更に好ましくは0.1
〜0.7W/m・Kである。0.05W/m・K〜1W
/m・Kの範囲であれば、成形サイクルを必要以上に長
くすることなく、良好な界面の密着性を得ることが可能
となる。
【0048】かかる条件を満足する断熱材料の具体例と
しては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹
脂、ウレタンアクリレート樹脂、ジアリルカーボネート
樹脂、ホスファゼンアクリレート樹脂などの、熱硬化性
または光硬化性の各種樹脂の他、各種ポリイミド、ポリ
スルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾ
ール、ポリアリルスルホン、ポリフェニレンエーテルな
どの耐熱性ポリマーを挙げることができる。各種ポリイ
ミドの具体例としては、ベスペル(デュポン社製、商品
名)、PI2080(アップジョン社製、商品名)、ト
ーロン(テイジンアモコエンジニアリングプラスチック
ス(株)製、商品名)、ウルテム(日本ジーイープラス
チックス(株)製)、AURUM(三井化学(株)
製)、ユーピレックス−VT(宇部興産(株)製、商品
名)などを挙げることができる。尚、上記樹脂またはポ
リマーに各種の繊維状、板状、粒状の充填材を配合する
ことも可能である。更にこれらは、複数の断熱材料を多
層化したものも使用することができる。
【0049】かかる断熱材料より断熱層を形成する方法
としては、液状のモノマー、オリゴマーもしくはプレポ
リマー、またはそれらの各種溶媒に溶解した溶液を金型
の相当する部分に塗布、乾燥を繰り返すことにより断熱
層を形成していく方法、比較的厚い断熱層を一度に硬化
する方法などが挙げることができる。また半硬化または
プレポリマー状態のフィルムやシートを得たのち付形
し、その後完全に反応を進行させることにより断熱層を
形成する方法をとることもできる。更に、一定の塊状物
を形成したのち切削により必要な断熱層を形成すること
も可能である。
【0050】断熱材料が熱可塑性ポリマーの場合には、
溶液塗布の方法、フィルムやシートを得たのち付形する
方法、塊状物から切削する方法の他、直接押出成形、圧
縮成形、射出成形などの各種熱成形法により付形し断熱
層を形成することも可能である。
【0051】更にかかる断熱層は、それ自体でもまたそ
の上に金属層を設けて使用することも可能であるが、金
属層を設けて使用することがより好ましい。かかる金属
層を設ける方法としては、メッキ、蒸着、スパッタリン
グによる方法の他、これらの組み合わせ、すなわち蒸
着、スパッタリング後に電解メッキをする方法などが挙
げられる。更に導電性ポリマーを塗付したのち電気メッ
キする方法も挙げられる。その他の方法としては、金属
層をかかる断熱層に接着剤を介して接着する方法などを
挙げることができる。またかかる金属層の厚みとしては
5〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0052】前者の外部の熱源により加熱する方法にお
いては、ハロゲンランプの照射時間など、外部熱源の供
給時間や熱源の出力を制御することにより金型のキャビ
ティ表面の温度を目的の温度に制御することが可能であ
り、また後者の断熱層を用いる方法では断熱層や金属層
の厚みを制御することにより金型のキャビティ表面の温
度を目的の温度に制御することが可能である。
【0053】本発明は、更に本発明の製造方法にかかる
成形品は、A層におけるB層側の表面の少なくとも一部
に、立体的パターンを施したものであってもよい。かか
る場合は実質的な流動厚みが複雑に変化することになる
ため、樹脂の充填時にパターン回りで樹脂が流れやすい
ほうに先に回り込むなどの複雑な流動挙動を取りやす
く、特に未充填による外観不良や密着性の低下が生じや
すい。また歪みも大きくなりやすい。しかしながら本発
明の製造方法はかかる場合にあっても良好な成形品が得
られることからより好ましい態様である。
【0054】ここで、立体的パターンとは、表面から光
学的な変化や不均一性を視認できる立体状の凹凸をい
い、かかる形状としては、文字、図形、記号やそれらの
結合のいずれであってもよい。更にかかる形状は意匠性
のみならず、レンチキュラーレンズや拡散起点となり得
るドットの集合などの光学的に利用可能な規則的な図形
も含まれる。またかかる立体状の凹凸は、必ずしもかか
る凹凸自体を肉眼で認め得るものである必要はなく、か
かる凹凸によるプリズム効果などにより、通常の平面で
は得られない光学的な効果(虹色光を呈するなど)を有
するものであればよい。
【0055】本発明の成形品では、片方の層(A層また
はB層)を無色透明とし、もう片方の層を着色透明とし
てグラデーション効果を奏する以外に、A層とB層が互
いに異なる色調で着色されることにより、色味の変化に
より多様性を持たせることが可能となる。更に本発明で
は射出成形により、層の厚みの変化に対する自由度がよ
り高いことから、種々の成形体に対して任意の対応が可
能な点で優れた効果を奏する。
【0056】また異種の材料を自由に適用できる点でも
有用であり、例えば、表面硬度性が要求されるもので
は、種々の熱可塑性樹脂のA層に対して、B層としてポ
リメチルメタクリレートなどを適用することが容易に可
能である。
【0057】更に本発明では、前記の特定の成形方法を
使用することにより、外観や密着性の良好なグラデーシ
ョン色彩を有する多層成形品を、射出成形により効率的
に製造することが可能となる。特に外観や密着性などに
問題が生じやすい、ゲート部から流動末端部までの距離
が200mm以上となるような大型の多層成形品に好適
なものである。大型の成形品は、かかる成形品自体が押
出成形などによるところが多く、同様の多層成形品を得
るには極めて多くの工数を必要とすることが多かった
が、本発明はそれらの問題も解決可能な製造方法といえ
る。
【0058】本発明の成形方法において使用可能な熱可
塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプ
ロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹
脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹
脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキ
ルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチッ
クス、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリアセタール樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアルキレンテレフタレ
ート樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、
ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポ
リアリレート)などに代表されるエンジニアリングプラ
スチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテ
ルイミド、ポリアミドイミドなどに代表される各種熱可
塑性ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフ
ォン、ポリフェニレンサルファイドなどのいわゆるスー
パーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものも
用いることができる。更にスチレン系熱可塑性エラスト
マー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド
系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラ
ストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの
熱可塑性エラストマーも用いることができる。これらの
熱可塑性樹脂はいずれもA層、B層、およびその他の部
分に使用することが可能である。
【0059】ここでその他の部分とは、例えば、A層を
形成する樹脂成形品としてポリカーボネート樹脂の板状
成形品を成形後、多色成形法を利用してその周囲にポリ
エステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを
成形し、更にその後に本発明の成形方法を利用して、ポ
リカーボネート樹脂層の上にポリメチルメタクリレート
樹脂層を形成した場合に、かかる層構造に関係しない熱
可塑性エラストマー部分に相当するものをいう。
【0060】尚、上記の熱可塑性樹脂を混合して用いる
ことは、組成物の使用目的に応じて適宜選択することが
できる。
【0061】本発明では特に少なくとも一方の層が光透
過性を有する必要があり、したがって何れか一方の層を
形成する樹脂が非晶性の熱可塑性樹脂であるものが好ま
しい。非晶性の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹
脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹
脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、
SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリフ
ェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポ
リアルキレンテレフタレート樹脂、非晶性ポリアミド樹
脂、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹
脂、ポリエーテルサルフォン、更にスチレン系熱可塑性
エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポ
リアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可
塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ
ーなどの熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0062】これらの中でも透明性に優れるポリメチル
メタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート樹
脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、
非晶性ポリアリレート樹脂などを好ましく挙げることが
できる。
【0063】特に少なくとも1層がポリカーボネート樹
脂であることが、成形品の機械的強度、耐熱性などの点
から好ましく挙げられる。
【0064】本発明におけるポリカーボネート樹脂と
は、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面
重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたも
のの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換
法により重合させたもの、または環状カーボネート化合
物の開環重合法により重合させて得られるものである。
【0065】ここで使用される二価フェノールの代表的
な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,
4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−
ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒド
ロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノール
A)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)
フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ
−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビ
ス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}
プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェ
ニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4
−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メ
チルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメ
チルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ
−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベン
ゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m
−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒド
ロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,
3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチ
ルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルス
ルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシ
ド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−
ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニルエステルなどがあげられ、これらは
単独または2種以上を混合して使用できる。
【0066】なかでもビスフェノールA、2,2−ビス
{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル
ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−
3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシク
ロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選
ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単
独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノ
ールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
とビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ
−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベ
ンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0067】カーボネート前駆体としてはカルボニルハ
ライド、カーボネートエステルまたはハロホルメートな
どが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボ
ネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが
挙げられる。
【0068】上記二価フェノールとカーボネート前駆体
を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応
させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必
要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防
止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート樹脂
は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐
ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族
の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボ
ネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボ
ネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよ
い。
【0069】三官能以上の多官能性芳香族化合物として
は、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−
ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニ
ル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,
6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,
3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタ
ン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒド
ロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキ
シ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4
−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エ
チル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノー
ルなどのトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフ
ェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニ
ル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリ
フェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピ
ロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸および
これらの酸クロライドなどが挙げられ、中でも1,1,
1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,
1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス
(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0070】界面重縮合法による反応は、通常二価フェ
ノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機
溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属
水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられ
る。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベ
ンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また、
反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n
−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチル
ホスホニウムブロマイドなどの第三級アミン、第四級ア
ンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物などの触
媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜
40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpH
は9以上に保つのが好ましい。
【0071】また、かかる重合反応において、通常末端
停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フ
ェノール類を使用することができる。単官能フェノール
類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用
され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単
官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているの
で、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。か
かる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール
または低級アルキル置換フェノールであって、下記一般
式(1)で表される単官能フェノール類を示すことがで
きる。
【0072】
【化1】
【0073】(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9
の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換
アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整
数である。)
【0074】上記単官能フェノール類の具体例として
は、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノー
ル、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノー
ルが挙げられる。
【0075】また、他の単官能フェノール類としては、
長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換
基として有するフェノール類または安息香酸クロライド
類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も
示すことができる。これらのなかでは、下記一般式
(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換
基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0076】
【化2】
【0077】
【化3】
【0078】(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O
−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合ま
たは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族
炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
【0079】かかる一般式(2)の置換フェノール類と
してはnが10〜30、特に10〜26のものが好まし
く、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデ
シルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシ
ルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフ
ェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフ
ェノールなどを挙げることができる。
【0080】また、一般式(3)の置換フェノール類と
してはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である
化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26
のものが好適であって、その具体例としては例えばヒド
ロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、
ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸
ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロ
キシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリア
コンチルが挙げられる。
【0081】末端停止剤は、得られたポリカーボネート
樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少
くとも10モル%末端に導入されることが望ましい。よ
り好ましくは全末端に対して末端停止剤が80モル%以
上導入されること、すなわち二価フェノールに由来する
末端の水酸基(OH基)が20モル%以下であることが
より好ましく、特に好ましくは全末端に対して末端停止
剤が90モル%以上導入されること、すなわちOH基が
10モル%以下の場合である。また、末端停止剤は単独
でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0082】溶融エステル交換法による反応は、通常二
価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換
反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカ
ーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成す
るアルコールまたはフェノールを留出させる方法により
行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノ
ールの沸点などにより異なるが、通常120〜350℃
の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜1
3.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフ
ェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4
時間程度である。
【0083】カーボネートエステルとしては、置換され
ていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル
基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが
挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス
(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネ
ート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカー
ボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネー
トなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが
好ましい。
【0084】また、重合速度を速めるために重合触媒を
用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナ
トリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属化合物、水
酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム
などのアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニ
ウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキ
シド、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの含窒
素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のア
ルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機
酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム
化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機
スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アン
チモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジ
ルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステ
ル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触
媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて
使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の
二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10 -8
1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10
-4当量の範囲で選ばれる。
【0085】また、かかる重合反応において、フェノー
ル性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるい
は終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネー
ト、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニト
ロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)
カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、
ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニル
フェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネー
ト、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート
およびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネー
トなどの化合物を加えることが好ましい。なかでも2−
クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカ
ルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エト
キシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好まし
く、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカー
ボネートが好ましく使用される。
【0086】更に溶融エステル交換法においては、失活
剤を用いて重合後残存する触媒の活性を中和しておくこ
とが望ましい。かかる失活剤としては、ベンゼンスルホ
ン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メ
チル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸
ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホ
ン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−ト
ルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチ
ル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンス
ルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、
トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン
酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル−スル
ホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸
−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスル
ホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン
酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テト
ラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブ
チルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テト
ラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸
テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホ
ン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼン
スルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアン
モニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシ
ルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェ
ート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデ
シルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシル
ジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テト
ラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テ
トラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシル
トリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テ
トラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェー
ト、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフ
ェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサ
ルフェートなどの化合物を挙げることができるが、これ
らに限定されず、またこれらの化合物は2種以上併用す
ることもできる。
【0087】中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウ
ム塩型のものが好ましい。かかる触媒の量としては、残
存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用
いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂
に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましく
は0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜
100ppmの割合で使用する。
【0088】ポリカーボネート樹脂の分子量は特定され
ないが、分子量が10,000未満であると高温特性な
どが低下し、40,000を超えると成形加工性が低下
するようになるので、粘度平均分子量で表して10,0
00〜40,000のものが好ましく、14,000〜
30,000のものが特に好ましい。また、ポリカーボ
ネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。本発
明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポ
リカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液か
ら求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求める。 ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]
は極限粘度) [η]=1.23×10-40.83 c=0.7
【0089】本発明の熱可塑性樹脂には離型剤を配合す
ることができ、こうすることは離型時の歪みを抑制でき
る点で好ましい結果を与える。離型剤としては飽和脂肪
酸エステルが一般的であり、例えばステアリン酸モノグ
リセライドなどのモノグリセライド類、デカグリセリン
デカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレ
ート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン
酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン
酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリ
スリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエ
ステル類が使用される。離型剤は熱可塑性樹脂100重
量部当り0.01〜1重量部用いられる。
【0090】また、本発明の熱可塑性樹脂には必要に応
じてリン系熱安定剤を加えることができる。リン系熱安
定剤としては、ホスファイト化合物およびホスフェート
化合物が好ましく使用される。ホスファイト化合物とし
ては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニル
フェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert
−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファ
イト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホ
スファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオ
クチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノ
フェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファ
イト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチ
ルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−ter
t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトー
ルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ
−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、
ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフ
ァイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニ
ル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのホスフ
ァイト化合物が挙げられる。これらのうち、トリス
(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイ
ト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイ
ト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペ
ンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0091】一方、熱安定剤として使用されるホスフェ
ート化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、
トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、
トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフ
ェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジル
ホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェ
ート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホス
フェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホ
スフェートなどが挙げられ、なかでもトリフェニルホス
フェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
【0092】更にその他のリン系熱安定剤としては、テ
トラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−
4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス
(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’
−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−
ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニ
レンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブ
チルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトなどの
ホスホナイト化合物も好ましく使用することができる。
【0093】前記リン系熱安定剤は、単独で使用しても
よく、また2種以上を組合せて使用してもよい。リン系
熱安定剤は、本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対
し、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.001
〜0.05重量部の範囲で使用するのが適当である。
【0094】本発明の熱可塑性樹脂には、酸化防止の目
的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。
その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことがで
き、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス
(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサン
ジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタ
エリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−te
rt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,
3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ
−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼ
ン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ter
t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベン
ジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5
−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イ
ソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2
−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5
−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−
2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウン
デカンなどが挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい
添加量の範囲は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、
0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜0.
5重量部である。
【0095】耐候性の向上および有害な紫外線をカット
する目的で、本発明の熱可塑性樹脂に更に紫外線吸収剤
や光安定剤を配合することができる。かかる紫外線吸収
剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メト
キシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外
線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−
5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベ
ンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチ
ル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリ
アゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,
3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾト
リアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒド
ロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フ
ェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,
5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)
ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系
紫外線吸収剤が例示される。更にビス(2,2,6,6
−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス
(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジ
ル)セバケートなどのヒンダードアミン系の光安定剤も
使用することが可能である。これらは単独で用いても、
二種以上併用してもよい。これら紫外線吸収剤、光安定
剤の好ましい添加量の範囲は、熱可塑性樹脂100重量
部に対し、0.0001〜10重量部、好ましくは0.
001〜5重量部である。
【0096】また、本発明の透明性を有する熱可塑性樹
脂には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すため
にブルーイング剤を配合することができる。特にポリカ
ーボネート樹脂に対して有用である。具体的なブルーイ
ング剤としては、例えば一般名Solvent Vio
let13[CA.No(カラーインデックスNo)6
0725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイ
オレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルー
G」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレッ
トB」]、一般名Solvent Violet31
[CA.No68210;商標名 三菱化学(株)製
「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solve
nt Violet33[CA.No60725;商標
名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一
般名Solvent Blue94[CA.No615
00;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルー
N」]、一般名Solvent Violet36[C
A.No68210;商標名バイエル社製「マクロレッ
クスバイオレット3R」]、一般名SolventBl
ue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブル
ーRR」]および一般名Solvent Blue45
[CA.No61110;商標名 サンド社製「テトラ
ゾールブルーRLS」]、チバ・スペシャリティ・ケミ
カルズ社のマクロレックスバイオレットやトリアゾール
ブルーRLS等があげら、特に、マクロレックスバイオ
レットやトリアゾールブルーRLSが好ましい。
【0097】本発明の熱可塑性樹脂には、更に慣用の他
の添加剤、例えば補強剤(タルク、マイカ、クレー、ワ
ラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビ
ーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレ
ーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カー
ボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属
コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガ
ラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊
維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊
維、グラファイト、導電性カーボンブラック、各種ウイ
スカーなど)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル
系、金属塩系、赤リン、シリコン系、フッ素系、金属水
和物系など)、耐熱剤、着色剤(カーボンブラック、酸
化チタンなどの顔料、染料)、光拡散剤(アクリル架橋
粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カ
ルシウム粒子など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染
料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有
機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒
子酸化亜鉛など)、グラフトゴムに代表される衝撃改質
剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤を配合すること
ができる。
【0098】更に本発明の熱可塑性樹脂は、製品または
部品として形成済みの樹脂、いわゆるリサイクル材を使
用することも可能である。リサイクル材はA層として使
用することが好ましい。かかるリサイクル材には着色の
ための塗装、耐摩耗性、帯電防止性、熱線吸収などの各
種機能性コーティング、蒸着、スパッタリング、メッキ
などによる金属膜などの積層膜が形成されている場合も
多いが、これらは積層膜をつけたままでの使用も、積層
膜の一部または全部を除去しての使用もいずれも可能で
ある。
【0099】例えばポリカーボネート樹脂を基板とする
光情報記録媒体をリサイクル材として使用する場合、こ
れらは粉砕処理などをしてそのまま使用すること、およ
びかかる粉砕処理したものと、他の熱可塑性樹脂材料お
よび/または他の熱可塑性樹脂材料のリサイクル材と混
合することにより使用することができる。
【0100】一方該光情報記録媒体から情報記録層、反
射層や保護コート層を樹脂基板から選択的に除去し、樹
脂自体を回収して使用することも可能であり、かかる除
去方法として以下に示すいくつかの提案された方法を使
用することができる。
【0101】(i)特開平4−305414号公報(欧
州特許第476,475号、米国特許第5,151,4
52号)、特開平5−200379号公報(欧州特許第
537,567号、米国特許第5,214,072号)
および特開平6−223416号公報(欧州特許第60
1,719号、米国特許第5,306,349号):こ
れらの方法は被覆された樹脂板を、例えば酸またはアル
カリの水溶液で化学的に処理する方法である。
【0102】(ii)特開平5−345321号公報:
この方法は、被覆された樹脂板を長時間熱水中に浸漬す
る方法である。
【0103】(iii)特開平5−210873号公報
および米国特許第5,203,067号:これらの方法
は、被覆された樹脂板の被覆層表面を機械的に刃物や研
磨材を用いて切削、研磨して除去する方法である。
【0104】(iv)特開平10−52823号公報お
よび特開平10−58450号公報:かかる方法は圧延
した記録媒体を加熱水と接触させることにより塗膜を剥
離、除去することにより、基板樹脂を回収する方法であ
る。かかる方法は特に低コストであり、品質、回収率に
おいても良好な方法である。
【0105】その他、光情報記録媒体の表面をブラスト
処理する方法、光情報記録媒体に超音波を照射させる方
法(特開平11−34057号)などを挙げることがで
きる。
【0106】本発明では更に、本発明の成形方法と射出
圧縮成形、インモールド成形、インサート成形、サンド
イッチ成形、ガスアシスト成形などを組み合わせて使用
することも可能である。
【0107】例えば本発明の成形方法と射出圧縮成形を
組み合わせた場合、充填時の低圧化を可能とするととも
に、金型内に充填された熱可塑性樹脂のゲート部付近と
流動末端部付近との金型内圧力差を均一化することが可
能となり、保持圧力により成形品全体に十分に均一な圧
力を伝えることができることから界面の密着性をさらに
改良することが可能となる。
【0108】ここで射出圧縮成形法としては、例えばプ
ラテン(金型を取り付ける板)の開閉を利用した型締め
圧縮成形法や成形機プラテンの圧縮シリンダー、ボール
ネジなどを利用したコア圧縮成形法などのいずれも利用
可能である。
【0109】前記の型締め圧縮成形法とは、固定側、お
よび可動側のそれぞれの金型パーティング面を所定の間
隔だけ開いた状態にし、樹脂を射出し、その後型締め力
によりパーティング面を接触させて圧縮する方法をさ
す。また、前記コア圧縮成形法とは、射出前の型締めで
は金型のそれぞれのパーティング面を接触させ、所定の
型締め力をかけて樹脂を射出しその後圧縮する手段をさ
す。射出後圧縮する工程では、成形機、金型などに設置
された圧縮機構により可動側コアをキャビティの容積が
縮小される方向に前進させて圧縮させる。ここでいう圧
縮機構としては、圧縮シリンダーやボールネジなどを挙
げることができる。
【0110】また、本発明の成形方法とサンドイッチ成
形を組み合わせた場合、A層またはB層のいずれかを2
層構造とすることが可能となる。
【0111】ここでサンドイッチ成形とは金型内に第1
樹脂と第2樹脂を射出してスキン層およびコア層からな
る層構造を構成させる成形法をいう。かかる樹脂の射出
方法としては、逐次射出、同時射出、あるいは逐次射出
と同時射出の組み合わせを適宜使用することができる。
特に同時射出の方法が好ましい。
【0112】サンドイッチ成形においては、射出装置を
それぞれの樹脂に対して独立として2本以上の複数シリ
ンダーを使用する方法の他、1本の射出装置による方法
を使用することもできる。
【0113】さらに本発明の成形方法とガスアシスト成
形を組み合わせた場合、A層、またはB層、あるいはA
層およびB層をともに中空構造体とすることで、各層を
軽量化することができるとともに、異なる意匠性や光学
的機能を付与することも可能である。例えば、中空部に
フォトクロミック性を有する化合物を充填し、光反応性
を有する製品を作成することなどが挙げられる。
【0114】本発明中のガスアシスト成形(中空射出成
形法ともいう)は特に制限されるものではなく、従来ま
での方法をそのまま使用することができる。具体的には
溶融された樹脂を射出開始後、射出注入口或いは他の吹
き込み口から不活性ガスを圧入する方法が一般的に使用
される。圧入するガスの種類は、成形時および成形品使
用時に樹脂と反応性を有しないガスであれば特に制限さ
れるものではなく、例えば窒素、空気などの反応性の低
いガス、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなど
の希ガス、或いはこれらの混合ガスが好ましい。圧入す
るガスの注入圧力については、常圧以上であれば特に制
限されるものではないが、低すぎると保圧効果が少な
く、高すぎるとガスが成形品を突き破ってしまう、或い
はガスボンベ以外に特別な耐圧装置が必要になるといっ
た問題が生じる為、通常5〜30MPaが好ましい。圧
入ガスの温度についても、通常常温で用いられることが
多いが、溶融樹脂と同温、或いはそれ以上に加熱されて
いるものでもよく、一方、常温以下に冷却されているも
のであっても差し支えない。
【0115】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げて本発明を更
に説明する。実施例において用いる熱可塑性樹脂組成物
を以下のように作成した。
【0116】[参考例1〜7]表1記載の各成分を表1
記載の配合割合でドライブレンドした後、径30mmφ
のダルメージ2段のスクリューを装備したベント付き単
軸押出機[ナカタニ機械(株)製:VSK−30]を用
い、シリンダー温度及びダイス温度290℃でペレット
化した。このペレットをPMMA樹脂については95℃
で、それ以外は120℃で5時間熱風乾燥機による乾燥
を行った後、以下実施例に示される成形を行った。また
これらのペレットについてのガラス転移温度をJIS
K7121に従い測定した。かかる値を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】表1記載の各成分を示す記号は下記の通り
である。 (熱可塑性樹脂)PC:ビスフェノールAとホスゲンか
ら常法によって作られた粘度平均分子量18,500の
ポリカーボネート樹脂99.77重量部に、Sands
tab P−EPQ(サンドズ(Sandoz)社製)
0.03重量部、およびペンタエリスリトールテトラス
テアレート0.2重量部を配合した樹脂組成物(これら
安定剤および離型剤を表1に記載の着色剤と共に混合し
溶融押出してペレットを得た) PMMA:ポリメチルメタクリレート樹脂(旭化成工業
(株)製 デルペット80N) PO:環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン(株)製
「ゼオネックス E48R」) (着色剤) R:ペリノン系赤色染料(有本化学工業(株)製 Pl
ast Red No.8370、尚、かかる染料は製
造する際、製造工程において塩酸を加えて洗浄したもの
である。) G:アンスラキノン系緑色染料(有本化学工業(株)製
Oil GreenNo.5602、尚、かかる染料
は製造する際、製造工程において塩酸を加えて洗浄した
ものである。) Y:キノフタロン系黄色染料(有本化学工業(株)製
Plast Yellow No.8010、尚、かか
る染料は製造する際、製造工程において塩酸を加えて洗
浄したものである。)
【0119】(1)界面密着強度の測定 図5に示す板状成形品から、長さ100mm、幅50m
mの図6に示す板状体を2箇所から切り出し、B層側を
上面として島津製作所(株)製サーボパルサーEHF−
FDT−10LAを使用し、それぞれのサンプルについ
て23℃、3Hz、応力180kgf/cm2(17.
6MPa)にて曲げ応力による疲労試験を行い(荷重と
して294Nを負荷し、発生する曲げモーメントは2.
94N・mの条件で)、破断回数を測定することにより
界面の密着性に起因する差異を確認した。かかる値はn
=3の平均値とした。またかかる試験は図6に示される
きり孔部をボルトで装置治具に固定し、かかる両端を同
時に上下作動させることにより試験片に曲げ応力を負荷
するものである。
【0120】(2)キャビティ表面の最高温度、および
温度履歴の測定 キャビティ表面の温度はかかる金型コア表面部分に接触
した熱電対を用いて記録計に記録し、最高温度(℃)、
およびガラス転移温度以上の時間(秒)を測定した。
【0121】(3)外観 30ショット成形を行い、かかる成形品の外観上の不良
を目視で、および成形品を直交した偏光板の間に挟み込
みかかる模様からその歪みの状態を確認した。
【0122】◎ … 30個の成形品中目視での不良
は認められず、歪みも小さい ○ … 30個の成形品中目視での不良は認められな
いが、歪みはやや大きめの歪みが認められる × … 外観の不良が認められる(立体的パターン周
囲のボイドなど)
【0123】[実施例1]前述のポリカーボネート樹脂
(PC)を120℃で5時間、及びアクリル樹脂(PM
MA)を各々95℃で5時間、それぞれ熱風乾燥機で乾
燥した後、600mm/secの射出速度を達成可能な
シリンダ内径50mmφの超高速射出装置を2基備えた
多色成形可能な超高速射出成形機(日精樹脂工業(株)
製FN−8000−36ATN)を使用し、そのうちの
1基のシリンダーを使用して、図1に示すA層を形成す
る成形品をシリンダー温度300℃、金型温度100
℃、射出速度150mm/secで成形した。尚、かか
るA層を形成する成形品は、ゲート側の厚みが4.2m
m、流動末端側の厚みが0.8mmであり、かかる両端
を結ぶ直線よりは上に凸の曲面を描く形状となってい
る。一方その中央部には立体的パターンとして文字が付
され、文字部は3.5mmの一定厚みを有する形状とな
っている。
【0124】かかる成形を行った後、同成形機のコア側
のプレートを入れ替えると共に、前記のA層を形成する
成形体を金型内(固定側)にインサートを行い、もう一
方のシリンダーを使用して、シリンダー温度300℃、
射出速度300mm/secでB層を形成する樹脂を射
出して成形体の成形を行い、図2および図5に示す一体
成形品を得た。
【0125】かかるB層の成形においては、金型を閉じ
た後真空ポンプ(日本真空技術(株)製ULVAC P
MB006CMメカニカルブースターおよびEC803
ロータリーポンプを組合わせたもの)を使用し、10秒
間排気を行った後成形した。尚、排気は金型キャビティ
周囲に設けられたガス抜き用のクリアランスを通して行
った。
【0126】また成形においては、コア表面の板状成形
品本体に対応する部分に断熱層を設けたものを使用し
た。かかる断熱層は、テイジンアモコエンジニアリング
プラスチックス(株)製、トーロン4203Lのポスト
キュア済みの板状成形品を1mm厚に切削および鏡面研
磨し、かかる一方の面に厚さ100μmのニッケル薄膜
を、シアノアクリレート系接着剤を使用して金属層を形
成し、均一な面とした。尚、接着層の厚みは5μm以下
である。かかる金属層をコア表面側となるようコア部分
に設置した。
【0127】一方B層成形時は、主金型の温度を、金型
温調機の温度を70℃とし、主金型の胴体部分の熱電対
型温度計がほぼ同じ温度になっていることを確認して実
施した。また板状成形品本体ゲート側の端より20mm
および、流動末端である端部から25mmの部分に直径
1mmφの熱電対型温度計をその先端が表面のニッケル
層に接するように設置し、金型表面部分の温度を0.2
秒ごとに測定した。
【0128】また金型は同一の主金型を使用して、プレ
ートの入れ替えのみを行う方式とした(図3および図4
では、片方の流路は省略)。A層およびB層の成形とも
にホットランナー(モールドマスターズ社製外部加熱方
式)方式で、温度もともに310℃とした。かかるホッ
トランナーのゲート径は3.5mmφであった。
【0129】[実施例2〜6、比較例1、2]表2に示
す材料、および条件とした以外は、すべて実施例1と同
様に成形を行い、板状成形品を得た。尚、断熱層のない
ものについては、コア表面部にかかる層のないものに入
れ替え、また熱電対は表面から0.3mmの部分に接触
するように設置した。
【0130】
【表2】
【0131】表2から明らかなように、例えば、実施例
1と比較例1、実施例2と比較例2との比較から、B層
の射出速度が本発明の条件を満足しない場合には、外観
上の不良が認められると共に、成形品全体の疲労強度も
低下していることが分かる。また断熱層などによりB層
成形時のコア表面温度がB樹脂のTg以上の条件を満足
している場合には、より良好な疲労強度を示しており、
層間の密着性が高まっていることが分かる。
【0132】
【発明の効果】本発明を用いると、自由度の高いグラデ
ーション色彩を有する成形品が容易に得られると共に、
かかる場合に発生しやすい外観や密着性などの問題を解
決することが可能となる。更に層間の界面に立体的パタ
ーンを施すなどのより複雑な層構造の場合であっても、
外観上の不良がなく密着性が良好な成形品が得られるこ
とから、その奏する工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において使用したA層を形成する成形品
形状の概要を模式的に表す斜視図である。
【図2】実施例において使用した板状成形品の概要を模
式的に表す側面図である。
【図3】A層を成形した際の成形金型の模式図を示す側
面図である。尚、固定側金型のホットランナー流路につ
いてはB層用のものを省略している。
【図4】A層の成形品をインサートし、B層を成形した
際の成形金型の模式図を示す側面図である。尚、固定側
金型のホットランナー流路についてはA層用のものを省
略している。
【図5】実施例において使用した板状成形品の概要を模
式的に表す正面図である。成形品の上側から下側に向か
って色合いが連続的に深みを増していく一方、文字も連
続的に浮き上がった微妙な意匠性が得られている。
【図6】疲労試験で使用された試験片の正面図である
(尚、厚みはそのままで切り出しされている)。
【符号の説明】
1 板状成形品本体 2 板状成形品A層 3 板状成形品B層 4 板状成形品A層における立体的パターン(かかる
部分の厚みは3.5mmでほぼ一定となっている) 5 板状成形品本体の上下方向の長さ(200mm) 6 板状成形品本体の厚み(5mm) 7 板状成形品本体B層のゲート部における厚み
(0.8mm) 8 板状成形品本体A層の成形品下端部(流動末端
部)における厚み(0.8mm) 9 立体的パターンの長さ(75mm) 10 立体的パターン部の厚み(3.5mm) 11 板状成形品のA層およびB層の厚みが共に2.5
mmになる部分の位置(成形品下端から50mm) 12 上記11におけるA層の厚み(2.5mm) 13 固定側金型 14 A層用のコア側金型 15 A層用ホットランナー先端バルブ 16 A層用ホットランナー流路 17 A層用シリンダー 18 A層用樹脂の流れ 19 可動側金型 20 B層用ホットランナー先端バルブ 21 B層用ホットランナー流路 22 B層用シリンダー 23 B層用樹脂の流れ 24 ゲート側熱電対型温度計 25 流動末端側熱電対型温度計 26 断熱層(ない場合もあり) 27 B層用のコア側金型 28 疲労試験片−1の切り出し位置(文字Tの縦線を
中心とし、文字Tの横線の中心がきり孔の中心と重なる
ように切り出している) 29 疲労試験片−2の切り出し位置(疲労試験片の辺
部が板状成形体の下端部、側端部のそれぞれと重なるよ
うに切り出している) 30 疲労試験片(疲労試験片−1、疲労試験片−2と
もに共通) 31 疲労試験片の長さ(100mm) 32 疲労試験片の幅(50mm) 33 疲労試験片きり孔間の距離(80mm) 34 疲労試験片きり孔間の距離(25mm) 35 疲労試験片における非拘束部位間の長さ(60m
m、それ以外の両端は装置治具により固定されている) 36 疲労試験片における非拘束部位間の幅(40m
m) 37 曲線部(半径40mmの円弧、4個所) 38 きり孔(9mmφ、4個所)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 肉厚を単調変化させた層を設けることに
    よりグラデーション色彩を有する多層構造成形品を、熱
    可塑性樹脂の多色成形またはインサート成形により得る
    方法であって、前工程で成形され、金型キャビティ内に
    設置された樹脂成形品からなる層(以下“A層”とす
    る)の表面、および該表面と対向する面との間の空間内
    に、樹脂(以下“樹脂B”とする)を300mm/se
    c以上の射出速度で充填することにより、A層と隣接す
    る層(以下“B層”とする)を形成することを特徴とす
    るグラデーション色彩を有する成形品の製造方法。
  2. 【請求項2】 樹脂Bの有する最も高いガラス転移温度
    をTg(℃)としたとき、上記該表面と対向する面が金
    型キャビティ表面である場合に、主金型の温度をTg
    (℃)より低い温度で保持すると共に、かかる樹脂Bが
    かかるキャビティ表面と接している際のかかるキャビテ
    ィ表面の最高温度を[Tg+1](℃)〜[Tg+5
    0](℃)とする請求項1に記載のグラデーション色彩
    を有する成形品の製造方法。
  3. 【請求項3】 更に、主金型温度をA層のうち金型キャ
    ビティ表面と接する面の樹脂における最も高いガラス転
    移温度よりも低い温度とする請求項1または2のいずれ
    かに記載のグラデーション色彩を有する成形品の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 成形品がA層におけるB層側表面の少な
    くとも一部に、立体的パターンを施したものである請求
    項1〜3のいずれか1項に記載のグラデーション色彩を
    有する成形品の製造方法。
  5. 【請求項5】 成形品がゲート部から流動末端部までの
    最大距離が200mm以上のものである請求項1〜4の
    いずれか1項に記載のグラデーション色彩を有する成形
    品の製造方法。
  6. 【請求項6】 少なくとも1層がポリカーボネート樹脂
    である請求項1〜5のいずれか1項に記載のグラデーシ
    ョン色彩を有する成形品の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製
    造方法から得られた成形品。
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