JP4090634B2 - 光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法、およびその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は良好な光学特性を有する製品を得るための透明な熱可塑性樹脂の成形法、およびかかる成形品に関する。更に詳しくは従来主にシート成形品の熱曲げ加工により製造されていた、ヘルメットの風防、建設機械、自動車、バス等のグレージング製品等、大型グレージング製品を得るための透明な熱可塑性樹脂の成形法、およびかかる大型グレージング製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘルメットの風防、建設機械、自動車、バス等のグレージング製品等の樹脂製大型グレージング製品は、従来主にシート成形品を熱曲げ加工する方法により製造されていたが、近年製造の効率化やデザインの自由度を目的として、射出成形により製造することが試みられている。かかる場合当然のことながら、光学的歪みの少ない成形品を製造することが要求される。
【0003】
透明な熱可塑性樹脂製光学製品の成形方法としては、従来から金型温度を樹脂のガラス転移温度以上の高温として射出成形する方法、キャビティ容量を製品容量より大きくした状態で、低圧で樹脂を充填しその後樹脂を圧縮する射出圧縮成形法等の各種成形方法が数多く提案されている。しかしながら、いずれの射出成形法も光学的歪み特性の良好な製品を得るためにはいまだ十分でないことが指摘されている。
【0004】
かかる問題を解決する方法として、特開昭61−79614号公報には光ディスクの成形において金型表面を局所的に高温とした状態で充填を行い、その後圧縮することにより低歪みの光ディスクが得られることが提案されている。しかしながら、かかる方法では大型の成形品を成形した場合、金型内に充填された時点での樹脂が受ける歪みや熱の履歴に大きなムラを生ずるため、圧縮を均一に行ってもかかる履歴差に起因する歪みは解消されず、光学的歪みの十分な製品を得ることはできない。
【0005】
同様に特開平7−256704号公報では、断熱層を有する金型により同様に金型キャビティ表面のみを高温とし、射出圧縮成形を併用することにより像のゆがみの少ない成形品が得られることが提案されているものの、大型の成形品には十分とはいえなかった。
【0006】
すなわち、射出成形法により、光学的歪みの少ない大型の樹脂成形品の製造が望まれているものの、かかる製造法はこれまでなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、光学特性の良好な製品を得るための透明な熱可塑性樹脂の成形法、およびかかる製品を提供することにある。更に詳しくは光学的歪み特性の良好な自動車グレージング製品等の大型グレージング製品を得るための透明な熱可塑性樹脂の成形法、およびかかる製品を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、射出圧縮成形を行う際に、特定の射出速度以上の高速で樹脂を充填すると共に、金型表面部分を局所的に高温とすることにより目的とする良好な製品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明な熱可塑性樹脂を射出圧縮成形することにより光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法において、(1)射出速度を300mm/sec以上とし、かつ(2)該熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、主金型温度をTgより低い温度で保持するとともに、かかる熱可塑性樹脂が金型のキャビティ表面およびコア表面に接触している際のキャビティ表面およびコア表面の最高温度を[Tg+1](℃)〜[Tg+50](℃)とすることを特徴とする光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法、およびその製品に関するものである。
【0010】
本発明は、射出圧縮成形をすることにより、充填時の低圧化を可能としそれにより樹脂歪みを抑制することが可能となる。更に後述する金型表面を局所的に高温とすることで成形品の表層部分が固化されずヒケが発生しやすくなるが、射出圧縮成形をすることによりかかるヒケを歪みの発生を抑制した状態で解消することが可能となる。
【0011】
かかる圧縮を行う場合には、特に金型内に充填された熱可塑性樹脂のゲート部付近と流動末端部付近との金型内圧力差を10MPa以下とすることが、光学的歪みの少ない成形品を得る上で好ましく、かかる条件を満足できるよう、圧縮工程の開始時期、圧縮ストロークすなわち初期のキャビティ容量、圧縮圧力および圧縮時間等を決定する。ここでゲート部付近とは、ゲート位置から3cm以内を目安とした金型表面部分をいい、同様に流動末端部付近とは成形品の流動末端に相当する位置から3cm以内を目安とした金型表面部分をいい、それぞれかかる位置に各種圧力センサーを配することでその値を確認することができる。
【0012】
尚、後述する金型表面を局所的に高温とする場合に金型のキャビティ表面およびコア表面の最高温度や、射出成形時のシリンダ温度もかかる金型内圧力差に影響を与えるためこれらの条件設定によってもかかる金型内圧力差を制御することが可能である。より具体的には射出圧縮成形を行い、かつ後述する金型表面を局所的に高温とする成形条件下においては、樹脂充填時に金型内圧力差の最大値を取るため、かかる圧力差が10MPa以下となるよう、特に圧縮ストロークの調整をすることが好ましい。
【0013】
本発明で用いる射出圧縮成形法としては、例えばプラテン(金型を取り付ける板)の開閉を利用した型締め圧縮成形法や成形機プラテンの圧縮シリンダー、ボールネジ等を利用したコア圧縮成形法等のいずれも利用可能である。
【0014】
前記の型締め圧縮成形法とは、固定側、および可動側のそれぞれの金型パーティング面を所定の間隔だけ開いた状態にし、樹脂を射出し、その後型締め力によりパーティング面を接触させて圧縮する方法をさす。また、前記コア圧縮成形法とは、射出前の型締めでは金型のそれぞれのパーティング面を接触させ、所定の型締め力をかけて樹脂を射出しその後圧縮する手段をさす。射出後圧縮する工程では、成形機、金型等に設置された圧縮機構により可動側コアをキャビティの容積が縮小される方向に前進させて圧縮させる。ここでいう圧縮機構としては、圧縮シリンダーやボールネジ等を挙げることができる。本発明では、コア圧縮成形法がより均一な圧縮が可能となることからより好ましい方法として挙げることができる。
【0015】
本発明は、射出圧縮成形において更にその射出速度を300mm/sec以上とすることを1つの条件(以下A条件と称することがある)とするものである。かかる条件を満足する成形を行うことにより、大型成形品においても充填時にほぼ均一な歪みや熱の履歴を有する状態が確保され、これらの分布やムラに起因する光学的歪みを解消し、かかる歪を解消した状態で充填された樹脂の圧縮をすることが可能となる。更に高速の射出速度により樹脂粘度の低下をもたらし、これによる歪みの低減効果もある。
【0016】
本発明のA条件においては、300mm/sec以上の射出速度を有することを条件とし、好ましくは350mm/sec以上、特に好ましくは400mm/sec以上である。速度の上限としては800mm/sec程度を目安とする。300〜800mm/secの範囲では、本発明の目的を達成すると共に、高速化により成形品に発生するヤケも少ない良好な大型グレージング製品を得ることが可能となる。更に好ましくは、金型内に充填された熱可塑性樹脂のゲート部付近と流動末端部付近との金型表面の温度差を、キャビティ表面およびコア表面ともに10℃以下となる射出速度とする場合である。かかるゲート部付近および流動末端部付近の温度についてもそれぞれの位置に熱電対型温度計を配することによりかかる値を測定することが可能である。尚ここでいう射出速度とは、金型キャビティ内への充填開始から終了までの平均速度をいい、必ずしも一定速度である必要はなく、多段階の射出速度による成形も可能である。
【0017】
本発明は、更に射出圧縮成形において、上記のA条件と共に、熱可塑性樹脂のガラス転位温度をTg(℃)としたとき、主金型温度をTg(℃)より低い温度で保持するとともに、かかる熱可塑性樹脂が金型のキャビティ表面およびコア表面に接触している際の最高温度を[Tg+1](℃)〜[Tg+50](℃)とする(以下B条件と称することがある)ことを特徴とするものである。尚ここでいうガラス転移温度とはJIS K7121に規定される方法にて測定されたものである。
【0018】
主金型温度をTg(℃)未満とすることにより、金型のキャビティ表面およびコア表面を局部的に高温としても、速やかに冷却させることが可能となる。主金型温度がTg以上の場合には、冷却時間が長くなるために生産効率が低下する。
【0019】
ここで主金型とは、金型の構成全体をさし、主金型温度とは金型全体の温度を測定する際の目安となる温度をいい、必ずしも金型のキャビティ表面、およびコア表面部分以外の温度が正確に均一な一定の温度である必要はない。例えば主金型の温度としては、金型を温度調節するために金型内を循環させる水または有機化合物等の加熱媒体または冷媒体の温度を目安とすることができる。更に該主金型の温度を確認するためには、金型キャビティ表面部分から5〜10cm程度離れた該キャビティを有する金型ブロックまたは該ブロックに隣接する金型ブロックの中央部分等の温度を熱電対その他の温度センサーにより測定し確認する方法を挙げることができる。またその他主金型の温度調節方法には加熱ヒーター等による方法、空冷方法等が挙げられるが、この場合も金型全体の温度の目安として適当な部位の温度、例えば加熱ヒーターの場合にはヒーター部より5〜10cm程度離れたキャビティを有する金型ブロックまたは該ブロックに隣接する金型ブロックの中央部分等で測定される温度とすることができる。
【0020】
一方、金型のキャビティ表面およびコア表面の温度を、[Tg+1](℃)〜[Tg+50](℃)とすることにより、樹脂を充填する際の歪みを抑制することが可能となる。より好ましくは[Tg+10]〜[Tg+50](℃)、更に好ましくは[Tg+15]〜[Tg+40](℃)である。[Tg+1](℃)未満では樹脂の固化を抑制できず、樹脂の可動性が低いため成形時の歪みを緩和できず、良好な光学的歪み特性の達成が困難であり、[Tg+50](℃)を超える条件とした場合には、溶融した樹脂が金型内で冷却するために必要な冷却時間が長くなるため、生産効率が低下し好ましくない。更には成形サイクルが長くなることで、射出成形等の場合には滞留時間の増大に伴う樹脂劣化や、金型表面を高温にするために必要以上にエネルギーを使用し効率的でないとの問題もある。
【0021】
金型のキャビティ表面およびコア表面の温度を局所的に高温にする方法としては、例えば、従来から提案されている該表面部分に直接ハロゲンランプ等の輻射熱を照射する方法、高周波誘電加熱を起こさせる方法、薄膜電気抵抗体により加熱・冷却する方法、超音波を利用する方法等金型表面部分を外部の熱源により加熱する方法の他、キャビティ表面およびコア表面に熱伝導率の低い断熱層を形成することにより、溶融された熱可塑性樹脂の有する熱を利用し表面部分の温度を高温化する方法等を用いることができる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。特に前者の外部の熱源により加熱する方法と後者の断熱層を用いる方法は、外部熱源の効率化にもつながるため組合わせることが好ましい。前者の外部の熱源により加熱する方法においては、ハロゲンランプの照射時間等、外部熱源の供給時間や熱源の出力を制御することにより金型のキャビティ表面およびコア表面の温度を目的の温度に制御することが可能であり、また後者の断熱層を用いる方法では断熱層の厚みを制御することにより金型のキャビティ表面およびコア表面の温度を目的の温度に制御することが可能である。
【0022】
本発明の自動車グレージング等の大型製品を得る成形方法としては、本発明の成形方法とインサート成形、2色成形、サンドイッチ成形等を組み合わせて使用することも可能である。尚、2色成形、サンドイッチ成形の場合には、本発明のB条件におけるTgは表層をなす熱可塑性樹脂のガラス転移温度をさす。
【0023】
更に本発明で使用する透明な熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂等の透明樹脂を挙げることができる。中でも強度、耐衝撃性、耐熱性等の面からポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0024】
本発明に用いることができるポリカーボネート樹脂は、界面重縮合法またはエステル交換法によって得られる粘度平均分子量10,000〜40,000のものであり、好ましくは14,000〜30,000、更に好ましくは16,000〜25,000である。光学的歪みの少ない成形品を得るためには、溶融流動性のよい低粘度の樹脂が望ましいが、あまりに低粘度過ぎるとポリカーボネート樹脂の特徴である衝撃強度が保持できない。
【0025】
なお、ここで言う粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計を用いて、塩化メチレンを溶媒として20℃で測定した溶液の極限粘度[η]を求め、下記Schnellの粘度式
[η]=1.23×10-4M0.83
から求められる。
【0026】
ポリカーボネート樹脂を製造するためのビスフェノール類にはビスフェノールAが特に好ましいがその他公知のフェノール類から重合されたポリカーボネート樹脂でも制限はない。
【0027】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。ここで用いる二価フェノールの具体例としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等があげられる。これら二価フェノールは単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0028】
前記二価フェノールのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主たる二価フェノール成分とするのが好ましく、特に全二価フェノール成分中、70モル%以上、特に80モル%以上がビスフェノールAであるものが好ましい。最も好ましいのは、二価フェノール成分が実質的にビスフェノールAである芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0029】
ポリカーボネート樹脂を製造する界面重縮合法およびエステル交換法について簡単に説明する。カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる界面重縮合法では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に二価フェノール成分とホスゲンとの反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。
【0030】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用いるエステル交換法(溶融法)は、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノール成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら攪拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法である。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応させる。また反応を促進するために通常のエステル交換反応触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いる炭酸ジエステルとしては例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等があげられ、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0031】
本発明のポリカーボネート樹脂には離型剤を配合することができ、こうすることは離型時の歪みを抑制できる点で好ましい結果を与える。離型剤としては飽和脂肪酸エステルが一般的であり、例えばステアリン酸モノグリセライド等のモノグリセライド類、ステアリン酸ステアレート等の低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネート等の高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のエリスリトールエステル類が使用される。離型剤はポリカーボネート樹脂100重量部当り0.01〜1重量部用いられる。また、必要に応じて亜燐酸エステルに代表されるリン系の熱安定剤をポリカーボネート樹脂100重量部当り0.001〜0.1重量部配合してもよい。リン系の熱安定剤としてはトリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス−(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンジホスホナイト等が好ましい。
【0032】
耐候性の向上および有害な紫外線をカットする目的で、本発明のポリカーボネート樹脂には更に紫外線吸収剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤;例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示され、これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。これら紫外線吸収剤のうち、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0033】
また、本発明のポリカーボネート樹脂には更にポリカーボネート樹脂や紫外線吸収剤に基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としてはポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0034】
本発明では、前記の特定の成形方法を使用することにより、大型のグレージング製品を射出成形により効率的に製造することが可能となる。特にゲート部から流動末端部までの距離が20cm以上となるような大型の成形品に好適なものである。特に従来の射出成形法では得られなかったJIS R3212で測定された25°における透視歪み量が1.5分以下であり、ゲート部から流動末端部までの距離が20cm以上である射出成形品を安定して得ることが可能である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。実施例において用いる熱可塑性樹脂、各金型は次の通りである。
▲1▼ 熱可塑性樹脂(PC):ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量18,500のポリカーボネート樹脂100重量部に、トリスノリルフェニルホスファイト0.03重量部、およびグリセリンモノステアレート0.2重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物(尚、かかるポリカーボネート樹脂組成物のガラス転位温度は147℃である)
▲2▼ 主金型:鋼材(S55C)熱伝導率20W/m・K
【0036】
また、評価は下記の方法によった。
(1)光学的歪み特性の測定
JIS R3212に準拠し成形品の透視歪みを測定した。
【0037】
(2)ガラス転位温度の測定
JIS K7121に準拠し樹脂のガラス転位温度(Tg)を測定した。
【0038】
(3)キャビティ表面、およびコア表面の最高温度、および温度履歴の測定
キャビティ表面、およびコア表面の温度はかかる金型キャビティ表面、およびコア表面部分に接触した熱電対を用いて記録計に記録し、最高温度、および温度履歴を測定した。
【0039】
(4)圧力履歴測定
図2に示すように、金型キャビティ表面に接触したストレインゲージ式圧力センサーを用いて記録計に記録し、型内圧力差、および圧力履歴を測定した。
【0040】
(5)成形サイクル
図1記載の成形品を成形する際、熱可塑性樹脂を射出後、金型から成形品を取り出せる温度(当該熱可塑性樹脂のTg以下)まで冷却された後、成形品を取り出すまでに要した時間を測定した。今回対象とする成形品においては、成形サイクルは300秒以下が生産効率を低下させず実用的で好ましい。
【0041】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
ポリカーボネート樹脂を120℃で5時間乾燥した後、800mm/secの射出速度を達成可能な超高速射出装置、および油圧シリンダーによるコア圧縮機構を備えた射出圧縮成形用金型装置を備えた射出成形機を用いてシリンダー温度290℃にて図1に記載の成形品を成形した。かかる成形品は長さ300mm×幅300mm×厚み4mmの板状成形品であり、フィルムゲート(ゲート部の厚み3mm)を有するものを使用した。その際、金型のキャビティ表面およびコア表面に各々ハロゲンランプ(25kW)を照射することにより成形時のキャビティ表面温度の最高温度が表1に記載のキャビティ表面およびコア表面の温度になるようにした。尚、主金型の温度は金型温調機の温度を表1中の各温度に設定し、図2に示す主金型の胴体部分の熱電対型温度計がほぼ同じ温度になっていることを確認して実施した。さらに、射出前に可動側コアを2mm後退させ、次いで金型内に樹脂を充填したのち、充填完了と同時に可動側コアを平均速度0.05mm/secで圧縮した。この後、冷却完了後に成形品を取り出した。このようにして得られた成形品の光学的歪み特性について評価した。評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、例えば実施例1と比較例3との比較から、金型キャビティ表面の温度を一定温度以上に高く設定することにより、光学的歪み特性が向上していることがわかる。同様に実施例1と比較例2との比較から、射出速度を一定速度以上に高く設定することにより、光学的歪み特性が向上していることがわかる。さらに実施例1と比較例1との比較から、可動側コアを圧縮することにより、光学的歪み特性が向上していることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明を用いると、光学的歪み特性に優れる光学製品を得ることが可能であり、特に自動車分野の自動車グレージング製品のような、優れた光学的歪み特性が要求される用途にきわめて適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】板状成形体の概要を模式的に表す図である。
【図2】金型構造を側面から見た概要図である。
【符号の説明】
1 板状成形品本体
2 板状成形品ゲート部分
3 板状成形品スプルー部分(10mmφ、長さ20cm)
4 板状成形品の幅(300mm)
5 板状成形品の長さ(300mm)
6 ゲート部に対応する圧力センサー(図1では取り付け位置相当部を示す)
7 流動末端部に対応する圧力センサー(図1では取り付け位置相当部を示す)
8(8’) ゲート部に対応する温度センサー(図1では取り付け位置相当部を示す。尚8はキャビティ側、8’はコア側を示す)
9(9’) ゲート部に対応する温度センサー(図1では取り付け位置相当部を示す。尚9はキャビティ側、9’はコア側を示す)
10 ゲート部厚み(3mm)
11 圧縮ストローク量(2mm)
12 板状成形品厚み(4mm)
13 金型キャビティ側
14 金型コア側
15 圧縮コア
16 金型キャビティ側表面
17 金型コア側表面
18 主金型の温度センサー埋め込み部位
Claims (5)
- 透明な熱可塑性樹脂を射出圧縮成形することにより光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法において、(1)射出速度を300mm/sec以上とし、(2)該熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、主金型温度をTgより低い温度で保持するとともに、かかる熱可塑性樹脂が金型のキャビティ表面およびコア表面に接触している際のキャビティ表面およびコア表面の最高温度を[Tg+1](℃)〜[Tg+50](℃)とし、かつ(3)金型内に充填された熱可塑性樹脂を圧縮する際、金型内に充填された熱可塑性樹脂のゲート部付近と流動末端部付近との金型内圧力差を10MPa以下とすることを特徴とする光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法。
- 金型内に充填された熱可塑性樹脂のゲート部付近と流動末端部付近との金型表面の温度差を、キャビティ表面およびコア表面ともに10℃以下の射出速度とする請求項1に記載の光学的歪みの少ない成形品を得る成形方法。
- 透明な熱可塑性樹脂が、粘度平均分子量10,000〜40,000のポリカーボネート樹脂である請求項1または2に記載の成形方法。
- ゲート部から流動末端部までの距離が20cm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形法で得られた成形品。
- JIS R3212で測定された25°における透視歪み量が1.5分以下であり、ゲート部から流動末端部までの距離が20cm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法で得られた射出成形品。
Priority Applications (1)
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