JP3390776B2 - アルミニウムの拡散希釈を利用した鋼の表面改質方法 - Google Patents

アルミニウムの拡散希釈を利用した鋼の表面改質方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、各種金型を含む成形用
工具、せん断及び打抜き用工具、精密測定用工具、伝動
ギャ−、射出成形用スクリュ・シリンダ、その他エンジ
ン、油圧機などの機械構造物に用いられる部品等に使用
される鋼の表面を改質して、硬さ、耐摩耗性、耐かじり
性等に優れた性能を獲得する鋼の表面改質方法に関す
る。 【0002】 【発明の背景】Cr,Mo,V,Alなどの窒化物形成
元素を含む合金鋼を窒化すると高い硬さ値を持つ窒化物
が形成され、これらの添加元素の中でも特にAlを含む
鋼は非常に高い硬さと優れた耐摩耗性を有する窒化層を
形成することが知られている。一方、最近、材料の使用
環境はますます苛酷となり、様々な性能が要求されるよ
うになってきており、その一つとして金型をみると、
(1)硬さ、(2)耐摩耗性、(3)耐衝撃性、(4)耐かじり性、
(5)寸法精度、(6)表面の平滑性、(7)耐熱性、(8)耐食性
などが要求される。これらの内、例えば(1)または(2)と
(3)とは相反する性質であり、上記の全てまたはそれら
の多くを一つの材料のみで満足することは困難であっ
た。 【0003】 【従来の技術】従来、金属表面にアルミニウム冨化層を
形成する方法として利用されている技術には、(a)ア
ルミニウムまたはアルミニウム合金粉末、アルミナ粉末
および塩化アンモニウムによりなる混合粉末中に被処理
物を埋没し、これを高温に加熱することより成るカロラ
イズと呼ばれる粉末パック浸透法、(b)アルミニウム
またはAl-Si合金を液相線以上の温度に加熱し、この溶
融金属中に被処理物を浸漬し、引き上げることより成る
溶融めっき法、(c)鋼の間にアルミニウム箔を挟み込
み、これを真空中で加熱することによってアルミニウム
を鋼中に拡散浸透させ、加熱後、剥離材を分離すること
によって鋼の表面にアルミニウム冨化層を得る方法があ
る。 【0004】 【発明の解決しようとする課題】しかし、(a)粉末パ
ック浸透法においては、アルミニウムまたはアルミニウ
ム合金と被処理物が接触し、互いに拡散し、合金化する
ことによって被処理物の表面が著しく荒れてしまい、ま
た、両者の接触を防止する粉末パック中のアルミナは、
熱伝導率が小さく、所定温度への加熱及び冷却に長時間
を必要とし、加熱温度および加熱時間の制御が不正確に
なる。結果として、このことは表面アルミニウム濃度及
びアルミニウム浸透領域の深さの制御が著しく困難とな
ってしまう。 【0005】(b)溶融めっきにおいては、アルミニウ
ム浴から被処理物を引き上げる際、上下方向などの位置
によって付着層の厚さに差異が生じ、またアルミニウム
の酸化を防ぐフラックスと被処理物との反応及び被処理
物のアルミニウム浴中への流出によって、被処理物の表
面粗さの増大や寸法変化が生じる。さらに、溶融アルミ
ニウムめっき材の表面はFe2Al5を主とする高Al濃度の
合金層とめっき浴の付着層から構成されており、また工
業的に実施されている粉末パック浸透法では表面アルミ
ニウム濃度が45 mass%以上の高濃度化を避けることが
出来ない。したがって、これらの処理により形成される
表面層は脆弱で、機械的用途には不適である。 【0006】(c)による方法は、高アルミニウム含有
フェライト系ステンレス鋼とオ−ステナイト系ステンレ
ス鋼とのクラッド材の製造方法であり、原理的に言って
表面改質方法には適用できない。したがって、上記
(a)、(b)及び(c)に述べた、金属表面にアルミ
ニウム冨化層を形成する従来法においては、表面粗さ、
皮膜厚さの不均一性、被処理材の寸法変化、脆弱な高A
l濃度の化合物の形成を避けることができず、いずれ
も、機械部品等のアルミニウム冨化層の形成技術には適
用できないのが現状である。 【0007】本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、充分
に厚みを制御可能な手段でアルミニウムの薄膜を形成
し、それを一定温度以上で加熱すると、脆弱な高Al濃
度の化合物等を形成させることなく表面アルミニウム濃
度を低減させて、アルミニウムと該金属との固溶体が形
成されることを見い出し、ここに窒化処理を施すことで
極めて高機能の表面改質に成功したものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の対象とする材料
は、各種金型を含む成形用工具、せん断及び打抜き用工
具、精密測定用工具、伝動ギャ−、射出成形用スクリュ
・シリンダ、その他エンジン、油圧機などの機械構造物
に用いられる部品等であるが、これに限定されるもので
はなく、総量5%以下の添加元素を含む炭素鋼、低合金
鋼、又、総量5%以上の添加元素を含む高合金鋼が含ま
れる。 【0009】そして、本発明は、まず第一に蒸着、スパ
ッタリング、イオンプレ−ティング、電気めっき、溶融
めっきのいずれかの方法によって、皮膜望ましくは0.05
mm以下の薄膜の範囲で目標厚さに制御されたアルミニウ
ムめっき層またはアルミニウム合金めっき層を均一に被
処理材表面上に被覆する。本法では、アルミニウムの皮
膜の厚さを目標厚さに正確に制御することが、後述の固
溶体の形成、表面アルミニウム濃度、表面アルミニウム
冨化層の厚さ影響を及ぼす極めて重要な要因であり、そ
の為には、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレ−テ
ィング、電気めっき、溶融めっきのいずれか一つの手段
を用いる。 【0010】真空蒸着とは、金属蒸発源とその上部に配
置した被処理材とを真空容器内に置き、金属蒸発原子を
被処理材表面に堆積する方法をいい、堆積速度が蒸発源
と被処理材表面との角度及び両者の距離に強く依存する
という制約があるが、蒸発圧の高い金属にうまく薄膜が
形成できる。 【0011】スパッタリングとは、皮膜材料と被処理材
とを真空容器内に置き、前者を陽極、後者を陰極とした
両者の間に100V以上の電圧をかけ、グロ−放電を起こさ
せることによって、材料薄膜を被処理材表面に形成する
方法のことをいい、一般的に堆積方向が一方法のみであ
るという制約があるが、高融点金属の皮膜が容易に得ら
れる。 【0012】イオンプレ−ティングとは、金属蒸発源と
被処理材とを真空容器内に置き、容器壁を陽極、被処理
材を陰極とした両者の間に高電圧をかけることによって
蒸発原子などをイオン化し、それらを陰極に衝突させる
ことによって、金属または化合物皮膜を被処理材表面に
形成する方法のことをいい、つきまわりがよく、また密
着性の高い皮膜が得られる。 【0013】電気めっきとは、金属塩を含む溶液中でス
テンレス鋼等を陽極に、被処理材を陰極にして、直流電
流を流すことによって、対象とする金属皮膜を被処理材
表面に被覆する方法のことをいう。但し、皮膜金属がア
ルミニウムの場合、水溶液を用いることができないの
で、有機溶媒浴または低温融解塩が用いられ、密着性に
やや欠けるものの、つきまわりがよく、設備が廉価であ
るという利点がある。 【0014】溶融めっきとは、一般的に被処理材より融
点の低い金属を溶融し、その浴に被処理材を浸漬し、引
き上げることによって被処理材表面に金属皮膜を形成す
る方法をいう。しかし、通常行なわれているアルミニウ
ム浴またはアルミニウムを主成分とした合金浴を用いた
場合、めっき層は浴と同一組成の付着層と、浴と被処理
材との反応の結果生じた合金層から成り、また浴温度も
高いので合金層も厚く成長し、めっき層全体としての厚
さは本発明の目的からいって必要以上の厚く形成されて
しまう。そこで本発明においては、アルミニウムより融
点の低い鉛またはビスマスを主成分としたアルミニウム
との合金浴中に被処理材を浸漬し、引き上げることによ
って、付着層中のアルミニウム含有率を大幅に減少さ
せ、さらに浴温度の低下により合金層の成長を抑制した
皮膜形成方法を溶融めっきと称することとする。尚、鉛
およびビスマスは、それぞれ、アルミニウムとの間で、
さらに鉄との間においても互いに金属間化合物を形成す
ることなく、また固溶状態で互いに固溶することもない
金属であるので、形成される合金層中に鉛およびビスマ
スが痕跡以上に含まれることはない。また、付着層の主
成分である鉛またはビスマスは浸漬後の拡散希釈処理ま
たは他の物理的処理によって取り除かれる。 【0015】上記手段によって、アルミニウム皮膜は±
10%程度の範囲で厚みの制御を正確に行なうことがで
きる。 【0016】次に、これを当該めっき層のアルミニウム
の融点またはアルミニウム合金の液相線以上の温度で加
熱し、主としてアルミニウムを被処理材内部に拡散する
ことによって、表面アルミニウム濃度を30at%以下に低
減させたアルミニウムと該金属との固溶体を形成し、ア
ルミニウム冨化層を鋼表面上に形成する。これを詳述す
ると、めっき層と被処理材との間では、温度上昇過程お
よび一定温度加熱保持過程において、相互拡散すなわ
ち、主として当該めっき層の主要成分であるアルミニウ
ムの鋼内部への拡散と被処理材の成分である鉄の表面へ
の拡散によって、表面に至るまで合金が進行し、さらに
表面でのアルミニウム濃度が低下するとともにアルミニ
ウム冨化層の厚さが増大する過程が進行する。 【0017】上記過程をめっき層としてアルミニウムめ
っき及び被処理材として鉄を例にとり、図式的に説明す
る。図1(a)にFe-Al系平衡状態図を示す。鉄の表面
に厚さh1のアルミニウム薄膜をめっきした場合を考え
ると、アルミニウム濃度推移曲線は図1(b)の曲線1
によって示される。いま上記複合材を1000℃の温度で加
熱したとすると、溶融アルミニウムは鉄を溶解し、比較
的短時間で飽和濃度C2に達する。この段階では金属間化
合物は殆ど形成されず、濃度推移曲線は曲線2によって
示される。次に、飽和溶融アルミニウムと鉄の間では、
相互拡散により金属間化合物 FeAl3, Fe2Al5および FeA
l2 が形成され、また幅広い組成幅を持つ固溶体フェラ
イトも僅かばかりの厚さをもって出現する。この段階の
推移曲線は曲線3によって示される。 【0018】加熱を続けると、相互拡散によって表面濃
度が低下し、アルミニウム濃度の高い金属間化合物から
順に消失し、それとともにフェライト層が成長してい
く。この段階は曲線4によって示される。さらに加熱を
続けると、金属間化合物はすべて消失し、アルミニウム
を殆ど含有していない被処理材内部の1次固溶体合金、
オ−ステナイトと、表面から内部へと向うに従ってアル
ミニウム濃度が減少していく2次固溶体合金、フェライ
トのみとなり、加熱時間の経過とともに表面アルミニウ
ム濃度はさらに低下していく。この段階の推移曲線は曲
線5によって示される。すなわち、アルミニウム濃度推
移曲線は、加熱時間が長くなるにしたがって表面アルミ
ニウム濃度がC1,C2,C3,C4,C5と減少していき、逆にアル
ミニウム冨化層の厚さはh1,h2,h3,h4,h5と増大し
ていく傾向を示す。なお、加熱温度が912℃以下では、
オ−ステナイトは存在せず、アルミニウム濃度が連続的
に変化していくフェライトのみとなるのは図1(a)の
状態から明らかである。 【0019】この結果、表面アルミニウム濃度が30at%
以下より望ましくは23at%以下に低減され、非常に脆い
材料であるFeAl3, Fe2Al5および FeAl2 の金属間化合相
のいずれもが消失し、並びに規則相FeAlのほとんどが消
失し、固溶体が形成される。 【0020】このとき、上述のアルミニウムめっき又は
アルミニウム合金めっきの厚さに関し、充分に制御可能
なものとしたのは、この厚みが制御できず所定の厚み以
上となると、(a)FeAl3等の金属間化合物が残留し、
固溶体の合金層を形成できないものとなるか、(b)或
いは、金属間化合物の消失のために必要以上の加熱温度
や加熱時間を要し、非効率となるのを避けるためであ
る。そして、所定の厚みを望ましくは0.05 mm以下とし
たのは、例えば、アルミニウム冨化層の平均濃度を20at
%Alとした場合、冨化層の厚さは少なくとも約0.25mm
もあり、この程度の厚さであれば実用上、十分な厚さで
あると考えるからである。 【0021】又、加熱温度をアルミニウムの融点または
アルミニウム合金の液相線以上に限定したのは、液体中
における物質移動速度は固体中におけるそれに比較する
と飛躍的に大きいので、加熱温度がこの温度より低い場
合には拡散熱処理時間がかかりすぎ、経済的でないとい
う理由に基づく。 【0022】次に、上記加熱によるアルミニウムの拡散
希釈の工程は、焼入れ及び固溶化を行なう場合には、そ
の加熱工程と兼ね合わせて行なうことが可能である。即
ち、強度向上を目的として鋼には必要に応じて焼入れ及
び固溶化処理が行なわれるが、その際、鋼内に金属間化
合物等が存在すると、相互の熱膨張係数の違い等で歪が
発生し、焼入れ及び固溶化処理が困難となる。しかし、
本法では、上述の通り、金属間化合物や規則相が存在せ
ず、固溶体は同一結晶構造を有し、濃度が連続的に変化
していくため、熱膨張係数もそれに対応して連続的に変
化し、それらの熱膨張係数の間には大きな差異が認めら
れない。したがって、高温から水中に冷却するような急
激な冷却を行なっても、表面改質に剥離などの欠陥を生
じることはない。このため、焼入れ硬化可能な鋼に関し
ては焼入れ加熱温度で、また析出硬化系の鋼に関しては
固溶化熱処理温度で、アルミニウムを成膜した鋼を加熱
することによって、アルミニウム薄膜の鋼中への拡散希
釈過程と焼入れ過程または固溶化処理過程とを兼ねて行
なうことが可能となる。ここではもちろん、めっき層の
厚さ、加熱温度及び加熱時間をそれぞれ適当に選ぶこと
によって表面アルミニウム濃度及び冨化層の厚さを目的
の値に制御することができる。 【0023】そして、図1から判るように、アルミニウ
ムは典型的なフェライト安定化元素であり、又、Fe-C系
においてフェライトの存在領域の範囲を拡大する元素と
して知られていので、焼入れ可能な鋼に対して本法を採
用した場合、アルミニウム冨化層はフェライトであるの
で焼入れによって硬化されることはない。このことは焼
入れによって被処理品にひずみが生じたとしてもひずみ
矯正が容易であることを意味している。 【0024】次に、上記アルミニウム固溶体の冨化層を
形成した後、当該鋼に窒化処理を施す。種々の元素の中
でアルミニウムは、チタンと共に熱力学的にみて最も安
定な窒化物を形成し、またそれらの窒化物は高い硬さ値
及び優れた化学的安定性を持つので、この多量のアルミ
ニウムを含む固溶体の冨化層を窒化すると、非常に高い
硬さ値を持つ窒化層を形成し、著しい硬さ、耐摩耗性、
耐衝撃性等に優れた表面改質層を得ることができる。こ
の場合、炭化物被覆法、イオンプレ−ティング法、CVD
法のように炭化物、窒化物等の化合物が層として形成さ
れるのではなく、窒化物は窒化層中に分散析出した状態
にある。比較的窒化時間を長くとると、窒素はアルミニ
ウム冨化層を拡散通過した後、内部被処理材に到達し、
内部被処理材そのものも窒化していくことになる。した
がって、窒化時間が十分な場合には硬さはアルミニウム
濃度よりも広い範囲で連続的に変化している推移曲線を
示し、前述の分散析出状態とあいまって、密着性のよい
表面改質層が本方法によって得られる。 【0025】以上は窒化処理を施した鋼の表面改質を説
明したが、本発明の別の構成としては、窒化処理を施す
ことなく、鋼の表面に、蒸着、スパッタリング、イオン
プレ−ティング、電気めっき、溶融めっきから成る群の
いずれか一つによって、アルミニウムまたはアルミニウ
ムを主とした合金から成る薄膜を形成し、これを真空
中、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気中でアルミニウ
ムの融点またはアルミニウム合金の液相線以上の温度に
加熱拡散することによって、表面アルミニウム濃度を30
at%以下に低減させ、アルミニウムと該金属との固溶体
を形成することで構成される。この構成の目的は、比較
的多量のアルミニウムを含むAl鋼は、高温耐酸化性、
特にV2O5,PbO及び S化合物などを含む雰囲気中での高酸
化性に優れており、また19at%以上を含有するAl鋼
は、高濃度の塩素イオンを含む中性またはアルカリ性水
溶液中において優れた耐塩性を有することを利用したも
のである。上記処理によって、硬度においては前述の鋼
に劣るものの、鋼表面が耐酸化性、耐塩性を獲得し、海
水を使用する機械、プラント類、海水中で使用する機械
部品、工具等に好適なものとなる。 【0026】 【発明の効果】以上の構成によって本発明は、表面粗
さ、皮膜厚さの不均一性、寸法変化、脆弱な高Al濃度
化合物の残留等の不都合を生じることなく鋼の表面にア
ルミニウム冨化層を形成することができ、(1)硬さ、(2)
耐摩耗性、(3)耐衝撃性、(4)耐かじり性、(5)寸法精
度、(6)表面の平滑性、(7)耐熱性、(8)耐食性等に優れ
た著しく高機能な表面改質層を得ることができるという
優れた効果を奏する。その際、硬化する窒化処理前にペ
−パ−で削り出しをすれば、容易に平滑化作業が行なえ
る。又、焼入れ工程を伴うものにはアルミニウムの拡散
希釈工程と該焼入れ工程とを兼ねて行なえるので、製法
的に効率的で経済性を備える等の利点を備えた極めて有
利な発明である。 【0027】 【実施例】 (実施例1)寸法22×32×6mmを有する合金工具鋼SKD61
(分析成分値:C/0.39,Si/0.98,Mn/0.47,P/0.021,S/0.0
09,Cr/5.52,Mo/1.26,V/0.93 mass%)の片側表面を鏡面
状に研磨し、アセトン中での超音波洗浄で脱脂した。そ
の研磨面上に、高周波加熱方式の蒸着装置を用いて、試
料表面上に1.5μm厚さのアルミニウム薄膜を形成し
た。この試料を5%H2−95%N2雰囲気の縦形真空炉
中に装入し、温度1025℃で25min加熱保持し、続いて炉
の温度を850℃まで下げ、水焼入れした。検鏡の結果、
水焼入れによってアルミニウム冨化層が剥離、欠落およ
び亀裂の欠陥を生じることはなく、またアルミニウム冨
化層下部の組織は焼入れによる正常なマルテンサイト組
織を示した。次に、この試料を、イオン窒化装置を用い
て、全圧を400 Pa 一定とし、水素/窒素比が7/3の混合
ガス中で、650℃×4 hr 窒化した。イオン窒化後の表面
硬さはHV 1240であった。 【0028】(実施例2)寸法22×19×6mmを有する実
施例1と同じ合金工具鋼を研磨及び脱脂した後、その研
磨面上に、高周波マグネトロンスパッタリング装置を用
いて4.1厚さのアルミニウム薄膜を形成した。この際、
試料の加熱は行なわなかった。次に、これをロ−タリ−
ポンプ及び拡散ポンプを用いて2×10-3Torr以下の真空
に排気した石英管中で、温度1000℃で1 hr加熱保持し
た。その後、この試料を、実施例1と同じ全圧、水素/
窒素比、温度で2 hr イオン窒化した。その試料断面に
おけるアルミニウム濃度推移曲線と硬さ推移曲線とを図
1に示す。一方、上記試料面に反対面すなわちアルミニ
ウム冨化層を形成していない試料面に関して、イオン窒
化後の硬さ推移曲線を図2に示す。図1及び図2から、
SKD61にアルミニウム冨化することによって、それを行
なっていないダイス鋼に比較してイオン窒化による硬さ
上昇が著しいこと、HV 1400程度の非常に高い硬さ値を
示す領域に引続き、SKD61そのもののイオン窒化による
高硬度領域が存在することが明らかである。また図1の
アルミニウム濃度推移曲線と硬さ推移曲線の比較からア
ルミニウム浸透領域と約HV 1400の高い硬さを示す領域
とがほぼ対応していることがわかる。すなわち、被処理
材表面の著しい硬さ上昇は材料表面においてアルミニウ
ムが冨化されることによるものであることが明らかであ
る。 【0029】(実施例3)寸法20×32×6 mm を有する
実施例1と同じ合金工具鋼を実施例1と同様に研磨およ
び脱脂した後、高周波励起方式のイオンプレ−ティング
装置を用いて、試料表面上に0.98μm厚さのアルミニウ
ム薄膜を形成した。なお、被覆処理直前にArイオンボン
バ−ドによる被覆面の清浄を行なった。この試料を、2
×10-3Pa以下に排気した縦型真空焼入れ炉中で、試料長
手方向が重力方向と一致するように、ワイヤ−に吊る
し、温度1025℃で25min加熱保持し、次に炉中雰囲気を
アルゴンに切り替え、油中に焼入れした。この焼入れ試
料の断面硬さ推移曲線とアルミニウム濃度推移曲線を図
3に示す。図において、アルミニウム冨化層の硬さは内
部の焼入れ硬さより低く、約HV 200の硬さを示す。次
に、この試料を実施例1と同じ全圧、水素/窒素比、温
度で4 hr イオン窒化した。その試料断面における硬さ
推移曲線をアルミニウム濃度推移曲線とともに図4及び
図5に示す。図から明らかなように、窒化後は、逆にア
ルミニウム冨化層内の硬さは試料内部よりも著しく高い
値を示し、続いて冨化層よりも内部にはいるとHV 900〜
1000のSKD61そのものの硬さを示す硬さ推移曲線を描
く。 【0030】(実施例4)寸法20×32×6mmを有する炭
素鋼S45Cの両側表面を耐水研磨紙で#1200に仕上げ、ア
セトン中で超音波脱油した後、5%塩酸で酸洗したもの
をめっき用試料として用いた。次に、窒素雰囲気グロ−
ブボックス内で67mol%AlCl3と33mol%ブチルピリジニ
ウムクロリド(BPC)とを混合することによって常温で
溶融塩を作製し、さらに99.99%アルミニウムワイヤ−
を用いてFeおよびZnなどの不純物を除去したものをめっ
き浴として用いた。陽極として99.99%アルミニウム板
を使用し、窒素雰囲気中で温度20℃およびめっき電流と
して直流1A/dm2の条件で電気めっきを行ない、3.2μm厚
さのアルミニウムを試料表面上に析出させた。その後、
実施例2と同様な条件で真空排気した石英管中で1000℃
で1 hr加熱保持後、炉冷し、さらに実施例1と同様な条
件で580℃×4 hrイオン窒化した。なお、検鏡の結果、
この試料のAl冨化層の厚さは35μmであった。その後、
#1200の研磨紙で試料表面を研磨し、試料表面を水平方
向に保持し、鉛直方向から荷重100gを負荷することによ
って試料表面の硬さを測定した。その平均硬さはHV1290
であった。 【0031】(実施例5)寸法20×32×6mmを有する炭
素鋼S45Cの両側表面を耐水研磨紙で#1200に仕上げ、ア
セトン中で超音波脱油した後、5%塩酸で酸洗したもの
をめっき用試料として用いた。次に、窒素雰囲気グロ−
ブボックス内で67mol%AlCl3と33mol%ブチルピリジニ
ウムクロリド(BPC)とを混合することによって常温で
溶融塩を作製し、さらに99.99%アルミニウムワイヤ−
を用いてFeおよびZnなどの不純物を除去したものをめっ
き浴として用いた。陽極として99.99%アルミニウム板
を使用し、窒素雰囲気中で温度20℃およびめっき電流と
して直流1A/dm2の条件で電気めっきを行ない、3.2μm厚
さのアルミニウムを試料表面上に析出させた。その後、
実施例2と同様な条件で真空排気した石英管中で1000℃
で1 hr加熱保持し、炉冷した。なお、この試料の表面ア
ルミニウム濃度は8.6 at%であり、アルミニウム冨化層
の厚さは厚さは43μmであった。その後、塩水噴霧試験
を行なった。試験時間は24hrで、試験片の形状及び寸法
以外JIS Z2371塩水噴霧試験方法に従って試験を行っ
た。試験後の試料は、肉眼で腐食を認めることができな
い、レイティングナンバ10の優れた耐食性を示した。 【0032】(実施例6)寸法20×32×6mmを有する炭
素鋼S45Cを、実施例3と同様の条件で、脱油および酸洗
いを行ない、その後、この試料を80℃に加熱した5%NaF
+5%KCl水溶液中に5min間浸漬した後、直ちに熱風で乾
燥した。次に上記試料を、5%H2-95%N2雰囲気中で、46
0℃に保持したBi-Al浴中に1hr浸漬し、浴から引き上げ
溶融めっきした。なお、上記合金浴は、純度99.5%のア
ルミニウム製るつぼ中に純度99.99%のビスマスを充填
し、これを580℃×4hr加熱することによって、予め、飽
和Alとしておいた。X線回析結果に従うと、この試料の
表面層は主としてBi及びFe2Al5からなることが明らかと
なった。また、検鏡の結果、Fe2Al5の厚さは約4μmの厚
さであった。その後、実施例2と同様の条件で真空排気
した石英管中で1000℃で1 hr加熱保持後、炉冷し、さら
に実施例1と同様の条件で580℃×4 hrイオン窒化し
た。検鏡の結果、この試料のAl冨化層の厚さは35μmで
あり、またEPMA分析結果は試料のいずれかの箇所におい
てもビスマスを検出することはなかった。これは、2元
系平衡状態図に従うと、ビスマスがアルミニウムおよび
鉄のいずれの元素の間にも金属間化合物を形成すること
なく、またいずれの元素に関しても互に全く固溶し合わ
ないこと、さらにビスマスの上記圧が非常に高いもので
あることに基づくものであることが明らかである。上記
試料に関して、本試料と同様な寸法を有する炭素工具鋼
SK3の焼入れ材とともに、スガ摩耗試験機NUS-ISO-3を用
いて摩耗試験を行なった。図6にその結果を示す。図6
において縦軸の値は単位面積当たりの質量減少を、横軸
のそれはペ−パ上における試料の往復運動回数を示す。
この結果から、本試料の摩耗減量はSK3焼入れ材に比較
して約1/10の値であり、優れた耐摩耗性を有することが
明らかである。
【図面の簡単な説明】 【図1】(a)がFe-Al系平衡状態図で、(b)がAl濃
度推移と表面からの距離との関係を示すグラフ。 【図2】アルミニウム薄膜を拡散希釈した後イオン窒化
したダイス鋼の表面からの距離と硬さ及びアルミニウム
濃度との関係を示すグラフ。 【図3】イオン窒化したダイス鋼の表面からの距離と硬
さ及びアルミニウム濃度との関係を示すグラフ。 【図4】アルミニウム薄膜を拡散希釈した後焼入れした
ダイス鋼の表面からの距離と硬さ及びアルミニウム濃度
との関係を示すグラフ。 【図5】図4の工程後にイオン窒化したダイス鋼の表面
からの距離と硬さ及びアルミニウム濃度との関係を示す
グラフ。 【図6】アルミニウム薄膜を拡散希釈した後、イオン窒
化した炭素鋼と焼入れ炭素工具鋼とに関する摩耗試験の
比較を示すグラフ。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋼の表面に、蒸着、スパッタリング、イ
    オンプレーティング、電気めっき、及び溶融めっきから
    成る群のいずれか一つによって、アルミニウム又はアル
    ミニウムを主とした合金から成る皮膜を形成し、これを
    真空中又は不活性ガス或いは還元性ガス雰囲気中でアル
    ミニウムの融点またはアルミニウム合金の液相線以上の
    温度に加熱拡散することによって、表面アルミニウム濃
    度を30at%以下に低減させたアルミニウムと該金属
    との固溶体を形成し、急冷操作した後、これに窒化処理
    を施すことを特徴とする鋼の表面改質方法。
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