JP4808951B2 - 光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品 - Google Patents

光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品 Download PDF

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本発明は、光拡散機能を有するポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することにより製造された大型の成形品に関する。より詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂にシリコーン架橋粒子および特定のホスファイト化合物を配合してなる樹脂組成物を射出成形することにより製造された大型の射出成形品である。該樹脂組成物は改良された熱安定性を有し、大型射出成形品製造時の熱負荷への耐性に優れている。その結果光拡散性の大型射出成形品が季節変動や製造装置の差異に大きな影響を受けることなく製造される。
芳香族ポリカーボネート樹脂に、無機微粒子や高分子微粒子からなる光拡散剤を配合した光拡散機能を有する成形品は周知である。かかる成形品は、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス(建築物の採光装置におけるドームの如きものを含む)、画像読取装置、表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置の如きバックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクターテレビの如き投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板等に代表される)等において用いられている。かかる成形品は、従来のアクリル樹脂に比較して耐熱性や寸法安定性に優れる点で有利である。
かかる耐熱性および寸法安定性における利点は、成形品が大型であるほど大きくなる。一方で前記の例示された利用分野の多くにおいて成形品の大型化が進行している。したがって光拡散性の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品が近年急速に高まっている。更にその成形法としては、従来主力であった押出成形法から射出成形法への転換が試みられている。射出成形法の利点は各種対象物において多少異なるものの、概して高い形状の自由度および製造コストの低減(2次加工の省略が可能なため)が達成される。したがって、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる大型射出成形品の提供は、近年光拡散性樹脂組成物に期待される多くの要求を満足するものとなる。
芳香族ポリカーボネート樹脂、シリコーン架橋粒子に代表される高分子微粒子、特定構造のホスホナイトおよび/またはホスファイト、トリアルキルホスフェート、ペンタエリスリトールジホスファイト、およびヒンダードフェノールの特定割合からなる光拡散性樹脂組成物は公知である(特許文献1参照)。
芳香族ポリカーボネート樹脂とビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトに代表される環状ジホスファイトからなる、耐加水分解性の改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は公知である(特許文献2参照)。
芳香族ポリエステルカーボネート樹脂とビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトに代表される特定のホスファイトからなる、色相の改良された樹脂組成物は公知である(特許文献3参照)。
芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のベンゾトリアゾール系光安定剤とビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトとを配合した樹脂組成物は公知である(特許文献3参照)。該文献によれば、該樹脂組成物は耐候性と高温加工時の着色において改善され、共押出成形品のカバー層に好適であるとされる。
しかしながら、前記の知見は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる大型射出成形品の提供には未だ十分とはいえなかった。
特開2001−323149号公報 特開昭53−10650号公報 特開平1−230663号公報 特開2000−230512号公報
本発明の目的は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる大型射出成形品を安定した品質の下で提供することにある。本発明者らは、過去の知見に基づき光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる大型射出成形品の製造を試みた。しかしながら通常の(例えば試験片程度の)成形では極めて良好な成形品が得られる樹脂組成物においても、大型成形品が得られないことを見出した。熱安定性の挙動はシルバーストリークの有無として観察された。更には、各種の要因によりシルバーストリークを指標とする熱安定性の結果がバラつく場合があり、熱安定性を各種の要因を超えたレベルで大きく改良しなければ所期の目的を達成し得ないことを見出した。大型射出成形品製造時の樹脂組成物にかかる熱負荷がある程度大きいことは予想していたが、かかる結果は予想を超えたものであった。
本発明者らは、前記課題を解決すべく更に鋭意検討した。ポリメチルシルセスキオキサン粒子に代表されるシリコーン架橋粒子が概して良好な熱安定性を示した。しかし前記の如くその挙動は十分に安定しているとはいい難かった。更に検討を進めた結果、特定のホスファイト安定剤とシリコーン架橋粒子とを芳香族ポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見出した。かかる知見に基づき本発明者らは更に鋭意検討を進めて本発明を完成した。
本発明によれば、前記本発明の課題は、(1)芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、シリコーン架橋粒子(B成分)0.1〜30重量部、および下記一般式(1)で示されるホスファイト化合物(C成分)0.001〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物を射出成形することにより製造された、最大投影面積が500〜50,000cmを有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品により達成される。
Figure 0004808951
(式(1)中、XおよびXはそれぞれ炭素数4〜16のアルキル基または下記一般式(2)の基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、XおよびXはそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基または下記一般式(2)の基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、XおよびXそれぞれ水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 0004808951
(式(2)中、Zは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
前記構成が本発明の目的を達成する理由は明確ではないが、本発明者らの検討によれば次のように推察される。シリコーン架橋粒子中には少なからず加水分解性の官能基の存在する。また該官能基は熱劣化によっても生じ得る。安定剤が増量されてもシルバーストリークが発生しやすくなることから、本発明におけるシルバーストリークの主要因として上記の加水分解性の官能基がホスファイト化合物を分解させることが考えられる。一方で本発明の特定のホスファイト化合物はかかる官能基との高温下における作用においても分解され難いと共に、かかる官能基と適度に作用して該官能基の活性を抑制する効果があるものと考えられる。
本発明の好適な態様の1つは、(2)前記C成分は、下記式(3)〜(5)で示される化合物から選択される少なくとも1種のホスファイト化合物である前記構成(1)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。
Figure 0004808951
Figure 0004808951
Figure 0004808951
本発明によれば、前記安定剤が良好な光拡散機能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の大型射出成形品の製造を可能とすることが見出された。前記安定剤は入手も容易である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)前記樹脂組成物は、更に100重量部のA成分を基準として、0.001〜0.5重量部のトリアルキルホスフェート化合物(D成分)が配合されてなることを特徴とする前記構成(1)および(2)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。かかる構成(3)によれば、更に熱安定性の改良された樹脂組成物が提供され、その結果安定した品質の成形品が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記樹脂組成物は、更に100重量部のA成分を基準として、0.001〜0.5重量部の3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基を有するヒンダードフェノール化合物(E成分)0.001〜1重量部が配合されてなることを特徴とする前記構成(1)〜(3)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。かかる構成(4)によれば、安定した品質の成形品が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(5)前記成形品は、樹脂組成物を射出プレス成形することにより製造されたことを特徴とする前記構成(1)〜(4)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。本発明の射出成形品は、各種の方法で成形が可能である。かかる射出成形法としては、大型成形品の成形に好適とされる、フローモールド法、シーケンシャルバルブゲーティング(Sequenttial Valve Gating:SVG)法、および射出プレス成形法などが好適に適用される。中でも射出プレス成形法が好適である。射出プレス成形法は、優れた寸法精度と低減された歪とを両立した成形品を与える。歪の低減は透過光の均一性において重要である。また歪みの低減はより密着性の高いハードコート剤の適用を可能とする。一方で、射出プレス成形法は、その成形法の特徴から概して大容量の樹脂を、高速で、少ないゲートから金型キャビティ内に充填する。この結果、成形時の樹脂に過大な熱負荷がかかりやすく、より熱安定性の高い樹脂組成物が求められる。尚、本発明の射出成形品は、射出成形後に熱曲げ加工に代表される2次加工工程を経ることにより所定の形状に成形されてもよい。
本発明の好適な態様の1つは、(6)前記成形品は、シート状をなしそのいずれか1つの表面にハードコート処理がなされるものであることを特徴とする前記構成(1)〜(5)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。かかるハードコート処理は、成形品に屋外使用に耐え得る十分な耐久性を与え好ましい。一方で本発明の成形品は、大型であるが熱劣化の少ない良好な成形品であることから、かかるハードコート処理に十分に耐え得る。
更に本発明の別の態様によれば、前記本発明の課題は、(7)最大投影面積が500〜50,000cmを有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品を射出成形法により製造する方法であって、該成形品を構成する樹脂組成物として芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、シリコーン架橋粒子(B成分)0.1〜30重量部、および下記一般式(1)で示されるホスファイト化合物(C成分)0.001〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物を用いることを特徴とする光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品の製造方法により達成される。
かかる製造方法においても、(i)C成分は、前記構成(2)の如く前記式(3)〜(5)の特定のホスファイト化合物が好ましく、(ii)100重量部のA成分を基準として更に前記D成分が0.001〜0.5重量部配合されることが好ましく、(iii)100重量部のA成分を基準として更に前記E成分が0.001〜0.5重量部配合されることが好ましく、(iv)射出成形法は射出プレス成形法が好ましく、(v)更に光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、シート状をなしそのいずれか1つの表面にハードコート処理がなされるものであることが好ましい。
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分について>
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネートは、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法および環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
前記2価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
本発明では、汎用ポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、例えば、吸水による寸法変化をより低減する目的やさらに剛性を向上させる目的等から、他の2価フェノール類を使用した特殊な芳香族ポリカーボネ−トをA成分として使用することも可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部または全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することもある)を用いた芳香族ポリカーボネ−ト(単独重合体または共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が厳しい用途に適当である。これらの2価フェノールは芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつ吸水率の低い(よって吸水による寸法変化の少ない)成形品が要求される場合には、A成分が次の(a)〜(c)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(a)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、BCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(b)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、BCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(c)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、Bis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートは単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA系の芳香族ポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートの製法および特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報および特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、前記各種ポリカーボネートのなかでも、共重合組成等を調整して、吸水率およびTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、耐加水分解性が良好で、かつ低反り性においても格段に優れているため、特に好適である。
(a)Tgが120〜180℃であり、かつ吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%である芳香族ポリカーボネート、あるいは、
(b)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%である芳香族ポリカーボネート。
ここで、芳香族ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
また、前記カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
前記2価フェノールとカーボネート前駆体とから界面重合法によってポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて、触媒、末端停止剤、2価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。
また、本発明樹脂組成物を構成するA成分となる芳香族ポリカーボネートは、3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。かかる3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。
分岐ポリカーボネートにおける多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導させる構成単位との全量100モル%中、0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.9モル%、特に好ましくは0.05〜0.8モル%である。
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
さらに、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネートに前記官能性カルボン酸および2官能性アルコールをともに共重合したポリエステルカーボネートでもよい。脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。本発明では、この他に、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
本発明の樹脂組成物におけるA成分(芳香族ポリカーボネート)は、2価フェノール成分の異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等、各種の芳香族ポリカーボネートを2種以上を混合したものであってもよい。また、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合して使用することもできる。
芳香族ポリカーボネートの製造における界面重縮合法による反応は、通常、2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は、通常、0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応において、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、トリアコンチルフェノール等を挙げることができる。かかる末端停止剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、通常2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常、120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;等の各種触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等の通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用してもよく2種以上を組合せて使用してもよい。触媒の使用量は、原料の2価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
溶融エステル交換法による反応では、生成ポリマーのフェノール性末端基を減少させる目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
さらに、溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩およびテトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩等が好ましく挙げられる。
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量が10,000未満であると成形品の強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、14,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。
かかる粘度平均分子量はA成分全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。特に粘度平均分子量が50,000(より好ましくは80,000以上、更に好ましくは100,000以上)を超える芳香族ポリカーボネートの混合は、溶融時のエントロピー弾性を高くする点で有利な場合がある。例えば、射出プレス成形におけるヘジテーションの抑制に効果がある。したがって、粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネートの混合は、これらの改良が求められる場合およびこれらの成形法を適用する場合に、好適な選択の1つとなる。かかる効果は、芳香族ポリカーボネートの分子量が高いほど顕著となるが、実用上該分子量の上限は200万、好ましくは30万、より好ましくは20万である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
なお、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は、次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
<B成分:シリコーン架橋粒子について>
シリコーン架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものである。かかる架橋粒子には、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いもの、並びにオルガノシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いもののいずれも含む。本発明のシリコーン架橋粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。本発明のポリオルガノシルセスキオキサンは、R−SiO3/2(Rは一価の有機基)で示される3官能性シロキサン単位(以下単に“T単位”と称する)が、1〜4官能性シロキサン単位の合計100モル%中50モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であるものをいう。
ポリオルガノシルセスキオキサンに結合する有機基としては、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、トリル基、およびキシリル基の如きアリール基、β−フェニルエチル基およびβ−フェニルプロピル基の如きアラルキル基、並びにシクロヘキシル基などが例示される。更にビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、およびγ−メタクリロキシプロピル基などに代表される反応性基を含有することもできる。
炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、デシル基、ドデシル基、およびオクタデシル基などが例示される。より好ましくアルキル基は炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。特にメチル基が好適である。
ポリオルガノシルセスキオキサンの製造法としては、3官能性のアルコキシシランを酸または塩基触媒の存在下に加水分解して縮合反応させる。かかる反応によりシロキサン結合を成長させながら3次元架橋した粒子を形成させる方法が一般的である。また加水分解縮合反応の原料としてクロロシランを用いてもよい。かかる粒子径は、触媒量や攪拌工程等により制御可能である。
本発明のB成分の平均粒径は好ましくは0.1〜15μm、より好ましく0.3〜6μm、更に好ましくは1〜3μmである。かかる平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で求められる粒度の積算分布の50%値(D50)で表されるものである。粒子径の分布は単一であっても複数であってもよい。即ち平均粒子径の異なる2種以上のシリコーン架橋粒子を組み合わせることが可能である。しかしながらより好ましいシリコーン架橋粒子は、その粒径分布の狭いものである。平均粒子径の前後2μmの範囲に、粒子の70重量%以上が含有される分布を有するものがより好ましい。シリコーン架橋粒子の形状は、光拡散性の観点から球状に近いものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。かかる球状には楕円球を含む。
<C成分:ホスファイト化合物について>
本発明の成形品を構成する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、上述のとおり下記一般式(1)で表される特定のホスファイト化合物が配合される。
Figure 0004808951
(式(1)中、XおよびXはそれぞれ炭素数4〜16のアルキル基または下記一般式(2)の基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、XおよびXはそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基または下記一般式(2)の基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、XおよびXそれぞれ水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 0004808951
(式(2)中、Zは水素または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
一般式(1)におけるXおよびXの好適な具体例としては、アルキル基としてsec−ブチル基(1−メチルプロピル基)、tert−ブチル基(1,1−ジメチルエチル基)、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、tert−オクチル基(1,1,3,3−テトラメチルブチル基)、ドデシル基、および1−メチルペンタデシル基、並びに一般式(2)で表される基として1−メチル−1−フェニルエチル基が例示される。XおよびXにおけるアルキル基としては、炭素数4〜8のアルキル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。また一般式(2)で表される基として1−メチル−1−フェニルエチル基が好ましい。またXおよびXは同一の基であることが好ましい。
一般式(1)におけるXおよびXの好適な具体例としては、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ドデシル基、および1−メチルペンタデシル基、並びに一般式(2)で表される基として1−メチル−1−フェニルエチル基が例示される。XおよびXにおけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基およびtert−ブチル基が好ましい。また一般式(2)で表される基として1−メチル−1−フェニルエチル基が好ましい。またXおよびXは同一の基であることが好ましい。
一般式(1)におけるXおよびXの好適な具体例としては、アルキル基としてアルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、およびtert−ブチル基などが例示される。XおよびXは、水素原子、メチル基、およびtert−ブチル基のいずれかであることが好ましい。またXおよびXは同一の基であることが好ましい。
本発明のC成分のより好適な態様は、上述の通り下記一般式(3)〜(5)で表される化合物である。
光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。
Figure 0004808951
Figure 0004808951
Figure 0004808951
上記一般式(3)の化合物は、アデカスタブPEP−24G(商標、旭電化工業(株)製)、Alkanox P−24(商標、Great Lakes社製)、Ultranox P626(商標、GE Specialty Chemicals社製)、Doverphos S−9432(商標、Dover Chemical社製)、並びにIrgaofos126および126FF(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などとして市販されておりいずれも利用できる。上記一般式(4)の化合物はアデカスタブPEP−36(商標、旭電化工業(株)製)として市販されており容易に利用できる。また上記一般式(5)の化合物はアデカスタブPEP−45(商標、旭電化工業(株)製)、およびDoverphos S−9228(商標、Dover Chemical社製)として市販されておりいずれも利用できる。
<D成分:トリアルキルホスフェート化合物について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記A成分〜C成分を必須とするが、更にトリアルキルホスフェート化合物(D成分)を含有することが好ましい。かかるD成分のアルキル基としては炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキルである。3つのアルキル基は互いに同一であっても異なっていてもよい。D成分として特に好適であるのはトリメチルホスフェートである。
<E成分:特定のヒンダードフェノール化合物について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、ヒンダードフェノール化合物を含有することができる。中でも好適であるのは、前述のとおり3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基を有するヒンダードフェノール化合物(E成分)である。E成分の化合物としては、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセテート、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセチルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
中でもトリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、および3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく、特に3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。E成分として特に好適な該化合物は、例えばアデカスタブAO−80(商標、旭電化工業(株)製)、およびスミライザーGA−80(商標、住友化学工業(株)製)として市販されており、いずれも利用できる。
<各成分の量について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物における各成分の配合量は次のとおりである。シリコーン架橋粒子(B成分)の配合量は、100重量部のA成分を基準として0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.15〜3重量部である。B成分がかかる下限未満では光拡散性が不足しがちである。一方B成分がかかる上限を超える場合には樹脂組成物の耐熱性や機械的特性が不足しがちとなり、また樹脂組成物製造時や成形品製造時の加工性にも劣るようになる。
特定のホスファイト化合物(C成分)の配合量は、100重量部のA成分を基準として0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.005〜0.1重量部であり、より好ましくは0.005〜0.07重量部である。C成分がかかる下限未満では熱安定性の改良効果が不足し、一方C成分がかかる上限を超える場合であっても逆に熱安定性が低下するようになる。
トリアルキルホスフェート化合物(D成分)の配合量は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.001〜0.5重量部であり、より好ましくは0.005〜0.1重量部であり、更に好ましくは0.005〜0.07重量部である。かかる好ましい配合量においてより改良された熱安定性を有する樹脂組成物が得られ、その結果安定して良好な光拡散性の大型成形品が得られる。
特定のヒンダードフェノール化合物(E成分)の配合量は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.001〜0.5重量部であり、より好ましくは0.005〜0.1重量部であり、更に好ましくは0.005〜0.07重量部である。かかる好ましい配合量において色相の改善された大型成形品が得られるようになる。
<必要により配合し得る付加的成分について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、更に所望により付加的成分として、A成分およびB成分以外の重合体や、その他の各種添加剤を加えても差し支えない。
(i)A成分およびB成分以外の重合体
かかる重合体としては、ビニル系ポリマーおよび芳香族ポリエステル等を例示することができる。
かかるビニル系ポリマーとしては、ポリスチレン(PS)(シンジオタクチックポリスチレンを含む)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS共重合体)、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(MS共重合体)、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)などが例示される。これらの中でもポリスチレン、AS共重合体、およびPMMAが好適である。かかるビニル系ポリマーは、エポキシ基および酸無水物基などに代表される各種の官能基で変性されていてもよい。これらスチレン系ポリマーは、2種以上混合して使用することも可能である。ビニル系ポリマーの配合は、流動性の改良、耐薬品性の改良、制振性の改良(PMMAにおいて)、および色相の改良に効果を発揮する。また数平均分子量が100万を超える超高分子量ポリマーは、射出プレス成形におけるヘジテーションの抑制に効果を有する。かかるビニル系ポリマーを配合する場合、その配合量は100重量部のA成分を基準として0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部が適切である。
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等の他、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエチレンテレフタレート(いわゆるPET−G)、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレートのような共重合ポリエステルも使用できる。なかでも、良好な色相が得られる点から、好ましくはPET、PBT、およびPET−G、特に好ましくはPBTおよびPET−Gである。芳香族ポリエステルの分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.4〜1.2、好ましくは0.6〜1.15である。芳香族ポリエステルの配合は、色相を損なうことなく流動性の改良および耐薬品性の改良に効果を発揮する。かかる芳香族ポリエステルを配合する場合、その配合量は100重量部のA成分を基準として1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部が適切である。
さらに、本発明の目的または効果を損なわない範囲で、前記ビニル系ポリマーや芳香族ポリエステル以外にも、その他の非晶性熱可塑性ポリマーや結晶性熱可塑性ポリマーを含むことができる。
(ii)リン系安定剤
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、C成分およびD成分以外のリン系熱安定剤を含むことができる。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル(C成分およびD成分以外のもの)、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。亜リン酸は樹脂組成物中重量割合で0.1〜10ppmの量となるよう配合して利用できる。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリデシルホスファイトの如きトリアルキルホスフェート、ジデシルモノフェニルホスファイトの如きジアルキルモノアリールホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイトの如きモノアルキルジアリールホスファイト、トリフェニルホスファイトおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、並びに2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトおよび2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの環状ホスファイトが例示される。
ホスフェート化合物としては、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、およびジフェニルモノオルソキセニルホスフェートなどのアリールホスフェートが例示される。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく例示され、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。第3級ホスフィンとしては、例えばトリフェニルホスフィンが例示される。
上記の中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよび/またはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトは、芳香族ポリカーボネート樹脂を工業的に製造する際の熱安定剤として多用されており、本発明においてもかかる配合のなされた芳香族ポリカーボネート樹脂を使用するか、更に樹脂組成物製造時にC成分〜E成分の安定剤と合せて配合することが好ましい。かかるホスファイトおよびホスホナイトは、100重量部のA成分を基準として0.0001〜0.1重量部の範囲で配合されることが好ましい。
(iii)ヒンダードフェノール系安定剤
上述したヒンダードフェノール化合物のうち、E成分以外の具体例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好適に例示される。
(iv)離型剤
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は離型剤を含むことができる。離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワツクス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などが例示される。かかる離型剤の配合量は100重量部のA成分を基準として好ましくは0.005〜2重量部、より好ましくは0.01〜0.8重量部である。
かかる離型剤の中でも、飽和脂肪酸エステル、特に高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステルおよび/またはフルエステルが好ましい。特にフルエステルが好適である。ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜32の脂肪族カルボン酸を指し、その具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。これらのなかでも脂肪族カルボン酸としては炭素数10〜22のものが好ましく、炭素数14〜20であるものがより好ましい。特に炭素数14〜20の飽和脂肪族カルボン酸、特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸の如き脂肪族カルボン酸は、通常、炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物であることが多い。前記飽和脂肪酸エステルにおいても、かかる天然油脂類から製造され他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸から得られたエステル化合物が好ましく使用される。
一方、多価アルコールとしては、炭素原子数3〜32のものがより好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の飽和脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましく、水酸基価は20〜500(より好ましくは50〜400)の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、その耐加水分解性を更に改良する目的で、芳香族ポリカーボネートの加水分解改良剤として従来知られた化合物を、本発明の目的を損なわない範囲において配合することもできる。かかる化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、シラン化合物およびホスホン酸化合物などが例示され、特にエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好適に例示される。エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ化合物、および3−グリシジルプロポキシ−トリエトキシシランに代表される珪素原子含有エポキシ化合物が好適に例示される。かかる加水分解改良剤は、100重量部のA成分を基準として1重量部以下とすることが好ましい。
(v)紫外線吸収剤
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、その色相を長期に維持するため紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、およびシアノアクリレート系化合物などが例示される。しかしながら、本発明における紫外線吸収剤は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の色相を損なうことなく、かつ該組成物中の成形加工時において安定に存在しなければならない。したがって、本発明において特に好適な紫外線吸収剤が存在する。本発明の紫外線吸収剤としては、環状イミノエステル系化合物、分子量400以上のシアノアクリレート系化合物、および分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物である。かかる化合物の具体例としては、環状イミノエステル系化合物として2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(竹本油脂(株)からCEi−P(商標)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商標)として市販されている)が例示される。分子量400以上のシアノアクリレート系化合物としては、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(BASF社からUVINUL3030(商標)として市販されている)が例示される。分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](市販品としては旭電化工業(株)製、ADEKASTAB LA−31(商標)として市販されている)が例示される。
上記の中でも色相および耐熱性の点において2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。かかる化合物の製造方法としては、原料として再結晶化された無水イサト酸を利用する方法、並びにアントラニル酸を利用する方法のいずれも利用可能である。
紫外線吸収剤の配合量は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.005〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
また本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤と上記紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の含有量は100重量部のA成分を基準として、好ましくは0.0005〜3重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
(vi)ブルーイング剤
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中重量割合で0.05〜3.0ppm含むことができる。かかるブルーイング剤は成形品に自然な透明感を付与する点で有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の量が3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
(vii)白色顔料
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、その遮光性を調整する目的で、白色顔料として二酸化チタン、酸化亜鉛、および硫化亜鉛を配合することができる。かかる白色顔料の中でも特に二酸化チタンが好適である。かかる二酸化チタンは、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズおよび亜鉛などの金属の酸化物で表面処理されていることが好ましい。かかる表面処理は高密度な処理および低密度(多孔質)な処理の何れも適用できる。更に好適な二酸化チタンは有機化合物で表面処理される。かかる表面処理剤としては、アミン類化合物、シリコーン化合物、およびポリオール化合物をそれぞれ主成分とする表面処理剤などが利用される。殊にアルキルハイドロジェンポリシロキサンで被覆した二酸化チタンが好適に使用される。本発明の樹脂組成物において二酸化チタンの含有量は、100重量部のA成分を基準として0.0001〜0.5重量部、より好ましくは0.0005〜0.1重量部である。
(viii)カーボンブラック
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、その遮光性を調整する目的で、カーボンブラックを配合することができる。好ましいカーボンブラックはオイルファーネスブラックやチャンネルブラックである。またかかるカーボンブラックにおいてHCC、HCF、MCF、LFF、およびRCFなどいずれのタイプも使用可能であるが、より好ましいのはHCF、MCF、およびLFFなどである。またpH値は7以下であるものがより好適であり、2〜6の範囲が更に好ましい。カーボンブラックは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。かかるカーボンブラックの原料形態は特に制限されるものでなく、炭素フィラーのみの粉体形態のほか、オイル中に分散された形態、バインダー樹脂によって顆粒化された形態、およびポリカーボネート樹脂や他の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチの形態など各種の態様のものが使用可能である。カーボンブラックは本発明の樹脂組成物中、重量割合で0.05〜5ppmの範囲が好ましく、0.1〜3ppmの範囲がより好ましく、0.2〜2ppmの範囲が更に好ましい。上記の範囲内においては適度な遮光性を効率的に得ることができる。
(ix)他の染顔料
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で上記以外にも各種の染顔料を使用することができる。かかる染顔料しては、例えばペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などが例示される。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することもできる。その他メタリック顔料(例えば金属酸化物被覆板状充填材、金属被覆板状充填材、および金属フレークなど)を配合してより良好なメタリック色彩を得ると共に、適度に熱線反射を行い、室内温度をより適正に保つこともできる。他の染顔料の含有量は、100重量部のA成分を基準として、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.8重量部である。
(x)帯電防止剤
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量は100重量部のA成分を基準として、5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1.5〜3重量部の範囲である。
帯電防止剤としては例えば、(2)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、および有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量は100重量部のA成分を基準として、0.5重量部以下が適切であり、好ましくは0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部である。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(3)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は100重量部のA成分を基準として、0.05重量部以下が適切である。帯電防止剤としては、例えば(4)ポリエーテルエステルアミドの如きポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーは100重量部のA成分を基準として5重量部以下が適切である。
(xi)熱線吸収能を有する化合物
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.0005〜0.2重量部、より好ましくは0.0008〜0.1重量部、更に好ましくは0.001〜0.07重量部である。金属酸化物系近赤外線吸収剤および金属ホウ化物系近赤外線吸収剤は、樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.05〜5ppm(重量割合)の範囲が好ましい。
(xii)その他
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩以外の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
更に本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
<光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の調製について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を調製するには、任意の方法が採用される。例えば、樹脂組成物の製造法として、前記各成分並びに任意に配合する他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機等を挙げることができる。予備混合では、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練しペレタイザーの如き機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、および恒熱撹拌容器等を用いることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより、強力なせん断力で高分子微粒子が基体樹脂中に微分散される。
また、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は異物の存在を少なくすることが好ましい。かかる好ましい光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品の樹脂組成物を得るためには、原料として異物量の少ないものを使用すること、押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すること、冷却バス用の冷却水を異物量の少ないにすること、並びに原料の供給ホッパー、供給流路、および得られたペレットの貯蔵タンク等をより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることが適当である。また押出機内に窒素ガスに代表される不活性ガスを流し込み、酸素を遮蔽する方法も、色相の改善手段として好適に利用できる。
更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜を行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を更に行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
<成形品の製造方法について>
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、前記で製造された樹脂組成物のペレットを射出成形することにより製造される。ここで射出成形法としては、通常の射出成形法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、および超高速射出成形など利用することができる。中でも射出プレス成形は下記の理由などから好適である。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。更にフローモールド法およびSVG法などの利用も可能である。
本発明において射出プレス成形とは、少なくともその供給完了時において目的とする成形品容量よりも大なる容量の金型キャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂を供給し、その供給完了後に金型キャビティ容量を目的とする成形品容量まで減少し、金型キャビティ内の成形品をその取り出しが可能な温度以下まで冷却後成形品を取り出す成形方法である。尚、金型キャビティ容量の減少開始は、樹脂の供給完了前後のいずれであってもよいが、該供給完了前の開始が好ましい。すなわちキャビティ容量を減少する工程と樹脂の充填工程がオーバーラップする態様が好ましい。
射出プレス成形においては、高圧で樹脂の充填を行う必要が低減されるため、成形品中の歪みが低減する。かかる歪みの低減は透過光の均一性において重要である。更にかかる歪みの低減はより密着性の高いハードコート剤の適用を可能とする。
成形品表面の歪みの低減の観点からは、断熱金型成形および急速加熱冷却金型成形(ハロゲンランプ照射、誘導加熱、熱媒体の高速切り替え、および超音波金型など)も組合わせることが好適である。
また射出プレス成形は通常知られているように、極めて低い圧力での成形が可能であるため、射出成形機の型締め圧力のレベルを大幅に低減することが可能である。これは殊に大型の成形品であってその流動長の長い成形品において、製品の品質の向上と共に設備にかかるコストを低減できる。別の観点で論じると、射出プレス成形は成形温度の低減が可能な成形法である。しかしながら本発明の成形品は大型である故に、その熱負荷の低減には限界がある。大型である故の熱負荷とは、例えば極めて長い流路、大容量の樹脂および長い射出時間でありながら単位時間あたりの流量が大きい射出充填などが例示される。
上記の射出プレス成形、殊に大型成形品の射出プレス成形においては、その中間型締め状態および中間型締め状態から最終型締め状態までの間の金型間の平行度の維持が重要である。射出プレス成形は上記の如く型締め力の小さな成形機にその上限に近い高重量の金型を備え付け成形を行う場合が多い。したがって金型重量により成形機の型締め機構における平行度の維持が困難となりやすい。また、樹脂充填時の圧力によって偏荷重が発生し金型の平行度の維持が困難となりやすい。平行度の狂いは金型のかじりなどを生じ製品の量産を困難にする。更に金型間の平行度の維持は、金型内の樹脂に対するより均一な圧力の負荷を達成する。これにより樹脂に負荷する圧力は全体として低い圧力を達成し、より歪みの少ない成形品の提供を可能とする。金型間の平行度が十分でない場合、樹脂成形品の箇所の違いにより負荷される圧力に差異が生じ、これは1つの歪み発生の要因となり得る。
上記の金型間の平行度の維持方法としては、(i)金型取り付け板を複数箇所、好ましくは角部4箇所の型締め機構で金型間の平行度を調整しながら金型間の平行度を維持する方法、並びに(ii)金型取り付け板(金型取り付け面)に対し複数箇所、好ましくは角部4箇所に対して矯正力を付与することにより金型間の平行度を調整しながら金型間の平行度を維持する方法が好適に例示される。かかる(i)の方法は型締め機構による平行度の維持方法であり、(ii)の方法は別途設けられた矯正力の付与機構による平行度の維持方法である。(i)の方法を実現する成形機としては、例えばプラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機である(株)名機製作所製MDIPシリーズを例示することができる。尚、型締め機構や矯正力の付与機構としては、通常の油圧シリンダーが好ましく用いられるが、その他圧空シリンダー、ボールネジおよびスクリューの組み合わせ、並びにラックギアおよびピニオンギアの組み合わせなどが例示される。
更に射出プレス成形における成形条件に関し簡単に説明する。射出プレス成形の中間型締め状態における金型容量の拡大倍率は、目的とする成形品容量の目的とする成形品容量の1.02〜5倍の範囲が好ましい。かかる下限はより好ましくは1.03倍、更に好ましくは1.05倍、特に好ましくは1.1倍である。かかる上限はより好ましくは4倍、更に好ましくは3.5倍、特に好ましくは3倍である。但しかかる範囲は、下記の圧縮ストローク量が適正な範囲にあることを前提とする。かかる範囲では大型の射出成形品においても歪みの少ない射出成形品が得られる。
更に樹脂の供給完了時における金型容量の拡大倍率は、目的とする成形品容量の1.002〜4.5倍の範囲が好ましい。かかる下限はより好ましくは1.03倍、更に好ましくは1.05倍、特に好ましくは1.1倍である。かかる上限はより好ましくは3.5倍、更に好ましくは3倍、特に好ましく2.7倍である。
射出プレス成形の最終型締め状態は、可動側金型と固定側金型とのパーティング面が互いに接触しない状態であることが好ましい。かかる状態とすることにより均一に樹脂に圧力を伝えることを可能とし歪みの少ない射出成形品が得られる。かかる状態の成形は、上記の金型間の平行度の維持の下で安定してなされる。したがって上記の金型間の平行度の維持は、かかる点からも射出プレス成形において重要である。尚、最終型締め状態における可動側金型と固定側金型とのパーティング面間の距離は0.05〜3mmの範囲が好ましく、1〜2mmがより好ましい。
射出プレス成形の中間型締め状態から最終型締め状態までの金型の移動量(以下、圧縮ストロークと称する場合がある)は、1〜10mmの範囲が好ましく、1〜6mmの範囲がより好ましく、2〜5mmの範囲が更に好ましい。かかる範囲の後退量は、射出プレス成形方法の利点である低い型締め力と、良好な成形効率および成形品外観とを両立する。また成形品の厚みは特に制限されないものの0.5〜10mmの範囲が好ましく、1〜7mmの範囲がより好ましい。
更に金型を中間型締め状態から最終型締め状態に移動する際の移動速度は、0.5mm/sec以上が好ましく、1mm/sec以上がより好ましく、10mm/sec以上が更に好ましい。L/Dの高い成形品ほど高い金型容量の拡大倍率が必要となり速い移動速度が求められる。成形品の歪みを低減するためには金型内部の溶融樹脂の熱的分布の変化が少ない間に所定の最終型締め状態までの圧縮工程を終了することが重要なためである。かかる移動速度がより速いほど大きい圧縮ストロークに対応できる。したがって移動速度は可能な限り高いことが好ましいが、現時点では事実上40mm/sec程度が装置上の限界となっている。35mm/secのレベルであれば十分に精密な速度制御が可能である。尚、かかる移動速度は中間型締め状態から最終型締め状態までの圧縮ストロークを圧縮に要した時間で除したものであり、必ずしも一定速度である必要はない。また上記の如く圧縮ストロークが大きく、金型の移動速度が大きいほど金型のかじりは生じやすくなることから、金型間の平行度の維持は重要かつ必須の条件となる。
本発明の射出成形品は成形品側面部分の1つのゲートのみを有するものがより好ましい。かかる射出成形品は射出プレス成形の利点を特に有効に活用できるからである。尚、この場合の1つのゲートとは成形品本体に対するゲートが1つであることを意味する。よって、射出成形機の樹脂排出口から該ゲートに至るまでの流路が複数存在してもよい。例えば、ファンゲートに対して複数のホットランナー注入口のある構造であってもよい。更にかかる構造においてSVG法を利用することにより、ファンゲートのゲート口全体に渡ってほぼ同時に樹脂が成形品本体に流入するよう制御することも、より歪みの少ない成形品を得る上で好ましい手法である。
<成形品について>
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、その最大投影面積が500〜50,000cmである。かかる下限は好ましくは5,000cm、より好ましくは10.000cmである。かかる上限は好ましくは40,000cm、より好ましくは35,000cmである。本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の有する利点は、成形品が大型であるほど顕著となる。即ち大型であるほど成形時の熱負荷は高くなり、本発明のB成分およびC成分の配合による熱安定性は有利に発揮される。
更に光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品の成形時の流動長は好ましくは30cm以上、より好ましくは35cm以上である。一方、流動長の上限としては200cm以下が適切であり、180cm以下がより適切である。
更に好適な成形品形状としては、成形品の厚み(D(mm))に対するゲート部から流動末端までの距離(L(mm))の比L/Dが、75以上であることが好ましく、100以上がより好ましく、130以上が更に好ましく、150以上が特に好ましい。一方、その上限は1,000以下が適切であり、800以下が好ましく、600以下が更に好ましい。
したがって、本発明によれば、前記の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなり、かかる最大投影面積を有する大型の射出成形品、殊に射出プレス成形品が提供される。
上述の本発明の成形品は、その表面がフレネルレンズ形状やシリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有するものであってもよく、またかかる形状を別途他の材料によって積層した積層板とすることも可能である。表面にフレネルレンズ形状の如き表面の凹凸を形成する方法としては、(1)金型キャビティ表面にかかる表面形状に対応する凹凸が設けられ、かかる凹凸が樹脂成形品表面に転写される方法、(2)かかる表面形状に対応する凹凸が設けられた別材料が金型キャビティ内にインサートされ樹脂成形品と一体化された後、かかる別材料が除去されて樹脂成形品表面に凹凸が設けられる方法、等が例示される。
また、場合によっては、かかるスクリーンは光輝性顔料を含む層を積層することにより、その表面凹凸によるレンズを省略することも可能である。さらに、本発明の成形品は光の反射を防止するため各種の光反射防止膜や紫外線吸収膜などが形成されてもよい。これらの形成方法としては例えば転写箔により形成する方法が例示される。
得られた成形品は、通常、最終製品に何らかの方法によって取り付けられる。かかる取り付けにおいて、直接取り付ける方法以外に、本発明の成形品に枠材を別途結合し、該枠材を通して最終製品に取り付ける方法であってもよい。かかる枠材は本発明の成形品が良好な白色の色相を有することから、白色またはその近似色(これらは透明を含む)とすることが外観上好ましい。
<表面改質について>
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、表面改質を施すことによりさらに他の機能を付与することが可能である。ここでいう「表面改質」とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、および印刷等の手段で樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させることを言い、通常の樹脂成形品に用いられる表面改質方法が適用できる。更にかかる表面改質方法は、(i)本発明の成形品に直接施す方法、および(ii)かかる処理を施した樹脂フィルムを本発明の成形品に積層する方法のいずれの方法も適用可能である。
樹脂成形品(上記(ii)の場合の樹脂フィルムを含む)の表面に金属層または金属酸化物層を積層する方法としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法、溶射法およびメッキ法が挙げられる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリングおよびイオンプレーティングが例示され、化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法および光CVD法等が例示される。かかる方法によりダイヤモンドライクカーボンの如き硬質被膜を形成することが可能である。また、溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等が例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキおよび電気メッキ法等が挙げられ、電気メッキ法においてはレーザーメッキ法を用いることができる。
前記方法のなかでも蒸着法およびメッキ法が本発明の成形品に金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。ATO、ITO、および酸化スズなどに代表される金属酸化物による表面改質は、比較的良好な光線透過率を有し、透過光の色相が比較的良好であり、かつ熱線をカットする。かかる金属酸化物による表面改質は、成形品のいずれの面になされてもよい。
本発明の成形品は、ハードコートを施すことにより特に屋外使用に適したものとなる。
次に本発明のハードコート層について説明する。本発明では、ハードコート処理として各種のハードコート剤が使用可能であり、本発明で使用するハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤などが例示される。かかるハードコート層の硬度は特に限定されるものではなく、ポリカーボネートの硬度より高いものであればよい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものであり、例えば、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に2官能性のシロキサン単位および1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るため各種界面活性剤、例えば、シロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤などを添加してもよい。
有機樹脂系ハードコート剤としては、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。ここで多官能アクリル樹脂としてはポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレートなどの樹脂が挙げられる。これらの中でも特に好適に紫外線硬化型のハードコート剤が好適である。更にかかるハードコート剤は、紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体が共重合した構成単位を含有することがより好ましい。より好適な有機樹脂系ハードコート剤は、かかる単量体とアルキル(メタ)アクリレート単量体とを共重合することによりハードコート層が形成されるものである。かかる紫外線硬化型のハードコート剤はその処理が簡便である点で好ましく、更に紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体が共重合した構成単位を容易に包含できる点において、成形品の耐光性を大きく改良できる点で好ましい。アクリル系ハードコート剤の市販品としては、例えばオリジン電気(株)製オリジアプトシリーズ、および(株)日本触媒製ユーダブルシリーズなどが例示される。これらは架橋剤成分と混合して使用することができる。
一方、ガラス様の硬度が成形品に求められる場合には、長期間の耐候性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤が好ましい。特に各種の樹脂からなるプライマー層(第1層)を形成した後、その上にシリコーン樹脂系ハードコート剤から調整されたトップ層(第2層)を形成したものが好ましい。
かかるプライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分およびポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、およびポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレートなどの各種多官能アクリル樹脂を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは60重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂およびウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
更に、本発明のシリコーン樹脂系ハードコート剤のプライマー層を形成する樹脂には、公知の光安定剤や紫外線吸収剤、並びにシリコーン樹脂ハードコート剤の触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤および添加助剤を含むことができる。
本発明のハードコート層は、紫外線吸収剤を含有することが、良好な耐久性(殊に密着性に対する耐久性)を有することから好適である。更に本発明のハードコート層のより好適な態様は次のとおりである。すなわち、本発明の成形品または芳香族ポリカーボネート樹脂フィルムの表面に第1層が形成され、第1層の表面に第2層が形成された構成のハードコート層であって、
第1層は、架橋したアクリル共重合体(アクリル共重合体−I)および紫外線吸収剤からなり、第2層は、架橋したオルガノシロキサン重合体からなり、
該架橋したアクリル共重合体(アクリル共重合体−I)は、50モル%以上の下記式(X−1)
Figure 0004808951
(式中Rはメチル基またはエチル基である。)
で表される繰り返し単位、
5〜30モル%の下記式(X−2)
Figure 0004808951
(式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。式(X−2)で表される繰り返し単位において少なくとも一部のRは単結合であり、残りが水素原子である。Rが単結合の場合はウレタン結合を介して、他の式(X−2)で表される繰り返し単位と結合している。)
で表される繰り返し単位、および
0〜30モル%の下記式(X−3)
Figure 0004808951
(但し、式中Yは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、炭素数2〜5のアルキル基、紫外線吸収残基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基である。但し、Yがメチル基であり、かつRがメチル基またはエチル基である場合を除く。)で表される繰り返し単位からなり、ウレタン結合と式(X−1)〜(X−3)で表される繰り返し単位の合計量とのモル比が4/100〜30/100の範囲にある架橋したアクリル共重合体であり、
該架橋したオルガノシロキサン重合体は、下記式(p−4)〜(p−6)
Figure 0004808951
Figure 0004808951
Figure 0004808951
(式中、Q、Qは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。)
で表される繰り返し単位からなり、該繰り返し単位の全量を100モル%としたとき、式(p−4):80〜100モル%、式(p−5):0〜20モル%、および式(p−6):0〜20モル%である架橋したオルガノシロキサン重合体である、ハードコート層である。
コート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。中でも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、およびスプレーコート法が好ましい。
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、改良された熱安定性を有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からの大型の射出成形品である。かかる成形品は、従来主としてシートおよびその曲げ加工品が使用されていた各種の成形品に、飛躍的な生産性の向上と、部品のモジュール化をもたらすことができる。かかる成形品としては、例えば電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス(建築物の採光装置におけるドームの如きものを含む)、画像読取装置、表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置の如きバックライトモジュールに使用される光拡散板、およびプロジェクターテレビの如き投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板などが例示される。
更に従来あまり使用のなかった分野にも適用可能である。かかる分野としては、車両用窓、車両搭載用の内照式看板(特に立体形状を有するもの)、およびLED光源アレイによる面状発光装置の前面カバーなどが好適に例示される。車両用窓としては、ルーフウインド(サイドウインドやバックウインドまで回り込むものを含む)、バックウインド、デタッチャブルトップ、およびウインドリフレクターなどが例示される。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、樹脂組成物および成形品の評価は下記(1)〜(2)の方法により行った。
(1)板状成形品による熱安定性評価(実施例1〜5および比較例1〜5)
長さ300mm、幅300mm、および厚み5mmの板状成形品をシリンダ温度350℃および該温度で10分間滞留する条件で射出成形した。かかる成形品におけるシルバーストリークの発生状況から、樹脂組成物の熱安定性を評価した。滞留のない成形条件においては十分にパージショットした後、連続15ショットの射出成形を行い、成形の安定した6〜15ショット目までの計10個の成形品を使用して評価を行った。一方滞留条件においては、連続2ショットの射出成形を行うことにより計2個の成形を使用して評価を行った。評価は下記の基準に基づき行った。
○:いずれの成形品もシルバーストリークは認められない
△:一部の成形品にわずかなシルバーストリークが認められる
×:いずれの成形品にもシルバーストリークが認められる
(2)大型射出プレス成形品による熱安定性評価(実施例6〜9および比較例6〜7)
図1に示す肉厚5mmの自動車屋根成形品を射出プレス成形法により成形し、その外観を確認した。成形は十分なパージショット後、連続20ショットの成形を行い、成形の安定した11〜20ショット目までの計10個の成形品を使用して評価を行った。評価は上記と同様下記の基準に基づき行った。
○:いずれの成形品もシルバーストリークは認められない
△:一部の成形品にわずかなシルバーストリークが認められる
×:いずれの成形品にもシルバーストリークが認められる
〔実施例1〜9、比較例1〜7〕
(i)成形用材料の作成
表1および表2記載の原料を表記載の配合割合で配合し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物を押出機のスクリュー根元に位置する第1供給口に供給して押出した。押出機は径30mmφのスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー))を使用した。ベント口手前に1箇所の混練ゾーンを有するスクリュー構成を採用した。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出機のシリンダ温度は第1供給口部:270℃からダイス部:280℃とした。シリンダ温度のプロファイルはほぼブロックごとに均等に増加する配分とした。押出されたストランドをストランドカットしてペレットを得た。
(ii)板状成形品の作成(実施例1〜5および比較例1〜5)
上記で得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥した。乾燥されたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製:SG260M−HP)に供給し、板状成形品を射出成形した。成形条件はシリンダ温度350℃、金型温度80℃、射出速度20mm/秒、保圧50MPa、冷却時間100秒、および成形サイクル120秒とした。上記のとおり15ショット連続で成形した後、、計量が完了した状態で射出シリンダを後退させてシリンダ内で溶融樹脂を10分間滞留させた。その後再び2ショット連続で成形し、滞留後の成形品を得た。
(iii)大型射出プレス成形品の作成(実施例6〜9および比較例6〜7)
上記で得られたペレットを、プラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図1に示す自動車用屋根成形品を製造した。かかる成形機は、上記と同様に120℃で5時間程度のレベルまでにペレットを乾燥可能なホッパードライヤー設備を付帯しており、かかる乾燥後のペレットが成形に使用された。乾燥は110℃の雰囲気下で行った。
成形はシリンダー温度300℃、ホットランナー設定温度280℃、固定側金型温度110℃、可動側金型温度100℃、射出速度16mm/秒、充填時間31秒、中間型締め位置から最終型締め位置までのストロークであるプレスストローク3.0mm、冷却時間230秒、および成形サイクル310秒であった。また可動側金型パーティング面は最終の前進位置において固定側金型パーティング面に接触しないものとした。ランナーはモールドマスターズ社製のバルブゲート型のホットランナー(ゲート直径:7mmφ)を用い、充填完了直前に型圧縮を開始し、充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダーへ逆流しない条件とした。
(iv)ハードコート処理
実施例6〜9の自動車屋根用成形品については、ハードコート処理を行った。
(iv−1)ハードコート剤の調整(下記説明において“部”は“重量部”を示す)
(iv−1−1)アクリル共重合体(EMA−HEMA(I))の製造
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと略称する)102.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略称する)13部、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略称する)0.18部および1,2−ジメトキシエタン200部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、EMA/HEMAの組成比90/10(モル比)のコポリマー(EMA−HEMA(I))98部を得た。該コポリマーの水酸基価は48.7mgKOH/g、重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で90,000であった。
(iv−1−2)第1層用アクリル樹脂組成物(HC−1)の調整
上記EMA−HEMA(I)10部および紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルス(株)製:「チヌビン411L」(商品名))2.00部をメチルイソブチルケトン50部および2−ブタノール25部からなる混合溶媒に溶解し、さらにこの溶液にEMA−HEMA(I)のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1当量になるようにポリイソシアネート化合物前駆体(デグサジャパン(株)製:「VESTANATB1358/100」(商品名))2.96部を添加し、さらにジメチルチンジネオデカノエート0.005部、シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:「APZ−6633 5%エタノール溶液」(商品名))1.5部を添加し25℃で30分間攪拌し、第1層用のアクリル樹脂組成物(HC−1)を調製した。
(iv−1−3)第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物(HC−2)の調整
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製:「カタロイドSN30」(商品名)、固形分濃度30重量%)100部に35%塩酸0.1部を加えて攪拌し、この分散液に氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン136部、ジメチルジメトキシシラン20.3部を加えた。この混合液を25℃で6時間攪拌して得られた反応液に、硬化触媒およびpH調節剤として45%コリンメタノール溶液1部および酢酸4部を加えイソプロパノール200部で希釈してオルガノシロキサン樹脂組成物(HC−2)を調製した。
(iv−2)ハードコート剤の塗布
上記で製造された車輌用屋根成形品を130℃で1時間クリーンオーブン中でアニール処理を行った。その後上記で調整された第1層用アクリル樹脂組成物(HC−1)を液だまりができないようディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分間静置後130℃で1時間熱風循環オーブン中で熱硬化させ、4.0μmの膜厚の硬化膜を積層させた。次いで該成形品の被膜表面上に上記で調整された第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物(HC−2)をディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分間静置後、120℃で2時間熱風循環オーブン中で熱硬化させ、4.0μmの膜厚の硬化膜を積層させた。
なお、表1および表2記載の各成分を示す記号は、それぞれ下記のものを意味する。
(A成分:芳香族ポリカーボネート)
A−1:粘度平均分子量23,900のホスゲン法により製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:「パンライトL−1250WP」(商品名))
(B成分:シリコーン架橋粒子)
TS120:ビーズ状架橋シリコーン粒子(東芝シリコーン(株)製:「トスパール120」(商品名)、平均粒径:2μm)
(B成分の比較用)
MBX5:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:「テクポリマーMBX−5」(商品名)、平均粒径:5μm)
(C成分)
PEP24:上述の(3)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−24G」(商品名))
PEP24:上述の(4)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−36」(商品名))
PEP45:上述の(5)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−45」(商品名))
(C成分の比較用)
PEP8:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−8」(商品名))
PEPQ:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とするホスホナイト系安定剤(クラリアントジャパン(株)製:「サンドスタブP−EPQ」(商品名))
P168:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:「Irgafos168」(商品名))
(D成分)
TMP:トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製:「TMP」(商品名))
(E成分)
AO80:3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(旭電化工業(株)製:「アデカスタブAO−80」(商品名))
(その他)
CEIP:2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(竹本油脂(株)製:「CEi−P」(商品名))
H−PSR:クマリン系蛍光増白剤(ハッコールケミカル(株)製:「ハッコールPSR」(商品名))
KL−OS:蛍光増白剤(日本化薬(株)製:「カヤライトOS」(商品名))
Figure 0004808951
Figure 0004808951
表1および表2に示す結果から、特定の高分子微粒子とホスファィト系安定剤との組合せにおいて良好な熱安定性を有する樹脂組成物が得られ、その結果安定して大型の射出成形品が得られることがわかる。また比較例5と比較例7との比較からわかるように、自動車屋根成形品の製造では、板状成形品の製造に比較してシルバーストリークの発生は顕著であった。かかる結果は、自動車屋根成形品は板状成形品に比較して大幅に低いシリンダ温度で成形されていることから、大型成形品を少ないゲート(実施例は1点ゲート)から注入する射出プレス成形特有の熱負荷が極めて高いことを反映した結果といえる。本発明の樹脂組成物はかかる大型成形品の熱負荷に十分に耐え得る熱安定性を有する光拡散性の樹脂組成物である。更にその結果大型の光拡散性の成形品が、季節変動(例えば安定剤の安定化効果の季節変動)や製造設備の差異に大きな影響を受けることなく安定して提供される。
実施例において成形した自動車屋根成形品の概略図を示す。図示されるとおり該自動車屋根成形品はなだらかな曲面から構成される3次元形状を有する。[1−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図)を示し、[1−B]は長手方向の側面図、[1−C]は流動末端側からの側面図を示す。
符号の説明
11 自動車屋根成形品本体(本体部は厚み5mm、最大投影面積は約11,000cmである)
12 ホットランナーノズル先端に対応する部分
13 成形品のゲート(該ゲートは厚み5mmの平板状である)
14 成形品ゲート側長さ(成形品の最大幅に相当し、1000mmである)
15 成形品流動末端側の長さ(900mm)
16 成形品本体の長さ(1240mm)
17 ゲート部を含む成形品全体の長さ(1350mm)
18 成形品の高さ(90mm)
19 取り付け用爪部

Claims (5)

  1. 芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、シリコーン架橋粒子(B成分)0.1〜30重量部、下記一般式(3)〜(5)で示される化合物から選択される少なくとも1種のホスファイト化合物(C成分)0.02〜0.5重量部、およびトリアルキルホスフェート化合物(D成分)0.001〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物を射出成形することにより製造された、最大投影面積が500〜50,000cmを有する自動車屋根成形品。
    Figure 0004808951
    Figure 0004808951
    Figure 0004808951
  2. 前記樹脂組成物は、更に100重量部のA成分を基準として、0.001〜0.5重量部の3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基を有するヒンダードフェノール化合物(E成分)0.001〜1重量部が配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の自動車屋根成形品。
  3. 前記成形品は、樹脂組成物を射出プレス成形することにより製造されたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の自動車屋根成形品。
  4. 前記成形品は、シート状をなしそのいずれか1つの表面にハードコート処理がなされるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の自動車屋根成形品。
  5. 最大投影面積が500〜50,000cmを有する自動車屋根成形品を射出成形法により製造する方法であって、該成形品を構成する樹脂組成物として芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、シリコーン架橋粒子(B成分)0.1〜30重量部、請求項1記載の一般式(3)〜(5)で示される化合物から選択される少なくとも1種のホスファイト化合物(C成分)0.001〜0.5重量部、およびトリアルキルホスフェート化合物(D成分)0.001〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物を用いることを特徴とする自動車屋根成形品の製造方法。
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