JP2000271699A - 表面被覆成形型およびその製造方法 - Google Patents
表面被覆成形型およびその製造方法Info
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Abstract
面被覆成形型とその製造方法を提供する。 【解決手段】 JIS鋼種SKH、SKDあるいはこれらの相当
材である鋼からなる母材表面に、(Al1-x、Crx)N被膜
(ただしxは原子比であり、1.0>x≧0.02)を形成す
る。母材には窒化処理を施しておくことが好ましい。上
記被覆と窒化処理の相乗効果により耐熱亀裂性と耐酸化
性を兼ね備える表面被覆成形型が得られる。
Description
電製品分野などに用いられる鉄系部品、アルミニウム合
金部品またはマグネシウム合金部品などの成形に使用す
る表面被覆成形型とその製造方法に関するものである。
特に、500℃以上の温間または熱間で鍛造する際、ある
いは鋳造する際に、耐酸化性と耐熱亀裂性に優れた長寿
命の成形型とその製造方法に関するものである。
いはアルミニウム合金部品あるいはマグネシウム合金
を、温間・熱間で鍛造する際、あるいは鋳造する際に使
用される金型あるいは鋳型(以下「成形型」と総称す
る)は、使用中に成形型表面が受ける高温(一般的に50
0℃以上)のために、成形型表面の酸化による損傷、繰
り返し熱応力による疲労亀裂の発生などが生じ、ヒート
チェックと呼ばれる「肌荒れ」現象が生じる。このよう
な肌荒れは加工数の増大に伴って進行し、寸法精度の維
持が困難になった時点で、成形型の寿命に達するとされ
る。
るために、現在、窒化処理(タフトライド処理、ガス窒
化処理、イオン窒化処理、浸硫窒化処理など)が幅広く
用いられている。窒化処理の特徴は、JIS鋼種SKH、SKD
あるいはこれらの相当材である鋼からなる母材表面に窒
素を主成分とする元素を拡散浸透させ、表面硬度の増
大、表面圧縮応力の導入などを図り、ヒートチェックに
対する成形型表面の耐久性を向上させている。しかし、
窒化処理では成形型表面の耐酸化性を向上させることは
できず、成形型表面の酸化による損傷、即ち「成形型表
面での酸化鉄の発生〜酸化スケールの脱落〜更なる酸化
の進行」という現象を抑制することはできていない。
ているのは、化学蒸着法(CVD法)あるいは物理蒸着法
(PVD法)による炭化チタン、窒化チタンあるいは炭窒
化チタンなどのセラミックス被膜の形成である。またTR
D法あるいはTD法と呼ばれる熱反応・析出法による炭化
バナジウムなどの被膜形成も用いられている。しかしな
がらこれらの炭窒化チタン、炭化バナジウムなどは、そ
れ自身の耐酸化性が500〜600℃付近で失われ、成形型表
面の酸化抑制には顕著な効果は得られていなかった。
などの表面硬化処理と、蒸着法などの被膜形成処理とを
組み合わせる技術として次のものが提案されている。
の表面に窒化物層を形成し、セラミック層を被覆したセ
ラミックコーティング金属を提案しており、被膜形成方
法としてCVD法を具体的に開示している。
処理とイオンプレーティングを同一真空槽内で連続して
行い、金属の窒化物、炭化物、炭窒化物、炭窒酸化物、
酸化物等の膜を一層以上形成する方法を開示している。
で高周波電源を用いてプラズマを発生した窒素イオンを
被処理物に衝突させて硬化層を作り、そのまま直ちにセ
ラミックスコーティングする連続処理方法を開示してい
る。
アンモニアガスと水素ガスの雰囲気下でグロー放電を行
い、イオン窒化する。次にこのイオン窒化層の上にPVD
法により硬質被膜を形成する方法を開示している。
TiAlN層のハードコーティング被膜を形成させて、高い
溶損性ならびに耐ヒートチェック性を付与されたダイカ
スト金型を提案している。
単に開示しただけか、あるいは材料系を開示したに止ま
っており、耐熱亀裂性と耐酸化性を同時に満足させる材
料系と、その材料系が満足すべき機械的特性の特徴を与
えるものではなかった。また、TiAlN被膜については、
確かに優れた耐酸化性を有しているが、熱衝撃や機械的
衝撃などの衝撃に対して脆いという欠点を有しており、
特性的に不十分であった。
的は、耐熱亀裂性と耐酸化性を同時に向上できる表面被
覆成形型とその製造方法を提供することにある。
耐酸化性と耐衝撃性に優れた被膜を母材表面に形成する
ことで上記の目的を達成する。特に、窒化処理による母
材表面層の硬化処理に前記被膜を組み合わせたことによ
って二つの表面改質技術の効果が相乗効果をもたらし、
長寿命の成形型を実現することができる。また、窒化処
理による母材表面層の硬化処理を施さない場合であって
も、被膜自身の優れた耐酸化性により優れた耐酸化性と
耐衝撃性を持った成形型を得られる。以下、本発明の構
成を説明する。
いはこれらの相当材である鋼とする。
は、タフトライド処理、ガス窒化処理、イオン窒化処理
など、多数の窒化処理法が適用できる。但し、多くの手
法では窒化処理後の母材表面に化合物層あるいは脆化層
と呼ばれる脆い化合物「γ’−Fe4Nあるいはε−Fe2−3
N」が発生するため、このような化合物層を研磨して除
去することが好ましい。なお、イオン窒化処理を用いれ
ば、上述の化合物層を形成させることなく、窒化処理が
実現できる。このような窒化処理は施した方が好ましい
が、本発明における必須条件ではない。
上、500μm以下であることが好ましい。このときに、窒
化処理時の処理温度や、窒化層の深さを最適化して、窒
化層中に母材の表面から深さ10μmにわたっての残留応
力の平均値が0.2GPa以上、1.5GPa以下の圧縮応力の圧縮
の残留応力を付与させることが好適である。
たセラミックスとする。このときに、従来から用いられ
ているセラミックス被膜である窒化クロムにアルミニウ
ム元素を添加することで耐酸化性が大きく向上する。ク
ロムの添加量としては、被膜の組成を(Al1-x、Crx)N
で表したときに1.0>x≧0.02(xは原子比)であるこ
とが必要である。
て(Al1-x、Crx)N被膜の組成が連続的あるいは段階的
にアルミニウムリッチあるいはクロムリッチヘと傾斜さ
せることで、更に好ましい場合がある。また、窒化アル
ミと窒化クロムの薄層を、交互に5回以上繰り返して積
層した被膜(AlN/CrN被膜)とすることで、上述の(Al
1-x、Crx)N被膜と同等あるいはそれ以上の寿命が得ら
れる。また、それぞれ組成の異なる2種類以上の(A
l1-x、Crx)N被膜(但しxは原子比であり、1.0>x≧
0.02)の薄層が交互に4回以上繰り返して積層された被
膜であってもよい。このときに被膜形成時の条件を最適
化して、被膜全体の残留応力の平均値が0.5GPa以上、8G
Pa以下の圧縮応力を付与させると、なお好ましい。ま
た、(Al1-x、Crx)N被膜あるいはAlN/CrN被膜中に0.1
〜10原子%のSiを添加するとより好ましい。
ールなどの欠陥が少なく、できるだけ平滑であることが
好ましい。
あることが好ましい。
着性を向上させるために、セラミックス被膜の最下層が
窒化チタンあるいは窒化クロムであれば、なお好まし
い。更に被膜の最外層には、衝撃に強い窒化クロムを形
成すると、なお好ましい。
としては、フィルタードアーク蒸発源を用いることによ
って母材表面への粗大溶融粒子の到達を抑制したアーク
イオンプレーティング法か、あるいは金属アーク蒸発源
の金属陰極周辺から窒素ガスを導入することによって陰
極表面からの粗大溶融粒子の飛散を抑制したアークイオ
ンプレーティング法などの、改良されたアークイオンプ
レーティング法によって実施されることが最適である。
る。窒化処理は、耐熱亀裂性向上という優れた効果をも
たらすとされているが、この処理法を単独で用いたとし
ても、成形型の寿命は鋼の持つ低い耐酸化性によってす
ぐに限界に達してしまう。窒化処理層には、適切な圧縮
残留応力が存在していることが好ましいである。この残
留応力とは、X線回折法(sin2ψ法)で測定されるもの
であり、母材の表面から深さ10μmにわたっての残留応
力の平均値が0.2GPa以上、1.5GPa以下の圧縮応力である
ことで特徴づけられる。圧縮残留応力が0.2GPaより小さ
い、あるいは引張りの残留応力になっている場合は、熱
亀裂の発生抑制効果が得られず、好ましくない。また圧
縮残留応力が1.5GPaを越えると、逆に亀裂発生を促進し
てしまうため、好ましくない。
クス被膜にアルミニウム元素を添加するのは、耐酸化性
を更に向上させることができるためである。同時に被膜
中には圧縮残留応力が存在していると好ましい。被膜の
残留応力は上に述べたX線回折法で測定される。具体的
には被膜全体の残留応力の平均値が0.5GPa以上、8GPa以
下の圧縮応力であることが必須である。圧縮残留応力が
0.5GPaより小さい、あるいは引張りの残留応力になって
いる場合は、熱亀裂の発生抑制効果が得られず、好まし
くない。また、圧縮残留応力が8GPaを越えると、逆に亀
裂発生を促進してしまうため、好ましくない。
効果として「耐熱亀裂性と耐酸化性に特に優れた成形
型」が実現される。
処理層深さは、50μm以上、500μm以下であることが望
ましい。50μm未満の処理では顕著な効果を得ることが
難しい。また、500μmを超えるの処理には、著しく長時
間の窒化処理が必要となり、費用対効果の面で経済的で
はない。
ニウム元素を添加することで被膜の耐酸化性を向上させ
ることができる理由は、被膜中のアルミニウムが、成形
型の使用時の高温大気雰囲気で酸化し、被膜表面に強固
な酸化保護膜を形成するためである。この様な緻密な酸
化被膜は、被膜全体の酸化の進行を大幅に抑制する効果
を持っており、成形型表面の酸化摩耗を大きく抑制す
る。
で表現したときに1.0>x≧0.02(ただしxは原子比)
であることが必要である。組成xの上限は、物質の特性
から1.0であるが、x=1.0(アルミ添加量がゼロ)では
耐酸化性向上の効果が得られず、好ましくない。組成x
が0.02を下回ると、窒化アルミの結晶構造が六方晶に変
化するために被膜が脆くなり、好ましくない。
ついては、被膜厚み方向に均一に添加する方法以外に次
のいずれかの構成を採ることも好ましい。
N被膜とし、膜表面側をアルミリッチな(Al1-x、Crx)N
被膜とすることで、膜表面側の耐酸化性を特に向上させ
ておく。
N被膜とし、膜表面側をクロムリッチな(Al1-x、Crx)N
被膜とすることで、膜表面側の耐衝撃性を特に向上させ
ておく。
の窒化クロム膜を、交互に4回以上繰り返し積層した膜
構造とすることで、一層が摩耗して消失しても次の層が
顔を出すことで、耐熱亀裂性と耐酸化性効果を持続させ
る。
1-x、Crx)N被膜(ただしxは原子比であり、1.0>x≧
0.02)の薄層が、交互に4回以上繰り返して積層された
膜構造とする。これにより、一層が摩耗して消失しても
次の層が顔を出すことで、耐熱亀裂性と耐酸化性効果を
持続させる。
/CrN被膜に、0.1〜10原子%のSiを添加すると、被膜の
耐酸化性が更に向上するため、好ましい。Siの添加量が
0.1原子%を下回ると、耐酸化性向上の効果が少なく、
好ましくない。また、Siの添加量が10原子%を越える
と、被膜の機械的強度が低下するために好ましくない。
μm以下であることがより好ましい。0.5μmを下回る
と、被膜処理の効果が少なくなるため、好ましくない。
また、40μmを越えると、使用時の衝撃によって膜が自
己破壊するため、好ましくない。
化チタン膜あるいは窒化クロム膜を介在させることで、
母材表面の窒化処理層と、上記セラミックス被膜の密着
性を最大限に発揮させることができる。また、被膜の最
表面をCrNとすることで、被膜の耐衝撃性を向上させる
ことができ、より好ましい。
としては、フィルタードアーク蒸発源を用いることによ
って母材表面への粗大溶融粒子の到達を抑制したアーク
イオンプレーティング法か、あるいは金属アーク蒸発源
の金属陰極周辺から窒素ガスを導入することによって陰
極表面からの粗大溶融粒子の飛散を抑制したアークイオ
ンプレーティング法によって実施される。従来から広く
利用されている一般的なアークイオンプレーティング法
(改良前のアークイオンプレーティング法)において
は、金属蒸発源となる陰極(カソード)表面から、アー
ク放電によって金属が蒸発あるいは昇華する際に、粗大
粒子と呼ばれる直径数μm以上の粒が発生し、これが膜
中に取り込まれて、被膜の欠陥(ピンホール、突起な
ど)を形成することが知られていた(文献1:Effect o
f duct bias on transport of vacuumarc plasmas thro
ugh curved magnetic filters:Journal of Applied Ph
ysics, 75(10) 1994 P4900)。これらの欠陥が温熱間鍛
造金型などの高温で使用される成形型表面の被膜中に存
在すると、欠陥が起点となって、被膜の耐酸化性を著し
く低下させることが本発明者らによって確認されたので
ある。
カソードとも呼ばれる)を用いる方法(改良アーク法A
と称する)は、カソード正面に直線形状あるいは曲線形
状のダクトが設置され、その軸線に沿った磁力線が形成
されていることが特徴である。曲線形状のダクトについ
ては文献1に詳しく記載されている。このような蒸発源
においては、蒸発してイオンになった金属蒸気が、磁力
線に沿って母材表面へ向けて飛行するのに対して、粗大
粒子はダクト内面に捕獲されて蒸発源から出ることが抑
制され、結果的に母材表面に形成される膜中への粗大粒
子の混入が抑制されるという手法である。
ら窒素ガスを導入することによって陰極表面からの粗大
溶融粒子め飛散を抑制した蒸発源を用いる方法(改良ア
ーク法Bと称する)においては、金属陰極表面が高窒素
濃度に曝されるために窒化反応を起こして窒化チタンに
変化し、融点が金属チタンの1670℃から窒化チタンの29
50℃へと大幅に上昇する。このような融点の上昇は、金
属陰極表面に起こるアークスポットの大きさを小さくす
ることが知られでおり、これによって粗大粒子の発生が
抑制され(文献2:Cathodic arc evaporation in thin
film technology:Journal of Vacuum Science and Tec
hnology A, 10(4), Jul/Aug 1992 P1740参照)、母材表
面に形成される被膜中への粗大粗子の混入を抑制できる
という手法である。詳しくは特開平10−68071号公報に
記載されている。
ンプレーティング法」においても、粗大粒子の混入が少
ない被膜が得られる。粗大粒子は、被膜中に混入した場
合に、比較的簡単に脱落するという傾向があり、脱落し
たあとには粗大粒子のサイズに応じた「穴」(ピンホー
ル)が形成される。この穴は、しばしば被膜表面から母
材表面へ貫通しており、この穴を通して母材表面が高温
大気に触れ、酸化を生じる。被膜自身に優れだ耐酸化性
があったとしても、このような穴は極めて有害であり、
できるだけ少ないことが必要である。従って、高温雰囲
気中で使用される本発明品の成形型においては、「改良
されたアークイオンプレーティング法」によって平滑な
被膜が形成されていることが好ましいのである。
標としては、JIS規格による被膜表面の最大粗さRmaxが2
μm以下、あるいは平均粗さRaが0.3μm以下であること
こが好ましい。また、被膜表面を走査型電子顕微鏡など
で観察したときに、100平方μm〈10μm四方の面積〉当
りの突起とピンホールの合計数が5個以下であることも
重要である。
2(比較例)、図3(比較例)に示す。いずれの写真も
倍率5000倍の膜表面電子顕微鏡写真であり、視野は23μ
m×18μm、即ち414平方μmである。
ーティング法(特開平10−68071号公報で開示された改
良アークB法)で作製された被膜であり、視野内に3個の
ピンホール(黒く見えている部分)と4個の突起(白く
見えている部分)、合計7個の欠陥が見える。突起の最
大サイズは約1.5μmである。
ティング法で作製された被膜であり、視野内に25個のピ
ンホールと35個の突起が見られ、合計60個の欠陥が見え
る。突起の最大サイズは約1.5μm、ピンホールの最大サ
イズは約3μmである。
(#3000)で研磨して突起を除去したあとの写真であ
り、突起部が全てピンホールになっており、視野内に50
個のピンホール(欠陥)が見える。ピンホールの最大サ
イズは約3μmである。
おける欠陥数(=ピンホール数+突起数)の密度は、そ
れぞれ図1=7個/414平方μm、図2=60個/414平方μ
m、図3=50個/414平方μmである。したがって、100平
方μm(10μm四方)当りの個数は、それぞれ1.7個、14.
5個、12個となる。
ついては、改良されたアークイオンプレーティング法A
及びBを用いることで達成可能である。改良前のアーク
イオンプレーティング法では、被膜表面の最大粗さRmax
が2μm以下、あるいは平均粗さRaが0.3μm以下である
ことや、100平方μm(10μm四方の面積)当りの欠陥
(突起、ピンホール)の合計数が5個以下であることを
満足することができない。欠陥が多い膜や表面が粗い膜
は、高温大気に曝されたときに母材の酸化が激しく起こ
るため、好ましくない。以上述べたような膜、あるいは
膜と窒化処理の組み合わせによって鉄系部品の温間また
は熱間鍛造加工用、あるいはアルミニウム合金又はマグ
ネシウム合金の鋳造用の金型寿命を大幅に延ばすことが
できる。これは、これらの用途においては金型表面が高
温大気に触れ、酸化による損耗が著しいためである。も
ちろん、本発明成形型は各種冷間加工用金型に適用して
も好適であり、金型寿命向上に有効であることは言うま
でもない。
する。 <試験例1>JIS鋼種SKD61からなるφ40×h30mmの円筒形
状のブロックを作り、焼き入れ、焼き戻しによる熱処理
を施して、ロックウェルCスケール硬度52とした。この
ブロックの端面(φ40の面)を粗さ0.5Z以下に研磨し
た。
た本発明に基づく表面処理を施した(実施例1〜35)。
また比較のために、表3に示した比較例も作製した(比
較例1〜11)。
件は各々次の通りである。 [手法1]タフトライド処理:温度550℃、時間30分〜20
時間、塩浴中で保持し、表面に深さ55〜520μmの硬化層
を得た。この表面に生成した深さ10μmの化合物層を研
磨除去し、表面粗さを0.5Zとした。なおタフトライド処
理の温度を変えて、硬化層表面の残留応力を変化させた
ものも用意した。
間15分〜2時間、窒素ガス60流量%、水素ガス40流量
%、処理槽内圧力2Torr、母材に印加した直流電圧−100
V、同高周波電力(13.56MHz)1000Wの条件で、表面に40
μm〜150μmの硬化層を得た。この表面には有害な化合
物層は生成しなかったが、プラズマ処理によって荒らさ
れた表面を軽くラッピングし、粗さ0.5Zの表面を得た。
なおイオン窒化処理の温度を変えて、硬化層表面の圧縮
残留応力を変化させたものも用意した。
されたアークイオンプレーティング法(改良アーク法
A:但しプラズマダクトは直線形状)を用いて、目標と
する組成xで決まるアルミ−クロム合金(Cr組成は100
×x原子%)で作製された蒸発源を用いて、アーク電流
100A、母材温度450℃、窒素雰囲気中、真空槽内圧力30m
Torr、母材に印加した直流電圧−200V、処理時間30分の
条件で、厚み2.5μmの(Al1-x、Crx)N被膜を形成し
た。同様にして処理時間を変えて、厚みの異なる(Al
1-x、Crx)N被膜を形成した。また蒸発源の金属組成を
変えて、組成の異なる(Al1-x、Crx)N被膜を形成し
た。さらに母材温度を変化させて、被膜中の残留応力を
変化させたものも用意した。
(不可避不純物を0.5重量%以下含む)あるいは純クロ
ム(不可避不純物を0.5重量%以下含む)のそれぞれで
作製された蒸発源を各1個ずつ用いて、これら二つの蒸
発源を真空槽内壁に対向するように配置した。二つの蒸
発源の中心に、回転テーブルを配置し、そこに母材を取
り付けた。改良されたアークイオンプレーティング法
(改良アーク法B)を用いて、それぞれの蒸発源のアー
ク電流100A、母材温度450℃、窒素雰囲気中、真空槽内
圧力30mTorr、母材に印加した直流電圧−200V、テーブ
ルの回転数1rpm、処理時間20分の条件で、厚み5.6μmの
AlN/CrN被膜を形成した。積層の繰り返し回数は5回で
あった。その他、積層の繰り返し回数が2、10、100、50
0、2000回のものも作製した。また、母材温度を変化さ
せて、被膜中の残留応力を変化させたものも用意した。
rx′)N被膜形成:手法4に準ずる方法で、組成の異なる
アルミ−クロム合金を一つずつ作製し、真空槽内壁に対
向させて設置した。テーブルの回転数は0.3rpmとした。
その他の条件は手法4と同様であり、厚み5.6μmの(Al
1-x、Crx)N/(Al1-x′、Crx′)N被膜を形成した。積
層の繰り返し回数は6回であった。テーブル回転数を変
え、積層の繰り返し回数が異なるものも作製した。また
母材温度を変化させて、被膜中の残留応力を変化させた
ものも用意した。
成:手法3に準ずる方法で、目標とする組成x、x′で
決まるアルミ−クロム合金(Cr組成は100×x原子%、1
00×x′原子%)で作製された蒸発源を、距離300mmの
間隔を開けて2基平行に配置し、アーク電流100A、母材
温度450℃、窒素雰囲気中、真空槽内圧力300mTorr、母
材に印加した直流電圧−200V、処理時間60分の条件で、
母材を二つの蒸発源の間をゆっくりと平行移動させるこ
とで、厚み3.2μmの(Al1-x、Crx)N−(Al1-x′、Cr
x′)N傾斜組成被膜を形成した。また母材温度を変化さ
せて、被膜中の残留応力を変化させたものも用意した。
さらに蒸発源の金属組成を変えて、組成の異なる(Al
1-x、Crx)N−(Al1-x′、Crx′)N傾斜組成被膜を形成
した。
法で、チタンで作製された蒸発源を用いて、手法3と同
じ条件で厚み2μmのTiN被膜を形成した。また下地にTiN
被膜を形成する際も、同様の条件を使用し、膜厚のみを
時間によって制御し、所定の膜厚のTiNを得た。
法で、クロムで作製された蒸発源を用いて、手法3と同
じ条件で厚み2μmのCrN被膜を形成した。また下地及び
被膜最外層にCrN被膜を形成する際も、同様の条件を使
用し、膜厚のみを時間によって制御し、所定の膜厚のCr
Nを得た。
成:手法3に準ずる方法で、所定の添加量のSiを含んだ
アルミ−クロム合金(Cr組成は100×x原子%)で作製
された蒸発源を用いて、Si添加(Al1-x、Crx)N被膜を
形成した。
法4に準ずる方法で、所定の添加量のSiを含んだアルミ
で作製された蒸発源を用いて、Si添加AlN/CrN被膜を形
成した。また母材表面近傍および被膜の残留応力の測定
は、sin2ψ法によるX線回折法を用いて実施した。
て、表面処理面全面に、600℃大気中加熱(60秒)、水
中急冷(60秒)の繰り返し熱負荷を作用させた。この熱
サイクルを100回単位で作用させた前後の処理面の状態
や損傷状態を、光学顕微鏡にて観察した。結果も表1に
示す。
亀裂の発生が大幅に抑制されていることが確認された。
特に、積層構造、傾斜組成構造の被膜を持つものの耐熱
亀裂性が優れていることが判る。
9,12,18,19,21,22,26,34,35と比較例1,3,6,
8を、温間鍛造用の金型パンチ(JIS鋼種SKH51、ロック
ウェルCスケール硬度53)に処理し、実際に温間鍛造時
の金型寿命評価を行った。鍛造時には、金型表面は700
℃まで加熱されていた。寿命の判定は、被加工材の寸法
精度が規定の範囲を越えた時点とした。
例でも金型の寿命が大きく向上していることが確認され
た。
4,9,12,18,19,21,22,26,34,35と比較例1,3,
6,8を、アルミニウム合金鋳造用の鋳抜きピン(JIS鋼
種SKD61、ロックウェルCスケール硬度51)に処理し、実
際にアルミニウム合金の鋳造時の鋳抜きピンの寿命評価
を行った。鋳造方法は重力鋳造とし、鋳抜きピン表面は
670℃まで加熱されていた。寿命の判定は、被加工材の
寸法精度が規定の範囲を越えた時点とした。
例でも鋳抜きピンの寿命が大きく向上していることが確
認された。
耐熱亀裂性と耐酸化性を同時に向上できる表面被覆成形
型を得ることができる。従って、従来技術では達成困難
であった高温雰囲気下で用いられる金型や鋳型の寿命向
上が達成でき、自動車、機械、家電製品分野などに用い
られる鉄系部品、アルミニウム合金部品またはマグネシ
ウム合金部品などの成形に有効利用できる。
良アーク法B)で作製された被膜の表面走査型電子顕微
鏡写真である。
された被膜の表面走査型電子顕微鏡写真である。
された被膜の表面を、ダイヤモンド研磨材(#3000)で
研磨して突起を除去したあとの表面走査型電子顕微鏡写
真である。
Claims (16)
- 【請求項1】 JIS鋼種SKH、SKDあるいはこれらの相当
材である鋼からなる母材表面に、(Al1-x、Crx)N被膜
(ただしxは原子比であり、1.0>x≧0.02)を形成し
たことを特徴とする表面被覆成形型。 - 【請求項2】 (Al1-x、Crx)N被膜は、母材側から被
膜表面へ向けて連続的あるいは段階的にAlまたはCrの組
成が増大した傾斜組成であることを特徴とする請求項1
記載の表面被覆成形型。 - 【請求項3】 (Al1-x、Crx)N被膜は、組成の異なる
複数の薄膜が交互に4回以上繰り返して積層された構造
であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆成形
型。 - 【請求項4】 (Al1-x、Crx)N被膜の中に、0.1〜10原
子%のSiが添加されていることを特徴とする請求項1記
載の表面被覆成形型。 - 【請求項5】 JIS鋼種SKH、SKDあるいはこれらの相当
材である鋼からなる母材表面に、化学式がAlNの窒化ア
ルミの薄層と化学式がCrNの窒化クロムの薄層とが交互
に5回以上繰り返して積層された被膜を形成したことを
特徴とする表面被覆成形型。 - 【請求項6】 AlN/CrN積層被膜中に、0.1〜10原子%
のSiが添加されていることを特徴とする請求項5記載の
表面被覆成形型。 - 【請求項7】 母材と接するTiN被膜を具えることを特
徴とする請求項1または5記載の表面被覆成形型。 - 【請求項8】 母材と接するCrN被膜を具えることを特
徴とする請求項1または5記載の表面被覆成形型。 - 【請求項9】 被膜の最外層がCrNであることを特徴と
する請求項1または5記載の表面被覆成形型。 - 【請求項10】 被膜全体の残留応力の平均値が0.5GPa
以上、8GPa以下の圧縮応力であることを特徴とする請求
項1または5記載の表面被覆成形型。 - 【請求項11】 被膜の厚みが0.5μm以上、40μm以下
であることを特徴とする請求項1または5記載の表面被
覆成形型。 - 【請求項12】 母材表面に窒素を拡散浸透させた窒化
処理層を持ち、金属母材の表面から深さ10μmにわたっ
ての残留応力の平均値が0.2GPa以上の圧縮応力であるこ
とを特徴とする請求項1または5記載の表面被覆成形
型。 - 【請求項13】 窒化処理層の厚みが50μm以上、500μ
m以下であることを特徴とする請求項12記載の表面被
覆成形型。 - 【請求項14】 用途が、鉄系部品の温間または熱間鍛
造加工用、あるいはアルミニウム合金またはマグネシウ
ム合金の鋳造用であることを特徴とする請求項1または
5記載の表面被覆成形型。 - 【請求項15】 母材表面に被膜を形成する表面被覆成
形型の製造方法において、 前記母材はJIS鋼種SKH、SKDあるいはこれらの相当材で
ある鋼からなり、 前記被膜は(Al1-x、Crx)N被膜(ただしxは原子比で
あり、1.0>x≧0.02)または化学式がAlNの窒化アルミ
の薄層と化学式がCrNの窒化クロムの薄層との積層被膜
で、 前記被膜の形成方法が、フィルタードアーク蒸発源を用
いることによって母材表面への粗大溶融粒子の到達を抑
制したアークイオンプレーティング法であることを特徴
とする表面被覆成形型の製造方法。 - 【請求項16】 母材表面に被膜を形成する表面被覆成
形型の製造方法において、 前記母材はJIS鋼種SKH、SKDあるいはこれらの相当材で
ある鋼からなり、 前記被膜は(Al1-x、Crx)N被膜(ただしxは原子比で
あり、1.0>x≧0.02)または化学式がAlNの窒化アルミ
の薄層と化学式がCrNの窒化クロムの薄層との積層被膜
で、 前記被膜の形成方法が、金属アーク蒸発源の金属陰極周
辺から窒素ガスを導入することによって陰極表面からの
粗大溶融粒子の飛散を抑制したアークイオンプレーティ
ング法であることを特徴とする表面被覆成形型の製造方
法。
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