JP3847603B2 - 帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは帯電防止性能および帯電防止性能の加熱状態での持続性に優れ、さらに成形品の透明性、色相、成形耐熱性、耐乾熱性、耐湿熱疲労性に優れた帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するがゆえに電気、機械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は表面固有抵抗が大きく、接触や摩擦などで誘起された静電気が消失し難く、成形品表面への埃の付着、人体への電撃による不快感、更にはエレクトロニクス製品におけるノイズの発生や誤動作を生じる等の問題がある。
【0003】
特に、最近では自動車用途の素通しヘッドランプレンズ内面や内装透明カバー内面、車両用樹脂窓ガラスにおいて、使用するにつれて埃が付着し透明性を損なうということが問題となっている。このような部位において透明性を損なうことは、外観上の問題だけでなく走行時の安全を確保する上でも大きな問題となっている。
【0004】
従来、ポリカーボネート樹脂の帯電を防止する方法としてスルホン酸のアルカリ金属塩を配合する方法、スルホン酸のホスホニウム塩を配合する方法(特開昭62−230835号公報)、スルホン酸のアミン塩とリン酸エステルを配合する方法(特開平3−64368号公報)等が提案されている。これらの中で、スルホン酸のホスホニウム塩は、ある程度良好な帯電防止性能や耐熱性を有しており、上記特開昭62−230835号公報において、具体的には、ポリカーボネート樹脂にベンゼンスルホン酸のテトラブチルホスホニウム塩などを添加し、この組成物を成形したシートは帯電防止性能及び外観に優れることが示されている。
【0005】
しかしながら、かかるポリカーボネート樹脂組成物は、成形品の帯電防止性能が時間と共に消失しやすく、特に加熱状態では短期間で帯電防止性能が消失してしまうという問題があった。特に自動車ヘッドランプレンズなどでは、連続して点灯した場合にはレンズ内面が高温となるため帯電防止性能が早期に消失するという問題があった。
【0006】
一方、帯電防止性能の加熱状態での持続性を少しでも改善する目的で、帯電防止剤の添加量をできるだけ多くする方法が考えられるが、この方法ではポリカーボネート樹脂の透明性、成形耐熱性、色相、耐乾熱性に加え、機械物性も大きく低下する等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電防止性能および帯電防止性能の加熱状態での持続性に優れ、且つ透明性、色相、成形耐熱性、耐乾熱性、耐湿熱疲労性の良好な帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂とベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩からなる樹脂組成物において、ホスホニウム塩置換基として特有の組み合わせ構造を有することにより、驚くべきことに帯電防止性能および帯電防止性能の加熱時の持続性に優れ、且つ色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化も大幅に抑制され、さらに成形時の分子量低下や耐湿熱疲労性の劣化も抑制できることを究明し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部(a成分)、(B)下記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩0.05〜5重量部(b成分)よりなる帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示し、R3は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R4は炭素数6〜16のアルキル基を示し、mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、且つm+n=4である。)
本発明でa成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、一例として二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法等の方法で反応させて得ることができる。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでもビスフェノールAが特に好ましい。
【0012】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0013】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0014】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ピリジン等が用いられる。
【0015】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0016】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の末端停止剤を用いるのが好ましい。
【0017】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0018】
溶融重合法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0019】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネート等が挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0020】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等の通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。
【0021】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。
【0022】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている形式を採用することができる。
【0023】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、12,000〜45,000がより好ましく、15,000〜40,000がさらに好ましく、21,000〜30,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。かかる粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
【0024】
本発明において、b成分として上記一般式(I)で示されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩が、帯電防止剤として使用される。
【0025】
上記一般式(I)中、R1は水素原子、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。ここで、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでもよい。
【0026】
炭素数1〜35のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0028】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0029】
R1としては、これらの中で炭素数1〜35のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜15のアルキル基がさらに好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂との相溶性、樹脂中の分子分散性の観点からドデシル基が好ましい。
【0030】
上記一般式(I)中、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数5〜15のアリール基を示す。ここで、アラルキル基およびアリール基はヘテロ原子を含んでもよい。
【0031】
炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基およびヘプチル基等が挙げられる。
【0032】
炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0033】
炭素数5〜15のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基およびピリジニル基等が挙げられる。
【0034】
R2としては、これらの中で水素原子または炭素数1〜7のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0035】
上記一般式(I)中、R3は、炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0036】
炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基等が挙げられる。
【0037】
R3としては、これらの中で炭素数2〜5のアルキル基が好ましく、炭素数3〜4のアルキル基がより好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。
【0038】
上記一般式(I)中、R4は炭素数6〜16のアルキル基を示す。炭素数が6より小さくなると、または炭素数が16より大きくなると、加熱処理後の帯電防止性能が不十分であり好ましくない。
【0039】
炭素数6〜16のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよい。例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基およびヘキサデシル基等が挙げられる。
【0040】
R4としては、これらの中で炭素数7〜14のアルキル基が好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が特に好ましい。
【0041】
かかるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜4.0重量部、より好ましくは0.5〜3.0重量部の範囲で使用される。0.05重量部未満では充分な帯電防止効果が得られず、5.0重量部を越えると成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品の機械的物性が劣り、透明性及び外観も低下するため好ましくない。
【0042】
かかる帯電防止剤は、本発明の目的を損ねない範囲であれば製造時の未反応物や不純物が極少量混入していてもよい。
【0043】
さらに、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、前記ベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩以外の帯電防止剤を併用して使用することができる。
【0044】
かかる他の帯電防止剤としては、例えばベンゼンスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸カルシウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、ベンゼンスルホン酸バリウム、脂肪酸エステル化合物、カーボン、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。かかる帯電防止剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0045】
本発明において、さらにc成分として脂肪酸エステル化合物が好ましく使用される。脂肪酸エステル化合物を使用することにより帯電防止剤の樹脂中での相溶性、分散性、移動性の効率を良くするため、樹脂中の帯電防止剤の濃度分布を小さくしたり、成形時に成形品表面への帯電防止剤の移行性を向上させる効果がある。さらに成形時の金型からの離型性を付与する効果も有する。
【0046】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでもグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレートが好ましく、グリセリンモノステアレートが特に好ましい。かかる脂肪酸エステルの使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜5.0重量部が好ましく、0.01〜1.0重量部が特に好ましい。
【0047】
かかる脂肪酸エステル化合物をポリカーボネート樹脂に使用する場合、あらかじめ脂肪酸エステル化合物中に帯電防止剤を均一に分散させたマスターを作成し、これをポリカーボネート樹脂に配合し成形する方法が帯電防止剤の樹脂中での分散性、濃度の均一性、成形品表面への移行性の観点からより望ましい。
【0048】
本発明で帯電防止剤として配合されるベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩は、通常不安定な物質であり、熱分解反応や酸化反応により分解しやすい。さらに、分解反応により生成した副生物の中には、着色物やポリカーボネート樹脂と副反応を起こす物質が存在するため、加熱溶融して成形したり、成形品に熱履歴が生じると成形品の変色による色相悪化や分子量低下などが起こりやすい。特に、塩基性雰囲気になるとスルホン酸基への求核反応が起こり易くなるため、容易に帯電防止剤の分解が起こると考えられる。かかる分解をできるだけ少なくするには、樹脂組成物に酸を添加し、酸性度を調整する方法が良い。
【0049】
この目的で用いられる酸性度調整剤としては、弱酸性領域にpK(酸の解離定数の逆数の対数)を持つ様々な酸性化合物が考えられるが、その中でも好ましいpKの範囲は4〜7、特に好ましくは4.5〜5.5である。4以上のものは樹脂組成物の酸性度が強すぎず適度であり成形時に帯電防止剤の分解が起こり難く、さらに成形品表面での帯電防止剤の解離も多くなり帯電防止性能に優れ、7以下のものは樹脂組成物の酸性度が弱すぎず適度であり、帯電防止剤のスルホン酸基やポリカーボネート樹脂のカーボネート結合が求核攻撃を受け難く、分解し難くなるため好ましい。
【0050】
具体的には、弱酸性を示す酸性化合物の中でも、カルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物が好ましく使用される。かかるカルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物は上記求核分解反応の抑制に働くだけでなく、帯電防止剤の分解副生物と考えられるベンゼンスルホン酸誘導体とエステル様構造を形成し安定化する可能性も考えられ、更なる副反応によるポリカーボネートの分解を抑制する効果もあると考えられる。上記酸性化合物は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0005〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部の範囲で使用される。
【0051】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、さらにりん系熱安定剤を使用することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0052】
具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、
【0053】
トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、
【0054】
テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイト、
【0055】
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0056】
なかでもトリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。
【0057】
これらの熱安定剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の使用量は、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましい。
【0058】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的、特に乾熱処理時の劣化を防止する目的で通常知られた酸化防止剤を使用することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の使用量は、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない程度で離型剤を使用することができる。かかる離型剤としては、前記脂肪酸エステル、ポリオルガノシロキサン、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0060】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤化合物は、具体的に、ベンゾフェノン系では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0061】
ベンゾトリアゾール系では、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。かかる紫外線吸収剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましい。
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂成形品には、発明の目的を損なわない範囲でブルーイング剤を使用することができる。ブルーイング剤は、ポリカーボネート樹脂成形品の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した成形品の場合は、一定量の紫外線吸収剤が使用されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂製品が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシート等の成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。
【0063】
本発明におけるブルーイング剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂に対して0.05〜3ppmが好ましく、0.5〜2ppmがより好ましい。使用量が多すぎると樹脂製品の青みが強くなって視感透明度が低下する場合がある。
【0064】
ブル−イング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットBやサンド社のトリアゾ−ルブル−RLS等が挙げられる。
【0065】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等が挙げられ、それらを一種以上使用することができる。
【0066】
具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等である。
【0067】
具体的に有機塩系難燃剤は、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等である。
【0068】
具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等である。
【0069】
具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等である。
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
【0071】
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0072】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0073】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばポリカーボネート樹脂パウダー、帯電防止剤および所望の添加剤を、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られるポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品にすることができる。
【0074】
添加剤のブレンドにあたっては、一段階で実施してもよいが、二段階以上に分けて実施してもよい。二段階に分けて実施する方法には、例えば、あらかじめ帯電防止剤と添加剤をブレンドした後、ポリカーボネート樹脂パウダーとブレンドする方法や、配合予定のポリカーボネート樹脂パウダーの一部と添加剤とを先にブレンドした後、つまり、添加剤をポリカーボネート樹脂パウダーで希釈して添加剤のマスターバッチとした後、このマスターバッチとポリカーボネート樹脂パウダーをブレンドする方法も採用できる。
【0075】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性に加え、透明性、色相、耐熱性に優れることより、ヘッドランプレンズ、照明灯カバー、有機窓ガラス(車両用や建材用)に好適である。特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形時の色相劣化、耐湿熱疲労性の劣化が少なく、加熱処理後の帯電防止性能に優れることから、ヘッドランプレンズとして好適に使用される。
【0076】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
【0077】
(1)帯電防止性能(加熱処理前の表面抵抗):厚さ2.0mmの成形板表面の固有抵抗を、東亜電波工業(株)製SM−8210極超絶縁計により測定した。数値が小さいほど帯電防止性能が優れていることを示す。
【0078】
(2)耐熱帯電防止性能(加熱処理後の表面抵抗):厚さ2.0mmの成形板を温度設定120℃の乾燥機中に100時間保管し、保管後取り出した成形板を1週間23℃、50%にて調整後、上記(1)の方法にて表面抵抗を測定した。
【0079】
(3)透明性(ヘイズ):透明性は、厚さ2.0mmの成形板のヘイズを日本電色(株)製NDH−300Aにより測定した。ヘイズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
【0080】
(4)色相(YI値):日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて測定したX,Y,ZからASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
【0081】
(5)成形耐熱性(ΔE):射出成形機を用いてペレットを成形温度315℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(70mm×50mm×2mm)に成形した。さらに、シリンダ−中に樹脂を10分間滞留させた後、成形し「滞留後の色相測定用平板」を得た。滞留前後の平板の色相を色差計により測定し、次式により色差△Eを求めた。表に示した値(△E)が小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
ΔE=((L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)2)1/2
滞留前の色相:L、a、b
滞留後の色相:L’、a’、b’
【0082】
(6)耐乾熱性(ΔYI):厚さ2.0mmの成形板を温度設定120℃の乾燥機中に1000時間保管した。保管前に対する保管後の成形板YI値の差であるΔYI値を算出した。ΔYI値が小さいほど成形板の色変化が小さく、耐乾熱性に優れることを示す。
【0083】
(7)耐湿熱疲労性:図1に示したいわゆるC型の測定用サンプルを用いて、80℃、90%RHの雰囲気で、正弦波で振動数1Hz、最大荷重2kgの条件で、疲労試験機[(株)島津製作所製 島津サーボパルサー EHF−EC5型]を用いて、測定用サンプルが破断するまでの回数を測定した。表に示した値(破断するまでの回数)が大きいほど、耐湿熱疲労性に優れることを示す。
【0084】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法により製造された分子量22000(ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.40)のポリカーボネート樹脂100部に、表1記載のB成分(帯電防止剤)を表1記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表1に示した。
なお、表1〜表6中、記号表記のB成分(帯電防止剤)は下記の通りである。
B−1;ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルモノオクチルホスホニウム
B−2;ドデシルベンゼンスルホン酸ジブチルジオクチルホスホニウム
B−3;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム
B−4;ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルモノオクタデシルホスホニウム
【0085】
[参考例1]
実施例1において、B成分を添加しない以外は実施例1と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
[実施例5、比較例5]
実施例1において使用したポリカーボネート樹脂100部に、表2記載の上記B成分(帯電防止剤)を表2記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部、さらに安定剤としてグリセリンモノステアレートを0.1部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表2に示した。得られた成形板の各評価結果を表2に示した。
【0088】
[参考例2]
実施例5において、B成分を添加しない以外は実施例5と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例5と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
[実施例6、比較例6]
実施例1において使用したポリカーボネート樹脂100部に、表3記載の上記B成分(帯電防止剤)を表3記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部、安定剤としてグリセリンモノステアレートを0.1部、さらに成形耐熱安定剤としてトリメチルホスフェートを0.005部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表3に示した。
【0091】
[参考例3]
実施例6において、B成分を添加しない以外は実施例6と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例6と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表3に示した。
【0092】
【表3】
【0093】
[実施例7、比較例7]
実施例1において使用したポリカーボネート樹脂100部に、表4記載の上記B成分(帯電防止剤)を表4記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部、安定剤としてグリセリンモノステアレートを0.1部、成形耐熱安定剤としてテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4、4’−ビフェニレンジホスホナイト0.035部配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表4に示した。
【0094】
[参考例4]
実施例7において、B成分を添加しない以外は実施例7と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例7と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表4に示した。
【0095】
【表4】
【0096】
[実施例8、比較例8]
実施例1において使用したポリカーボネート樹脂100部に、表5記載の上記B成分(帯電防止剤)を表5記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部、安定剤としてグリセリンモノステアレートを0.1部、さらに耐乾熱性安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.05部を配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表5に示した。
【0097】
[参考例5]
実施例8において、B成分を添加しない以外は実施例8と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例8と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表5に示した。
【0098】
【表5】
【0099】
[実施例9、比較例9]
実施例1において使用したポリカーボネート樹脂100部に、表6記載の上記B成分(帯電防止剤)を表6記載の量配合し、酸性度調整剤として酢酸0.01部、ブルーイング剤としてバイエル(株)製マクロレックスバイオレットBを0.00018部、安定剤としてグリセリンモノステアレートを0.1部、成形耐熱安定剤としてトリメチルホスフェートを0.005部、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4、4’−ビフェニレンジホスホナイトを0.035部、さらに耐乾熱性安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.05部を配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式単軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットを射出成形機を用いて、シリンダー温度315℃の条件で、厚さ2mmの50mm角板および測定用サンプルを成形した。得られた成形板の各評価結果を表6に示した。
【0100】
[参考例6]
実施例9において、B成分を添加しない以外は実施例9と同様の方法によりペレット化した。得られたペレットを実施例9と同様の方法により成形した。得られた成形板の評価結果を表6に示した。
【0101】
【表6】
【0102】
また、実施例1〜9で得られたそれぞれのペレットを用い、公知方法に従いヘッドランプレンズを作成した。これらのヘッドランプレンズは、帯電防止性能持続性、色相、透明性等外観が良好で、成形時や乾熱処理時の樹脂の劣化も少なく、さらに機能的に充分な機械物性を保持していた。
【0103】
【発明の効果】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性能及び帯電防止性能の加熱状態での持続性に優れ、また成形品の透明性、色相、成形耐熱性、耐乾熱性の劣化も大幅に抑制され、さらに成形時の分子量低下や湿熱疲労性の劣化も抑制できるので、特にヘッドランプレンズ用途において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐湿熱疲労性を評価するために使用した、いわゆるC型サンプルの正面図である。なおサンプルの厚みは3mmである。符号6で示される孔の部分に試験機の治具を通し、符号7で示される垂直方向に所定の荷重をかけて試験を行う。
【符号の説明】
1 C型形状の二重円の中心
2 二重円の内側円の半径(20mm)
3 二重円の外側円の半径(30mm)
4 治具装着用孔の位置を示す中心角(60°)
5 サンプル端面の間隙(13mm)
6 治具装着用孔(直径4mmの円であり、サンプル幅の中央に位置する)
Claims (3)
- さらに、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、(C)脂肪酸エステル化合物0.001〜5.0重量部(c成分)を含む請求項1記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1または請求項2記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物より形成されるヘッドランプレンズ。
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