JP2006028442A - ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 透明性および色相に優れ、シートまたはフィルムを溶融押出成形する時にダイス口から紫外線吸収剤が分解劣化又は昇華等による発煙によって成形ロールが汚れることがなく、該色相が成形加工時及び長期使用後においても安定して保たれるポリカーボネート樹脂組成物から形成されるシートまたはフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B成分)0.05〜5重量部を含有し、紫外線吸収剤の融点X℃とポリカーボネート樹脂の融点Y℃との関係が0.9≦X/Y≦1.7を満たすポリカーボネート樹脂組成物より形成される厚み0.1〜10mmのポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムに関する。更に詳しくは透明性および色相に優れ、該色相が成形加工時や長期使用後においても安定して保たれるポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムに関する。
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するため電気、機械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は長期に屋外で使用する場合、アクリル樹脂等に比較して耐候性が問題となることがある。ポリカーボネート樹脂の耐候性を向上させるために種々の紫外線吸収剤を使用する技術は広く知られている。また、紫外線吸収剤とその他の添加剤を併用することで更なる耐候性を向上させる方法も幾つか提案されている。
ポリカーボネート樹脂に使用される紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系紫外線吸収剤が広く知られるところである。
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールおよび2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどの2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)(アル)アルキルフェノール((アル)アルキルフェノールの表記はアルキルフェノールおよびアルアルキルフェノールのいずれも含む意である)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも比較的青色光の吸収割合が少なく該紫外線吸収剤を含有するボリカーボネート樹脂組成物は比較的良好な色相を有するが、耐熱性が低いため分解や昇華等が発生し、本来有する性能が十分に発揮出来ていない。
また、環状イミノエステル系化合物を樹脂材料の紫外線保護に使用する方法、並びに該化合物をポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物は公知である(特許文献1〜特許文献3参照)。
ポリカーボネート樹脂をシート状又はフィルム状に成形する場合、300℃程度の高温でポリカーボネート樹脂を溶融した溶融物をTダイリップから押出し、冷却ロールで引き取る方法が通常行われている。使用する紫外線吸収剤の耐熱性が低い場合、シート又はフィルム成形時にダイス口から紫外線吸収剤が分解劣化又は昇華等による発煙によって成形ロールを汚染してシート又はフィルムの外観不具合を発生させる。この問題を解決する方法としてTダイの外壁にダイリップに沿って吸引装置を設けて昇華性物質を吸引する方法が示されている(特許文献4参照)。
また、紫外線吸収剤は少なからず可視光の青色光を吸収するために成形品が黄色化するので黄色化の改善が求められる場合もあり、更にかかるシート又はフィルムの色相は成形加工後や長期使用後においても安定して保たれる必要がある。
上記特許文献4に示された様な装置を用いることなく、外観に優れ、色相の良好な紫外線吸収剤を含有するポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを得られる手段が求められていた。
特公昭62−31027号公報 WO03/095557号パンフレット 特開2004−137472号公報 特開平11−48306号公報
本発明の目的は、透明性および色相に優れ、シートまたはフィルムを溶融押出成形する時にダイス口から紫外線吸収剤が分解劣化又は昇華等による発煙によって成形ロールが汚れることがなく、該色相が成形加工時及び長期使用後においても安定して保たれるポリカーボネート樹脂組成物から形成されるシートまたはフィルムを提供することにある。
本発明の更なる目的は該シートまたはフィルムからなる成形品として、特にグレージング材に代表される車両用透明部材又はその表層部材、液晶ディスプレーの如き薄型ディスプレー装置用材料又はその表層部材、並びにゴーグルなどのアイウエア用材料を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に特定の融点を有する紫外線吸収剤、特に環状イミノエステル化合物を特定量配合したポリカーボネート樹脂組成物からシートまたはフィルムを成形することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、
1.ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B成分)0.05〜5重量部を含有し、紫外線吸収剤の融点X℃とポリカーボネート樹脂の融点Y℃との関係が0.9≦X/Y≦1.7を満たすポリカーボネート樹脂組成物より形成される厚み0.1〜10mmのポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
2.B成分の紫外線吸収剤が下記式(I)で表される環状イミノエステル化合物である前項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
Figure 2006028442
(式(I)中、Arは炭素数6〜12である二価の芳香族炭化水素残基である。またArはヘテロ原子を含有してもよい。nは0または1を示す。)
3.ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、さらにリン系安定剤0.001〜2重量部を含有する前項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
4.前記リン系安定剤がテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトであり、両者の重量割合(前者/後者)は90/10〜70/30の範囲である前項3記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
5.ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、さらに下記式(II)で示されるラクトン系安定剤0.0005〜0.1重量部を含有する前項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
Figure 2006028442
[式中R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜15のアリール基を示す。]
6.前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物を溶融し、押出した溶融樹脂を2本のロールで押圧して成形されたポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
<A成分について>
本発明のシートまたはフィルムの基材となるA成分はポリカーボネート樹脂である。代表的なポリカーボネート樹脂(以下、単に「ポリカーボネート」と称することがある)は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法及び環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
上記二価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の二価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
例えば、二価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の二価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
一方、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル又はハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
このような二価フェノールとカーボネート前駆体とから界面重合法によってポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また、ポリカーボネートは3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。ここで使用される3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、その量は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
また、本発明のポリカーボネートは、芳香族もしくは脂肪族(脂環式を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート並びにかかる2官能性カルボン酸及び2官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。また、得られたポリカーボネートの2種以上をブレンドした混合物でも差し支えない。
ここで用いる脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては、脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。
さらに、本発明では、A成分として、ポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
A成分のポリカーボネートは、上述した二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等の各種ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合したものを使用することもできる。
ポリカーボネートの重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応においては、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類としては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等の炭素数10以上の長鎖アルキル基で核置換された単官能フェノールを挙げることができ、該フェノールは流動性の向上及び耐加水分解性の向上に効果がある。かかる末端停止剤は単独で使用しても2種以上併用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、通常、二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は、生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、殆どの場合120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコール又はフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は、通常、1〜4時間程度である。
上記カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物等を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等のエステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
溶融エステル交換法による反応では、生成ポリカーボネートのフェノール性末端基を減少する目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
さらに、溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用するのが適当である。好ましい失活剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩が挙げられる。
A成分のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量は、10,000未満であると強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。この場合、成形性等が維持される範囲内で、粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートを混合することも可能である。例えば、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量のポリカーボネート成分を配合することも可能である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
なお、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は、次の要領で行う。すなわち、該樹脂組成物をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度(ηSP)を、オストワルド粘度計を用いて求め、上式によりその粘度平均分子量Mを算出する。
<B成分について>
本発明で使用するB成分は紫外線吸収剤であり、その融点X℃がA成分のポリカーボネート樹脂の融点Y℃との関係において0.9≦X/Y≦1.7を満たす紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤の融点X℃とポリカーボネート樹脂の融点Y℃との関係において、1.0≦X/Y≦1.7を満たすことが好ましく、1.1≦X/Y≦1.7を満たすことがより好ましく、1.2≦X/Y≦1.7を満たすことが特に好ましい。0.9未満では紫外線吸収剤の耐熱性が低くシートやフィルムの成形時に昇華や分解が起こり易くロール等の曇り等の汚れが発生し易くなり好ましくない。1.7を超えると紫外線吸収剤の分散性に劣り紫外線吸収能が低下し易くなるため好ましくない。
B成分の紫外線吸収剤としては、下記式(I)で表される環状イミノエステル化合物が好ましく使用される。
Figure 2006028442
(但し、Arは炭素数6〜12である二価の芳香族炭化水素残基である。またArはヘテロ原子を含有してもよい。nは0または1を示す。)
かかる環状イミノエステル化合物の具体例としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(上記式(I)におけるn=0の場合)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。
上記環状イミノエステル化合物は単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。かかる環状イミノエステル化合物は、WO03/035735号パンフレットに開示された各種の方法によって製造することができる。すなわち原料として無水イサト酸を利用する方法(殊に再結晶化された無水イサト酸を利用する方法)、並びにアントラニル酸を利用する方法のいずれも利用可能である。これらの酸化合物とカルボン酸クロライド化合物とを反応させて、環状イミノエステル化合物を得ることができる。これらは特公昭62−31027号公報に開示された如く、生成後に再結晶化処理を行ってもよい。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
環状イミノエステル化合物はそれ自身の紫外線による劣化が少ないため長期的には色相の安定化に有効である。更にそれらの分子構造によって融点をポリカーボネート樹脂の融点に近づけることにより耐熱性及び分散性が向上し、シート成形時の昇華や分解が低減されることからロール等の曇り等の汚れが発生しにくくなり、これらの効果が相乗的に発揮され好ましいポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムが得られる。
<組成割合について>
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、前記ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B成分)0.05〜5重量部を含有する。A成分100重量部に対して、B成分の含有量は好ましくは0.1〜4重量部、より好ましくは0.2〜3重量部、更に好ましくは0.2〜1重量部である。B成分が0.05重量部未満では紫外線吸収性能が小さく、十分な耐紫外線性が得られない。一方、B成分が5重量部を超えると押出機の中でサージングが発生しやすくなる上に成形時の吐出変動によってTダイスから溶融された樹脂が安定して供給できないためシート或いはフィルムとして平滑性が劣り外観が悪くなる。
<その他の添加剤について>
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、上記以外にポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
(i)リン系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤を配合することが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。ホスファイト化合物としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが最も好ましい。ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトおよびこれらの混合物が好ましく、これらの混合物が最も好ましい。両者の重量割合(前者/後者)は、好ましくは90/10〜70/30の範囲、より好ましくは85/15〜75/25の範囲である。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
リン系安定剤の使用量はポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.001〜2重量部の範囲が好ましく、0.005〜1重量部の範囲がより好ましく、0.01〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。リン系安定剤の使用量が上記範囲内であると芳香族ポリカーボネート樹脂に充分な成形耐熱性を付与し、色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムを得ることができる。
(ii)ラクトン系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的としてラクトン系安定剤を配合することが好ましい。ラクトン系安定剤は下記式(II)で示される。
Figure 2006028442
(式中R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜15のアリール基を示す。)
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
炭素数6〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基およびナフチル基などが挙げられる。
およびRとしては、これらの中で水素原子と炭素数7〜20のアリール基の組み合わせが好ましい。更にその中でも水素原子と3,4−ジメチルフェニル基の組み合わせが特に好ましい。
およびRとしては、これらの中で炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。更にその中でもtert−ブチル基が好ましい。
ラクトン系安定剤は、前記ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.0005〜0.05重量部、より好ましくは0.0005〜0.012重量部の範囲で使用される。ラクトン系安定剤の使用量が上記範囲内であると芳香族ポリカーボネート樹脂に充分な成形耐熱性を付与し、色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムを得ることができる。
(iii)ヒンダードフェノール系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには成形加工時の熱安定性、耐熱老化性、および耐紫外線性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤が更に配合することができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらの中でもn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート(代表的市販品としてCIBA SPECILATY CHEMICALS社製:Irganox1076(商品名))が好ましい。上記のヒンダードフェノール系酸化防止剤はいずれも入手容易であり、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下を起こす場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、成形品の熱処理時における色相を更に安定化させる為、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することができる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有系安定剤が挙げられる。これら他の酸化防止剤の配合量は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。更に本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、ヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐紫外線性などの点においてより良好な性能を発揮する。
(iv)ブルーイング剤
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含むことが好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムにおいて更に黄色味を減少させ成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは更に良好な色相を得る。ブルーイング剤の量が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量はポリカーボネート樹脂に対して0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
(v)蛍光染料
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは良好な透明性を有することから、更に蛍光増白剤を含むことにより、より高い光透過性や自然な透明感を付与すること、並びに蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含むことにより、発光色を生かした意匠効果を付与することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。中でも本発明のB成分との組み合わせにおいても良好な特性を維持する点からクマリン系蛍光染料、即ちクマリン誘導体からなる蛍光染料が好ましい。
上記(v)蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し好ましくは0.0001〜3重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部、さらに好ましくは0.0005〜0.5重量部、よりさらに好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.1重量部である。かかる範囲においてより良好な耐紫外線性および色相と、熱安定性および光線透過率とが両立する。
(vi)光拡散剤および光高反射用白色顔料
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは透明性、色相及び耐光性に優れることから光拡散剤による光拡散機能、白色顔料による光高反射機能はより効果的に発揮される。したがって、本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは光拡散剤や白色顔料の配合によっても、より良好な特性を有する樹脂シートまたはフィルムを提供する。光拡散剤としては高分子微粒子(好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびシリコーン架橋粒子など)、低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示され、その割合はA成分100重量部に対し好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部が好ましい。白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましく、その割合はA成分100重量部に対し好ましくは1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部が好ましい。
(vii)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
帯電防止剤としては例えば、(ii)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、A成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切であり、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.005〜0.2重量部がより好ましい。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(iv)ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部あたり5重量部以下が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば、(v)カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末などの非有機化合物が挙げられる。該非有機化合物は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。
(viii)熱線遮蔽能を有する化合物
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、本発明の目的が損なわれない量の熱線遮蔽能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。更にメタリック顔料(例えば金属酸化物被覆板状充填材、金属被覆板状充填材、および金属フレークなど)も主として熱線を反射し熱線遮蔽能を発現する。
かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、A成分100重量部あたり好ましくは0.0005〜0.2重量部、より好ましくは0.0008〜0.1重量部、更に好ましくは0.001〜0.07重量部である。金属酸化物系近赤外線吸収剤および金属ホウ化物系近赤外線吸収剤は、A成分に対して0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。炭素フィラーはA成分に対して0.05〜5ppm(重量割合)の範囲が好ましい。またメタリック顔料は、A成分100重量部あたり好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.8重量部である。
(ix)その他の染顔料
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性をより損なわない点から、染料が好適である。一方深みのある色彩や、メタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。
染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。これら染料の使用量は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩等の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴムなどが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムには、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
<ポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムの製造方法について>
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムの製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、ポリカーボネート樹脂(A成分)および紫外線吸収剤(B成分)を含む各成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。
上記溶融混練の具体的方法としては、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などを挙げることができ、中でも混練効率の点から押出機が好ましい。
更に押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
更にA成分、B成分およびその他添加剤(以下の例示において単に“添加剤”と称する)の押出機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。(i)添加剤をポリカーボネート樹脂とは独立して押出機中に供給する方法。(ii)添加剤とポリカーボネート樹脂粉末とをスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。(iii)添加剤とポリカーボネート樹脂とを予め溶融混練してマスターペレット化する方法。
上記方法(ii)の1つは、必要な原材料を全て予備混合して押出機に供給する方法である。また他の方法は、添加剤が高濃度に配合されたマスター剤を作成し、該マスター剤を独立にまたは残りのポリカーボネート樹脂等と更に予備混合した後、押出機に供給する方法である。尚、該マスター剤は、粉末形態および該粉末を圧縮造粒などした形態のいずれも選択できる。また他の予備混合の手段は、例えばナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などがあるが、スーパーミキサーのような高速撹拌型の混合機が好ましい。更に他の予備混合の方法は、例えばポリカーボネート樹脂と添加剤を溶媒中に均一分散させた溶液とした後、該溶媒を除去する方法である。
溶融押出する際には、押出機の溶融ゾーンを1.33〜66.5kPaに減圧して押出すことが好ましい。また、押出機のシリンダー温度をポリカーボネート樹脂の融点をTp℃として、Tp+20〜Tp+80℃の範囲に調製することが好ましい。溶融押出しされた溶融樹脂は所定の厚さの板状に成形される。
溶融樹脂を所定の厚さの板状に成形する方法としては、溶融押出されたポリカーボネート樹脂組成物を第1ロール(鏡面ロールやゴムロール等)と第2ロール(鏡面ロールやゴムロール等)との間に挟持して当該2本のロールで押圧し、所望によりこのシートを第3ロール(鏡面ロール)と接触させながら引取ロールによりシートを引き取る方法が採用される。
ここで使用する第1ロール、第2ロールおよび第3ロールのロール径は特に制限されず、また同じロール径に統一する必要はないが、ロール径は通常200mm以上であり、特に250〜500mmの同一径ものが好ましく使用される。
上記製造方法において、溶融押出されたポリカーボネート樹脂組成物を第1ロールと第2ロールとの間に挟持して当該2本のロールで押圧する際の線圧が4〜8MPa・cmの範囲であることが好ましく、5〜7MPa・cmの範囲であることがより好ましい。
上記製造方法において、使用するポリカーボネート樹脂のガラス転移温度をTgとした場合、第1ロールおよび第2ロールのロール温度はTg−50〜Tg+20℃の範囲に調整することが好ましい。使用するポリカーボネート樹脂がビスフェノールAから得られたポリカーボネート樹脂の場合、第1ロールおよび第2ロールのロール温度は95〜165℃の範囲に調整することが好ましい。
第3ロールのロール温度はTg−25〜Tg℃の範囲に調整することが好ましい。使用するポリカーボネート樹脂がビスフェノールAから得られたポリカーボネート樹脂の場合、第3ロールのロール温度は120〜145℃の範囲に調整することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、その厚みが0.1〜10mmであり、好ましくは0.1〜5mmである。なお、厚みが0.5〜10mmのものをポリカーボネート樹脂シート、厚みが0.1〜0.5mmのものをポリカーボネート樹脂フィルムと定義する。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によった。
(1)透明性(ヘーズ):実施例で得られた厚さ2.0mmまたは厚さ0.2mmの成形板のヘーズを、日本電色(株)製NDH−300AによりJIS K7105に準じて測定した。ヘーズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
(2)色相(YI値):実施例で得られた厚さ2.0mmまたは厚さ0.2mmの成形板を日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて透過光を測定したX、YおよびZ値からASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
(3)成形耐熱性(滞留試験):10分間押出機シリンダー内に滞留させて得られた厚さ2.0mmまたは厚さ0.2mmの成形板のYI値を、上記評価(2)と同様の方法で測定した。
(4)耐紫外線性試験:実施例で得られた厚さ2.0mmまたは厚さ0.2mmの成形板をサンシャイン・ウェザー・メーター(スガ試験機(株)製:WEL−SUN:HC−B)を使用しブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルで1000時間処理した後の色相(YI値)を上記評価(2)と同様の方法で測定した。
(5)ダイ圧変動:シート又はフィルム成形時に押出機内の圧力変動の1時間当たりの最大振れ幅を測定し、5MPa以下を○、5MPa〜10MPaを△、10MPa以上を×とした。
(6)ロール汚れ:連続6時間成形後の第1ロールの曇り状態について、製品の外観不良に影響する曇りが目立つ場合を×、製品には影響が見られないが曇りが目立つものを△、曇りが目立たないものを○とし、目視にて評価した。
(7)融点:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを用いて、窒素気流下、20℃/minの昇温速度で測定した。
[実施例1〜6、比較例1〜6]
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂パウダー100重量部に、表1および表2記載の各種添加剤を各配合量で、ブレンダーにて混合した。図1に示した装置を用いて、ベント付きTダイ押出機により、押出機温度250〜300℃、ダイス温度260〜300℃、ベント部の真空度を26.6kPaに保持して幅1,000mmの溶融したポリカーボネート樹脂組成物を押出し、第1ロール〜第3ロールはすべて鏡面金属ロール(ロール径300mm)を使用し、第1ロール、第2ロール及び第3ロールの温度をそれぞれ140℃、150℃及び145℃に設定し、押出した溶融ポリカーボネート樹脂組成物を第1ロールと第2ロールとの間に狭持し6MPa・cmの線圧で押圧して、第2ロールと第3ロールとの間を第3ロールに接触させながら通過させて、所望の厚みのポリカーボネート樹脂シート(厚み2mm)またはフィルム(厚み0.2mm)を成形し、引取ロールにより引取りシートまたはフィルムを得た。得られたシートおよびフィルムの算術平均粗さ(Ra)は0.03μmであった。得られたシートおよびフィルムの各種評価結果は表1および表2に示した。
なお、表1〜表2中記号表記の各成分の内容は下記の通りである。
(A成分);ポリカーボネート樹脂
PC:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WP(商品名)/融点:224℃/Tg145℃)
(B成分);本発明の紫外線吸収剤
B−1:2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(竹本油脂(株)製:CEi−P(商品名)/融点:314℃)
(C成分);本発明のB成分に属さない紫外線吸収剤(比較例)
C−1:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79(商品名)/融点:104℃)
C−2:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](旭電化工業(株)製:アデカスタブLA−31(商品名)/融点:195℃)
(その他の成分)
EPQ:以下のf−1成分、f−2成分およびf−3成分の71:15:14(重量比)の混合物(サンド社製 サンドスタブP−EPQ)
f−1成分:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトの100:50:10(重量比)混合物
f−2成分:ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトの5:3(重量比)混合物
f−3成分:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
HP:5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチル−フェニル−3H−ベンゾフラン−2−オン)(前記式(II)において、Rは水素原子、Rは3,4−ジメチルフェニル基、RおよびRはtert−ブチル基で示される化合物)
Figure 2006028442
Figure 2006028442
Figure 2006028442
上記表1および表2から明らかなように本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、成形時の紫外線吸収剤の分解劣化及び昇華による成形ロールのへの曇りが発生しないために外観不良が発生し難く且つ得られたシートまたはフィルムは良好な色相(YI値)を有し、更に滞留試験後および耐UV性試験後のいずれにおいてもその色相に優れている。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムは、グレージング材に代表される車両用透明部材又はその表層部材、液晶ディスプレーの如き薄型ディスプレー装置用材料又はその表層部材、並びにゴーグルなどのアイウエア用材料に好適な材料であり、その他建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、タッチパネル、遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、盤面板、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1.Tダイス
2.第1ロール(鏡面ロール)
3.第2ロール(鏡面ロール)
4.第3ロール(鏡面ロール)
5.引取ロール
6.溶融押出しされたポリカーボネート樹脂組成物

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B成分)0.05〜5重量部を含有し、紫外線吸収剤の融点X℃とポリカーボネート樹脂の融点Y℃との関係が0.9≦X/Y≦1.7を満たすポリカーボネート樹脂組成物より形成される厚み0.1〜10mmのポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
  2. B成分の紫外線吸収剤が下記式(I)で表される環状イミノエステル化合物である請求項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
    Figure 2006028442
    (式(I)中、Arは炭素数6〜12である二価の芳香族炭化水素残基である。またArはヘテロ原子を含有してもよい。nは0または1を示す。)
  3. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、さらにリン系安定剤0.001〜2重量部を含有する請求項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
  4. 前記リン系安定剤がテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトであり、両者の重量割合(前者/後者)は90/10〜70/30の範囲である請求項3記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
  5. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、さらに下記式(II)で示されるラクトン系安定剤0.0005〜0.1重量部を含有する請求項1記載のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
    Figure 2006028442
    [式中R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜15のアリール基を示す。]
  6. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物を溶融し、押出した溶融樹脂を2本のロールで押圧して成形されたポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
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