WO2012133570A1 - 容器入り液状又はペースト状食品組成物、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
水分が低いために微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯に分散することができる、加熱により所望の粘性を発現する容器入り液状又はペースト状食品組成物を提供することを目的とする。 本発明は、澱粉、糖質及び水を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、前記液状又はペースト状食品組成物中の水分に対する糖質の割合が80重量%以上であり、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物に関する。
Description
本発明は、所定量の水及び必要に応じて他の食品材料ともに加熱調理され、最終食品に粘性を付与する用途で用いられる、容器入り液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法に関する。
従来から、澱粉を含む濃縮タイプの容器入りペースト状ルウ製品等の、容器入り液状又はペースト状食品組成物が市販されている。この液状又はペースト状食品組成物は、容器から取り出され、所定量の水を加えて煮込み調理され、適宜所望の食品材料と組み合わされて、最終食品となる。煮込み調理の段階で澱粉が糊化することにより最終製品に粘性(とろみ)が付与される。
このような容器入り液状又はペースト状食品組成物に関し、特許文献1には、ポリ容器等から絞り出せる程度の流動性を有するペースト状カレールーとして、水、20~40℃で流動性を有する油脂、実質的にα化されていない澱粉、カレー粉、香辛料、調味料等を主成分とし、油脂が分散相、水系が連続相からなる構造を有する組成物が開示されている。特許文献1のペースト状カレールーは加熱殺菌処理されないことから、微生物安全性の確保が十分でないという問題がある。また、特許文献1の実施例で示されている油脂の含有量は30%程度と高く、健康志向上、風味上、保存中の油分離防止の観点から好ましくないという問題がある。
また、特許文献2には、熱湯を加えただけで速やかに調味できるペースト状インスタントスープ又はソースの製造方法が開示されている。引用文献2の方法では調味料に澱粉を添加し、容器に充填する前又は後に60~78℃で加熱殺菌を行う。加熱殺菌条件として実施例では63℃、30分間の条件が採用されている。熱湯を加えて得られる最終食品において粘性が付与されるようにするため、澱粉として、純水中で加熱したときの粘度上昇開始温度(糊化開始温度)が40℃以上70℃以下である澱粉を用いることが開示されている。しかしながら、引用文献2の方法では、加熱殺菌温度が低いために微生物安全性が十分でないという問題や、糊化開始温度が70℃以下の澱粉を使用するために殺菌温度を高くした場合にはペーストの流動性に支障をきたすという問題がある。
一方、特許文献3には、糖質と塩の含有量を所定の範囲に設定して澱粉の糊化温度を上昇させることにより、十分に高温(75℃以上)での加熱殺菌処理を施しても容器からの取り出しが容易であり、かつ所定量の水を加えて煮込み調理をした場合にも最終食品に十分なとろみを付与することができる、加熱殺菌処理が施された容器入りペースト状ルウの製造方法が開示されている。しかしながら、微生物安全性を高めるためには水分を下げることが好ましいにも関わらず、特許文献3の組成物において仮に水分を30重量%未満にまで低下させた場合には、組成物が硬くなってしまい、容器から取り出すことが困難であり、且つ、水に分散し難いため使い勝手が悪いという課題のあることが判明した。
本発明は、水分が低いために微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができる、加熱により所望の粘性を発現する容器入り液状又はペースト状食品組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、この特徴を有する容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)澱粉、糖質及び水を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、前記液状又はペースト状食品組成物中の水分に対する糖質の割合が80重量%以上であり、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(2)60℃の温水150mlに液状又はペースト状食品組成物50gを添加し撹拌混合して混合物を調製し、続いて該混合物を撹拌混合しながら該混合物の温度が95℃に達するまで加熱し、続いて60℃まで冷却したときに、B型粘度計により測定される、調製直後の時点での該混合物を60℃に調温したときの粘度に対し、95℃まで加熱し60℃まで冷却した時点での該混合物の粘度が2倍以上である、(1)に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(3)前記糖質の80重量%以上が、糖アルコール、トレハロース、マルトシルトレハロース及びデキストロース当量(DE)が15よりも高い糖質のうちから選ばれる1以上で且つ低甘味のものである、(1)又は(2)に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(4)前記液状又はペースト状食品組成物中の油脂含量が20重量%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(5)澱粉、糖質、水、及び食品材料を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
前記液状又はペースト状食品組成物の水分に対する割合が80重量%以上となる量の糖質、水、及び食品材料を含有する原料を加熱して、加熱調理組成物を調製する工程と、
前記加熱調理組成物と澱粉とを混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
前記液状又はペースト状食品組成物に対し、該液状又はペースト状食品組成物の中心温度が70~90℃に達するように加熱殺菌処理を施す工程と
を有する容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
前記液状又はペースト状食品組成物の水分に対する割合が80重量%以上となる量の糖質、水、及び食品材料を含有する原料を加熱して、加熱調理組成物を調製する工程と、
前記加熱調理組成物と澱粉とを混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
前記液状又はペースト状食品組成物に対し、該液状又はペースト状食品組成物の中心温度が70~90℃に達するように加熱殺菌処理を施す工程と
を有する容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-080768号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明により、水分が低いために微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができる、加熱により所望の粘性を発現する容器入り液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法が提供される。
1.原料
1.1.水
本発明の液状又はペースト状食品組成物(以下「本発明の食品組成物」という場合がある)は、該組成物の全重量あたりの水分含量が30重量%未満、好ましくは29.5重量%以下であることを特徴とする。水分含量がこの範囲にある場合には、微生物の増殖リスクが低減される。本発明の食品組成物の水分活性(Aw)が0.87以下であることが好ましい。水分活性の測定はノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。
1.1.水
本発明の液状又はペースト状食品組成物(以下「本発明の食品組成物」という場合がある)は、該組成物の全重量あたりの水分含量が30重量%未満、好ましくは29.5重量%以下であることを特徴とする。水分含量がこの範囲にある場合には、微生物の増殖リスクが低減される。本発明の食品組成物の水分活性(Aw)が0.87以下であることが好ましい。水分活性の測定はノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。
水分含量の下限値は特に限定されないが、通常は、水分含量は本発明の食品組成物の全重量あたり10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。
1.2.澱粉
本発明に用いられる澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉が挙げられる。澱粉は、小麦粉、米粉、もち米粉等の澱粉を含有する穀物粉の形態で添加されてもよい。穀物粉を単独で又は油脂を混合して加熱し、風味付けや分散性を向上させたものを使用してもよい。上記澱粉に対し、湿熱処理を行った湿熱処理澱粉や、架橋や官能基付与等の化学修飾した加工澱粉を使用してもよい。澱粉は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉が挙げられる。澱粉は、小麦粉、米粉、もち米粉等の澱粉を含有する穀物粉の形態で添加されてもよい。穀物粉を単独で又は油脂を混合して加熱し、風味付けや分散性を向上させたものを使用してもよい。上記澱粉に対し、湿熱処理を行った湿熱処理澱粉や、架橋や官能基付与等の化学修飾した加工澱粉を使用してもよい。澱粉は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の食品組成物中の澱粉の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、5~50重量%が好ましく、5~45重量%がより好ましく、10~40重量%が特に好ましい。
本発明の食品組成物中の澱粉の量の測定は、α化していない澱粉が水に不溶であることを利用して水溶性画分と分離し、不溶性画分に含まれる澱粉を加熱糊化させたのち、グルコアミラーゼで分解し、グルコース量を定量することにより測定することができる。なお、ここで、本発明の食品組成物が油脂を含有するものである場合には、あらかじめ脱脂処理を行うことが好ましい。
1.3.糖質
本発明に用いられる糖質としては、ブドウ糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖、オリゴ糖、マルトシルトレハロース、水あめ、デキストリン、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等)等が挙げられる。糖質は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。糖質は水溶性の糖質であることが好ましい。糖質にはα化していない澱粉は含まれない。
本発明に用いられる糖質としては、ブドウ糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖、オリゴ糖、マルトシルトレハロース、水あめ、デキストリン、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等)等が挙げられる。糖質は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。糖質は水溶性の糖質であることが好ましい。糖質にはα化していない澱粉は含まれない。
本発明の食品組成物における糖質の添加量を増やしても風味のバランスが保たれるよう、低甘味(甘味度100未満)の糖質を用いることが好ましい。甘味度とは、ショ糖の甘さを100とした場合の甘味料の甘さの指標であり、一定量の濃度(例えば10重量%)のショ糖水溶液と他の甘味料水溶液とを比較し、同等の甘さを感じる濃度から求めることができる。
糖質としては、糖アルコール、トレハロース、マルトシルトレハロース、及びデキストロース当量(DE)が15よりも高い糖質(特にデキストリン)のうちから選ばれる1以上で且つ低甘味のものを用いることが好ましい。なお、DEが15以下の糖質を用いる場合、液状又はペースト状食品組成物の流動性が低下するとともに、該組成物を水又は湯とともに加熱調理した際に粘性が十分に付与されないため好ましくない。DEの測定方法は還元糖をグルコースとして測定し、その還元糖の全固形分に対する割合を求めることにより測定することができる。
本発明の食品組成物では、水分に対する糖質の割合を80重量%以上とすることで、組成物の流動性を高めるとともに、加熱殺菌時の澱粉のα化を抑制し、加熱殺菌後も組成物の流動性を維持することができる。
水分に対する糖質の割合に上限値は特にないが、典型的には水分に対して糖質が300重量%以下である。糖質の割合を高めると甘味が強くなるとともに、相対的に澱粉その他調味原料の濃度が低くなるため、所定の風味物性を形成するのに必要な製品の量が多くなる。
本発明の食品組成物中の糖質の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、15~65重量%が好ましく、17~60重量%がより好ましく、19~55重量%が特に好ましい。
本発明の食品組成物中の糖質の測定方法は、食品組成物の総量から、水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分、澱粉の量を差し引いた数値として算出される。水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分は、栄養表示基準の測定方法に準じて測定することができる。澱粉は上記1.2に示した方法に従い測定することができる。
1.4.油脂
本発明の食品組成物は、牛脂、豚脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、オリーブオイル等の植物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂を適宜含有することができる。
本発明の食品組成物は、牛脂、豚脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、オリーブオイル等の植物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂を適宜含有することができる。
健康上の観点、風味上の観点、本発明の食品組成物の保管時の分離安定性の観点から、油脂含量は20重量%以下であることが望ましい。
油脂(特に融点が低い、常温で液体の油脂)は食品組成物の流動性を向上させる作用を有するため、一般に油脂含量を20重量%以下とすると、食品組成物の流動性を保つことが難しくなるが、本発明の食品組成物では水分に対する糖質の割合が80重量%以上であるため、流動性を保つことができる。
本発明の食品組成物は、油脂の分離安定性のために、乳化剤を更に含有しても良い。
1.5.他の食品材料
本発明の食品組成物には所望の風味、味を付与するために任意の食品材料を更に含むことが出来る。任意の食品材料としては、例えば食塩等の塩類、肉エキス、野菜エキス、味噌、醤油、乳製品、ワイン、酸味料、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、香辛料等が挙げられる。
本発明の食品組成物には所望の風味、味を付与するために任意の食品材料を更に含むことが出来る。任意の食品材料としては、例えば食塩等の塩類、肉エキス、野菜エキス、味噌、醤油、乳製品、ワイン、酸味料、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、香辛料等が挙げられる。
2.液状又はペースト状食品組成物
本発明の食品組成物は、水を連続相とし、油を分散相とする容器入りの液状又はペースト状食品組成物である。
本発明の食品組成物は、水を連続相とし、油を分散相とする容器入りの液状又はペースト状食品組成物である。
本発明の食品組成物は実質的にα化されていない澱粉を含んでおり、偏光板を用いた顕微鏡観察により、偏光十字が観察される。
本発明の食品組成物は、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする。この粘度を有する本発明の食品組成物は流動性が十分に高いため、湯や水に加えたときに速やかに且つ均一に分散することができる。B型粘度計により測定される粘度の値は、粘性域に応じて適当なローターを用いて、30rpmで30秒後に測定される値を指す。
本発明の食品組成物を加熱調理して得られる最終食品としては、粘性のあるソース(ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、スープカレー、トマトソース、あんかけ、カスタードソース等)を使用するカレー、シチュー、チャウダー、ハヤシ、グラタン、パスタ、中華あんかけ料理、カスタードクリームなどを例示することができる。
3.製造方法
本発明の食品組成物の製造方法においては、加熱殺菌処理を施す。加熱殺菌は、例えば蒸気、熱水等により行うことができる。その条件は殺菌を十分なものとし、得られる食品組成物の保存性を十分なものとするように設定することが好ましい。例えば、食品組成物の温度(中心温度)が70℃~90℃となるように加熱殺菌処理を行うことが好ましい。加熱殺菌処理では、例えば加熱殺菌処理が後述する後殺菌の場合には上記温度を5分間~60分間保持するのが好ましく、また、加熱殺菌処理が後述するホットパック殺菌の場合には上記温度を5秒間~5分間保持することが好ましい。
本発明の食品組成物の製造方法においては、加熱殺菌処理を施す。加熱殺菌は、例えば蒸気、熱水等により行うことができる。その条件は殺菌を十分なものとし、得られる食品組成物の保存性を十分なものとするように設定することが好ましい。例えば、食品組成物の温度(中心温度)が70℃~90℃となるように加熱殺菌処理を行うことが好ましい。加熱殺菌処理では、例えば加熱殺菌処理が後述する後殺菌の場合には上記温度を5分間~60分間保持するのが好ましく、また、加熱殺菌処理が後述するホットパック殺菌の場合には上記温度を5秒間~5分間保持することが好ましい。
本発明の食品組成物は容器に充填され密封される。容器としては内容物を取り出し可能なものであれば限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶、瓶容器などを利用することができる。
食品組成物の容器への充填密閉と加熱殺菌処理との順序は特に限定されず、加熱殺菌処理は食品組成物の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、食品組成物を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、食品組成物を予め加熱殺菌処理(好ましくは70℃~90℃の温度で加熱殺菌処理)し、加熱殺菌処理の温度(好ましくは70℃以上)を保持した状態で食品組成物を容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。
本発明の食品組成物の製造においては、加熱殺菌処理の前に、食品材料の存在下で加熱調理する工程を更に含んでもよい。また、前述のホットパック殺菌の場合には、加熱調理工程を加熱殺菌処理と兼ねて行うこともできる。加熱調理工程において澱粉が糊化する可能性があることから、好ましくは、予め糖質、水、食品材料等の混合物を、澱粉を添加せずに加熱調理し、得られた加熱調理組成物を澱粉と混合して液状又はペースト状食品組成物を調製し、該液状又はペースト状食品組成物を加熱殺菌する。
4.製品保管条件
本発明の容器入り液状又はペースト状食品組成物は、常温保管、冷蔵保管、冷凍保管など、適切な保管条件で保管することができる。
本発明の容器入り液状又はペースト状食品組成物は、常温保管、冷蔵保管、冷凍保管など、適切な保管条件で保管することができる。
本発明の容器入り液状又はペースト状食品組成物は、冷凍時にも完全に固化せず柔軟性を維持することができる。この発明の容器入り液状又はペースト状食品組成物を冷凍したもの(冷凍品)は短時間で解凍することができ速やかに調理に利用することができるという利点を有する。
5.加熱調理後の粘度
本発明の食品組成物は実質的にα化されていない澱粉を含んでいるので、水や湯に分散させ、必要に応じて他の食品材料とともに加熱調理をすることにより、食品組成物中の澱粉がα化して粘性が発現され、十分なとろみが付与された食品が得られる。
本発明の食品組成物は実質的にα化されていない澱粉を含んでいるので、水や湯に分散させ、必要に応じて他の食品材料とともに加熱調理をすることにより、食品組成物中の澱粉がα化して粘性が発現され、十分なとろみが付与された食品が得られる。
すなわち、本発明の食品組成物50gを60℃の温水150mlに添加し撹拌混合して混合物を調製し、続いて該混合物を撹拌混合しながら該混合物の温度が95℃に達するまで加熱し、続いて60℃まで冷却したときに、B型粘度計により測定される、調製直後の時点での該混合物を60℃に調温したときの粘度に対し、95℃まで加熱し60℃まで冷却した時点での、同様に測定される該混合物の粘度が2倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上となる。具体的には、本発明の食品組成物を用いた加熱調理後の食品の60℃における粘度は、30mPa・s以上、より好ましくは50~20000mPa・s、更に好ましくは500~20000mPa・sであるのが望ましい。なお、B型粘度計により測定される粘度の値は、粘性域に応じて適当なローターを用いて、30rpmで30秒後に測定される値を指す。
実験1
実施例1~3及び比較例
表1の配合に示すように、澱粉、糖質、食塩、油脂及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理することによりペースト状食品組成物を調製し、得られたペースト状食品組成物を70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して、実施例1~3及び比較例の容器入りペースト状食品組成物を得た。加熱殺菌処理の前後でのペースト状食品組成物の粘度を、東機産業株式会社製BH型粘度計を用い、ローターNo.6、60℃、30rpm、30秒後の条件にて測定した。ペースト状食品組成物の粘度は以下同様に測定した。
実施例1~3及び比較例
表1の配合に示すように、澱粉、糖質、食塩、油脂及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理することによりペースト状食品組成物を調製し、得られたペースト状食品組成物を70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して、実施例1~3及び比較例の容器入りペースト状食品組成物を得た。加熱殺菌処理の前後でのペースト状食品組成物の粘度を、東機産業株式会社製BH型粘度計を用い、ローターNo.6、60℃、30rpm、30秒後の条件にて測定した。ペースト状食品組成物の粘度は以下同様に測定した。
得られた容器入りペースト状食品組成物50gを60℃の温水150mlに添加し、撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して粘性ソースを作り、続いて60℃まで冷却して粘度を測定した。温水への混合直後及び加熱調理後の粘性ソースの粘度を、東機産業株式会社製BL型粘度計で、粘性領域に応じて適当なローターを用いて、60℃、30rpm、30秒後の条件にて測定した。ペースト状食品組成物の温水への混合直後及び混合物の加熱調理後の粘度は以下同様に測定した。
表1に示すように、実施例1~3のペースト状食品組成物は、加熱調理のときに温水に速やか且つ均一に分散して粘度を発現し、滑らかでとろみのある粘性ソースであった。
これに対して、比較例のペースト状食品組成物は、加熱調理のときに温水に速やかに分散せずに加熱されるに伴いダマが多数発生し、粘度は発現したが、ざらつきがある粘性ソースであった。
実施例4
表1に示す実施例4の配合のうち、先ず、糖質、食塩、油脂及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理して加熱調理組成物を調製し、次いで、得られた加熱調理組成物に澱粉を添加して撹拌混合してペースト状食品組成物を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、実施例4の容器入りペースト状食品組成物を得た。
表1に示す実施例4の配合のうち、先ず、糖質、食塩、油脂及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理して加熱調理組成物を調製し、次いで、得られた加熱調理組成物に澱粉を添加して撹拌混合してペースト状食品組成物を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、実施例4の容器入りペースト状食品組成物を得た。
得られた容器入りペースト状食品組成物50gを60℃の温水150mlに添加し、撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して粘性ソースを作り、続いて60℃まで冷却して粘度を測定した。
実験2:各種形態の食品組成物への応用
実施例5(ベシャメルソースの素)
表2に示す<調味加熱配合>により、先ず、塩、水あめ、生クリーム、デキストリン及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表2に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してベシャメルソースの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りベシャメルソースの素を得た。
実施例5(ベシャメルソースの素)
表2に示す<調味加熱配合>により、先ず、塩、水あめ、生クリーム、デキストリン及び水を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表2に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してベシャメルソースの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りベシャメルソースの素を得た。
得られた容器入りベシャメルソースは表9に示す通りのものであったが、これを冷凍した。
このように冷凍した容器入りベシャメルソースの素は室温化に戻すと約5分で解凍することができ、このベシャメルソースの素50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してベシャメルソースを作った。
実施例6(カレールウ)
表3の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表3に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。
表3の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表3に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。
得られた容器入りカレールウは、表9に示す通りのものであり、このカレールウ50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してカレーソースを作った。
実施例7(カボチャのチャウダーの素)
表4の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表4に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合とコーンスターチを撹拌混合してカボチャのチャウダーの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカボチャのチャウダーの素を得た。
表4の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表4に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合とコーンスターチを撹拌混合してカボチャのチャウダーの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカボチャのチャウダーの素を得た。
得られた容器入りカボチャのチャウダーの素は、表9に示す通りのものであり、このカボチャのチャウダーの素50gを沸騰水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してカボチャのチャウダーを作った。
実施例8(カルボナーラソースの素)
表5の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理してペースト状のカルボナーラソースの素を調製し、得られたカルボナーラソースの素を70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して容器入りカルボナーラソースの素を得た。
表5の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理してペースト状のカルボナーラソースの素を調製し、得られたカルボナーラソースの素を70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して容器入りカルボナーラソースの素を得た。
得られた容器入りカルボナーラソースの素は、表9に示す通りのものであり、このカルボナーラソースの素50gを60℃の牛乳150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してカルボナーラソースを作った。
実施例9(回鍋肉調味料)
表6の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃まで冷却し、次いで、表6に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合とコーンスターチを撹拌混合してペースト状の回鍋肉調味料を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入り回鍋肉調味料を得た。
表6の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃まで冷却し、次いで、表6に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合とコーンスターチを撹拌混合してペースト状の回鍋肉調味料を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入り回鍋肉調味料を得た。
得られた容器入り回鍋肉調味料は、表9に示す通りのものであり、この回鍋肉調味料50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して回鍋肉ソースを作った。
この回鍋肉調味料は、加熱調理のときに温水に速やか且つ均一に分散して粘度を発現し、得られた回鍋肉ソースは滑らかでとろみのあるものであった。また、この回鍋肉ソースを別途油で炒めた豚肉とキャベツに絡めて造った回鍋肉は、粘性ソースが滑らかでとろみのあり美味しいものであった。
実施例10(カスタードベース)
表7の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理してペースト状のカスタードベースを調製し、得られたカスタードベースを70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して容器入りカスタードベースを得た。
表7の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が70℃に達するまで加熱調理してペースト状のカスタードベースを調製し、得られたカスタードベースを70℃の温度で直ちに柔軟性のパウチ状容器にホットパック充填することにより加熱殺菌処理を行い、当該パウチ状容器を密封して容器入りカスタードベースを得た。
得られた容器入りカスタードベースは表9に示す通りのものであったが、これを冷凍した。このように冷凍した容器入りカスタードベースは室温化に戻すと約5分で解凍することができ、このカスタードベース50gを60℃の牛乳150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してカスタードソースを作った。
実施例11(スープカレーの素)
表8の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表8に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合ともち米澱粉を撹拌混合してスープカレーの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りスープカレーの素を得た。
表8の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表8に示す<仕上げ配合>により、調味加熱配合ともち米澱粉を撹拌混合してスープカレーの素を調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りスープカレーの素を得た。
得られた容器入りスープカレーの素は、表9に示す通りのものであり、このスープカレーの素50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理してスープカレーを作った。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (5)
- 澱粉、糖質及び水を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、前記液状又はペースト状食品組成物中の水分に対する糖質の割合が80重量%以上であり、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物。
- 60℃の温水150mlに液状又はペースト状食品組成物50gを添加し撹拌混合して混合物を調製し、続いて該混合物を撹拌混合しながら該混合物の温度が95℃に達するまで加熱し、続いて60℃まで冷却したときに、B型粘度計により測定される、調製直後の時点での該混合物を60℃に調温したときの粘度に対し、95℃まで加熱し60℃まで冷却した時点での該混合物の粘度が2倍以上である、請求項1に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
- 前記糖質の80重量%以上が、糖アルコール、トレハロース、マルトシルトレハロース及びデキストロース当量(DE)が15よりも高い糖質のうちから選ばれる1以上で且つ低甘味のものである、請求項1又は2に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
- 前記液状又はペースト状食品組成物中の油脂含量が20重量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
- 澱粉、糖質、水、及び食品材料を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
前記液状又はペースト状食品組成物の水分に対する割合が80重量%以上となる量の糖質、水、及び食品材料を含有する原料を加熱して、加熱調理組成物を調製する工程と、
前記加熱調理組成物と澱粉とを混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
前記液状又はペースト状食品組成物に対し、該液状又はペースト状食品組成物の中心温度が70~90℃に達するように加熱殺菌処理を施す工程と
を有する容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
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