JP2001106600A - 炭化硅素結晶の液相成長方法 - Google Patents

炭化硅素結晶の液相成長方法

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昭 田中
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一行 只友
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2000℃近い高温でしか成長できなかった
SiC結晶の液相成長を、1000℃程度以下の低温で
行い得る液相成長方法を提供すること。 【解決手段】 SiCの溶媒金属を希釈した溶液1、あ
るいはSiCの溶媒金属の一つであるSiを飽和量以下
に溶解させた溶液1を準備し、SiCの溶媒金属あるい
は溶解しているSiを、Siとルツボのカーボン2との
反応、あるいは雰囲気に供給した炭化水素ガス3との反
応、あるいはSiC固体原料5の溶解などによって溶液
1をSiC成分で飽和することにより、SiC結晶を成
長させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は炭化硅素(SiC)結晶の
液相成長方法に関するものであり、特にSiC結晶の低
温液相エピタキシャル成長に好適に利用できる方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】SiCの液相成長には通常Si、Fe,
Cr,Co,Niなどの金属溶媒が用いられるが、いず
れも高融点であり、かつSiCの溶解度が小さいので、
例えば最も融点の低いSiを溶媒とした場合において
も、少なくともSiの融点(1414℃)以上、実際に
は1500℃〜1800℃程度の高温で成長させる必要
があった。そのため、用いる材料の化学的安定性の面を
考慮したり、成長装置の耐熱性の問題につき工夫を要す
る等、成長系の構築にも特殊な材料と技術を必要として
いた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、高温
成長に伴う各種の問題を解消するために、SiCの液相
成長が少なくともSiの融点以下の温度領域で行い得る
ようなSiC結晶の成長方法を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の炭化珪素結晶の
液相成長方法は、Siと同等以上の融点を有する溶媒金
属に対して、これよりも融点の低い金属を一種以上混合
させて溶媒の融点を下げた状態のSi未飽和溶液を準備
し、これをSiCにて飽和させることを特徴とするもの
である。
【0005】
【作用】これまで用いられてきたSiCの溶媒金属は、
全てSiよりも高融点である。このような溶媒金属に他
の金属を混合することによって、Siの融点以下の溶媒
金属の液相状態を作り出すことができる。この希釈され
たSiCの溶媒金属を、SiCで飽和することにより、
SiC結晶が従前の場合に比べてより低温で成長できる
ことになる。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例として、SiC
の溶媒金属に硅素(Si)を用いる場合について説明す
る。図1はSiとその溶媒である低融点金属Aとの二元
状態図の模式図である。金属Aはそれ自身、炭化物を作
らないか、炭化物が存在してもそれよりもSiCの方が
熱力学的に安定であればよい。状態図から明らかなよう
に、金属Aは温度T1においてSiを濃度C0まで溶解
させればSi結晶の液相成長に用いることができる。こ
のような金属Aとして具体的には、アルミニウム(A
l)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、錫(Sn)、インジウ
ム(In)などがこれに相当するものとして例示できる。
なお、これら金属AへのSiCの溶解は無視できるほど
小さく、実質的にSiCを溶解できる成分は、Siと金
属Aとの混合溶液中のSi成分だけである。
【0007】いま、金属AにSiを濃度C1まで溶解し
た溶液を考える。この溶液はSi未飽和であるから、S
i結晶が成長されることはない。この未飽和の液状Si
をSiCで飽和する。飽和の方法は、この例の場合はS
iCの一成分であるSiがSiCの溶媒であるから、図
2に示すように、固相の炭素(C)と溶液中のSiとの反
応によって生成したSiCで飽和してもよいし、炭化水
素ガスと溶液中のSiとの反応によってもよい。もちろ
ん固相のSiCと溶液とを共存さてもよい。このように
してSiCを飽和したSi成分を含むSi未飽和溶液か
らは、Si結晶が成長することなく、結局SiC結晶の
みを成長させることができる。
【0008】例えば金属AにAlを用いた場合、100
0℃におけるSiの飽和濃度C0は約45原子%である
から、これ以下のSi濃度、例えば40原子%の溶液を
準備すれば、1000℃でSiC結晶を成長できる。も
ちろんこれ以下の温度であってもよく、また、金属Aと
してAl以外のSi結晶成長用低融点溶媒金属を用いて
も同様の原理が適用できることは明らかである。
【0009】図1のような単純な状態図の系だけでな
く、共晶系でも同様な溶液を作ることができる。例えば
Ag−Si系では約850℃にAg(90)Si(10)の
共晶点があるので、この温度程度までSi濃度が10原
子%の未飽和溶液が準備できる。さらに金属A単一でな
く、それに同様な低融点金属Bを加えるなど、複数種の
金属の混合溶液を用いてもよい。例えばAg−Ga系の
状態図から、Ag中のGa濃度の増加とともに液相の温
度が下がるので、Agの融点以下の数百℃の温度におい
ても数%のSi溶解量が確保できる。こうした混合溶液
の場合に金属ABの化合物が存在する系であれば、元素
Aと元素Bとの比率および温度を均一液相の組成範囲に
選べば良い。
【0010】以上はSiCの溶媒としてSiを用いる場
合で説明したが、Siの代わりに他のSiCの溶媒金属
を用いてもよい。この場合に、混合させる低融点金属
(上述の金属AやB)と化合物を作らない温度と組成範
囲を選ぶようにすることが好ましい。溶媒金属は固相S
iC原料との共存、あるいは固相Siの溶解によるSi
成分の供給と気相からの炭素成分の供給、あるいは両成
分の気相からの供給などのよってSiCで飽和させるこ
とができる。要は、SiCの溶媒金属を他の金属との混
合によって融点を下げ、余分な化合物の生成しない温度
と組成範囲でその溶媒金属をSiCで飽和できれば、本
発明ではどのような組み合わせでも許容される。
【0011】以上説明した通り、SiC結晶の成長の際
に用いられていた溶媒金属に対して、Siよりも融点の
低い金属を一種以上混合させて溶媒の融点を下げた状態
のSi未飽和溶液当該溶液を用いることによって、Si
C結晶の成長温度の低温化を図ることができる。これに
よって成長系の構築に通常の材料や技術が適用できるよ
うになり、従来のSiC結晶液相成長技術のもつ高温成
長をするがゆえの各種問題点を解決することができる。
【0012】
【実施例】[実施例1]図3は通常の液相エピタキシャ
ル成長装置内において、図面上側を低温に、下側を高温
にした横型スライド式温度差法による成長系の模式図で
ある。溶液1としてAlを0.8g、Siを0.55g
準備し、高純度グラファイト製のルツボ2に仕込み、パ
イロリティックカーボン製ボート6にセットした。ボー
ト上には温度差を保持するためのカーボンコート石英板
8を挟んで、同じくパイロリティックカーボン製のスラ
イダー7を載せ、中に1cm角のSiC基板4をセット
した。最初はスライダーを左に置き、雰囲気としてアル
ゴンガスを流しながら下側温度が1000℃、上側が9
50℃となるように昇温した。2時間保持してからスラ
イダーを操作して、基板4と溶液1とを図に示す位置に
移動させた。この状態で10時間保持した後、再びスラ
イド操作によって溶液を切り離した。
【0013】取り出した試料を切断し、断面を観察した
ところ、約10μmのSiC成長層が見られた。この成
長量は、用いた量のSiを飽和するSiCの量に比べて
頗る大きいものであった。グラファイトルツボ2の底部
に反応して侵食された跡が見られたことから、成長期間
中に底部の高温部での反応と低温の基板への析出が定常
的に進行したものと考えられる。
【0014】ここでは温度差法を用いて厚い成長をおこ
なったが、極く薄い成長層であれば徐冷法でも良い。ま
たルツボも一つに限らず、複数の溶液を準備できるの
で、不純物添加によって電気的な特性の異なる成長層を
積層することもできることは通常の液相エピタキシャル
成長と同様である。
【0015】炭素(C)の供給もグラファイトルツボ2に
よる方法のみに限られない。図4に示すように、図面下
側に基板4を置き、低温として、気相の炭化水素ガス3を
薄い厚さの溶液層1の上に導いて反応させても良い。あ
るいは図5に示すようにSiC固相原料5をパイロリティ
ックカーボン製孔付き隔壁11を介して置けば、前述の
実験と同様の効果を達成することができる。さらにSi
Cを上方へ輸送する場合に、溶液に密度の大きなAgな
どを加えれば、温度差だけでなく、密度差によるSiC
の輸送が加わり、効率のよい成長を行うことができる。
【0016】[実施例2]バルク状の厚いSiC成長結
晶を得るために、図6に示す成長系を作製した。内径5
cmのパイロリティックカーボン製ルツボ2に溶液1と
して300gのAgと20gのSi、およびSiC固相
原料10gを仕込んだ。原料が浮かんで成長を阻害しな
いように、孔付き隔壁11を設けた。SiC結晶基板4
は放熱用のカーボン製ロッド9の先端にSiで融着し、
ステンレスシャフトに接続して縦型電気炉の外に延長し
た。最初はシャフトを引き上げておき、アルゴンガスを
流しながら1000℃まで昇温して2時間保持し、シャ
フトを下げて基板4と溶液1とを接触させ、図6のような
配置にした。この状態で20時間保持した後、シャフト
を引き上げ、冷却した。
【0017】取り出した試料を硝酸と弗酸の混液で処理
し、カーボンロッドとの接着に用いたSiを除去して剥
がし、観察に供した。その結果、約150μm厚のSi
C結晶の成長層が確認できた。本実施例での成長系の配
置においては、基板の冷却によって溶液中央部では下降
流が、側壁に沿っては上昇流があるものと考えられる。
こうした対流を原料輸送に積極的に利用して、例えば図
7に示すように基板4を高速回転させて強制対流を発生
させるなど、結晶成長に都合の良い流れを作れば、さら
に効率の良い成長ができ、バルク結晶の成長の効果を生
じる。
【0018】[実施例3]Si成分を連続的に供給する
方法として、図8に示す成長系を作製した。溶液1として
Ag300gをグラファイト製ルツボ2に仕込み、Si
固体原料10をパイロリティックカーボン製の隔壁とル
ツボ2との間に配置した。前記隔壁11の下部には小さ
なすき間を設け、成長用基板4下の成長溶液へのSi成
分の流入を律速して完全に飽和しないようにした。基板
4およびカーボンロッド9については実施例2と同様であ
る。まずシャフトを引き上げておき、アルゴンガスを流
しながら昇温し、溶液1が溶融した時に素早くシャフト
を下げて溶液1と基板4を接触させ、10rpmで回転さ
せた。温度を1000℃まで昇温して、そのまま10時
間保持した。取り出した試料は実施例2と同様に処理
し、観察に供した。その結果、100μm厚のSiC成
長層が見られた。
【0019】[実施例4]カーボンに含まれる不純物の
混入を避けるために、図9に示す成長系を作製した。パ
イロリティックカーボン製のルツボ2は、基板4を冷却す
るために下部低温部まで延長し、その中にカーボン製の
ピストン15を設けた。溶液1にAg50gとAl15
0gを仕込み、溶解して厚さ3mmの溶液層となるよう
にした。周辺に実施例3と同様にSi固体原料10を置
き、隔壁11でSiの供給を律速した。反応管13は石
英製で、上部に雰囲気であるアルゴンガス導入管12お
よび炭化水素ガス導入管3を設け、電気炉14で100
0℃まで昇温した。炭化水素としてメタンを使用し、流
量100ccmで流しながら、ピストン15を0.2m
m/時間で下げた。溶液1の主成分がAgの場合、カー
ボンと馴染まないので液漏れを起こすことはなかった。
20時間の定常運転の後、基板上に約4mm厚のSiC
成長結晶が得られた。
【0020】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のSiC成長
用溶液を用いれば、特殊な装置や環境を必要としていた
SiC結晶の液相成長に、通常の液相成長技術が適用で
きるようになる。これによって新しい品質や特性をもつ
SiC結晶基板やデバイスの作製技術を拓くことがで
き、電気・電子工業の発展に優れた効果を奏するもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のSiC結晶成長用Si未飽和溶液を説
明するためのSiと金属Aとの二元系状態図の模式図で
ある。
【図2】本発明の溶液を用いることによってSiC成分
が生成することを説明するための模式図である。
【図3】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図4】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図5】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図6】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図7】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図8】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【図9】本発明の溶液を用いてSiC結晶を成長する実
施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 Si未飽和溶液 2 ルツボ 3 炭化水素ガス 4 SiC結晶基板 5 SiC固相原料 6 スライドボート 7 スライダー 8 断熱用石英板 9 カーボンロッド 10 Si固体原料 11 孔付き隔壁 12 雰囲気アルゴンガス導入管 13 石英反応管 14 電気炉 15 ピストン

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siと同等以上の融点を有する溶媒金属
    に対して、これよりも融点の低い金属を一種以上混合さ
    せて溶媒の融点を下げた状態のSi未飽和溶液を準備
    し、これをSiCにて飽和させることを特徴とする炭化
    珪素結晶の液相成長方法。
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