WO2017086422A1 - 冷凍機用潤滑油組成物、冷凍機用組成物、潤滑方法及び冷凍機 - Google Patents

Abstract

本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物であって、ポリオキシアルキレングリコールを主成分とする基油（Ａ）と、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個（ただし、エーテル結合は０個であってもよい）で、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール（Ｂ）とを含有する。

Description

冷凍機用潤滑油組成物、冷凍機用組成物、潤滑方法及び冷凍機

　本発明は、二酸化炭素を含む冷媒に使用される冷凍機用潤滑油組成物、二酸化炭素を含む冷媒と冷凍機用潤滑油組成物を含有する冷凍機用組成物、これらを使用した潤滑方法及び冷凍機に関する。

　一般に冷凍機は、圧縮機、凝縮器、膨張機構（膨張弁など）、蒸発器、あるいは更に乾燥器から構成され、冷媒と冷凍機油の混合物が密閉された系内を循環する構造となっている。冷凍機において、冷媒と潤滑油の混合液体は、圧縮機内では高温、蒸発器等の内部では低温となるため、低温から高温まで幅広い温度領域で使用されている。

　近年、冷凍機に使用される冷媒としては、オゾン層を破壊しない冷媒として塩素を含有しない冷媒が用いられており、例えば、１，１，１，２－テトラフルオロエタン（Ｒ１３４ａ）、ジフルオロメタン（Ｒ３２）、ペンタフルオロエタン（Ｒ１２５）、１，１，１－トリフルオロエタン（Ｒ１４３ａ）などに代表されるフッ化炭化水素系冷媒が使用されている。
　また、地球温暖化係数が低い冷媒として、フッ化炭化水素系冷媒の中でも、１，３，３，３－テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ１２３４ｚｅ）、２，３，３，３－テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ１２３４ｙｆ）等の不飽和フッ化炭化水素系冷媒が、例えばカーエアコン等で使用されるようになっている。また、環境や人体に対して無害で、入手が容易で、さらには、回収が不要などの点から、給湯機などの一部の用途では二酸化炭素が冷媒として使用されることもある。

　一方で、冷凍機油は、使用される冷媒によって求められる要求特性が異なり、各冷媒に応じて、基油、及び基油に添加される添加剤の開発が行われている。例えば、不飽和フッ化炭化水素系冷媒は、熱及び化学安定性が低いため、高速高負荷条件下では、冷媒と基油とが重合してワックス分を生成することがある。そのため、例えば、特許文献１～４では、不飽和フッ化炭化水素系冷媒の分解、及び重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成を防止するために、エチレングリコール等の重合パラフィン防止剤が添加されることが検討されている。

特開２０１１－０２１８７０号公報 特開２０１１－０２１８７１号公報 特開２０１１－０５７８８５号公報 特開２０１１－０５８７４７号公報

　ところで、環境に無害である点等から、二酸化炭素冷媒の用途を広げることが検討されつつあり、例えばカーエアコンでの使用も検討されている。カーエアコン等の冷凍機において、二酸化炭素を冷媒とした場合、フッ化炭化水素系冷媒を用いた場合に比べて、吐出圧が高く、圧縮機の摺動部位において、高温、高速環境下での摩擦が想定される。そのため、二酸化炭素冷媒に使用される冷凍機油には、更なる潤滑性の向上が求められる。

　また、二酸化炭素冷媒用の冷凍機油では、潤滑性等を向上させるために、例えば、基油としてポリオキシアルキレングリコール（ＰＡＧ）を使用し、かつ添加剤として摩擦調整剤を添加することも検討されている。しかし、ＰＡＧ系の基油に摩擦調整剤を加えた場合、低温環境下で摩擦調整剤が析出して、実用化することが難しいという問題がある。

　本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を冷媒に使用した場合において、冷凍機の圧縮機運転時における摺動部位の潤滑性を確保することを課題とし、さらには、潤滑性等を向上させるために冷凍機油に摩擦調整剤を添加した場合に、摩耗調整剤が低温環境下で析出することを抑制することも課題とする。

　本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオキシアルキレングリコール系の基油に、所定のアルコールを配合することで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の冷凍機用潤滑油組成物を提供する。
（１）二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物であって、
　ポリオキシアルキレングリコールを主成分とする基油（Ａ）と、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個で（ただし、エーテル結合は０個であってもよい）、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール（Ｂ）とを含有する冷凍機用潤滑油組成物。
　さらに、本発明は、以下の冷凍機用組成物、冷凍機、潤滑方法、及び冷凍機用潤滑油組成物の製造方法を提供する。
（２）上記（１）に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とを含む冷凍機用組成物。
（３）上記（１）に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とが充填された冷凍機。
（４）上記（１）に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とが充填された冷凍機において、前記冷凍機用潤滑油組成物によって冷凍機の摺動部位を潤滑する潤滑方法。
（５）二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物の製造方法であって、
　ポリオキシアルキレングリコールを主成分とする基油（Ａ）に、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個で（ただし、エーテル結合は０個であってもよい）、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール（Ｂ）を配合する冷凍機用潤滑油組成物の製造方法。

　本発明によれば、ポリオキシアルキレングリコール系の基油に、所定のアルコールを配合することで、圧縮機等における摺動部位の潤滑性を確保することができる。また、アミドアミン化合物等の摩擦調整剤が添加されている場合には、摩耗調整剤により潤滑性等を向上させつつ、その摩耗調整剤が低温環境下で析出することも抑制する。

　以下、本発明について、実施形態を用いて説明する。
＜冷凍機用潤滑油組成物＞
　本発明の一実施形態に係る冷凍機用潤滑油組成物（冷凍機油）は、二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物であって、基油（Ａ）と、アルコール（Ｂ）とを含有する。

［基油（Ａ）］
　基油（Ａ）は、ポリオキシアルキレングリコール（以下、「ＰＡＧ」ともいう）を主成分とするものである。本実施形態では、基油（Ａ）としてＰＡＧを使用することで、二酸化炭素を冷媒に使用した場合における高温環境下の油膜の保持という点で有利である。
　ＰＡＧは、１００℃における動粘度が、１～５０ｍｍ²／ｓであることが好ましい。ＰＡＧは、動粘度が上記範囲内となることで、省燃費性や低温下での流動性を確保しつつ、冷凍機用潤滑油組成物の潤滑性を確保しやすくなる。

　上記観点から、ＰＡＧの１００℃における動粘度は、３～３０ｍｍ²／ｓがより好ましく、５～２５ｍｍ²／ｓがさらに好ましい。
　また、ＰＡＧの数平均分子量は、上記動粘度に応じて適宜調整されるが、３００～５０００であることが好ましく、５００～５０００がより好ましく、７００～５０００がさらに好ましい。
　さらに、ＰＡＧの粘度指数は１００以上であることが好ましい。粘度指数が１００以上であることで、冷凍機用潤滑油組成物を低温から高温にわたって適切な粘度に維持しやすくなる。ＰＡＧの粘度指数は、１２０以上であることがより好ましく、１５０以上であることがさらに好ましい。また、ＰＡＧの粘度指数は、その上限が特に限定されないが、一般的には４００以下となる。

　ＰＡＧとしては、より具体的には、下記一般式（１）で表される化合物が挙げられる。
　　　　Ｒ^１［－（ＯＲ^２）_ｍ－ＯＲ^３］_ｎ　　　（１）
（式中、Ｒ^１は水素原子、炭素数１～１０の１価の炭化水素基、炭素数２～１０のアシル基、結合部位２～６個を有する炭素数１～１０の炭化水素基、又は炭素数１～１０の酸素含有炭化水素基、Ｒ^２は炭素数２～４のアルキレン基、Ｒ^３は水素原子、炭素数１～１０の炭化水素基、炭素数２～１０のアシル基、又は炭素数１～１０の酸素含有炭化水素基、ｎは１～６の整数、ｍはｍ×ｎの平均値が６～８０となる数を示す。）

　上記一般式（１）において、Ｒ¹及びＲ³の各々における炭素数１～１０の１価の炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該炭化水素基はアルキル基が好ましく、その具体例としては、メチル基、エチル基、ｎ－プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。上記１価の炭化水素基は、炭素数を１０以下とすることで、例えば冷媒との相溶性が良好になりやすい。１価の炭化水素基の炭素数は、より好ましくは１～４である。
　また、Ｒ¹及びＲ³の各々における炭素数２～１０のアシル基が有する炭化水素基部分は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基の炭化水素基部分は、アルキル基が好ましく、その具体例としては、上述のＲ^１及びＲ^３として選択し得るアルキル基のうち炭素数１～９のものが挙げられる。該アシル基の炭素数を１０以下とすることで、冷媒との相溶性が良好となる。好ましいアシル基の炭素数は２～４である。
　Ｒ¹及びＲ³が、いずれも炭化水素基又はアシル基である場合には、Ｒ¹とＲ³は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。

　Ｒ¹が結合部位２～６個を有する炭素数１～１０の炭化水素基である場合、この炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位２個を有する炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。その他の炭化水素基としては、ビフェノール、ビスフェノールＦ、ビスフェノールＡなどのビスフェノール類から水酸基を除いた残基を挙げることができる。また、結合部位３～６個を有する炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、１，２，３－トリヒドロキシシクロヘキサン、１，３，５－トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
　この脂肪族炭化水素基の炭素数を１０以下とすることで、冷媒との相溶性が良好となる。この脂肪族炭化水素基の好ましい炭素数は２～６である。

　さらに、Ｒ^１及びＲ^３の各々における炭素数１～１０の酸素含有炭化水素基としては、エーテル結合を有する鎖状の脂肪族基や環状の脂肪族基（例えば、テトラヒドロフルフリル基）などを挙げることができる。
　上記Ｒ^１及びＲ^３の少なくとも一つはアルキル基、特に炭素数１～４のアルキル基であることが好ましい。

　前記一般式（１）中のＲ^２は炭素数２～４のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。１分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、２種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、１分子中に少なくともオキシプロピレン基単位を含むものが好ましく、オキシアルキレン単位中に５０モル％以上のオキシプロピレン基単位を含むものがより好ましく、８０～１００モル％のオキシプロピレン基単位を含むものがさらに好ましく、オキシプロピレン基単位のみからなるものが特に好ましい。
　前記一般式（１）中のｎは１～６の整数で、Ｒ¹の結合部位の数に応じて定められる。例えばＲ¹がアルキル基やアシル基の場合、ｎは１であり、Ｒ¹が結合部位２，３，４，５及び６個を有する脂肪族炭化水素基である場合、ｎはそれぞれ２，３，４，５及び６となる。
　また、ｍはｍ×ｎの平均値が６～８０となる数である。該平均値は８０以下となることで、基油として潤滑性能を発揮することができ、冷媒との相溶性が良好になる。ただし、ｍ×ｎの平均値は、上記した基油の粘度が所望の範囲となるように適宜設定される。

　また、ｎは、好ましくは１～３の整数、より好ましくは１である。
　ｎが１である場合には、Ｒ^１及びＲ^３のいずれか一方又は両方が、炭素数１～４のアルキル基であることが好ましく、両方が炭素数１～４のアルキル基であることがより好ましい。また、ｎが２以上である場合にも、１分子内に複数あるＲ^３の少なくとも１つが炭素数１～４のアルキル基であることが好ましく、全てが炭素数１～４のアルキル基であることがより好ましい。この際のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられるが、最も好ましくはメチル基である。プロピル基及びブチル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
　なお、ｎが２以上の場合には、１分子中の複数のＲ³は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
　ＰＡＧのより好適な具体例としては、ＯＲ^２がオキシプロピレン基、ｎが１であるとともに、Ｒ^１及びＲ^３がいずれも炭素数１～４のアルキル基であるものが挙げられ、中でもＲ^１及びＲ^３がいずれもメチル基であるポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテルが最も好ましい。
　以上説明したＰＡＧは、１種を単独で使用してもよいし又は２種以上を併用してもよい。

　ＰＡＧは、冷凍機用潤滑油組成物に含有される基油（Ａ）の主成分となるものである。ＰＡＧの量は、基油（Ａ）全量に対して、５０～１００質量％であればよいが、好ましくは７０～１００質量％、より好ましくは９０～１００質量％であり、最も好ましくは１００質量％である。すなわち、基油（Ａ）はＰＡＧ単体からなることが最も好ましい。

　冷凍機用潤滑油組成物は、基油（Ａ）として、ＰＡＧ以外の成分を含有してもよい。そのような基油としては、ＰＡＧ以外の合成油、及び鉱油が挙げられる。
　ＰＡＧ以外の合成油としては、例えば、ポリ－α－オレフィン、α－オレフィンコポリマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ＧＴＬ副生ワックス異性化油、ＰＡＧ及び後述するアルコール（Ｂ）以外のエーテル系化合物、ポリエステル系化合物などが挙げられる。ＰＡＧ及び後述するアルコール（Ｂ）以外のエーテル系化合物としては、ポリビニルエーテル（ＰＶＥ）、ポリオキシアルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルの構造を有する共重合体等が挙げられる。エステル系化合物としては、脂肪族モノエステル、脂肪族ジエステル、脂肪族トリエステル、及び脂肪族ポリオールエステル等が挙げられる。鉱油としては、例えばパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、中間基系鉱油などが挙げられる。これら合成油、及び鉱油は、１種単独で使用してもよいし、２種以上を併用してもよい。
　これらＰＡＧ以外の基油も、ＰＡＧと同様に、１００℃における動粘度が、１～５０ｍｍ²／ｓであることが好ましく、３～３０ｍｍ²／ｓがより好ましく、５～２５ｍｍ²／ｓがさらに好ましい。
　なお、基油（Ａ）の含有量は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、好ましくは７０～９９．７質量％、より好ましくは８０～９９．４質量％、さらに好ましくは９０～９９．０質量％である。

［アルコール（Ｂ）］
　アルコール（Ｂ）は、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個で、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール化合物である。冷凍機用潤滑油組成物は、アルコール（Ｂ）を含有することで、耐焼き付き性等が向上し、潤滑性が良好になる。また、後述するアミドアミン化合物（Ｃ）が含有される場合には、低温環境下においてアミドアミン化合物（Ｃ）が析出することを防止する。
　アルコール（Ｂ）は、水酸基とエーテル結合の合計が２個未満又は４個以上になったり、水酸基を含有しなかったりすると、潤滑性が十分に向上せず、さらには、後述するアミドアミン化合物（Ｃ）の析出を適切に防止できないこともある。
　なお、アルコール（Ｂ）は、エーテル結合を有していなくてもよく（すなわち、エーテル結合が０個）、エーテル結合の数が０～２個となるものである。
　アルコール（Ｂ）は、潤滑性を良好にし、かつ化合物（Ｃ）の析出をより有効に防止する観点から、水酸基の数は１又は２個であることが好ましい。また、エーテル結合の数も１又は２個であることが好ましい。

　また、アルコール（Ｂ）は、炭素数が２～１２であることが好ましい。アルコール（Ｂ）は、炭素数を２以上とすることで、潤滑性を良好にしやすくなる。また、１２以下とすることで、アミドアミン化合物（Ｃ）の析出を防止しやすくなる。潤滑性及び耐磨耗性を向上させ、アミドアミン化合物（Ｃ）の析出をより防止しやすくするために、アルコール（Ｂ）の炭素数は、３～１０がより好ましく、６～８がさらに好ましい。

　アルコール（Ｂ）としては、アルカンジオール、水酸基２個とエーテル結合を１個有するジオールモノエーテル化合物、水酸基１個とエーテル結合を２個有するモノオールジエーテル化合物が挙げられ、これらの中ではジオールモノエーテル化合物及びモノオールジエーテル化合物が好ましい。

　アルカンジオールとしては、炭素数２～１２のアルカンジオールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、１，３－プロパンジオール、１，４－ブタンジオール、１，２－ブタンジオール、２－メチル－１，３－プロパンジオール、１，５－ペンタンジオール、１，６－ヘキサンジオール、２－エチル－２－メチル－１，３－プロパンジオール、２－メチル－２，４－ペンタンジオール、１，７－ヘプタンジオール、２－メチル－２－プロピル－１，３－プロパンジオール、２，２－ジエチル－１，３－プロパンジオール、１，８－オクタンジオール、１，９－ノナンジオール、２－ブチル－２－エチル－１，３－プロパンジオール、１，１０－デカンジオール、１，１１－ウンデカンジオール、１，１２－ドデカンジオールが挙げられる。

　ジオールモノエーテル化合物としては、以下の式（２）で表される化合物が挙げられる。
　　　　ＨＯ－Ｒ⁴－Ｏ－Ｒ⁵－ＯＨ　　　　　　（２）
　式（２）において、Ｒ⁴及びＲ⁵は、炭素数２～６の２価の飽和脂肪族炭化水素基であり、Ｒ⁴及びＲ⁵は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Ｒ⁴及びＲ⁵は、直鎖状でもよいし分岐鎖状でもよい。式（２）において、Ｒ⁴及びＲ⁵の炭素数は、より好ましくは２～４、さらに好ましくは２～３、最も好ましく３である。
　ジオールモノエーテル化合物の具体例としては、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジブチレングリコールが挙げられる。

　モノオールジエーテル化合物としては、以下の式（３）で表される化合物が挙げられる。
　　　　ＨＯ－Ｒ⁶－Ｏ－Ｒ⁷－Ｏ－Ｒ⁸　　　　　　（３）
　式（３）において、Ｒ⁶及びＲ⁷は、炭素数２～４の２価の飽和脂肪族炭化水素基であり、Ｒ⁶及びＲ⁷は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Ｒ^６、Ｒ⁷は、直鎖状でもよいし分岐鎖状でもよい。Ｒ⁸は炭素数１～８のアルキル基である。Ｒ⁸は、直鎖状又は分岐鎖状でもよいし、環状構造を有してもよい。ただし、Ｒ⁶～Ｒ⁸の炭素数の合計は、１２以下である。
　式（３）において、Ｒ⁶及びＲ⁷の炭素数は２～３が好ましく、２がより好ましい。Ｒ⁸の炭素数は、２～８がより好ましく、３～６がさらに好ましい。
　モノオールジエーテル化合物の具体例としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ２－エチルへキシルエーテル、ジプロプレングリコールモノメチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。

　アルコール（Ｂ）の具体例としては、入手容易性等も考慮すると、上記列挙した中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ２－エチルへキシルエーテル、ジプロプレングリコールモノメチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。さらに、摩擦調整剤の析出を防止しつつ潤滑性を高めやすいため、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。

　アルコール（Ｂ）は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、０．１～１０質量％含有されることが好ましい。アルコール（Ｂ）を上記範囲内の量で使用することで、含有量に見合った効果を発揮しやすくなる。アルコール（Ｂ）の上記含有量は、０．５～５質量％がより好ましく、１～３質量％がさらに好ましい。

［アミドアミン化合物（Ｃ）］
　冷凍機用潤滑油組成物は、さらに摩擦調整剤としてアミドアミン化合物（Ｃ）を含有することが好ましい。二酸化炭素を含有する冷媒とした場合、フッ化炭化水素系冷媒を用いた場合に比べて、吐出圧が高く、圧縮機の摺動部位において、高温、高速環境となるが、冷凍機用潤滑油組成物は、アミドアミン化合物（Ｃ）を含有することで、潤滑性が向上し、さらには、耐摩耗性も良好になる。また、アミドアミン化合物（Ｃ）は、低温環境下において析出しやすくなるが、冷凍機用潤滑油組成物に上記したアルコール（Ｂ）も配合することで、そのような析出は抑制される。
　アミドアミン化合物（Ｃ）は、具体的には、アミド基、及びアミノ基をそれぞれ１個以上有する脂肪族アミドアミン化合物が挙げられる。

　脂肪族アミドアミン化合物としては、以下の式（４）で示される化合物が挙げられる。
　　　　Ｒ⁹－ＣＯ－ＮＲ¹⁰Ｒ¹¹　　　　（４）
　式中、Ｒ⁹は炭素数６～３０のアルキル基又は炭素数６～３０のアルケニル基を示し、Ｒ¹⁰及びＲ¹¹は、水素原子、炭素数１～１０の炭化水素基、炭素数１～１０のアミノ基含有炭化水素基、又は炭素数１～１０の酸素原子含有炭化水素基を示すが、Ｒ¹⁰及びＲ¹¹の少なくとも一方は、アミノ基含有炭化水素基である。Ｒ¹⁰及びＲ¹¹は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Ｒ⁹のアルキル基及びアルケニル基は、直鎖状又は分岐状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、Ｒ¹⁰及びＲ¹¹における炭化水素基又は炭化水素部分は、直鎖状又は分岐状でもよく、環状構造を有していてもよいし、さらには芳香族環、不飽和結合などを含んでいてもよいが、芳香族環及び不飽和結合を含有しないほうが好ましい。

　式（４）で表される化合物としては、脂肪酸とポリアミンの反応物であるアミドアミン化合物が挙げられる。脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヤシ油脂肪酸などが挙げられ、これらのうち特にステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が好ましい。
　また、ポリアミンとは、アミノ基を２つ以上有する化合物をいい、そのアミノ基は第１級アミン、第２級アミン、第３級アミンのいずれを構成してもよいが、少なくとも１つのアミノ基は、脂肪酸と反応するために第１級アミン又は第２級アミンを構成する。ポリアミンとしては、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン等のアミノ基を３つ以上有するもの、ジエチルアミノエチルアミン、トリメチルエチレンジアミン等のアミノ基を２つ有するもの等が挙げられる。

　上記した中では、脂肪酸とアミノ基を２つ有するポリアミンの反応物であるアミドアミン化合物が好ましい。具体的には、以下の式（５）で示される化合物が挙げられる。

　式（５）において、Ｒ²⁰は炭素数６～３０のアルキル基又は炭素数６～３０のアルケニル基を示し、Ｒ²¹は炭素数１～４のアルキレン基を表す。Ｒ²²及びＲ²³は、水素原子又は炭素数１～４のアルキル基を表し、これらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Ｒ²⁴は、水素原子又はメチル基である。

　式（５）において、Ｒ²⁰の炭素数は好ましくは１１～２３、より好ましくは１３～２１である。
　Ｒ²¹のアルキレン基の炭素数は、好ましくは炭素数が１～３であり、より好ましくは炭素数が２又は３であり、特に好ましくは炭素数が２である。Ｒ²¹におけるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。また、Ｒ²²及びＲ²³は好ましくはいずれもアルキル基であり、より好ましくはいずれもが炭素数１～３のアルキル基であり、特に好ましくはいずれもが炭素数２のアルキル基である。Ｒ²²及びＲ²³のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。Ｒ²⁴は、好ましくは水素原子である。
　上記したアミドアミン化合物の中では、炭素数１８の脂肪酸と、ジエチルアミノエチルアミンの反応物が特に好ましい。すなわち、式（５）においては、Ｒ²⁰の炭素数が１７で、Ｒ²¹が炭素数２のアルキレン基、Ｒ²²及びＲ²³が炭素数２のアルキル基、Ｒ²⁴が水素原子の化合物が特に好ましい。

　アミドアミン化合物（Ｃ）は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、好ましくは０．０３～５質量％、より好ましくは０．０５～３質量％、さらに好ましくは０．１～１質量％含有される。
　アミドアミン化合物（Ｃ）の含有量を上記下限値以上とすることで、冷凍機用潤滑油組成物の潤滑性、耐摩耗性を適切に向上させることが可能である。また、上記上限値以下とすることで、上記（Ｂ）成分を配合したことも相俟って、アミドアミン化合物（Ｃ）の析出を抑制しやすくなる。

［その他の添加剤］
　本実施形態に係る冷凍機用潤滑油組成物は、酸化防止剤、油性向上剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、消泡剤等、上記（Ｂ）及び（Ｃ）成分以外のその他の添加剤のいずれか１種又は２種以上を含有してもよい。
　したがって、冷凍機用潤滑油組成物は、基油（Ａ）と、アルコール（Ｂ）とからなるものであってもよいし、基油（Ａ）と、アルコール（Ｂ）とアミドアミン化合物（Ｃ）とからなるものであってもよいし、基油（Ａ）と、アルコール（Ｂ）とその他の添加剤からなるものであってもよいし、基油（Ａ）と、アルコール（Ｂ）とアミドアミン化合物（Ｃ）とその他の添加剤とからなるものであってもよい。
　その他の添加剤の含有量は、冷凍機用潤滑油組成物に対して、好ましくは２０質量％以下、より好ましくは０質量％以上１０質量％以下である。なお、０質量％とは、冷凍機用潤滑油組成物に、その他の添加剤が含有されないことを意味する。
　酸化防止剤としては、２，６－ジ－ｔｅｒｔ－ブチル－４－メチルフェノール、２，６－ジ－ｔｅｒｔ－ブチル－４－エチルフェノール、２，２’－メチレンビス（４－メチル－６－ｔｅｒｔ－ブチルフェノール）等のフェノール系、フェニル－α－ナフチルアミン、Ｎ，Ｎ’－ジフェニル－ｐ－フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、効果及び経済性などの点から、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、通常０．０１～５質量％、好ましくは０．０５～３質量％である。

　油性向上剤の例としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、１２－ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和および不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコールと脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸との部分エステル等が挙げられる。
　これらは１種を単独で用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、冷凍機用潤滑油組成物全量に基づき、通常０．０１～１０質量％、好ましくは０．１～５質量％の範囲で選定される。

　極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩などのリン系極圧剤を挙げることができる。
　これらのリン系極圧剤は、極圧性、摩擦特性などの点からトリクレジルホスフェート、トリチオフェニルホスフェート、トリ（ノニルフェニル）ホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、２－エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどが挙げられる。
　また、極圧剤としては、カルボン酸の金属塩も挙げられる。ここでいうカルボン酸の金属塩は、好ましくは炭素数３～６０のカルボン酸、さらには炭素数３～３０、特に１２～３０の脂肪酸の金属塩である。また、前記脂肪酸のダイマー酸やトリマー酸並びに炭素数３～３０のジカルボン酸の金属塩を挙げることができる。これらのうち炭素数１２～３０の脂肪酸及び炭素数３～３０のジカルボン酸の金属塩が特に好ましい。
　一方、金属塩を構成する金属としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、特に、アルカリ金属が最適である。
　さらに、上記以外の極圧剤として、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チオカーバメート類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類などの硫黄系極圧剤を挙げることができる。
　極圧剤としては、上記した中では、リン系極圧剤が好ましい。
　極圧剤の含有量は、潤滑性及び安定性の点から、冷凍機用潤滑油組成物全量に基づき、通常０．００１～５質量％、特に０．００５～３質量％が好ましい。
　これら極圧剤は１種を単独で用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

　酸捕捉剤としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α－オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物を挙げることができる。中でも相溶性の点でフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α－オレフィンオキシドが好ましい。
　このアルキルグリシジルエーテルのアルキル基、及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよく、炭素数は通常３～３０、好ましくは４～２４、特に好ましくは６～１６のものである。また、α－オレフィンオキシドは全炭素数が一般に４～５０、好ましくは４～２４、特に６～１６のものを使用する。本実施形態においては、上記酸捕捉剤は１種を用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、効果及びスラッジ発生の抑制の点から、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、通常０．００５～５質量％、好ましくは０．０５～３質量％である。
　本実施形態においては、酸捕捉剤を含有させることにより、冷凍機用潤滑油組成物の安定性を向上させることができる。

　酸素捕捉剤としては、４，４’－チオビス（３－メチル－６－ｔ－ブチルフェノール）、ジフェニルスルフィド、ジオクチルジフェニルスルフィド、ジアルキルジフェニレンスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、ベンゾチアピラン、チアピラン、チアントレン、ジベンゾチアピラン、ジフェニレンジスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、各種オレフィン、ジエン、トリエン等の脂肪族不飽和化合物、二重結合を持ったテルペン類等が挙げられる。酸素捕捉剤の含有量は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、通常０．００５～５質量％、好ましくは０．０５～３質量％である。

　銅不活性化剤としては、例えばＮ－［Ｎ，Ｎ’－ジアルキル（炭素数３～１２のアルキル基）アミノメチル］トリアゾール等を挙げることができる。
　防錆剤としては、例えば金属スルホネート、脂肪族アミン類、有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機スルフォン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等を挙げることができる。防錆剤の含有量は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、通常０．００５～２質量％、好ましくは０．０１～１質量％である。
　また、消泡剤としては、例えば、シリコーン油やフッ素化シリコーン油などを挙げることができる。消泡剤の含有量は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、通常０．００５～２質量％、好ましくは０．０１～１質量％である。
　上記したその他の添加剤の中では、潤滑性、耐摩耗性等を向上させる観点から極圧剤を使用することが好ましい。
　本実施形態に係る冷凍機用潤滑油組成物には、さらに本発明の目的を阻害しない範囲で、他の公知の各種添加剤を含有させることができる。

　冷凍機用潤滑油組成物は、酸価が０．２ｍｇＫＯＨ／ｇ以下、流動点が－２０℃以下、窒素分が３００ｐｐｍ以下であることが好ましい。
　冷凍機用潤滑油組成物は、酸価が０．２ｍｇＫＯＨ／ｇ以下であることで、酸が触媒となって高温で劣化する現象を抑制できるという利点がある。また、流動点が－２０℃以下であることで、上記したように、アミドアミン化合物（Ｃ）の低温環境下における析出が防止されることと相俟って、低温性能が優れたものとなる。また、窒素分が３００ｐｐｍ以下であることで、窒素分に由来するスラッジ生成を抑制できるという利点がある。
　なお、冷凍機用潤滑油組成物の酸価は、０～０．１５ｍｇＫＯＨ／ｇがより好ましく、０～０．１０ｍｇＫＯＨ／ｇがさらに好ましい。流動点は、－３０℃以下がより好ましく、－４０℃以下がさらに好ましい。なお、流動点は、低いほうがよく、下限値は特に限定されないが、通常、－６０℃以上となるものである。
　上記窒素分は、２５０ｐｐｍ以下がより好ましく、２００ｐｐｍ以下がさらに好ましい。また、窒素分は、アミドアミン化合物（Ｃ）を適量配合するために、５０ｐｐｍ以上であることが好ましく、１００ｐｐｍ以上であることがより好ましく、１２０ｐｐｍ以上であることがさらに好ましい。

＜冷凍機用潤滑油組成物の製造方法＞
　冷凍機用潤滑油組成物は、上記基油（Ａ）に、少なくともアルコール（Ｂ）を配合することで製造する。また、上記基油（Ａ）には、さらにアミドアミン化合物（Ｃ）を配合することが好ましく、さらには、（Ｂ）及び（Ｃ）成分以外のその他の添加剤を配合してもよい。これら（Ａ）～（Ｃ）成分、及びその他の添加剤の詳細は、上記したとおりである。また、これらの配合順は特に限定されない。

＜冷媒＞
　冷凍機用潤滑油組成物は、冷媒とともに使用されるものである。すなわち、冷凍機では、冷凍機用潤滑油組成物と冷媒とを含む冷凍機用組成物が使用される。冷凍機における冷媒と冷凍機用潤滑油組成物の使用量については、通常、冷媒／冷凍機用潤滑油組成物の質量比で９９／１～１０／９０であるが、９５／５～３０／７０の範囲にあることが好ましい。この質量比を上記範囲内とすると、冷凍機における冷凍能力、及び潤滑性を適切にできる。
　冷媒は、二酸化炭素を含む冷媒が使用される。冷媒は、二酸化炭素単体からなる冷媒であることが好ましいが、二酸化炭素と、二酸化炭素以外の冷媒とからなる混合冷媒であってもよい。
　なお、混合冷媒における二酸化炭素の含有量は、冷媒全量に対して、好ましくは２０～９９質量％、より好ましくは５０～９９質量％、さらに好ましくは８０～９９質量％である。

　混合冷媒に使用される二酸化炭素以外の冷媒としては、例えば、フッ化炭化水素化合物、炭化水素化合物、及びアンモニアからなる群から選ばれる１種又は２種以上が挙げられる。
［フッ化炭化水素化合物］
　フッ化炭化水素化合物としては、飽和フッ化炭化水素化合物、不飽和フッ化炭化水素化合物が挙げられる。
　飽和フッ化炭化水素化合物としては、通常、炭素数１～４のアルカンのフッ化物であり、炭素数１～３のアルカンのフッ化物が好ましく、炭素数１～２のアルカン（メタン又はエタン）のフッ化物がより好ましい。具体的なメタン又はエタンのフッ化物としては、トリフルオロメタン（Ｒ２３）、ジフルオロメタン（Ｒ３２）、１，１－ジフルオロエタン（Ｒ１５２ａ）、１，１，１－トリフルオロエタン（Ｒ１４３ａ）、１，１，２－トリフルオロエタン（Ｒ１４３）、１，１，１，２－テトラフルオロエタン（Ｒ１３４ａ）、１，１，２，２－テトラフルオロエタン（Ｒ１３４）、１，１，１，２，２－ペンタフルオロエタン（Ｒ１２５）が挙げられる。
　これらの飽和フッ化炭化水素化合物は、１種を単独で用いてよく、２種以上組み合わせて用いてもよい。

　不飽和フッ化炭化水素化合物としては、直鎖状又は分岐状の炭素数２～６の鎖状オレフィンや炭素数４～６の環状オレフィンのフッ化物など、炭素－炭素二重結合を有するものが挙げられる。
　より具体的には、１～３個のフッ素原子が導入されたエチレン、１～５個のフッ素原子が導入されたプロペン、１～７個のフッ素原子が導入されたブテン、１～９個のフッ素原子が導入されたペンテン、１～１１個のフッ素原子が導入されたヘキセン、１～５個のフッ素原子が導入されたシクロブテン、１～７個のフッ素原子が導入されたシクロペンテン、１～９個のフッ素原子が導入されたシクロヘキセンなどが挙げられる。
　これらの不飽和フッ化炭化水素化合物の中では、プロペンのフッ化物が好ましく、フッ素原子が３～５個導入されたプロペンがより好ましく、フッ素原子が４個導入されたプロペンが最も好ましい。具体的には、１，３，３，３－テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ１２３４ｚｅ）、２，３，３，３－テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ１２３４ｙｆ）が好ましい化合物として挙げられる。
　これらの不飽和フッ化炭化水素化合物は、１種を単独で用いてよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

［炭化水素化合物］
　炭化水素化合物としては、プロパン（Ｒ２９０）、ｎ－ブタン、イソブタン（Ｒ６００ａ）、シクロブタン、ｎ－ペンタン、２－メチルブタン、２，２－ジメチルプロパン、シクロペンタン、ｎ－ヘキサン、２－メチルペンタン、２，２－ジメチルブタン、２，３－ジメチルブタン、３－メチルペンタン、シクロヘキサン、ｎ－ヘプタン、シクロヘプタン等の炭素数３～７の炭化水素化合物が挙げられる。
　これらの炭化水素化合物は、１種を単独で用いてよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。
　二酸化炭素以外の冷媒としては、上記した中では、飽和フッ化炭化水素化合物、炭化水素化合物、及びアンモニアが好ましく、さらに好ましくはＲ１３４ａ、Ｒ３２、Ｒ２９０、Ｒ６００ａ、アンモニアである。

＜冷凍機＞
　上記冷凍機用潤滑油組成物は、冷凍機に使用されるものであり、具体的には圧縮機を備える圧縮型冷凍機に使用される。
　冷凍機は、その内部に冷凍機用潤滑油組成物を充填するものであり、冷凍機用潤滑油組成物により、冷凍機の摺動部位、例えば圧縮機の潤滑部位を潤滑する。また、冷凍機は、その内部に冷凍機用潤滑油組成物に加え冷媒（すなわち、冷凍機用組成物）を充填しており、冷凍機の系内に冷凍機用組成物が循環している。圧縮型冷凍機は、圧縮機に加え、凝縮器、膨張機構（膨張弁など）及び蒸発器を少なくとも有し、これらにより冷凍サイクルを構成する。
　また、冷凍機用潤滑油組成物は、開放型カーエアコン、電動カーエアコン等のカーエアコン、ガスヒートポンプ（ＧＨＰ）、空調、冷蔵庫、自動販売機、ショーケースなどの各種冷凍システム、給湯システム、及び暖房システムにおける冷凍機で用いることができるが、これらの中ではカーエアコンに使用することが好ましい。

　以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。

　本明細書において、各種測定方法、及び評価方法は、以下に示すとおりである。
（１）動粘度（１００℃）
　ＪＩＳ Ｋ２２８３：２０００に準拠して、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した。
（２）粘度指数
　ＪＩＳ　Ｋ２２８３：２０００に準拠して測定した。
（３）数平均分子量（Ｍｎ）
　数平均分子量（Ｍｎ）は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ（ＧＰＣ）を用いて測定した。ＧＰＣは、カラムとして東ソー株式会社製ＴＳＫｇｅｌ　ＳｕｐｅｒＭｕｌｔｉｐｏｒｅＨＺ－Ｍ２本を用い、テトラヒドロフランを溶離液として、検出器に屈折率検出器を用いて測定を行い、ポリスチレンを標準試料として数平均分子量（Ｍｎ）を求めた。
（４）酸価
　酸価はＪＩＳ Ｋ２５０１：２００３に規定される「潤滑油中和試験方法」に準拠し、指示薬法により測定した。
（５）流動点
　ＪＩＳ　Ｋ２２６９：１９８７に準拠して測定した。
（６）窒素分
　ＪＩＳ Ｋ ２６０９：１９９８に準拠して測定した。
（７）密閉ファレックス（FALEX）試験
　ブロックＳＵＪ２／ピンＳＵＪ２、荷重：１５０ｌｂｓ（６６７Ｎ）、油量（塗布）：２０ｕｌ、回転数：４５０ｒｐｍ、冷媒：二酸化炭素０．１ＭＰａ、温度：２３℃の条件で、塗布ファレックス焼付試験を行い、焼付きが起こるまでの時間を測定した。
（８）低温加速貯蔵試験
　冷凍機用潤滑油組成物を密閉容器の中に入れて－５℃、－４０℃の環境下でそれぞれ３０日間放置した際、添加剤（アミドアミン化合物）の析出の有無を目視により観察した。いずれの温度でも析出がなければ、析出抑制効果が十分であるとして“Ａ”と評価した。いずれかの温度で析出があるが僅かである場合には“Ｂ”と評価した。さらに、いずれかの温度で比較的多く析出が見られた場合には、“Ｃ”と評価した。

［実施例１～９、比較例１］
　各実施例、比較例において、表２に示す組成の冷凍機用潤滑油組成物を調合して、各冷凍機用潤滑油組成物を評価した。評価結果を表２に示す。
　なお、各実施例、比較例で使用した基油（Ａ）は、ポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル（一般式（１）において、ｎが１、ｍが数平均分子量に応じた値、Ｒ^１、Ｒ^３がメチル基、ＯＲ^２がオキシプロピレン基であるＰＡＧ）であり、１００℃における動粘度９．７ｍｍ²／ｓ、数平均分子量１１００、粘度指数２０７であった。
　また、各実施例、比較例で使用したアルコール（Ｂ）、及びアミド化合物（Ｃ）は以下の表１のとおりである。

組成における各数値は、冷凍機用潤滑油組成物全量に対する質量％を示す。
極圧剤：トリクレジルホスフェート

　実施例１～９では、アルコール（Ｂ）を配合したことで、ファレックス試験における焼き付き時間が長くなり、潤滑性が良好となった。また、実施例１～９では、アミドアミン化合物（Ｃ）を配合したが、アルコール（Ｂ）も合わせて配合したことで、低温環境下でアミドアミン化合物（Ｃ）が析出することを抑制できた。
　一方、比較例１では、アルコール（Ｂ）を配合しなかったため、ファレックス試験における焼き付き時間が十分に長くならず、潤滑性が十分に向上しなかった。また、低温環境下でアミドアミン化合物（Ｃ）が多く析出する不具合も生じた。

Claims (15)

1. 　二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物であって、
   　ポリオキシアルキレングリコールを主成分とする基油（Ａ）と、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個で（ただし、エーテル結合は０個であってもよい）、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール（Ｂ）とを含有する冷凍機用潤滑油組成物。
2. 　アルコール（Ｂ）が、冷凍機用潤滑油組成物全量に対して、０．１～１０質量％含有される請求項１に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
3. 　アルコール（Ｂ）は、炭素数が２～１２である請求項１又は２に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
4. 　アルコール（Ｂ）は、１又は２個の水酸基を有する請求項１～３のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
5. 　アルコール（Ｂ）は、１又は２個のエーテル結合を有する請求項１～４のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
6. 　アミドアミン化合物（Ｃ）をさらに含む請求項１～５のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
7. 　前記冷媒が、二酸化炭素単体からなるか、又は二酸化炭素と、フッ化炭化水素化合物、炭化水素化合物、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも１つの化合物との混合冷媒である請求項１～６のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
8. 　前記ポリオキシアルキレングリコールは、１００℃ における動粘度が１～５０ｍｍ²／ｓである請求項１～７のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
9. 　酸化防止剤、油性向上剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、及び消泡剤からなる群から選ばれる少なくとも１つをさらに含む請求項１～８のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
10. 　酸価が０．２ｍｇＫＯＨ／ｇ以下、流動点が－２０℃以下、窒素分が３００ｐｐｍ以下である請求項１～９のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
11. 　カーエアコン、ガスヒートポンプ、空調、冷蔵庫、自働販売機、及びショーケースから選択される冷凍システム、給湯システム，又は暖房システムに使用される請求項１～１０のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
12. 　請求項１～１１のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とを含む冷凍機用組成物。
13. 　請求項１～１１のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とが充填された冷凍機。
14. 　請求項１～１１のいずれか１項に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、二酸化炭素を含有する冷媒とが充填された冷凍機において、前記冷凍機用潤滑油組成物によって冷凍機の摺動部位を潤滑する潤滑方法。
15. 　二酸化炭素を含有する冷媒とともに使用される冷凍機用潤滑油組成物の製造方法であって、
    　ポリオキシアルキレングリコールを主成分とする基油（Ａ）に、水酸基とエーテル結合の合計が２～３個で（ただし、エーテル結合は０個であってもよい）、かつ少なくとも１個の水酸基を有するアルコール（Ｂ）を配合する冷凍機用潤滑油組成物の製造方法。