JP2001198438A - 脱硝装置のアンモニア注入量制御方法 - Google Patents

脱硝装置のアンモニア注入量制御方法

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JP2001198438A JP2000009054A JP2000009054A JP2001198438A JP 2001198438 A JP2001198438 A JP 2001198438A JP 2000009054 A JP2000009054 A JP 2000009054A JP 2000009054 A JP2000009054 A JP 2000009054A JP 2001198438 A JP2001198438 A JP 2001198438A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 適正なアンモニア注入量を求めることによ
り、脱硝出口NOx濃度を常に所要値以下に保つことが
できるとともに、リークアンモニア量はほとんど0とす
ることができ、しかも、技術的に高度な知識が要求され
ないことからメンテナンス性に優れている脱硝装置のア
ンモニア注入量制御方法を提供する。 【解決手段】 目標脱硝率、触媒入口温度および脱硝装
置静特性より求められる基本モル比と、脱硝装置動特性
を考慮して求められる補正モル比との和に基づいてアン
モニア注入量を計算してフィードフォワード制御する。
補正モル比が、時間変化信号とゲイン関数発生器との積
で計算され、時間変化信号が式-log(1−目標脱硝率)
を用いて計算され、ゲイン関数発生器が、触媒入口温度
の関数とされている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガスタービンの
出口に設けられて排ガス中のNOxを除去する脱硝装置
において、還元剤であるアンモニアを先行注入するに際
し、アンモニア注入量の適正値を確保するための制御方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンから排出されるNOx量
は、起動・停止の過程や負荷変動によって過渡的に大き
く変動するものであり、他方、脱硝装置は、脱硝・吸着
反応という化学反応特有の非線形性・動特性をもってい
る。また、NOx量を計測するNOx濃度分析計は、検
出遅れ・サンプリングによるむだ時間を有している。そ
のため、脱硝出口NOx濃度計測値のフィードバックに
よる制御は技術的に困難である。
【0003】したがって、従来の脱硝装置のアンモニア
注入量制御方法としては、ガスタービン出口の予測NO
x流量と脱硝出口の目標NOx流量とから計算される脱
硝率に基づいて、予め設定されたアンモニアモル比(ア
ンモニア量/NOx流量)をテーブルから取り出し、ア
ンモニアモル比と予測NOx流量(=NOx濃度×排ガ
ス流量)との積により必要なアンモニア注入量を求め、
その信号を負荷変化信号などで補正するフィードフォワ
ード制御を行っていた。
【0004】このアンモニア注入量制御方法は、脱硝・
吸着反応という化学反応特有の非線形性・動特性を考慮
しないものであり、起動・停止の過程や負荷変動によっ
てガスタービンから排出されるNOx量が過渡的に大き
く変動する場合、たとえば起動時において排ガス温度が
低温(250℃以下)となる場合には、脱硝装置の時定
数(アンモニア注入ステップ応答送れ時間)が大きいた
めに、脱硝出口濃度を常に所要値(数ppm)以下に保
つことが難しいという問題があった。また、脱硝出口濃
度を所要値以下に保とうとすることにより、反応せずに
棄てられるリークアンモニア量が多くなるという問題も
あった。しかも、フィードフォワード制御により求めら
れたアンモニア注入量が適正でないため、フィードバッ
ク制御がハンチングを起こすという問題もあった。
【0005】そこで、この問題を解消するものとして、
特開平11−267451には、脱硝装置における排ガ
ス流量、排ガス温度、入口NOx濃度および出口NOx
濃度目標値を用いて、同装置の脱硝・吸着反応動特性の
逆モデルを解くことにより、必要なアンモニア吸着量お
よびアンモニア注入量を求め、フィードフォワード制御
により脱硝装置のアンモニア注入量制御を行うことを特
徴とする脱硝装置のアンモニア注入量制御方法が提案さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平11−26
7451の脱硝装置のアンモニア注入量制御方法は、パ
ラメータ調整として脱硝装置の脱硝反応、吸着反応等の
化学反応速度式の定数を調整する必要があり、技術的に
高度な知識が要求されメンテナンス上問題があった。
【0007】また、フィードバック制御に関しては、脱
硝装置の特性の複雑さ、また、出口分析系のむだ時間が
大きいため、定常運転時にのみ実施されており、そのた
め、起動/停止時、負荷変動の制御性向上が困難である
という問題もあった。
【0008】また、従来のフィードフォワード制御は、
アンモニア注入量計算値分だけアンモニアを注入して排
ガスと混合し、脱硝触媒表面で還元反応させるものであ
るが、この方法では、排ガス流量計測値が不確かさを含
んでいることや、注入されたアンモニアが脱硝触媒に到
着するまでに微量燃焼することなどが原因で、脱硝触媒
表面上でのアンモニア吸着量が不足し、制御結果に悪影
響を及ぼすという問題もあった。
【0009】この発明の目的は、適正なアンモニア注入
量を求めることにより、脱硝出口NOx濃度を常に所要
値以下に保つことができるとともに、リークアンモニア
量はほとんど0とすることができ、しかも、技術的に高
度な知識が要求されないことからメンテナンス性に優れ
ている脱硝装置のアンモニア注入量制御方法を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明による脱硝装置
のアンモニア注入量制御方法は、触媒入口温度および脱
硝装置静特性より求められる基本モル比と、脱硝装置動
特性を考慮して求められる補正モル比との和に基づいて
アンモニア注入量を計算してフィードフォワード制御す
る脱硝装置のアンモニア注入量制御方法において、補正
モル比が、時間変化信号とゲイン関数発生器との積で計
算されており、時間変化信号が式-log(1−目標脱硝
率)を用いて計算され、ゲイン関数発生器が、触媒入口
温度の関数とされていることを特徴とするものである。
【0011】上記フィードフォワード制御に加えて、出
口NOx濃度設定値と出口NOx濃度計測値との偏差信
号に基づいて、PID制御器によってアンモニア注入量
がフィードバック制御されており、このときのPID制
御器の入力信号のゲインまたはPID制御器のゲイン
が、可変ゲインとされていることが好ましい。PID制
御器の入力信号のゲインまたはPID制御器のゲインを
可変ゲインとするには、出口NOx濃度設定値と出口N
Ox濃度計測値との偏差信号を使用するか、または、触
媒入口温度のゲイン関数発生器を使用するか、または、
これらの併用による可変ゲインとすればよい。併用の場
合、すなわち、PID制御器の入力信号のゲインまたは
PID制御器のゲインが、偏差信号による分と触媒入口
温度による分との和からなる可変ゲインとされる場合に
は、偏差信号によるゲイン関数発生器と、触媒入口温度
によるゲイン関数発生器のそれぞれを、併用しない場合
の発生するゲイン関数のレベルを下げる等調製した上で
の、偏差信号による分のゲインと触媒入口温度による分
のゲインの和で決定される。PID制御器の入力信号の
ゲインまたはPID制御器のゲインという表現の「また
は」は、偏差信号と偏差信号によるゲインとの積をゲイ
ン1としたPID制御器に入力することと、PID制御
器のゲインを偏差信号によるゲインとしたPID制御器
に、偏差信号を入力することとが同じになることを意味
するものである。
【0012】また、フィードフォワード制御において
は、脱硝入口NOx濃度、脱硝出口NOx濃度および脱
硝出口アンモニア濃度から求まる脱硝入口アンモニア濃
度推定値と、脱硝入口アンモニア濃度設定値との関係式
を求め、この関係式を用いて脱硝入口アンモニア濃度補
正値を計算し、この補正値を用いてアンモニア注入量を
求めることが好ましい。このさい、脱硝入口NOx濃
度、脱硝出口NOx濃度および脱硝出口アンモニア濃度
は、それぞれの濃度分析計により計測される。脱硝入口
アンモニア濃度設定値に代えて、アンモニア流量と排ガ
ス流量との比で求められるアンモニア濃度計算値を用い
てもよく、関係式としては、1次式:y=ax+bを用
いることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を、以下図
面を参照して説明する。
【0014】図1は、この発明のアンモニア注入量制御
方法が使用される脱硝プロセスのフローを示している。
同図において、圧縮機(2) および燃焼器(3) によって駆
動されるガスタービン(1) の出口に、排熱回収ボイラ用
排ガス脱硝装置(4) が設けられている。この排ガス脱硝
装置(4) においては、ガスタービン(1) の排ガス中に含
まれるNOxとアンモニア注入グリッド(5) から注入さ
れたアンモニアとが、脱硝触媒(6) の存在下で反応して
窒素と水とになって煙突(7) から排出されるとともに、
これらに未反応のNOxとアンモニアとが随伴する。脱
硝装置(4)入口および出口には、それぞれNOx濃度分
析計(8)(9)が設けられている。また、脱硝装置(4) 出口
には、アンモニア濃度分析計(10)が設けられている。ア
ンモニアは、制御装置によりコントロールされており、
アンモニア発生装置(11)で得られたものが流量調整弁(1
2)などによりその流量を制御されて混合器(13)に至り、
ここで流量調整弁(14)およびファン(15)を介して導入さ
れた希釈用空気と混合されて、アンモニア注入グリッド
(5) に送られている。
【0015】図2は、アンモニア注入量制御系のブロッ
ク図を示している。アンモニア注入量制御系は、予測N
Ox濃度補正部(21)と、アンモニア注入量制御系フィー
ドフォワード部(図ではFF部と略す)(22)と、アンモ
ニア注入量制御系フィードバック部(図ではFB部と略
す)(23)とから構成されている。
【0016】予測NOx濃度補正部(21)は、ガスタービ
ン(図ではGTと略す)出口のNOx分析計(8)で得ら
れた計測GT出口NOx濃度と、脱硝入口予測NOx濃
度とから脱硝入口NOx濃度予測値を補正するもので、
アンモニア注入量制御系FF部(22)は、脱硝入口予測N
Ox濃度補正値、脱硝出口NOx濃度設定値および排ガ
ス流量・触媒入口温度からアンモニア流量設定値を求め
るもので、アンモニア注入量制御系FB部(23)は、脱硝
出口NOx濃度設定値、計測出口NOx濃度および触媒
入口温度からアンモニア注入量制御系FF部(22)で得ら
れたアンモニア流量設定値を補正するものである。補正
されたアンモニア流量設定値は、アンモニア流量制御部
(24)から脱硝プロセス(25)に送られる。脱硝プロセス(2
5)からは、排ガス流量および触媒入口温度がアンモニア
注入量制御系FF部(22)に送られ、触媒入口温度がアン
モニア注入量制御系FB部(23)に送られる。脱硝プロセ
ス(25)に設けられた脱硝出口(図ではHRSG出口と略す)
NOx分析計(9)で得られた計測出口NOx濃度は、ア
ンモニア注入量制御系FB部(23)に送られる。
【0017】図3は、アンモニア注入量制御系FF部(2
2)の詳細を示している。同図において、アンモニア濃度
設定値を得るためのモル比は、基本モル比と補正モル比
とを加えることにより求められる。基本モル比は、基本
モル比計算部(32)において、脱硝率計算部(31)で得られ
た目標脱硝率、触媒入口温度および予め脱硝装置の静特
性より求められているモル比関数発生器から求められ
る。脱硝率計算部(31)では、脱硝入口NOx濃度と脱硝
出口NOx濃度設定値とから目標脱硝率が計算される。
モル比関数発生器は、例えば、脱硝率と触媒入口温度に
対して予め必要なモル比を理論計算するか、または、試
運転時の静特性計測データをもとに3次元テーブルを設
定することにより実装される。補正モル比は、ゲイン関
数発生器(33)からの補正ゲインと目標脱硝率変化率計算
部(34)からの時間変化信号とから求められる。そして、
基本モル比から求められた静特性補償アンモニア注入量
と補正モル比から求められた動特性補償アンモニア注入
量とを用いて、アンモニア注入量が、アンモニア注入量
=静特性補償アンモニア注入量+動特性補償アンモニア
注入量により計算される。こうして得られた値は、アン
モニア濃度補正部(35)による補正を経て、アンモニア濃
度設定値としてアンモニア注入量制御系FF部(22)に戻
される。
【0018】補正モル比は、目標脱硝率が高くなりつ
つあるときには、基本モル比に対してアンモニアを増や
すように、逆に、目標脱硝率が低くなりつつあるときに
は、基本モル比に対してアンモニアを減らすように設定
され、さらに、触媒入口温度が低いほど、基本モル比
に対してアンモニアを増やすように、逆に、触媒入口温
度が高いほど、基本モル比に対してアンモニアを減らす
ように設定される。
【0019】の補正を行うために、時間変化信号が、
脱硝率をlog変換した-log(1−脱硝率)を近似微分し
て作成される。また、の補正を行うために、触媒入口
温度の関数である補正ゲインを発生するゲイン関数発生
器が使用される。
【0020】こうして、目標脱硝率を用いて求められる
時間変化信号とゲイン関数発生器との積で計算される補
正モル比を基本モル比に加えることにより、アンモニア
注入量を求めるためのアンモニアモル比が計算され、こ
のアンモニアモル比と脱硝入口NOx濃度信号と排ガス
流量の積により、アンモニア注入量が計算される。この
アンモニア注入量を用いることにより、後述するように
制御精度が向上し、脱硝出口NOx濃度を常に所要値以
下に保つことができる。
【0021】次いで、上記補正モル比を用いることによ
り、制御精度が向上する理由について説明する。
【0022】タービン起動・停止時における負荷変化時
には、排ガス条件(脱硝入口NOx濃度、触媒入口温
度、排ガス流量)は大きく変化する。このような場合、
基本モル比によるアンモニア注入だけでは、触媒反応の
遅れにより一時的に脱硝率が低下する。この現象を補正
するためには、装置の脱硝・吸着反応動特性の逆モデル
を解くことにより、脱硝入口のアンモニア注入量AB(0)
を AB(0)={NB(0)-NBref+λend・(dA*/dt)}/{1-exp(-Kad・λend}…(A) A*=-{KfN・ln(NBref/NB(0))}/{K1・ln(NBref/NB(0))+K1・KfN・λend}…(B) とすればよい。この式で、NB:気相NOx濃度、NBref=
NB(λend)、A*:アンモニア吸着量、λ=S/F(S:触媒表面
積のパラメータ,F:排ガス流量)、Kad=KfA・K3(P-A*)/{K
3(P-A*)+KfA}(KfA:アンモニアの境膜物質移動係数,P:複
合サイト量=触媒に吸着され得るアンモニアの最大値,K
3:速度定数),KfN:NOxの境膜物質移動係数であり、λ
end・(dA*/dt)は、動特性補償計算である。
【0023】ここで、K1・ln(NBref/NB(0))がK1・KfN・
λendより小さいとし、 A*≒-{ln(NBref/NB(0))}/(K1・λend)=-{F(T)・ln(NBref/NB(0))}/λend…(C ) と近似する。F(T)は関数発生器であり、Tは触媒入口温
度である。
【0024】さらに、λendおよびF(T)の時間変化も無
視すると、動特性補償計算が λend・(dA*/dt)={(λend・F(T))/λend}・{dln(NBref/NB(0))/dt} =F(T)・{dln(1−目標脱硝率)/dt}…(D) と求められる。この(D)式は、(1−目標脱硝率)の
時間変化をとらえて目標脱硝率が高くなりつつあるとき
には、基本モル比に対してアンモニアを増やすように補
正し、逆に、目標脱硝率が低くなりつつあるときには基
本モル比に対してアンモニアを減らすように補正するこ
と(すなわち上記の補正)を示し、また、触媒入口温
度が低いほど触媒反応の遅れは大きくなるので、補正ゲ
イン用関数発生器を設け(F(T)に対応)、触媒入口温度
が低いほど補正ゲインを大きく設定しアンモニアを多量
に注入すればよいこと(すなわち上記の補正)を示し
ている。
【0025】次いで、図4を参照して、アンモニア濃度
補正部(35)について、説明する。
【0026】上記のプロセスでは、脱硝入口NOx濃度
および脱硝出口NOx濃度は、それぞれNOx濃度分析
計(8)(9)によって計測でき、脱硝出口アンモニア濃度も
アンモニア濃度分析計(10)によって計測することができ
る。NOxとアンモニアとはモル比1:1で反応すると
考えられるので、次の計算により定常状態(負荷変動の
ないとき)における脱硝入口アンモニア濃度推定値を求
めることができる。
【0027】 脱硝入口アンモニア濃度推定値 =脱硝入口NOx濃度−脱硝出口NOx濃度+脱硝出口アンモニア濃度…(1) ここで、(脱硝入口NOx濃度−脱硝出口NOx濃度)
は、消費されたアンモニア量に相当しており、脱硝入口
アンモニア濃度推定値は、実際に脱硝触媒上に到達した
と考えられるアンモニア濃度を表している。
【0028】式(1)に示した脱硝入口アンモニア濃度
推定値を、さまざまな脱硝入口アンモニア濃度設定値お
よび計算値に対する静特性試験での計測によって求めれ
ば、 脱硝入口アンモニア濃度推定値=a×脱硝入口アンモニ
ア濃度設定値+b…(2)という関係式が得られる。
【0029】したがって、 脱硝入口アンモニア濃度補正値=(1/a)×(脱硝入
口アンモニア濃度設定値−b)…(3)という式から、
脱硝入口アンモニア濃度補正値を得ることができる。
【0030】よって、式(3)から得られる補正信号を
用いてアンモニア注入量を求めれば、適正なアンモニア
注入量を得ることができる。すなわち、図4に示すよう
に、アンモニア注入量FF制御部から出された脱硝入口
アンモニア濃度設定値Sは、脱硝入口アンモニア濃度補
正部において、演算:(S−b)/aを施され、この値
が脱硝入口アンモニア濃度補正値としてアンモニア制御
装置に送られ、アンモニア制御装置においてこの脱硝入
口アンモニア濃度補正値とガスタービン出口排ガス流量
とからアンモニア流量設定値(アンモニア注入量)が求
められる。こうして求められたアンモニア流量設定値
は、排ガス流量計測値に含まれる不確かさやアンモニア
の燃焼などの誤差が補正されており、適正な量のアンモ
ニアが脱硝装置に供給される。したがって、脱硝入口ア
ンモニア濃度設定値を変更し、このときの脱硝入口アン
モニア濃度推定値(ppm)を式(1)から求めて、両
者の相関式y=ax+bを求め、この式に基づいた補正
を施すことにより、脱硝入口アンモニア濃度の適正な補
正値が得られることになる。
【0031】図6は、実機運転でのタービン起動時にお
けるアンモニア注入量フィードフォワード制御結果を示
す。同図に示すように、本事例では、タービンは、9:52
頃に並列操作が実施され、その後発電機出力が増加し、
10:30頃に負荷が安定し定常運転に入っている。負荷上
昇中は、Primaryモード(10:02まで)、Lean-Leanモード
(10:02から10:17)、Premixモード(10:17以降)と燃焼モ
ードが切り替わっている。本制御では、並列操作後の低
温での触媒反応の遅れを補償するために、最大でモル比
約1.4の多量のアンモニアを注入し、脱硝出口NOx
濃度が設定値になるように制御しているのが分かる。起
動過程での脱硝出口NOx濃度の挙動は、Primaryモー
ドでは若干設定値に対して高い目の値に脱硝出口NOx
濃度が制御され、Lean-Leanモードにおいては、設定値
に対して1から2ppm程度下回るところで制御されてい
る。このことから、本フィードフォワード制御が妥当な
ものであることが分かる。
【0032】図5は、アンモニア注入量フィードバック
制御系(23)のブロック図を示している。同図において、
フィードバック制御器(41)として、PID制御器が使用
されており、PID制御器(41)への入力のゲインKが、
ゲイン関数発生器(42)からの偏差信号による可変ゲイン
とされている。ゲイン関数発生器(42)は、偏差信号を入
力し、予め設定された適正なゲインを出力し、偏差信号
とゲインとの積を計算し、PID制御器(41)への入力信
号としている。PID制御器(41)では、K:入力ゲイ
ン、P:比例ゲイン、Ti:積分時間、Td:微分時間とし
て、K{P+1/(Ti・S)+Td・S}の演算が行われる。基本的な
ゲイン設定は、(脱硝出口NOx濃度設定値−脱硝出口
NOx濃度計測値)が0以上の場合は、アンモニア注入
量を減らし、脱硝出口NOx濃度計測値を一致させる方
向に操作しなければならないが、その際には、ゲイン関
数発生器(42)の設定ゲインを小さくし、アンモニア注入
量を減らしすぎないようにする。また、(脱硝出口NO
x濃度設定値−脱硝出口NOx濃度計測値)が0以下の
場合は、アンモニア注入量を増やし、脱硝出口NOx濃
度計測値を一致させる方向に操作しなければならない
が、その際には、ゲイン関数発生器(42)の設定ゲインを
大きくし、できるだけ速く設定値に一致するようにアン
モニア注入量をできるだけ増やすようにする。
【0033】PID制御器(41)以降の構成は、従来のも
のと同じであり、FBアンモニア濃度設定値と排ガス流
量との積により、FBアンモニア流量設定値が求めら
れ、アンモニア流量制御部(24)においてこのFBアンモ
ニア流量設定値によってFFアンモニア流量設定値が補
正されて、アンモニア流量が求められ、脱硝プロセス(2
5)に送られる。
【0034】図7は、実機運転でのタービン起動時にお
いて、図6に示したFF制御にさらにFB制御を付加し
た結果を示している。これによると、FF制御だけで
は、Lean-Leanモードにおいて設定値に対して1から2p
pm程度常に下回っており、若干アンモニアを多量に注入
しているが、FF制御にFB制御をさらに付加すること
により、アンモニアの注入を少なくする補正が施され、
8:40頃には設定値とほぼ一致していることが分かる。
【0035】これにより、プロセス外乱およびモデル化
誤差があるために制御結果と目標値に若干の差が生じる
FF制御におけるその誤差分がFB制御で補償され、制
御性が向上することが分かる。
【0036】上記FB制御においては、PID制御器(4
1)への入力のゲインが、ゲイン関数発生器(42)からの偏
差信号による可変ゲインとされているが、これに代え
て、PID制御器への入力のゲインを触媒入口温度によ
る可変ゲインとしてもよい。図8に、この場合のアンモ
ニア注入量フィードバック制御系ブロック図を示す。
【0037】同図において、フィードバック制御器(51)
として、PID制御器が使用されており、PID制御器
(51)への入力のゲインKが、ゲイン関数発生器(52)にお
ける触媒入口温度による可変ゲインとされている。これ
により、PID制御器(51)では、第1実施形態のものと
同様に、K:入力ゲイン、P:比例ゲイン、Ti:積分時
間、Td:微分時間として、K{P+1/(Ti・S)+Td・S}の演算
が行われる。こうして、第2実施形態では、第1実施形
態では使用されていない触媒入口温度がFB制御用に使
用されている。第2実施形態のこれ以外の構成は、第1
実施形態のものと同じである。
【0038】表1に脱硝装置の特性の概要を示すが、こ
れに示すように、脱硝装置は触媒入口温度が低いほど触
媒反応の遅れは大きくなる。また、触媒入口温度が高く
なるほど触媒反応の遅れは小さくなるため、指標L/T
(Lは、脱硝出口NOx分析系のむだ時間、制御の難し
さを示す指標)は大きく、むだ時間の影響が相対的に大
きくなり、制御系の安定性は悪くなる。したがって、起
動・停止時には触媒入口温度は250℃から400℃ま
で急激に変化するが、触媒入口温度が低い場合には、フ
ィードバックゲインを高くすることにより、できるだけ
フィードバック補正によるアンモニアを多量に注入して
制御性を向上させ、触媒入口温度が高い場合には、制御
の安定性が悪いため、同ゲインを小さくし、制御系を安
定させるような可変ゲイン構造のPID制御とすること
が好ましい。
【0039】
【表1】 図9は、実機運転でのタービン起動時において、実機運
転でのタービン起動時におけるアンモニア注入量フィー
ドフォワード制御のシミュレーション結果(FF制御の
みの場合)を示し、図10は、このFF制御にさらにF
B制御を付加したシミュレーション結果を示している。
【0040】図9に示すように、本事例では、タービン
は、18分後に並列操作が実施され、その後発電機出力
が増加し、およそ60分後に負荷が安定し定常運転に入
っている。負荷上昇中は、27分後まではPrimaryモー
ド、27分後から44分後まではLean-Leanモード、そ
の後Premixモードと燃焼モードが切り替わっている。本
制御では、並列操作後の低温での触媒反応の遅れを補償
するために、多量のアンモニアを注入し、脱硝出口NO
x濃度が設定値になるように制御しているのが分かる。
起動過程での脱硝出口NOx濃度の挙動は、設定値に対
して1から2ppm程度下回るところで制御されており、
このことから、本フィードフォワード制御が妥当なもの
であることが分かる。
【0041】また、図10からは、FF制御だけでは、
Lean-Leanモードにおいて設定値に対して1から2ppm程
度常に下回っており、若干アンモニアを多量に注入して
いるのに対し、FF制御にFB制御をさらに付加するこ
とにより、アンモニアの注入を少なくする補正が施さ
れ、およそ40分後には設定値とほぼ一致していること
が分かる。
【0042】これにより、プロセス外乱およびモデル化
誤差があるために制御結果と目標値に若干の差が生じる
FF制御におけるその誤差分がFB制御で補償され、制
御性が向上することが分かる。
【0043】なお、フィードバック制御の上記2つの実
施形態は、それぞれ単独で行ってもよいが、両方を組み
合わせてもよく、要するに、脱硝出口NOx濃度の設定
値から計測値を引いた値が正の場合には、アンモニア注
入量を減らすが減らしすぎは防止し、また、脱硝出口N
Ox濃度の設定値から計測値を引いた値が負の場合に
は、アンモニア注入量をできるだけ増やすように補正し
たり、触媒入口温度が低いほどアンモニアを多量に注入
できるようにするものであれば、種々の変更が可能であ
る。また、図4に示したアンモニア濃度補正部(35)は、
必ずしも必要なものではなく、これをなくしても十分に
精度のよい制御が可能である。
【0044】
【発明の効果】請求項1の発明の脱硝装置のアンモニア
注入量制御方法によると、起動・停止の過程や負荷変化
によってガスタービンから排出されるNOx量が過渡的
に大きく変動する場合、例えば、起動時において排ガス
温度が250℃以下の低温の場合は、脱硝プロセスの時
定数(アンモニア注入ステップ応答遅れ時間)は大きい
ため、脱硝出口NOx濃度を常に所要値(数ppm)以下
に保つことができる。しかも、装置の脱硝・吸着反応動
特性の逆モデルを解くことにより同等の効果を得る従来
の方法に比べると、パラメータ調整として脱硝装置の脱
硝反応、吸着反応等の化学反応速度式の定数を調整する
必要がなくなるため、メンテナンスが困難になるという
問題もない。
【0045】また、請求項2から4までの発明の脱硝装
置のアンモニア注入量制御方法によると、PID制御器
のゲインを可変ゲインとするフィードバック制御によ
り、(脱硝出口NOx濃度設定値−脱硝出口NOx濃度
計測値)が0以上の場合は、ゲイン関数発生器の設定ゲ
インを小さくして、アンモニア注入量を減らしかつアン
モニア注入量を減らしすぎないようにし、また、(脱硝
出口NOx濃度設定値−脱硝出口NOx濃度計測値)が
0以下の場合は、ゲイン関数発生器の設定ゲインを大き
くして、設定値に速く一致するようにアンモニア注入量
をできるだけ増やすように補正したり、触媒入口温度が
低いほどアンモニアを多量に注入できるようにするなど
の操作を行うことにより、より制御性を向上させること
ができる。
【0046】また、請求項5の発明の脱硝装置のアンモ
ニア注入量制御方法によると、脱硝入口アンモニア濃度
設定値は、求められた関係式に基づいて補正され、これ
により、排ガス流量計測値が不確かさを含んでいたり、
注入されたアンモニアが脱硝触媒に到着するまでに微量
燃焼してしまうことによって不足するアンモニア注入量
を補正することが可能となり、より精度の良い制御を行
うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるアンモニア注入量制御方法が使
用される脱硝プロセスを示すフロー図である。
【図2】アンモニア注入量制御系のブロック図である。
【図3】アンモニア注入量制御系のフィードフォワード
部のブロック図である。
【図4】アンモニア注入量制御系のフィードバック部
(第1実施形態)のブロック図である。
【図5】この発明によるアンモニア注入量制御方法にお
ける脱硝入口アンモニア濃度補正部を示すブロック図で
ある。
【図6】アンモニア注入量のフィードフォワード制御の
結果を示すグラフである。
【図7】同第1実施形態のフィードフォワード制御を付
加した制御結果を示すグラフである。
【図8】アンモニア注入量制御系のフィードバック部
(第2実施形態)のブロック図である。
【図9】アンモニア注入量のフィードフォワード制御の
シミュレーション結果を示すグラフである。
【図10】同第2実施形態のフィードフォワード制御を
付加したシミュレーション結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 市来 正義 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 (72)発明者 松本 信夫 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 (72)発明者 久野 碩享 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 (72)発明者 塩崎 秀喜 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 Fターム(参考) 4D048 AA06 AB02 AC04 DA01 DA02 DA06 DA08 DA10 DA13

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目標脱硝率、触媒入口温度および脱硝装
    置静特性より求められる基本モル比と、脱硝装置動特性
    を考慮して求められる補正モル比との和に基づいてアン
    モニア注入量を計算してフィードフォワード制御する脱
    硝装置のアンモニア注入量制御方法において、 補正モル比が、時間変化信号とゲイン関数発生器との積
    で計算されており、時間変化信号が式-log(1−目標脱
    硝率)を用いて計算され、ゲイン関数発生器が、触媒入
    口温度の関数とされていることを特徴とする脱硝装置の
    アンモニア注入量制御方法。
  2. 【請求項2】 出口NOx濃度設定値と出口NOx濃度
    計測値との偏差信号に基づいて、PID制御器によって
    アンモニア注入量がフィードバック制御されており、P
    ID制御器の入力信号のゲインまたはPID制御器のゲ
    インが、偏差信号による可変ゲインとされている請求項
    1記載の脱硝装置のアンモニア注入量制御方法。
  3. 【請求項3】 出口NOx濃度設定値と出口NOx濃度
    計測値との偏差信号に基づいて、PID制御器によって
    アンモニア注入量がフィードバック制御されており、P
    ID制御器の入力信号のゲインまたはPID制御器のゲ
    インが、触媒入口温度による可変ゲインとされている請
    求項1記載の脱硝装置のアンモニア注入量制御方法。
  4. 【請求項4】 出口NOx濃度設定値と出口NOx濃度
    計測値との偏差信号に基づいて、PID制御器によって
    アンモニア注入量がフィードバック制御されており、P
    ID制御器の入力信号のゲインまたはPID制御器のゲ
    インが、偏差信号による分と触媒入口温度による分との
    和からなる可変ゲインとされている請求項1記載の脱硝
    装置のアンモニア注入量制御方法。
  5. 【請求項5】 フィードフォワード制御において、脱硝
    入口NOx濃度、脱硝出口NOx濃度および脱硝出口ア
    ンモニア濃度から求まる脱硝入口アンモニア濃度推定値
    と、脱硝入口アンモニア濃度設定値との関係式を求め、
    この関係式を用いて脱硝入口アンモニア濃度補正値を計
    算し、この補正値を用いてアンモニア注入量を求めるこ
    とを特徴とする請求項1から4までの1項記載の脱硝装
    置のアンモニア注入量制御方法。
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