JP3828496B2 - 高意匠性シート状積層構造体およびその利用 - Google Patents

高意匠性シート状積層構造体およびその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、審美性および意匠性に優れたシート状の熱可塑性樹脂よりなる積層構造体に関する。さらに詳しくは外側から観察したとき、シート表面に沿って連続した色調の変化が認められるシート状積層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、製品の高付加価値化を図るための製品設計が要望されている。中でも製品の高意匠化の要求が最も高い。連続した色調の変化(グラデーション色彩)による高意匠化もその中の1つである。かかる意匠化の方法の1つとしてはグラデーション模様の印刷等を施したフィルムやシートなどを金型内に予め装着して射出成形するインサート成形法などの成形法が用いられている。しかしながらこれら成形法はシート作成、印刷、トリミングなどの多数の工程を必要とする他、意匠性についても十分に魅力的とは言い難い。
【0003】
一方、特許文献1や特許文献2には外層と内層との肉厚を変化させ、外層は着色剤を含有する樹脂で構成された、上下方向にグラデーション色彩を施した容器およびその成形方法が提案されている。しかしながら、前記公報記載の方法によって得られた成形品(容器)は、その構成上グラデーション色彩の変化の方向が上下方向であって、上部もしくは下部が濃い着色をした比較的単純な色調の容器に限られ、さらに層の界面部分に立体的なパターン(文字や図形など)を施したものは、困難であった。かくして高い意匠性を有し、連続した色調の変化が一方向のみならず多岐の方向を有することができ、また層の界面部分に明瞭な立体的パターンを有することができ、比較的肉厚の平板状の積層構造体は従来提供されてはいなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭53−83884号公報
【特許文献2】
特開昭56−123235号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の第1の目的は、審美性および意匠性に優れた、連続した色調の変化を有する、熱可塑性樹脂より形成された複数の層より構成されたシート状積層構造体を提供することにある。本発明の第2の目的は、連続した色調の変化がシート面に沿って一方向のみならず、多岐の方向であることができ、また数種の色を組合せることが可能なシート状積層構造体を提供することにある。本発明の第3の目的は、連続した色調の変化を有するシート面状において、明瞭な文字や図形の如き立体的パターンを有するシート状積層構造体を提供することにある。本発明の他の目的は、充分な形態保持性を有する厚みを有し、透明もしくは半透明な、連続した色調の変化を有するシート状積層構造体を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、装飾ガラス窓、インテリア部材、ショーケース用ガラス窓、パーティション、扉、車両用窓ガラス、車両外板、ランプカバー、オーナメント、車両用インストルメンタルパネルやセンターパネル、車両用内外装のモールおよびガーニッシュ、表示装置、表示板、導光板、標識板、防風板、屋根材、家具、コンピューターおよび携帯端末などの各種OA機器におけるハウジングの部分、携帯電話および携帯音響機器などの各種電気機器におけるハウジングの部材、パチンコやスロットマシーン等の電飾用パネル、並びに雑貨類などの材料として有利に利用することができる実用的強度を有するシート状積層構造体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、(1)熱可塑性樹脂より形成された層の少なくとも2種の層より構成されたシート状積層構造体であり、(2)該積層構造体は、1つの層が染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成され且つシート面の少なくとも一方向に対して単調な厚みの変化を有し、他の層が実質的に無色の透明な樹脂または前記層とは異なる色彩を有する染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成され、(3)該積層構造体全体が透明性を有し、(4)該積層構造体は、透明の樹脂より形成された層(B)の外側の面から目視観察したときシート面に沿って連続した色調の変化が認められ、(5)該積層構造体は、厚みが変化する2種の層が接触する界面において立体的パターンによる文字もしくは図形が施され、(6)該積層構造体は射出成形により形成されかつ(7)該積層構造体は平均厚みが2〜20mmである平板状の形状を有することを特徴とする高意匠性シート状積層構造体によって達成されることが見出された。以下本発明の積層構造体についてさらに詳細に説明する。
【0008】
本発明の積層構造体は、それを構成する層の数、各々の層の形状、各々の層の着色の有無あるいは着色の色彩などにより多くの組合せが存在し、その上積層構造体の目視の方向および光源の方向によって審美性や意匠性が変化する。これらのことが本発明の積層構造体の特徴と利点を発現している源であるが、本発明の積層構造体の理解のために図面を用いて以下説明する。
【0009】
図1は、本発明のシート状積層構造体のシート面における直角断面の形状を示す模式図である。図1の構造体は、説明のために基本的で且つシンプルな形状の構造体の一例を示すものである。図1における積層構造体1は、2つの層(2および3)より構成され、2つの層は各々透明な樹脂により形成されている例である。また図1は、2つの層の厚みの変化が直線的である積層構造体である。また図1の場合、文字または図形(4)が施された積層構造体を有している。かかる図1の積層構造体の場合、下記の態様1〜4が含まれる。
【0010】
態様1
層2(層(A))は染料または顔料(以下これらを“着色剤”と略称することがある)を含有する樹脂で形成され、着色剤は樹脂中にある一定濃度でほぼ均一に含有されている。一方層3(層(B))は、着色剤を含まない樹脂で形成されている。この態様1の積層構造体の場合、矢印の方向から観察すると、層2の厚みに依存して色調の変化が認められる。すなわち層2の最も厚い端部(図1の右側)から最も薄い端部(図1の左側)にかけて、連続的(直線的)に色調が次第に濃から淡へ変化する。文字または図形(以下これらを“図柄”と略称することがある)を示す4は、局所的に層2の厚みが増加しているので、図柄は相対的に濃い色調で認識される。
【0011】
態様2
態様1に対して、層2および層3を形成する樹脂が逆に構成される。すなわち層2は着色剤を含有しない樹脂で形成され、層3は着色剤を含有する樹脂で形成されている。この態様2の積層構造体の場合、色調の変化が態様1とほぼ同じであるが、濃淡の方向が逆になる。しかし、図柄は局所的に着色剤を含有しない層2の厚みが増加しているので、相対的に淡い色調(白抜きの状態)で認識されることになる。
【0012】
態様3
層2および層3を形成する樹脂中には、それぞれ着色剤が含有されているが、層2と層3とは異なる色彩の着色剤が含有されている。例えば層2と層3に含有される着色剤の色彩の種類と組合せによって色調のみならず色彩の変化が左右に連続的に認められる。その一例を下記表1に示す。
【0013】
【表1】
Figure 0003828496
【0014】
上記表1における各層の着色剤の色は、赤色、黄色および青色の3色の組合せであるが、この例に何ら制限されない。また層2と層3とは組合せが逆であってもよい。この態様3における好ましい態様の1つは、1つの層が蛍光染料を含有する透明な樹脂により形成され且つシート面の少なくとも一方向に対して単調な厚みの変化を有し、他の層が前記層とは異なる色彩を有する染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成されているシート状積層構造体である。
【0015】
態様4
層2は、光拡散性粒子(光拡散剤)を含有する樹脂で形成され、層3は着色剤を含有する樹脂で形成されている。この態様4の積層構造体は全体として半透明である。その透明性は、層2の薄い部分から厚い部分(左側から右側)へ連続的に低下する。この態様4の積層構造体は、光拡散性粒子の作用により全体が幻想的な(スケルトン調)イメージを感じさせるものとなる。着色剤の種類によってもそのイメージ感は幅広く変化する。
【0016】
さらに後述するが前記態様1(蛍光着色剤の場合)および態様4において、光源の位置および着色剤の種類(特に蛍光着色剤)や光拡散性粒子などの作用によっても図柄の立体的イメージが一層顕著なものとなったり、幻想的なイメージを感じさせるものとなる。この場合、光源の位置は目視の方向に対してバックライトであるよりも、積層構造体の側面(図1における左側または右側)にあるエッジライトの方が顕著な立体的イメージや幻想的イメージを達成する。つまり厚みの変化する方向に対して平行に光を入射する場合が本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【0017】
本発明の積層構造体は、複数の層から構成され、少なくとも1つの層が染料、顔料または光拡散剤を含有していること且つ構造体のシート面に沿って少なくとも一方向に対して単調な厚みの変化を有していることによって、連続した色調の変化が発現され、形成されている。以下の説明で“着色層”という言葉はこの染料、顔料または光拡散剤を1種以上含有している層を意味する。
【0018】
この着色層は、単調な厚みの変化を有していることが必要であり、単調な厚みの変化とは、積層構造体を目視観察した場合、シート面に沿って連続した色調の変化が認知されるものをいう。従って厚みの変化は階段的でなく、なだらかなあるいは直線的な厚みの変化であることが望ましい。ただし文字や図形のような図柄の部分は局所的に、細かい凹凸が形成されることになるが、この図柄を形成させるための表面凹凸は、単調な厚みの変化の範疇から除外される。
【0019】
次に本発明の積層構造体における着色層の単調な厚みの変化の形態について説明する。説明を簡単にするために、積層構造体がある一定の厚みを有する矩形(すべての角が直角である四辺形)である場合を例にとって説明する。矩形における4つの角を順次A,B,CおよびDとする。かくして辺A−Bと辺C−Dは互いに平行であり、また辺B−Cと辺D−Aも互いに平行である。着色層の厚みの変化の例を下記に列挙する。
【0020】
(i)図1に示したように、1つの辺から相対する他の辺に向かって(例えば辺A−Bから辺C−Dに向かって)、単調な厚みの変化を有する。
(ii)角Aから角Cに向かって対角線方向に単調な厚みの変化を有する。
(iii)矩形の中心部(2つの対角線の交叉する部分)から辺A−B、辺B−C、辺C−Dおよび辺D−Aに単調な厚みの変化を有する(四角錐状または逆四角錐状)。
(iv)矩形の中心線(例えば辺A−Bと辺C−Dに平行する中心線部)から相対する辺(例えば辺A−Bおよび辺C−D)に向かって単調な厚みの変化を有する(V字形または逆V字形)。
(v)矩形のある一つの対角線を中心線とし、その中心線から相対する2つの角に向かって(例えば角Aと角Cを結ぶ中心線から角Bおよび角Dに向かって)、単調な厚みの変化を有する。
【0021】
前記した(i)〜(v)の例は、説明のためであって、これらの改変された形態であってもよい。例えば中心部または中心線は正確であることは必ずしも必要がなく、ずれていても何ら差支えがない。さらに前記(i)〜(v)の適当な組合せであってもよく、部分的に厚みの変化が存在しない部分が含まれていてもよい。本発明の積層構造体はシート状であればよく、前記説明の矩形状に限定されるわけでもない。
【0022】
本発明の積層構造体は、平板状の形態であり、均一な厚さであることは必ずしも必要ではないが、ほぼ同じ厚さであることが実用的であり好ましい。厚さは2〜20mm、好ましくは3〜15mmの範囲が適当である。また積層構造体は、平板状の形態であって、表面の直角断面において、両表面がほぼ平行した直線を形成する板状体であるか、湾曲した平板あるいは曲率半径が5cm以上、好ましくは15cm以上、特に好ましくは30cm以上の曲面を有する平板であることができる。さらに厚み変化が多少存在する平板であってもよい。さらに表面は平滑な場合の他、いずれかの表面に微小な凹凸が設けられ、光を拡散する効果を付与したものであってもよい。積層構造体の層の数は2〜5、好ましくは2または3であるが、2であるのが特に好ましい。
【0023】
積層構造体は2層で構成される場合、各層の厚みの変化の比率としては、積層構造体全体の厚みを1としたとき、各層の厚みの比が0.02〜0.98、好ましくは0.1〜0.9の範囲が有利である。本発明の積層構造体は、透明の樹脂で各層を形成し、全体が透明であることから、連続的な色調の変化による美観および意匠を一層発現させるために効果的である。その上文字や図形による図柄が施され、その図柄が連続した色調の変化した面の中から、幻想的または立体的に観察される。この図柄は見る方向や光源の位置などによって、立体感や鮮明性を変化させたものとすることが可能となる。殊に1つの層中に蛍光着色剤、または光拡散剤が配合されている場合、光源が積層構造体の側面(シート面の端部直角面)に位置するときには、その立体感は一層顕著なものとなる。
【0024】
特に態様1〜4において、蛍光着色剤や光拡散剤(特に蛍光染料)が配合されている場合、本発明のシート状積層構造体は、光源位置を目視方向に対してバックライトにすることで、図柄が平面的になり、一方光源位置を積層構造体の側面にすることにより図柄が立体的または幻想的になる。このことを利用して例えば2つの光源(バックライトおよびエッジライト)を切り替えることで、図柄を平面的乃至立体的、または平面的乃至幻想的に交互に表示することができる。
【0025】
本発明の積層構造体は、積層構造体全体が透明性を有していることで意匠性に優れるものとなる。積層構造体全体の全光線透過率は、10〜90%、好ましくは20〜70%の範囲であるのが望ましく、またヘーズは0.1〜15%、好ましくは0.15〜10%の範囲であるのが有利である。次に本発明の積層構造体は形成する熱可塑性樹脂について説明する。前述したように本発明の積層構造体は着色層が少なくとも透明の樹脂で形成されている限り、他の層を形成する樹脂の種類は任意に選択される。しかし全ての層は比較的透明な樹脂で形成されていることが望ましい。また積層される複数の層は同じ樹脂であってもよく異なる樹脂であってもよい。しかし、同じ樹脂により形成されていることが加工、物性および用途の面で好ましい。
【0026】
ここで透明の樹脂としては、JIS K7105に準拠して測定された表面の平滑な厚み2mmの板状成形品における全光線透過率が10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上の樹脂を挙げることができる。染料または顔料を含有する透明な樹脂においては、かかる染料または顔料の組成割合としては、熱可塑性樹脂100重量部あたり、好ましくは0.001〜2重量部、より好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部である。
【0027】
高い意匠性を発現する蛍光着色剤を含有する透明な樹脂の場合も同様に、その組成割合としては、熱可塑性樹脂100重量部あたり、好ましくは0.001〜2重量部、より好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部である。また光拡散剤を含有する透明な樹脂としては、JIS K7105に準拠して測定された表面の平滑な厚み2mmの板状成形品における全光線透過率が10〜93%およびヘーズが20〜90%であるものが好ましい。より好ましい全光線透過率は30〜90%、特に50〜90%であり、より好ましいヘーズは30〜90%である。
【0028】
本発明では層が透明性を有する必要があり、したがって層を形成する樹脂は透明の熱可塑性樹脂である。透明の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、さらにスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0029】
これらの中でも透明性に優れるポリメチルメタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂などを好ましく挙げることができる。本発明のアルキルメタクリレート樹脂としては、メチルメタクリレートを主な構成単位として含むものが挙げられる。通常アルキルアクリレートとの共重合体が使用されるが、他の共重合体成分としては耐熱性を向上させるためアクリルイミド構成単位やメチルシクロヘキシルメタクリレート構成単位などが共重合されたものであってもよい。さらにα−メチルスチレンが共重合されたものを使用することもできる。
【0030】
本発明の環状ポリオレフィン樹脂としては、三井化学(株)製のAPO樹脂、JSR(株)製のアートン、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、および水添−α−オレフィン−ジシクロペンタジエン共重合体などを挙げることができる。特に少なくとも1層がポリカーボネート樹脂であることが、積層構造体の機械的強度、耐熱性などの点から好ましく挙げられる。最も好ましいのは全ての層がポリカーボネート樹脂で構成された積層構造体である。
【0031】
ポリカーボネート樹脂について以下具体的に説明する。ポリカーボネート樹脂とは、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法、溶融重合法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
【0032】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステルなどがあげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。最も好ましいのはビスフェノールAの単独重合体である。
【0034】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化を防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0035】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノールなどのトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライドなどが挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0036】
かかる分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。なお、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0037】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドなどの第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0038】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0039】
【化1】
Figure 0003828496
【0040】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
【0041】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0042】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0043】
【化2】
Figure 0003828496
【0044】
【化3】
Figure 0003828496
【0045】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
【0046】
かかる一般式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。
【0047】
また、一般式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0048】
末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましい。より好ましくは全末端に対して末端停止剤が80モル%以上導入されること、すなわち二価フェノールに由来する末端の水酸基(OH基)が20モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは全末端に対して末端停止剤が90モル%以上導入されること、すなわちOH基が10モル%以下の場合である。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0049】
溶融重合法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点などにより異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0050】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0051】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0052】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることが好ましい。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0053】
さらに溶融重合法においては、失活剤を用いて重合後残存する触媒の活性を中和しておくことが望ましい。かかる失活剤としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル−スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどの化合物を挙げることができるが、これらに限定されず、またこれらの化合物は2種以上併用することもできる。
【0054】
中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。かかる触媒の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
【0055】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、分子量が10,000未満であると高温特性などが低下し、40,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、粘度平均分子量で表して10,000〜40,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものが特に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0056】
特に粘度平均分子量が40,000を超えるポリカーボネート樹脂との混合物は、ブロー成形などに重要なドローダウン性能、難燃性を向上させるドリップ防止性能、および射出成形時のジェティングなどを防止する溶融特性改質性能に優れた効果を発揮するため、かかる目的に応じて適宜混合することができる。より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上のポリカーボネート樹脂との混合物であり、さらに好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂との混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの方法により2ピーク以上の分子量分布を有するものが好ましく使用できる。
【0057】
本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求める。
【0058】
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83c=0.7
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂には離型剤を配合することができ、こうすることは離型時の歪みを抑制できる点で好ましい結果を与える。離型剤としては飽和脂肪酸エステルが一般的であり、例えばステアリン酸モノグリセライドなどのモノグリセライド類、ステアリン酸トリグリセライドなどのトリグリセライド類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。離型剤は熱可塑性樹脂100重量部当り0.01〜1重量部用いられる。
【0060】
また、本発明の熱可塑性樹脂には必要に応じてリン系熱安定剤を加えることができる。リン系熱安定剤としては、ホスファイト化合物およびホスフェート化合物が好ましく使用される。ホスファイト化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのホスファイト化合物が挙げられる。これらのうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0061】
一方、熱安定剤として使用されるホスフェート化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられ、なかでもトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
【0062】
さらにその他のリン系熱安定剤としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトなどのホスホナイト化合物も好ましく使用することができる。前記リン系熱安定剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用してもよい。リン系熱安定剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部の範囲で使用するのが適当である。
【0063】
熱可塑性樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。
【0064】
耐候性の向上および有害な紫外線をカットする目的で、熱可塑性樹脂にさらに紫外線吸収剤や光安定剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。さらに例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物も好ましく例示される。またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。これら紫外線吸収剤、光安定剤の好ましい添加量の範囲は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部である。
【0065】
また、本発明の透明性を有する熱可塑性樹脂には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。特にポリカーボネート樹脂に対して有用である。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Violet36[CA.No68210;商標名バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名SolventBlue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テラゾールブルーRLS」]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社のマクロレックスバイオレットやテラゾールブルーRLS等があげられ、特に、マクロレックスバイオレットやテラゾールブルーRLSが好ましい。
【0066】
熱可塑性樹脂には、透明性を有する範囲でさらに慣用の他の添加剤、例えば補強剤(タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、導電性カーボンブラック、各種ウイスカーなど)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル系、金属塩系、赤リン、シリコン系、フッ素系、金属水和物系など)、耐熱剤、、蛍光増白剤、帯電防止剤、流動改質剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤を配合することができる。
【0067】
これらの中でも、特に樹脂との屈折率差を低下させることにより透明性を維持できるガラス系充填剤が好適であり、かかるガラス系充填剤は広く知られたものである。かかるガラス系充填剤はその樹脂との屈折率差が0.015以下、好ましくは0.010以下であるものが好ましい。かかる充填剤により高度な透明性と共に、高剛性および高強度を有するシート状積層構造体を得ることが可能となる。
【0068】
さらに本発明における熱可塑性樹脂は、製品または部品として形成済みの樹脂、いわゆるリサイクル材を使用することも可能である。かかるリサイクル材には着色のための塗装、耐摩耗性、帯電防止性、熱線吸収などの各種機能性コーティング、蒸着、スパッタリング、メッキなどによる金属膜などの積層膜が形成されている場合も多いが、これらは積層膜をつけたままでの使用も、積層膜の一部または全部を除去しての使用もいずれも可能である。
【0069】
例えばポリカーボネート樹脂を基板とする光情報記録媒体(CD、DVD、MDなど)をリサイクル材として使用する場合、これらは粉砕処理などをしてそのまま使用すること、およびかかる粉砕処理したものと、他の熱可塑性樹脂材料および/または他の熱可塑性樹脂材料のリサイクル材と混合することにより使用することができる。
【0070】
一方該光情報記録媒体から情報記録層、反射層や保護コート層を樹脂基板から選択的に除去し、樹脂自体を回収して使用することも可能であり、かかる除去方法として従来提案された方法を使用することができる。
【0071】
次に本発明の積層構造体を構成する少なくとも1つの層に配合される着色剤について説明する。着色剤は染料、顔料、あるいは光拡散剤を含む。これらはそれ自体樹脂の着色剤として知られたものが使用され、樹脂の種類、樹脂への分散性、加工温度などから選択され、所望の色彩を決定することができる。着色剤は二種あるいはそれ以上組合せて使用することもできる。
【0072】
着色を施すための剤としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等の有機系色剤やカーボンブラックが挙げられ、これらの中でも透明性の有機系色剤が好ましい。さらに好ましくは、アンスラキノン系染料、ペリノン系染料、キノリン系染料、ペリレン系染料、クマリン系染料およびチオインジゴ系染料をあげることができる。
【0073】
染料の具体例としては、CI Solvent Red 52、CI Solvent Red 149、CI Solvent Red 150、CI Solvent Red 191、CI Solvent Red 151、CISolvent Red 135、CI Solvent Red 168、CI Disperse Red 22、CI Solvent Blue 94、CI Solvent Blue 97、CI Solvent Violet 13、CI Solvent Violet 14、CI Disperse Violet 28、CI Solvent Green 3、CI Solvent Green 28として知られるアンスラキノン系染料、キノリン系染料としては、CI Solvent Yellow 33、CI Solvent Yellow 157、CI Disperse Yellow 54、CI Disperse Yellow 160などを挙げることができる。ペリノン系染料としては、CI Solvent Red 135、CI Solvent Red 179、CI Solvent Orange 60などを挙げることができる。これらは1種または2種以上を併用でき、目的に応じた着色を行うことが可能である蛍光着色剤を使用することもできその例としては、蛍光染料、並びにフタロシオニン錯体やナフタロシアニン錯体などの蛍光有機顔料を使用することができる。
【0074】
蛍光染料としては各種のものが使用できる。例えば、ペリレン系蛍光染料、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。
【0075】
かかる中でも蛍光持続性(耐候性)の観点からペリレン系蛍光染料、クマリン系蛍光染料、およびベンゾピラン系蛍光染料を蛍光染料全量100重量%中、5重量%以上含有することが好ましい。
【0076】
ここでクマリン系染料としては、各種のものが使用可能であるが、その具体例としては例えば、バイエル社製MACROLEX Fluorescent Yellow 10GN(CI Solvent Yelllow 160:1)、およびMACROLEX Fluorescent Red Gなどを挙げることができる。
【0077】
ベンゾピラン系蛍光染料としては、各種のものが使用可能であるが、その具体例としては例えば、BASF社製FluorolシリーズとしてRed BKおよびRed GKなどを挙げることができる。ペリレン系蛍光染料としては、各種のものが使用可能であるが、その具体例としては例えば、CI Vat Red 15、CI Vat Orange 7、CI Solvent Green 5およびBASF社製LUMOGENシリーズとして F Orange240、F Red300、F Yellow083、F Red339、F Violet570などを挙げることができる。
【0078】
上記の中でも、特にペリレン系蛍光染料を蛍光染料全量100重量%中5重量以上含有するものが好ましく使用できる。ペリレン系蛍光染料、クマリン系蛍光染料、およびベンゾピラン系蛍光染料以外の蛍光染料としては具体的には、例えば次のものを挙げることができる。
【0079】
アンスラキノン系染料としては、CI Vat Orange 9、CI Vat Orange 2、CI Vat Orange 4として知られるピランスロン類アンスラキノン系染料、CI Vat Blue 20、CI Vat Blue 19、CI Vat Blue 22、CI Vat Green 4、およびCI Vat Green 12として知られているジベンザンスロン類アンスラキノン系染料、CI Vat Violet 1、CI Vat Violet 9、CI Vat Violet 10、およびCI Vat Green 1として知られているイソジベンザンスロン類アンスラキノン系染料、CI Vat Orange 1、CI Vat Yellow 4として知られるジベンズピレンキノン類アンスラキノン系染料などを挙げることができる。またアンスラキノン系染料としては、CI Vat Blue 6、CI Vat Violet 13なども挙げることができる。
【0080】
チオインジゴ系染料としてはCI Vat Red 1、CI Vat Red 2、CI Vat Red 41、CI Vat Red 47、CI Vat Violet 2、CI Vat Violet 3などを挙げることができる。蛍光有機顔料としては、CI PIGMENT GREEN 7、CIPIGMENT BLUE 15:3などのフタロシアニン系有機顔料、およびナフタロシアニン系有機顔料などを挙げることができる。
【0081】
本発明で用いることができる光拡散剤としては、周知の無機系微粒子、高分子微粒子のいずれも使用することができる。光拡散剤の形状は特に限定されるものではなく、粒状、球状、板状、中空状、針状、紡錘状などの各種の形状を取ることが可能である。かかる光拡散剤の平均粒子径としては、0.01〜50μmのものが好ましく使用できる。より好ましくは0.1〜10μmの平均粒子径であり、さらに好ましくは0.1〜8μmの平均粒子径のものである。また粒子径の分布については狭いものが好ましく、より好ましくは平均粒子径±2μmである粒子が全体の70重量%以上の範囲である分布を有するものが挙げられる。
【0082】
光拡散剤は、マトリックス樹脂との屈折率差の絶対値が0.02〜0.2であることが好ましい。光拡散剤を使用する場合には光拡散性と光線透過率を高いレベルで両立することが求められるからである。透明性の点からより好ましくは、光拡散剤の屈折率がマトリックス樹脂の屈折率よりも低い場合である。
【0083】
無機系微粒子としては例えば以下のものを挙げることができる。すなわち、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マグネシア、マイカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、粉砕ガラス、ガラスミルドファイバー、ガラスビーズ、極薄ガラスフレーク、ガラスバルーン、アルミナバルーン、およびケイ酸カルシウムなどである。またこれらの粒子は、粒子の表面を粒子内部の組成とは異なる化合物で被覆するものであってもよい。
【0084】
本発明の高分子微粒子としては、非架橋性モノマーと架橋性モノマーを重合して得られる有機架橋粒子を挙げることができる。非架橋性モノマーとしてはアクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、オレフィン系モノマーなどを挙げることができる。これらは単独でも2種以上を混合して使用することもできる。さらにかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。他の有機架橋粒子としては、シリコーン系架橋粒子を挙げることができる。
【0085】
一方、ポリエーテルサルホン粒子等の耐熱ポリマーの粒子も本発明の高分子微粒子として挙げることができる。すなわち、マトリックス樹脂の加熱溶融状態であっても微粒子の形態が損なわれることがないものは架橋性モノマーを必要としない。さらに高分子微粒子としては、各種のエポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、およびフェノール樹脂粒子などの熱硬化性樹脂類も使用可能である。光拡散剤としてはより好ましくは有機架橋粒子を挙げることができる。かかる粒子は、粒子径や粒子形状の制御性が高くより高度な光拡散性の制御が可能である。さらに特にマトリックス樹脂がポリカーボネート樹脂などの場合には、高温での成形加工時における熱変色などが生じにくい利点を有する。
【0086】
かかる有機架橋粒子において使用されるアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート等を単独でまたは混合して使用することが可能である。この中でも特にメチルメタクリレートが特に好ましい。
【0087】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、エチルスチレン等のアルキルスチレン、ブロモ化スチレン等のハロゲン化スチレンを使用することができ、この中でも特にスチレンが好ましい。アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを使用することができる。またオレフィン系モノマーとしてはエチレン、各種ノルボルネン型化合物等を使用することができる。さらに他の共重合可能な他のモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、N−メチルマレイミド、無水マレイン酸等を例示でき、また結果としてN−メチルグルタルイミド等の単位を有することもできる。
【0088】
一方かかるビニル系非架橋性モノマーに対する架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0089】
アクリル系モノマー等からなる有機架橋粒子の製造方法としては、一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法においても、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法や、同様に連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μmの細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法なども可能である。
【0090】
シリコーン系架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものであり、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものと、メチルシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いものがあるが、本発明ではポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。かかるシリコーン系架橋粒子のケイ素原子に置換する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルカン基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の他、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、エーテル基等を使用することができる。
【0091】
かかるシリコーン系架橋粒子の製造法としては、3官能性のアルコキシシラン等を水中で加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を成長させながら3次元架橋した粒子を形成させる方法が一般的であり、かかる粒子径は例えば触媒のアルカリ量や攪拌工程等により制御可能である。一方、有機架橋粒子以外の高分子微粒子の製造方法としては、スプレードライ法、液中硬化法(凝固法)、相分離法(コアセルベーション法)、溶媒蒸発法、再沈殿法等の他、これらを行う際にノズル振動法等を組み合わせたものを挙げることができる。
【0092】
さらに高分子微粒子の形態としては、単相重合体の他、コア−シェル重合体の形態、また2種以上の成分が相互に絡み合った構造を有するIPN構造をとることも可能である。また無機微粒子のコアとし有機架橋粒子の成分をシェルとする、または有機架橋粒子をコアとしエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をシェルとする等の複合型粒子も使用することができる。
【0093】
上記の光拡散剤は各種の表面処理剤で被覆されているものであってもよい。特に無機微粒子においては表面処理剤で被覆されているものが、熱劣化などによる材料の変色などを抑制できるため好ましい。かかる表面処理剤としては、脂肪酸、樹脂酸、マレイン酸、ソルビン酸などの有機酸化合物、これらの有機酸と一価または多価アルコールとのエステル化合物、スルホン酸系の界面活性剤、有機チタネート系カップリング剤、有機アルミネート系カップリング剤、ホスフェート系カップリング剤、有機シラン系カップリング剤、Si−H基を含有するシラン化合物およびポリブタジエンやポリイソプレンなどのジエン系ポリマーなどを挙げることができる。
【0094】
二酸化チタン粒子は、製造方法、結晶構造および粒子径によって限定されるものではないが、塩素法により製造された酸化チタンであり、ルチル形の結晶構造をとるものがより好ましい。一般的に顔料用酸化チタン粒子の粒子径は、0.1〜0.4μmであるが、粒子径0.1μm未満のものでも構わない。これらの二酸化チタン粒子は一般的には、無機系表面処理剤(アルミナおよび/またはシリカなど)で表面処理されている。これらの二酸化チタン粒子はさらに有機系表面処理剤で処理されているものが好ましい。有機表面処理剤としては、アルキルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、アルキルハイドロジェンポリシロキサンなどのシロキサン類やアルキルアルコキシシラン、アミノ系シランカップリング剤等のオルガノシリコンが挙げられる。好ましい処理剤としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンやメチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等での表面処理が挙げられる。なお、表面処理剤中には、本発明の目的を阻害しない程度の量で安定剤や分散剤等が含まれていてもよい。また、表面処理の方法としては、二酸化チタン粒子と表面処理剤を水または有機溶剤中に分散させ湿式処理する方法あるいは、スーパーミキサー,ヘンシルミキサー等により乾式処理する方法あるいは、表面処理剤,二酸化チタン粒子、熱可塑性樹脂を同時にV型ブレンダーで混合する方法や、同時に押出機中に投入し押出する方法も有効である。
【0095】
本発明の積層構造体の成形方法は射出成形法である。かかる成形法では積層構造体全体を効率よく製造することが可能なためである。
【0096】
本発明の積層構造体の製造手順としては、1つの層を成形した後、該成形品を次工程の金型内にインサートした状態で次の層を成形し、2つの層を積層する方法を挙げることができる。金型内に2つの層をインサートした状態で成形を行えば3層構造を有する積層構造体を得ることができる。射出成形法の場合、複数の層を1つの成形機で連続して行う多色成形法、および各層が独立した成形機で成形されるインサート成形法が本発明の積層構造体を製造する方法として使用される。特に全ての層が射出成形法により得られた積層構造体が本発明においては好適である。
【0097】
さらにかかる成形法においては、他の要因を加えた各種の成形法を使用することができる。例えば超高速射出成形、射出圧縮成形、断熱金型成形、局所高温金型成形、インモールド成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形など適宜組合わせることも可能である。すなわちこれらの複数を組合わせたものであってもよい。
【0098】
超高速射出成形は、界面に図柄が施された積層構造体に好適な方法である。かかる場合樹脂の流動は極めて複雑になりやすく、樹脂の回り込み方などにより最終的に図柄部分に未充填部分を生じ易い。超高速射出成形の場合には、樹脂の溶融粘度を低下させ流動の均一化を達成し、樹脂の回り込みを単純化させることを可能とする。超高速射出成形の射出速度としては300mm/sec以上、好ましくは350mm/sec以上が挙げられる。
【0099】
また射出圧縮成形との組み合わせでは、界面部分に精密な図柄がある場合に好適である。また歪やウエルドの少ない成形品を達成可能である。さらに界面の密着性を向上させ積層構造体の強度や製品寿命などにも貢献する。同様な理由から断熱金型成形および局所高温金型成形(ハロゲンランプ照射、電磁誘導加熱、熱媒体の高速切り替え、および超音波金型など)も組合わせることが好適である。
【0100】
すなわち、本発明の界面に図柄がある積層構造体の製造では、超高速射出成形、射出圧縮成形、断熱金型成形、および局所高温金型成形を適宜組合わせて使用することが好ましい。さらに超高速射出成形と、射出圧縮成形または断熱金型成形や局所高温金型成形とを組合わせて使用することが好ましい。
【0101】
サンドイッチ成形を組み合わせた場合、1つの層または他の層のいずれかを2層構造とすることが可能となる。ガスアシスト成形を組み合わせた場合、1つの層、または他の層、あるいは1つの層および他の層をともに中空構造体とすることで、各層を軽量化することができるとともに、異なる意匠性や光学的機能を付与することも可能である。例えば、中空部にフォトクロミック性を有する化合物を充填し、光反応性を有する製品を作成することなどが挙げられる。
【0102】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。下記に示す方法で製造された成形品(構造積層体)に対し、以下の光源および配置により光をあて、積層構造体が発する意匠性の評価を行った。
【0103】
(光源および配置)
(i)バックライト方式:図2に示すように、積層構造体の背面側に蛍光灯を設置し、表面側から積層構造体の意匠性を評価した。
(ii)エッジライト方式:図3および図4に示すように、積層構造体端面(厚肉部端面または薄肉部端面)に直径2.6mm、長さ220mmの冷陰極管を設置し、表面側から積層構造体の意匠性を評価した。
(ii)−1.厚肉部端面:積層構造体のB層厚肉部側端面に冷陰極管を設置した場合
(ii)−2.薄肉部端面:積層構造体のB層薄肉部側端面に冷陰極管を設置した場合
【0104】
(1)意匠性▲1▼
積層構造体の表面側から積層構造体全体の意匠性を目視評価した。評価は積層構造体層(B)の厚肉部側から薄肉部側への色相およびその濃淡(グラデーション)について行った。
【0105】
(2)意匠性▲2▼
積層構造体の表面側から積層構造体の内部に表現された文字の意匠性を目視評価した。評価は以下の基準に基づいて行った。
【0106】
(2)−1.形状:
(i)平面的・・・積層構造体の内部に表現された文字が平面的に見える。
(ii)立体的・・・積層構造体の内部に表現された文字が立体的見える(すなわち文字に陰影が認められ、積層構造体内部にあたかも文字が浮かんでいるように見える)。
【0107】
(2)−2.装飾:
(i)強調・・・積層構造体の内部に表現された文字が強調されて見える。
(ii)色抜き・・積層構造体の内部に表現された文字が色抜きされて見える。
(iii)幻想的・・・積層構造体の内部に表現された文字が拡散された光の中でその輪郭がにじんだ状態となり幻想的に見える。
【0108】
実施例において用いる熱可塑性樹脂組成物を以下のように作成した。
【0109】
(I)<染料を含有する材料で層の一部が構成される場合>
[参考例1〜6]
表2記載の各成分を表2記載の組成割合(単位は重量部である)でドライブレンドした後、径30mmφのダルメージ2段のスクリューを装備したベント付き単軸押出機[ナカタニ機械(株)製:VSK−30]を用い、シリンダー温度およびダイス温度290℃、並びにベント吸引度3000Paの条件でストランドを押出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーでストランドカットを行いペレット化した。このペレットを熱風乾燥機により乾燥した後、以下実施例に示される成形を行った。但しサンプル記号「PMMA」については、上記溶融混練を行わず、原料をそのまま乾燥および成形に供した。
【0110】
【表2】
Figure 0003828496
【0111】
表2の原料名欄に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
【0112】
(熱可塑性樹脂)
PC:ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量18,500のポリカーボネート樹脂パウダー99.77重量部、SandstabP−EPQ(サンド(Sandoz)社製)0.03重量部、およびペンタエリスリトールテトラステアレート0.2重量部からなる混合物(これら安定剤離型剤、および場合により着色剤を均一に予備混合し溶融押出してペレットを得た)。なお、PCおよびPCからなる樹脂組成物については成形時の乾燥条件は120℃で5時間、シリンダー温度は300℃、金型温度は100℃とした。
PMMA:ポリメチルメタクリレート樹脂(旭化成工業(株)製 デルペット80N)。なお、PMMAおよびPMMAからなる樹脂組成物については成形時の乾燥条件は100℃で5時間、シリンダー温度は280℃、金型温度は80℃とした。
PO:環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン(株)製 ゼオネックス E48R)。なお、POおよびPOからなる樹脂組成物については成形時の乾燥条件は120℃で5時間、シリンダー温度は300℃、金型温度は100℃とした。
【0113】
(着色剤)
R:ペリノン系赤色染料(有本化学工業(株)製 Plast Red 8315)
Y:キノリン系黄色染料(有本化学工業(株)製 Plast Yellow8050)
G:アンスラキノン系緑色染料(有本化学工業(株)製 Oil Green5602)
B:アンスラキノン系青色染料(バイエル社製 MACROLEX BlueRR)
成形品は下記に示す方法により作成した。
【0114】
実施例1
前述のポリカーボネート樹脂(PC(R))およびポリカーボネート樹脂(PC)を120℃で5時間、各々熱風乾燥機で乾燥した後、シリンダー内径50mmφの射出装置を2基備えた多色成形可能な射出成形機(日精樹脂工業(株)製FN−8000−36ATN)を使用して成形を行った。2基のうちの1基のシリンダーを使用して、図5に示す層(A)を形成する成形品をシリンダー温度300℃、金型温度100℃、射出速度150mm/secで成形した。なお、かかる層(A)を形成する成形品は、ゲート側の厚みが4.2mm、流動末端側の厚みが0.8mmであり、かかる両端を結ぶ直線よりなる面(層(A)面)に上に凸の面を描く形状となっている。一方その中央部には立体的パターンとして文字(TCL)が付され、文字部は上記層(A)面に対して+1mm凸の厚みを有する形状となっている。
【0115】
かかる成形を行った後、同成形機のコア側のプレートを入れ替えて層(B)の成形を行った。層(B)の成形は前記の層(A)を形成する成形体を金型内(固定側)にインサートして行った。層(B)の成形は2基のうち残りの1基のシリンダーを使用して、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、射出速度300mm/secで層(B)を形成する樹脂を射出して行い、図6および図9に示す一体成形品(積層構造体)を得た。層(B)の成形においては、金型を閉じた後真空ポンプ(日本真空技術(株)製ULVAC PMB006CMメカニカルブースターおよびEC803ロータリーポンプを組合わせたもの)を使用し、10秒間排気を行った後成形した。なお、排気は金型キャビティ周囲に設けられたガス抜き用のクリアランスを通して行った。
【0116】
また金型は同一の主金型を使用して、プレートの入れ替えのみを行う方式とした(図7および図8では、片方の流路は省略)。層(A)および層(B)の成形ともにホットランナー(モールドマスターズ社製外部加熱方式)方式で、温度はともに310℃とした。かかるホットランナーのゲート径は3.5mmφであった。
【0117】
実施例2〜4
表3に示す材料とし、成形する材料に対応して上記乾燥条件、シリンダー温度、金型温度とした以外は、実施例1と同様に成形を行い、一体成形品(積層構造体)を得た。
【0118】
【表3】
Figure 0003828496
【0119】
表3から明らかなように、例えば、実施例1の場合、成形品層(B)厚肉部側から層(B)薄肉部側に向かって淡い赤色から濃い赤色にグラデーションを有する色彩とともに、成形品内部に表現された文字が成形品全体に対して平面的に強調された優れた意匠性が得られる。
(II)<蛍光染料を含有する材料で層の一部が構成されている場合>
【0120】
参考例1、2、および7〜10
表4記載の各成分を表4記載の組成割合でドライブレンドした後、径30mmφのダルメージ2段のスクリューを装備したベント付き単軸押出機[ナカタニ機械(株)製:VSK−30]を用い、シリンダー温度およびダイス温度290℃、並びにベント吸引度3000Paの条件でストランドを押出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーでストランドカットを行いペレット化した。このペレットを熱風乾燥機により乾燥した後、以下実施例に示される成形を行った。但しサンプル記号「PMMA」および「PO」については、上記溶融混練を行わず、原料をそのまま乾燥および成形に供した。
【0121】
【表4】
Figure 0003828496
【0122】
表4の原料名欄に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
【0123】
(着色剤(蛍光染料))
FR:ペリレン系蛍光赤色染料(BASF社製 LUMOGEN F Red300)
FY:ペリレン系蛍光赤色染料(BASF社製 LUMOGEN F Yellow083)
FO:ペリレン系蛍光赤色染料(BASF社製 LUMOGEN F Orange240)
成形品は下記に示す方法により作成した。
【0124】
実施例5〜7
表5に示す材料とし、成形する材料に対応して上記乾燥条件、シリンダー温度、金型温度とした以外は、実施例1と同様に成形を行い、一体成形品(積層構造体)を得た。
【0125】
【表5】
Figure 0003828496
【0126】
表5から明らかなように、例えば、実施例7の場合、成形品層(B)厚肉部側から層(B)薄肉部側に向かって淡い蛍光赤色から濃い蛍光赤色にグラデーションを有する色彩が得られる。さらに成形品の背面から光をあてると、成形品内部に表現された文字が成形品全体に対して平面的に強調された優れた意匠性が得られる。また、成形品の層(B)厚肉部側端面から光をあてると、成形品内部に表現された文字が発光し、陰影が付与される。それにより成形品全体に対して文字が立体的に強調された優れた意匠性が得られる。
【0127】
(III)<光拡散性を有する材料で層の一部が構成されている場合>
参考例3、10、および11〜13
表6記載の各成分を表6記載の組成割合でドライブレンドした後、径30mmφのダルメージ2段のスクリューを装備したベント付き単軸押出機[ナカタニ機械(株)製:VSK−30]を用い、シリンダー温度およびダイス温度290℃、並びにベント吸引度3000Paの条件でストランドを押出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーでストランドカットを行いペレット化した。このペレットを熱風乾燥機により乾燥した後、以下実施例に示される成形を行った。
【0128】
【表6】
Figure 0003828496
【0129】
表6の原料名欄に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
【0130】
(光拡散剤)
S:シリコーン系架橋粒子(ジーイー東芝シリコーン(株)製 トスパール120)
A:アクリル系架橋粒子(積水化成品工業(株)製 テクポリマーMBX−5)
M:無機系微粒子(日東紡績(株)製 硝子繊維 PFE−301S)
成形品は下記に示す方法により作成した。
【0131】
実施例8〜11
表7に示す材料とし、成形する材料に対応して上記乾燥条件、シリンダー温度、金型温度とした以外は、実施例1と同様に成形を行い、一体成形品(積層構造体)を得た。
【0132】
【表7】
Figure 0003828496
【0133】
表7から明らかなように、例えば、実施例8の場合、成形品層(B)厚肉部側から層(B)薄肉部側に向かって赤色から橙色、黄色にグラデーションを有する色彩が得られる。さらに成形品の背面から光を当てると、成形品内部に表現された文字が成形品全体に対して平面的に色抜きされた優れた意匠性が得られる。また成形品の層(B)厚肉部側端面から光をあてると、成形品内部に表現された文字が拡散された光の中で文字の輪郭がややにじんだ状態で観察される。さらに文字は色抜けされた状態であるため幻想的な感覚を生ずる優れた意匠性が得られる。さらに、実施例11に見られるように、成形品の層(B)薄肉部側端面(光拡散材料からなる層(A)の厚肉部側端面)から光を当てると、面が均一な色の濃淡で光る。すなわち光拡散材料で層の一部が構成されている場合、光を当てる方向で全く異なる意匠性が得られる。
【0134】
【発明の効果】
本発明は、自由度の高い連続した色調の変化(グラデーション色彩)を有するとともに多彩な内部表現が可能な文字・絵・模様が付与できる積層構造体であることから、その奏する工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート状積層構造体の1例のシート面における直角断面の形状を示す模式図である。
【図2】バックライト方式により本発明の積層構造体の背面に光源を配置し、その意匠性を観察する際の模式図を示す側面図である。
【図3】エッジライト方式により本発明の積層構造体の層(B)の厚肉部側端面に光源を配置しその意匠性を観察する際の模式図を示す側面図である。
【図4】エッジライト方式により本発明の積層構造体の層(B)の薄肉部側端面に光源を配置しその意匠性を観察する際の模式図を示す側面図である。
【図5】実施例において使用した積層構造体の層(A)を形成する成形品形状の概要を模式的に表す斜視図である。
【図6】実施例において使用した積層構造体の概要を模式的に表す側面図である。
【図7】層(A)を成形した際の成形金型の模式図を示す側面図である。なお、固定側金型のホットランナー流路については層(B)用のものを省略している。
【図8】層(A)の成形品をインサートし、層(B)を成形した際の成形金型の模式図を示す側面図である。なお、固定側金型のホットランナー流路については層(A)用のものを省略している。
【図9】実施例において使用した積層構造体の概要を模式的に表す正面図である。この図9は図の下方から上方に向かって色調が濃から淡に変化している態様を示すが、図面にはこの変化は作図上省略されている。
【符号の説明】
1 積層構造体本体
2 積層構造体層(A)
3 積層構造体層(B)
4 積層構造体層(A)における図柄の立体的パターン(かかる部分の厚みは層(A)面に対して+1mmの厚みを増している)
X 観察方向(矢印)
L 光源
5 積層構造体本体の上下方向の長さ(200mm)
6 積層構造体本体の厚み(5mm)
7 積層構造体本体層(B)のゲート部における厚み(0.8mm)
8 積層構造体本体層(A)の下端部(流動末端部)における厚み(0.8mm)
9 図柄の立体的パターン部の長さ(75mm)
10 図柄の立体的パターン部の厚み(層(A)面に対して+1mm)
11 積層構造体の層(A)および層(B)の厚みが共に2.5mmになる部分の位置(下端から50mm)
12 上記11における層(A)の厚み(2.5mm)
13 固定側金型
14 層(A)用のコア側金型
15 層(A)用ホットランナー先端バルブ
16 層(A)用ホットランナー流路
17 層(A)用シリンダー
18 層(A)用樹脂の流れ
19 可動側金型
20 層(B)用ホットランナー先端バルブ
21 層(B)用ホットランナー流路
22 層(B)用シリンダー
23 層(B)用樹脂の流れ
24 層(B)用のコア側金型

Claims (8)

  1. (1)熱可塑性樹脂より形成された層の少なくとも2種の層より構成されたシート状積層構造体であり、(2)該積層構造体は、1つの層が染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成され且つシート面の少なくとも一方向に対して単調な厚みの変化を有し、他の層が実質的に無色の透明な樹脂または前記層とは異なる色彩を有する染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成され、(3)該積層構造体全体が透明性を有し、(4)該積層構造体は、透明の樹脂より形成された層(B)の外側の面から目視観察したときシート面に沿って連続した色調の変化が認められ、(5)該積層構造体は、厚みが変化する2種の層が接触する界面において立体的パターンによる文字もしくは図形が施され、(6)該積層構造体は射出成形により形成されかつ(7)該積層構造体は平均厚みが2〜20mmである平板状の形状を有することを特徴とする高意匠性シート状積層構造体。
  2. 該透明の樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂または非晶性ポリアリレート樹脂である請求項1記載のシート状積層構造体。
  3. 該透明の樹脂が、ポリカーボネート樹脂である請求項記載のシート状積層構造体。
  4. 構成された全ての層が、同種の樹脂から形成され且つその樹脂はポリカーボネート樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂または非晶性ポリアリレート樹脂から選択される請求項記載のシート状積層構造体。
  5. 構成された全ての層は、ポリカーボネート樹脂から形成される請求項記載のシート状積層構造体。
  6. 該積層構造体は、1つの層が染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成され且つシート面の多岐の方向に対して単調な厚みの変化を有し、他の層が実質的に無色の透明な樹脂または前記層とは異なる色彩を有する染料または顔料を含有する透明な樹脂により形成されている請求項1記載のシート状積層構造体。
  7. 該積層構造体は2層で構成され、積層構造体全体の厚みを1としたとき、各層の厚みの比が0.02〜0.98の範囲である請求項1記載のシート状積層構造体。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の積層構造体よりなる装飾有機ガラス。
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