JP5584001B2 - ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Description
紫外線吸収剤および離型剤としては、これまで多くの種類が開示され、実際に用いられている。しかしながらこれらの添加剤はポリカーボネート樹脂との溶融混練時および溶融混練して得られた樹脂組成物の成形加工時に揮発や分解が起こりやすく、シルバーストリーク現象や変色等の成形不良、金型付着物の生成、および成形品表面の転写不良等の様々な問題を引き起こす原因となることがある。特に、近年のヘッドランプレンズおよびグレージング材等に代表される車両用透明部材の成形においては、薄肉軽量化および大型化がすすみ、さらに生産性向上の目的で成形時の樹脂温度をより高くする傾向にある。その結果上記の問題はますます大きくなっている。一方でこれらの車両用透明部材は、極めて良好な外観が要求される部材であることから、上記問題が生じないよう細心の注意を払って製造されているのが現状である。
従来、樹脂の耐候性を向上する方法としては紫外線吸収剤を配合する方法が広く知られており、中でもビスベンゾオキサジノン化合物が知られている。ビスベンゾオキサジノン化合物は、アントラニル酸とジカルボン酸ジハロゲン化物とを反応させて製造することができる(特許文献1〜3)。また無水イサト酸とジカルボン酸ジハロゲン化物とを反応させて製造することができる(特許文献4)。
また本発明の目的は、脱ハロゲン化水素剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を用いることなく、アントラニル酸誘導体から製造されるビスベンゾオキサジノン化合物を提供することにある。
また射出成形における金型付着の問題が単に紫外線吸収剤の揮発性の低減やその分子量にはよらないことを見出した。より具体的には、離型剤を更に配合したポリカーボネート樹脂組成物においては離型剤の種類によっても金型付着物生成が大きく異なる点を見出した。かくして本発明者は、離型剤の選定が上記課題を解決しより実用的なポリカーボネート樹脂組成物の提供に重要であるとの認識を得た。かかる認識の下、更に研究を進めた結果、ポリカーボネート樹脂に、特定構造のビスベンゾオキサジノン化合物及び特定の脂肪酸エステル化合物をそれぞれ特定量配合することによって、上記の課題を解決できることを究明し本発明を完成した。
(i)純度が98%以上であり、(ii)下記式(2)で表される化合物の含有量が0.15重量%未満であり、
本発明の好適な態様の1つは、(3)B成分が、下記一般式(3)で表されるアントラニル酸誘導体と下記式(4)で表される芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガス気流下、有機溶媒中で反応させ、下記式(5)で表されるアミド化合物を製造する工程、および該アミド化合物を脱水剤と反応させる工程を含む製造方法により得られるビスベンゾオキサジノン化合物である前記構成(1)または(2)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(5)B成分の製造時に使用する不活性ガスが窒素である前記構成(3)または(4)に記載の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記一般式(3)〜(5)中の、R3およびR4が水素原子、Xが塩素原子である上記構成(3)〜(5)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(7)C成分が多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルである上記構成(1)〜(6)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)C成分が4〜8価である炭素数5〜30の脂肪族多価アルコールと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸とのフルエステルである上記構成(7)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記脂肪族多価アルコールがペンタエリスリトールである上記構成(8)の樹脂樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(10)C成分のTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が280〜360℃である上記構成(1)〜(9)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(11)C成分の酸価が4〜18である上記構成(1)〜(10)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(12)C成分の水酸基価が0.1〜30である上記構成(1)〜(11)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(13)C成分のヨウ素価が10以下である上記構成(1)〜(12)の樹脂樹脂組成物。
本発明の好適な態様の1つは、(14)A成分100重量部に対し、(D)リン系安定剤(D成分)および(E)ヒンダードフェノール系安定剤(E成分)から選ばれる少なくとも1種の安定剤を0.0001〜1重量部含有する上記構成(1)〜(13)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(15)厚さ2mmの成形板における全光線透過率が70%以上である上記構成(1)〜(14)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(16)厚さ2mmの成形板における湿熱試験前後のΔHazeが2.0以下である上記構成(1)〜(15)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(17)厚さ2mmの成形板における耐候促進試験前後のΔHazeが1.0以下である上記構成(1)〜(16)の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(18)厚さ2mmの成形板に白色標準板を重ねて測定した380〜480nmの範囲の光線反射率の最大ピークが60〜80%である上記構成(1)〜(17)の樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物からは、好ましくはその溶融成形された成形品が提供され、該成形品は好ましくは車両用透明部材であり、中でも好ましくは、ハードコート処理がなされており、車両用灯具カバーレンズまたはレンズ、並びに車両用グレージング材である。
<A成分について>
本発明のA成分として使用される熱可塑性樹脂としてはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン樹脂、およびアクリル樹脂等が挙げられ、その中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、およびスチレン樹脂が好ましく使用され、ポリカーボネート樹脂が最も好ましく使用される。
代表的なポリカーボネート樹脂(以下、単に「ポリカーボネート」と称することがある)は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法及び環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
一方、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル又はハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
さらに、本発明では、A成分として、ポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は下記式(1)で表される。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物の純度は98%以上、好ましくは98.2%以上、より好ましくは98.5%以上である。純度が98%未満であると、耐候性、耐湿熱性に劣る。なお、ビスベンゾオキサジノン化合物の純度は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定する。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は、下記式(2)で表される化合物の含有量が0.15重量%未満であり、0.12重量%未満であることが好ましく、0.1重量%未満であることがより好ましい。上記含有量が0.15重量%以上であると耐候性、耐湿熱性に劣る。なお、式(2)で表される化合物の含有量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定する。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は、パウダー状での可視光線領域の光線反射率測定において最大ピークが380〜480nmの範囲、好ましくは400〜460nmの範囲、より好ましくは440〜460nmの範囲にある。最大ピークの範囲が上記範囲に無い場合、耐湿熱性に劣る。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は、ナトリウム金属の含有量が50ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは25ppm未満である。ナトリウム含有量が50ppm以上の場合、耐湿熱性が劣る。なお、ナトリウム金属の含有量は、フレーム原子吸光光度法により測定する。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は、YI値が10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。YI値が10より大きい場合、色相に劣る。なお、YI値の下限は光学特性の点より−10である。なお、YI値は、ビスベンゾオキサジノン化合物のパウダーを東京電色株式会社製TR−1800MK−IIを使用して測定する。測定は反射法(2度視野、C光源)にて実施する。
本発明のビスベンゾオキサジノン化合物は、以下に示す方法で製造することができる。該方法は、下記一般式(5)で表されるアミド化合物を得る工程1とアミド化合物を脱水し環化し上記一般式(1)で表されるビスベンゾオキサジノン化合物を得る工程2を含む製造方法である。
工程1は、下記一般式(3)で表されるアントラニル酸誘導体と下記一般式(4)で表される芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガスの気流下、有機溶媒中で反応させ上記一般式(5)で表されるアミド化合物を得る工程である。
R4は、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはカルボキシル基を表す。これらの具体例は式(3)と同じである。より好ましくは、R4は、水素原子である。具体的には、テレフタル酸ジクロライドが挙げられる。
工程1では、上記一般式(5)で表されるアミド化合物が結晶として得られる。
工程2は、工程1で得られたアミド化合物を脱水剤と反応させ、環化させ上記一般式(1)で表されるビスベンゾオキサジノン化合物を得る工程である。脱水剤として、無水酢酸、五酸化リン、三酸化硫黄などが挙げられ、取り扱い易さより無水酢酸が好ましい。脱水剤は、アミド化合物1当量に対して、少なくとも2当量以上必要であり、好ましくは5当量以上、より好ましくは20当量以上である。好ましい態様として溶媒として用いることもできる。
本発明で使用するC成分は、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルが好ましく、4〜8価の炭素数5〜30の脂肪族多価アルコールと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸とのフルエステルであることがさらに好ましい。なお、本発明におけるフルエステルとは、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよく、好ましくは85%以上である。
C成分のTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度は250〜360℃であり、かつ酸価は4〜20である。
かかる特定の脂肪酸エステル化合物との組合せにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性および離型性を有し、かつ金型付着物生成を低減している。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、A成分100重量部に対し、B成分0.01〜5重量部およびC成分0.01〜1重量部を含有する樹脂組成物である。かかるA成分、B成分およびC成分を配合することにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。B成分の組成割合はA成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.5重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。B成分が0.01重量部未満では紫外線吸収性能が小さく、十分な耐紫外線性が得られない。一方、5重量部を超えると組成物の熱安定性が悪化したり、また熱可塑性樹脂中に溶解しにくくなるために、金型付着物生成にも悪影響を与える。C成分の組成割合はA成分100重量部に対して、好ましくは0.02〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.25重量部である。C成分が0.01重量部未満では離型性の改善が十分でない。一方、1重量部を超えると成形品の透明性を損ない、成形時の熱安定性も低下しやすい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲においてB成分以外の紫外線吸収剤を含有することができる。本発明のB成分は、初期の紫外線防御効率、紫外線曝露によるそれ自体の分解、成形品の色相、および低揮発性などの特性のいずれにも大きく劣る点がない。したがって、本発明のB成分と他の紫外線吸収剤との併用によって、それぞれの不足分を補うことが可能となる。
本発明の樹脂組成物には成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的としてD成分として各種のリン系安定剤が配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には成形加工時の熱安定性、耐熱老化性、および耐紫外線性を向上させることを主たる目的としてE成分としてヒンダードフェノール系安定剤が配合されることが好ましい。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。中でもオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましく利用される。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分〜E成分、およびその他の紫外線吸収剤以外にも、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形品の熱処理時における色相を更に安定化させる為、上記ヒンダードフェノール系安定剤以外の酸化防止剤を使用することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら酸化防止剤の使用量は、A成分100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。更に本発明の樹脂組成物には、ヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐紫外線性などの点においてより良好な性能を発揮する。
本発明の樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。本発明の樹脂組成物において更に黄色味を減少させ成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明の樹脂組成物は更に良好な色相を得る。ブルーイング剤の量が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は良好な透明性を有することから、更に蛍光増白剤を含むことにより、より高い光透過性や自然な透明感を付与すること、並びに蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含むことにより、発光色を生かした意匠効果を付与することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、樹脂A成分100重量部に対し好ましくは0.0001〜3重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部、さらに好ましくは0.0005〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.5重量部、最も好ましくは0.001〜0.1重量部である。かかる範囲においてより良好な耐紫外線性および色相と、熱安定性および光線透過率とが両立する。
本発明の樹脂組成物は透明性、色相及び耐光性に優れることから光拡散剤による光拡散機能、白色顔料による光高反射機能はより効果的に発揮される。したがって、本発明の熱可塑性樹脂は光拡散剤や白色顔料の配合によっても、より良好な特性を有する樹脂組成物を提供する。光拡散剤としては高分子微粒子(好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびシリコーン架橋粒子など)、低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示され、その割合はA成分100重量部に対し好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部である。白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましく、その割合はA成分100重量部に対し好ましくは1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
本発明の樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、A成分100重量部に対して0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
本発明の樹脂組成物には、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性をより損なわない点から、染料が好適である。一方深みのある色彩や、メタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。
染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。これら染料の使用量は、A成分100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩以外の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
本発明の樹脂組成物には、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
本発明の樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。
上記の如く得られた本発明の樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
(1)ビスベンゾオキサジノン化合物の調製
化合物B1〜B3、および比較品1〜2を下記記載の方法で調製した。なお、原料およびビスベンゾオキサジノンの評価は下記の方法で実施し、その結果を表2に示した。
(i)アントラニル酸およびイサト酸無水物
島津製作所LC10システムを使用して、下記の条件で測定を行った。
カラム:GLサイエンス社製 Inertsil ODS−3 (4.6mφ×250mm)
カラム温度:40℃
溶離液A:10mMリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH=2.6)/アセトニトリル=50/50(V/V)
流量 :0.5ml/min
検出器の検出波長:265nm
サンプル注入量:10μl
(ii)2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)含有量
島津製作所LC10システムを使用して下記の条件で測定を行った。
カラム:ZORBAX SB−C18(4.6m×250mm)
カラム温度:40℃
検出器の検出波長:240nm
溶離液A:10mMリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH=2.6)/アセトニトリル=50/50(V/V)
溶離液B:アセトニトリル
流量:1ml/min
グラジエント条件:下記表に従う。
なお、上記(i)および(ii)は、サンプル溶解溶媒約5mgをTHF約15mlにて溶解し、これに(i)については溶離液A、(ii)については溶離液Aおよび溶離液Bを加えて25mlにし、シリンジフィルターにて不溶分をろ過して分析し、HPLCのピーク面積を重量%に換算して求めた。
2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)(化合物B1〜B3、比較品1〜2)のパウダーを直径30mm、高さ13mmの円筒型ガラス容器に詰め、東京電色株式会社製TR−1800MK−IIを使用してパウダー反射率の測定を行った。測定条件は、反射法(2度視野、C光源)にて実施し、380〜780nmにおける最大波長を測定した。
(株)堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−920にて下記の条件で測定した。
測定方法:フロー式
分散媒:イソプロピルアルコール
超音波:10分間(強度7)
相対屈折率:116a000I
循環速度:7
バリアン製 フレーム原子吸光光度計 AA−220FSを使用し、試料に硫酸を加えて加熱し灰化し、残渣を塩酸で溶解したものを試料溶液として測定した。
2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)(化合物B1〜B3、比較品1〜2)のパウダーを直径30mm、高さ13mmの円筒型ガラス容器に詰め、日本電色株式会社製TR−1800MK−IIを使用し下記式より求めた。測定条件は、反射法(2度視野、C光源)にて実施した。
YI=[100−(1.28X−1.06Z)]/Y
(視覚による色の相違を三刺激値X,Y,Zから数量的に算出する。)
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸(東京化成工業株式会社製 HPLC純度99.9%,Na量 60ppm)25gをメチルイソブチルケトン(MIBK)150gに溶解した。次に溶液の温度を55〜60℃の範囲とし、テレフタル酸ジクロライド(東京化成工業株式会社製)18gをMIBK72gに溶解したものを30分間で滴下した。その後、反応フラスコの気相部に窒素を100ml/min(6L/h)で流しながら80〜85℃の範囲で12時間反応させた。反応後、溶液の温度を30℃以下まで冷却し、濾過し、得られた結晶をMIBK100mlで洗浄した。
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、還流液抜き取り口および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに得られた結晶と無水酢酸300gを入れ、1時間に10g程度ずつ還流液を留出させながら12時間加熱還流した。温度は徐々に上昇し最終的に130℃を超えた。その後30℃以下まで冷却し、濾過した。
この結晶とメタノール120gを温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに入れ50〜60℃の範囲で30分間撹拌洗浄した。これにイオン交換水120gを滴下し、30℃以下まで冷却したのち濾過し、得られた結晶をメタノール120gで洗浄した。得られた結晶を60℃で乾燥し29gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た(化合物B1)。
得られた化合物B1のHPLC純度は98.9%、上記一般式(2)で表される化合物の含有量は0.05重量%であり、光線反射率測定において最大ピークは450nm、最大光線反射率は105%、ナトリウム金属の含有量は1ppm未満、YI値は−4.3であった。また収率は、89.0%であった。
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸(扶桑化学工業株式会社製 HPLC純度98.5%,Na量 590ppm)25gをメチルイソブチルケトン(MIBK)150gに溶解した。次に溶液の温度を55〜60℃の範囲とし、テレフタル酸ジクロライド(イハラニッケイ化学工業株式会社製)18gをMIBK72gに溶解したものを30分間で滴下した。その後、反応フラスコの気相部に窒素を120ml/min(7.2L/h)で流しながら80〜85℃の範囲で10時間反応させた。反応後、溶液の温度を30℃以下まで冷却し、濾過し、得られた結晶をMIBK100mlで洗浄した。
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、還流液抜き取り口および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに得られた結晶と無水酢酸300gを入れ、1時間に10g程度ずつ還流液を留出させながら12時間加熱還流した。温度は徐々に上昇し最終的に130℃を超えた。その後30℃以下まで冷却し、濾過した。
この結晶とメタノール120gを温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに入れ50〜60℃の範囲で30分間撹拌洗浄した。これにイオン交換水60gを滴下し、30℃以下まで冷却したのち濾過し、得られた結晶をメタノール60gで洗浄した。得られた結晶を60℃で乾燥し30.3gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た(化合物B2)。
得られた化合物B2のHPLC純度は98.6%、上記一般式(2)で表される化合物の含有量は0.05重量%であり、光線反射率測定において最大ピークは450nm、最大光線反射率は103%、ナトリウム金属の含有量は23ppm、YI値は−5.9であった。また収率は、93.1%であった。
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸(三星化学工業社製 HPLC純度99.2%,Na量 100ppm)25gをメチルイソブチルケトン(MIBK)150gに溶解した。次に溶液の温度を55〜60℃の範囲とし、テレフタル酸ジクロライド(イハラニッケイ化学工業株式会社製)18gをMIBK72gに溶解したものを30分間で滴下した。その後、反応フラスコの気相部に窒素を33ml/min(2L/h)で流しながら80〜85℃の範囲で20時間反応させた。反応後、溶液の温度を30℃以下まで冷却し、濾過し、得られた結晶をMIBK100mlで洗浄した。
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、還流液抜き取り口および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに得られた結晶と無水酢酸300gを入れ、1時間に10g程度ずつ還流液を留出させながら12時間加熱還流した。温度は徐々に上昇し最終的に130℃を超えた。その後30℃以下まで冷却し、濾過した。
この結晶とメタノール120gを温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに入れ50〜60℃の範囲で30分間撹拌洗浄した。これにイオン交換水120gを滴下し、30℃以下まで冷却したのち濾過し、得られた結晶をメタノール120gで洗浄した。得られた結晶を60℃で乾燥し29gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た(化合物B3)。
得られた化合物B3のHPLC純度は99.4%、上記一般式(2)の化合物の含有量は0.08重量%であり、光線反射率測定において最大ピークは450nm、最大光線反射率は101%、ナトリウム金属の含有量は1ppm未満、YI値は0.5であった。また収率は、89.6%であった。
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、1000ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸(三星化学工業社製 HPLC純度99.2%,Na量 100ppm)25gおよび炭酸ナトリウム20.9gを水446gに溶解してアルカリ水溶液を調整しこのアルカリ水溶液に攪拌下で、テレフタル酸ジクロライド(東京化成工業株式会社製)18gをアセトン107gに溶解した有機溶媒溶液を20〜30℃で滴下し、滴下後室温下で2時間、さらにアセトン還流下で1時間混合し反応させた。次いで濃塩酸を加えて反応系を酸性にしてろ過、乾燥し、34.1gのN,N’−ビス(O−カルボキシフェニル)テレフタルアミドを得た。
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、還流液抜き取り口および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、1000ml4つ口フラスコに得られた結晶と無水酢酸178.6gを加え無水酢酸の還流下で2時間反応させた。反応物を冷却した後ろ過、乾燥して27.7gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た(比較品1)。
得られた比較品1のHPLC純度は99.9%、上記一般式(2)の化合物の含有量は、0.04%であり、光線反射率測定において最大ピークは450nm、最大光線反射率は80%、ナトリウム金属の含有量は200ppm、YI値は13.0であった。また収率は、89.0%であった。
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、市販のイサト酸(BASF社製 HPLC純度97.5%,Na量 2000ppm)をジメチルホルムアミド(DMF)中に60℃の温度で溶解することによりそれを再結晶した。混合物を放置冷却し、結晶をろ過し、乾燥して、精製イサト酸無水物を得た。
次に精製乾燥イサト酸無水物25gを約60℃の温度で乾燥ピリジン250gに溶解した。E.I.du.Pont de Nemours and Company製のテレフタロイルジクロリド15.8gを、温度を維持するために僅かに冷却しながら、イサト酸無水物混合物に攪拌しながら緩徐に添加した。沈殿生成物をろ過し、洗浄し、乾燥して43.86gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た(比較品2)。
得られた比較品2のHPLC純度は96.7%、上記一般式(2)で表される化合物の含有量は0.26%であり、光線反射率測定において最大ピークは450nm、最大光線反射率は91%、ナトリウム金属の含有量は13ppm、YI値は−5.8であった。また収率は、85.0%であった。
[実施例1〜9、比較例1〜10、および参考例1]
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂パウダー100重量部に、表4〜表5記載の各種添加剤を各配合量で、並びにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.00006重量部の配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂パウダーとの予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度310℃および金型温度80℃、並びに射速60mm/secの条件で、長さおよび幅が50mmかつ厚さが2mm、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μmの平滑平板状の試験片を成形した。射出成形機は三菱重工業(株)製:80MSP−SCを使用した。得られた成形板の各評価結果を表4〜表5に示した。
また、得られたペレットを同様の方法で乾燥した後、シリンダー温度310℃および金型温度80℃の条件で、図1に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて連続成形した。成形後の金型付着物の評価結果も表4〜表5に示した。なお、実施例の各組成にて作成されたこのヘッドランプレンズは、色相および透明性などの外観が良好であり、さらに金型付着物の発生も充分に低減されている。一方、比較例1の離型性は、一定周期での連続成形を困難とするものであった。
実施例1にて用いたポリカーボネート樹脂(PC)に、離型剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を配合しない以外はすべて実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。
(A成分)
PC:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
(C成分)
C−1:酸価9、TGA5%重量減少温度322℃、並びにGC/MS法におけるステアリン酸成分の面積(Ss)とパルミチン酸成分の面積(Sp)との合計が全脂肪族カルボン酸成分中94%であり、それらの面積比(Ss/Sp)が1.44である、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400、水酸基価:6、ヨウ素価:0.4、該脂肪族カルボン酸は動物性油脂を原料とする。)
C−2:酸価0.8、TGA5%重量減少温度205℃のグリセリンモノ脂肪酸エステル(理研ビタミン株製:リケマールS−100A、水酸基価:327、ヨウ素価:1.8)
C−3:酸価2、TGA5%重量減少温度378℃、並びにSsとSpとの合計が全脂肪族カルボン酸成分中90%であり、それらの面積比(Ss/Sp)が1.07である、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(理研ビタミン株製:リケスターEW−440A、水酸基価:12、ヨウ素価:0.4、該脂肪族カルボン酸は植物性油脂を原料とする。)
C−4、C−5、C−6およびC−7:表3に示す組成割合で市販の脂肪酸フルエステルと試薬の脂肪族カルボン酸とを混合し、酸価およびTGAにおける5%重量減少温度を制御した脂肪酸エステルを調製した。該調製はビーカーに脂肪酸エステルを所定量とり、80℃に加熱して溶解し、該溶解物に所定量のステアリン酸(和光純薬(株)製、特級試薬)およびパルミチン酸(和光純薬(株)製、特級試薬)を添加し、電動ブレンダー(ブラウン社製)により混合し均一化した。
(D成分;リン系安定剤)
D−1:ホスファイト系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:Irgafos168)
(E成分:ヒンダードフェノール系安定剤)
E−1:ヒンダードフェノール系安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製:Irganox1076)
(1)成形品色相
算術平均粗さ(Ra)が0.03μmであるキャビティ面を持つ金型を使用し、最大型締め力が150Tonの射出成形機にて、シリンダー温度320℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒にて厚さ2mmの50mm角板を作成し評価を行った。得られた成形品を東京電色株式会社製TR−1800MK−IIを使用して次式によりYI(条件;C光源、2度視野)を測定した。YI値は10以下であることが必要である。
YI=[100−(1.28X−1.06Z)]/Y
(視覚による色の相違を三刺激値X,Y,Zから数量的に算出する。)
(1)で得られた成形品を株式会社平山製作所PC−305SIII/Vにて120℃、相対湿度95%で24時間処理した後のHazeと処理前のHazeとの差をΔHazeとして示した。ΔHazeは2.0以下であることが必要である。
ΔHaze=処理後のHaze−処理前のHaze
(1)で得られた成形品をサンシャイン・ウェザー・メーター(スガ試験機(株)製:WEL−SUN−HC)を使用しブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分を1サイクルとして1000時間処理した後のYIと処理前のYIとの差をΔYIとして記載した。ΔYIは9.0以下であることが必要である。
ΔYI=処理後のYI−処理前のYI
2 レンズのドーム状部分(凸面が可動側金型に対応する)
3 レンズの外周部分
4 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
5 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
6 レンズの外周部分の直径(220mm)
7 レンズのドーム部分の直径(200mm)
8 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
9 レンズ成形品の厚み(4mm)
Claims (23)
- (A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)下記一般式(1)で表され、(i)純度が98%以上であり、(ii)下記一般式(2)で表される化合物の含有量が0.15重量%未満であり、(iii)パウダー状での可視光線領域の光線反射率測定において最大ピークが380〜480nmの範囲にあり、かつ最大光線反射率が100%以上であり、(iv)ナトリウム金属の含有量が50ppm未満であり、かつ(v)YI値が10以下であるビスベンゾオキサジノン化合物(B成分)0.01〜5重量部、および(C)多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、TGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が250〜360℃であり、かつ酸価が4〜20である脂肪酸エステル化合物(C成分)0.01〜1重量部を含有する樹脂組成物。
- 上記一般式(1)中のR1およびR2が水素原子である請求項1に記載の樹脂組成物。
- B成分が、下記一般式(3)で表されるアントラニル酸誘導体と下記一般式(4)で表される芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガス気流下、有機溶媒中で反応させ、下記一般式(5)で表されるアミド化合物を製造する工程、および該アミド化合物を脱水剤と反応させる工程を含む製造方法により得られるビスベンゾオキサジノン化合物である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- B成分の製造時に使用する有機溶媒が、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類およびエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶媒である請求項3に記載の樹脂組成物。
- B成分の製造時に使用する不活性ガスが窒素である請求項3または4に記載の樹脂組成物。
- 上記一般式(3)〜(5)中の、R3およびR4が水素原子、Xが塩素原子である請求項3〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- C成分が多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
- C成分が4〜8価である炭素数5〜30の脂肪族多価アルコールと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸とのフルエステルである請求項7に記載の樹脂組成物。
- 上記脂肪族多価アルコールがペンタエリスリトールである請求項8に記載の樹脂組成物。
- C成分のTGA(熱重量解析)における5%重量減少温度が280〜360℃である請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- C成分の酸価が4〜18である請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
- C成分の水酸基価が0.1〜30である請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
- C成分のヨウ素価が10以下である請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
- A成分100重量部に対し、(D)リン系安定剤(D成分)および(E)ヒンダードフェノール系安定剤(E成分)から選ばれる少なくとも1種の安定剤0.0001〜1重量部を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 厚さ2mmの成形板における全光線透過率が70%以上である請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 厚さ2mmの成形板における湿熱試験前後のΔHazeが2.0以下である請求項1〜15のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 厚さ2mmの成形板における耐候促進試験前後のΔHazeが1.0以下である請求項1〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 厚さ2mmの成形板に白色標準板を重ねて測定した380〜480nmの範囲の光線反射率の最大ピークが60〜80%である請求項1〜17のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜18のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
- 成形品が車両用透明部材である請求項19記載の成形品。
- 車両用透明部材がその表面にハードコート処理がなされている車両用透明部材である請求項20に記載の車両用透明部材。
- 車両用透明部材が車両用灯具レンズである請求項20または21に記載の車両用透明部材。
- 車両用透明部材が車両用グレージング材である請求項20または21に記載の車両用透明部材。
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