WO2013073350A1 - 化粧品基材及び該化粧品基材を含有する化粧品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 損傷した毛髪に対して、疎水性及び滑らかさを付与し、該毛髪のくし通り性を良好にする化粧品基材及び該化粧品基材を含有する化粧品を提供する。 【解決手段】 ペプチドの活性アミノ基に下記の一般式(I)〔式中、R1は、-CH2CH2-、-CH=CH-、又は、-C6H4-を示す〕で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、下記の一般式(II) (式中、R2は、炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の鎖式炭化水素又は炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素を表し、R3は炭素数1~3のアルキレン基を表し、R4、R5はそれぞれ炭素数1~3のアルキル基を表す)で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩で化粧品基材を構成し、該化粧品基材を含有させて化粧品を構成する。
Description
本発明は、化粧品基材及び該化粧品基材を含有する化粧品に関し、特にヘアトリートメントなどの毛髪化粧品に配合された際に損傷した毛髪に疎水性となめらかさを付与し、該毛髪のくし通り性を良好にするなど、毛髪に対して優れたコンディショニング作用を発揮する化粧品基材とそれを含有する化粧品に関する。
健康な毛髪表面には、18-メチルエイコサン酸を主成分とするF層(F-layer)と呼ばれる脂質の層が存在し、それが毛髪の疎水性や滑らかさ、くし通り性に大きく関与している。しかし、パーマ、ヘアカラーなどの化学的処理やブラッシングなどの物理的処理によって損傷した毛髪は、毛髪表面の疎水性や滑らかさが低下し、その結果、くし通り性が悪くなる。そこで、それらの低下した特性を改善する目的で様々な毛髪コンディショニング作用を有する化粧品基材が開発され、化粧品に配合されている。
毛髪コンディショニング作用を有する化粧品基材としては、毛髪への吸着力が強いという理由でペプチドやその誘導体が多用され、既にヘアトリートメントやシャンプーなどの毛髪化粧品に配合されている。それらの中でも、特にタンパク質を加水分解することで得られるペプチド(タンパク質加水分解物)やその誘導体が広く利用されている(特許文献1)。
ペプチドの誘導体としては、ペプチドと脂肪酸をアミド結合させることで得られるアシルペプチドが、ペプチドの毛髪コンディショニング作用を高めた化粧品基材として開発され、多種の毛髪化粧品に配合されている(特許文献2など)。
なかでも、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチドやペプチド誘導体と特定の界面活性剤とのイオンコンプレックスが、毛髪への吸着力が高く、損傷によって官能特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを毛髪に付与する作用が優れているため、該イオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなる化粧品基材と、該化粧品基材を含有する化粧品が開発されている(特許文献3)。
前記界面活性剤とイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなる化粧品基材は、損傷した毛髪に疎水性や滑らかさを付与する能力が優れていて、該毛髪のくし通り性を良好にするものの、その効果は毛髪を損傷以前の状態にまで回復させるには至っておらず、くし通り性の改善において充分とはいえなかった。
本発明は、損傷によって毛髪表面のF層(F-layer)が失われて、疎水性と滑らかさが低下し、くし通り性が悪くなった毛髪表面を被覆し、毛髪に疎水性と滑らかさを付与し、かつ、該毛髪のくし通り性を良好にすることができる化粧品基材と、該化粧品基材を含有する化粧品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、特定の脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩が、毛髪に疎水性と滑らかさを付与し、かつ、該毛髪のくし通り性を良好にする作用が優れていることを見出し、それに基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ペプチドの活性アミノ基に下記の一般式(I)
(式中、R1は、-CH2CH2-、-CH=CH-、又は、-C6H4-を表す)
で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、下記の一般式(II)
で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、下記の一般式(II)
(式中、R2は、炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の鎖式炭化水素又は炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素を表し、R3は炭素数1~3のアルキレン基を表し、R4、R5はそれぞれ炭素数1~3のアルキル基を表す)
で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなることを特徴とする化粧品基材を基本発明とするもので、本願では、これを請求項1に係る発明とする。
で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなることを特徴とする化粧品基材を基本発明とするもので、本願では、これを請求項1に係る発明とする。
なお、本発明において、酸性官能基とはカルボキシ基とスルホ基を言い、全酸性官能基とは酸性アミノ酸側鎖のカルボキシ基とスルホ基、ペプチド主鎖の末端カルボキシ基、及び、ペプチドの活性アミノ基に結合した前記一般式(I)で表される置換基中のカルボキシ基を合わせたものを言い、それら酸性官能基の総和を100モル%とする。
本発明は、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、前記一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を基本技術としているので、ペプチドは、その主鎖の末端のみならず、その中間部(つまり、末端ではない部分)にも酸性官能基を有している方が、本発明の効果をより顕著に奏するようになる。すなわち、ペプチドは、通常、その主鎖の末端にカルボキシ基を有しているが、側鎖にも酸性官能基を有していれば、より多く脂肪酸アミドアミンとの塩を形成することになる。そこで、本願では、ペプチドが構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧品基材を、請求項2に係る発明とする。
ペプチドとしては、工業的に比較的容易に入手できるものが好ましい。そこで、本発明においてペプチドとしては、タンパク質加水分解物又はポリ酸性アミノ酸が好ましい。
そして、前記タンパク質加水分解物の中でも、酸性アミノ酸を多く含有する植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物が好ましい。また、前記ポリ酸性アミノ酸の中でも、ポリアスパラギン酸又はポリグルタミン酸が入手し易く、本発明の基本技術であるアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を形成するのに好ましい。
以上のことから、本願では、ペプチドが、植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物、ポリアスパラギン酸又はポリグルタミン酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧品基材を、請求項3に係る発明とする。
植物タンパク質加水分解物の中でも、エンドウタンパク質を加水分解することで得られるエンドウタンパク質加水分解物は、化粧品基材としての品質と安全性の面からより好ましいので、本願では、植物タンパク質加水分解物が、エンドウタンパク質加水分解物であることを特徴とする請求項3に記載の化粧品基材を、請求項4に係る発明とする。
ペプチドのアミノ酸重合度の好適な範囲は、配合する化粧品の種類によっても異なるが、化粧品に配合した際の化粧品の安定性と本発明の化粧品基材の毛髪への吸着能力から考えると、アミノ酸平均重合度が2~100であることが好ましい。そこで、本願では、ペプチド部のアミノ酸平均重合度が、2~100であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材を、請求項5に係る発明とする。
また、脂肪酸アミドアミンとの塩を形成させるアシルペプチドが、下記の一般式(III)
〔式中、R1は前記一般式(I)の場合と同じであり、R6は中性アミノ酸の側鎖の残基を表し、R7は塩基性アミノ酸のアミノ基を除いた側鎖の残基を表し、R8は炭素数1~2のアルキレン基を表す。また、a、b、c及びdは各アミノ酸の数を表し、a+b+c+dはアミノ酸重合度を表すが、a+b+c+dは2以上、かつ、c+dが1以上である。なお、a、b、c及びdはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない〕
で表されるアシルペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の化粧品基材を、請求項6に係る発明とする。
で表されるアシルペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の化粧品基材を、請求項6に係る発明とする。
本発明の化粧品基材は、損傷によって疎水性と滑らかさが低下し、くし通り性が悪くなった毛髪に、疎水性と滑らかさを付与し、かつ、該毛髪のくし通り性を良好にする特徴を有するので、本願では、前記請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品を、請求項7に係る発明とする。
本発明の化粧品基材は、前記のように、毛髪のコンディション(状態)を改善する特性を有することから、特にヘアトリートメントやヘアミストなどの毛髪のコンディションを改善する毛髪化粧品に配合した際には本発明の効果が顕著に奏される。
請求項8に係る発明は、前記化粧品基材の含有量が0.1~10質量%であることを特徴とする請求項7に記載の化粧品である。化粧品中の本発明の化粧品基材の含有量の好適な範囲は、化粧品の種類や使用の形態等によって変動するが、通常では化粧品の全質量に対して0.1~10質量%である。
本発明の化粧品基材は、損傷によって疎水性と滑らかさが低下し、くし通り性が悪くなった毛髪に、疎水性と滑らかさを付与し、その結果として、毛髪のくし通り性を良好にし、元の健康状態にまでくし通り性を回復させることができ、また、健康な毛髪のくし通り性をより向上させることができる。従って、特に毛髪化粧品に好適に用いられ、上記のような作用を発揮する。また、本発明の化粧品基材は、皮膚化粧品にも配合でき、乾燥した皮膚に柔軟性と保湿性を付与することができる。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。まず、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用されるペプチド、アシルペプチド、脂肪酸アミドアミンについて説明し、その後で、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の形成方法、化粧品基材の形態、化粧品基材が配合される化粧品について説明する。
[ペプチド]
本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用されるペプチドは、分子内に活性アミノ基と、カルボキシ基又はスルホ基を有していれば良く、その結合位置はペプチド鎖の側鎖でも、末端でも構わない。通常、ペプチドは、活性アミノ基を有するとともに、そのペプチド主鎖の末端にカルボキシ基を有しているので、ほとんどのペプチドが本発明の化粧品基材に使用でき、そのペプチドは天然由来のものでもよく、また、合成や発酵によって得られたものでもよい。
本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用されるペプチドは、分子内に活性アミノ基と、カルボキシ基又はスルホ基を有していれば良く、その結合位置はペプチド鎖の側鎖でも、末端でも構わない。通常、ペプチドは、活性アミノ基を有するとともに、そのペプチド主鎖の末端にカルボキシ基を有しているので、ほとんどのペプチドが本発明の化粧品基材に使用でき、そのペプチドは天然由来のものでもよく、また、合成や発酵によって得られたものでもよい。
前記ペプチドとしては、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチドが好ましい。酸性アミノ酸は官能基としてカルボキシ基やスルホ基を有しているので、多くの脂肪酸アミドアミンと塩を形成し、本発明の効果を奏しやすい。その構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチドとしては、例えば、下記の一般式(IV)
〔式(IV)中、R6は中性アミノ酸の側鎖の残基を表し、R7は塩基性アミノ酸のアミノ基を除いた側鎖の残基を表し、R8は炭素数1~2のアルキレン基を表す。また、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はマグネシウムを表す。さらに、a、b、c及びdは各アミノ酸の数を表し、a+b+c+dはアミノ酸重合度を表すが、a+b+c+dは2以上、かつ、c+dが1以上である。なお、a、b、c及びdはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。a、b、c、d、a+b+c+d、及びc+dは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い〕
で表されるペプチド、又は下記の一般式(V)
で表されるペプチド、又は下記の一般式(V)
〔式(V)中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はマグネシウムを表す。さらに、e、f及びgは各アミノ酸の数を表し、e+f+gはアミノ酸重合度を表すが、e+f+gは2以上である。なお、e、f及びgはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。e、f、g及びe+f+gは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い〕
で表されるポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸などのポリ酸性アミノ酸である。
で表されるポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸などのポリ酸性アミノ酸である。
ペプチドとしては、工業的に入手しやすく、かつ本発明の化粧品基材が化粧品に配合される際の安全性の観点から考えると、タンパク質を加水分解することで得られるタンパク質加水分解物が好ましい。
前記タンパク質加水分解物は、タンパク質を酸、アルカリ、酵素、又はそれらの併用によって部分加水分解することで得られ、そのタンパク質源としては、動物性タンパク質、植物性タンパク質、微生物由来のタンパク質などが挙げられる。動物性タンパク質としては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、プロタミン、鶏などの卵黄タンパク質や卵白タンパク質などを挙げることができ、植物性タンパク質としては、例えば、大豆、小麦、米(米糠)、ゴマ、エンドウ、トウモロコシ、イモ類などに含まれるタンパク質を挙げることができ、微生物由来のタンパク質としては、例えば、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌、ビール酵母や清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク質、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離したタンパク質、海藻由来のスピルリナタンパク質などを挙げることができる。
本発明の化粧品基材は、アシルペプチド〔本発明において、アシルペプチドとは、ペプチドの活性アミノ基に一般式(I)で表される置換基が結合することによってカルボキシ基が導入されたペプチドをいう〕の脂肪酸アミドアミン塩を基本技術としているので、アシルペプチドが脂肪酸アミドアミンと塩を形成する酸性官能基をより多く有していれば、本発明の効果がより顕著に奏されるようになる。そこで、アシルペプチドのペプチド部はその構成アミノ酸に酸性アミノ酸を含んでいることが好ましい。前記タンパク質の中でも、植物タンパク質やケラチン、カゼインは酸性アミノ酸を多く含んでいるので、本発明の化粧品基材においてアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を形成するためのタンパク質源として適しており、これらのタンパク質を加水分解することで得られる植物タンパク質加水分解物やケラチン加水分解物(加水分解ケラチン)、カゼイン加水分解物(加水分解カゼイン)が、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するペプチドとして好ましく、それらの中でも、植物タンパク質加水分解物が特に好ましい。
また、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸などのポリ酸性アミノ酸も、脂肪酸アミドアミンとの塩の形成に適していることから、本発明の化粧品基材の製造にあたって使用するペプチドとして用いることができる。
以上のように本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するのに適したペプチドについて述べてきたが、本発明の化粧品基材の損傷毛髪への特性改善効果に加え、工業的な入手のしやすさや化粧品に配合した際の安全性の高さを考慮すると、ペプチドとしては、植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸が好ましく、それらの中でも、特に植物タンパク質加水分解物が好ましい。
さらに、植物タンパク質加水分解物の中でも、化粧品基材としての品質と安全性の面から、エンドウタンパク質加水分解物が特に好ましい。
ペプチドのアミノ酸平均重合度は、2~100の範囲内が好ましい。従って、一般式(IV)においてa+b+c+dが2~100であることが好ましく、より好ましくは3~50であり、さらに好ましくは3~10である。また、一般式(V)においてe+f+gが2~100であることが好ましく、より好ましくは3~50であり、さらに好ましくは3~10である。
ペプチドを構成する各アミノ酸単位の数、すなわち、ペプチド1分子中の側鎖にアミノ基を有する塩基性アミノ酸単位〔一般式(IV)でbが付されているアミノ酸単位〕、側鎖にカルボキシ基を有する酸性アミノ酸単位〔一般式(IV)でcが付されているアミノ酸単位や一般式(V)でe、f又はgが付されているアミノ酸単位〕、側鎖にスルホ基を有する酸性アミノ酸単位〔一般式(IV)でdが付されているアミノ酸単位〕、及びそれ以外のアミノ酸単位〔一般式(IV)でaが付されているアミノ酸単位〕のそれぞれの数の好ましい範囲はその用途や原料事情、各アミノ酸単位の種類などにより変動し、特に限定されることはないが、例えば、一般式(IV)で表されるペプチド骨格をもつアシルペプチドの全酸性官能基の30モル%以上が脂肪酸アミドアミンとの塩を形成する場合には、c+dは1~10が好ましく、1~4がより好ましい。これは、本発明の効果を発揮しやすく、原料のペプチドも入手し易いためである。
[アシルペプチド]
前述のペプチドを本発明に使用するためには、まず、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドにする必要がある。一般的に化粧品基材として使用されているアシルペプチドは、ペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基に炭素数8~32の直鎖又は分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪酸や樹脂酸をアミド結合させたものである。しかし、本発明で用いるアシルペプチドは、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドであり、分子内に新たにカルボキシ基が導入されていることが特徴である。この置換基のカルボキシ基が、後述の脂肪酸アミドアミンとの塩の形成に有益であり、化粧品基材としての優れた効果を奏する要因となる。
前述のペプチドを本発明に使用するためには、まず、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドにする必要がある。一般的に化粧品基材として使用されているアシルペプチドは、ペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基に炭素数8~32の直鎖又は分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪酸や樹脂酸をアミド結合させたものである。しかし、本発明で用いるアシルペプチドは、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドであり、分子内に新たにカルボキシ基が導入されていることが特徴である。この置換基のカルボキシ基が、後述の脂肪酸アミドアミンとの塩の形成に有益であり、化粧品基材としての優れた効果を奏する要因となる。
本発明において用いるアシルペプチドとしては、例えば、下記一般式(VI)で表されるアシルペプチドを挙げることができる。
〔一般式(VI)中、a、b、c、d、R6、R7、R8、及びMは、前記一般式(IV)の場合と同様である。また、R9は前記一般式(I)で表される置換基又はHを示し、これらの2つのR9は同一でもよく、また、異なっていてもよいが、必ず一方が前記一般式(I)で表される置換基でなければならない〕
ペプチドの活性アミノ基とは、ペプチドの末端アミノ基と、ペプチドを構成している塩基性アミノ酸の側鎖のアミノ基とを指し、求核反応性を示すアミノ基である。この求核反応性を示す活性アミノ基が二塩基有機酸無水物などと反応することで、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドが得られる。
二塩基有機酸無水物としては、ペプチドの活性アミノ基と反応し、ペプチドにカルボキシ基を導入できるものであれば、特に限定することなく使用できるが、工業的な入手のし易さや安全性を考慮すると、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が好ましい。特に、無水コハク酸は、ペプチドの活性アミノ基との反応に適しているので、より好ましい。
なお、ペプチドと無水コハク酸との反応によって得られるアシルペプチドは、サクシニル化ペプチド〔前記一般式(I)において、R1が-CH2CH2-である置換基が結合したアシルペプチド〕と呼ばれ、ペプチドと無水マレイン酸との反応によって得られるアシルペプチドは、マレイル化ペプチド〔前記一般式(I)において、R1が-CH=CH-である置換基が結合したアシルペプチド〕と呼ばれ、ペプチドと無水フタル酸との反応によって得られるアシルペプチドは、フタロイル化ペプチド〔前記一般式(I)において、R1が-C6H4-である置換基が結合したアシルペプチド〕と呼ばれることがある。
ペプチドと二塩基有機酸無水物との反応は、例えば、本出願人の出願に係る特開昭63-264597号公報に記載の方法で行うことができる。つまり、濃度が5~60質量%のペプチド水溶液をpH8~11、温度30~60℃で撹拌しながら、二塩基有機酸無水物を少量ずつ添加して溶解させながら反応させ、反応中のpHの低下に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ剤の水溶液を添加し、pH8~11に維持することによって行うことができる。そして、反応は、二塩基有機酸無水物の所要量を全量添加し、反応系に溶解させた後、1~6時間で終了するのが好ましい。
なお、反応条件によっては、加水分解による二塩基有機酸無水物の開環体、つまり、無水コハク酸を使用した場合はコハク酸、無水マレイン酸を使用した場合はマレイン酸などの二塩基有機酸が生成するため、活性アミノ基を充分に封鎖できない場合も発生するので、必要に応じて、反応に用いる二塩基有機酸無水物を増量しても良い。
副生成物として生成する二塩基有機酸は、イオン交換樹脂、イオン交換膜、限外ろ過、電気透析などの手法によって除去することができる。
本発明の化粧品基材は、前記特許文献3に記載の化粧品基材に比べて、毛髪に疎水性や滑らかさを付与する効果やくし通り性を良好にする効果が優れている。この要因の第一は、本発明で用いるアシルペプチドは、前記一般式(I)で表される置換基中にカルボキシ基を有しており、そのカルボキシ基が後述の脂肪酸アミドアミンとイオン結合し、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を形成するからである。そして、第二の要因としては、次の現象が考えられる。つまり、通常、ペプチドは分子内にアミノ基とカルボキシ基を有しており、これら二つの官能基によって、ペプチドは分子間でイオン結合しやすくなっている。しかし、本発明の化粧品基材に用いるペプチドは、そのアミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合している。そのため、ペプチド分子間でのイオン結合が生じにくく、アシルペプチドのカルボキシ基が脂肪酸アミドアミンとイオン結合しやすくなり、その結果として、毛髪に疎水性や滑らかさを付与し、くし通り性を良好にする効果の高いアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩が形成されるものと考えられる。
[脂肪酸アミドアミン]
本発明で使用する脂肪酸アミドアミンは、前記の一般式(II)で表され、式中のR2は、炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の鎖式炭化水素又は炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素を表し、R3は炭素数1~3のアルキレン基を表し、R4、R5はそれぞれ炭素数1~3のアルキル基を表す。
本発明で使用する脂肪酸アミドアミンは、前記の一般式(II)で表され、式中のR2は、炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の鎖式炭化水素又は炭素数11~25の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素を表し、R3は炭素数1~3のアルキレン基を表し、R4、R5はそれぞれ炭素数1~3のアルキル基を表す。
脂肪酸アミドアミンは、脂肪酸のカルボキシ基に、ジアルキルアミノアルキレンアミンのアミノ基をアミド結合させることで得られる。R2が環式炭化水素を有するアミドアミンとしては、例えば、脂肪酸としてロジン(松脂)を用いた場合である。ロジンはマツ科の植物に多量に含まれる松脂の不揮発性の成分であり、樹脂酸とも呼ばれる各種異性体を主成分としたもので、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸などが含まれている。また、化粧品基材としての安定性や安全性を重視するならば、ロジンを水添した水添ロジンを用いることが好ましい。
本発明で使用する脂肪酸アミドアミンは、前述の一般式(II)で表わされるものであればどのようなものでもよいが、その具体例を挙げると、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド(つまり、ステアラミドエチルジエチルアミン)、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ラウリン酸ジエチルアミノエチルアミド、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(つまり、ステアラミドプロピルジメチルアミン)、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド、水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド、樹脂酸ジメチルアミノプロピルアミド、水添樹脂酸ジメチルアミノプロピルアミドなどが挙げられる。
それらの中でも、工業的に入手し易く、かつ、本発明の効果を充分に発現させることができる脂肪酸アミドアミンとしては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミドなどであり、化粧品基材としての安定性と汎用性を重視すると、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミドがより好ましく、それらの2種の脂肪酸アミドアミンがモル比で約1:1の割合で混合されたセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド(つまり、セテアラミドエチルジエチルアミン)が特に好ましい。
また、本発明の化粧品基材を配合する化粧品が毛髪セット剤やスタイリング剤である場合は、脂肪酸アミドアミンとして水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミドを用いると、本発明の損傷毛髪の特性を改善する基本的な効果に加え、良好な毛髪セット効果も奏するようになるので特に好ましい。
[アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の形成方法]
本発明の化粧品基材においては、前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、前記一般式(II)で表わされる脂肪酸アミドアミンで中和して、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を形成させている。この一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンによる中和率〔つまり、アシルペプチドの全酸性官能基に対する一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンによる中和率〕は、高いほど好ましく、つまり、高いほど損傷した毛髪に対して疎水性と滑らかさを付与し、該毛髪のくし通り性を良好にする効果が顕著に奏されるようになるので好ましく、アシルペプチド中に含まれる酸性アミノ酸の存在比によって異なるものの、一般に、アシルペプチドの全酸性官能基に対して30モル%以上が一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和されていることが好ましく、特に40モル%以上が一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和されていることが好ましい。
本発明の化粧品基材においては、前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、前記一般式(II)で表わされる脂肪酸アミドアミンで中和して、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を形成させている。この一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンによる中和率〔つまり、アシルペプチドの全酸性官能基に対する一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンによる中和率〕は、高いほど好ましく、つまり、高いほど損傷した毛髪に対して疎水性と滑らかさを付与し、該毛髪のくし通り性を良好にする効果が顕著に奏されるようになるので好ましく、アシルペプチド中に含まれる酸性アミノ酸の存在比によって異なるものの、一般に、アシルペプチドの全酸性官能基に対して30モル%以上が一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和されていることが好ましく、特に40モル%以上が一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和されていることが好ましい。
本発明の化粧品基材において、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の形成方法としては、例えば、アシルペプチドを水やエタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどの溶剤で溶液状にし、そのアシルペプチドの溶液に塩酸や硫酸などの酸剤を加えて、pHを4以下、好ましくは2.5以下の酸性にする。続いて、この溶液を電気透析装置や透析チューブに供して、脱塩処理を行う。この際、酸性条件下でアシルペプチドが不溶化するものであれば、濾過やデカンテーションを行って残渣を回収し、該残渣を水でよく洗浄する。このような操作によって、脱塩され、酸性官能基が遊離状態(つまり、-COOH又は-SO3Hの状態)のアシルペプチドを得ることができる。本発明では、このように脱塩され、酸性官能基が遊離状態になったアシルペプチドを用いることが必須である。
次に、脱塩され、酸性官能基が遊離状態になったアシルペプチドに一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンを添加することで、酸性官能基が遊離状態になった酸性のペプチド溶液を脂肪酸アミドアミンで中和し、純度の高いアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる化粧品基材を得ることができる。
上記のようにして形成されたアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を例示する。アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の形成に必要な塩結合(イオン結合)は、アシルペプチドの酸性官能基、つまり、カルボキシ基とスルホ基のところで生じるので、カルボキシ基のところでイオン結合が生じる場合とスルホ基のところでイオン結合が生じる場合とに分けて説明する。
まず、イオン結合が、アシルペプチドのカルボキシ基と一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンとの間で形成された場合、該アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は、次の一般式(VII)で表される。なお、アシルペプチドのペプチド部は、前記のように、一般式(IV)と一般式(V)で表される。脂肪酸アミドアミンとのイオン結合が、ここで示す例では、カルボキシ基のところなので、カルボキシ基の部分のみを抜き出して表示し、他の部分は「アシルペプチド本体部」で表す。つまり、イオン結合する特徴的部分のみを表示し、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を簡略表示している。なお、カルボキシ基と脂肪酸アミドアミンのイオン結合は、ペプチド由来のカルボキシ基に加え、前記一般式(I)で表される置換基中のカルボキシ基でも生じ、このイオン結合によって生じたアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩が本発明の化粧品基材に充分な効果をもたらす要因である。
次に、アシルペプチドがスルホ基のところで一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンとイオン結合した場合、該アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は、次の一般式(VIII)で表される。なお、アシルペプチドに関しては、前記カルボキシ基の場合と同様に、そのスルホ基の部分のみを抜き出して表示し、他の部分は「アシルペプチド本体部」で表す。
[化粧品基材の形態]
本発明の化粧品基材は、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、前記一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる。このアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は乾燥して固体の形態で化粧品基材になるが、該化粧品基材に水や低級アルコール、多価アルコールなどの溶媒を任意に加えて、該化粧品基材をペースト状又は溶液状の組成物として調製してもよい。
本発明の化粧品基材は、ペプチドの活性アミノ基に前記一般式(I)で表される置換基が結合したアシルペプチドの酸性官能基の一部又は全部を、前記一般式(II)で表される脂肪酸アミドアミンで中和したアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる。このアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は乾燥して固体の形態で化粧品基材になるが、該化粧品基材に水や低級アルコール、多価アルコールなどの溶媒を任意に加えて、該化粧品基材をペースト状又は溶液状の組成物として調製してもよい。
アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を含水エタノール溶液や含水グリセリン溶液に混合すると、溶液全体が均一に保たれ安定性が良いため、化粧品基材を溶液状にして提供する際にはアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の含水エタノール溶液や含水グリセリン溶液として調製することが好ましい。特に、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の含水グリセリン溶液は、安定性が優れ、毛髪に適用した場合には毛髪のくし通り性を良好にする効果が高い。
アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩と水とグリセリンとの配合比率は、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の種類によっても異なるが、質量比でアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩:水:グリセリン=5~80:5~75:15~60、特に7~60:5~73:20~50、とりわけ40~50:5~35:25~45であることが、アシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩を溶液として提供する際に、製造性と化粧品基材としての安定性の面から好ましい。
[化粧品基材が配合される化粧品]
本発明の化粧品基材が配合される化粧品としては、例えば、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、システムトリートメント、シャンプー、ヘアミスト、枝毛コート、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用第1剤及び第2剤、縮毛矯正剤、セットローション、ヘアワックス、スタイリング剤、染毛剤、染毛料、液体整髪料、養毛・育毛剤などの毛髪化粧品などが挙げられる。また、本発明の化粧品基材を、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、アフターシェービングローション、シェービングフォーム、洗顔クリーム、洗顔料、ボディーシャンプー、各種石鹸、脱毛剤、フェイスパック、乳液、化粧水、メイクアップ用品、日焼け止め用品などの皮膚化粧品に配合してもよく、その場合は皮膚に柔軟性や保湿性、皮膚への馴染みやすさを付与する効果が期待できる。
本発明の化粧品基材が配合される化粧品としては、例えば、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、システムトリートメント、シャンプー、ヘアミスト、枝毛コート、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用第1剤及び第2剤、縮毛矯正剤、セットローション、ヘアワックス、スタイリング剤、染毛剤、染毛料、液体整髪料、養毛・育毛剤などの毛髪化粧品などが挙げられる。また、本発明の化粧品基材を、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、アフターシェービングローション、シェービングフォーム、洗顔クリーム、洗顔料、ボディーシャンプー、各種石鹸、脱毛剤、フェイスパック、乳液、化粧水、メイクアップ用品、日焼け止め用品などの皮膚化粧品に配合してもよく、その場合は皮膚に柔軟性や保湿性、皮膚への馴染みやすさを付与する効果が期待できる。
本発明の化粧品基材の化粧品への配合量(化粧品中での含有量)の好ましい範囲は、化粧品の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、化粧品中0.1~10質量%が好ましい場合が多く、特に0.3~5質量%が好ましい場合が多い。化粧品中への配合量が上記範囲より少ない場合は、損傷した毛髪に疎水性や滑らかさを付与したり、毛髪のくし通りを良好にする効果が充分に発現できなくなるおそれがある。また、本発明の化粧品基材の配合量が上記範囲より多くなっても、それに見合う効果の向上が見られない。
上記化粧品に、本発明の化粧品基材と併用して配合できる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、半合成ポリマー類、動植物油、炭化水素類、エステル油、高級アルコール類、アミノ酸類、増粘剤、動植物抽出物、シリコーン類、防腐剤、香料、動植物由来及び微生物由来のタンパク質を加水分解したタンパク質加水分解物、それらタンパク質加水分解物のエステル化誘導体、第4級アンモニウム誘導体、シリル化誘導体、アシル化誘導体などやその塩などが挙げられる。これら以外にも本発明の化粧品基材の特性を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中などで表記されている%は、特にその単位を付記しないかぎり、いずれも質量%である。また、実施例などの説明に先立って、実施例中などで採用するアミノ態窒素と総窒素量の測定法及び全酸性官能基のモル数の推定法について説明する。
[アミノ態窒素と総窒素量の測定法]
実施例中などでのアミノ態窒素量の測定は、ファンスレーク(van Slyke)法によって行う。また、総窒素量の測定は、改良デュマ法によって行う。
実施例中などでのアミノ態窒素量の測定は、ファンスレーク(van Slyke)法によって行う。また、総窒素量の測定は、改良デュマ法によって行う。
[全酸性官能基のモル数の推定法]
アシルペプチドの全酸性官能基のモル数は以下のようにして求める。つまり、ファンスレーク法によって測定して得られたペプチドのアミノ態窒素量から求めたアミノ態窒素のモル数と等モルの末端カルボキシ基が存在するものとする。また、アミノ酸分析によって得られた酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、及びシステイン酸)の存在モル数をペプチドの側鎖カルボキシ基とスルホ基の総モル数とする。そして、これら末端カルボキシ基、並びに、側鎖カルボキシ基とスルホ基、さらに、前記一般式(I)で表される置換基中のカルボキシ基のモル数の和をアシルペプチドの全酸性官能基のモル数と推定する。
アシルペプチドの全酸性官能基のモル数は以下のようにして求める。つまり、ファンスレーク法によって測定して得られたペプチドのアミノ態窒素量から求めたアミノ態窒素のモル数と等モルの末端カルボキシ基が存在するものとする。また、アミノ酸分析によって得られた酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、及びシステイン酸)の存在モル数をペプチドの側鎖カルボキシ基とスルホ基の総モル数とする。そして、これら末端カルボキシ基、並びに、側鎖カルボキシ基とスルホ基、さらに、前記一般式(I)で表される置換基中のカルボキシ基のモル数の和をアシルペプチドの全酸性官能基のモル数と推定する。
なお、実施例で使用したペプチドのアミノ酸重合度〔つまり、一般式(IV)におけるa+b+c+d、又は一般式(V)におけるe+f+g〕は、総窒素量とアミノ態窒素量の割合から算出した。また、日立製作所社製のアミノ酸自動分析装置を用いたアミノ酸分析によってa:b:c:dやe+f:gを求め、アミノ酸重合度からa、b、c、d、e+f及びgの値を求めた。また、実施例中で使用している各タンパク質加水分解物は、それぞれのタンパク源を、酸、アルカリ又は酵素を使用した公知の方法によって加水分解したものである。
次に実施例1~9でアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩の具体例について説明する。そして、それらの実施例1~9に次いで示す比較例1~9ではペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩の具体例について説明し、比較例10ではアシルペプチドの一例としてのサクシニル化エンドウペプチドについて具体的に説明し、比較例11ではペプチドの一例としてのエンドウペプチドについて具体的に説明する。
実施例1:サクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のエンドウペプチド(「エンドウタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「エンドウペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=2.5、b=0.5、c=1.4、d=0.1、a+b+c+d=4.5〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、エンドウペプチドのアミノ基に対して1.5当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のエンドウペプチド(「エンドウタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「エンドウペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=2.5、b=0.5、c=1.4、d=0.1、a+b+c+d=4.5〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、エンドウペプチドのアミノ基に対して1.5当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水コハク酸の加水分解によって生じたコハク酸を除去し、サクシニル化エンドウペプチド溶液を得た。
このサクシニル化エンドウペプチド溶液に塩酸を加え、pHを2.5にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったサクシニル化エンドウペプチド溶液を得た。
続いて、前記サクシニル化エンドウペプチド溶液を80℃で加熱撹拌し、サクシニル化エンドウペプチドの全酸性官能基に対して60モル%に相当する量のセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、サクシニル化エンドウペプチドを中和し、セトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、サクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の溶液を98g得た。この実施例1の「サクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はサクシニル化エンドウペプチドの全酸性官能基に対して60モル%であった。
実施例2:サクシニル化ダイズペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のダイズペプチド(「ダイズタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「ダイズペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=1.7、b=0.3、c=1.2、d=0、a+b+c+d=3.2〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ダイズペプチドのアミノ基に対して1.5当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のダイズペプチド(「ダイズタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「ダイズペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=1.7、b=0.3、c=1.2、d=0、a+b+c+d=3.2〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ダイズペプチドのアミノ基に対して1.5当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水コハク酸の加水分解によって生じたコハク酸を除去し、サクシニル化ダイズペプチド溶液を得た。
このサクシニル化ダイズペプチド溶液に塩酸を加え、pHを2.5にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったサクシニル化ダイズペプチド溶液を得た。
続いて、前記サクシニル化ダイズペプチド溶液を80℃で加熱撹拌し、サクシニル化ダイズペプチドの全酸性官能基に対して100モル%に相当する量のイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、サクシニル化ダイズペプチドを中和し、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、サクシニル化ダイズペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の溶液を136g得た。この実施例2の「サクシニル化ダイズペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はサクシニル化ダイズペプチドの全酸性官能基に対するすべて(つまり、100モル%)であった。
実施例3:サクシニル化ゴマペプチドのベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のゴマペプチド(「ゴマタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「ゴマペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=5.6、b=1.4、c=3.0、d=0、a+b+c+d=10.0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ゴマペプチドのアミノ基に対して1.7当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のゴマペプチド(「ゴマタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「ゴマペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=5.6、b=1.4、c=3.0、d=0、a+b+c+d=10.0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ゴマペプチドのアミノ基に対して1.7当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水コハク酸の加水分解によって生じたコハク酸を除去し、サクシニル化ゴマペプチド溶液を得た。
このサクシニル化ゴマペプチド溶液に塩酸を加え、pHを2.5にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったサクシニル化ゴマペプチド溶液を得た。
続いて、前記サクシニル化ゴマペプチド溶液を80℃で加熱撹拌し、サクシニル化ゴマペプチドの全酸性官能基に対して50モル%に相当する量のベヘン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、サクシニル化ゴマペプチドを中和し、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、サクシニル化ゴマペプチドのベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の分散液を69g得た。この実施例3の「サクシニル化ゴマペプチドのベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるベヘン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はサクシニル化ゴマペプチドの全酸性官能基に対して50モル%であった。
実施例4:サクシニル化ケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のケラチンペプチド(「ケラチン加水分解物」を簡略化して前記のように「ケラチンペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=2.7、b=0.4、c=0.9、d=0.1、a+b+c+d=4.1〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ケラチンペプチドのアミノ基に対して1.7当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のケラチンペプチド(「ケラチン加水分解物」を簡略化して前記のように「ケラチンペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=2.7、b=0.4、c=0.9、d=0.1、a+b+c+d=4.1〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ケラチンペプチドのアミノ基に対して1.7当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水コハク酸の加水分解によって生じたコハク酸を除去し、サクシニル化ケラチンペプチド溶液を得た。
このサクシニル化ケラチンペプチド溶液に塩酸を加え、pHを2.0にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったサクシニル化ケラチンペプチド溶液を得た。
続いて、前記サクシニル化ケラチンペプチド溶液を80℃で加熱撹拌し、サクシニル化ケラチンペプチドの全酸性官能基に対して70モル%に相当する量のセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、サクシニル化ケラチンペプチドを中和し、セトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、サクシニル化ケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の溶液を97g得た。この実施例4の「サクシニル化ペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はサクシニル化ケラチンペプチドの全酸性官能基に対して70モル%であった。
実施例5:サクシニル化ポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のポリアスパラギン酸〔一般式(V)において、e+f=8.0、g=0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ポリアスパラギン酸のアミノ基に対して1.8当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のポリアスパラギン酸〔一般式(V)において、e+f=8.0、g=0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ポリアスパラギン酸のアミノ基に対して1.8当量に相当する量の無水コハク酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水コハク酸の加水分解によって生じたコハク酸を除去し、サクシニル化ポリアスパラギン酸溶液を得た。
このサクシニル化ポリアスパラギン酸溶液に塩酸を加え、pHを2.0にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったサクシニル化ポリアスパラギン酸溶液を得た。
続いて、前記サクシニル化ポリアスパラギン酸溶液を80℃で加熱撹拌し、サクシニル化ポリアスパラギン酸の全酸性官能基に対して40モル%に相当する量のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、サクシニル化ポリアスパラギン酸を中和し、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、サクシニル化ポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の溶液を76g得た。この実施例5の「サクシニル化ポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はサクシニル化ポリアスパラギン酸の全酸性官能基に対して40モル%であった。
実施例6:マレイル化コムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のコムギペプチド(「コムギタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「コムギペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=36.2、b=12.2、c=34.5、d=0.6、a+b+c+d=83.5〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、コムギペプチドのアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水マレイン酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のコムギペプチド(「コムギタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「コムギペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=36.2、b=12.2、c=34.5、d=0.6、a+b+c+d=83.5〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、コムギペプチドのアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水マレイン酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液に塩酸を添加しpHを2.0にすることで、マレイル化コムギペプチドを不溶化させた。この不溶物を水で洗浄し、無機塩類と無水マレイン酸の加水分解によって生じたマレイン酸を除去し、酸性官能基が遊離状態になったマレイル化コムギペプチド分散体を得た。
続いて、前記マレイル化コムギペプチド分散体を80℃で加熱撹拌し、マレイル化コムギペプチドの全酸性官能基に対して90モル%に相当する量のイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、マレイル化コムギペプチドを中和し、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、マレイル化コムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の分散液を158g得た。この実施例6の「マレイル化コムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩」におけるイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はマレイル化コムギペプチドの全酸性官能基に対して90モル%であった。
実施例7:マレイル化ポリグルタミン酸のセトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
濃度30%のポリグルタミン酸〔一般式(V)において、e+f=0、g=20.0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ポリグルタミン酸のアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水マレイン酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のポリグルタミン酸〔一般式(V)において、e+f=0、g=20.0〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、ポリグルタミン酸のアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水マレイン酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水マレイン酸の加水分解によって生じたマレイン酸を除去し、マレイル化ポリグルタミン酸溶液を得た。
このマレイル化ポリグルタミン酸溶液に塩酸を加え、pHを2.0にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったマレイル化ポリグルタミン酸溶液を得た。
続いて、前記マレイル化ポリグルタミン酸溶液を80℃で加熱撹拌し、マレイル化ポリグルタミン酸の全酸性官能基に対して50モル%に相当する量のセトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを添加して、マレイル化ポリグルタミン酸を中和し、セトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、マレイル化ポリグルタミン酸のセトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩の濃度40%の溶液を207g得た。この実施例7の「マレイル化ポリグルタミン酸のセトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩」におけるセトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドによる中和率はマレイル化ポリグルタミン酸の全酸性官能基に対して50モル%であった。
実施例8:フタロイル化コメペプチドのイソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
濃度30%のコメペプチド(「コメタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「コメペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=31.3、b=5.9、c=12.8、d=0.3、a+b+c+d=50.3〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、コメペプチドのアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水フタル酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のコメペプチド(「コメタンパク質加水分解物」を簡略化して前記のように「コメペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=31.3、b=5.9、c=12.8、d=0.3、a+b+c+d=50.3〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、コメペプチドのアミノ基に対して4.0当量に相当する量の無水フタル酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液に塩酸を添加しpHを2.0にすることで、フタロイル化コメペプチドを不溶化させた。この不溶物を水で洗浄し、無機塩類と無水フタル酸の加水分解によって生じたフタル酸を除去し、酸性官能基が遊離状態になったフタロイル化コメペプチド分散体を得た。
続いて、前記フタロイル化コメペプチド分散体を80℃で加熱撹拌し、フタロイル化コメペプチドの全酸性官能基に対して80モル%に相当する量のイソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを添加して、フタロイル化コメペプチドを中和し、イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、フタロイル化コメペプチドのイソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩の濃度40%の分散液を107g得た。この実施例8の「フタロイル化コメペプチドのイソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩」におけるイソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩による中和率はフタロイル化コメペプチドの全酸性官能基に対して80モル%であった。
実施例9:フタロイル化カゼインペプチドの水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩
濃度30%のカゼインペプチド(「カゼイン加水分解物」を簡略化して前記のように「カゼインペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=3.6、b=0.8、c=1.8、d=0、a+b+c+d=6.2〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、カゼインペプチドのアミノ基に対して3.0当量に相当する量の無水フタル酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
濃度30%のカゼインペプチド(「カゼイン加水分解物」を簡略化して前記のように「カゼインペプチド」で示す)〔一般式(IV)において、a=3.6、b=0.8、c=1.8、d=0、a+b+c+d=6.2〕の水溶液50gに水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。この溶液を55℃に加温し、カゼインペプチドのアミノ基に対して3.0当量に相当する量の無水フタル酸を添加し、2時間撹拌し、反応を行った。
次に、反応液を電気透析装置で処理し、無水フタル酸の加水分解によって生じたフタル酸を除去し、フタロイル化カゼインペプチド溶液を得た。
このフタロイル化カゼインペプチド溶液に塩酸を加え、pHを2.0にした後、電気透析装置で脱塩することで、酸性官能基が遊離状態になったフタロイル化カゼインペプチド溶液を得た。
続いて、前記フタロイル化カゼインペプチド溶液を80℃で加熱撹拌し、フタロイル化カゼインペプチドの全酸性官能基に対して50モル%に相当する量の水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミドを添加して、フタロイル化カゼインペプチドを中和し、水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩を形成させた。
以上の操作によって、フタロイル化カゼインペプチドの水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩の濃度40%の分散液を97g得た。この実施例9の「フタロイル化カゼインペプチドの水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩」における水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミドによる中和率はフタロイル化カゼインペプチドの全酸性官能基に対して50モル%であった。
[比較例の調製]
比較例1~9 ペプチドまたはペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩
実施例1~9で用いたアシルペプチド(サクシニル化ペプチド、マレイル化ペプチド、フタロイル化ペプチド)に代えて、下記に示すペプチド又はペプチド誘導体を用い、脂肪酸アミドアミンとの塩を調製し、比較例1~9とした。なお、用いたペプチドのアミノ酸重合度、脂肪酸アミドアミンの種類、添加した脂肪酸アミドアミンの量は、各ペプチド種に対応する実施例と同じにした。
比較例1~9 ペプチドまたはペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩
実施例1~9で用いたアシルペプチド(サクシニル化ペプチド、マレイル化ペプチド、フタロイル化ペプチド)に代えて、下記に示すペプチド又はペプチド誘導体を用い、脂肪酸アミドアミンとの塩を調製し、比較例1~9とした。なお、用いたペプチドのアミノ酸重合度、脂肪酸アミドアミンの種類、添加した脂肪酸アミドアミンの量は、各ペプチド種に対応する実施例と同じにした。
比較例1:エンドウペプチド
比較例2:ラウロイル化ダイズペプチド
比較例3:シリル化ゴマペプチド〔つまり、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル化ゴマペプチド〕
比較例4:ケラチンペプチド
比較例5:ポリアスパラギン酸
比較例6:コムギペプチド
比較例7:ポリグルタミン酸
比較例8:グリセリル化コメペプチド
比較例9:塩化N-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕カゼインペプチド
比較例2:ラウロイル化ダイズペプチド
比較例3:シリル化ゴマペプチド〔つまり、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル化ゴマペプチド〕
比較例4:ケラチンペプチド
比較例5:ポリアスパラギン酸
比較例6:コムギペプチド
比較例7:ポリグルタミン酸
比較例8:グリセリル化コメペプチド
比較例9:塩化N-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕カゼインペプチド
比較例10:サクシニル化エンドウペプチド
実施例1で用いたサクシニル化エンドウペプチドを脂肪酸アミドアミンとの塩を形成させることなく用い、これを比較例10とした。
実施例1で用いたサクシニル化エンドウペプチドを脂肪酸アミドアミンとの塩を形成させることなく用い、これを比較例10とした。
比較例11:エンドウペプチド
実施例1で用いたエンドウペプチドをサクシニル化せず、かつ脂肪酸アミドアミンとの塩を形成させることなく用い、これを比較例11とした。
実施例1で用いたエンドウペプチドをサクシニル化せず、かつ脂肪酸アミドアミンとの塩を形成させることなく用い、これを比較例11とした。
[評価用の毛髪サンプルの調製]
健康毛髪:下記(a)の処理をした後、(d)の処理のみを行った毛髪(対照例1)
損傷毛髪:下記(a)~(e)の処理を行った毛髪(対照例2)
サンプル処理毛髪:下記(A)~(C)の処理をした毛髪(実施例1~9及び比較例1~11)
なお、上記のサンプル処理毛髪とは、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩、比較例10のサクシニル化エンドウペプチド及び比較例11のエンドウペプチドをそれぞれ別々に用いて処理した毛髪を意味する。
健康毛髪:下記(a)の処理をした後、(d)の処理のみを行った毛髪(対照例1)
損傷毛髪:下記(a)~(e)の処理を行った毛髪(対照例2)
サンプル処理毛髪:下記(A)~(C)の処理をした毛髪(実施例1~9及び比較例1~11)
なお、上記のサンプル処理毛髪とは、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩、比較例10のサクシニル化エンドウペプチド及び比較例11のエンドウペプチドをそれぞれ別々に用いて処理した毛髪を意味する。
(a)アジア人毛髪を2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、毛髪表面に付着している汚れや油分を除去する。
(b)6%過酸化水素水と2%アンモニア水との混液中に30℃で、30分間浸漬し、ブリーチ(漂白)する。
(c)pH3.0クエン酸緩衝液中に5分間浸漬する。
(d)流水洗浄し、ドライヤーで乾燥する。
(e)(b)~(d)の処理を5回繰り返す。
(b)6%過酸化水素水と2%アンモニア水との混液中に30℃で、30分間浸漬し、ブリーチ(漂白)する。
(c)pH3.0クエン酸緩衝液中に5分間浸漬する。
(d)流水洗浄し、ドライヤーで乾燥する。
(e)(b)~(d)の処理を5回繰り返す。
(A)前記(a)~(e)の処理によって得た損傷毛髪を実施例1~9及び比較例1~11の各試料(つまり、各サンプル)の固形分濃度0.3%の水溶液中で40℃、10分間振とうする。
(B)流水洗浄後、ドライヤーで乾燥する。
(C)(A)~(B)の処理を5回繰り返す。
(B)流水洗浄後、ドライヤーで乾燥する。
(C)(A)~(B)の処理を5回繰り返す。
[評価]
前記処理を行って得た評価用の毛髪サンプル、つまり、健康毛髪、損傷毛髪、実施例1~9及び比較例1~11の試料(サンプル)で処理したサンプル処理毛髪を用いて、滑り性、疎水性及びくし通り性の評価を行う。
前記処理を行って得た評価用の毛髪サンプル、つまり、健康毛髪、損傷毛髪、実施例1~9及び比較例1~11の試料(サンプル)で処理したサンプル処理毛髪を用いて、滑り性、疎水性及びくし通り性の評価を行う。
1.滑り性の評価
摩擦感テスター(カトーテック株式会社製)を用いて動摩擦係数を測定することで、毛髪表面の滑り性を評価する。毛髪20本をスライドガラス上に並べて固定し、毛髪の根元から毛先に向けてセンサーを滑らせ、平均摩擦係数〔MIU(×10-1)〕を測定する。平均摩擦係数の値が小さい程、毛髪表面が滑らかであることを示す。
摩擦感テスター(カトーテック株式会社製)を用いて動摩擦係数を測定することで、毛髪表面の滑り性を評価する。毛髪20本をスライドガラス上に並べて固定し、毛髪の根元から毛先に向けてセンサーを滑らせ、平均摩擦係数〔MIU(×10-1)〕を測定する。平均摩擦係数の値が小さい程、毛髪表面が滑らかであることを示す。
2.疎水性の評価
毛髪1本に対し1.5μLの水滴を垂らし、毛髪と水滴との間にできる接触角(度)を測定する。これを各毛髪に対して10回行い、その平均値を求める。なお、接触角は値が大きい程、毛髪表面の疎水性が保たれていることを示す。
毛髪1本に対し1.5μLの水滴を垂らし、毛髪と水滴との間にできる接触角(度)を測定する。これを各毛髪に対して10回行い、その平均値を求める。なお、接触角は値が大きい程、毛髪表面の疎水性が保たれていることを示す。
3.くし通り性の評価
コーミングテスター(テクノ・ハシモト製)を用いて、前記の処理毛髪で作成した毛束のくし通り性を評価する。毛束1つに対し、上記コーミングテスターを用いてコーミングを10回行い、その際に生じる荷重平均値を測定し比較することで、くし通り性を評価する。毛束は各被検体に対して3つ用意し、それぞれ10回ずつコーミングを行い、その平均値を求める。なお、荷重平均値(N)は値が小さい程、毛髪のくし通り性が良いことを示す。
コーミングテスター(テクノ・ハシモト製)を用いて、前記の処理毛髪で作成した毛束のくし通り性を評価する。毛束1つに対し、上記コーミングテスターを用いてコーミングを10回行い、その際に生じる荷重平均値を測定し比較することで、くし通り性を評価する。毛束は各被検体に対して3つ用意し、それぞれ10回ずつコーミングを行い、その平均値を求める。なお、荷重平均値(N)は値が小さい程、毛髪のくし通り性が良いことを示す。
これら「滑り性」、「疎水性」、「くし通り性」の評価結果を表1に示す。表1には、実施例1~9および比較例1~11のサンプル名についても表示しているが、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩や比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩の名称は長く、スペース上の関係で、表1中に書ききることが困難なので、それらの脂肪酸アミドアミン塩部分については、次のように簡略化して示す。
CSEE塩:セトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
ISEE塩:イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
BHEE塩:ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
PLEE塩:パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
CSMP塩:セトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
ISMP塩:イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
HREE塩:水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩
ISEE塩:イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
BHEE塩:ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
PLEE塩:パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩
CSMP塩:セトステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
ISMP塩:イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド塩
HREE塩:水添樹脂酸ジエチルアミノエチルアミド塩
表1に示すように、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩(それぞれ異なるが、ここでは総称で表す)で処理した毛髪は、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩(実施例のものと同様に、それぞれ異なるが、ここでは総称で表す)で処理した毛髪や、比較例10のサクシニル化エンドウペプチドで処理した毛髪、比較例11のエンドウペプチドで処理した毛髪に比べて、滑り性の評価では平均摩擦係数が小さく、疎水性の評価では接触角が大きく、くし通り性の評価では荷重平均値が小さく、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は、損傷毛髪に対して、疎水性と滑らかさを付与し、くし通り性を良好にする効果が優れていることが分かる。
また、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩で処理した毛髪も、対照例2で示す損傷毛髪や比較例10のサクシニル化エンドウペプチドで処理した毛髪、比較例11のエンドウペプチドで処理した毛髪などと比べると、滑り性の評価では平均摩擦係数が小さく、疎水性の評価では接触角が大きく、くし通り性の評価では荷重平均値が小さく、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩も、損傷毛髪に対して、疎水性と滑らかさを付与し、くし通り性を良好にする効果があったが、その効果は実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩に比べると小さかった。
すなわち、例えば、共にエンドウペプチドを用いている実施例1と比較例1とを比較すると、表1に示すように、実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩(表1では、「CSEE塩」で表示)で処理した毛髪の平均摩擦係数は0.75であったが、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩(表1では、「CSEE塩」で表示)で処理した毛髪の平均摩擦係数は0.91であり、実施例1の方が比較例1より、滑り性(滑らかさ)の指標となる平均摩擦係数が0.16も小さかった。同様に、実施例2以後についても、ペプチドが共通する実施例と比較例との間で比較すると、実施例の方が比較例より平均摩擦係数が小さい。このことから、本発明のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる化粧品基材は、損傷した毛髪に対して、滑らかさを付与する効果が高いことが分かる。
また、接触角に関しても、実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪の接触角は99.9度であったが、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪の接触角は92.0度であり、実施例1の方が比較例1より、疎水性の指標となる接触角が7.9度も大きかった。同様に実施例2以後についても、ペプチドが共通する実施例と比較例との間で比較すると、実施例の方が比較例より接触角が大きい。このことから、本発明のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる化粧品基材は、損傷した毛髪に対して、疎水性を付与する効果が高いことが分かる。
さらに、くし通り性に関しても、実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪の荷重平均値は9.50Nであったが、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪の荷重平均値は13.00Nであり、実施例1の方が比較例1より、くし通り性の指標となる荷重平均値が3.5Nも小さかった。同様に実施例2以後についても、ペプチドが共通する実施例と比較例との間で比較すると、実施例の方が比較例より荷重平均値が小さい。このことから、本発明のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる化粧品基材は、毛髪のくし通り性を良好にする効果が高いことがわかる。
また、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩で処理した毛髪は、対照例2で示す損傷毛髪より、くし通り性の指標となる荷重平均値が小さかったものの、対照例1で示す健康毛髪に比べると、健康毛髪より荷重平均値が大きく、比較例1~9のペプチド又はペプチド誘導体の脂肪酸アミドアミン塩は、損傷する以前の健康毛髪以上にくし通り性を良好にすることはできなかった。これに対して、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩で処理した毛髪は、対照例1で示す健康毛髪より荷重平均値が小さく、実施例1~9のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩は、損傷した毛髪のくし通り性を損傷する以前の状態より良好にすることができ、毛髪のくし通り性を著しく良好にさせることができることが分かる。
さらに、比較例10のサクシニル化エンドウペプチドで処理した毛髪と、比較例11のエンドウペプチドで処理した毛髪を比較すると、平均摩擦係数、接触角、荷重平均値のいずれも大差はなかったが、実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪と、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩で処理した毛髪を比較すると、前記のように、平均摩擦係数、接触角、荷重平均値のいずれに関しても、両者の差が大きく、本発明のアシルペプチドの脂肪酸アミドアミン塩からなる化粧品基材は、ペプチドの活性アミノ基に一般式(I)で表される置換基が結合したアシル化による効果と、アシルペプチドへの脂肪酸アミドアミン塩の形成による効果が相乗的に奏することが分かる。
実施例10~11及び比較例12~13:ヘアコンディショナー
実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、実施例4のサクシニル化ケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、及び、比較例4のケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を用いて、表2に示す組成のヘアトリートメントを実施例10~11及び比較例12~13として調製した。各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
実施例1のサクシニル化エンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、実施例4のサクシニル化ケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、比較例1のエンドウペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、及び、比較例4のケラチンペプチドのセトステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を用いて、表2に示す組成のヘアトリートメントを実施例10~11及び比較例12~13として調製した。各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
前記の損傷毛髪2gに対して、実施例10~11及び比較例12~13のヘアコンディショナーをそれぞれ1g塗布し、流水洗浄後、前記と同様の方法で滑り性、疎水性及びくし通り性を評価した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例10~11のヘアコンディショナーで処理した毛髪は、比較例12~13のヘアコンディショナーで処理した毛髪に比べて、接触角が大きく、平均摩擦係数が小さく、荷重平均値が小さく、実施例10~11のヘアコンディショナーの方が比較例12~13のヘアコンディショナーより、損傷した毛髪に対して、疎水性と滑らかさを付与し、くし通り性を良好にする効果が高いことが分かる。
実施例12~13及び比較例14~15:ヘアミスト
実施例5のサクシニル化ポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、実施例6のマレイル化コムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、比較例5のポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、及び、比較例6のコムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を用いて、表4に示す組成のヘアミストを実施例12~13及び比較例14~15として調製した。各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
実施例5のサクシニル化ポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、実施例6のマレイル化コムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、比較例5のポリアスパラギン酸のパルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド塩、及び、比較例6のコムギペプチドのイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド塩を用いて、表4に示す組成のヘアミストを実施例12~13及び比較例14~15として調製した。各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
前記の損傷毛髪2gに対して、実施例12~13及び比較例14~15のヘアミストをそれぞれ0.5g塗布し、乾燥後、前記と同様の方法で滑り性、疎水性及びくし通り性を評価した。その結果を表5に示す。
表5に示すように、本発明の実施例12~13のヘアミストで処理した毛髪は、比較例14~15のヘアミストで処理した毛髪に比べて、接触角が大きく、平均摩擦係数が小さく、荷重平均値が小さく、実施12~13のヘアミストの方が比較例14~15のヘアミストより、損傷した毛髪に対して、疎水性と滑らかさを付与し、くし通り性を良好にする効果が高いことが分かる。
本発明によれば、損傷した毛髪に対して、疎水性及び滑らかさを付与し、該毛髪のくし通り性を良好にする化粧品基材を提供することができ、また、該化粧品基材を含有させることによって、上記作用を発揮する化粧品を提供することができる。
Claims (8)
- 前記ペプチドが、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧品基材。
- 前記構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチドが、植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物、ポリアスパラギン酸又はポリグルタミン酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧品基材。
- 前記植物タンパク質加水分解物が、エンドウタンパク質加水分解物であることを特徴とする請求項3に記載の化粧品基材。
- 前記アシルペプチドのペプチド部のアミノ酸平均重合度が、2~100であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品。
- 前記化粧品基材の含有量が、0.1~10質量%であることを特徴とする請求項7に記載の化粧品。
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