JP2004010743A - 帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物 Download PDF

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Masahiro Kuragaki
倉垣 雅弘
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Teijin Chemicals Ltd
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Abstract

【課題】帯電防止性、透明性、色相、および耐衝撃性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、更には、良好な熱安定性有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれからなる車両用透明部材、殊にヘッドランプレンズを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、特定式で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部を配合してなり、該A成分はその粘度平均分子量が23,000〜25,500であることを特徴とする帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、並びに上記ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、上記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部からなり、本文中に規定された粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる車両用透明部材に関する。更に詳しくは帯電防止性能に優れ、加えて透明性、色相、および耐衝撃性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる車両用透明部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度などを有するがゆえに電気、機械、自動車、医療用途などに幅広く使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は表面固有抵抗が大きく、接触や摩擦などで誘起された静電気が消失し難く、成形品表面への埃の付着、人体への電撃による不快感、更にはエレクトロニクス製品におけるノイズの発生や誤動作を生じるなどの問題がある。すなわち、ポリカーボネート樹脂の帯電性が問題となる場合がある。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、自動車や自動二輪車のヘッドランプレンズ、および自動車の樹脂窓ガラスなどに代表される車両用透明部材にも使用されている。近年、いわゆる素通し型のヘッドランプレンズを装備するヘッドランプが増加している。素通し型のヘッドランプレンズは、集光作用をランプレンズで行う方式からランプリフレクターで行う方式に変更することで可能となり、そしてヘッドランプの意匠性を向上させる。
【0004】
素通し型のヘッドランプレンズでは、レンズ内面に付着した埃が、従来のヘッドランプレンズ(レンズカットのあるレンズ)に比較して目立つ。レンズ内面に付着した埃は、自動車の美観を損なったり、ランプレンズの透明性を低下させるなどする。しかしかかるレンズは安全上の観点から、素人が取り外すことのできないよう設計されている。このため、レンズ内面に付着した埃はふき取りなどにより除去されることが困難である。したがって、帯電性が低く、埃のつきにくいヘッドランプレンズが求められる場合がある。
【0005】
一方で、ヘッドランプレンズには、軽微な衝突などでは割れないこと、即ち良好な耐衝撃性が求められる。更にヘッドランプレンズには当然のことながら良好な透明性および色相が求められる。また近年の大型および薄肉化されたヘッドランプ形状に対応できるよう、ヘッドランプレンズに使用する樹脂材料には、良好な成形加工性や、かかる成形加工時に変色などのない良好な耐熱性も求められる。
【0006】
車両用樹脂窓ガラス、リアランプ、およびメーターカバーなどの他車両用透明部材においても、同様の特性が求められる場合がある。上記の如く、帯電防止性能に優れ、加えて透明性、色相、および耐衝撃性に優れた、更には成形加工性および耐熱性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれより形成されたヘッドランプレンズに代表される車両用透明部材が求められる場合がある。
【0007】
従来、ポリカーボネート樹脂の帯電を防止する方法としてスルホン酸のアルカリ金属塩を配合する方法、スルホン酸のホスホニウム塩を配合する方法(特開昭62−230835号公報)、スルホン酸のホスホニウム塩と亜リン酸エステルを配合する方法(特開平1−14267号公報)、並びにスルホン酸のアミン塩とリン酸エステルを配合する方法(特開平3−64368号公報)などが提案されている。しかしながら、これらの方法で得られるポリカーボネート樹脂は、十分な帯電防止性能と、耐衝撃性や色相などとを両立するに十分な技術的知見を開示しているとは言い難い。
【0008】
特開2000−204193号公報には、特定のスルホネートホスホニウム塩と特定のスルホネート無機塩とを併用してポリカーボネート樹脂などの樹脂に配合し、低湿下の帯電防止性能を改善し、更に色相、透明性の良好な帯電防止性のポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。しかしながら該公報に記載された発明は、ヘッドランプレンズなどの車両用透明部材用途への適用や、該用途で求められる耐衝撃性を十分に考慮していない。したがって帯電防止性と共に良好な耐衝撃性を有するポリカーボネート樹脂組成物を得るためには、更に多大な検討が必要であった。
【0009】
更に特開2002−80707号公報においても同様にポリカーボネート樹脂、スルホン酸ホスホニウム塩、およびスルホン酸カリウム塩などの金属塩を含む樹脂組成物が開示されており、ヘッドランプレンズへの適用に対しても言及されている。しかしながらかかる公報の実施例において具体的に開示された樹脂組成物は、いまだ十分な色相を有していない。更に実施例に記載されたかかる組成物は、現実にヘッドランプレンズの成形温度(通常300℃を超える場合が多い)では、その分子量低下が大きく、十分な耐衝撃性を得ることは困難であった。更にかかる組成物は、該公報に記載された良好な帯電防止性能を満足することはできず、その帯電防止性能における品質のバラツキが大きいものであった。すなわちヘッドランプレンズなどの車両用透明部材用途への適用可能な透明性および色相を有し、かつ良好な耐衝撃性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を得るためには、更に多大な検討が必要であった。
【0010】
特開平11−80532号公報には、ヘッドランプレンズ用樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂、スルホン酸ホスホニウム塩、および亜リン酸からなる樹脂組成物が記載されている。更により具体的には実施例において、ホスファイト化合物、ヒンダードフェノール化合物、および紫外線吸収剤を配合した樹脂組成物が開示されている。しかしながら、かかる公報に記載された樹脂組成物も同様に透明性および色相を有し、かつ良好な耐衝撃性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は開示するものではなく、したがって該公報は、依然としてヘッドランプレンズに好適な実用的な材料を開示しているとは言い難い。
【0011】
特開平11−323120号公報には、ポリカーボネート樹脂、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、およびグリセリンと脂肪酸とのモノエステル化合物からなる樹脂組成物が記載されている。より具体的には更にリン系酸化防止剤、および光拡散剤を有してなる樹脂組成物が開示されている。更に該公報の実施例に記載された樹脂組成物においては、該組成物の原料として粘度平均分子量24,500のポリカーボネート樹脂が使用されている。しかしながら該公報に記載された発明は、十分な透明性を確保した上で、良好な帯電防止性と耐衝撃性とを両立するための技術的知見を十分に開示しているとは言い難かった。
【0012】
上記の如く、帯電防止性能に優れ、加えて透明性、色相、および耐衝撃性に優れた、更には成形加工性および耐熱性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれより形成されたヘッドランプレンズに代表される車両用透明部材が求められているものの、かかる要求を十分に満足する樹脂組成物は、未だ得られていないのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電防止性、透明性、色相、および耐衝撃性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、更には、良好な熱安定性有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれからなる車両用透明部材、殊にヘッドランプレンズを提供することにある。
【0014】
本発明者は、上記目的を達成せんとして鋭意検討を重ねた結果、特定分子量のポリカーボネート樹脂に、スルホン酸ホスホニウム塩および有機スルホン酸カリウム塩を特定量配合することによって、帯電防止性、透明性、色相、耐衝撃性、および熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることを究明し、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成した。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、下記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部を配合してなり、該A成分はその粘度平均分子量が23,000〜25,500であることを特徴とする帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物に係るものである。
【0016】
【化3】
Figure 2004010743
【0017】
(式中、Aは炭素数1〜40のアルキル基(炭素数6〜40のアラルキル基を含む)または炭素数6〜40のアリール基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記A成分、B成分およびC成分を溶融混練してなる上記(1)に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、(3)更にブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる上記(1)または(2)に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記C成分は、下記一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0020】
【化4】
Figure 2004010743
【0021】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記B成分は、A成分100重量部に対し、1.5〜3重量部であり、上記C成分は、A成分100重量部に対し、0.05〜0.12重量部である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなり、本文中に規定された粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品である。
【0023】
更に本発明は、(7)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、上記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部からなり、本文中に規定された粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品にかかるものである。
【0024】
本発明の好適な態様の1つは、(8)更にブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる上記(7)に記載の成形品である。
【0025】
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記C成分は、上記一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩である上記(7)または(8)のいずれか1つに記載の成形品である。
【0026】
本発明の好適な態様の1つは、(10)上記B成分は、A成分100重量部に対し、1.5〜3重量部であり、上記C成分は、A成分100重量部に対し、0.05〜0.12重量部である上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の成形品である。
【0027】
本発明の好適な態様の1つは、(11)上記成形品は車両用透明部材である上記(7)〜(10)のいずれか1つに記載の成形品である。
【0028】
本発明の好適な態様の1つは、(12)上記成形品は4mm厚みの部分を有してなり、該4mm厚み部分のYI値が0.5〜2.5の範囲にあることを特徴とする上記(7)〜(11)のいずれか1つに記載の成形品である。
【0029】
以下本発明の詳細について説明する。
【0030】
本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0031】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0032】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0033】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0034】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0035】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0036】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0037】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0038】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0039】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0040】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0041】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0042】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0043】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0044】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0045】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0046】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0047】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0048】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、23,000〜25,500とすることが必要である。かかる条件と、特定量のスルホン酸ホスホニウム塩および有機スルホン酸カリウム塩の配合との組合せが、良好な帯電防止性能、透明性、色相、および耐衝撃性を備えた、よって実用性に優れた樹脂組成物の製造を可能とする。
【0049】
粘度平均分子量が23,000未満のポリカーボネート樹脂に、良好な帯電防止性能を発揮する量でスルホン酸ホスホニウム塩および/または有機スルホン酸カリウム塩が配合されると、得られる樹脂組成物は、透明性、色相、または耐衝撃性の少なくともいずれかが低下する。したがってこれら特性の両立を得ることは困難となる。一方、粘度平均分子量が25,500を超えるポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、成形時に充分な流動性を得るためには、成形加工温度を高めに設定する必要があり、結果的に樹脂組成物の熱劣化が大きくなり、色相や耐衝撃性の点で劣る場合が多い。
【0050】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の下限は、23,500が好ましく、24,000がより好ましい。一方かかる粘度平均分子量の上限は、25,000が好ましく、24,500がより好ましい。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
【0051】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0052】
また上記の粘度平均分子量の算出法は、本発明の樹脂組成物や該樹脂組成物から成形された成形品の粘度平均分子量測定にも適用される。すなわち、本発明においてこれらの粘度平均分子量は、塩化メチレン100mlに成形品0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を上記式に挿入して求めたものである。
【0053】
本発明において、B成分として上記一般式(I)で示されるスルホン酸ホスホニウム塩が、帯電防止剤の1つとして使用される。
【0054】
上記一般式(I)において、Aのアルキル基としては、例えばドデシル基、デシル基、ブチル基、エチル基などが挙げられる。尚、かかるアルキル基には、該アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換されたアラルキル基を含む。アラルキル基は炭素数6〜40である。Aのアリール基としては、非置換のまたは置換基を有するフェニル基、非置換のまたは置換基を有するナフチル基などを挙げることができる。これらアルキル基およびアリール基はその水素原子の一部がフッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよく、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0055】
更により好ましいB成分のスルホン酸ホスホニウム塩は下記一般式(III)で示されるものである。
【0056】
【化5】
Figure 2004010743
【0057】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜34のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基、炭素数5〜15のアリール基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
【0058】
上記一般式(III)においては、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでもよく、水素原子の一部がフッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0059】
炭素数1〜34のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0060】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0061】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基などが挙げられる。
【0062】
としては、これらの中で炭素数1〜34のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜15のアルキル基がさらに好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂との相溶性、樹脂中の分子分散性の観点からドデシル基が好ましい。かかる良好な相溶性および分散性は、樹脂組成物に良好な透明性および耐衝撃性を与える。
【0063】
上記一般式(III)中、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。ここで、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでもよい。
【0064】
炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基およびヘプチル基などが挙げられる。
【0065】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0066】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基などが挙げられる。
【0067】
としては、これらの中で水素原子または炭素数1〜7のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0068】
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。ここで、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでもよい。
【0069】
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基などが挙げられる。
【0070】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0071】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基などが挙げられる。
【0072】
、R、RおよびRとしては、これらの中で炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数4〜16のアルキル基がより好ましく、ブチル基およびオクチル基が特に好ましい。ブチル基のものは入手容易な点で好ましく、オクチル基のものは帯電防止性能の熱劣化が少ない点で好ましい。
【0073】
本発明の帯電防止剤は、本発明の目的を損ねない範囲であれば製造時の未反応物や不純物が極少量混入していてもよい。
【0074】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のスルホン酸ホスホニウム塩と共に、有機スルホン酸カリウム塩を特定割合で併用する。かかる併用により、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が抑制され、上記のごとく特定の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂にこれら帯電防止剤を配合することにより、良好な透明性および色相に加えて、良好な耐衝撃性を達成することが可能となる。
【0075】
かかる有機スルホン酸カリウム塩における、有機スルホン酸としては特に限定されるものではなく、例えば次のものが例示される。即ち、モノマーまたはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルフィドのスルホン酸、モノマーまたはポリマー状の芳香族エーテルスルホン酸、脂肪族またはオレフィン系スルホン酸、モノマーまたはポリマー状のフェノールエステルスルホン酸、およびモノマーまたはポリマー状の芳香族スルホン酸などを挙げることができる。これらの有機スルホン酸はその水素原子の一部がフッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0076】
上記のなかでも、有機スルホン酸カリウム塩としては、下記一般式(IV)で示されるスルホン酸カリウム塩が好ましく、更に下記一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩が好ましい。一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩は、耐熱性が良好で、またポリカーボネート樹脂との相溶性も比較的良好である。
【0077】
【化6】
Figure 2004010743
【0078】
(式中、Aは炭素数1〜40のアルキル基(炭素数6〜40のアラルキル基を含む)または炭素数6〜40のアリール基を示す。)
【0079】
【化7】
Figure 2004010743
【0080】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
【0081】
上記式(IV)において、Aのアルキル基としては、例えばドデシル基、デシル基、ブチル基、エチル基などが挙げられる。尚、かかるアルキル基には、該アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換されたアラルキル基を含む。アラルキル基は炭素数6〜40である。Aのアリール基としては、非置換のまたは置換基を有するフェニル基、非置換のまたは置換基を有するナフチル基などを挙げることができる。これらアルキル基およびアリール基はその水素原子の一部がフッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよく、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0082】
上記一般式(II)中、Rは水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0083】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0084】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0085】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0086】
としては、これらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜15のアルキル基がさらに好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂との相溶性、樹脂中の分子分散性の観点からドデシル基が好ましい。
【0087】
上記一般式(III)中、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0088】
炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基およびヘプチル基などが挙げられる。
【0089】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0090】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0091】
としては、これらの中で水素原子または炭素数1〜7のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0092】
次に、B成分およびC成分の配合割合並びに組成割合について説明する。B成分のスルホン酸ホスホニウム塩は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは1〜3.5重量部、より好ましくは1.5〜3重量部の範囲で使用される。0.05重量部未満では充分な帯電防止効果が得られず、5.0重量部を超えると成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品の機械的物性が劣り、透明性および色相も悪化するため好ましくない。
【0093】
C成分の有機スルホン酸カリウム塩は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部、さらに好ましくは0.05〜0.12重量部、特に好ましくは0.06〜0.1重量部の範囲で使用される。
【0094】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の如く特定割合でスルホン酸ホスホニウム塩と有機スルホン酸カリウム塩とを併用することにより、帯電防止剤に起因するポリカーボネート樹脂の過度の熱分解を抑制する。一方で、本発明は特定の分子量範囲のポリカーボネート樹脂を使用して樹脂組成物を製造することにより、ポリカーボネート樹脂のある程度の熱分解を許容する。これにより良好な帯電防止性と共に、透明性、色相および耐衝撃性といった車両用透明部材、殊にヘッドランプレンズに要求される各種特性をいずれも備えた実用性の高い帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0095】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながらその成形品においてポリカーボネート樹脂中に帯電防止剤が均質に分散することが必要であることから、本発明の樹脂組成物は、A成分、B成分およびC成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。すなわち、本発明の好適な態様として、A成分100重量部、B成分0.05〜5重量部、およびC成分0.001〜0.3重量部を溶融混練してなり、該A成分はその粘度平均分子量が23,000〜25,500であることを特徴とする帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を挙げることができる。
【0096】
上記溶融混練の具体的方法としては、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などを挙げることができ、中でも混練効率の点から押出機が好ましく、更に二軸押出機などの多軸押出機が好ましい。
【0097】
二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。その他、FCM(Farrel社製、商品名)、Ko−Kneader(Buss社製、商品名)、およびDSM(Krauss−Maffei社製、商品名)などの溶融混練機も具体例として挙げることができる。
【0098】
上記の中でもZSKに代表されるタイプがより好ましい。かかる二軸押出機においてより好ましい態様は次の通りである。スクリュー形状は1条、2条、3条のネジスクリューを使用することができ、特に溶融樹脂の搬送能力やせん断混練能力の両方の適用範囲が広い2条ネジスクリューが好ましく使用できる。
【0099】
二軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、20〜40が好ましく、更に28〜38が好ましい。L/Dが大きい方が帯電防止剤の均質な分散が達成されやすい一方、大きすぎる場合には熱劣化により耐衝撃性が低下する場合がある。
【0100】
二軸押出機のスクリュー構成としては各種の仕様が可能である。かかる仕様が任意に変更できる点もZSKタイプの大きな利点である。スクリューには混練性を上げるためのニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント)から構成された混練ゾーンを1個所以上有することが必要である。より好ましいのは該セグメントから構成された混練ゾーンを2箇所または3箇所有する態様である。
【0101】
更に押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0102】
更に帯電防止剤の押出機への供給方法は特に限定されないが、本発明において好ましい帯電防止剤は比較的粘稠な液体であることから、例えば以下の方法が好ましい。(i)帯電防止剤を加温して粘度を低下させ、液注装置を用いて精度よく押出機中に供給する方法。(ii)帯電防止剤とポリカーボネート樹脂粉末とをスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。該方法の1つは、必要な原材料を全て予備混合して押出機に供給する方法である。また他の方法は、帯電防止剤が高濃度に配合されたマスター剤を作成し、該マスター剤を独立にまたは残りのポリカーボネート樹脂等と更に予備混合した後、押出機に供給する方法である。尚、該マスター剤は、粉末形態および該粉末を圧縮造粒などした形態のいずれも選択できる。また他の予備混合の手段は、例えばナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などがあるが、スーパーミキサーのような高速撹拌型の混合機が好ましい。更に他の予備混合の方法は、例えばポリカーボネート樹脂と帯電防止剤とを溶媒中に均一分散させた溶液とした後、該溶媒を除去する方法である。(iii)帯電防止剤とポリカーボネート樹脂とを予め溶融混練してマスターペレット化する方法。上記の(ii)および(iii)に挙げた方法において、そのマスター剤またはマスターペレット化する場合のポリカーボネート樹脂の分子量は、必ずしも23,000〜25,500の範囲にある必要はない。組成物全体におけるポリカーボネート樹脂の分子量がかかる範囲内となるように、残りのポリカーボネート樹脂の分子量を調整することができる。
【0103】
二軸押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。本発明の樹脂組成物は帯電防止性を有するため、該ペレットに埃が付着する割合が低減されている。しかしながら更に外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。
【0104】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。本発明のB成分は黄色味を帯びているため、得られる樹脂組成物は比較的黄色味を強く帯びる。更には耐候性の改良を目的として紫外線吸収剤を配合した場合には、樹脂組成物の黄色味は更に増加する。したがって成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。
【0105】
ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、更に良好な色相を達成する。ここで重要な点はかかるブルーイング剤の配合量である。樹脂組成物中、ブルーイング剤が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の配合量は樹脂組成物中0.5〜2ppmの範囲である。
【0106】
ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRRや、サンド社のテラゾールブルーRLSなどが挙げられる。
【0107】
上記の如く得られた本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物のペレットは、通常射出成形機や押出成形機に供給されて溶融成形され、所定の製品形状が付与される。本発明の樹脂組成物は良好な流動性を有し、射出成形に好適である。更に本発明の樹脂組成物は、高温の射出成形によっても良好な耐衝撃性を発揮するに十分な粘度平均分子量を保持する。かかる粘度平均分子量は19,500〜21,500が好ましく、20,000〜21,000がより好ましい。これにより優れた帯電防止性に加えて、透明性、色相、および耐衝撃性の良好な帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物の成形品が提供される。即ち、本発明によれば、A成分100重量部、B成分0.05〜5重量部、およびC成分0.001〜0.3重量部を配合してなり、好ましくは溶融混練してなり、該A成分はその粘度平均分子量が23,000〜25,500であることを特徴とする帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなり、上記規定の粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品が提供される。更に好ましくはブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる成形品である。
【0108】
更にこれにより、本発明によれば、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、上記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部からなり、上記規定の粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品が提供される。更に好ましくはブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる成形品が提供される。
【0109】
更に好適には本発明の成形品は、極めて良好な色相を達成するものであり、より具体的には、4mm厚みの部分を有してなり、該4mm厚み部分のYI値が0.5〜2.5の範囲にあることを特徴とする上記の成形品が得られる。より好適にはかかるYI値は0.8〜2.0の範囲である。かかるYI値を有する成形品は極めて自然な透明感を有し、殊にヘッドランプレンズにおいて好適である。したがって本発明のかかる成形品は耐衝撃性などの機械的特性に優れるだけでなく、その質感においても優れた品質を有する。
【0110】
本発明の成形品としては、各種車両用透明部材(ヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバーなど)、照明灯カバー、樹脂窓ガラス(建築用など)、太陽電池カバー、ディスプレー装置用レンズ、タッチパネル、および遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などを挙げることができる。これらの中でも上記のごとく車両用透明部材が好適に挙げられ、特にヘッドランプレンズ、更に詳しくは素通し型のヘッドランプレンズが好適に挙げられる。
【0111】
本発明の樹脂組成物および成形品は上記の如く、A成分、B成分、およびC成分を必須成分とするものであるが、その他本発明の効果を更に発揮するために他の添加剤を配合することができ、またその他の効果を付与する目的で他の添加剤を配合することができる。かかる点について以下に説明する。
【0112】
本発明で帯電防止剤として配合されるスルホン酸ホスホニウム塩や有機スルホン酸カリウム塩は、通常ポリカーボネート樹脂が溶融加工される温度領域において熱分解反応や酸化反応により少なからず分解する。さらに、分解反応により生成した副生物の中には、着色物並びにポリカーボネート樹脂と副反応を起こす物質が存在するため、加熱溶融して成形したり、成形品に熱履歴が生じると成形品の変色による色相悪化や分子量低下などが起こる場合がある。色相悪化や分子量低下などは高温であるほど生じやすいが、特に、塩基性雰囲気になるとスルホン酸基への求核反応が起こり易くなるため、容易に帯電防止剤の分解が起こると考えられる。かかる分解をできるだけ少なくするには、樹脂組成物に酸性度調整剤を添加し、樹脂酸性度を調整する方法が良い。
【0113】
この目的で用いられる酸性度調整剤としては、弱酸性領域にpk(酸の解離定数の逆数の対数)を持つ様々な酸性化合物が考えられるが、その中でも好ましいpkの範囲は4〜7、特に好ましくは4.5〜5.5である。4以上のものは樹脂組成物の酸性度が強すぎず適度なため成形時に帯電防止剤の分解を抑制する作用があり、さらに成形品表面での帯電防止剤の解離も多くなり帯電防止性能に優れ、7以下のものは樹脂組成物の酸性度が弱すぎず適度であり、帯電防止剤のスルホン酸基やポリカーボネート樹脂のカーボネート結合が求核攻撃を受け難く、分解し難くなるため好ましい。
【0114】
具体的には、弱酸性を示す酸性化合物の中でも、カルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物が好ましく使用される。かかる化合物はモノマーまたはポリマー状のいずれも使用することができる。モノマーとしては、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、およびコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、および無水酢酸、無水コハク酸などの脂肪族カルボン酸の酸無水物、安息香酸などの芳香族モノカルボン酸、並びにイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。ポリマー状としては例えばスチレン−アクリル酸共重合体、およびスチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。かかるカルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物は上記求核分解反応の抑制に働くだけでなく、帯電防止剤の分解副生物と考えられるベンゼンスルホン酸誘導体とエステル様構造を形成し安定化する可能性も考えられ、更なる副反応によるポリカーボネート樹脂や帯電防止剤の分解を抑制する効果もあると考えられる。
【0115】
上記酸性度調整剤の組成割合は、A成分100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がより好ましい。酸性度調整剤の配合により、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、更に高温の成形条件においても目的とする良好な特性を発揮することができる。
【0116】
さらに、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、上記スルホン酸ホスホニウム塩および有機スルホン酸カリウム塩以外の帯電防止剤を、本発明の効果を発揮する範囲で配合することができる。
【0117】
かかる他の帯電防止剤としては、例えば(i)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。該金属塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば(ii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば、(iii)カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末などの非有機化合物が挙げられる。該非有機化合物は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。
【0118】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を高度に防止するために、例えば下記一般式(V)で示されるリン系安定剤が使用される。
【0119】
【化8】
Figure 2004010743
【0120】
上記一般式(V)中、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜20のアリール基を示す。
【0121】
炭素数1〜40のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0122】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0123】
炭素数5〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、2,4−ジターシャリーブチル基および2,6−ジターシャリーブチル基などが挙げられる。
【0124】
11、R12、R13およびR14としては、これらの中で炭素数5〜20のアリール基が好ましい。
【0125】
上記一般式(V)中、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0126】
炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基およびデシル基などが挙げられる。
【0127】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基などが挙げられる。
【0128】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0129】
およびR10としては、これらの中で炭素数1〜10のアルキル基または水素原子が好ましく、特に、水素原子が好ましい。
【0130】
上記一般式(V)の化合物として、具体的には、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、
【0131】
テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。
【0132】
かかるリン系安定剤組成物は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0001〜1.0重量部、好ましくは0.0005〜0.8重量部、より好ましくは0.001〜0.6重量部の範囲で配合される。0.0001重量部未満では熱安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量低下や色相悪化が起こりやすく好ましくなく、また1.0重量部以上では、過剰量となり逆に成形時の分子量低下、色相悪化がより起こりやすくなり好ましくない。
【0133】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、前記リン系安定剤と他の安定剤を併用して配合することができる。かかる他の安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが挙げられ、具体的には、トリス(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、
【0134】
トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられ、なかでもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0135】
これらは、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。かかる他の熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましい。
【0136】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止剤の樹脂中での分散効率を良くし濃度分布を小さくする目的や、成形時に成形品表面への帯電防止剤の移行性を向上させる目的、さらに成形時の金型からの離型性を付与する目的などで脂肪酸エステル化合物を使用することができる。
【0137】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、および2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる脂肪酸エステルの使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0138】
かかる脂肪酸エステル化合物をポリカーボネート樹脂に使用する場合、あらかじめ脂肪酸エステル化合物中に帯電防止剤を均一に分散させたマスターを作成し、これをポリカーボネート樹脂に配合し成形する方法が帯電防止剤の樹脂中での分散性、濃度の均一性、成形品表面への移行性の観点からより望ましい。
【0139】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を使用することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、および3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。これら酸化防止剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
【0140】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない程度で離型剤を使用することができる。かかる離型剤としては、前記脂肪酸エステル、ポリオルガノシロキサン、パラフィンワックス、および蜜蝋などが挙げられる。かかる離型剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0141】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ベンゾフェノン系では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0142】
紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられる。
【0143】
紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、および2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどを挙げることができる。
【0144】
また本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。
【0145】
上記紫外線吸収剤および光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いることができる。かかる紫外線吸収剤および光安定剤の使用量はそれぞれ、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましい。
【0146】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性を維持する点から、染料が好適である。ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することができる。これら染料および蛍光増白剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
【0147】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。
【0148】
具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤などである。
【0149】
具体的に有機塩系難燃剤は、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウムなどである。
【0150】
具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェートなどである。
【0151】
具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェートなどである。
【0152】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
【0153】
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0154】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴムなどが挙げられる。
【0155】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
【0156】
更に本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。ハードコートは特に好ましい、かつ必要とされる表面処理である。
【0157】
本発明の樹脂組成物からなる成形品を製造する方法は射出成形が好適である。更に該射出成形は通常の射出成形法以外に、公知の他の特殊な成形方法と組み合わせることもできる。他の特殊な成形方法としては、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0158】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
(1)帯電防止性能(乾燥処理前の表面抵抗値):厚さ2.0mmの成形板を23℃、湿度50%の環境にて一週間調整後、成形板の表面固有抵抗値(Ω)を、東亜電波工業(株)製SM−8210極超絶縁計により測定した。数値が小さいほど帯電防止性能が優れていることを示す。
(2)透明性(ヘイズ):厚さ2.0mmの成形板のヘイズを日本電色(株)製NDH−300Aにより測定した。ヘイズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
(3)色相(YI値):厚さ2.0mmの成形板を日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて透過光を測定したX,YおよびZ値からASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
【0159】
(4)耐熱色相安定性(ΔYI値):厚さ2.0mmの成形板を温度設定125℃の乾燥機中に500時間保管した。保管前に対する保管後の成形板YI値の差であるΔYI値を算出した。ΔYI値が小さいほど成形板の色変化が小さく、耐熱色相安定性に優れることを示す。
(5)耐熱帯電防止性能(乾燥後の表面抵抗値):厚さ2.0mmの成形板を温度設定120℃の乾燥機中に100時間保管し、保管後取り出した成形板を23℃、湿度50%の環境にて一週間調整後、(1)の評価と同じ装置を用いて表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
(6)耐衝撃性(ノッチ付きアイゾット衝撃強さ):ASTM規格 D−256に準拠し、該規格に従って作成した厚さ3.2mmの試験片を用いて試験を行った。
(7)成形品の粘度平均分子量:成形品(角板および下記図1で示されたレンズ成形品)の粘度平均分子量を本文中に記載された方法に従い測定し、耐衝撃性や熱劣化の指標とした。
(8)成形品の耐薬品性:ASTM D638に記載のTYPE Iの引張強度測定用試験片を用いて、図2に示す如く、成形品の縦方向中心部に約10MPaの歪みが生ずるよう3点を支持して曲げ、かかる状態で中心部に自動車用無鉛レギュラーガソリン(出光興産製出光ゼアス)を含浸した四つ折の医薬用ガーゼを載せ、25℃で20分間処理を行い試験片の破断の有無を観察した。試験は5本の試験片について実施しそのうちの破断変数nを「n/5」として表中に示した。尚、かかる歪量(ε)は3点の内の両端の2点のスパンをL(100mm)、試験片の厚みをh(3.2mm)、および試験片を水平状態から持ち上げた高さをy(mm)としたとき、ε=(6hy)/Lの式より算出される値である。
【0160】
[実施例1〜4、比較例1〜5]
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された各種の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂100部に、表1記載の帯電防止剤、及び他の添加剤を表1記載の配合量で、さらにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.00015部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練しペレットを得た。帯電防止剤はその割合が10重量%となるポリカーボネート樹脂との予備混合物をスーパーミキサーを用いて作成した。またその他の安定剤についてもそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂との予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30XSST(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度はPC−1およびPC−2を使用する場合には、第1供給口からダイス部分まで260℃とした。またPC−3を使用する場合には290℃とした。
【0161】
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃および金型温度80℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板を成形した。射出成形機は三菱重工業(株)製:80MSP−SCを使用した。得られた成形板の各評価結果を表1に示した。また、得られたペレットを同様の方法で乾燥した後、シリンダー温度310℃および金型温度80℃の条件で、図1に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて作成した(ただし、比較例2、比較例8は樹脂の流動性が悪く、ヘッドランプレンズを作成できなかった)。このヘッドランプレンズは、色相、透明性など外観が良好であり、且つ帯電防止性能の持続性も良好であった。なお、表1中記号表記の帯電防止剤および熱安定剤は下記の通りである。
【0162】
(A成分)
PC−1:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量24,200のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WP)
PC−2:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,500のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
PC−3:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量30,000のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトK−1300W)
【0163】
(B成分)
B−1:ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂(株)製:TCS−101)
B−2:ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルオクチルホスホニウム塩(竹本油脂(株)製:TCS−118)
【0164】
(B成分とC成分の混合物およびB成分とC成分以外のスルホン酸アルカリ金属塩の混合物)
C−1:ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩/ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩=90/10(重量比)(竹本油脂(株)製:TCS−120)
C−2:ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩=90/10(重量比)(竹本油脂(株)製:TCS−112)
【0165】
(その他の添加剤)
ST−1:ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)
ST−2:ホスファイト系熱安定剤(日本チバガイギー社製:Irgafos168)
ACA:無水酢酸(和光純薬工業(株)製)
PIA:亜リン酸(和光純薬工業(株)製)
HP:フェノール系酸化防止剤(日本チバガイギー社製:Irganox1076)
RA:飽和脂肪酸エステル系離型剤(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
UVA:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
【0166】
[参考例1]
実施例1にて用いたポリカーボネート樹脂(PC−1)に、帯電防止剤を配合しない以外はすべて実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表1に示した。
【0167】
【表1】
Figure 2004010743
【0168】
上記表から明らかなように、本発明の樹脂組成物は帯電防止性、透明性、色相および耐衝撃性のいずれもが良好な特性を有する成形品が得られることがわかる。更に色相変化に対する熱安定性や、帯電防止性能に対する熱安定性に優れるものであることが分かる。一方、比較例に示された技術においてはいずれかの特性を十分に満足できていない。
【0169】
【発明の効果】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性、透明性、色相、および耐衝撃性に優れ、また熱安定性も良好な成形品を提供可能であることから、建築物、建築資材、農業資材、海洋資材、車両、電気・電子機器、機械、その他の各種分野において幅広く有用であり、中でも自動車用をはじめとする車両用の透明部材に極めて有用な成形品を提供するものである。中でも本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性、透明性、色相、耐衝撃性、色相の熱安定性、および帯電防止性能の熱安定性が求められるヘッドランプレンズ用途において最適であり、持続的に埃の付着し難い耐熱性の良好なヘッドランプレンズを提供し得る。したがって本発明の奏する産業上の効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において成形した自動車の素通し型ヘッドランプレンズの成形品を示す。図示されるとおり該レンズはドーム状の形状である。[1−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図。したがってかかる面積が最大投影面積となる)を示し、[1−B]はA−A線断面図を示す。
【図2】上記実施例において実施した成形品の耐薬品性試験における3点曲げを行うジグの概要を示した斜視図である。
【符号の説明】
1 ヘッドランプレンズ本体
2 レンズのドーム状部分
3 レンズの外周部分
4 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
5 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
6 レンズの外周部分の直径(220mm)
7 レンズのドーム部分の直径(200mm)
8 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
9 レンズ成形品の厚み(4mm)
11 第1の固定棒(直径3.9mmφのステンレス鋼製)
12 試験片の中心部分(試験片の描く弧の頭頂部に位置するように設置。かかる部分にガソリンを含浸させたガーゼを載せる)
13 歪負荷用の移動棒(直径3.9mmφのステンレス鋼製)
14 歪負荷用のスクリューネジ(台座7の裏面部に貫通。無負荷の試験片に接触させた位置から該スクリューネジを回しこみ、スクリューピッチに基づいて所定量の歪を試験片に負荷する)
15 試験片(ASTM D638 TYPE Iに準拠する形状)
16 第2の固定棒(直径3.9mmφのステンレス鋼製)
17 台座
18 第2の固定棒と歪負荷用の移動棒までの水平距離(50.0mm)
19 第1の固定棒と歪負荷用の移動棒までの水平距離(50.0mm)

Claims (12)

  1. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、下記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部を配合してなり、該A成分はその粘度平均分子量が23,000〜25,500であることを特徴とする帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004010743
    (式中、Aは炭素数1〜40のアルキル基(炭素数6〜40のアラルキル基を含む)または炭素数6〜40のアリール基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
  2. 上記A成分、B成分およびC成分を溶融混練してなる請求項1に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 更にブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる請求項1または2に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 上記C成分は、下記一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004010743
    (式中、Rは水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
  5. 上記B成分は、A成分100重量部に対し、1.5〜3重量部であり、上記C成分は、A成分100重量部に対し、0.05〜0.12重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなり、本文中に規定された粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品。
  7. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、上記一般式(I)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩(B成分)0.05〜5重量部、および有機スルホン酸カリウム塩(C成分)0.001〜0.3重量部からなり、本文中に規定された粘度平均分子量が19,500〜21,500である成形品。
  8. 更にブルーイング剤を帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含んでなる請求項7に記載の成形品。
  9. 上記C成分は、上記一般式(II)で表されるスルホン酸カリウム塩である請求項7または8のいずれか1項に記載の成形品。
  10. 上記B成分は、A成分100重量部に対し、1.5〜3重量部であり、上記C成分は、A成分100重量部に対し、0.05〜0.12重量部である請求項7〜9のいずれか1項に記載の成形品。
  11. 上記成形品は車両用透明部材である請求項7〜10のいずれか1項に記載の成形品。
  12. 上記成形品は4mm厚みの部分を有してなり、該4mm厚み部分のYI値が0.5〜2.5の範囲にあることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の成形品。
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