JP3759303B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用 いた光線反射板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた光線反射板に関し、さらに詳しくは、難燃性や耐衝撃性などの機械物性を損なうことなく、高反射率性、遮光性、耐熱老化性、耐塵埃付着性などを向上させた臭素化合物を含有しない難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、及びこの組成物を成形してなる液晶ディスプレイバックライト用などとして好適な光線反射板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、機械物性(特に、耐衝撃特性)、電気的特性、透明性などに優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、OA機器や電気・電子機器分野、建築分野などの様々な分野において幅広く利用されている。そして、これらの利用分野の中で、特に液晶ディスプレイバックライト用反射板の用途においては、高い反射率が要求されている。
【0003】
このポリカーボネート樹脂は、各種熱可塑性樹脂の中では酸素指数が高く、一般的に自己消火性を有する樹脂であるが、OA機器や電気・電子機器分野、その他各種用途における安全上の要求を満たすために、さらに難燃性を高めた樹脂組成物が強く求められている。
一方、近年、環境問題から、難燃剤のノンブロム(無臭素)化が要求されており、また、液晶ディスプレイバックライト用反射板の用途では、前記した高い反射率とともに、高い遮光性及び耐光性が要求されている。さらに、テレビやパーソナルコンピューター(パソコン)などの液晶ディスプレイが使用されている製品の薄肉化に伴い、成形性に優れる材料が求められている。
加えて、液晶パネルが高精細、高輝度に改善が図られる中で、バックライト用反射材に付着した塵埃がディスプレイ画面に浮き出て見えるという問題が発生しつつある。
【0004】
これらの背景から、難燃性や耐衝撃性などの機械物性を維持するとともに、高反射率性、遮光性、耐熱老化性などに優れる臭素化合物を含有しない難燃性ポリカーボネート樹脂組成物で塵埃付着が発生しない樹脂組成物が要望されている。
ポリカーボネート樹脂の反射率を向上させた材料としては、ポリカーボネート樹脂に酸化チタンを配合したものが知られている(特公昭63−26140号公報など)。しかしながら、従来の酸化チタンを配合した材料は、遮光性が低く、透けの問題が生じ、輝度が低下するのを免れない上、耐塵埃付着性に劣り、かつ耐熱老化性に劣る等の多くの欠点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、難燃性や耐衝撃性などの機械物性を損なうことなく、高反射率性、遮光性、耐熱老化性及び耐塵埃付着性などを向上させたノンブロム難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、及びこのものを用いた光線反射特性に優れる難燃性光線反射板を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、比較的多量の酸化チタンを含有するポリカーボネート樹脂に、さらに特定の帯電防止剤とリン系酸化防止剤及び特定のオルガノポリシロキサンさらに必要に応じハロゲン非含有リン酸エステル化合物、テトラフルオロエチレン、光拡散剤及びスチルベンビスベンゾオキサゾ−ル誘導体をそれぞれ所定の割合で含有させたポリカーボネート樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を成形してなる光線反射板がその目的に適合しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート樹脂と(B)酸化チタン粉末とを重量比70:30〜90:10の割合で含有し、かつ上記(A)成分と(B)成分との合計重量(100重量部)に基づき、(C)アルキルベンゼンスルホン酸系帯電防止剤1〜8重量部(D)リン系酸化防止剤100〜3000重量ppm及び(E)アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン0.01〜5重量部を配合してなる難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
(2)(A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(F)ハロゲン非含有リン酸エステル化合物をリン元素として0.05〜1重量部配合してなる(1)記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
(3)(A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(G)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン0.01〜1重量部を配合してなる(1)又は(2)に記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
(4)(A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(H)光拡散剤0.05〜5重量部を配合してなる(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
(5)(A)成分と(B)成分の合計重量に基づき、さらに(I)スチルベンビスベンゾオキサゾ−ル誘導体1〜1000重量ppmを配合してなる(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板。
(7)液晶ディスプレイバックライト用反射板である(6)記載の光線反射板、を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物において、(A)成分として用いられるポリカ−ボネ−ト樹脂としては、種々のものが挙げられるが、一般式(I)
【0009】
【化1】
【0010】
で表される構造の繰り返し単位を有する重合体が好適である。
上記一般式(I)において、X1 及びX2 は、それぞれ炭素数1〜6の直鎖状,分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,tert−ブチル基,n−アミル基,イソアミル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基などが挙げられる。このX1 及びX2 はたがいに同一であっても異なっていてもよい。a及びbは、それぞれX1 及びX2 の置換数を示し、0〜4の整数である。X1 が複数ある場合、複数のX1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、X2 が複数ある場合、複数のX2 はたがいに同一でも異なっていてもよい。
【0011】
Yは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基(例えばメチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチリレン基,ヘキシレン基など),炭素数2〜8のアルキリデン基(例えばエチリデン基,イソプロピリデン基など),炭素数5〜15のシクロアルキレン基(例えばシクロペンチレン基,シクロヘキシレン基など),炭素数5〜15のシクロアルキリデン基(例えばシクロペンチリデン基,シクロヘキシリデン基など),−S−,−SO−,−SO2 −,−O−,−CO−結合又は式(II−1)若しくは式(II−2)
【0012】
【化2】
【0013】
で表される結合を示す。
上記重合体は、通常一般式(III)
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、X1 ,X2 ,a,bおよびYは、前記定義と同じである。)
で表される二価フェノールと、ホスゲンや炭酸エステル化合物等のカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。
すなわち、例えば塩化メチレン等の溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、二価フェノールとホスゲン等のカーボネート前駆体との反応により、或いは溶媒の存在下又は不存在下、二価フェノールと炭酸エステル化合物等のカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造することができる。
【0016】
前記一般式(III)で表される二価フェノールとしては様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称、ビスフェノールA〕が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
炭酸エステルとしては、例えばジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させてポリカーボネートを製造する際に、必要に応じて分子量調節剤を用いることができる。この分子量調節剤については特に制限はなく、従来ポリカーボネートの製造において慣用されているものを用いることができる。このようなものとしては、例えばフェノール,p−クレゾール,p−tert−ブチルフェノール,p−tert−オクチルフェノール,p−クミルフェノール,ノニルフェノールなどの一価フェノールが挙げられる。
【0018】
この(A)成分のポリカーボネート樹脂は、前記の二価フェノールの一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。更に、多官能性芳香族化合物を上記一価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。
また、数平均重合度5以上からなるオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であってもよい。
【0019】
さらには、各種のポリカーボネート樹脂二種以上からなる混合物であってもよい。
本発明の組成物において、(A)成分として用いられるポリカーボネート樹脂は、機械的強度、特にアイゾット衝撃強度及び成形性などの点から、粘度平均分子量が13000〜30000の範囲にあるもの、特に15000〜25000の範囲にあるものが好ましい。
【0020】
このような特性を有するポリカーボネート樹脂は、例えばタフロンFN3000A、FN2500A、FN2200A、FN1900A、FN1500A(商品名,出光石油化学(株)製)のような芳香族ポリカーボネート樹脂として市販されている。
本発明の樹脂組成物において、(B)成分として用いられる酸化チタン粉末は、本質的に低反射性(高透明性)である(A)成分のポリカーボネート樹脂に低透明化,高白度化をもたらし、高反射性を付与するとともに、該ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させる作用を有している。
【0021】
なお、ポリカーボネート樹脂に酸化チタンを白色顔料として添加した組成物は、既に特公昭63−26140号公報、特開平6−200140号公報、米国特許第5391600号明細書等に開示されているが、該組成物を用いた反射板等の具体的用途については言及されていない。
(B)成分としての酸化チタンは上述のように(A)成分のポリカーボネート樹脂に低透明性、高反射性を付与する目的から微粉末の形態で使用されるが、各種粒度の微粉末の酸化チタンは、塩素法または硫酸法のいずれの方法によっても製造することができる。
【0022】
本発明において使用される酸化チタンは、ルチル型およびアナターゼ型のいずれでもよいが、熱安定性、耐候性等の点でルチル型が好ましい。またその微粉末粒子の形状は特に限定されるものではなく、鱗片状,球状,不定形等適宜選択使用できる。
この(B)成分として使用される酸化チタンは、アルミニウム及び/又は珪素の含水酸化物の他、アミン化合物、ポリオール化合物等で表面処理したものが好ましい。この処理をすることによりポリカーボネート樹脂組成物中での均一分散性及びその分散状態の安定性が向上する他、更に後述の(D)成分の難燃剤との親和性も向上して均一な組成物製造上好ましい。
【0023】
ここに言うアルミニウムや珪素の含水酸化物,アミン化合物及びポリオール化合物としては、それぞれアルミナ含水物,シリカ含水物,トリエタノールアミン及びトリメチロールエタンなどを例示することができる。
上記表面処理における処理方法自体は特に限定されるものではなく、任意の方法が適宜採られる。この処理により酸化チタン粒子表面に付与される表面処理剤の量は特に限定されるものではないが、酸化チタンの光反射性、ポリカーボネート樹脂組成物の成形性を考慮すれば酸化チタンに対し1〜15重量%程度が適当である。
【0024】
本発明の組成物において、(B)成分として用いられる上記酸化チタン粉末の粒子径については特に制限はないが、前記効果を効率よく発揮するには、平均粒子径0.1〜0.5μm程度のものが好適である。
本発明の組成物における前記(A)成分のポリカーボネート樹脂と(B)成分の酸化チタン粉末との含有割合は、重量比70:30〜90:10の範囲で選ばれる。酸化チタン粉末の量が上記範囲より少ないと遮光性が不充分であり、かつ難燃性向上効果も充分に発揮されず、また上記範囲より多いと成形性が悪くなり、成形品にシルバーの発生が多くなる傾向がみられる。遮光性,難燃性及び成形性などの面から、(A)成分と(B)成分との特に好ましい含有割合は、重量比70:30〜85:15の範囲である。
【0025】
本発明の組成物においては、(C)成分として用いられるアルキルベンゼンスルホン酸系帯電防止剤は、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)及びアルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩等が挙げられ、本発明においては、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩が難燃性及び高反射率性の低下が少なく好ましい。尚この場合ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩を併わせて使用することが、帯電防止性能の要求特性に応じて可能である。
添加量としては、(A)成分と(B)成分合計量100重量部に対して、1〜8重量部であり、好ましくは1〜4重量部である。(C)成分が1重量部未満では、耐塵埃付着性が不良となりまた、8重量部を越えると耐熱性及び外観が不良となる。
【0026】
本発明の組成物に用いられる(D)成分のリン系酸化防止剤の例としては、ホスファィト 化合物及び芳香族ホスフィン化合物が挙げられる。
ホスファィト化合物としては、ペンタエリスト−ルフォスファイト化合物(PEP)であるアデカスタブPEP−36、PEP−24及びPEP−8(いずれ も旭電化工業(株)製)が好ましく、特にPEP−36が好ましい。
【0027】
芳香族ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、トリス−4−メトキシフェニルホスフィン、トリメタトリルホスフィン等があげられる。その中でもトリフェニルホスフィンが特に好ましい。
リン系酸化防止剤の添加量としては、通常の酸化防止剤と同様の配合量の100〜3000重量ppmで良く、200〜2000ppm重量ppm程度が、この量が100重量ppm未満では、耐熱老化性が好ましくなく、3000重量ppmを超えると反射率が低下する。
【0028】
本発明の組成物においては、熱成形性の安定化、特に成形品表面の平滑性を阻害しやすい(B)成分の酸化チタンの特性改善のために、(E)成分としてアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン(以下、オルガノポリシロキサンという)を含有させる必要がある。
このオルガノポリシロキサンとしては、種々のものがあり、具体的には、アルコキシ基が直接又は二価炭化水素基を介してケイ素原子に結合したオルガノキシシリル基を含有し、直鎖状,環状,網状及び一部分岐を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。特に直鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。このようなアルコキシ基が直接又は二価炭化水素基を介してケイ素原子に結合したオルガノキシシリル基を含有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば一般式(IV)
【0029】
【化4】
【0030】
〔式中、R1 は一価炭化水素基を示し、Aは一価炭化水素基、アルコキシ基(−OR4)又は一般式(V)
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、R2 は二価炭化水素基を示し、R3 及びR4 は一価炭化水素基を示す。又、Xは0〜2の整数である。)
で示されるオルガノキシシリル基含有一価炭化水素基を示す。但し、一分子中のAのうち、少なくとも1個はアルコキシ基又はオルガノキシシリル基含有一価炭化水素基である。また、mは1〜300の整数であり、nは0〜300の整数であり、かつm+nは1〜300の整数である。〕
で表される直鎖状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0033】
ここで、一般式(V)において、R1 で示される一価炭化水素基としては、具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基,アリル基,ブテニル基,ペンテニル基,ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基、ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基が例示される。そして、Aで示される一価炭化水素基の具体例は、上記R1 の場合と同じである。
【0034】
一方、一般式(V)において、R2 で示される二価炭化水素基としては、具体的には、メチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基等のアルキレン基が例示される。また、R3 及びR4 で示される一価炭化水素基は、上記と同じであり、オルガノキシシリル基含有一価炭化水素基としては、具体的には、トリメトキシシリルエチレン基,トリエトキシシリルエチレン基,ジメトキシフェノキシシリルフロピレン基,トリメトキシシリルプロピレン基,トリメトキシシリルブチレン基,メチルジメトキシシリルプロピレン基,ジメチルメトキシシリルプロピレン基等が例示される。
この(E)成分のオルガノポリシロキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の組成物において、必要に応じて用いられるこの(E)成分のオルガノポリシロキサンの含有量は特に制限はないが、前記(A)成分のポリカーボネート樹脂と(B)成分の酸化チタン粉末との合計重量に基づき、0.01〜5重量部の範囲が有利である。この量が0.01重量部未満では酸化チタンの特性改善効果が充分に発揮されないおそれがあり、5重量部を超えるとその量の割には効果の向上はあまり認められず、むしろ経済的に不利となる上、成形品の耐衝撃強度などの機械物性が低下する傾向がみられる。
本発明の組成物においては、難燃性をさらに向上させる目的で、必要に応じ、(F)成分として、ハロゲン非含有リン酸エステル化合物を含有させることができる。このハロゲン非含有リン酸エステル化合物は、(B)成分の酸化チタン粉末との相乗効果により、優れた難燃性を付与するとともに、ポリカーボネート樹脂組成物の熱成形性の安定化を向上させる作用も有する。
この(F)成分のハロゲン非含有リン酸エステル化合物は、臭素などのハロゲン原子を含んでいないため、このものを含有する成形品を廃棄処理した場合、環境汚染をもたらすおそれが少ない。
【0036】
このようなハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、例えば一般式(VI)
【0037】
【化6】
【0038】
で表されるモノリン酸エステル又はポリリン酸エステルを挙げることができる。
上記一般式(VI) において、R1 〜R4 は、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。Xは置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、c,d,e及びfは、それぞれ0又は1、pは0〜5の数を示す。このpは、二種以上のリン酸エステルを混合して用いる場合には、各リン酸エステルのpの平均値で表される。上記アリール基及びアリーレン基における置換基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基,炭素数1〜10のアルコキシ基,フェニル基やトリル基などのアリール基などが挙げられる。これらの置換基は1個導入されていてもよく、複数導入されていてもよい。
【0039】
この一般式(VI) で表されるハロゲン非含有リン酸エステル化合物の例としては、トリフェニルホスフェート,トリクレジルホスフェート,トリキシレニルホスフェート,トリビフェニルホスフェートなどのモノリン酸エステル、フェニル・レゾルシンポリホスフェート,フェニル・ハイドロキノンポリホスフェート,フェニル・クレジル・レゾルシンポリホスフェート,フェニル・クレジルハイドロキノンポリホスフェート,テトラフェニル・レゾルシンジホスフェート,テトラフェニル・ハイドロキノンジホスフェート,フェニル・トリクレジル・レゾルシンジホスフェート,フェニル・トリクレジル・ハイドロキノンジホスフェート,テトラビフェニル・レゾルシンジホスフェート,テトラビフェニル・ハイドロキノンジホスフェートなどのポリリン酸エステルが挙げられる。これらの中で、ポリカーボネート樹脂組成物の熱成形時における金型付着及び汚染性を抑制する点から、ポリリン酸エステルが好適である。また、これらのモノリン酸エステルやポリリン酸エステルは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明の組成物においては、必要に応じて用いられるこの(F)成分のハロゲン非含有リン酸エステル化合物は、前記(A)成分のポリカーボネート樹脂と(B)成分の酸化チタン粉末との合計重量に基づき、リン元素として0.05〜1重量部の割合で含有される。このリン元素の含有量が0.05重量部未満では難燃化の向上効果及び酸化チタンに対する相乗効果が充分に発揮されないおそれがあり、また、1重量部を超えるとその量の割には上記効果の向上はあまり認められず、むしろ経済的に不利となる上、成形品の耐熱性が低下する傾向がみられる。難燃化の向上効果,成形品の耐熱性、経済性などの点から、リン元素の特に好ましい含有量は、(A)成分と(B)成分との合計重量に基づき、0.1〜0.5重量部の範囲である。
【0041】
本発明の組成物においては、特に高い難燃性が要求される場合には、必要に応じて、(G)成分として、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンをドロッピング防止剤(着火樹脂の滴下防止剤)として含有させることができる。
ここにフィブリル形成能とは、混練や射出成形において可塑化の剪断応力を受けた際にフィブリル化(繊維化)する性能を言い、高い難燃性を得る上で効果的である。
【0042】
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中でナトリウム、カリウムまたはアンモニウム−オキシジスルフィドの存在下に、1〜100psi程度の圧力下、温度0〜200℃程度、好ましくは20〜100℃で重合させることにより得られる。
【0043】
このようにして得られたフィブリル形成能を有するPTFEの種類には特に限定されるものではないが、例えばASTM規格においてタイプ3に分類されるものが好適である。具体的商品としてはテフロン6−J(商品名 三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンTFE D−1、ポリフロンTFE F−104(商品名 ダイキン工業社製)等が挙げられる。該タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(商品名 モンテフルオス社製)、ポリフロンMPA FA−100およびポリフロンTFE F201(商品名 ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0044】
この(G)成分のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物において、必要に応じて用いられるこの(G)成分のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの含有量は特に制限はないが、前記(A)成分のポリカーボネート樹脂と(B)成分の酸化チタン粉末との合計重量に基づき、0.01〜1重量部の範囲が有利である。この量が0.01重量部未満ではドロッピング防止効果が充分に発揮されないおそれがあり、1重量部を超えるとその量の割には効果の向上はあまり認められず、むしろ経済的に不利となる。
【0045】
本発明の組成物において、更に光反射性を向上する為に必要に応じて(H)成分として光拡散剤を使用することが好ましい。
光拡散剤としては、シリカビ−ズ、アクリルビ−ズ、ガラスビ−ズ、シリコ−ン樹脂ビ−ズ、シリコ−ンとアクリルからなるコアシェル型エラストマ−ビ−ズ等が挙げられ、難燃性の維持及び光反射性の向上の観点から、シリカビ−ズが特に好ましい。光拡散剤の粒径は何れも0.5〜20μm程度が好ましく、特にシリカビ−ズは1〜2μm程度が好ましい。
【0046】
添加量としては、0.05〜5重量部であり、シリカビ−ズは0.05〜0.2重量部程度が特に好ましい。この範囲外では、光反射性が低下する。
本発明の組成物において、光反射性を向上する為に更に必要に応じて(I)成分として、スチルベンビスベンゾオキサゾ−ル誘導体が用いられる。このものは、ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物の耐光性や耐熱性を損なうことなく、光線反射率を高める明度向上剤としての作用を有している。
【0047】
このスチルベンビスベンゾオキサゾ−ル誘導体の例としては、式(VII)
【0048】
【化7】
【0049】
で表される4−(ベンゾオキサゾ−ル−2−イル)−4’−(5−メチルベンゾオキサゾ−ル−2−イル)スチルベンや、式(VIII)
【0050】
【化8】
【0051】
で表される4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベンなどを挙げることができる。上記式(VII) で表される化合物としては、例えばホスタルックスKS(ヘキスト社製,商品名)などが、また式(VIII)で表される化合物としては、例えばイーストブライトOB−1(商品名 イーストマンケミカル社製)などが市販されている。
【0052】
本発明においては、(I)成分のスチルベンビスベンゾオキサゾール誘導体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また青及び紫の顔料の中から選ばれた少なくとも一種の顔料を適当量混合して用いてもよい。
スチルベンビスベンゾオキサゾール誘導体と青や紫の顔料との混合物としては、例えばホスタルックスKS−N(商品名 ヘキスト社製),イーストブライトOB−3(商品名 イーストマンケミカル社製)などが市販されている。
【0053】
本発明の組成物におけるこの(I)成分のスチルベンビスベンゾオキサゾール誘導体の含有量は、前記(A)成分のポリカーボネート樹脂と(B)成分の酸化チタン粉末との合計重量に基づき、1〜1000重量ppmの範囲で選ばれる。この含有量が1重量ppm未満では光線反射率の向上効果が充分に発揮されないおそれがあり、また1000重量ppmを超えるとその量の割には効果の向上があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。光線反射率の向上効果及び経済性などの面から、この(I)成分の好ましい含有量は、(A)成分と(B)成分との合計重量に基づき、10〜500重量ppmの範囲である。
【0054】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により各種添加剤、例えば他の酸化防止剤,滑剤(離型剤),他の無機充填剤などを適宜含有させてもよい。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、例えば前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び必要に応じて用いられる(F)成分、(G)成分、(H)成分、(I)成分、各種添加剤を配合し、混練することにより調製することができる。該配合及び混練方法としては、通常の樹脂組成物に適用される方法がそのまま適用でき、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸または2以上の多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法が好適である。なお、混練温度は特に限定されないが、通常240〜340℃の範囲から好適に選ばれる。
【0055】
このようにして得られた樹脂組成物を、通常の成形方法、例えば射出成形法や圧縮成形法などを用いて平面板又は曲面板に成形することにより、本発明の光線反射板が得られる。この光線反射板は、例えば照明装置用や液晶ディスプレイバックライト用などに好ましく用いられるが、特に液晶ディスプレイバックライト用反射板として好適である。
【0056】
本発明の光線反射板は、材料に臭素化合物を含有していないため、耐光性に優れ、長期間利用しても反射率の低下が少なく、良好な特性を示す等、従来にない優れた特性を備えたものである。
【0057】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた材料の種類は下記のとおりである。
(A)ポリカーボネート(PC樹脂)
タフロンFN1900A〔商品名,出光石油化学製,ビスフェノールA型のポリカーボネート,粘度平均分子量19000〕:1900Aと略記
(B)酸化チタン粉末
タイペークCR63〔商品名,石原産業製〕:CR63と略記
(C)帯電防止剤
▲1▼ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩(竹本油脂製IPS−101):IPS−101と略記
▲2▼ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(竹本油脂製エレカットS−412):S−412と略記
▲3▼第2級アルカンスルフォネ−トナトリウム塩(ヘキストジャパン製Hosttapur SAS93):SAS93と略記
▲4▼ステアリン酸モノグリセリド(理研ビタミン製リケマ−ル S100A)
:S100Aと略記
(D)リン系酸化防止剤
▲1▼トリフェニルホスフィン(城北化学製 JC263):JC263と略記
▲2▼ペンタエリスト−ルフォスファイト(旭電化工業製 アデカスタブPEP36) :PEP36と略記
▲3▼オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル− ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト(チバスペシャリティ製Irganox1076):Irg.1076と略記
▲4▼ペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト〕(チバスペシャリティ製Irganox1010 ):Irg.1010と略記
(E)オルガノポリシロキサン
メトキシ変性シリコーンBY16−160(商品名,東レ・ダウコーニング・シリコーン社製):シリコーンBY16−160と略記
(F)ハロゲン非含有リン酸エステル
アデカスタブPFR〔商品名,旭電化工業(株)製,フェニル・レゾルシンポリホスフェート,リン含有量10.8重量%)〕:PFRと略記
(G)フィブリル形成性ポリテトラフルオロエチレン
PTFE FA−100〔商品名,ダイキン工業(株)製〕:FA−100と略記
(H)光拡散剤
シリカビ−ズ(触媒化成工業製 P−600):P600と略記
(I)明度向上剤
ホスタルックスKS−N(商品名,ヘキスト社製):KS−Nと略記
また、ポリカーボネート樹脂組成物の性能は、下記の要領に従って評価した。
(a)反射率:3.2×2.5 ×0.1cmの角板を280℃で成形し、試料とした。LCM分光光度計MS2020プラス〔マクベス(Macbeth)社製〕によるY値で評価した。
(b)難燃性UL94:厚み3mm及び1.5mmの各試料について、UL94に準じて垂直燃焼試験を実施した。
(c)透過率:日本電色工業株式会社製 SZシグマ90を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
(d)耐熱老化性:ギアオ−ブンに、100℃、1000時間放置前後の色差(△E)を分光光度計(マクベス社製MS2020プラス)を用いて測定した。
(e)表面固有抵抗:JIS K6911に準拠し80×80×3.2mm角板を使用し成形後24時間状態調節後測定した。単位はΩ/□で表示した。
(f)塵埃付着量:蛍光灯下1cmの距離に設置して一週間放置後、塵埃付着の有無を目視観察した。
【0058】
実施例1〜6及び比較例1〜4
第1表及び第2表に示す種類と量の各成分を、50mmφ単軸押出機により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、押出してペレット化し、樹脂組成物を調製した。尚一部液体のものについては、定量ポンプで供給しながら溶融混練した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥処理したのち、射出成形して、物性測定用の試験片を作製した。
【0059】
樹脂組成物の性能評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
第1表及び第2表から分かるように、実施例1〜6は、いずれも特定の帯電防止剤と特定酸化防止剤を組合せ使用してなる為高い難燃性を維持していると共に耐熱老化性に著しく優れた特性を有している。実施例5〜6は、いずれも光拡散剤、明度向上剤を使用している為透過率の改善が認められる。
比較例1、2は特定帯電防止剤を使用していない為難燃性、耐熱老化性に劣ると共に反射率も低い。
比較例3、4は特定酸化防止剤を使用していない為耐熱老化性に劣る。
【0063】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性や耐衝撃性などの機械物性を損なうことなく、高反射率性、遮光性、耐熱老化性、耐塵埃付着性などを向上させたものであって、光線反射板などの素材として好適に用いられる。
この樹脂組成物を成形して得られた本発明の光線反射板は、臭素化合物を含有していないため、耐熱老化性に優れ、長期間使用しても反射率の低下が少なく、照明装置用光線反射板や液晶ディスプレイバックライト用反射板などとして有用である。
Claims (7)
- (A)ポリカーボネート樹脂と(B)酸化チタン粉末とを重量比70:30〜90:10の割合で含有し、かつ上記(A)成分と(B)成分との合計重量(100重量部)に基づき、(C)アルキルベンゼンスルホン酸系帯電防止剤1〜8重量部(D)リン系酸化防止剤100〜3000重量ppm及び(E)アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン0.01〜5重量部を配合してなる難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(F)ハロゲン非含有リン酸エステル化合物をリン元素として0.05〜1重量部配合してなる請求項1記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(G)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン0.01〜1重量部を配合してなる請求項1又は2に記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計100重量部に基づき、さらに(H)光拡散剤0.05〜5重量部を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計重量に基づき、さらに(I)スチルベンビスベンゾオキサゾ−ル誘導体1〜1000重量ppmを配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板。
- 液晶ディスプレイバックライト用反射板である請求項6記載の光線反射板。
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