JP3979871B2 - 帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは帯電防止性能に優れ、さらに透明性、色相、成形耐熱性、耐乾熱性、耐湿熱疲労性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するがゆえに電気、機械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は表面固有抵抗が大きく、接触や摩擦などで誘起された静電気が消失し難く、成形品表面への埃の付着、人体への電撃による不快感、更にはエレクトロニクス製品におけるノイズの発生や誤動作を生じる等の問題がある。
【0003】
特に、最近では自動車用途の素通しヘッドランプレンズ内面や内装透明カバー内面、車両用樹脂窓ガラスにおいて、使用するにつれて埃が付着し透明性を損なうということが問題となっている。このような部位において透明性を損なうことは、外観上の問題だけでなく走行時の安全を確保する上でも大きな問題となっている。
【0004】
従来、ポリカーボネート樹脂の帯電を防止する方法としてスルホン酸のアルカリ金属塩を配合する方法、スルホン酸のホスホニウム塩を配合する方法(特開昭62−230835号公報)、スルホン酸のホスホニウム塩と亜リン酸エステルを配合する方法(特開平1−14267号公報)、スルホン酸のアミン塩とリン酸エステルを配合する方法(特開平3−64368号公報)等が提案されている。しかしながら、これらの方法で得られるポリカーボネート樹脂は、成形板にすると透明性、成形耐熱性、色相、耐乾熱性が大きく低下する等の問題があった。
【0005】
一方、透明性、成形耐熱性、色相、耐乾熱性を改善する目的でスルホン酸ホスホニウムとともに亜燐酸を添加する方法(特開平11−80532号公報)も提案されているが、この方法では成形時のポリカーボネートの分子量低下が大きく、また成形品の耐湿熱疲労性が著しく劣るなどの問題があった。
【0006】
一方、これまでに光学用ポリカーボネート樹脂成形材料において脂肪族カルボン酸を配合することにより成形した光ディスク基盤の内部欠陥を低減する方法(特開平4−41550号公報)や溶融重縮合法において触媒のアルカリ化合物を中和させる目的で酸性化合物を添加する耐熱性、成形滞留安定性などに優れたポリカーボネートの製造方法(特開平4−175368号公報)が示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電防止性能に優れ、且つ透明性、色相、成形耐熱性、耐乾熱性、耐湿熱疲労性の良好な帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂とベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩からなる樹脂組成物において、特定の化学構造を有するカルボン酸化合物または無水カルボン酸化合物を特定量使用することによって、驚くべきことに帯電防止性能に優れ、且つ色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化も大幅に抑制され、さらに成形時の分子量低下や耐湿熱疲労性の劣化も抑制できることを究明し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)100重量部、(B)下記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩(b成分)0.05〜5重量部および(C)(C−1)下記一般式(II)で表されるカルボン酸化合物(c−1成分)と(C−2)下記一般式(III)で表される無水カルボン酸化合物(c−2成分)からなる群より選択された少なくとも一種の化合物(c成分)0.005〜1重量部よりなる帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、R7は炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
【0014】
【化7】
【0015】
(式中、R8、R9はそれぞれ炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。)
本発明でa成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融法等の方法で反応させて得ることができる。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでもビスフェノールAが特に好ましい。
【0016】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0017】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0018】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ピリジン等が用いられる。
【0019】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0020】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の末端停止剤を用いるのが好ましい。
【0021】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0022】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0023】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネート等が挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等の通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。
【0025】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。
【0026】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0027】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、12,000〜45,000がより好ましく、15,000〜40,000がさらに好ましく、21,000〜30,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。かかる粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
【0028】
本発明において、b成分として上記一般式(I)で示されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩が、帯電防止剤として使用される。
【0029】
上記一般式(I)中、R1は水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0030】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0031】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0032】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0033】
R1としては、これらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜15のアルキル基がさらに好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂との相溶性、樹脂中の分子分散性の観点からドデシル基が好ましい。
【0034】
上記一般式(I)中、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0035】
炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基およびヘプチル基等が挙げられる。
【0036】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0037】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0038】
R2としては、これらの中で水素原子または炭素数1〜7のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0039】
R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0040】
炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびペンチル基等が挙げられる。
【0041】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0042】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0043】
R3、R4、R5およびR6としては、これらの中で炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数2〜5のアルキル基がより好ましく、ブチル基が特に好ましい。
【0044】
かかるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜3.0重量部、より好ましくは0.5〜2.5重量部の範囲で使用される。0.05重量部未満では充分な帯電防止効果が得られず、5.0重量部を越えると成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品の機械的物性が劣り、透明性及び外観も低下するため好ましくない。
【0045】
かかる帯電防止剤は、本発明の目的を損ねない範囲であれば製造時の未反応物や不純物が極少量混入していてもよい。
【0046】
また、本発明の樹脂組成物には、帯電防止剤として更に有機スルホン酸アルカリ金属塩(d成分)が併用できる。かかる併用は、より良好な帯電防止性能を樹脂組成物に発揮させるか、または帯電防止性能を維持しつつ、樹脂組成物の分解抑制効果の向上を可能にさせる。
【0047】
かかるd成分の有機スルホン酸アルカリ金属塩における、有機スルホン酸としては特に限定されるものではなく、例えば次のものが例示される。即ち、モノマーまたはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルフィドのスルホン酸、モノマーまたはポリマー状の芳香族エーテルスルホン酸、脂肪族またはオレフィン系スルホン酸、モノマーまたはポリマー状のフェノールエステルスルホン酸、およびモノマーまたはポリマー状の芳香族スルホン酸などを挙げることができる。これらの有機スルホン酸はその水素原子の一部がフッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0048】
有機スルホン酸アルカリ金属塩の中でもヘッドランプレンズなどに求められる良好な耐候性(紫外線による変色など)を与えることができる点から、下記一般式(IV)で表されるベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩(d−1成分)が併用でき、かかる併用が好ましい。
【0049】
【化8】
【0050】
上記一般式(IV)中、R10は水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0051】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0052】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0053】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びピリジニル基等が挙げられる。
【0054】
R10としては、これらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜15のアルキル基がさらに好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂との相溶性、樹脂中の分子分散性の観点からドデシル基が好ましい。
【0055】
また、上記一般式(IV)中、R11は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0056】
炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基およびヘプチル基等が挙げられる。
【0057】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0058】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0059】
R11としては、これらの中で水素原子または炭素数1〜7のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0060】
上記一般式(IV)中、Mはアルカリ金属を示す。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびフランシウムが挙げられる。
【0061】
かかる有機スルホン酸アルカリ金属塩(d成分)は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.001〜0.2重量部、より好ましくは0.005〜0.15重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲で使用される。
【0062】
かかるベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩(d−1成分)は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.001〜0.2重量部、より好ましくは0.005〜0.15重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲で使用される。ベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩を含有することにより、さらにポリカーボネート樹脂組成物の帯電防止性能が向上する。
【0063】
さらに、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、前記ベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩およびベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩以外の帯電防止剤を併用して使用することができる。
【0064】
かかる他の帯電防止剤としては、例えばベンゼンスルホン酸カルシウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、およびベンゼンスルホン酸バリウム等のベンゼンスルホン酸アルカリ土類金属塩、脂肪酸エステル化合物、カーボン、グラファイト、並びに金属粉末等が挙げられる。かかる帯電防止剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましい。
【0065】
本発明において、c成分として上記一般式(II)で示されるカルボン酸化合物(c−1成分)および上記一般式(III)で示される無水カルボン酸化合物(c−2成分)からなる群より選択された少なくとも一種の化合物が、熱安定剤として使用される。
【0066】
上記一般式(II)中、R7は炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0067】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0068】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0069】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0070】
R7としては、これらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。特に酢酸が好ましく用いられる。
【0071】
上記一般式(III)中、R8、R9はそれぞれ炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。
【0072】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0073】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0074】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0075】
R8、R9としては、それぞれこれらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。特に無水酢酸が好ましく用いられる。
【0076】
かかるカルボン酸化合物および無水カルボン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一種の化合物は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.02〜0.2重量部の範囲となる量で使用される。0.005重量部未満では充分な熱安定性の効果が得られず、1重量部を越えると成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品の成形耐熱性が劣り、透明性及び機械物性も低下するため好ましくない。
【0077】
かかるカルボン酸化合物および無水カルボン酸化合物は、本発明の目的を損ねない範囲であれば製造時の未反応物や不純物を極少量混入していてもよい。
【0078】
本発明において、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物の色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化抑制に加え、分子量低下や耐湿熱疲労性の劣化も抑制できる理由は次のように考えられる。
【0079】
ポリカーボネート樹脂に帯電防止剤として配合されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩は、通常不安定な物質であり、熱分解反応や酸化反応により分解しやすい。さらに、分解反応により生成した副生物の中には、着色物やポリカーボネート樹脂と副反応を起こす物質が存在するため、加熱溶融して成形したり、成形品に熱履歴が生じると成形品の変色による色相悪化や分子量低下などが起こる。特に、塩基性雰囲気になるとスルホン酸基への求核反応が起こり易くなるため、容易にポリカーボネート樹脂の分解が起こると考えられる。かかる分解をできるだけ少なくするには、樹脂組成物の酸性度を調整し、求核反応による分解を抑制するのが最も良い方法と考えられる。
【0080】
この目的で用いられる酸性度調整剤としては、弱酸性領域にpK(酸の解離定数の逆数の対数)を持つ様々な酸性化合物が考えられるが、その中でも好ましいpKの範囲は4〜7、特に好ましくは4.5〜5.5である。pK4未満では樹脂組成物の酸性度が強すぎるため成形時に帯電防止剤の分解が起こりやすく、さらに成形品表面での帯電防止剤の解離も少なくなるため帯電防止性能が弱くなり易い。pK7を越えると樹脂組成物の酸性度が弱すぎるため、帯電防止剤のスルホン酸基やポリカーボネートのカーボネート結合が求核攻撃を受け、分解し易くなる。
【0081】
さらに、弱酸性を示す酸性化合物の中でも、カルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物は、分解副生物と考えられるベンゼンスルホン酸誘導体とエステル様構造を形成し安定化すると考えられ、更なる副反応によるポリカーボネートの分解を抑制する効果もあると考えられる。
【0082】
本発明では、上記帯電防止剤の分解抑制効果、分解物の副反応抑制効果、ポリカーボネート樹脂の分解抑制効果の相乗効果によって、本発明の樹脂組成物が帯電防止性能に優れ、且つ色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化も大幅に抑制され、さらに成形時の分子量低下や耐湿熱疲労性の劣化も抑制されるものと考える。
【0083】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、さらにりん系熱安定剤を使用することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0084】
具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、
【0085】
トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、
【0086】
テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイト、
【0087】
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられ、なかでもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。
【0088】
これらの熱安定剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましい。
【0089】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止剤の樹脂中での分散効率を良くし濃度分布を小さくする目的や、成形時に成形品表面への帯電防止剤の移行性を向上させる目的、さらに成形時の金型からの離型性を付与する目的等で脂肪酸エステル化合物を使用することができる。
【0090】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる脂肪酸エステルの使用量は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0091】
かかる脂肪酸エステル化合物をポリカーボネート樹脂に使用する場合、あらかじめ脂肪酸エステル化合物中に帯電防止剤を均一に分散させたマスターを作成し、これをポリカーボネート樹脂に配合し成形する方法が帯電防止剤の樹脂中での分散性、濃度の均一性、成形品表面への移行性の観点からより望ましい。
【0092】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を使用することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
【0093】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない程度で離型剤を使用することができる。かかる離型剤としては、前記脂肪酸エステル、ポリオルガノシロキサン、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0094】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ベンゾフェノン系では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0095】
ベンゾトリアゾール系では、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0096】
紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、および2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどを挙げることができる。
【0097】
また本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。
【0098】
上記紫外線吸収剤および光安定剤は単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。かかる紫外線吸収剤および光安定剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましい。
【0099】
本発明のポリカーボネート樹脂成形品には、発明の目的を損なわない範囲でブルーイング剤を使用することができる。ブルーイング剤は、ポリカーボネート樹脂成形品の黄色味を消すために有効である。とくに耐候性を付与した成形品の場合は、一定量の紫外線吸収剤が使用されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂製品が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシート等の成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。
【0100】
本発明におけるブルーイング剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂成形品に対して0.05〜2ppmが好ましく、0.5〜1.5ppmがより好ましい。使用量が多すぎると樹脂製品の青みが強くなって視感透明度が低下する場合がある。
【0101】
ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットBやサンド社のトリアゾールブルーRLS等が挙げられる。
【0102】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で上記ブルーイング剤以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性を維持する点から、染料が好適である。ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することができる。これら染料および蛍光増白剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
【0103】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等が挙げられ、それらを一種以上使用することができる。
【0104】
具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等である。
【0105】
具体的に有機塩系難燃剤は、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等である。
【0106】
具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等である。
【0107】
具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等である。
【0108】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
【0109】
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0110】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0111】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
【0112】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばポリカーボネート樹脂パウダー、帯電防止剤、リン系安定剤および所望の添加剤を、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られるポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品にすることができる。更に本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。
【0113】
添加剤のブレンドにあたっては、一段階で実施してもよいが、二段階以上に分けて実施してもよい。二段階に分けて実施する方法には、例えば、あらかじめ帯電防止剤と添加剤をブレンドした後、ポリカーボネート樹脂パウダーとブレンドする方法や、配合予定のポリカーボネート樹脂パウダーの一部と添加剤とを先にブレンドした後、つまり、添加剤をポリカーボネート樹脂パウダーで希釈して添加剤のマスターバッチとした後、このマスターバッチとポリカーボネート樹脂パウダーをブレンドする方法も採用できる。
【0114】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性に加え、透明性、色相、耐熱性に優れることより、ヘッドランプレンズ、照明灯カバー、有機窓ガラス(車両用や建材用)に好適である。特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形時の色相劣化、分子量低下が少なく、耐湿熱疲労性の劣化も少ないことから、ヘッドランプレンズとして好適に使用される。
【0115】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
【0116】
(1)帯電防止性能(乾燥前の表面抵抗率):成形板表面の固有抵抗を、東亜電波工業(株)製SM−8210極限絶縁計により測定した。数値が小さいほど帯電防止性能が優れていることを示す。
【0117】
(2)透明性(ヘイズ):透明性は、厚さ2.0mmの成形板のヘイズを日本電色(株)製NDH−300Aにより測定した。ヘイズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
【0118】
(3)色相(YI値):日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて測定したX,Y,ZからASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
【0119】
(4)成形耐熱性
(i)分子量低下量:射出成形機を用いてペレットを成形温度310℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(70mm×50mm×2mm)に成形した。さらに、シリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後、成形し「滞留後の色相測定用平板」を得た。滞留前後の平板の分子量を測定し、その差を求めた。値が小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
【0120】
(ii)ΔE(色相変化):上記滞留試験において、滞留前後の平板の色相を色差計により測定し、次式により色差△Eを求めた。表に示した値(△E)が小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
ΔE=((L−L')2+(a−a')2+(b−b')2)1/2
滞留前の色相:L、a、b
滞留後の色相:L'、a'、b'
【0121】
(5)耐乾熱性(ΔYI):厚さ2.0mmの成形板を温度設定115℃の乾燥機中に1000時間保管した。保管前に対する保管後の成形板YI値の差であるΔYI値を算出した。ΔYI値が小さいほど成形板の色変化が小さく、耐乾熱性に優れることを示す。
【0122】
(6)耐湿熱疲労性:図1に示したいわゆるC型の測定用サンプルを用いて、80℃、90%RHの雰囲気で、正弦波で振動数1Hz、最大荷重2kgの条件で、疲労試験機[(株)島津製作所製 島津サーボパルサー EHF−EC5型]を用いて、測定用サンプルが破断するまでの回数を測定した。表に示した値(破断するまでの回数)が大きいほど、耐湿熱疲労性に優れることを示す。
【0123】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法により製造された分子量22000(ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.40)のポリカーボネート樹脂100部に、表1記載のB成分(帯電防止剤)及びC成分として酢酸(pKa=4.56)又は無水酢酸を表1記載の量配合し、更に他の熱安定剤としてテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト0.035部、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイト0.008部、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.008部、酸化防止剤として3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸オクタデシルエステル0.03部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットを0.00015部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度305℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表1に示した。なお、表1中記号表記のB成分(帯電防止剤)は下記の通りである。また、実施例1〜4の組成物より得たペレットを用い、公知方法に従いヘッドランプレンズを作成した。このヘッドランプレンズは、色相、透明性等外観が良好であった。
【0124】
(b成分の帯電防止剤)
B−1;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩
(d成分(d−1成分)の帯電防止剤)
B−2;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩
B−3;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩
【0125】
[比較例4]
実施例1において、酢酸の代わりに亜燐酸を使用した以外は実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表2に示した。
【0126】
[比較例5]
実施例1において、酢酸の代わりに蟻酸(pK=3.55)を使用した以外は実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表2に示した。
【0127】
[比較例6]
実施例1において、酢酸の代わりにクエン酸(pK1=2.90)を使用した以外は実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表2に示した。
【0128】
[参考例1]
実施例1にて用いたポリカーボネート樹脂を、実施例1と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表2に示した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【発明の効果】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性能に優れ、且つ色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化も大幅に抑制され、さらに成形時の分子量低下や湿熱疲労性の劣化も抑制できるので、特にヘッドランプレンズ用途において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐湿熱疲労性を評価するために使用した、いわゆるC型サンプルの正面図である。なおサンプルの厚みは3mmである。符号6で示される孔の部分に試験機の治具を通し、符号7で示される垂直方向に所定の荷重をかけて試験を行う。
【符号の説明】
1 C型形状の二重円の中心
2 二重円の内側円の半径(20mm)
3 二重円の外側円の半径(30mm)
4 治具装着用孔の位置を示す中心角(60°)
5 サンプル端面の間隙(13mm)
6 治具装着用孔(直径4mmの円であり、サンプル幅の中央に位置する)
7 疲労試験時におけるサンプルに課される荷重の方向
Claims (4)
- (A)ポリカーボネート樹脂(a成分)100重量部、(B)下記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩(b成分)0.05〜5重量部および(C)(C−1)下記一般式(II)で表されるカルボン酸化合物(c−1成分)と(C−2)下記一般式(III)で表される無水カルボン酸化合物(c−2成分)からなる群より選択された少なくとも一種の化合物(c成分)0.005〜1重量部よりなる帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して(D)有機スルホン酸アルカリ金属塩(d成分)0.001〜0.2重量部を含む請求項1記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物より形成されるヘッドランプレンズ。
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