JP2014065972A - 耐摩耗性と耐酸化性に優れた硬質皮膜および該硬質皮膜形成用ターゲット - Google Patents

耐摩耗性と耐酸化性に優れた硬質皮膜および該硬質皮膜形成用ターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】従来の皮膜よりも耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜を提供する。
【解決手段】組成の異なる層Aと層Bが積層されてなる硬質皮膜であって、上記層Aが、規定の(Al,Cr1−a)(C1−e)からなる硬質皮膜;規定の(Al,Si,B,Cr1−a−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜;および規定の(Al,Si,B,Ti1−a−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜;よりなる群から選択される一種であり、上記層Bが、規定の(M,Si,B)(C1−e)からなる(但し、MはW及び/又はMo)硬質皮膜であって、上記層Aと上記層Bが下記式(1)の関係を満たすよう積層されてなることを特徴とする耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜。
0.5(nm)≦(層Bの厚み)≦(層Aの厚み) …(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗性と耐酸化性に優れた硬質皮膜および該硬質皮膜形成用ターゲット、並びに高温潤滑性と耐摩耗性に優れた硬質皮膜および該硬質皮膜形成用ターゲットに関するものであり、殊に、チップ、ドリル、エンドミル等の切削工具の耐摩耗性や耐酸化性、高温潤滑性を向上させることのできる硬質皮膜と、該硬質皮膜の製造過程で蒸発源として使用されるターゲットに関するものである。
尚、本発明の硬質皮膜は、超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼等を基材とする、エンドミル、ドリル、チップまたはホブ等の歯切り工具や、打ち抜きパンチ、スリッターカッター、押し出しダイス、鍛造ダイス等を含む塑性加工用治具等に適用できるが、以下では、代表的な用途例として切削工具に用いる場合を主体にして説明する。
従来より、超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼を基材とする切削工具の耐摩耗性を向上させることを目的に、TiNやTiCN、TiAlN等の硬質皮膜をコーティングすることが、高速切削用や焼き入れ鋼等の高硬度材切削用の切削工具に適用されつつある。
更に近年、(TiAl)Nや(CrAl)Nのような2元系だけでなく、第3元素を添加して特性を改善する試みがなされており、例えば、特許文献1〜3には、Vを添加した(CrAlV)N、(TiAlV)N、(CrAlV)(CN)、(TiAlV)(CN)等の皮膜が、S50C等の低硬度材の切削で優れた特性を示すことが開示されている。しかしこれらの皮膜は、焼き入れSKD材等の高硬度材に対して十分な切削性能を示すとは言い難く、加えて切削速度の更なる高速度化等にも対応不十分であることから、硬度がより高く耐摩耗性の一層優れたものが求められている。
特許文献4には、Ti、Al及び第3成分の窒化物または炭窒化物からなる層の多層皮膜であって、該第3成分としてZr、Hf、Cr、W、Y、Si、Ce、Nbの1種以上を含むものが例示されており、前記第3成分の添加量を、Ti、Alに対して0.1〜50原子%の間とすることが示されている。また特許文献5には、(CrAlSi)(NBCO)膜を構成するCr原子の一部を、4,5,6a族およびYのうちの1種以上に置換(30原子%以下の範囲内で置換)した皮膜が示されている。しかし該4,5,6a族およびYよりなる群の元素として挙げられているのはTi、Zr、Hfのみであり、これらの元素を添加したとしても、確実に耐摩耗性を高め得るとは言い難い。
特許文献6には、(Ti,W)(C,Nで表した場合、それぞれのモル比率が、0.6≦a≦0.94、0.06≦b≦0.4、a+b=1、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9、x+y=1、Z(金属元素の合計に対する非金属元素の合計のモル比率)が、0.8≦z≦1である皮膜が開示されている。そしてその例示として、(Ti,W)C、(Ti,W,Nb)C、(Ti,W,Ta)C、(Ti,W,Ta,Nb)C、(Ti,W,Al)C、(Ti,W,Si)C、(Ti,W)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Ta)(C,N)、(Ti,W,Ta,Nb)(C,N)、(Ti,W,Al)(C,N)、(Ti,W,Si)(C,N)、(Ti,W)N、(Ti,W,Nb)N、(Ti,W,Ta)N、(Ti,W,Ta,Nb)N、(Ti,W,Al)N、(Ti,W,Si)Nが示されている。更には(Ti,W,M)(C,Nで表され、MはAl、Si、Zr、Hf、V、Nb、Ta、CrおよびMoから選ばれた少なくとも1種の元素を示し、それぞれのモル比率が、0.6≦a≦0.94、0.06≦b≦0.4、0<c≦0.1、a+b+c=1、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9、x+y=1、z(金属元素Ti、W、Mの合計に対する非金属元素C,Nの合計のモル比率)が、0.8≦z≦1であると好ましいとされている。特に超硬合金基材または被膜にAl、Si、Zr、Hf、V、Nb、Ta、CrおよびMoから選ばれた少なくとも1種の元素が含まれている場合が例示されている。ただし、このW含有皮膜はTiNあるいはTiCNと超硬合金の密着性を改善する中間層として使用されているのみである。
特許文献7には、(Ti1−x,W)(C1−y,N)(但し、原子比で、X:0.005〜0.05、Y:0.15〜0.60)が開示されている。Wの作用に関しては、「(Ti,W)CN層は、縦長成長結晶組織によってもたらされる高強度と高靭性を保持したままで、W成分の作用ですぐれた耐熱塑性変形性を具備する」と記載されている。
特開平3−120354号公報 特開平10−18024号公報 特開平10−237628号公報 特開平9−323204号公報 特開2004−130514号公報 特開2004−100004号公報 特開2003−211305号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の皮膜よりも耐摩耗性と耐酸化性に優れた硬質皮膜、および高温潤滑性と耐摩耗性に優れた硬質皮膜、並びに、該硬質皮膜の製造にて本発明の硬質皮膜を効率よく得ることのできるターゲットを提供することにある。
本発明に係る耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜は、
(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.05≦b≦0.35、
0.5≦e≦1
(a,b,eはそれぞれAl,M,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有するものである[以下、第(I-1)の硬質皮膜ということがある]。
また、(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.07≦b≦0.35、
0.5≦e≦1
(a,b,eはそれぞれAl,M,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有する耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜も規定する[以下、第(I-1´)の硬質皮膜ということがある]。
本発明は、
(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.05≦b≦0.35、
0.01≦c+d≦0.2、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有する耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜も規定する[以下、第(I-2)の硬質皮膜ということがある]。
また、(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.07≦b≦0.35、
0.01≦c+d≦0.2、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有する耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜も規定する[以下、第(I-2´)の硬質皮膜ということがある]。
更に本発明は、
(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.6、
0.05≦b≦0.3、
0.01≦c+d≦0.15、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有する耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜も規定するものである[以下、第(I-3)の硬質皮膜ということがある]。
また、(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.6、
0.07≦b≦0.3、
0.01≦c+d≦0.15、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
であるところに特徴を有する耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜も規定する[以下、第(I-3´)の硬質皮膜ということがある]。
本発明は、上記硬質皮膜の形成に用いるターゲットも規定するものであり、該ターゲットは、相対密度が92%以上であるところに特徴を有している。
上記ターゲットとして、前記第(I-1)の硬質皮膜の成膜には、成分組成が、
(Al,M,Cr1−w−x)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.05≦x≦0.35
(w,xはそれぞれAl,Mの原子比を示す。)
を満たすものを用いるのがよい。
また前記第(I-1´)の硬質皮膜の成膜には、成分組成が、
(Al,M,Cr1−w−x)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.07≦x≦0.35
(w,xはそれぞれAl,Mの原子比を示す。)
を満たすものを用いるのがよい。
前記第(I-2)の硬質皮膜の成膜に用いるターゲットとして、成分組成が、
(Al,M,Si,B,Cr1−w−x−y−z)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.05≦x≦0.35、
0.01≦y+z≦0.2
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す。)
を満たすものを用いるのがよい。
また前記第(I-2´)の硬質皮膜の成膜には、成分組成が、
(Al,M,Si,B,Cr1−w−x−y−z)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.07≦x≦0.35、
0.01≦y+z≦0.2
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す。)
を満たすものを用いるのがよい。
更に前記第(I-3)の硬質皮膜の成膜に用いるターゲットとして、成分組成が、
(Al,M,Si,B,Ti1−w−x−y−z)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.6、
0.05≦x≦0.3、
0.01≦y+z≦0.15
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す。)
を満たすものを用いることが好ましい。
また前記第(I-3´)の硬質皮膜の成膜には、成分組成が、
(Al,M,Si,B,Ti1−w−x−y−z)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.6、
0.07≦x≦0.3、
0.01≦y+z≦0.15
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す。)
を満たすものを用いることが好ましい。
また、本発明に係る高温潤滑性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0<a≦0.7、
0<b≦0.7、
0.25≦c≦0.75、
0≦d+e≦0.2、
0.03≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)であるところに特徴を有するものである[以下、第(II-1)の硬質皮膜ということがある]。
本発明に係る高温潤滑性および耐摩耗性に優れた別の硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.05≦a≦0.3、
0.05≦b≦0.4、
0.3≦c≦0.75、
0≦d+e≦0.2、
0.05≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)であるところに特徴を有するものである[以下、第(II-2)の硬質皮膜ということがある]。
本発明に係る高温潤滑性および耐摩耗性に優れた更に別の硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.05≦a≦0.3、
0.05≦b≦0.4、
0.3≦c≦0.75、
0.01≦d+e≦0.2、
0.05≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)であるところに特徴を有するものである[以下、第(II-3)の硬質皮膜ということがある]。
本発明は、前記硬質皮膜の成膜に用いるターゲットも規定するものであり、該前記第(II-1)の硬質皮膜の成膜に用いるターゲットは、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0<v≦0.7、
0<w≦0.7、
0.25≦x≦0.75、
0≦y+z≦0.2、
0.03≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、かつ相対密度が91%以上であるところに特徴を有している。
また前記第(II-2)の硬質皮膜の成膜に用いるターゲットは、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0.05≦v≦0.3、
0.05≦w≦0.4、
0.3≦x≦0.75、
0≦y+z≦0.2、
0.05≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、かつ相対密度が91%以上であるところに特徴を有している。
更に前記第(II-3)の硬質皮膜の成膜に用いるターゲットは、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0.05≦v≦0.3、
0.05≦w≦0.4、
0.3≦x≦0.75、
0.01≦y+z≦0.2、
0.05≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、かつ相対密度が91%以上であるところに特徴を有している。
更に本発明では、耐摩耗性および耐酸化性に優れた別の硬質皮膜として、組成の異なる層Aと層Bが積層されてなる硬質皮膜であって、
上記層Aが、
(Al,Cr1−a)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
(Al,Si,B,Cr1−a−c−d)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0<c+d≦0.2、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;および
(Al,Si,B,Ti1−a−c−d)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0<c+d≦0.15、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
(a,c,d,eはそれぞれAl,Si,B,Nの原子比を示す。)
よりなる群から選択される一種であり、
上記層Bが、
(M,Si,B)(C1−e)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.8≦b≦1、
0≦c+d≦0.2 を満たす硬質皮膜
(b,c,d,eはそれぞれM,Si,B,Nの原子比を示す。)
であって、上記層Aと上記層Bが下記式(1)の関係を満たすよう積層されてなるところに特徴を有するものも規定する[以下、第(III)の硬質皮膜ということがある]。
0.5(nm)≦(層Bの厚み)≦(層Aの厚み) …(1)
本発明は、上記硬質皮膜の形成に用いるターゲットも規定するものであり、該ターゲットは、相対密度が92%以上であるところに特徴を有している。
上記ターゲットとして、前記層Aの形成には、成分組成が、
(Al,Cr1−w)からなり、
0.25≦w≦0.7 を満たすもの;
(Al,Si,B,Cr1−w−y−z)からなり、
0.25≦w≦0.7、
0<y+z≦0.2 を満たすもの;および
(Al,Si,B,Ti1−w−y−z)からなり、
0.25≦w≦0.7、
0<y+z≦0.15 を満たすもの;
(w,y,zはそれぞれAl,Si,Bの原子比を示す。)
よりなる群から選択される一種を用いるのがよい。
また前記層Bの形成には、成分組成が、
(M,Si,B)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.8≦x≦1
0≦y+z≦0.2
(x,y,zはそれぞれM,Si,Bの原子比を示す。)
を満たすものを用いるのがよい。
本発明は以上の様に構成されており、従来の硬質皮膜よりも、耐酸化性と耐摩耗性に優れた硬質皮膜や高温潤滑性と耐摩耗性に優れた硬質皮膜を得ることができた。こうした硬質皮膜の実現によって、高速切削や焼き入れ鋼など高硬度鋼の切削で優れた切削性能を発揮し、かつ長寿命である切削工具を供給できることとなった。
元素M(W及び/又はMo)の添加量と酸化皮膜の厚さとの関係を示したグラフである。 元素M(W及び/又はMo)の添加量と硬度の関係を示したグラフである。 実施例1〜3で使用した成膜装置の上面模式図である。 実施例4〜8で使用した成膜装置の上面模式図である。
本発明者は、前述した様な状況の下で、より優れた耐摩耗性を発揮する硬質皮膜の実現を目指して鋭意研究を進めた。その結果、
(I)従来のTiAl(CN)膜、該TiAl(CN)膜のTiをCrで代替したCrAl(CN)膜、またはAl(CN)膜に、W及び/又はMo(以下、元素Mということがある)、更にはSi及び/又はBを添加すれば、耐酸化性を高めうると共に膜の硬度が向上し、結果として耐摩耗性が飛躍的に向上すること、
(II)従来のTiCrAl(CN)膜に、元素M(更にはSi及び/又はB)を添加すれば、高温潤滑性と耐摩耗性に優れた硬質皮膜が得られること、
(III)(元素M)(CN)膜や(元素M,Si及び/又はB)(CN)膜を、AlCr(CN)膜、AlSiBCr(CN)膜、およびAlSiBTi(CN)膜よりなる群から選択される硬質皮膜と積層させれば、より優れた耐酸化性と耐摩耗性を確保できることを突き止め、更に、これらAl、元素M、Cr及び/又はTi、Si及び/又はB、並びにC,Nの定量的作用効果について追求を重ねた結果、上記本発明に想到した。
以下、上記(I)〜(III)の硬質皮膜(以下、単に「皮膜」ということがある)の組成、および該皮膜の製造方法、並びに該皮膜の製造に用いるターゲットおよびその製造方法について各々詳述する。
まず、上記(I)の硬質皮膜として、
第(I-1)の硬質皮膜は、
(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.05≦b≦0.35、
0.5≦e≦1
(a,b,eはそれぞれAl,M,Nの原子比を示す。)、
を満たすことを特徴とするものである。
また上記bの下限が好ましい値(0.07)である第(I-1´)の硬質皮膜は、
(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.07≦b≦0.35、
0.5≦e≦1
(a,b,eはそれぞれAl,M,Nの原子比を示す。)
を満たすことを特徴とするものである。
第(I-2)の硬質皮膜は、
(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.05≦b≦0.35、
0.01≦c+d≦0.2、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)、
を満たすことを特徴とするものである。
また上記bの下限が好ましい値(0.07)である第(I-2´)の硬質皮膜は、
(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.65、
0.07≦b≦0.35、
0.01≦c+d≦0.2、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)、
を満たすことを特徴とするものである。
更に第(I-3)の硬質皮膜は、
(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.6、
0.05≦b≦0.3、
0.01≦c+d≦0.15、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
を満たすことを特徴とするものである。
また上記bの下限が好ましい値(0.07)である第(I-3´)の硬質皮膜は、
(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.25≦a≦0.6、
0.07≦b≦0.3、
0.01≦c+d≦0.15、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,eはそれぞれAl,M,Si,B,Nの原子比を示す。)
を満たすことを特徴とするものであるが、この様に皮膜中のAl,M,Si,B,Cr、Ti、CおよびNの組成を規定した理由について、以下詳細に説明する。
従来の皮膜であるTiAlN皮膜は岩塩構造型の結晶であり、岩塩構造型のTiNのTiのサイトにAlが置換して入った岩塩構造型の複合窒化物とすることで硬度を更に高めることができるが、TiAlNにおけるAlの比率が高くなると、軟質なZnS型AlNが析出するため硬度の低下が生じる。しかしTiAlN中のTiをCrに置換することで、高硬度を確保できることが知られている。本発明者は、この様なCrAlN皮膜よりも更に高硬度の皮膜を得るべく検討したところ、該CrAlNまたはCrAl(CN)皮膜に、W及び/又はMoを規定範囲内で添加すれば、優れた耐摩耗性を確保できると共に、特に耐酸化性に優れた硬質皮膜を形成できることを見出した。以下、成分限定の理由を述べる。
まず第(I-1)の硬質皮膜として、(Al,M,Cr)(CN)皮膜の元素M(W及び/又はMo)の添加量について検討したところ、Al、Cr、C,Nを後述する範囲に制御することを前提に、元素Mの原子比を0.05以上とすれば、硬度および耐酸化性向上効果がみられることが分かった。
図1は、後述する実施例のデータを基に作成したW及び/又はMo量と、酸化処理後に形成される酸化皮膜の厚さとの関係を示したグラフであるが、この図1から、酸化皮膜の厚さを1.5μm以下とするには、W及び/又はMo量を、原子比で(硬質皮膜を構成する成分組成について以下同じ)0.05以上で0.35以下とするのがよいことがわかる。また該図1から、より耐酸化性に優れた硬質皮膜とするには、W及び/又はMo量を0.07以上とするのが好ましく、酸化処理で形成される酸化皮膜の厚さを1μm以下と耐酸化性の更に優れた硬質皮膜とするには、W及び/又はMo量を0.15以上で0.25以下の範囲とするのがより好ましいことがわかる。
また図2は、後述する実施例のデータを基に作成したW及び/又はMo添加量と皮膜の硬度との関係を示したグラフであるが、この図2から、皮膜の硬度を27GPa以上と高める場合も、W及び/又はMo量を0.05以上で0.35以下とするのがよいことがわかる。この場合も、高硬度の皮膜を得るには、W及び/又はMo量を0.07以上とするのが好ましく、硬度29GPa以上とより高硬度の皮膜を得るには、W及び/又はMo量を0.15以上で0.25以下とするのがより好ましい。
このようにW及び/又はMoを添加することによって、耐酸化性や耐摩耗性が高まる機構について未だ明らかではないが、CrNと格子定数の異なる窒化物を形成する元素M;W(WNの格子定数:4.12Å)、Mo(MoNの格子定数:4.16Å)をCrと置換させることによって、格子歪みの効果により、更なる皮膜の高硬度化を図ることができたものと考えられる。
Alは、上述の通り、耐酸化性を向上させる効果を有しており、Alが少なすぎると、W及び/又はMoを添加しても上記図1に示すような耐酸化性の向上を図ることが難しい。よって、本発明では、Al,M,Crに占めるAlの原子比を0.25以上とした。好ましくは0.3以上である。より多く含まれているほどW及び/又はMoの添加による耐酸化性の向上が促進されるので好ましいが、Al量が多過ぎると、結晶構造が高硬度層である立方晶(岩塩型)から六方晶(ウルツ鉱型)に変化して硬度が低下する。また本発明ではW及び/又はMoの添加により高硬度化を図ることもできるため、Alの原子比を0.65以下に抑える。耐酸化性と硬度を共に向上させる観点からは、Alの原子比を0.5未満の範囲に制御することが好ましい。
Crは、前記MとAlの原子比の値により定まり、Crが含まれていなくても上記AlとW及び/又はMoにより硬度を確保することができるが、硬度をより高める観点からは、Crが原子比で0.05以上(より好ましくは0.1以上)添加されていることが好ましい。
更に本発明では、上記第(I-1)、(I-1´)の硬質皮膜にSi及び/又はBを添加すれば、より一層優れた耐酸化性を示すことも見出し、上記第(I-2)、(I-2´)の硬質皮膜に想到した。この様にSi及び/又はBの添加により一層優れた耐酸化性を発揮するのは、Siが最表面にて保護性に優れたSi酸化物を形成したり、添加したBが皮膜中にて耐酸化性に優れたBN化合物を形成するためと考えられる。この様な効果を発揮させるには、Si及び/又はBを0.01以上(好ましくは0.03以上)添加する必要があるが、過度に添加すると、前記Alを過剰に添加した場合と同様に軟質な六方晶が析出しやすくなるため、0.2以下(好ましくは0.1以下)に抑える。
本発明者は、更に第(I-3)、(I-3´)の硬質皮膜として、従来より公知であるTiAl(CN)膜に、W及び/又はMoの1種以上を規定範囲内で添加し、かつSi及び/又はBも添加したものが、TiAl(CN)膜よりも著しく優れた耐酸化性を発揮することを見出した。
この第(I-3)、(I-3´)の硬質皮膜においても、W及び/又はMo量を0.05以上(好ましくは0.07以上、より好ましくは0.15以上)で0.3以下(好ましくは0.25以下)添加することによって、上記第(I-1)、(I-1´)、(I-2)、(I-2´)の硬質皮膜の場合と同様に、酸化処理を施しても酸化され難く、また耐摩耗性にも優れた皮膜が得られる。
このようにW及び/又はMoを添加することで耐酸化性や耐摩耗性が高まる機構について、第(I-3)、(I-3´)の硬質皮膜の場合も、TiNと格子定数の異なる窒化物を形成する元素M;W(WNの格子定数:4.12Å)、Mo(MoNの格子定数:4.16Å)をTiと置換させることによって、高Al濃度による高硬度化に加え、格子歪みの効果により、更なる皮膜の高硬度化を図ることができたものと考えられる。
Alは、上述の通り、耐酸化性を向上させる効果を有しており、第(I-3)、(I-3´)の硬質皮膜のAlが少なすぎると、W及び/又はMoを添加しても上記図1に示すような耐酸化性の向上を図ることが難しい。よって、本発明では、Al,M,Tiに占めるAlの原子比を0.25以上とした。より多く含まれているほどW及び/又はMoの添加による耐酸化性の向上が促進されるので好ましいが、Al量が多過ぎると、結晶構造が高硬度層である立方晶(岩塩型)から六方晶(ウルツ鉱型)に変化して硬度が低下するため、0.6以下に抑える。耐酸化性と硬度を共に向上させる観点からは、Alを0.3以上、0.55以下の範囲に制御することが好ましい。
Tiは、前記MとAlの原子比の値により定まり、Tiが含まれていなくても上記AlとW及び/又はMoにより硬度を確保することができるが、硬度をより高める観点からは、Tiが原子比で0.05以上(より好ましくは0.1以上)となるようにすることが好ましい。
第(I-3)、(I-3´)の硬質皮膜では、更にSi及び/又はBを添加することで、TiAl(CN)よりも一層優れた耐酸化性を示す。Si及び/又はBを添加することによって、上記第(I-2)、(I-2´)の硬質皮膜の場合と同様に、Siが最表面にて保護性に優れたSi酸化物を形成したり、添加したBが皮膜中にて耐酸化性に優れたBN化合物を形成するため、より一層優れた耐酸化性を発揮すると考えられる。この様な効果を発揮させるには、Si及び/又はBを0.01以上(好ましくは0.03以上)添加する必要があるが、過度に添加すると、前記Alを過剰に添加した場合と同様に、軟質な六方晶が析出しやすくなるため0.15以下(好ましくは0.1以下)に抑える。
前記第(I-1)、(I-1´)、(I-2)、(I-2´)、(I-3)および(I-3´)の硬質皮膜にて、C、Nの量を規定した理由は次の通りである。即ち、皮膜中にCを添加してWC及び/又はMoCといった高硬度の炭化物を析出させれば、皮膜の硬度を高めることができ、この様な効果を発揮させるには、WやMoと同量程度のCを存在させるのがよい。しかしCを過剰に添加すると、水分と反応して容易に分解する不安定なAlの炭化物や、Crの炭化物が過度に析出するので、Cの原子比(1−e)は0.5未満、即ち、Nの原子比(e)を0.5以上とする必要がある。Nの原子比(e)は、0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上であり、e=1の場合を最も望ましい形態とする。
尚、本発明の硬質皮膜の結晶構造は、高強度を確保する観点から、実質的に岩塩構造型を主体とするものであることが好ましい。
本発明の皮膜としては、上記要件を満足する単層の皮膜の他、上記要件を満足する同成分組成の層を複数積層させたものや、上記要件を満たし且つ成分組成が相互に異なる皮膜を複数積層させたものを用いることもできる。また用途によっては、前記本発明の硬質皮膜の片面側または両面側に、岩塩構造型であって、本発明の規定とは異なる成分組成の金属窒化物層、金属炭化物層または金属炭窒化物層であるTiN、TiAlN、TiCrAlN、TiCN、TiAlCN、TiCrAlCN、TiC等の皮膜が、本発明の硬質皮膜の耐酸化性および耐摩耗性の損なわれない範囲で積層されていてもよい。
本発明の硬質皮膜は、単層の場合であっても上記複数層の場合であっても、トータルとしての膜厚は、0.5μm以上で20μm以下の範囲内とすることが望ましい。0.5μm未満だと、膜厚が薄すぎて優れた耐摩耗性が十分に発揮され難く、一方、上記膜厚が20μmを超えると、切削中に膜の欠損や剥離が発生するからである。尚、より好ましい膜厚は、1μm以上で15μm以下である。
本発明は、上記硬質皮膜の製造方法まで規定するものではないが、本発明の硬質皮膜は、WとAlといった融点が極端に異なる元素を含む場合があるため、電子ビームによる蒸着法やホロカソード法では組成の制御が困難であり、固体蒸着源により成膜を実施するスパッタリング法またはアークイオンプレーティング法(AIP法)で成膜することが推奨される。
ところでAlとWの様に、融点のみならず質量も大きく相違する元素を含む皮膜を形成する場合、成膜時に圧力が高いとターゲット組成と皮膜組成にずれが生じる。その原因として、蒸着原子と成膜ガス(ArやN)の散乱が挙げられるが、この様な散乱を抑制するには、AIP法で成膜する場合、全圧力を3Pa以下、スパッタリング法で成膜する場合、全圧力を1Pa以下とするのが好ましい。しかし圧力が低すぎると、窒素が皮膜中に導入され難くなるので、反応ガスの分圧は、AIP法の場合:0.5Pa以上、スパッタリング法の場合:0.05Pa以上とするのが好ましい。
成膜時の基板(被処理体)に印加するバイアス電圧は、AIP装置を用いて成膜する場合、30〜200Vの範囲とすることが望ましい。基板にバイアス電圧を印加することで基体(被処理体)へのイオン衝撃が有効に行われて、岩塩構造型のAlNの形成が促進されるものと考えられ、この様な効果を発揮させるには、前記バイアス電圧を30V以上とすることが好ましいからである。しかし前記バイアス電圧が高すぎると、イオン化した成膜ガスによって形成された皮膜がエッチングされ、成膜速度が極端に小さくなることから、前記バイアス電圧は200V以下とすることが好ましい。
成膜時の基板(被処理体)温度は、AIP装置を用いて成膜する場合、300℃以上800℃以下とすることが好ましい。得られた硬質皮膜に過大な残留応力が作用していると、成膜ままの状態で剥離が生じ易く密着性に劣る。この様な皮膜の残留応力は、基板(被処理体)温度を高めることで低減する傾向にあることから、基板(被処理体)温度を300℃以上とするのが好ましい。一方、基板(被処理体)温度を高めれば上記残留応力は低減するが、残留応力が小さすぎる場合には圧縮応力が小さくなり、基板の抗折力増加作用が損なわれ、また高温による基板の熱的変質も生じることとなる。従って基板(被処理体)温度の上限は800℃とすることが好ましい。
本発明の硬質皮膜は、固体蒸着源として用いるターゲットを蒸発またはイオン化させて、被処理体上に成膜するイオンプレーティング法やスパッタリング法等の気相コーティング法にて製造するのが有効であるが、該ターゲットの特性が好ましくない場合には、成膜時に安定した放電状態が保てず、得られる皮膜の成分組成が均一でない等の問題が生じる。そこで優れた耐摩耗性を発揮する本発明の硬質皮膜を得るにあたり、使用するターゲットの特性についても検討したところ、下記の様な知見が得られた。
即ち、ターゲットの相対密度を92%以上とすることで、成膜時の放電状態が安定し、効率よく本発明の硬質皮膜が得られることが分かった。ターゲットの密度が92%未満の場合、ターゲットが飛散して良好に成膜が行えないといった不具合が生じうるからである。特にエネルギーの投入密度が高いAIP法の場合、この傾向は顕著であるため、AIP法で成膜する場合には、相対密度が好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上のターゲットを用いるのがよい。
AIP法等の気相コーティング法では、使用するターゲットの成分組成が、形成される皮膜の成分組成を決定付けることから、ターゲットの成分組成は、目的とする皮膜の成分組成と同一であることが好ましい。即ち、耐酸化性および耐摩耗性に優れた本発明の硬質皮膜として、組成が(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)で示される前記第(I-1)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Cr1−w−x)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.05≦x≦0.35
(w,xはそれぞれAl,Mの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
また、組成が(Al,M,Cr1−a−b)(C1−e)で示される前記第(I-1´)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Cr1−w−x)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.07≦x≦0.35
(w,xはそれぞれAl,Mの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
組成が(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)で示される第(I-2)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Si,B,Cr1−w−x−y−z)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.05≦x≦0.35、
0.01≦y+z≦0.2
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
また、組成が(Al,M,Si,B,Cr1−a−b−c−d)(C1−e)で示される第(I-2´)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Si,B,Cr1−w−x−y−z)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.65、
0.07≦x≦0.35、
0.01≦y+z≦0.2
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
組成が、(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)で示される第(I-3)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Si,B,Ti1−w−x−y−z)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.6、
0.05≦x≦0.3、
0.01≦y+z≦0.15
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
また、組成が、(Al,M,Si,B,Ti1−a−b−c−d)(C1−e)で示される第(I-3´)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Al,M,Si,B,Ti1−w−x−y−z)からなるものであって(但し、MはW及び/又はMo)、
0.25≦w≦0.6、
0.07≦x≦0.3、
0.01≦y+z≦0.15
(w、x、y、zはそれぞれAl,M,Si,Bの原子比を示す)を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
上記ターゲットの組成分布のばらつきが0.5原子%以内であれば、得られる硬質皮膜の成分組成分布も均一となりやすく、安定した成膜を行なえるので好ましい。
また、ターゲット中に不可避的に混入する不純物(酸素、水素、塩素、銅およびマグネシウム)が多量に含まれていると、成膜時にターゲットからこれらのガスが突発的に発生し、放電状態が不安定となったり最悪の場合にはターゲットそのものが破損して良好に成膜されないので、ターゲット中に含まれる酸素は0.3質量%以下、水素は0.05質量%以下、塩素は0.2質量%以下、銅は0.05質量%以下、マグネシウムは0.03質量%以下に抑えるのがよい。
ところで本発明は、ターゲットの製造方法についてまで特定するものではないが、例えば、量比や粒径等を適切に調整した原材料のAl粉末や、元素Mの粉末、Cr粉末もしくはTi粉末等を、V型ミキサー等で均一に混合して混合粉末とした後、これに冷間静水圧加圧処理(CIP処理)あるいは熱間静水圧加圧処理(HIP処理)を施すことが本発明のターゲットを得る有効な方法として挙げられる。
上記HIP法で成形する場合、WやAlの金属間化合物(WAl、WAl、WAl)が形成され易いため、これらの金属間化合物が析出しないように温度条件を制御する必要があり、具体的には450〜550℃、1000気圧の条件でHIP処理することが好ましい。また金属間化合物の析出を抑制する観点からは、熱間鍛造法で製造するのが好ましく、この場合、200〜300℃で鍛造を実施することが好ましい。より高温で鍛造を行なうと、脆弱なTi−Al金属間化合物が生成されるためである。これらの方法の他、熱間押出法や超高圧ホットプレス法等によっても本発明のターゲットを製造することができる。
次に、上記(II)の硬質皮膜についてであるが、本発明では、該(II)の硬質皮膜として、下記第(II-1)〜(II-3)の硬質皮膜を規定する。
第(II-1)の硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0<a≦0.7、
0<b≦0.7、
0.25≦c≦0.75、
0≦d+e≦0.2、
0.03≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)を満たすものであり、第(II-2)の硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.05≦a≦0.3、
0.05≦b≦0.4、
0.3≦c≦0.75、
0≦d+e≦0.2、
0.05≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)を満たすものであり、また第(II-3)の硬質皮膜は、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)からなる硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMo)であって、
0.05≦a≦0.3、
0.05≦b≦0.4、
0.3≦c≦0.75、
0.01≦d+e≦0.2、
0.05≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、
0.5≦f≦1
(a,b,c,d,e,fはそれぞれTi,Cr,Al,Si,B,Nの原子比を示す)を満たすものであるが、この様に皮膜中のTi,Cr,Al,Si,B,M,CおよびNの組成を規定した理由について、以下に詳述する。
本発明者は、前述した様な状況の下で、より優れた耐摩耗性を発揮する硬質皮膜の実現を目指して鋭意研究を進めた結果、TiCrAlNやTiCrAl(CN)をベースにW及び/又はMo(元素M)を適量添加した皮膜が、優れた高温潤滑性を示すと共に、切削工具等の発熱により高温となる耐摩耗用途において、優れた耐摩耗性を発揮することを見い出した。
上記の通り、W及び/又はMoを添加することにより高温潤滑性を確保できる理由として、次の様に考えられる。即ち、皮膜中のW及び/又はMoは、例えば切削時の工具と切り粉または被削材との高速での摺動により発熱し、酸化物を形成する。WおよびMoの酸化物には、WO(融点1500℃)、WO(融点1470℃)、およびMoO(融点1100℃)、MoO(795〜801℃)が存在する。摺動面に形成されたこれらの酸化物の融点は、いわゆる切削時の摺動面温度に近いため、該摺動温度域では上記酸化物が軟質で潤滑性を示すためと考えられる。
上記高温潤滑性を発揮させるには、W及び/又はMoが少なくとも原子比で0.03必要である。好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上である。一方、W及び/又はMo量が過剰になると、皮膜の酸化が著しくなり、酸化摩耗が生じることから上限を原子比で0.35に設定した。好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。
上記第(II-1)〜(II-3)の硬質皮膜では、Ti、CrおよびAlの3元素を組み合わせることにより皮膜の高硬度化を図っている。Ti量は、原子比で0超、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、Cr量は、原子比で0超、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。一方、皮膜中のTi、Crが過剰であると、Alが相対的に少なくなり皮膜が低硬度化するため、TiとCrの上限をそれぞれ原子比で0.7とした。より好ましいTi量は0.3以下、Cr量は0.4以下である。
上記の通り、皮膜の低硬度化を抑制する観点から、Al量は原子比で0.25以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であるが、Al量が過剰になると、皮膜の結晶構造が転移し、皮膜が却って軟質化することから上限を原子比で0.75とした。より好ましくは0.65以下である。
また、C量を規定した理由は次の通りである。即ち、皮膜中にCを添加してTiCやWC、MoC等の化合物を形成させれば、皮膜の高硬度化を図ることができるので好ましい。しかしCを過剰に添加すると、金属元素と結合しないCが単体として析出し、かつ皮膜の耐酸化性が低下することからC量(1−f)の上限値を0.5とした。
更にSi及び/又はBを添加すれば、皮膜の結晶粒を微細化でき、皮膜の高硬度化を図ることができるので好ましい。該効果を発揮させるには、Si及び/又はBを原子比で0.01以上含有させるのがよい。より好ましくは0.03以上である。一方、Si及び/又はBの比率が高すぎても、皮膜が非晶質化して硬度が低下するため、その上限を原子比で0.2に定めた。より好ましくは0.07以下である。
本発明は、上記硬質皮膜の製造方法まで規定するものではないが、本発明の高温潤滑性に優れる硬質皮膜を形成するには、いわゆる気相コーティング法を採用することが有効である。本発明の硬質皮膜は、WとAlといった融点が極端に異なる元素を含む場合があるのに対し、気相コーティング法の中でも電子ビーム蒸着法やホロカソードイオンプレーティング法では、金属元素の融点の差により蒸発量が異なるため、組成の制御が極めて困難であり本発明の硬質皮膜の形成には適さない。よって本発明の硬質皮膜の形成には、固体の蒸発源を使用し、形成された皮膜組成がターゲット組成と相違の少ないスパッタリング法またはアークイオンプレーティング法(AIP法)が適している。スパッタリング法の中でも、成膜対象の基材へのイオン照射量が多いアンバランストマグネトロンスパッタリング(UBMS)やハイパワーパルススパッタリングが適している。
上記スパッタリング法ではターゲットに数百Vの高電圧を印加し、またAIP法では100A程度の高電流を印加することから、放電の安定性は、ターゲットの品質に大きく依存する。ターゲットの相対密度が低く、内部に空孔などの欠陥が存在すると、空孔を起点として異常放電が生じるため、使用するターゲットは相対密度が高く緻密であることが求められる。そこで本発明では、上記硬質皮膜形成用のターゲットとして、相対密度が91%以上(好ましくは95%以上)のものを用いる。尚、ターゲットの相対密度とは、ターゲット構成相(純金属、合金)で決まる理論密度に対して、実際のターゲットの重量と体積から求めた密度との比率を示している。
また使用するターゲットの成分組成が、形成される皮膜の成分組成を決定付けることから、ターゲットの成分組成は、目的とする皮膜の成分組成と同一であるのがよい。即ち、組成が(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)で示される前記第(II-1)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0<v≦0.7、
0<w≦0.7、
0.25≦x≦0.75、
0≦y+z≦0.2、
0.03≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
組成が(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)で示される前記第(II-2)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0.05≦v≦0.3、
0.05≦w≦0.4、
0.3≦x≦0.75、
0≦y+z≦0.2、
0.05≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
また組成が、(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)で示される前記第(II-3)の硬質皮膜を成膜する場合には、ターゲットとして、
(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−v−w−x−y−z)(但し、MはW及び/又はMo)からなり、
0.05≦v≦0.3、
0.05≦w≦0.4、
0.3≦x≦0.75、
0.01≦y+z≦0.2、
0.05≦(1−v−w−x−y−z)≦0.35
(v,w,x,y,zはそれぞれTi,Cr,Al,Si,Bの原子比を示す)
を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のものを用いるのがよい。
次に、上記(III)の硬質皮膜についてであるが、該(III)の硬質皮膜は、組成の異なる層Aと層Bが積層されてなる硬質皮膜であって、
上記層Aが、
(Al,Cr1−a)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
(Al,Si,B,Cr1−a−c−d)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0<c+d≦0.2、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;および
(Al,Si,B,Ti1−a−c−d)(C1−e)からなり、
0.25≦a≦0.7、
0<c+d≦0.15、
0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
(a,c,d,eはそれぞれAl,Si,B,Nの原子比を示す。)
よりなる群から選択される一種であり、
上記層Bが、
(M,Si,B)(C1−e)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.8≦b≦1、
0≦c+d≦0.2 を満たす硬質皮膜
(b,c,d,eはそれぞれM,Si,B,Nの原子比を示す。)
であって、上記層Aと上記層Bが下記式(1)を満たすことを特徴とするものであるが、この様な構成の皮膜を規定した理由について、以下詳細に説明する。
0.5(nm)≦(層Bの厚み)≦(層Aの厚み) …(1)
本発明者は、前述した様な状況の下で、高速切削や焼き入れ鋼など高硬度鋼の切削において、より厳しい条件にも優れた切削性能を発揮する硬質皮膜の実現を目指して鋭意研究を進めた。その結果、後述する組成の(Al,Cr)CN、(Al,Cr,Si,B)CN、および(Al,Ti,Si,B)CNよりなる群から選択される一種(層A)と、後述する組成の(M,Si,B)(C1−e)[但し、MはW及び/又はMo](B層)を積層させれば、耐酸化性および耐摩耗性が格段に優れた皮膜を得ることができた。その理由として、WやMoを(Al,Cr)CN、(Al,Cr,Si,B)CN、(Al,Ti,Si,B)CNに添加する場合、過度にWやMoを添加すると、皮膜の結晶構造が軟質な六方晶構造に転移する場合があるが、上記層A;(Al,Cr)CN、(Al,Cr,Si,B)CN、および(Al,Ti,Si,B)CNよりなる群から選択される一種と、上記B層;(M,Si,B)(C1−e)[但し、MはW及び/又はMo]とを積層させれば上記問題を解消できるためと考えられる。
但し、上記層B自体は上記層Aと比較して硬度が低いため、B層を相対的に厚くすると皮膜硬度が低下し、上記作用効果が十分発揮されなくなる。従って本発明では、上記層Aと層Bが下記式(1)を満たすように積層させる。即ち、層Bの厚み≦層Aの厚みとする一方、層Bが薄すぎると、実質層Aのみの挙動を示し、より優れた耐酸化性および耐摩耗性を確保できないことから、層Bの厚みを0.5nm以上(好ましくは1.0nm以上)とする。
0.5(nm)≦(層Bの厚み)≦(層Aの厚み) …(1)
また層Aの厚みは、100nm以下とすることが好ましく、積層数は、膜厚に応じて変えればよい。
上記層Aにおいて、Alは、耐酸化性を向上させる効果を有しており、Alが少なすぎると耐酸化性の向上を図ることが難しいため、本発明では層AにおけるAl量を原子比で0.25以上とした。好ましくは0.3以上である。一方、Al量が多過ぎると、結晶構造が高硬度層である立方晶(岩塩型)から六方晶(ウルツ鉱型)に変化して硬度が低下する。そこで本発明ではAl量を原子比で0.7以下に抑えた。耐酸化性と硬度を共に高める観点からは、Alの原子比を0.5未満とすることが好ましい。
また、層Aとして更にSi及び/又はBを添加されたものが、CrAlN皮膜やTiAlN皮膜よりも優れた耐酸化性を示すので好ましい。Si及び/又はBは、僅かな添加でも効果がある一方、過度に添加すると、前記Alを過剰に添加した場合と同様に軟質な六方晶が析出しやすくなる。よってSi及び/又はB量は、原子比で0.2以下(好ましくは0.15以下)の範囲で添加する。
上記層Bは、W及び/又はMo(元素M)を主体とするものであり、M(CN)として、MoCN、WCN等が挙げられる。更にSi及び/又はBの添加された(M,Si及び/又はB)(CN)として、例えばMoSiCN、WBCN等を形成すれば、より優れた耐酸化性を示すので好ましい。層Bにおいても、Si及び/又はBは僅かな添加で効果を発揮し、過度に添加すると、前記元素M量が相対的に低下して硬度が低下するため、Si及び/又はB量は、原子比で0.2以下(好ましくは0.15以下)に抑えるのがよい。
上記層Aにおいて、C、Nの量を規定した理由は次の通りである。即ち、皮膜中にCを添加してTiCやWC、MoC等の高硬度の炭化物を析出させれば、皮膜の硬度を高めることができる。この様な効果を発揮させるには、上記TiやW、Moと同量程度のCを存在させるのがよい。しかしCを過剰に添加すると、水分と反応して容易に分解する不安定なAlの炭化物や、Crの炭化物が過度に析出するので、Cの原子比(1−e)は0.5未満、即ち、Nの原子比(e)を0.5以上とする。Nの原子比(e)は0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上であり、e=1の場合を最も望ましい形態とする。
尚、第(III)の硬質皮膜の結晶構造は、高強度を確保する観点から、実質的に岩塩構造型を主体とするものであることが好ましい。
前記第(III)の硬質皮膜としては、上記要件を満足する同成分組成の層を複数積層させたものや、上記要件を満たし且つ成分組成が相互に異なる皮膜を複数積層させたものを用いることもできる。また用途によっては、前記(III)の硬質皮膜の片面側または両面側に、岩塩構造型であって、本発明の規定とは異なる成分組成の金属窒化物層、金属炭化物層または金属炭窒化物層であるTiN、TiAlN、TiCrAlN、TiCN、TiAlCN、TiCrAlCN、TiC等の皮膜が、本発明の硬質皮膜の耐酸化性および耐摩耗性が損なわれない範囲で積層されていてもよい。
前記第(III)の硬質皮膜は、トータルとしての膜厚が0.5μm以上で20μm以下の範囲内であることが望ましい。0.5μm未満だと、膜厚が薄すぎて優れた耐摩耗性が十分に発揮され難く、一方、上記膜厚が20μmを超えると、切削中に膜の欠損や剥離が発生するからである。より好ましい膜厚は1μm以上で15μm以下である。
本発明は、前記第(III)の硬質皮膜の製造方法まで規定するものではないが、本発明の硬質皮膜は、WとAlといった融点が極端に異なる元素を含む場合があるため、電子ビームによる蒸着法やホロカソード法では組成の制御が困難であり、固体蒸着源により成膜を実施するスパッタリング法またはアークイオンプレーティング法(AIP法)で成膜することが推奨される。
ところでSiやBと、Wの様に、融点のみならず質量も大きく相違する元素を含む皮膜を形成する場合、成膜時に圧力が高いとターゲット組成と皮膜組成にずれが生じる。その原因として、蒸着原子と成膜ガス(ArやN)の散乱が挙げられるが、この様な散乱を抑制するには、AIP法で成膜する場合、全圧力を3Pa以下、スパッタリング法で成膜する場合には全圧力を1Pa以下とするのが好ましい。しかし圧力が低すぎると、窒素が皮膜中に導入され難くなるので、反応ガスの分圧は、AIP法の場合:0.5Pa以上、スパッタリング法の場合:0.05Pa以上とするのが好ましい。
成膜時の基板(被処理体)に印加するバイアス電圧は、AIP装置を用いて成膜する場合、30〜200Vの範囲とすることが望ましい。基板にバイアス電圧を印加することで基体(被処理体)へのイオン衝撃が有効に行われ、岩塩構造型のAlNの形成が促進されるものと考えられるが、この様な効果を発揮させるには、前記バイアス電圧を30V以上とすることが好ましいからである。しかし前記バイアス電圧が高すぎると、イオン化した成膜ガスによって膜がエッチングされ、成膜速度が極端に小さくなることから、前記バイアス電圧は200V以下とすることが好ましい。
成膜時の基板(被処理体)温度は、AIP装置を用いて成膜する場合、300℃以上800℃以下とすることが好ましい。得られた硬質皮膜に過大な残留応力が作用していると、成膜ままの状態で剥離が生じ易く密着性に劣る。この様な皮膜の残留応力は、基板(被処理体)温度を高めることで低減する傾向にあることから、基板(被処理体)温度を300℃以上とするのが好ましい。一方、基板(被処理体)温度を高めれば上記残留応力は低減するが、残留応力が小さすぎる場合には圧縮応力が小さくなり、基板の抗折力増加作用が損なわれ、また高温による基板の熱的変質も生じることとなる。従って基板(被処理体)温度の上限は800℃とすることが好ましい。
前記(III)の硬質皮膜は、固体蒸着源として用いるターゲットを蒸発またはイオン化させて、被処理体上に成膜するイオンプレーティング法やスパッタリング法等の気相コーティング法にて製造するのが有効であるが、該ターゲットの特性が好ましくない場合には、成膜時に安定した放電状態が保てず、得られる皮膜の成分組成が均一でない等の問題が生じる。そこで優れた耐摩耗性を発揮する本発明の硬質皮膜を得るにあたり、使用するターゲットの特性についても検討したところ、下記の様な知見が得られた。
即ち、ターゲットの相対密度を92%以上とすることで、成膜時の放電状態が安定し、効率よく本発明の硬質皮膜が得られることが分かった。ターゲットの密度が92%未満の場合、ターゲットが飛散して良好に成膜が行えないといった不具合が生じうるからである。特にエネルギーの投入密度が高いAIP法の場合、この傾向は顕著であるため、AIP法で成膜する場合には、相対密度が好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上のターゲットを用いるのがよい。
AIP法等の気相コーティング法では、使用するターゲットの成分組成が、形成される皮膜の成分組成を決定付けることから、ターゲットの成分組成は、目的とする皮膜の成分組成と同一であることが好ましい。
即ち、前記層Aの形成には、その組成が、
(Al,Cr1−w)からなり、
0.25≦w≦0.7 を満たすもの;
(Al,Si,B,Cr1−w−y−z)からなり、
0.25≦w≦0.7、
0<y+z≦0.2 を満たすもの;および
(Al,Si,B,Ti1−w−y−z)からなり、
0.25≦w≦0.7、
0<y+z≦0.15 を満たすもの;
(w,y,zはそれぞれAl,Si,Bの原子比を示す。)
よりなる群から選択される一種であって、形成しようとする層Aと同成分組成のターゲットを用いるのがよい。
また前記層Bの形成には、その組成が、
(M,Si,B)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
0.8≦x≦1、
0≦y+z≦0.2
(x,y,zはそれぞれM,Si,Bの原子比を示す。)
を満たし、形成しようとする硬質皮膜と同成分組成のターゲットを用いるのがよい。
上記ターゲットの組成分布のばらつきが0.5原子%以内であれば、得られる硬質皮膜の成分組成分布も均一となりやすく、安定した成膜を行なえるので好ましい。
また、ターゲット中に不可避的に混入する不純物(酸素、水素、塩素、銅およびマグネシウム)が多量に含まれていると、成膜時にターゲットからこれらのガスが突発的に発生し、放電状態が不安定となり、最悪の場合にはターゲットそのものが破損して良好に成膜されないので、ターゲット中に含まれる酸素は0.3質量%以下、水素は0.05質量%以下、塩素は0.2質量%以下、銅は0.05質量%以下、マグネシウムは0.03質量%以下に抑えるのがよい。
ところで本発明は、上記ターゲットの製造方法についてまで特定するものではないが、例えば、量比や粒径等を適切に調整した原材料のAl粉末や、Cr粉末、Ti粉末、Si粉末、B粉末、元素Mの粉末等を、V型ミキサー等で均一に混合して混合粉末とした後、これに冷間静水圧加圧処理(CIP処理)あるいは熱間静水圧加圧処理(HIP処理)を施すことが本発明のターゲットを得る有効な方法として挙げられる。また、これらの方法の他、熱間押出法や超高圧ホットプレス法等によっても本発明のターゲットを製造することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
図3に示す成膜装置(後述する図4の成膜装置でもよい)に、Cr−Al合金ターゲット、Cr−Al−W合金ターゲットまたはCr−Al−Mo合金ターゲットを取り付けて成膜を行った。
尚、基板には、皮膜の成分組成、結晶構造、硬度および酸化処理後の酸化皮膜の膜厚(耐酸化性)の測定用として鏡面研磨を施した超硬合金を使用し、切削性能の評価用として5Rの超硬合金製ボールエンドミルを使用した。
成膜は、上記いずれかの成膜装置の支持台上に、被処理体として上記基板を取り付け、チャンバー内を1×10−3Pa以下にまで排気した後、チャンバー内にあるヒーターで基板(被処理体)の温度を約500℃にまで加熱し、それからArイオンでスパッタクリーニングを実施した。
前記図3におけるスパッタリング装置で成膜する場合には、直径6インチのターゲットを用い、投入電力を2kWとし、窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:N=65:35の混合ガスを導入し、炭窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:(N+CH)=65:35の混合ガスを導入して全圧力0.5Paで成膜を実施した。
一方、前記図3におけるAIP装置で成膜する場合には、直径100mmのターゲットを用い、アーク電流を150Aとし、窒化物皮膜を形成する場合には、全圧2.7PaのN雰囲気とし、炭窒化物皮膜を形成する場合には、NとCHの混合ガス(CH量を変化させてC量を制御する)を導入して成膜を実施した。
いずれの方式を用いた場合にも、基板(被処理体)の表面に膜厚3〜4μmの皮膜を形成した。また、成膜時の基板バイアス電圧として、両方式ともに、アース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜50V印加した。
この様にして鏡面超硬合金基板上に成膜された皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、酸化処理後の酸化皮膜の膜厚(耐酸化性)を下記の通り測定した。
(a)成分組成
皮膜の成分組成はEPMAで測定した。
(b)結晶構造
X線回折により同定した。表1中のCは立方晶、Hは六方晶を示す。
(c)硬度
マイクロビッカース硬度計を用いて測定した。荷重は0.245Nとした。
(d)耐酸化性
大気中で900℃×1時間の条件で酸化処理した後、表面に形成された酸化皮膜の膜厚を測定(3箇所の平均値を算出)して、耐酸化性を評価した。
次に、上記の通り成膜した超硬合金製ボールエンドミルを用い、以下の条件で切削試験を行い、測定した外周境界部の逃げ面磨耗量で皮膜の耐摩耗性を評価した。
<切削条件>
被削材:JIS SKD61(硬度 HRC50)
切削速度:220m/分
刃送り:0.06mm/刃
深さ切り込み:4.5mm
軸切り込み:0.5mm
切削長:100m
以上の様に測定した皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、酸化皮膜の膜厚および逃げ面磨耗量の値を表1に示す。
表1より、本発明の要件を満たす皮膜は、高いビッカース硬度を示し、酸化処理後の酸化皮膜の厚みが薄く、切削試験における摩耗も抑えられている。これに対し、本発明の要件を満たさない皮膜は、硬度が低いか、酸化皮膜が厚く耐酸化性に劣っているか、または切削試験における摩耗が著しくなっている。即ち、No.1,2,9は、元素Mが含まれていないか規定範囲に満たないため、硬度が低く、また耐酸化性に劣っており、切削試験における摩耗も著しい。No.8,14は、元素Mが過剰に添加されているため、この場合も硬度が低く、耐酸化性に劣っており、また切削試験における摩耗も著しい。
No.18は、Alが少ないため、硬度が低く、耐酸化性に劣ると共に切削試験での摩耗量も多い。No.22、23は、Alが過剰であるため、硬度が低くなっており、また耐磨耗性が劣っている。No.28は、Nの原子比が高いため、硬度が低く、耐酸化性や耐摩耗性にも劣っている。
[実施例2]
前記図3に示す成膜装置にターゲットを取り付けて成膜を行った。前記ターゲットとしては、Cr−Al合金ターゲット、Cr−Al−W合金ターゲット、Cr−Al−W−Si合金ターゲット、Cr−Al−W−B合金ターゲット、またはCr−Al−W−B−Si合金ターゲットを用いた。
尚、基板には、皮膜の成分組成、結晶構造、硬度および酸化処理後の酸化皮膜の膜厚(耐酸化性)の測定用として鏡面研磨を施した超硬合金を使用し、切削性能の評価用として5Rの超硬合金製ボールエンドミルを使用した。
成膜は、上記いずれかの成膜装置の支持台上に、被処理体として上記基板を取り付け、チャンバー内を1×10−3Pa以下にまで排気した後、チャンバー内にあるヒーターで基板(被処理体)の温度を約500℃にまで加熱し、それからArイオンでスパッタクリーニングを実施した。
前記図3におけるスパッタリング装置で成膜する場合には、直径6インチのターゲットを用い、投入電力を2kWとし、窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:N=65:35の混合ガスを導入し、炭窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:(N+CH)=65:35の混合ガスを導入して全圧力0.5Paで成膜を実施した。
一方、前記図3におけるAIP装置で成膜する場合には、直径100mmのターゲットを用い、アーク電流を150Aとし、窒化物皮膜を形成する場合には、全圧2.7PaのN雰囲気とし、炭窒化物皮膜を形成する場合には、NとCHの混合ガス(CH量を変化させてC量を制御する)を導入して成膜を実施した。
いずれの方式を用いた場合にも、基板(被処理体)の表面に膜厚3〜4μmの皮膜を形成した。また、成膜時の基板バイアス電圧として、両方式ともに、アース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜50V印加した。
この様にして成膜された皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、酸化処理後の酸化皮膜の膜厚(耐酸化性)および切削試験における逃げ面磨耗量(耐摩耗性)を、上記実施例1と同様にして測定した。その結果を表2,表3に示す。
表2および表3より、本発明の要件を満たす皮膜は、高いビッカース硬度を示し、酸化処理後の酸化皮膜の厚みが薄く、切削試験における摩耗も抑えられている。これに対し、本発明の要件を満たさない皮膜は、硬度が低いか、酸化皮膜が厚く耐酸化性に劣っているか、または切削試験における摩耗が著しいといった不具合が生じている。即ち、No.1とNo.11は、元素Mが含まれていないため、硬度が低く、酸化皮膜が厚く耐酸化性に劣っており、また切削試験における摩耗が著しい。No.6とNo.16はSiの原子比が高く結晶構造が六方晶となったため、硬度が低く、切削試験における摩耗が著しい。
No.9とNo.19は、(Si+B)の原子比が高く六方晶が生じたため、切削試験における摩耗量が多くなっている。
No.25は、Nの原子比が高いため、硬度が低く、耐酸化性や耐摩耗性にも劣っている。
[実施例3]
ターゲットの相対密度が形成される皮膜の面粗度や硬度に及ぼす影響について調べた。
それぞれ100メッシュ以下のAl粉末、Ti粉末、Cr粉末、W粉末、Mo粉末、Si粉末、B粉末を所定量混合し、温度:500℃かつ気圧:100MPaの条件でHIP処理するか、熱間鍛造法(余熱温度:400℃)、またはホットプレス法(焼結温度:550℃)で、表4または表5に示す各成分組成のターゲットを作製した。上記ターゲットの成分組成は蛍光X線分析で測定した。
上記ターゲットを前記図3に示す成膜装置に取り付けて放電成膜を実施し、得られた皮膜の面粗度と硬度を測定した。硬度は前記実施例1の場合と同様にして測定した。これらの結果を表4および表5に示す。
表4および表5より、本発明で規定する相対密度を満足するターゲットを用いて成膜した場合には、得られる皮膜の面粗度が小さくかつ高硬度であることが分かる。これに対し、ターゲットの相対密度が本発明で規定する要件に満たないものは、得られる皮膜の面粗度が大きくなり(面粗度が大きくなると、切削時の抵抗が高まり摩耗量が増大する)、また硬度が十分に高くないといった不具合が生じた。
[実施例4]
図4のUBMS蒸発源(スパッタ蒸発源)およびAIP蒸発源(アーク蒸発源)を有する成膜装置に、Ti、Cr、Al、W、Moを含有するターゲットを取り付け、UBMS蒸発源またはAIP蒸発源を使用して表6に示す組成の皮膜を形成した。基材は、皮膜の構造および組成並びに高温下での摩擦係数の測定用として超硬合金基板を、また切削試験用として超硬合金製スクエアエンドミル(六枚刃)を用いた。
UBMS法、AIP法のいずれにおいても、チャンバー中に基板を導入し真空引きした後、基材を約500℃まで加熱し、その後Arイオンによるイオンクリーニングを、Ar圧力:0.6Pa、基板バイアス電圧:−500Vとして3分間実施した。
そしてUBMS法の場合は、Ar−窒素の混合ガス中またはAr−窒素−メタンの混合ガス中(全圧力:0.6Pa)で、基板への印加バイアスを70Vとして成膜を実施した。AIP法の場合は、窒素ガス中または窒素−メタンガス中(全圧力:4Pa)で印加バイアス:70V、アーク電流:150Aとして成膜した。皮膜の厚みは各々約3μmである。
この様にして成膜された皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、高温下における摩擦係数(高温潤滑性)を下記の通り測定した。
(a)成分組成
皮膜の成分組成はEPMAで測定した。
(b)結晶構造
X線回折により同定した。表6中のB1は立方晶、B4は六方晶を示す。
(c)硬度
マイクロビッカース硬度計(測定荷重0.245N、測定時間15秒)で測定した。
(d)高温潤滑性
高温下における摩擦係数は、相手材を熱間金型鋼(SKD61、HRC50)、温度:800℃、摺動速度:0.3m/s、垂直荷重:2N、切削雰囲気:大気中の条件で摩擦試験を行い、摺動距離が1000mの時点で測定した。
また切削性能は、前述の超硬合金製6枚刃エンドミルを用い、被削材:SKD11(HRC60)を使用し、切削速度:150m/分、送り:0.05mm/刃、深さ切り込み:5mm、軸切り込み:0.1mmの条件で50mの切削を行い、刃先逃げ面の摩耗量で評価した。これらの評価結果を表6に示す。
表6より、本発明の要件を満たす皮膜は、高温潤滑性に優れると共に、高硬度を示し、切削試験における摩耗も抑えられている。これに対し、本発明の要件を満たさない皮膜は、高温潤滑性に劣っているか、硬度が低いか、または切削試験における摩耗が著しいといった不具合が生じている。即ち、No.1〜4は、元素Mが含まれていないか不足しているため、高温潤滑性に劣り、また切削試験における摩耗が著しい。一方、No.8は、元素Mが過剰であるため、切削試験時の摩耗が著しい。
No.9は、Al量が少なすぎるため、皮膜が低硬度化し切削試験時の摩耗も著しい。一方、No.12は、Al量が過剰であるため、皮膜が著しく軟質化し、切削試験時の摩耗量も大きい。
No.15は、C量が過剰であるため、皮膜の硬度が却って低下している。またNo.16は、Ti量が過剰となり相対的にAl量が不足したため、皮膜が低硬度化し、切削試験時の摩耗量も大きくなっている。
[実施例5]
更にSiまたは/およびBを含有する皮膜を形成して特性を調べた。Ti、Cr、Al、元素M、Siまたは/およびBを含有するターゲットを、前記図4に示す成膜装置に取り付け、上記実施例4と同様にして、表7に示す成分組成の皮膜を形成した。そして得られた皮膜の特性を上記実施例4と同様に評価した。その結果を表7に示す。
表7より、本発明の要件を満たす皮膜は、高温潤滑性に優れると共に、高いビッカース硬度を示し、切削試験における摩耗も抑制されている。特にSiまたは/およびBを含む効質皮膜は、高温潤滑性がより高い傾向にある。これに対し、本発明の要件を満たさない皮膜は、高温潤滑性に劣っているか、硬度が低いか、または切削試験における摩耗が著しいといった不具合が生じている。即ち、No.21はTi量が過剰であるため、切削試験時の摩耗量が大きい。No.22は、Ti量が過剰となり相対的にAl量が不足したため、皮膜が低硬度化し、切削試験時の摩耗量も大きくなっている。またNo.23は、元素Mが含まれていないため、高温潤滑性に劣り、切削試験における摩耗も著しい。
[実施例6]
ターゲットの相対密度が、放電状態や、形成される皮膜の面粗度、硬度に及ぼす影響について調べた。
前記表7のNo.26に示す組成の皮膜を形成するためのターゲット(成分組成:原子比でTi:0.15、Cr:0.15、Al:0.55、W:0.11、Si:0.04)を、表8に記載のHIP、熱間鍛造または焼結法で作製した。尚、該HIP法は、HIP温度:450〜500℃、HIP圧力:1000気圧の条件で行った。また熱間鍛造は、試料温度:400℃で鍛造した。更に焼結法では温度:800℃で焼結を行った。
そしてX線回折によるターゲットの構成相の同定を実施した後、得られたターゲットの相対密度を、上記相構成より計算できる理論密度とアルキメデス法により求められる実ターゲットの密度を比較して導出した。
また得られたターゲットを、前記図4に示す成膜装置に取り付けて、UBMS法またはAIP法で実施例4と同様の条件で放電して成膜を実施し、得られた皮膜の面粗度と硬度の測定、及び切削試験を行った。硬度の測定と切削試験は前記実施例4と同様にして行った。これらの結果を表8に示す。
表8より、本発明で規定する相対密度を満足するターゲットを用いて成膜した場合には、得られる皮膜の面粗度が小さくかつ高硬度であることが分かる。これに対し、ターゲットの相対密度が本発明で規定する要件に満たないものは、得られる皮膜の面粗度が大きくなり(面粗度が大きくなると、切削時の抵抗が高まり摩耗量が増大する)、切削試験時の摩耗量が大きくなった。
[実施例7]
前記図4のUBMS蒸発源およびAIP蒸発源を有する成膜装置に、表9に示すターゲットを取り付けて、表9(各層の厚み,積層数)に示す通り、層Aと層Bの積層構造を有する硬質皮膜を形成した。尚、基板には、皮膜の成分組成、結晶構造、硬度および酸化処理後の酸化皮膜の膜厚(耐酸化性)の測定用として鏡面研磨を施した超硬合金を使用し、切削性能の評価用として5Rの超硬合金製ボールエンドミルを使用した。
成膜に際して、成膜装置の支持台上に被処理体として上記基板を取り付け、チャンバー内を1×10−3Pa以下にまで排気した後、チャンバー内にあるヒーターで基板(被処理体)の温度を約500℃にまで加熱し、それからArイオンでスパッタクリーニングを実施した。
積層皮膜の形成は、AIP法を単独で実施する場合には、AIP装置部に直径100mmのターゲットを取り付け、アーク電流を150Aとし、窒化物皮膜を形成する場合には、全圧2.7PaのN雰囲気とし、炭窒化物皮膜を形成する場合には、NとCHの混合ガス(CH量を変化させてC量を制御する)を導入して成膜を実施した。
UBMS法を単独で実施する場合には、成膜時の基板バイアス電圧として、両方式ともに、アース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜50V印加した。スパッタリング装置部には直径6インチのターゲットを取り付け、投入電力を2kWとし、窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:N=65:35の混合ガスを導入し、炭窒化物皮膜を形成する場合には、Ar:(N+CH)=65:35の混合ガスを導入して全圧力0.5Paで成膜を実施した。
また、UBMS法とAIP法を複合して実施する場合には、基板をArイオンでエッチング後、UBMS蒸発源およびAIP蒸発源を、2.7PaのAr−50%N雰囲気中にて同時に放電させ、被処理体を中央の回転する基板ホルダーに搭載し、UBMS蒸発源(スパッタ蒸発源)とAIP蒸発源(アーク蒸発源)の前を被処理体が交互に通過するようにして行った。
尚、積層皮膜における層A、層Bの各厚みは、各蒸発源の蒸発速度および基板の回転速度を変化させることにより制御した。この様にして、トータル厚さが3〜4μmの硬質皮膜(積層皮膜)を基板(被処理体)の表面に形成した。
上記積層皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、酸化皮膜の膜厚および逃げ面磨耗量を下記の通り測定した。
(a)成分組成
皮膜の成分組成はEPMAで測定した。
(b)結晶構造
X線回折により同定した。表9中のCは立方晶を示す。
(c)硬度
マイクロビッカース硬度計(測定荷重0.245N、測定時間15秒)で測定した。
(d)耐酸化性
大気中で900℃×1時間の条件で酸化処理した後、表面に形成された酸化皮膜の膜厚を測定(3箇所の平均値を算出)して、耐酸化性を評価した。
また切削性能は、上記の通り成膜した超硬合金製ボールエンドミルを用い、以下の条件で切削試験を行い、測定した外周境界部の逃げ面磨耗量で皮膜の耐摩耗性を評価した。
<切削条件>
被削材:JIS SKD61(硬度 HRC50)
切削速度:220m/分
刃送り:0.06mm/刃
深さ切り込み:4.5mm
軸切り込み:0.5mm
切削長:100m
以上の様に測定した皮膜の成分組成、結晶構造、硬度、酸化皮膜の膜厚および逃げ面磨耗量の値を表9に示す。
表9より、本発明の要件を満たす皮膜は、高硬度を示し、酸化処理後の酸化皮膜の厚みが薄く、切削試験における摩耗も抑えられている。これに対し、本発明の要件を満たさない皮膜は、硬度が低いか、酸化皮膜が厚く耐酸化性に劣っているか、または切削試験における摩耗が著しくなっている。即ち、No.1,2,8は、層Bの厚みが層Aよりも厚いため硬度が低く、耐酸化性に劣っており、切削試験における摩耗も著しい。
[実施例8]
ターゲットの相対密度が形成される皮膜の面粗度や硬度に及ぼす影響について調べた。それぞれ100メッシュ以下のAl粉末、Ti粉末、Cr粉末、W粉末、Mo粉末、Si粉末、B粉末を所定量混合し、温度:500℃かつ気圧:100MPaの条件でHIP処理するか、熱間鍛造法(余熱温度:400℃)、またはホットプレス法(焼結温度:550℃)で、表10〜12に示す各成分組成のターゲットを作製した。上記ターゲットの成分組成は蛍光X線分析で測定した。
そして、上記ターゲットを前記図4に示す成膜装置に取り付けて放電成膜を実施し、得られた皮膜の面粗度と硬度を測定した。硬度は前記実施例7の場合と同様にして測定した。これらの結果を表10〜12に示す。
表10〜12より、本発明で規定する相対密度を満足するターゲットを用いて成膜した場合には、得られる皮膜の面粗度が小さくかつ高硬度であることが分かる。これに対し、ターゲットの相対密度が本発明で規定する要件に満たないものは、得られる皮膜の面粗度が大きくなり(面粗度が大きくなると、切削時の抵抗が高まり摩耗量が増大する)、また硬度が十分に高くないといった不具合が生じた。

Claims (4)

  1. 組成の異なる層Aと層Bが積層されてなる硬質皮膜であって、
    上記層Aが、
    (Al,Cr1−a)(C1−e)からなり、
    0.25≦a≦0.7、
    0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
    (Al,Si,B,Cr1−a−c−d)(C1−e)からなり、
    0.25≦a≦0.7、
    0<c+d≦0.2、
    0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;および
    (Al,Si,B,Ti1−a−c−d)(C1−e)からなり、
    0.25≦a≦0.7、
    0<c+d≦0.15、
    0.5≦e≦1 を満たす硬質皮膜;
    (a,c,d,eはそれぞれAl,Si,B,Nの原子比を示す。)
    よりなる群から選択される一種であり、
    上記層Bが、
    (M,Si,B)(C1−e)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
    0.8≦b≦1、
    0≦c+d≦0.2 を満たす硬質皮膜
    (b,c,d,eはそれぞれM,Si,B,Nの原子比を示す。)
    であって、上記層Aと上記層Bが下記式(1)の関係を満たすよう積層されてなることを特徴とする耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜。
    0.5(nm)≦(層Bの厚み)≦(層Aの厚み) …(1)
  2. 前記請求項1に記載の硬質皮膜の形成に用いるターゲットであって、相対密度が92%以上であることを特徴とする硬質皮膜形成用ターゲット。
  3. 前記層Aの形成に用いるターゲットであって、その組成が、
    (Al,Cr1−w)からなり、
    0.25≦w≦0.7 を満たすもの;
    (Al,Si,B,Cr1−w−y−z)からなり、
    0.25≦w≦0.7、
    0<y+z≦0.2 を満たすもの;および
    (Al,Si,B,Ti1−w−y−z)からなり、
    0.25≦w≦0.7、
    0<y+z≦0.15 を満たすもの;
    (w,y,zはそれぞれAl,Si,Bの原子比を示す。)
    よりなる群から選択される一種である請求項2に記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
  4. 前記層Bの形成に用いるターゲットであって、その組成が、
    (M,Si,B)からなり(但し、MはW及び/又はMo)、
    0.8≦x≦1、
    0≦y+z≦0.2
    (x,y,zはそれぞれM,Si,Bの原子比を示す。)
    を満たすものである請求項2に記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
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