JP4046160B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。更に詳しくは良好な透明性、耐候性および成形耐熱性に加えて、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み、および改善された割れ耐性を有する、殊に車両用透明部材に好適なポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するため電気、機械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。一方で近年ポリカーボネート樹脂は上記の各種優れた特徴により、各種透明部材に広く使用されている。中でも軽量化を目的とした車両用透明部材への適用が広く試みられている。かかる車両用透明部材としては、ヘッドランプレンズ、樹脂窓ガラス、リアランプレンズ、およびメーターカバーなどが挙げられる。これらの部材は、形状が複雑かつ大型であると共に、成形品の品質に対する要求が極めて高いことが特徴である。
【0003】
これらの製品をポリカーボネート樹脂(正確には種々の添加剤が含まれるためポリカーボネート樹脂組成物である)を用い射出成形法により形成した場合、次の点が問題となる場合がある。
【0004】
すなわち、良好な離型性および低減された成形品の内部歪みを有し、かつ割れ発生のない成形品を得ることが困難な問題がある。より具体的には、良好な離型性を与えると、成形品の内部歪み、または成形品の割れ発生のいずれかが生じやすくなるとの問題である。一方、離型剤を低減させた場合は、離型抵抗の増加による割れ発生が増加する。更に良好な透明性や成形耐熱性は必要とされ、またより好ましくは良好な耐候性を有することも求められる。
【0005】
またここで成形品の内部歪みとは、偏光板観察において不均一な陰影部分として観察されるものであり(便宜上かかる歪みを“歪み−2”と称する場合がある)、通常のアニール処理によって低減されることはなく、場合によっては逆に顕在化する。一方、通常よく知られる偏光板の縞模様の色変化や疎密の不均一さにより観察される歪みは、アニール処理によってある程度低減されるものである(便宜上かかる歪みを“歪み−1”と称する場合がある)。かかる歪み−1の主体は熱応力等に起因する個々のポリマー分子鎖の歪みである。上記歪み−2は成形時の成形温度が高く、成形機が大型で滞留部分が多い場合に生じやすい。歪み−1はハードコート処理時の、また長期特性におけるクラックの発生要因となるため、その低減が求められる。歪み−2は窓ガラスなど自然光の下で使用する場合に視認性などの問題は生じないものの、その低減は求められる場合がある。かかる理由については後述する。
【0006】
更に車両用透明部材は、多くの場合にハードコート処理などの表面処理が施される。しかしながらかかるハードコート処理において成形品に割れが発生する場合もある。かかる成形品の割れは、ハードコート処理前にアニール処理を行っても生ずる。したがって成形時およびアニール時いずれもポリカーボネート樹脂組成物の特性の何らかの要因が成形品の割れの発生を促進していると考えられるが、かかる要因を低減し成形品の割れに対する耐性(以下、単に“割れ耐性”と称する場合がある)を改善する必要がある。
【0007】
上記の如く車両用透明部材においては、良好な透明性、耐候性および成形耐熱性に加えて、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み、および改善された割れ耐性を有する、ポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
【0008】
尚、上記の如く車両用透明部材、殊に大型の部材の製造は、ポリカーボネート樹脂の代表的な光学成形品である光ディスク基板の製造と異なる特徴を有する。光ディスク基板の製造は、極めて高い加工温度を必要とする成形であるが、一方で極めて短い成形サイクルの、かつ単純な形状の(肉厚が一定かつ樹脂の流動が複雑にならない)成形である。かかる点より光ディスク基板の場合とは異なる特性が樹脂組成物に求められる。
【0009】
従来、ポリカーボネート樹脂の離型性を向上する方法としては脂肪酸エステルを配合する方法が広く知られており、中でもグリセリンモノステアレートが多く使用されている。しかし、グリセリンモノステアレートを添加したポリカーボネート樹脂組成物は、上記歪み−2の発生が明確に観察され、また割れ耐性の点でも十分なとはいえないものであった。
【0010】
ポリカーボネート樹脂に使用される離型剤としては、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどの、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルもまた広く知られるところである。該フルエステルを添加したポリカーボネート樹脂組成物においても更なる品質の改良を目的として、種々の提案がなされている。尚、以下多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルを単に“脂肪酸フルエステル”と称する場合がある。
【0011】
特開平2−69556号公報には、エステル化合物のOH基含量と酸価を極度に小さくしたペンタエリスリトールのエステルを含むポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかしながらその該公報に記載された発明の主たる目的は、該樹脂組成物の延性−脆性転移温度の低下である(すなわち延性温度域が増大する)。
【0012】
また特開2001−192543号公報では、ポリカーボネート樹脂とフルエステル90%以上の酸価0.6〜1.6、ヨウ素価0.1〜1.3、および金属元素Snの含有量5〜300ppmである内部離型剤からなるポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。該公報は酸価が1.6を超える場合には成形耐熱性が低下することを開示するものの、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み(特に歪み−2)、および改善された割れ耐性をいずれも満足するポリカーボネート樹脂組成物に関する十分な技術的知見を開示するものではなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、良好な透明性、耐候性および成形耐熱性に加えて、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み、および改善された割れ耐性を有する、殊に車両用透明部材に好適なポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。
【0015】
第1に、上記課題は離型剤により付与される離型性と他の特性が両立しない点にあることから、本発明者らは離型剤の種類を解決要因の1つして検討した。
【0016】
第2に割れ発生の原因について検討した。その結果成形時の割れは、金型表面に一部残留した離型剤などの添加剤成分が成形時に高温の成形品と接触することで、ソルベントクラックを生じている可能性が推測された。殊に成形品の縁側は歪みが大きくなりやすく、かつ離型剤などが堆積しやすい部分であることから、割れが発生しやすいことが分かった。またアニール処理後のハードコート処理においても割れが発生する原因は、アニール処理で完全には残留応力が除去されないことが主要因であると考えられるが、上記の点から成形品表面の樹脂部分的に劣化している可能性も考えられた。したがってかかる点においても離型剤の種類が重要であるとの結論を得た。
【0017】
第3に歪み−2の発生原因について検討した。その結果次のような結論に達した。射出成形では、樹脂はファウンテンフローにより金型内に流入し、後から流入する樹脂が既に流入した樹脂を押しやる形で充填される。例えばその断面より観察した場合には樹脂の流動層が幾層にも重なった状態が観察される。このような性質を有する射出成形品では、その流動層間で不均一な摩擦力が生じた場合、樹脂の流動が乱れ、流動層間の粗密に大きな差異が生じたり、渦を生じて層間の上下が逆転するような場合が生ずる。かかる状態が上記の偏光板観察において不均一な陰影部分として観察されることを見出した。すなわち不均一な陰影は樹脂の流動層の歪みであるといえる。またかかる歪み−2が樹脂の熱負荷が過大となった場合に生じやすいことが見出された。したがって流動層間での不均一な摩擦力の原因として分解物のガス化などが推測された。更にいえばかかる歪み−2が観察される程度が激しくなるほど、わずかな滞留時間の増加により成形品にシルバーの発生、変色、および内部のくもり(白モヤ)などの不良が現れるようになることも判明した。すなわち歪み−2はこれらの成形不良の予兆現象であるともいえ、歪み−2の少ない樹脂組成物は、種々の成形品に幅広く適用可能であるといえる。また長期的な特性を考慮した場合、歪みの多いものよりも少ないものが好適に求められる。このような理由から歪み−2の低減が求められる場合がある。
【0018】
したがって上記歪み−2の改善のためには、樹脂の流動を滑らかにし、かつガスや分解物の発生しにくい添加剤を配合する必要があるとの結論に達した。離型剤は樹脂の流動を滑らかにする作用があると考えられ、よってガスや分解物の発生しにくい離型剤の配合が重要であると考えた。
【0019】
上記のような検討の下、本発明者らは更に鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に特定の脂肪酸フルエステル、および紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル(B成分)0.005〜2重量部、および紫外線吸収剤(C成分)0.005〜3重量部からなる樹脂組成物であって、(i)該B成分はTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が360℃以下であり、かつその酸価は2以上であり、かつ(ii)該B成分は粘度平均分子量24,500の溶融押出法で製造されたビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物にかかるものである。
【0021】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記B成分のエステルはフルエステルである上記(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記B成分のアルコールは多価アルコールである上記(1)または(2)のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0023】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記B成分の多価アルコールはペンタエリスリトールである上記(3)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0024】
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記面積比(Ss/Sp)は、1.3〜30である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0025】
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品である。
【0026】
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記成形品は、その表面にハードコート処理がなされることを特徴とする上記(6)に記載の成形品である。
【0027】
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記成形品は、車両用透明部材である上記(6)または(7)のいずれかに記載の成形品である。
【0028】
以下、本発明の詳細について更に説明する。
【0029】
本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0030】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。本発明のポリカーボネート樹脂は上記二価フェノールの単独重合体および二種以上の二価フェノールから構成される共重合体のいずれも選択できる。
【0031】
なかでもビスフェノールAなどビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンの単独重合体、並びに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン(ビスフェノールAなど)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから選択される2種以上の二価フェノールから構成される共重合体が好ましく使用され、特にビスフェノールAの単独重合体が好ましい。
【0032】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0033】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体から各種重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0034】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0035】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0036】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0037】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0038】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0039】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0040】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0041】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0042】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0043】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0044】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0045】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0046】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0047】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0048】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、10,000〜100,000が好ましく、15,000〜30,000がより好ましく、17,000〜27,000が更に好ましく、18,000〜25,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂を使用した場合、本発明の樹脂組成物は十分な強度および成形時の良好な溶融流動性を有する。かかる良好な溶融流動性は、成形歪みの更なる低減を可能するため好ましい。また上記範囲内の場合には、ハードコート処理などの2次加工への耐性も十分となる。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
【0049】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0050】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の態様として以下のものを挙げることができる。すなわち、粘度平均分子量70,000〜300,000の芳香族ポリカーボネート(PC▲1▼)、および粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート(PC▲2▼)からなり、その粘度平均分子量が15,000〜40,000、好適には20,000〜30,000である芳香族ポリカーボネート(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート”と称することがある)も使用できる。
【0051】
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは、PC▲1▼の存在によりポリマーのエントロピー弾性を大きくし、大型成形品の場合に好適に使用される射出プレス成形時においてより有利となる。例えばヘジテーションマークなどの外観不良はより低減でき、その分射出プレス成形の条件幅を広げることが可能である。一方PC▲2▼成分の低い分子量成分は全体の溶融粘度を低下し、樹脂の緩和を促進して、より低歪の成形を可能とする。尚、同様の効果は分岐成分を含有するポリカーボネート樹脂においても認められる。
【0052】
本発明で使用するB成分は、アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル(脂肪酸エステル)であって、(i)該B成分はTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が360℃以下であり、かつその酸価は2以上であり、かつ(ii)該B成分は粘度平均分子量24,500の溶融押出法で製造されたビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とするものである。尚、以下かかる(i)の要件を“条件(i)”と、(ii)の要件を“条件(ii)”と称する場合がある。
【0053】
上記条件(i)についてまず説明する。本発明で使用するB成分は脂肪酸エステルであって、そのTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が360℃以下であり、かつその酸価は2以上であることを特徴とするものである。
【0054】
B成分においてTGA(熱重量解析)測定における5%重量減少温度(以下単に“重量減少温度”と称する場合がある)が上記条件を満足することにより、良好な離型力の低減(離型性の向上)および割れ耐性が得られる。重量減少温度が360℃を超える場合は離型力の低減が困難となる。また重量減少温度はあまりに低いと耐熱性が不足し、変色や割れ耐性の低下などの原因となり得るため280℃以上であることが好ましい。重量減少温度の範囲は300〜350℃の範囲がより好ましく、310〜340℃の範囲が更に好ましい。重量減少温度は、TGA測定装置において窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する測定条件において5%の重量減少が認められる温度として求められる。
【0055】
更にB成分において酸価が上記範囲を満足することにより、離型力の低減(離型性の向上)、成形品内部の歪みの低減および割れ耐性の改善が可能となる。かかる酸価が2未満ではこれら離型力の低減などが困難となり、酸価が20を超えるものは熱安定性の点が好ましくない。かかる酸価は4〜18の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。ここで酸価は試料1g中に含まれる遊離脂肪酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0056】
次に上記条件(ii)について説明する。上記条件(ii)は脂肪酸エステルがポリカーボネート樹脂に与える影響を判断するための極めて簡便な試験方法に基づく。かつ本発明はその限界応力が特定値以下となる場合に割れ耐性が良好に改善され得ることを見出した。成形品の割れは、第1に金型表面に残留した脂肪酸エステルが歪みや応力が大きく残留した高温のポリカーボネート樹脂と成形時に直接接触することにより生じると考えられ、第2にかかる際に割れは生じなかったものの、ポリカーボネート樹脂は劣化し、その後の刺激により割れが生じやすい状況が形成されたために生じると考えられる。
【0057】
上記条件(ii)の限界応力は14MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、16MPa以上が更に好ましい。一方限界応力の上限は30MPa以下が適切であり、25MPa以下が好ましい。
【0058】
上記条件(ii)における試験は、通常脂肪酸エステルが融点60℃以上の固体であることから、次のように行う。すなわち脂肪酸エステルの固体は加熱して溶融状態にされ、4分の1楕円試験法の治具に設置された所定のポリカーボネート樹脂シートの表面一面に塗布される。その後かかるシートは120℃のギアオーブン中で24時間保管されて熱処理される。かかる処理後のシートは冷却され、表面の脂肪酸エステルを取り除かれた後、そのクラックの発生位置から脂肪酸エステルの限界応力は評価される。尚、120℃での粘度があまりに低いためギアオーブン中の保管において、脂肪酸エステルがシート表面から容易に流れ落ちる場合には、脂肪酸エステルを染み込ませたガーゼをシート表面に載せることで処理を行う。更に、常温において既に液体のものについては加熱することなくシートの表面一面に塗布するか、またはかかる液体を染み込ませたガーゼをシート表面に載せて評価を行う。またかかる試験法において使用するポリカーボネート樹脂シートは、残留する歪みが極めて低いものが使用される。通常溶融押出法により製造されたシートは残留する歪みが極めて低いためそのまま使用することができるが、万が一その歪みが大きい場合にはアニール処理などにより残留歪みを低減して試験を行う必要がある。
【0059】
本発明の脂肪酸エステルは、そのエステル化率は特に制限されないものの、エステル化率は60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。エステル化率が低く、水酸基価が高いエステルは条件(ii)を満足しにくい。よって本発明のB成分は、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルが好ましい。但し、本発明においてフルエステルとは、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよく、好ましくは85%以上である。
【0060】
上記条件を満足する脂肪酸エステルが、離型力の低減(離型性の向上)、成形品内部の歪みの低減および割れ耐性の改善を可能とする理由は明らかではないが次のように考えられる。条件(i)に関しては重量減少温度が360℃以下というポリカーボネート樹脂の溶融加工温度に相当する範囲内にある場合、脂肪酸エステルは耐熱性が良好である一方、ある程度の揮発分を生ずる。該揮発分は成形加工時にガス化することにより、樹脂の金型充填時に生ずるファウンテンフローの先端に偏斥しやすくなり、結果として成形品表面に高濃度で偏斥されると考えられる。これにより離型性の更なる向上が達成される。また酸価によって測定される対象は主として未反応の遊離カルボン酸であり、これはその比較的低い分子量を原因として成形加工時にガス化し易く、上記と同様成形品表面への偏斥が生じ、離型性の向上に寄与すると考えられる。したがって酸価と重量減少温度とはある程度の相関を有する。そして揮発分の割合が適度であり、分解ガスのような連鎖的に増加する成分でないことも樹脂流動の乱れによる歪みが増加しない理由ではないかと推測される。
【0061】
更に、上記条件(ii)を満足する脂肪酸エステルは、上記した理由のとおり金型表面に残留した脂肪酸エステルが直接に高温のポリカーボネート樹脂を攻撃し、劣化させる。よってかかる攻撃性の弱い脂肪酸エステルは割れ耐性を改善すると考えられる。樹脂の劣化の低減は、リン系安定剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用による相乗効果により、更に良好に発揮されると考えられる。
【0062】
尚、上記の如くある程度のガス化成分が表面への移行を可能とすることで離型力を向上させることが可能となること、本発明の好適な態様は各種の成分が複雑に混合されたものであること、並びにポリカーボネート樹脂に対する影響自体が良好な成形品を得る上で重要な因子となり得ることことから、本発明の構成を脂肪酸エステルの重量減少温度、酸価およびポリカーボネート樹脂に対する限界応力値で特定することは極めて合理的である。
【0063】
上記の特定の脂肪酸エステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、アルコールと脂肪族カルボン酸とを従来公知の各種方法を利用することができる。また本発明の条件(i)を満足するためには、十分な時間をかけて反応を完全に完結するよりも、見かけ上エステル化反応が終了した比較的早い段階で反応を終了することが好ましい。反応触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、並びに2−エチルヘキシル錫などの有機錫化合物が挙げられる。
【0064】
B成分に使用されるアルコールは、その炭素原子数が3〜32であるものが好ましい。アルコールとしては一価アルコールおよび二価以上の多価アルコールのいずれも使用可能であるが、多価アルコールを主体とすることがより好適である。したがって本発明のB成分におけるアルコールは多価アルコールがより好適である。
【0065】
一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。
【0066】
多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリンなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、およびプロピレングリコールなどが挙げられ、中でもペンタエリスリトールが好ましい。
【0067】
B成分に使用される脂肪族カルボン酸は、その炭素原子数が3〜32であるものが好ましい。かかる炭素原子数3〜32の脂肪族カルボン酸としては、例えばヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、およびヘキサコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。
【0068】
上記の中でも脂肪族カルボン酸は炭素原子数10〜22であるものが好ましく、炭素原子数14〜20であるものがより好ましい。更に好ましくはかかる飽和脂肪族カルボン酸である。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。
【0069】
ステアリン酸やパルミチン酸などの脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造される。したがってステアリン酸などの脂肪族カルボン酸は通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。本発明のB成分の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。かかる混合物における各成分の組成割合の好ましい態様は次のとおりである。
【0070】
すなわち、B成分は多価アルコールと炭素原子数3〜32の脂肪族カルボン酸とのフルエステルであり、該脂肪族カルボン酸はパルミチン酸成分とステアリン酸成分とを含み、その熱分解メチル化GC/MS(ガスクロマト−質量分析)法におけるピーク面積において、パルミチン酸成分の面積(Sp)とステアリン酸成分の面積(Ss)との合計が全脂肪族カルボン酸中80%以上であり、かつ両者の面積比(Ss/Sp)が1.2以上であるものが好ましい。ここで熱分解メチル化GC/MS法とは、パイロフィル上において試料である脂肪酸エステルと反応試剤である水酸化メチルアンモニウムを反応させて脂肪酸エステルを分解すると共に脂肪酸のメチルエステル誘導体を生成させ、かかる誘導体に対してGC/MS測定を行う方法である。
【0071】
かかるSpおよびSsの合計は、全脂肪族カルボン酸成分中85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、91%以上が更に好ましい。また一方で上記のSpおよびSsの合計は100%とすることも可能であるが、製造コストなどの観点から98%以下が好ましく、96%以下がより好ましい。また上記の面積比(Ss/Sp)は、1.3〜30の範囲がより好ましい。更にその上限は10がより好ましく、4が更に好ましく、更に3が特に好ましい。尚、これらの混合比率は単独の脂肪族カルボン酸で満足する必要はなく、2種以上の脂肪族カルボン酸を混合することにより満足するものであってもよい。また上記の混合比率を満足する脂肪族カルボン酸の原料となる油脂としては、例えば牛脂および豚脂などの動物性油脂、並びにアマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、およびオリーブ油などの植物性油脂を挙げることができる。上記の中でもステアリン酸をより多く含む点で動物性油脂が好ましく、更に牛脂がより好ましい。更に牛脂の中でもステアリン酸およびパルミチン酸などの飽和成分を多く含むオレオステアリンが好ましい。
【0072】
また本発明のB成分において水酸基価は、熱安定性、離型力低減および割れ耐性の点からは低いことが好ましく、一方あまりに低いことは製造時間の増大によりコストが増大するため好ましくない。B成分の水酸基価は、0.1〜40の範囲が適切であり、1〜30の範囲が好ましく、2〜20の範囲がより好ましい。ここで水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0073】
本発明のB成分においてヨウ素価は、熱安定性の点から低いことが好ましい。B成分のヨウ素価は10以下が好ましく、1以下がより好ましい。かかるヨウ素価は試料100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のg数に換算した量であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0074】
更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その成形品中に生ずる微量な炭化物も低減できる効果がある。かかる炭化物は光源の強さや光の角度によって光を散乱するため、成形品中に白い帯状(白モヤ)となって観察される場合がある。かかる点においても本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、好適な特性を有する。
【0075】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことで良好な耐候性が付与される。これより本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ヘッドランプレンズ、樹脂窓ガラス、リアランプレンズ、およびメーターカバーなどの車両用透明部材に好適である。かかる部材は良好な耐候性が求められる。
【0076】
本発明のC成分の紫外線吸収剤としては、、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0077】
紫外線吸収剤化合物は、具体的にはベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0078】
紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。更に2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記フェニル基が2,4−ジメチルフェニル基である化合物が例示される。
【0079】
上記の中でもベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、特にヘッドランプレンズにおいてはベンゾトリアゾール系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
【0080】
ここで上記A成分、B成分、並びにC成分の組成割合について説明する。B成分の脂肪酸エステルは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部であり、0.01〜1重量部が好ましく、0.05〜0.5重量部がより好ましい。B成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて少なすぎる場合には離型性の改善が十分でなく、割れ耐性も低下する。一方B成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて多すぎる場合には成形品の透明性を損ない、成形耐熱性の低下によって割れ耐性も逆に低下する場合がある。
【0081】
C成分の安定剤はA成分100重量部に対して0.0005〜3重量部含有される。好ましくはA成分100重量部に対してC成分が0.01〜2重量部であり、より好ましくは0.02〜1重量部であり、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。C成分の安定剤が上記範囲を超えて少なすぎる場合には良好な耐候性が得られにくく、一方C成分の安定剤が上記範囲を超えて多すぎる場合には成形品の内部歪み(歪み−2)が大きくなりやすく、割れ耐性も低下する場合がある。
【0082】
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。更にヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系および/またはトリアジン系紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。
【0083】
上記光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の使用量はポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0005〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましく、0.05〜0.5重量部が特に好ましい。
【0084】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、リン系安定剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することができる。これらの安定剤は樹脂組成物の成形耐熱性、耐候性、成形品内部の歪み(歪み−2)の低減、並びに割れ耐性を更に改善できることから好適に使用される。
【0085】
リン系安定剤とは、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなど既にポリカーボネート樹脂の熱安定剤として知られたものが例示される。
【0086】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0087】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0088】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0089】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0090】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0091】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
【0092】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、各種樹脂などに適用可能な酸化防止剤が利用できる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0093】
上記のリン系安定剤またはヒンダードフェノール系酸化防止剤は、A成分100重量部に対して0.0005〜1重量部含有されることが好ましい。好ましくはA成分100重量部に対してC成分が0.001〜0.5重量部であり、より好ましくは0.005〜0.3重量部であり、更に好ましくは0.01〜0.2重量部である。より好適であるのは、リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤のいずれの成分も含む場合である。したがってA成分100重量部に対して、リン系安定剤が0.0002〜0.4重量部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.0002〜0.8重量部であってこれらの合計が0.0005〜1重量部であることが好ましく、リン系安定剤が0.0005〜0.3重量部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.0005〜0.6重量部であってこれらの合計が0.001〜0.5重量部であることがより好ましく、リン系安定剤が0.002〜0.2重量部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.002〜0.4重量部であってこれらの合計が0.005〜0.3重量部であることが更に好ましく、リン系安定剤が0.005〜0.1重量部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.005〜0.15重量部であってこれらの合計が0.01〜0.2重量部であることが特に好ましい。
【0094】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤をポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。ポリカーボネート樹脂成形品の黄色味を消すために有効である。特に紫外線吸収剤が使用されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂製品が黄色味を帯びやすい現実があり、したがって成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。
【0095】
ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、更に良好な色相を達成する。ここで重要な点はかかるブルーイング剤の配合量である。樹脂組成物中、ブルーイング剤が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の配合量は樹脂組成物中0.5〜2.5ppm、更に好ましくは0.5〜2ppmの範囲である。
【0096】
ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRRや、サンド社のテラゾールブルーRLS、並びに有本化学工業社のプラストブルー8580などが挙げられる。
【0097】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で上記ブルーイング剤以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性を維持する点から、染料が好適である。好ましい染料としてはペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することができる。これら染料および蛍光増白剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
【0098】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
【0099】
帯電防止剤としては例えば、(ii)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、A成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切であり、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.005〜0.2重量部がより好ましい。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
【0100】
帯電防止剤としては、例えば(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(iv)グリセリンモノステアレート、無水マレイン酸モノグリセライド、および無水マレイン酸ジグリセライドなどのグリセリン誘導体エステルが挙げられる。該エステルはA成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(v)ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部あたり5重量部以下が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば、(vi)カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末などの非有機化合物が挙げられる。該非有機化合物は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。またこれらの(vi)に例示された非有機化合物は、帯電防止性能以外にも、熱線吸収剤として配合される場合がある。
【0101】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤および炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としては例えば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然および人工のいずれも含み、更にウイスカーを含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜0.2重量部が好ましく、0.008〜0.1重量部がより好ましく、0.01〜0.07重量部が更に好ましい。炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましく、1〜50ppmの範囲が更に好ましい。
【0102】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等が挙げられ、それらを一種以上使用することができる。
【0103】
具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等である。
【0104】
具体的に有機塩系難燃剤は、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等である。
【0105】
具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等である。
【0106】
具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等である。
【0107】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを適宜目的に応じて配合することもできる。
【0108】
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0109】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0110】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、適宜目的に応じて各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
【0111】
更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
【0112】
本発明の成形品はその割れ耐性が改善されていることから、かかる表面処理を行うのに極めて適している。殊に溶剤などポリカーボネート樹脂に悪影響を与える因子を含む表面処理に本発明の樹脂組成物は適し、特にハードコートに適している。
【0113】
本発明で使用するハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものであり、例えば、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に2官能性のシロキサン単位および1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るため各種界面活性剤、例えば、シロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤などを添加してもよい。
【0114】
有機樹脂系ハードコート剤としては、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。ここで多官能アクリル樹脂としてはポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレートなどの樹脂が挙げられる。
【0115】
これらハードコート剤のうち長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤、または処理が比較的簡便でかつ良好なハードコート層が形成される紫外線硬化型のアクリル樹脂または多官能アクリル樹脂が好ましい。シリコーン樹脂系ハードコート剤はプライマー層とトップ層から構成されるいわゆる2コートタイプ、並びに1層のみから形成されるいわゆる1コートタイプのいずれも選択できる。
【0116】
かかるプライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分およびポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、およびポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレートなどの各種多官能アクリル樹脂を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは60重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂およびウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
【0117】
更に、ハードコート層を形成する樹脂には、上述した光安定剤や紫外線吸収剤、並びに触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤および添加助剤を含むことができる。
【0118】
コート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。中でも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、およびスプレーコート法が好ましい。
【0119】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分およびC成分、並びに任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0120】
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、本発明のB成分の脂肪酸エステルとリン系安定剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤とを予め予備混合した後、ポリカーボネート樹脂に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。
【0121】
また予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドして、パウダーで希釈した添加剤のマスターバッチとする方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0122】
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0123】
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
【0124】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。
【0125】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0126】
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の難燃性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0127】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、色相、および離型性に優れ、成形品内部の歪みが低減され、更に割れ耐性が改善されていることから、各種の高い品質が要求される各種の透明部材において好適である。かかる透明部材としては例えば、各種車両用透明部材(ヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバーなど)、照明灯カバー、樹脂窓ガラス(建築用など)、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用レンズ、タッチパネル、および遊技機(パチンコ機など)用部品(前面カバー、回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などを挙げることができる。更にこれらの中でもハードコート処理がなされる成形品が、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に対し特に適するものである。
【0128】
すなわち本発明によれば、本発明のA成分、B成分、およびC成分の上記所定量からなる樹脂組成物の成形品が提供され、更に好適にはその表面にハードコート処理がなされた成形品が提供される。
【0129】
より好ましくはこれらの中でも上記のごとく品質要求が高く、大型の成形品である車両用透明部材が好適に挙げられ、特にヘッドランプレンズ、更に詳しくは素通し型のヘッドランプレンズが好適に挙げられる。尚、ここで素通し型のヘッドランプレンズは、集光作用をリフレクターで行うランプのカバー、ランプユニットを一体として有するランプユニットのカバーおよびこれらに類するものを含む。
【0130】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によって実施した。
(1)脂肪酸エステルの酸価
JIS K 0070に準拠して中和滴定法により酸価(KOHmg/g)を求めた。
【0131】
(2)脂肪酸エステルの熱重量測定による5%重量減少温度
TA−instruments社製のHi−Res TGA2950 Thermogravimetric Analyzerを使用し、N2雰囲気下において20℃/minで昇温させ、試料の減量が仕込み重量の5重量%となった時の温度をTGA5重量%減量温度として測定した。
【0132】
(3)脂肪族カルボン酸成分のGC/MS測定面積比(Ss/Sp)
本発明に使用される熱分解メチル化GC/MS法による測定は、以下の手順で実施した。
GC/MS装置はGC:HP6890型およびMS:HP5973型(共にヒューレット・パッカード社製)を接続したものを使用し、熱分解装置はJHP−3(日本分析工業製)を使用した。
試料をクロロホルムに溶解した溶液をはかり取り、その後クロロホルムを除去する方法により、約20μgの試料を熱分解装置用パイロホイル(日本分析工業製「F358」(358℃用))にはかり取った。更にかかる試料に対し反応試剤として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.5重量%メタノール溶液10μlを添加して、60℃程度に加熱して溶媒を除去した後、上記熱分解装置により358℃で10秒の条件で反応熱分解を実施した。
GC/MS測定の条件は次のとおりであった。カラムはキャピラリー型カラムのDB−5MS(30m×0.25mm×0.25μm、J&W社製)を使用し、キャリアガスにはヘリウムガスを用いた。またキャリアガスは定圧モードを使用して72.4KPa(10.5psi)の一定値とし、40℃での(初期の)ガス流量を1.3ml/minとした。更にスプリット比は50/1、注入口温度は300℃、およびGC/MSの接続部の温度は280℃とした。カラム槽温度の条件は40℃で5分間保持した後、20℃/minの昇温速度で320℃まで昇温し、更に320℃で5分間保持して測定を行った。またMS装置はイオン化のモードとして電子衝撃イオン化(EI)モードを使用し、質量/電荷数(m/z):20〜500の範囲で測定を行った。また1秒あたりのスキャン回数は約3とした。更にイオン加速電圧などの設定はPFTBAの標準サンプルを用いたオートチューニングにより設定した。上記の測定から、全脂肪族カルボン酸成分中におけるSsとSpとの合計の割合、およびそれらの面積比(Ss/Sp)を算出した。
【0133】
(4)離型剤による限界ひずみの測定
図1に示す4分の1楕円試験法用の治具に設置して限界応力を測定した。試験片として、Tダイを用いた押出成形により製造した粘度平均分子量24,500、および厚み1mmのポリカーボネート樹脂シート(曲げ弾性率Eb=2,040MPa)から、長さ120mmおよび幅40mmの大きさにカッターナイフを用いて丁寧に切り出した試験片を用いた。かかるポリカーボネート樹脂シート(符号7)を治具に取り付け、楕円の曲面に沿うように押え金具(符号5)で固定し、シート面にあらかじめ溶融させた離型剤を塗付した。その後120℃で24時間ギアオーブン中に保持し最も少ない歪みでクラックが生じている部分(符号8)の楕円中心(符号1)からの水平距離X(cm)(符号6、すなわち楕円短軸からクラック発生点までの水平距離)を測定した。試験に使用した治具において距離Xとポリカーボネート樹脂シートのひずみεの関係は次のようになる。
ε=0.02×(1−0.0084X2-3/2
t:ポリカーボネート樹脂シートの厚さ(cm)
X:楕円中心から最も少ない歪みでクラックが生じている部分までの水平距離(cm)
本発明の試験においてt=0.1であることから、ひずみεは下記式より求めた。
ε=2×(1−0.0084X2-3/2×10-3
更にクラックの発生の限界応力は上記のεの値から下記式により求めた。
限界応力(MPa)=ε×Eb
Eb:ポリカーボネート樹脂の曲げ弾性率(MPa)
【0134】
(5)成形品の透明性
日本電色(株)製ヘーズメーターNDH−300Aを用いて、厚さ2.0mmの成形板の全光線透過率とHazeを測定した。全光線透過率は数値が高いほど透明性が高いことを示す。また、Hazeは成形品の濁り度で、数値が低いほど濁りが少ないことを示す。
【0135】
(6)成形耐熱性の測定
最大型締め力が150Tonの射出成形機にて、シリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒にて成形した厚さ2mmの50mm角板を成形し、その角板の色相と、シリンダー温度340℃でシリンダー内に10分間滞留させた後に成形した成形品の色相との差を次式の求めΔEとして示した。
ΔE=((L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)21/2
(上記において(L、a、b)値は滞留前の色相を表し、(L’、a’、b’)値は滞留後の色相を表す)
【0136】
(7)離型性の測定
最大型締め力75Tonの射出成形機にて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃、射出圧力118MPaの条件で70mmφ×20mm、厚み4mmのコップ型成形品を成形する際の突き出しピンにかかる突き出し荷重を測定し、30ショット成形した平均値を離型荷重として示した。
【0137】
(8)応力割れ試験
(8−1)成形時の割れ
離型性の測定と同条件でコップ型成形品を1000ショット連続成形し、成形直後に割れが発生したものを×、全く発生がしなかったものを○とした。
(8−2)ハードコート処理後の割れ
上記(8−1)の成形で割れが発生しなかったコップ型成形品を100個使用し、実施例に示すコーティング剤でハードコート処理を行い成形品にクラックが発生したものを×、全く発生がしなかったものを○とした。
【0138】
(9)耐候性試験
最大型締め力が150Tonの射出成形機にて、シリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒にて成形した厚さ2mmの50mm角板用いて、サンシャイン・ウェザーメーター(スガ試験機(株)製:WEL−SUN:HC−B)を使用し、ブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルで1000時間処理した際の色相変化ΔYI値を次式により算出した。
ΔYI = 試験後の角板YI値 − 試験前の角板YI値
【0139】
(10)成形品のひずみ
図2に示す素通し型のヘッドランプレンズをシリンダー温度320℃および金型温度80℃の条件で、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて30ショット分成形し、120℃で2時間アニール処理した。その後かかる成形品を偏光面が直行する2枚の偏光板の間に置き、その陰影(歪み−2)の有無を観察した。30個の成形品を観察し、その陰影の程度を下記の基準に基づき評価した。
○:陰影は、そのコントラストが比較的薄く、わずかに観察される
△:陰影は、そのコントラストがある程度強く、明確に観察される
×:陰影は、そのコントラストが強く、極めて明確かつ大面積にわたって観察される。
【0140】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂100重量部に、表1記載の脂肪酸エステル化合物および他の添加剤を表1記載の配合量で、さらにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.0002重量部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機をを用いて溶融混練しペレットを得た。ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂との予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。
【0141】
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度340℃および金型温度80℃の条件で、厚さ2mmの50mm角の角板を成形した。射出成形機はファナック(株)製:T−150Dを使用した。得られた成形板の各評価結果を表1に示した。
【0142】
また、実施例で得られたペレットを同様の方法で乾燥した後、シリンダー温度320℃および金型温度80℃の条件で、図2に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて作成した。このヘッドランプレンズは、色相、透明性など外観が良好であった。
【0143】
またこのヘッドランプレンズを120℃で2時間アニール処理した後(上記評価(10)を終了した後)、下記に示すコーティング用組成物(i−1)をディップコート法により塗布し、25℃で20分間静置後、120℃で30分間熱硬化させた。次いで該レンズ成形品に下記に示すコーティング用組成物(ii−1)を更にディップコート法により塗布し、25℃で20分間静置後、120℃で2時間熱硬化させ、ハードコート処理を行った。得られたヘッドランプレンズを観察したところ割れの発生はなかった。
【0144】
表1中記号表記の脂肪酸エステルおよび他の添加剤は下記の通りである。
(A成分)
PC:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,500のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
【0145】
(B成分)
B−1:酸価:9、TGA5%重量減少温度:322℃、GC/MS法におけるステアリン酸成分の面積(Ss)とパルミチン酸成分の面積(Sp)との合計が全脂肪族カルボン酸成分中94%であり、それらの面積比(Ss/Sp)が1.44、並びに下記評価法による限界応力値が18MPaであるペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400、水酸基価:6およびヨウ素価:0.4、該脂肪族カルボン酸は動物性油脂を原料とする。)
(B成分以外の脂肪酸エステル)
B−2:酸価:1、TGA5%重量減少温度:390℃、SsとSpとの合計が全脂肪族カルボン酸成分中91%であり、それらの面積比(Ss/Sp)が1.11、並びに下記評価法による限界応力値が22MPaであるペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのエステル(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG−861、水酸基価:7、ヨウ素価:0、該脂肪族カルボン酸は植物性油脂を原料とする。)
B−3:酸価:2、TGA5%重量減少温度:378℃、SsとSpとの合計が全脂肪族カルボン酸成分中90%であり、それらの面積比(Ss/Sp)が1.07、並びに下記評価法による限界応力値が20MPaであるペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのエステル(理研ビタミン株製:リケスターEW−440A、水酸基価:12、ヨウ素価:0.4、該脂肪族カルボン酸は植物性油脂を原料とする。)
B−4:酸価0.8、TGA5%重量減少温度:205℃、並びに下記評価法による限界応力値が11MPaであるグリセリンモノ脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A、水酸基価:327、ヨウ素価:1.8)
【0146】
(C成分の添加剤)
C−1:紫外線吸収剤(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
C−2:紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製:Tinuvin1577)
【0147】
(その他)
P−1:ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)
P−2:ホスファイト系熱安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:Irgafos168)
HP:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製:Irganox1076)
【0148】
(ハードコート用組成物)
(1)コーティング用組成物(i−1)
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にメチルメタクリレート(以下MMAと略称する)70部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略称する)39部、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略称する)0.18部及び1,2−ジメトキシエタン200部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、MMA/HEMAの組成比70/30(モル比)のコポリマー(アクリル樹脂(I))90部を得た。該コポリマーの重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で80,000であった。
【0149】
次にハードコート第1層用組成物として、前記アクリル樹脂(I)8部をメチルエチルケトン40部、メチルイソブチルケトン20部、エタノール5.2部、イソプロパノール14部および2−エトキシエタノール10部からなる混合溶媒に溶解し、次いでこの溶液にメチルトリメトキシシラン加水分解縮合物溶液(X)10部を添加して25℃で5分間攪拌し、さらにかかる溶液にメラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル303)1部を添加して25℃で5分間攪拌し、コーティング用組成物(i−1)を調製した。
【0150】
(2)コーティング用組成物(ii−1)
上記と同様の装置を用いて、メチルトリメトキシシラン142部、蒸留水72部、酢酸20部を氷水で冷却下混合し、この混合液を25℃で1時間攪拌し、イソプロパノール116部で希釈してメチルトリメトキシシラン加水分解縮合物溶液(X)350部を得た。一方、テトラエトキシシラン208部、0.01N塩酸81部を氷水で冷却下混合し、この混合液を25℃で3時間攪拌し、イソプロパノール11部で希釈してテトラエトキシシラン加水分解縮合物溶液(Y)300部を得た。
【0151】
更にハードコート第2層用組成物として、水分散型コロイダルシリカ分散液(日産化学工業(株)製 スノーテックス30 固形分濃度30重量%)100部に蒸留水12部、酢酸20部を加えて攪拌し、この分散液に氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン134部を加えた。この混合液を25℃で1時間攪拌して得られた反応液に、テトラエトキシシラン加水分解縮合物溶液(Y)20部および硬化触媒として酢酸ナトリウム1部を加えイソプロパノール200部で希釈してコーティング用組成物(ii−1)を調製した。
【0152】
【表1】
Figure 0004046160
【0153】
上記表から明らかなように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、成形耐熱性、耐候性、および離型性に優れ、成形品内部の歪みが低減され、並びに成形品の割れ耐性が改善されていることが分かる。比較例の離型剤では、良好な離型性と、成形品内部の歪みの低減または成形品の割れ耐性は十分に両立されていないことがわかる。
【0154】
【発明の効果】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物は、成形品の透明性、成形耐熱性、耐候性、および離型性に優れ、成形品内部の歪みが低減され、並びに成形品の割れ耐性が改善されていることから、ヘッドランプレンズ、車両用樹脂窓等の車両用透明部材に好適なポリカーボネート樹脂組成物を提供する。更に本発明の樹脂組成物は、その特有の特徴から車両用透明部材以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、並びに遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。したがって本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【図1】離型剤の限界応力を測定するための4分の1楕円試験法用の治具の模式図を示す。
【図2】実施例において成形した自動車の素通し型ヘッドランプレンズの成形品を示す。図示されるとおり該レンズはドーム状の形状である。[2−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図。したがってかかる面積が最大投影面積となる)を示し、[2−B]はA−A線断面図を示す。
【符号の説明】
1 楕円中心
2 楕円の長軸半径(10cm)
3 楕円の短軸半径(4cm)
4 ジグの幅(4cm)
5 押え金具(それぞれ幅1cm)
6 楕円中心から最も少ない歪みでクラックが生じている部分までの水平距離(cm)
7 ポリカーボネート樹脂シート
8 最も少ない歪みでクラックが生じている部分
11 ヘッドランプレンズ本体
12 レンズのドーム状部分
13 レンズの外周部分
14 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
15 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
16 レンズの外周部分の直径(220mm)
17 レンズのドーム部分の直径(200mm)
18 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
19 レンズ成形品の厚み(4mm)

Claims (4)

  1. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル(B成分)0.005〜2重量部、および紫外線吸収剤(C成分)0.005〜3重量部からなる樹脂組成物であって、(i)該B成分はTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が360℃以下であり、かつその酸価は2以上であり、(ii)該B成分は粘度平均分子量24,500の溶融押出法で製造されたビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であり、かつ(iii)熱分解メチル化GC/MS(ガスクロマト−質量分析)法におけるピーク面積において、パルミチン酸成分の面積(Sp)とステアリン酸成分の面積(Ss)との面積比(Ss/Sp)が1.3〜30であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 上記請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
  3. 上記成形品は、その表面にハードコート処理がなされることを特徴とする請求項に記載の成形品。
  4. 上記成形品は、車両用透明部材である請求項またはのいずれかに記載の成形品。
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