JP4808951B2 - 光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品 - Google Patents
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しかしながら、前記の知見は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる大型射出成形品の提供には未だ十分とはいえなかった。
<A成分について>
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネートは、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法および環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
(a)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、BCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(b)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、BCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(c)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、Bis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(a)Tgが120〜180℃であり、かつ吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%である芳香族ポリカーボネート、あるいは、
(b)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%である芳香族ポリカーボネート。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
シリコーン架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものである。かかる架橋粒子には、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いもの、並びにオルガノシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いもののいずれも含む。本発明のシリコーン架橋粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。本発明のポリオルガノシルセスキオキサンは、R−SiO3/2(Rは一価の有機基)で示される3官能性シロキサン単位(以下単に“T単位”と称する)が、1〜4官能性シロキサン単位の合計100モル%中50モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であるものをいう。
本発明の成形品を構成する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、上述のとおり下記一般式(1)で表される特定のホスファイト化合物が配合される。
光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品である。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記A成分〜C成分を必須とするが、更にトリアルキルホスフェート化合物(D成分)を含有することが好ましい。かかるD成分のアルキル基としては炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキルである。3つのアルキル基は互いに同一であっても異なっていてもよい。D成分として特に好適であるのはトリメチルホスフェートである。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、ヒンダードフェノール化合物を含有することができる。中でも好適であるのは、前述のとおり3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基を有するヒンダードフェノール化合物(E成分)である。E成分の化合物としては、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセテート、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセチルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物における各成分の配合量は次のとおりである。シリコーン架橋粒子(B成分)の配合量は、100重量部のA成分を基準として0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.15〜3重量部である。B成分がかかる下限未満では光拡散性が不足しがちである。一方B成分がかかる上限を超える場合には樹脂組成物の耐熱性や機械的特性が不足しがちとなり、また樹脂組成物製造時や成形品製造時の加工性にも劣るようになる。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、更に所望により付加的成分として、A成分およびB成分以外の重合体や、その他の各種添加剤を加えても差し支えない。
かかる重合体としては、ビニル系ポリマーおよび芳香族ポリエステル等を例示することができる。
かかるビニル系ポリマーとしては、ポリスチレン(PS)(シンジオタクチックポリスチレンを含む)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS共重合体)、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(MS共重合体)、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)などが例示される。これらの中でもポリスチレン、AS共重合体、およびPMMAが好適である。かかるビニル系ポリマーは、エポキシ基および酸無水物基などに代表される各種の官能基で変性されていてもよい。これらスチレン系ポリマーは、2種以上混合して使用することも可能である。ビニル系ポリマーの配合は、流動性の改良、耐薬品性の改良、制振性の改良(PMMAにおいて)、および色相の改良に効果を発揮する。また数平均分子量が100万を超える超高分子量ポリマーは、射出プレス成形におけるヘジテーションの抑制に効果を有する。かかるビニル系ポリマーを配合する場合、その配合量は100重量部のA成分を基準として0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部が適切である。
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、C成分およびD成分以外のリン系熱安定剤を含むことができる。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル(C成分およびD成分以外のもの)、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。亜リン酸は樹脂組成物中重量割合で0.1〜10ppmの量となるよう配合して利用できる。
上述したヒンダードフェノール化合物のうち、E成分以外の具体例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好適に例示される。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は離型剤を含むことができる。離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワツクス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などが例示される。かかる離型剤の配合量は100重量部のA成分を基準として好ましくは0.005〜2重量部、より好ましくは0.01〜0.8重量部である。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、その色相を長期に維持するため紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、およびシアノアクリレート系化合物などが例示される。しかしながら、本発明における紫外線吸収剤は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の色相を損なうことなく、かつ該組成物中の成形加工時において安定に存在しなければならない。したがって、本発明において特に好適な紫外線吸収剤が存在する。本発明の紫外線吸収剤としては、環状イミノエステル系化合物、分子量400以上のシアノアクリレート系化合物、および分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物である。かかる化合物の具体例としては、環状イミノエステル系化合物として2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(竹本油脂(株)からCEi−P(商標)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商標)として市販されている)が例示される。分子量400以上のシアノアクリレート系化合物としては、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(BASF社からUVINUL3030(商標)として市販されている)が例示される。分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](市販品としては旭電化工業(株)製、ADEKASTAB LA−31(商標)として市販されている)が例示される。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中重量割合で0.05〜3.0ppm含むことができる。かかるブルーイング剤は成形品に自然な透明感を付与する点で有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の量が3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、その遮光性を調整する目的で、白色顔料として二酸化チタン、酸化亜鉛、および硫化亜鉛を配合することができる。かかる白色顔料の中でも特に二酸化チタンが好適である。かかる二酸化チタンは、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズおよび亜鉛などの金属の酸化物で表面処理されていることが好ましい。かかる表面処理は高密度な処理および低密度(多孔質)な処理の何れも適用できる。更に好適な二酸化チタンは有機化合物で表面処理される。かかる表面処理剤としては、アミン類化合物、シリコーン化合物、およびポリオール化合物をそれぞれ主成分とする表面処理剤などが利用される。殊にアルキルハイドロジェンポリシロキサンで被覆した二酸化チタンが好適に使用される。本発明の樹脂組成物において二酸化チタンの含有量は、100重量部のA成分を基準として0.0001〜0.5重量部、より好ましくは0.0005〜0.1重量部である。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、その遮光性を調整する目的で、カーボンブラックを配合することができる。好ましいカーボンブラックはオイルファーネスブラックやチャンネルブラックである。またかかるカーボンブラックにおいてHCC、HCF、MCF、LFF、およびRCFなどいずれのタイプも使用可能であるが、より好ましいのはHCF、MCF、およびLFFなどである。またpH値は7以下であるものがより好適であり、2〜6の範囲が更に好ましい。カーボンブラックは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。かかるカーボンブラックの原料形態は特に制限されるものでなく、炭素フィラーのみの粉体形態のほか、オイル中に分散された形態、バインダー樹脂によって顆粒化された形態、およびポリカーボネート樹脂や他の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチの形態など各種の態様のものが使用可能である。カーボンブラックは本発明の樹脂組成物中、重量割合で0.05〜5ppmの範囲が好ましく、0.1〜3ppmの範囲がより好ましく、0.2〜2ppmの範囲が更に好ましい。上記の範囲内においては適度な遮光性を効率的に得ることができる。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で上記以外にも各種の染顔料を使用することができる。かかる染顔料しては、例えばペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などが例示される。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することもできる。その他メタリック顔料(例えば金属酸化物被覆板状充填材、金属被覆板状充填材、および金属フレークなど)を配合してより良好なメタリック色彩を得ると共に、適度に熱線反射を行い、室内温度をより適正に保つこともできる。他の染顔料の含有量は、100重量部のA成分を基準として、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.8重量部である。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量は100重量部のA成分を基準として、5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1.5〜3重量部の範囲である。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.0005〜0.2重量部、より好ましくは0.0008〜0.1重量部、更に好ましくは0.001〜0.07重量部である。金属酸化物系近赤外線吸収剤および金属ホウ化物系近赤外線吸収剤は、樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.05〜5ppm(重量割合)の範囲が好ましい。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩以外の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
更に本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を調製するには、任意の方法が採用される。例えば、樹脂組成物の製造法として、前記各成分並びに任意に配合する他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機等を挙げることができる。予備混合では、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練しペレタイザーの如き機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、および恒熱撹拌容器等を用いることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより、強力なせん断力で高分子微粒子が基体樹脂中に微分散される。
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、前記で製造された樹脂組成物のペレットを射出成形することにより製造される。ここで射出成形法としては、通常の射出成形法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、および超高速射出成形など利用することができる。中でも射出プレス成形は下記の理由などから好適である。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。更にフローモールド法およびSVG法などの利用も可能である。
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、その最大投影面積が500〜50,000cm2である。かかる下限は好ましくは5,000cm2、より好ましくは10.000cm2である。かかる上限は好ましくは40,000cm2、より好ましくは35,000cm2である。本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の有する利点は、成形品が大型であるほど顕著となる。即ち大型であるほど成形時の熱負荷は高くなり、本発明のB成分およびC成分の配合による熱安定性は有利に発揮される。
本発明における光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物成形品は、表面改質を施すことによりさらに他の機能を付与することが可能である。ここでいう「表面改質」とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、および印刷等の手段で樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させることを言い、通常の樹脂成形品に用いられる表面改質方法が適用できる。更にかかる表面改質方法は、(i)本発明の成形品に直接施す方法、および(ii)かかる処理を施した樹脂フィルムを本発明の成形品に積層する方法のいずれの方法も適用可能である。
次に本発明のハードコート層について説明する。本発明では、ハードコート処理として各種のハードコート剤が使用可能であり、本発明で使用するハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤などが例示される。かかるハードコート層の硬度は特に限定されるものではなく、ポリカーボネートの硬度より高いものであればよい。
第1層は、架橋したアクリル共重合体(アクリル共重合体−I)および紫外線吸収剤からなり、第2層は、架橋したオルガノシロキサン重合体からなり、
該架橋したアクリル共重合体(アクリル共重合体−I)は、50モル%以上の下記式(X−1)
で表される繰り返し単位、および
0〜30モル%の下記式(X−3)
該架橋したオルガノシロキサン重合体は、下記式(p−4)〜(p−6)
で表される繰り返し単位からなり、該繰り返し単位の全量を100モル%としたとき、式(p−4):80〜100モル%、式(p−5):0〜20モル%、および式(p−6):0〜20モル%である架橋したオルガノシロキサン重合体である、ハードコート層である。
長さ300mm、幅300mm、および厚み5mmの板状成形品をシリンダ温度350℃および該温度で10分間滞留する条件で射出成形した。かかる成形品におけるシルバーストリークの発生状況から、樹脂組成物の熱安定性を評価した。滞留のない成形条件においては十分にパージショットした後、連続15ショットの射出成形を行い、成形の安定した6〜15ショット目までの計10個の成形品を使用して評価を行った。一方滞留条件においては、連続2ショットの射出成形を行うことにより計2個の成形を使用して評価を行った。評価は下記の基準に基づき行った。
○:いずれの成形品もシルバーストリークは認められない
△:一部の成形品にわずかなシルバーストリークが認められる
×:いずれの成形品にもシルバーストリークが認められる
図1に示す肉厚5mmの自動車屋根成形品を射出プレス成形法により成形し、その外観を確認した。成形は十分なパージショット後、連続20ショットの成形を行い、成形の安定した11〜20ショット目までの計10個の成形品を使用して評価を行った。評価は上記と同様下記の基準に基づき行った。
○:いずれの成形品もシルバーストリークは認められない
△:一部の成形品にわずかなシルバーストリークが認められる
×:いずれの成形品にもシルバーストリークが認められる
(i)成形用材料の作成
表1および表2記載の原料を表記載の配合割合で配合し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物を押出機のスクリュー根元に位置する第1供給口に供給して押出した。押出機は径30mmφのスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー))を使用した。ベント口手前に1箇所の混練ゾーンを有するスクリュー構成を採用した。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出機のシリンダ温度は第1供給口部:270℃からダイス部:280℃とした。シリンダ温度のプロファイルはほぼブロックごとに均等に増加する配分とした。押出されたストランドをストランドカットしてペレットを得た。
上記で得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥した。乾燥されたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製:SG260M−HP)に供給し、板状成形品を射出成形した。成形条件はシリンダ温度350℃、金型温度80℃、射出速度20mm/秒、保圧50MPa、冷却時間100秒、および成形サイクル120秒とした。上記のとおり15ショット連続で成形した後、、計量が完了した状態で射出シリンダを後退させてシリンダ内で溶融樹脂を10分間滞留させた。その後再び2ショット連続で成形し、滞留後の成形品を得た。
上記で得られたペレットを、プラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図1に示す自動車用屋根成形品を製造した。かかる成形機は、上記と同様に120℃で5時間程度のレベルまでにペレットを乾燥可能なホッパードライヤー設備を付帯しており、かかる乾燥後のペレットが成形に使用された。乾燥は110℃の雰囲気下で行った。
実施例6〜9の自動車屋根用成形品については、ハードコート処理を行った。
(iv−1)ハードコート剤の調整(下記説明において“部”は“重量部”を示す)
(iv−1−1)アクリル共重合体(EMA−HEMA(I))の製造
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと略称する)102.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略称する)13部、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略称する)0.18部および1,2−ジメトキシエタン200部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、EMA/HEMAの組成比90/10(モル比)のコポリマー(EMA−HEMA(I))98部を得た。該コポリマーの水酸基価は48.7mgKOH/g、重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で90,000であった。
上記EMA−HEMA(I)10部および紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルス(株)製:「チヌビン411L」(商品名))2.00部をメチルイソブチルケトン50部および2−ブタノール25部からなる混合溶媒に溶解し、さらにこの溶液にEMA−HEMA(I)のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1当量になるようにポリイソシアネート化合物前駆体(デグサジャパン(株)製:「VESTANATB1358/100」(商品名))2.96部を添加し、さらにジメチルチンジネオデカノエート0.005部、シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:「APZ−6633 5%エタノール溶液」(商品名))1.5部を添加し25℃で30分間攪拌し、第1層用のアクリル樹脂組成物(HC−1)を調製した。
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製:「カタロイドSN30」(商品名)、固形分濃度30重量%)100部に35%塩酸0.1部を加えて攪拌し、この分散液に氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン136部、ジメチルジメトキシシラン20.3部を加えた。この混合液を25℃で6時間攪拌して得られた反応液に、硬化触媒およびpH調節剤として45%コリンメタノール溶液1部および酢酸4部を加えイソプロパノール200部で希釈してオルガノシロキサン樹脂組成物(HC−2)を調製した。
上記で製造された車輌用屋根成形品を130℃で1時間クリーンオーブン中でアニール処理を行った。その後上記で調整された第1層用アクリル樹脂組成物(HC−1)を液だまりができないようディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分間静置後130℃で1時間熱風循環オーブン中で熱硬化させ、4.0μmの膜厚の硬化膜を積層させた。次いで該成形品の被膜表面上に上記で調整された第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物(HC−2)をディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分間静置後、120℃で2時間熱風循環オーブン中で熱硬化させ、4.0μmの膜厚の硬化膜を積層させた。
(A成分:芳香族ポリカーボネート)
A−1:粘度平均分子量23,900のホスゲン法により製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:「パンライトL−1250WP」(商品名))
(B成分:シリコーン架橋粒子)
TS120:ビーズ状架橋シリコーン粒子(東芝シリコーン(株)製:「トスパール120」(商品名)、平均粒径:2μm)
(B成分の比較用)
MBX5:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:「テクポリマーMBX−5」(商品名)、平均粒径:5μm)
PEP24:上述の(3)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−24G」(商品名))
PEP24:上述の(4)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−36」(商品名))
PEP45:上述の(5)式で示される化合物(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−45」(商品名))
(C成分の比較用)
PEP8:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化工業(株)製:「アデカスタブPEP−8」(商品名))
PEPQ:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とするホスホナイト系安定剤(クラリアントジャパン(株)製:「サンドスタブP−EPQ」(商品名))
P168:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:「Irgafos168」(商品名))
TMP:トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製:「TMP」(商品名))
(E成分)
AO80:3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(旭電化工業(株)製:「アデカスタブAO−80」(商品名))
(その他)
CEIP:2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(竹本油脂(株)製:「CEi−P」(商品名))
H−PSR:クマリン系蛍光増白剤(ハッコールケミカル(株)製:「ハッコールPSR」(商品名))
KL−OS:蛍光増白剤(日本化薬(株)製:「カヤライトOS」(商品名))
12 ホットランナーノズル先端に対応する部分
13 成形品のゲート(該ゲートは厚み5mmの平板状である)
14 成形品ゲート側長さ(成形品の最大幅に相当し、1000mmである)
15 成形品流動末端側の長さ(900mm)
16 成形品本体の長さ(1240mm)
17 ゲート部を含む成形品全体の長さ(1350mm)
18 成形品の高さ(90mm)
19 取り付け用爪部
Claims (5)
- 前記樹脂組成物は、更に100重量部のA成分を基準として、0.001〜0.5重量部の3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基を有するヒンダードフェノール化合物(E成分)0.001〜1重量部が配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の自動車屋根成形品。
- 前記成形品は、樹脂組成物を射出プレス成形することにより製造されたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の自動車屋根成形品。
- 前記成形品は、シート状をなしそのいずれか1つの表面にハードコート処理がなされるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の自動車屋根成形品。
- 最大投影面積が500〜50,000cm2を有する自動車屋根成形品を射出成形法により製造する方法であって、該成形品を構成する樹脂組成物として芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、シリコーン架橋粒子(B成分)0.1〜30重量部、請求項1記載の一般式(3)〜(5)で示される化合物から選択される少なくとも1種のホスファイト化合物(C成分)0.001〜0.5重量部、およびトリアルキルホスフェート化合物(D成分)0.001〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物を用いることを特徴とする自動車屋根成形品の製造方法。
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