JP2001120296A - 微生物による光学活性4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオール及びその誘導体の製法 - Google Patents

微生物による光学活性4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオール及びその誘導体の製法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光学活性4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオ
ール、光学活性1,2,4−ブタントリオール及び光学
活性3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの簡便かつ経
済的な製法。 【解決手段】 4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオール
またはその光学活性体にシュードモナス(Pseudomona
s)に属する微生物などを作用させ、上記の光学活性体
を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医薬品、農薬、生理
活性物質などの光学活性化合物の製造に、極めて重要な
C4光学活性化合物である光学活性4−ハロゲノ−1,
3−ブタンジオール[1]、その誘導体である光学活性
1,2,4−ブタントリオール[2]及び光学活性3−ヒ
ドロキシ−γ−ブチロラクトン[3]の生化学的製法に関
する。
【0002】
【従来の技術】1)光学活性4−ハロゲノ−1,3−ブ
タンジオールの製法としては、光学活性4−ハロゲノ−
3−ヒドロキシブタン酸エステルを水素化ホウ素ナトリ
ウムや水素化ホウ素カルシウムを用いて還元することに
より製造する方法(特開平2−174733;特開平9
−77759;特公平7−76209)が知られてい
る。 2)光学活性1,2,4−ブタントリオールの生化学的
製法としては、二階堂らによるラセミ体1,2,4−ブ
タントリオールにシュードモナス属細菌を作用させS体
を分解除去し、残存するもう一方のR体を回収する方法
(特開平6−209781)が知られている。しかし、
R体しか得ることができず、もう一方のS体を得ること
ができない。 3)光学活性3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの生
物化学的製法としては、微生物休止菌体を用いたラセミ
体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルからの
製法[特開平9−47296、Enzyme Microb. Techno
l., 24, 13-20 (1999)]が知られている。 4)特開平9−47296には、クロロヒドリン及びそ
の誘導体の生化学的分割法が記載されているが、4−ハ
ロゲノ−1,3−ブタンジオールを基質に用いる光学分
割法についての具体的記載がない。そして、光学活性4
−ハロゲノ−1,3−ブタンジオールから光学活性1,
2,4−ブタントリオールまたは光学活性3−ヒドロキ
シ−γ−ブチロラクトンへの生物化学的変換への記載も
ない。 5)光学活性4−クロロ−1,3−ブタンジオールを基
質として用い、光学活性1,2,4−ブタントリオール
或いは光学活性3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン
(光学活性[3])へ変換する方法は報告されていな
い。勿論、微生物等の生体触媒を用いた例の報告はされ
ていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】光学活性4−ハロゲノ
−1,3−ブタンジオール[1]、光学活性1,2,4
−ブタントリオール[2]及び光学活性3−ヒドロキシ−
γ−ブチロラクトン[3]は医薬、農薬などの有用な原料
であり、より簡便で、かつ経済的な製法が望まれてい
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、下記式
[1]
【化4】 で示される4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオールのラ
セミ体に微生物菌体、その培養物或いはその微生物の生
産する酵素を作用させることにより、その光学活性体
[1]と下記式[2]
【化5】 で示される1,2,4−ブタントリオールのR体または
下記式[3]
【化6】 で示される3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンのS体
を簡便、かつ実際的な方法で得られることを見出した。
そして、さらに、光学活性体[1]に微生物菌体、その
培養物或いはその微生物の生産する酵素を作用させるこ
とにより、光学活性体[2]、或いは光学活性体[3]
を簡便かつ収率よく、そして実際的に製造できることを
見出した。
【0005】即ち、本発明はラセミ体4−ハロゲノ−
1,3−ブタンジオール(ラセミ体[1])にシュード
モナスに属する特定の微生物菌体、その培養物或いはそ
の微生物の生産する酵素を作用させ、R体[1]を立体
選択的に脱ハロゲン化し、速度論的にラセミ体[1]を
光学分割することにより、反応液中に残存するS体
[1]及び生成するR体1,2,4−ブタントリオール
(R体[2])を得る方法、またラセミ体[1]にシュ
ードモナスに属する特定の微生物菌体、その培養物或い
はその微生物の生産する酵素を作用させ、S体[1]を
立体選択的に脱ハロゲン化し、反応液中に残存するR体
[1]と生成するS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラク
トン(S体[3])を得る方法からなる。更に詳しく
は、本発明はラセミ体[1]にシュードモナス (Pseudo
monas) sp.DS-K-436−1株、或いはその微生物培養液ま
たはその微生物酵素を作用させ、S体[1]及びR体
[2]を製造する方法、及びS体[1]またはR体
[2]を単離する方法、並びにラセミ体[1]にシュー
ドモナス (Pseudomonas) sp. DS-SI−5株或いはその微
生物培養液またはその微生物酵素を作用させ、R体
[1]及びS体[3]を製造する方法及びR体[1]ま
たはS体[3]を単離する方法に関する。
【0006】本発明は、また光学活性体[1]にシュー
ドモナス (Pseudomonas)に属する微生物或いはその微生
物培養液またはその微生物酵素を作用させ、ラセミ化す
ることなく光学活性体[2]或いは光学活性体[3]に
変換する方法にも関する。更に詳しくは、光学活性体
[1]にシュードモナス (Pseudomonas) sp. DS-K-436-
1株またはシュードモナス (Pseudomonas) sp. OS-K-29
株 (FERM BP-994)、或いはその微生物培養液またはその
微生物酵素を作用させ、生成物から光学活性体[2]を
製造する方法、並びに光学活性体[1]にシュードモナ
ス (Pseudomonas) sp. DS-SI-5株或いはその微生物培養
液またはその微生物酵素を作用させ、生成物から光学活
性体[3]を製造する方法に関する。
【0007】上記の通り、本発明方法を実施することに
より医薬、農薬などの分野で重要なC4キラルシントン
である光学活性4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオール
[1]、1,2,4−ブタントリオール[2]、そして3
−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン[3]を簡便かつ経
済的に、そして高光学純度で得ることができる。なお、
本発明方法で出発化合物として使用されるラセミ体4−
ハロゲノ−1,3−ブタンジオール(ラセミ体[1])
は、ラセミ体4−ハロゲノ−3−ヒドロキシブタン酸エ
ステル、例えばラセミ体4−クロロ−3−ヒドロキシブ
タン酸メチルエステルを水素化ホウ素ナトリウムや水素
化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いる還元法によ
り容易に得ることができる[Comprehensive Organic Tra
nsformation, pp. 548-552 (1989), by Richard C. Lar
ock, VCH Publishers, Inc.;J. Am. Chem. Soc., 158-
163 (1950); Tetrahedron Lett., 2709-2712 (1987); T
etrahedron Lett., 6069-6072 (1987)]。
【0008】本発明方法を、以下に具体的に説明する。
ラセミ体[1]を基質とし、これからS体[1]とR体
[2]、或いはR体[1]とS体[3]を得るには、立
体選択的な脱ハロゲン化活性を有するシュードモナスに
属する微生物菌体、即ちシュードモナス (Pseudomonas)
sp. DS-K-436-1株、シュードモナス (Pseudomonas) s
p. DS-SI-5株を培養し、これに基質であるラセミ体
[1]を添加し、反応させればよい。反応は該菌株の至
適pH、至適温度の範囲内で行うのがよい。なお、反応
の進行に伴い基質[1]より遊離するハロゲンイオンに
よりpHが徐々に低下する場合、適当なアルカリ源を添
加することにより反応液中のpHを至適範囲内にコント
ロールする必要がある。例えば、炭酸カルシウム溶液、
炭酸ナトリウム溶液、炭酸カリウム、炭酸アンモニウな
どの炭酸アルカリ塩溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水
酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などの水
酸化アルカリ水溶液、またはアンモニア水溶液など通
常、酸を中和させることができるものを用いてpHを至
適範囲内に制御するのがよい。具体的な反応条件は、至
適pHを6−8とし、15−50℃、好ましくは25−
35℃に保つのがよく、反応基質濃度は、0.1−15
%(w/w)で行うのがよい。反応を効率的に行うため
に、撹拌或いは振とうさせながら反応してもよい。
【0009】本微生物を培養するための培地組成として
は、通常この微生物が生育する培地ならば特に制限され
ない。例えば炭素源としてグルコース、ガラクトース、
フラクトース、シュークロース等の炭水化物、グリセロ
ール、ラセミ体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオー
ル、ラセミ体2,3−ジクロロ−1−プロパノール等の
アルコール類、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン
酸、フマル酸、グルコン酸とその塩類などの有機酸、また
はそれらの混合物を用いることができる。窒素源として
硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウ
ム等の無機窒素化合物及び尿素、ペプトン、カゼイン、酵
母エキス、肉エキス、コーンスチープリカー等の有機窒素
化合物とそれらの混合物を挙げることができる。その
他、無機塩としてリン酸塩、マグネシウム塩、カリウム
塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩など、更に必要に応
じてビタミン類を加えてもよい。また、高酵素活性を持
った菌体を得るための酵素誘導添加物として、上記培地
及びペプトン培地、ブイヨン培地などの栄養培地にラセ
ミ体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール、ラセミ
体2,3−ジクロロ−1−プロパノールを添加してもよ
い。その他、ラセミ体2,3−ジハロゲノ−1−プロパ
ノール、ラセミ体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオ
ールを単一炭素源とする完全合成培地で培養するのも有
効である。
【0010】上記微生物の培養は常法によればよく、例
えばpHを4〜10、好ましくは5〜9、培養温度は1
5〜50℃、好ましくは20〜37℃の範囲で好気的に
10〜96時間行なうことが好ましい。上記の方法以外
に、 1)上記培養方法により得た微生物の培養液、 2)この培養液を遠心分離等により得た菌体及びその菌
体処理物(菌体破砕物または菌体抽出液)、 3)それらを常法により固定化したものを、緩衝液等に
混合した混合液、または 4)上記菌体から抽出した酵素に、基質[1]を反応させ
ることによっても目的とする上記化合物を製造すること
ができる。 この場合の反応温度は15〜50℃が好ましく、反応p
Hは6〜8で行なうのが好ましい。反応液中の基質濃度
は0.1−15%(v/v)が好ましく、基質は初期に一括
していれてもよいし、分割添加してもよい。反応は通常
攪拌あるいは振とうしながら行ない、反応時間は基質濃
度、微生物菌体量などにより異なるが1〜120時間で
終了するのがよい。好ましくはガスクロマトグラフィー
等の分析によりラセミ体[1]の残存基質量が初期基質
濃度に比して50%で反応を終了させるか、或いは目的
とする光学活性体の光学純度を測定して終点を決定する
のがよい。
【0011】反応液中に残存する光学活性体[1]及び
光学活性体[2]或いは光学活性体[3]は、一般的な
方法で回収、分離、精製できる。例えば反応液から菌体
を遠心分離で除いた後、上清をエバポレーターにより濃
縮し、酢酸エチル、エタノール等の溶媒で抽出する。抽
出液を無水硫酸マグネシウムにより脱水した後、減圧下
で溶媒を除去し光学活性体[1]と光学活性体[2]或
いは光学活性体[3]の混合物のシロップを得ることが
できる。更に蒸留により精製してもよい。光学活性体
[1]と光学活性体[2]或いは光学活性体[3]を分
離するには、1)沸点の差を利用する減圧蒸留法、2)
シリカゲル、活性炭、イオン交換樹脂等の分離担体を用
いる各種クロマトグラフィー、3)溶媒に対する分配率
の差を利用する溶媒抽出法等により行うことができる。
【0012】光学活性体[1]にシュードモナスに属す
る微生物菌体、例えばシュードモナス(Pseudomonas) s
p. OS-K-29株(FERM BP-994)、シュードモナス(Pseud
omonas) sp. 436-1株、シュードモナス(Pseudomonas)
sp. DS-SI-5株を作用させることにより、或いはそれら
の微生物培養液またはその微生物酵素を作用させ、光学
活性体[2]または光学活性体[3]への変換は、上記
と同じ方法で行えばよい。この反応は穏和な反応である
ため光学純度を低下させることなく行うことができる重
要な反応である。本発明に使用される微生物のうち、シ
ュードモナス(Pseudomonas) sp. OS-K-29株は工業技術
院生命工学工業技術研究所にFERM BP-994として既に寄
託されており、他の2株はそれぞれDS-K-436-1株、DS-S
I-5株と命名し、生理学的、菌学的諸性質からシュード
モナス(Pseudomonas)属に属する細菌と同定された。こ
れら2菌株は、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄
託番号 FERM P-17595、 FERM P-17596として、それぞれ
寄託されている。
【0013】シュードモナス(Pseudomonas) sp. DS-K-
436-1株及びシュードモナス(Pseudomonas) sp.DS-SI-5
株の生理学的、菌学的諸性質は下記に示す通りである。
各培地における生育状態 1.肉汁寒天平板培養(30℃、3日間培養)菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 コロニー形状の遅速 普通 普通 コロニーの形状 円形 円形 コロニー表面の形状 平滑 平滑 コロニーの隆起状態 頭状 凸円状 コロニーの周縁 全縁 波状 コロニーの内容 均質 均質 コロニーの色調 白色 淡褐色 コロニーの透明度 無し 無し コロニーの光沢 有り 無し 可溶性色素の生成 無し 無し
【0014】 2.肉汁寒天斜面培養(30℃、3日間培養)菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 生育の良否 良好 良好 生育状態 拡布状 拡布状 コロニー表面の形状 平滑 平滑 コロニー断面の形状 扁平 扁平 コロニーの光沢 有り 有り コロニーの色調 白色 淡褐色 コロニーの透明度 無し 無し 3.肉汁液体培地 (30℃、3日間培養)菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 生育状態 良好 良好 ガス発生 無し 無し 培地の着色 無し 無し 性状 沈降 沈降
【0015】 4.肉汁寒天穿刺培地(30℃、3日間培養)菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 発育の場所 表層 表層 表面の発育状態 良好 良好 5.肉汁ゼラチン穿刺培養菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 − − 6.生理学テスト菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 硝酸塩の還元 − + V−Pテスト − − MRテスト − − インドールの生成 − − PPA − − 硫化水素の生産 − − リジン脱炭酸 + + クエン酸 ± + デンプンの分解 − − カタラーゼ + + ウレアーゼ + + オキシダーゼ + + 脱窒反応 − + 蛍光性色素の生成 キングA − − キングB − − シュードモナス(Pseudomonas F) − − シュードモナス(Pseudomonas P) − − リトマスミルク 凝固 − − 還元 − − PHBの蓄積 + +
【0016】 O-Fテスト菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 D-グルコース O O D-ガラクトース O O フラクトース O O ラクトース O − グリセロール O O マンニト−ル O − シュークロース O − 炭素源の利用菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 D-グルコース + + D-ガラクトース + − フラクトース + + トレハロース + − グリセロール + − マンニトール + − シュクロース + − p-ヒドロキシベンゾエート + +
【0017】 7.形態学的諸性質菌株名 Pseudomonas sp. DS-K-436-1 DS-SI-5 細胞の形状 桿菌 桿菌 細胞の大きさ 1.1-1.4μm 1.3-1.6μm 細胞の幅 0.4-0.6μm 0.4-0.6μm 細胞の多形性 無し 無し 鞭毛 極鞭毛、多 極鞭毛、単 運動性の有無 + + グラム染色性 − − 胞子の有無 − − 抗酸性 − − カプセル 無し 無し
【0018】以下実施例をもって、本発明を詳細に説明
するが本発明はこれらに限定されるものではない。な
お、実施例中の%は特に記載のない限り、%(w/v)を
意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】実施例1 ペプトン、酵母エキス、グリセロールをそれぞれ1.0
%を含む栄養培地(pH7.2)100mlを入れた50
0ml容のバッフル付き3角フラスコ(培養器)を121
℃、15分滅菌した。予め供試菌であるシュードモナス
(Pseudomonas) sp. DS-K-436−1株をペプトン、酵母
エキス、グリセロールをそれぞれ1.0%を含む寒天培
地(pH7.2)で30℃、24時間静置培養して種菌
を調製し、上記培地に一白金耳の菌体を無菌的に接種し
た。そして温度30℃、約24時間、振とう培養(125rp
m)を行なった。培養終了後、培養液を取り出し、遠心分
離にて集菌し、2mMの硫酸マグネシウムを含む20m
Mリン酸緩衝液(pH7.2)で3回洗浄し、休止菌体
を調製した。その菌体を1.0%の炭酸カルシウムを含
む同緩衝液100mlを入れたバッフル付きの500m
l容三角フラスコに懸濁し、その懸濁液に1mlのラセ
ミ体4−クロロ−1,3−ブタンジオールを加え、30
℃で攪拌しながら反応させた。その時の反応液中に残存
する4−クロロ−1,3−ブタンジオールをガスクロマ
トグラフィー(カラム担体:PEG20M,60−80
メッシュ)で分析した結果、その残存率は35%であっ
た。反応終了後、約1mlまで濃縮し、エタノールで抽
出した。無水硫酸マグネシウムにより脱水後、減圧化で
溶媒を除去し、368mgの4−クロロ−1,3−ブタ
ンジオールと590mgの1,2,4−ブタントリオー
ルを得た。本物質の同定及び定量は同ガスクロマトグラ
フィー及びGC-MSにより行なった。
【0020】このシロップ中の4−クロロ−1,3−ブ
タンジオールをアステック社製のキャピラリーカラムG
−TA(0.25mm X 30m)を用いたガスクロマトグ
ラフィーにより光学異性体の分析を行なった。一方、
1,2,4−ブタントリオールは無水トリフルオロ酢酸
によりトリフルオロ化した後、上記ガスクロマトグラフ
ィーにより光学異性体の分析を行った。その結果、回収
した4−クロロ−1,3−ブタンジオールは光学純度9
9.5%eeのS体であることが判明した。また、回収
した1,2,4−ブタントリオールは光学純度52%e
eのR体であることが判明した。なお、上記のガスクロ
マトグラフィーによる光学異性体の分析条件は以下の通
りである。4−クロロ−1,3−ブタンジオールのリテ
ンションタイムはR体,15.9分;S体,17.1
分。分析条件:カラム温度,120℃;検出器温度,2
00℃;キャリアーガス,窒素;流速,0.5ml/m
in;検出器,FID;スプリット比,200/1。ト
リフルオロ化した1,2,4−ブタントリオールのリテ
ンションタイムはR体,38.9分;S体,40.4
分。分析条件:カラム温度,100℃;検出器温度,2
00℃;キャリアーガス,窒素;流速,0.5ml/m
in;検出器,FID;スプリット比,200/1。
【0021】実施例2 使用する微生物を微生物シュードモナス(Pseudomona
s) sp. DS-SI-5株に代えた以外は実施例1と同様の方
法で反応(抽出溶媒:酢酸エチル)を行ない、399m
gの4−クロロ−1,3−ブタンジオールと579mg
の3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを得た。本物質
の同定及び定量は同ガスクロマトグラフィー及びGC-
MSにより行なった。このシロップ中の4−クロロ−
1,3−ブタンジオールをアステック社製のキャピラリ
ーカラムG−TA(0.25mm X 30m)を用いたガス
クロマトグラフィーにより光学異性体の分析を行なっ
た。一方、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンは無水
トリフルオロ酢酸によりトリフルオロ化した後、上記ガ
スクロマトグラフィーにより光学異性体の分析を行っ
た。その結果、回収した4−クロロ−1,3−ブタンジ
オールは光学純度99%eeのR体であることが判明し
た。また、回収した3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクト
ンは光学純度58%eeのS体であることが判明した。
【0022】実施例3、4、5、6、7、8 使用する微生物をシュードモナス(Pseudomonas) sp.
DS-K-436-1株からシュードモナス(Pseudomonas) sp.
OS-K-29株、或いはシュードモナス(Pseudomonas) s
p. DS-SI-5株に代え、実施例7と8では抽出溶媒をエタ
ノールから酢酸エチルに変更し、基質をR体4−クロロ
−1,3−ブタンジオール、或いはS体4−クロロ−
1,3−ブタンジオールに変えた以外は実施例1と同様
の方法で反応を行なった。また、得られた種々の化合物
を実施例1と同様の方法で同定と定量分析を行ない、光
学異性体の分析についても同様の方法で行った。なお、
実施例7及び8の3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン
の光学純度の分析はトリフルオロ化した後、実施例1と
同じ条件で行った。得られた結果を下表に示す。
【0023】 上記表中の略号は下記の化合物を意味する。 CBD: 4−クロロ−1,3−ブタンジオール BT: 1,2,4−ブタントリオール HL: 3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン
【0024】
【発明の効果】本発明によればシュードモナス(Pseudo
monas) sp. DS-K-436-1株やシュードモナス(Pseudomo
nas) sp. DS-SI-5株を用いることにより、ラセミ体
[1]よりS体[1]及びR体[2]、或いはR体
[1]及びS体[3]を安価で、かつ工業的に簡便な方
法によってを製造することができる。また、シュードモ
ナス属に属する微生物を用いることにより光学活性体
[1]より光学活性体[2]或いは光学活性体[3]を
光学純度を低下させることなく、工業的に簡便な方法に
よって変換できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井戸垣 秀聡 大阪府大阪市西区江戸堀1丁目10番8号 ダイソー株式会社内 (72)発明者 中川 篤 大阪府大阪市西区江戸堀1丁目10番8号 ダイソー株式会社内 Fターム(参考) 4B064 AC05 AE45 CA02 CB01 CB11 CC03 CD11 CD27 DA01 DA11

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式[1] 【化1】 で示される4−ハロゲノ−1,3−ブタンジオールのラセミ
    体にシュードモナス (Pseudomonas) sp. DS-K-436-1株
    若しくはシュードモナス (Pseudomonas) sp. DS-SI-5
    株、またはその微生物培養液若しくはその微生物酵素を
    作用させ、該ラセミ体を光学分割し、生成物から光学活
    性体[1]を単離する方法。
  2. 【請求項2】 ラセミ体[1]にシュードモナス (Pseu
    domonas) sp. DS-K-436-1株、またはその微生物培養液
    若しくはその微生物酵素を作用させ、S体[1]及び下
    記式[2] 【化2】 で示される1,2,4−ブタントリオールのR体を製造
    する方法。
  3. 【請求項3】 ラセミ体[1]にシュードモナス (Pseu
    domonas) sp. DS-K-436-1株、またはその微生物培養液
    若しくはその微生物酵素を作用させ、生成物からR体
    [2]を単離する方法。
  4. 【請求項4】 ラセミ体[1]にシュードモナス (Pseu
    domonas) sp. DS-SI−5株、またはその微生物培養液若
    しくはその微生物酵素を作用させ、R体[1]及び下記
    式[3] 【化3】 で示される3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンのS体
    を製造する方法。
  5. 【請求項5】 ラセミ体[1]にシュードモナス (Pseu
    domonas) sp. DS-SI−5株、またはその微生物培養液若
    しくはその微生物酵素を作用させ、生成物からS体
    [3]を単離する方法。
  6. 【請求項6】 光学活性体[1]にシュードモナス (Ps
    eudomonas)に属する微生物、またはその微生物培養液も
    しくはその微生物酵素を作用させ、光学活性体[2]ま
    たは光学活性体[3]を製造する方法。
  7. 【請求項7】 光学活性体[1]にシュードモナス (Ps
    eudomonas) sp. DS-K-436-1株若しくはシュードモナス
    (Pseudomonas) sp. OS-K-29株、またはその微生物培養
    液若しくはその微生物酵素を作用させ、光学活性体
    [2]を製造する方法。
  8. 【請求項8】 光学活性体[1]にシュードモナス (Ps
    eudomonas) sp. DS-SI−5株、またはその微生物培養液
    若しくはその微生物酵素を作用させ、光学活性体[3]
    を製造する方法。
  9. 【請求項9】 R体[1]にシュードモナス (Pseudomo
    nas) sp. DS-K-436-1株若しくはシュードモナス (Pseud
    omonas) sp. OS-K-29株、またはその微生物培養液若し
    くはその微生物酵素を作用させ、R体[2]を製造する
    請求項7の方法。
  10. 【請求項10】 S体[1]にシュードモナス (Pseudo
    monas) sp. DS-K-436-1株若しくはシュードモナス (Pse
    udomonas) sp. OS-K-29株、またはその微生物培養液若
    しくはその微生物酵素を作用させ、S体[2]を製造す
    る請求項7の方法。
  11. 【請求項11】 R体[1]にシュードモナス (Pseudo
    monas) sp. DS-SI−5株、またはその微生物培養液若し
    くはその微生物酵素を作用させ、R体[3]を製造する
    請求項8の方法。
  12. 【請求項12】 S体[1]にシュードモナス (Pseudo
    monas) sp. DS-SI−5株、またはその微生物培養液若し
    くはその微生物酵素を作用させ、S体[3]を製造する
    請求項8の方法。
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