JPH11197762A - 金 型 - Google Patents

金 型

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JPH11197762A
JPH11197762A JP394698A JP394698A JPH11197762A JP H11197762 A JPH11197762 A JP H11197762A JP 394698 A JP394698 A JP 394698A JP 394698 A JP394698 A JP 394698A JP H11197762 A JPH11197762 A JP H11197762A
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JP
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coating
mold
gpa
steel material
residual stress
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JP394698A
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English (en)
Inventor
Hisanori Ohara
久典 大原
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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  • Mounting, Exchange, And Manufacturing Of Dies (AREA)
  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱亀裂性と耐酸化性を両立させ、寿命の長
い金型を提供する。 【解決手段】 金型は主表面を有する鋼材と鋼材の主表
面上に形成された被膜とを備える。鋼材の主表面近傍の
部分には窒化処理層が形成される。窒化処理層におい
て、主表面からの深さが10μmまでの部分の圧縮残留
応力の平均値F1 は0.2GPa≦F1 ≦1.5GPa
の関係式を満たす。被膜の組成式は(Ti1- X 、A
X )Nで表わされる。Xは0.02≦X≦0.7の関
係式を満たす。被膜内での圧縮残留応力の平均値F2
0.5GPa≦F2 ≦8GPaの関係式を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、金型に関し、特
に、鉄系部品の温間もしくは熱間鍛造用、またはアルミ
ニウム合金の鋳造用に用いられる金型に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車部品や機械部品などの鉄系
部品を温間または熱間で鍛造する際や、アルミニウム合
金の部品を鋳造する際には金型が用いられている。な
お、この明細書中で「金型」とは、これを材料に押付け
て成形するために、その表面が、鍛造品の寸法、形状に
合うような形状をした強固の金属体(ダイ)、および成
形品または溶湯を受取る空間(キャビティ)を囲む部品
から組立られたものの両方の意味で用いる。
【0003】金型が使用されれば、その表面は、一般に
温度500℃程度の高温となるため、金型の表面が酸化
して損傷する場合がある。また、高温と室温とのサイク
ルを繰返すため、熱応力による疲労亀裂が発生する場合
もある。これらの損傷や亀裂により金型表面が荒れ、こ
の現象はヒートチェックと呼ばれる。この現象は金型が
使用されるほど、すなわち、金型による加工数が増大す
るほど進行し、成形品の寸法精度を低下させる。寸法精
度が一定値以下になると、金型が寿命に達したとされ
る。
【0004】このような金型表面の損傷や亀裂を発生さ
せないために、現在、金型を窒化処理(タフトライド処
理、ガス窒化処理、イオン窒化処理、浸硫窒化処理)す
ることが幅広く行なわれている。
【0005】この窒化処理は、JIS呼称SKH、SK
Dまたはこれらの相当材である鋼からなる金型母材の表
面に、窒素を主成分とする元素を拡散浸透させる処理で
ある。この処理を施すことにより、金型表面の硬度を増
大させ、金型表面に圧縮応力を付与し、ヒートチェック
に対する金型の耐久性を向上させている。
【0006】しかしながら、この窒化処理では、金型表
面の耐酸化性を向上させることができず、金型表面の酸
化による損傷が生じやすかった。つまり、金型表面が酸
化され、酸化鉄が発生する。この酸化鉄が金型から剥離
し、さらに金型が酸化されるという現象が起こってい
た。
【0007】一方、窒化処理以外では、金型表面にセラ
ミックスの被膜を形成する方法がよく用いられている。
この方法は、化学蒸着法(CVD法)または物理蒸着法
(PVD法)により、金型表面に炭化チタン、窒化チタ
ンまたは炭窒化チタンなどのセラミック膜を形成するも
のである。
【0008】また、TRD法またはTD法と呼ばれる熱
反応・析出法により鋼の表面に炭化バナジウムを形成す
る方法も用いられている。
【0009】しかしながら、これらの炭化チタン、窒化
チタン、炭窒化チタンおよび炭化バナジウムなどのセラ
ミックスの被膜を形成した場合、被膜自身の耐酸化性が
温度500〜600℃付近で失われるため、金型表面の
耐酸化性を向上させることが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この問題を解決するた
めに、窒化処理などの表面硬化処理と、蒸着法などの被
膜形成処理とを組合せた方法が提案されている。たとえ
ば特開昭61−231158号公報では、窒化処理層
と、その上に1層以上の炭化チタンなどの密着型処理層
を設けた工具が開示されている。また、特開昭62−1
03368号公報では、金属基材の表面に窒化物層を形
成し、その表面をセラミックコーティング膜で被覆した
ものが開示されている。
【0011】また、特開平2−125861号公報で
は、イオン窒化処理とイオンプレーティングを同一の真
空槽内で連続して行なった後、金属の窒化物、炭化物、
炭窒化物、炭窒酸化物、酸化物の膜を1層あるいは多層
に形成する方法が開示されている。
【0012】また、特開平4−103755号公報で
は、鉄系金属母材の表面に窒化層、炭化層および炭窒化
層を有し、その窒化層などの上にTi、Zrなどの少な
くとも1種とアルミニウムからなる炭化物、窒化物およ
び炭窒化物からなる被膜が設けられた鋼製品が開示され
ている。
【0013】特開平5−98422号公報では、高周波
直流電源を用いてプラズマを発生させ、窒素イオンを被
処理物に衝突させて硬化層を作り、その硬化層をセラミ
ックスで被覆する方法が開示されている。また、特開平
8−35075号公報では、金属部材をアンモニアガス
と水素ガスの雰囲気でイオン窒化し、この窒化層の上に
PVD法により硬質被膜を形成する方法が開示されてい
る。また、特開平8−296064号公報では、金属部
材をアンモニアガスと水素ガスの雰囲気中で窒化し、こ
の層上にPVD法により硬質被膜(TiAlN)を形成
する方法が開示されている。
【0014】しかしながら、これらの方法では、被膜の
耐酸化性は向上するものの、500〜600℃の高温と
室温程度の低温の熱サイクルに供した場合に、金型表面
に亀裂が発生し、耐熱亀裂性が低いという問題があっ
た。すなわち、従来の技術では、金型の耐熱亀裂性と耐
酸化性とを同時に満足させることが困難であった。
【0015】そこで、この発明は、上述のような問題点
を解決するためになされたものであり、耐熱亀裂性と耐
酸化性の双方が優れた金型を提供することを目的とする
ものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金型の耐
熱亀裂性と耐酸化性について種々の検討を行なった結
果、以下の結論を得た。
【0017】まず、耐熱亀裂性を向上させるためには、
窒化処理層や被膜の圧縮残留応力を最適化すればよい。
【0018】また、耐酸化性を向上させるためには、窒
化チタンをベースとし、アルミニウムを添加したセラミ
ックスの被膜、または窒化チタン膜と窒化アルミニウム
膜とを合計で20層以上積層した被膜を金型の表面に形
成すればよい。
【0019】以上の知見に基づき、本発明の1つの局面
に従った金型は、表面を有する鋼材と、鋼材の表面上に
形成された被膜とを備える。鋼材の表面の部分には、窒
化処理層が形成される。窒化処理層において、主表面か
らの深さが10μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値
1 は、0.2GPa≦F1 ≦1.5GPaの関係式を
満たす。被膜の組成式は(Ti1-X 、AlX )Nで表わ
される。Xは0.02≦X≦0.7の関係式を満たす。
被膜内での圧縮残留応力の平均値F2 は、0.5GPa
≦F2 ≦8GPaの関係式を満たす。
【0020】このような金型においては、窒化処理層内
での圧縮残留応力F1 と被膜内での圧縮残留応力F2
最適化されているため、熱亀裂が発生しにくくなり、耐
熱亀裂性が向上する。また、被膜内にアルミニウムが存
在するため、耐酸化性が向上する。
【0021】ここで、0.2GPa≦F1 ≦1.5GP
a、0.5GPa≦F2 ≦8GPa、0.02≦X≦
0.7としたのは、以下の理由による。
【0022】0.2GPa≦F1 および0.5GPa≦
2 としたのは、0.2GPa>F 1 または0.5GP
a>F2 となれば、圧縮残留応力が小さすぎて、熱亀裂
の発生を抑制できないからである。F1 ≦1.5GPa
およびF2 ≦8GPaとしたのは、F1 >1.5GPa
またはF2 >8GPaであれば、窒化処理層や被膜の持
つ圧縮強度の上限値を超え、窒化処理層や被膜自体が圧
壊してしまうからである。
【0023】0.02≦Xとしたのは、0.02>Xで
あれば、アルミニウムの添加量が小さすぎ、耐酸化性向
上の効果が得られないからである。X≦0.7としたの
は、X>0.7となれば、被膜の機械的特性、特に硬度
が著しく低下するため好ましくないからである。
【0024】また、被膜内でのアルミニウムの濃度は、
鋼材側の被膜の表面から遠ざかるにつれて高くなること
が好ましい。この場合、被膜のうち、鋼材から一番遠い
部分、すなわち、大気と接触する部分において、アルミ
ニウムの濃度が一番高くなる。そのため、被膜表面にア
ルミナからなる耐酸化性被膜が形成されるので、耐酸化
性が一層向上する。
【0025】また、金型は、積層された複数の被膜を備
え、被膜の組成は隣合う被膜の組成と異なることが好ま
しい。この場合、1つの層が摩耗しても次の層が露出す
ることにより、耐酸化性が持続する。また、積層された
8層以上の被膜を備え、被膜の組成は隣り合う被膜の組
成と異なることがさらに好ましい。
【0026】また、この発明の別の局面に従った金型
は、主表面を有する鋼材と、鋼材の主表面上に形成され
た被膜とを備える。鋼材の主表面近傍の部分には窒化処
理層が形成される。窒化処理層において、主表面からの
深さが10μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値F1
は0.2GPa≦F1 ≦1.5GPaの関係式を満た
す。被膜は、窒化チタン膜と窒化アルミニウム膜とを交
互に積層したものである。窒化チタン膜と窒化アルミニ
ウム膜との膜数の合計は20以上である。被膜内での圧
縮残留応力の平均値F2 は0.5GPa≦F2 ≦8GP
aの関係式を満たす。
【0027】このように構成された金型においては、窒
化処理層と被膜での圧縮残留応力が最適化されているた
め、熱亀裂が発生しにくく、耐熱亀裂性が向上する。さ
らに、被膜には窒化アルミニウム膜が含まれているた
め、被膜の耐酸化性が向上する。F1 およびF2 の範囲
を限定したのは、上記と同様の理由である。
【0028】また、鋼材と被膜との間には窒化チタン膜
が形成されていることが好ましい。この場合、窒化処理
層と被膜との密着性を窒化チタン膜が向上させることに
より、金型の寿命を向上させる。
【0029】また、窒化処理層の深さは50μm以上5
00μm以下であることが好ましい。窒化処理層の深さ
を50μm以上としたのは、50μm未満であれば、窒
化処理による効果が得られないからである。また、窒化
処理層の深さを500μm以下としたのは、500μm
を超えると著しく長時間の窒化処理が必要となり、製造
コストが大幅に上昇するからである。
【0030】また、被膜の厚さは0.5μm以上40μ
m以下であることが好ましい。被膜の厚さを0.5μm
以上としたのは、0.5μm未満であれば、被膜が薄す
ぎて、被膜による耐酸化性向上などの効果が得られない
からである。被膜の厚さを40μm以下としたのは、4
0μmを超えると、使用時の衝撃によって被膜が破壊し
やすくなるため好ましくない。
【0031】また、金型は、鉄系部品の温間もしくは熱
間鍛造用またはアルミニウム合金の鋳造用に用いられる
ことが好ましい。
【0032】
【実施例】(実施例1)JIS呼称SKT61の鋼から
なり、直径が40mmで高さが30mmの円筒形状のブ
ロックを準備した。このブロックに焼入および焼戻によ
る熱処理を施して、ブロックの表面のロックウェルCス
ケール硬度を52とした。このブロックの側面(曲面)
を研磨して、この面の十点平均粗さRZ を0.5mm以
下とした。このブロックの研磨面に手法(1)または
(2)の処理をして窒化層を形成した。次に、手法
(7)の処理をしてTiN膜を形成した。次に、手法
(3)〜(6)のいずれかの処理をして被膜を形成し3
0個のサンプルを作製した。
【0033】手法(1)タフトライド処理 ブロックを温度550℃の塩浴中に30分から20時間
保持し、ブロックの表面からの深さが25〜440μm
の窒化処理層としての窒化層を得た。ブロックの表面か
らの深さが10μmの部分の窒化層を研磨して除去し、
十点平均粗さR Z を0.5mmとした。また、タフトラ
イド処理の温度を変えることにより、窒化層の表面の残
留応力を変化させたものも製造した。
【0034】手法(2)イオン窒化処理 ブロックを以下の条件の処理槽内に保った。
【0035】温度:500℃ 窒素ガスの体積流量:60% 水素ガスの体積流量:40% 処理槽内の圧力:2Torr ブロックに印加した直流電圧:−100V ブロックに印加した高周波電力(13.56MHz):
1000W 保持時間:15分〜2時間 これにより、ブロックの表面からの深さが15〜100
μmの窒化層を得た。この窒化層の表面には有害な化合
物層は生成しなかったが、プラズマ処理によって窒化層
の表面が荒れていたので、この表面を軽くラッピング
し、表面の十点平均粗さ十点平均粗さRZ を0.5mm
とした。また、温度をさまざまに変えて、窒化層の表面
の残留応力をさまざまに変化させた。
【0036】手法(3)(Ti1-X 、AlX )N被膜形
ブロックを以下の条件の真空槽内に保持した。
【0037】蒸発源のアーク電流:100A ブロックの温度:450℃ ブロックの周囲のガス:窒素 真空槽内の圧力:30mTorr ブロックに印加した直流電圧:−200V 保持時間:30分 蒸発源の組成:(Ti1-X 、AlX ) これにより、アークイオンプレーティング法で(Ti
1-X 、AlX )Nからなる被膜をブロックの表面に形成
した。同様にして、保持時間を変えて、さまざまな厚み
の被膜を形成した。また、蒸発源の金属組成を変えるこ
とにより、Xを0.01〜0.75まで変化させた被膜
を形成した。さらに、ブロックの温度を変えることによ
り、被膜中の残留応力を変化させたものを形成した。
【0038】手法(4)TiN/AlN被膜形成 純チタン(不可避不純物を0.5重量%以下含む)から
なる蒸発源と、純アルミニウム(不可避不純物を0.5
重量%以下含む)からなる蒸発源とを用意した。これら
の2つの蒸発源を真空槽の内壁に互いに対向するように
配置した。2つの蒸発源の中心に回転テーブルを設け、
このテーブルにブロックを取付けた。アークイオンプレ
ーティング法に従い、ブロックを以下の条件の真空槽内
に保った。
【0039】蒸発源のアーク電流:100A ブロックの温度:450℃ ブロックの周囲のガス:窒素 真空槽内の圧力:30mTorr ブロックに印加した直流電圧:−200V テーブルの回転数:1rpm 保持時間:20分 これにより、TiN層とAlN層とを交互に積層し、T
iN層とAlN層がそれぞれ10層ずつ存在する被膜を
形成した。なお、TiN層の1層の厚さとAlN層の1
層の厚さは等しかった。
【0040】また、テーブルの回転数を0.4rpmと
し、TiN層とAlNの層の数がそれぞれ8層としたも
のを作成した。また、ブロックの温度を変えることによ
り、被膜中の残留応力を変化させたものも形成した。
【0041】手法(5)(Ti1-X 、AlX )N/(T
1-Y 、AlY )N被膜形成 組成が(Ti1-X 、AlX )で表わされる蒸発源と、組
成が(Ti1-Y 、Al Y )で表わされる蒸発源とを準備
した。この2つの蒸発源を手法4で用いた真空槽の内壁
に対向させて設置した。テーブルの回転数を0.3rp
mとした。その他の条件は手法4と同様とした。これに
より、(Ti1-X 、AlX )N層と(Ti1-Y 、A
Y )N層が交互にそれぞれ10層積層された被膜を形
成した。また、比較のため、テーブルの回転数を0.2
rpmとし、それぞれの層の数が5である被膜を形成し
た。また、ブロックの温度を変化させることにより、被
膜内の残留応力を変化させたものを形成した。
【0042】手法(6)(Ti1-X 、AlX )N傾斜組
成被膜形成 アルミニウムの割合がX原子%のチタン−アルミニウム
合金からなる蒸発源と、アルミニウムの割合がZ原子%
のチタン−アルミニウム合金からなる蒸発源とを用意し
た(X<Z)。この2つの蒸発源を300mmの間隔を
あけて配置し、ブロックを以下の条件の真空槽内に保っ
た。
【0043】蒸発源のアーク電流:100A ブロックの温度:450℃ ブロックの周囲のガス:窒素 真空槽内の圧力:30mTorr ブロックに印加した直流電圧:−200V 保持時間:60分 ブロックを2つの蒸発源の間をゆっくりと平行移動させ
た。これにより、ブロックに近い部分から遠ざかるに従
って、組成が(Ti1-X 、AlX )Nから(Ti1-Z
AlZ )Nへ傾斜するような被膜を形成した。また、ブ
ロックの温度を変化させることにより、被膜の残留応力
を変化させたものを形成した。
【0044】手法(7)TiN被膜形成 純チタンで作製された蒸発源を用いて手法3と同じ条件
で厚みが2μmのTiN被膜をブロックの表面に形成し
た。
【0045】それぞれのサンプルの窒化層および被膜の
残留応力をsin2 ψ法によるX線回折法を用いて調べ
た。ここで、sin2 ψ法について説明する。
【0046】sin2 ψ法におけるψという角度は、X
線回折におけるψ、すなわち、材料表面の法線を基準に
した方位を意味しており、ψ=0°であれば、材料表面
に対する法線の向きを、ψ=90°であれば、材料の表
面に平行な向きを指す。材料表面に平行な向き(ψ=9
0°)の圧縮応力は、同じ向きに材料を最も大きく縮ま
せ、垂直な方向(ψ=0°)に材料を最も大きく膨らま
せる。このときの材料の膨張・収縮の程度を格子定数の
変化に置換えると、格子定数の変化(歪み)とψとは以
下のように関係づけられる。
【0047】
【数1】
【0048】そこで、X線回折時にψを変化させながら
格子定数を計測し、sin2 ψを横軸に、格子定数を縦
軸にしてグラフを書くと、測定した点は直線上にのる。
この直線の傾きは材料固有のヤング率およびポアソン比
で決まる定数と、応力との積であるから、傾きより応力
の値が計算できる。
【0049】また、すべてのサンプルの表面を温度60
0℃の大気中に60秒保った後、温度25℃の水中に入
れて60秒保ち、これを1回の熱サイクルとした。この
熱サイクルを100回繰返した後、被膜または窒化層の
表面の損傷を光学顕微鏡にて観察した。これらの結果を
表1および表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】表1中「窒化層の形成手法」の欄において
「−」としたのは窒化層を形成しなかったことを示す。
また、「窒化層の残留応力」とは、鋼材の表面からの深
さが10μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値であ
る。また、この欄において、サンプル20〜24につい
ては、窒化処理をしなかったため、鋼材の表面からの深
さが10μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値を記載
した。また、「TiN膜の形成手法」の欄において、
「−」としたのは、TiN膜を形成しなかったことを示
す。
【0053】表2中、「被膜の組成」の欄で、「X/Y
をZ回積層」としたのは、まず、Xを形成し、その上に
Xと同じ厚さのYを積層し、これをZ回繰返したことを
意味する。そのため、Xについての膜の数はZであり、
Yについての膜の数もZであり、膜数の合計は2Zであ
る。また、「AからBへ傾斜」とは鋼材に近い部分での
組成がAであり、鋼材から離れるにつれて組成がBに近
づくことを示す。また、「被膜の残留応力」とは、被膜
内での圧縮残留応力の平均値を示す。この欄において、
サンプル18および20については、TiN膜の圧縮残
留応力の平均値を記載した。さらに、この欄において、
サンプル19については、被膜を形成しなかったので、
「−」とした。「全体厚み」とは、鋼材の表面から被膜
の上面(被加工物と接する面)までの厚さをいう。
【0054】表1および2から明らかなように、本発明
品では、熱亀裂の発生が大幅に抑制され、熱サイクル数
が多いことがわかる。
【0055】(実施例2)実施例1で製造した本発明品
であるサンプルNo.4、6、10、15と、比較品で
あるサンプルNo.21、22、25および28を、温
間鍛造用の金型パンチ(母材はJIS呼称SKH51の
鋼材からなり、そのロックウェルCスケール硬度53)
に処理し、実際に温間鍛造時の金型寿命の評価を行なっ
た。鍛造時には、金型の表面は、温度700℃まで加熱
されていた。被加工材の寸法精度が規定の範囲を超えた
時点を金型の寿命とした。寿命の評価結果を表3に示
す。
【0056】
【表3】
【0057】本発明品では、金型の寿命が大きく向上し
ていることが確かめられた。
【0058】(実施例3)実施例1で製造した本発明品
であるサンプルNo.4、6、10および15と、比較
品であるサンプルNo.21、22、25および28
を、Al鋳造用の鋳抜きピン(母材はJIS呼称SKD
61の鋼材からなりそのロックウエルCスケール硬度5
1)に処理し、Al合金の鋳造時の鋳抜きピンの寿命評
価を行なった。鋳造方法は重力鋳造とし、鋳造時には、
鋳抜きピンの表面は、温度670℃まで加熱されてい
た。被加工材の寸法精度が規定の範囲を超えた時点で金
型の寿命とした。寿命評価結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】本発明品では、鋳抜きピンの寿命が大きく
向上していることが確かめられた。
【0061】以上、この発明の実施例について説明した
が、本発明はさまざまに変形が可能である。たとえば、
残留圧縮応力や膜厚などは本発明の思想内で適宜変更す
ることができる。
【0062】今回開示された実施の形態はすべての点で
例示であって制限的なものでないと考えられるべきであ
る。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の
範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およ
び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
耐酸化性と耐熱亀裂性に優れ、寿命の長い金型を得るこ
とができる。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面を有する鋼材と、前記鋼材の表面上
    に形成された被膜とを備えた金型において、 前記鋼材の表面の部分には窒化処理層が形成され、 前記窒化処理層において、前記主表面からの深さが10
    μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値F1 は、0.2
    GPa≦F1 ≦1.5GPaの関係式を満たし、 前記被膜の組成式は(Ti1-X 、AlX )Nで表わさ
    れ、 前記Xは0.02≦X≦0.7の関係式を満たし、 前記被膜内での圧縮残留応力の平均値F2 は0.5GP
    a≦F2 ≦8GPaの関係式を満たすことを特徴とする
    金型。
  2. 【請求項2】 前記被膜内でのアルミニウムの濃度は、
    前記鋼材側の前記被膜の表面から遠ざかるにつれて高く
    なることを特徴とする、請求項1に記載の金型。
  3. 【請求項3】 積層された複数の前記被膜を備え、前記
    被膜の組成は、隣り合う前記被膜の組成と異なる、請求
    項1に記載の金型。
  4. 【請求項4】 積層された8層以上の前記被膜を備え、
    前記被膜の組成は、隣り合う前記被膜の組成と異なる、
    請求項1に記載の金型。
  5. 【請求項5】 主表面を有する鋼材と、前記鋼材の主表
    面上に形成された被膜とを備えた金型において、 前記鋼材の主表面近傍の部分には窒化処理層が形成さ
    れ、 前記窒化処理層において、前記主表面からの深さが10
    μmまでの部分の圧縮残留応力の平均値F1 は、0.2
    GPa≦F1 ≦1.5GPaの関係式を満たし、 前記被膜は、窒化チタン膜と窒化アルミニウム膜とを交
    互に積層したものであり、前記窒化チタン膜と前記窒化
    アルミニウム膜との膜数の合計は20以上であり、 前記被膜内での圧縮残留応力の平均値F2 は0.5GP
    a≦F2 ≦8GPaの関係式を満たすことを特徴とする
    金型。
  6. 【請求項6】 前記鋼材と前記被膜との間には窒化チタ
    ン膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5
    のいずれか1項に記載の金型。
  7. 【請求項7】 前記窒化処理層の深さは50μm以上5
    00μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6の
    いずれか1項に記載の金型。
  8. 【請求項8】 前記被膜の厚さは0.5μm以上40μ
    m以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれ
    か1項に記載の金型。
  9. 【請求項9】 当該金型は、鉄系部品の温間もしくは熱
    間鍛造用またはアルミニウム合金の鋳造用に用いられる
    ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載
    の金型。
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