WO2012070599A1

WO2012070599A1 - チーズおよびそれを用いたレトルト食品

Info

Publication number: WO2012070599A1
Application number: PCT/JP2011/076980
Authority: WO
Inventors: 美保西村; 義治木村; 史郎川端; 素晴小森
Original assignee: 株式会社明治
Priority date: 2010-11-25
Filing date: 2011-11-24
Publication date: 2012-05-31
Also published as: JPWO2012070599A1; HK1187497A1; CN103220916A; CN103220916B; JP4972237B1

Abstract

レトルト殺菌をしてもチーズの形が残り、喫食時に温めればチーズがとろーりとして、糸引きがよいチーズと、それを用いた、酸性条件でもチーズの物性が安定でかつソースの味がよいレトルトパスタソースが開示されている。本発明によるチーズは、クエン酸三ナトリウムを０．５～５．０重量％と、トレハロースを０．５～１０重量％と、モッツァレラチーズと、モッツァレラチーズ以外のチーズとを含んでなり、前記モッツァレラチーズと前記モッツァレラチーズ以外のチーズとの混合質量比率が１０：９０～１００：０である、プロセスチーズである。

Description

チーズおよびそれを用いたレトルト食品

関連出願

　本出願は、２０１０年１１月２５日に出願された日本国特許出願２０１０－２６２２２０号の優先権を主張するものであり、この日本出願の明細書は引用することにより本願の開示の一部とされる。

　本発明は、チーズ、特にレトルト食品に好ましく用いられるチーズ、およびそれを用いたチーズ入りレトルト食品、特にレトルトパスタソースに関する。

　チーズは一般に加熱されると融解するため、加熱処理される加工食品にチーズを添加すると、加熱処理にともにないチーズが形を失い、食品中に溶解してしまう。例えば、レトルト食品にあっては、レトルト殺菌時の加熱によりチーズは融解・溶解してしまい、このような食品ではチーズの食感を味わえない。従って、加熱されてもチーズの形状を保ち、しかも喫食時に暖めることで柔らかな食感を示すチーズは、レトルト食品の商品価値を高めるものとなり得る。

　保形性のある耐熱チーズとしては、例えば特開２００９－１１２２２６号公報（特許文献１）には、ゼラチンを１．０w/w％～５．０w/w％、乳タンパク濃縮物を１．４w/w％～５．０w/w％含有するチーズが、また特開平８－３０８４９２号公報（特許文献２）には卵白蛋白と乳清蛋白の蛋白混合物を添加した加工チーズ、及びそのチーズに蛋白混合物を脱気しながら６５～８０℃で混合、又は４０～８０℃で脱気混合後７０～１２０℃で５～６０分加熱処理することによって得られるチーズが報告されている。

　また、保存・安定性を確保したレトルト食品の製造方法として、キサンタンガムを加える方法が特開平１１－３０８９７１号公報（特許文献３）に、またガラクトマンナンを加える方法が特開２０００－６０４４８号公報（特許文献４）に報告されている。

　しかしながら、本発明者らの得た知見によれば、従来知られたチーズを添加し、レトルト殺菌した食品は、しばらくするとチーズがゴムのように固くなってしまうものが多く、特に液性が酸性である食品、例えばトマトソースのレトルト食品にあっては、保存中の固化が顕著であった。さらにモッツァレラチーズのように、食する際の加熱によりとろーりとした糸を引くような食感が得られるチーズをレトルト食品において実現しようとすると、ナチュラルチーズのままではレトルト殺菌により形状を失い、また保存中の固化によりレトルト食品としての保存性が充分でなく、他方、プロセスチーズとすると喫食時に加熱してもとろーりとした食感が充分に得難かった。

特開２００９－１１２２２６号公報特開平８－３０８４９２号公報特開平１１－３０８９７１号公報特開２０００－６０４４８号公報

　本発明者らは、今般、モッツァレラチーズを主成分とするチーズに、クエン酸三ナトリウムおよびトレハロースを添加することで、レトルト殺菌をしてもチーズの形が残り、喫食時に温めればチーズがとろーりとして、糸引きがよいチーズが得られ、また長期にわたり前記物性を維持できるとの知見を得た。さらに、これらのチーズの特性は、液性が酸性の食品中にあっても保持できるとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づくものである。

　従って、本発明は、レトルト殺菌をしてもチーズの形が残り、また喫食時に温めればチーズがとろーりとして、糸引きがよいチーズの提供をその目的としている。

　また、本発明は、上記の本発明によるチーズを用いた食品、特にチーズ入りレトルト食品、さらには酸性の液性を有するレトルト食品を提供することをその目的としている。

　そして、本発明によるチーズは、クエン酸三ナトリウムを０．５～５．０重量％と、トレハロースを０．５～１０重量％と、モッツァレラチーズと、モッツァレラチーズ以外のチーズとを含んでなり、前記モッツァレラチーズと前記モッツァレラチーズ以外のチーズとの混合質量比率が１０：９０～１００：０であるものである。
　本発明の好ましい一つの態様によれば、上記のモッツァレラチーズ以外のチーズはゴーダチーズである。
　また、本発明の好ましい態様によれば、本発明によるチーズはレトルト食品に添加して用いられ、さらに好ましくはこのレトルト食品は、有機酸アルカリ金属塩、例えばクエン酸三ナトリウムによりソースのｐＨが４.５～５.５に調整されてなるものである。
　さらに別の本発明の好ましい態様によれば、上記のレトルト食品はパスタソースであり、より好ましくはトマトソース又はボロネーゼソースである。

　また、本発明による食品は、本発明によるチーズを含有してなる、例えばレトルト食品であり、とりわけ酸性の液性の食品のレトルト食品である。
　本発明の好ましい一つの態様によれば、このレトルト食品は有機酸アルカリ金属塩、例えばクエン酸三ナトリウムによりソースのｐＨが４.５～５.５に調整されてなるものである。
　またさらに別の本発明の好ましい態様によれば、このレトルト食品はパスタソースであり、より好ましくはトマトソース又はボロネーゼソースである。

　また、本発明によれば、上記の本発明によるチーズの、レトルト食品の製造のための使用が提供される。

　本発明によれば、レトルト殺菌してもその形態を保ち、かつ喫食時に温めると、とろーりとして、糸引きがよく、レトルト食品に適合したチーズを得ることができる。更に、液性が酸性の食品にも充分適合するチーズ入りレトルトパスタソースを得ることができる。

モッツァレラチーズおよびそれ以外のチーズ
　本発明によるチーズは、モッツァレラチーズと、場合によりモッツァレラチーズ以外のチーズとを含んでなり、いわゆるプロセスチーズに分類されるチーズである。モッツァレラチーズ以外のチーズとしては、例えばゴーダチーズ、チェダーチーズなどが挙げられるが、ゴーダチーズのみを併用するのが好ましい。モッツァレラチーズとモッツァレラチーズ以外のチーズとの混合重量比率は１０：９０～１００：０であり、好ましくは６０：４０～１００：０である。モッツァレラチーズの重量比率が1０未満であると、本発明によるチーズの特長であるとろーりとした組織の発現が弱くなる。ここで、本発明によるチーズに関し「とろーり(good melting)」との語句は、チーズが、加熱されることにより柔らかく伸びる性質（物性）を示す意味である。

クエン酸三ナトリウム
　本発明によるチーズは、溶融塩としてのクエン酸三ナトリウムを含有する。本発明によるチーズの特長であるとろーりとした組織の発現には、この溶融塩が最適であることが見出された。以下の理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、クエン酸三ナトリウムにより本発明によるチーズの特長であるとろーりとした糸引きがよく、レトルト食品に適合したチーズを得ることができる理由は以下のように考えられる。すなわち、クエン酸三ナトリウムを溶融塩として用いることで、さらに後記するトレハロースと組み合わされることで、モッツァレラチーズ中のカゼインがいくつも重なって出来たカゼインサブミセルの構造が維持される。その結果、ナチュラルチーズの場合と同様に、この網目構造が変形しながら引っ張られて伸びることで、チーズがとろーりと糸を引くように伸びていくものと考えられる。カゼインサブミセルの構造が維持される理由は、おそらくはカゼインサブミセル間をつないでいるＣａ架橋が、加熱されても溶融塩のＮａとイオン交換されず、架橋が維持され、さらに冷却されてもカゼインサブミセル構造が維持されることによるものと考えられる。クエン酸三ナトリウム以外の溶融塩では、加熱されるとＣａ架橋のＣａが溶融塩のＮａとイオン交換されてカゼインサブミセル間をつないでいるＣａ架橋が崩れ、さらに、冷却するとカゼインサブミセル同士が溶けながら接着して、伸びない構造に変化してしまうと考えられる。

　本発明においてクエン酸三ナトリウムの添加量は０．１～５．０重量％であり、０．５～２．０重量％が好ましい。クエン酸三ナトリウムの添加量がこの範囲にあることで、脂肪や水が分離せず、かつ本発明の特長であるとろーりとした組織が発現するチーズが得られる。また、上記範囲の量であれば、チーズの風味が悪化させることもない。

トレハロース
　また、本発明によるチーズは、トレハロースを含有する。本発明においてトレハロースとは、α、α―トレハロースを意味する。その添加量は０．５～１０重量％である。トレハロースの添加量がこの範囲にあることで、脂肪や水が分離せず、均一でなめらかであり、かつ本発明の特長であるとろーりとした組織の発現するチーズが得られる。また、上記範囲の量であることで、チーズが食品中で保水力を発揮し、その柔らかさを維持するとの利点が得られる。

その他の添加剤
　本発明によるチーズは、添加剤を含むことができ、その添加剤の例としては増粘剤、ゲル化剤、安定剤が挙げられる。さらにそれらの具体例としては、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギナン、ＨＭ－ペクチン、タラガムの１種又は２種以上の組み合わせが挙げられ、またその添加量は０．１～２．０重量％が好ましく、より好ましくは、０．２～１．０重量％である。この範囲にあることで、増粘剤、ゲル化剤の機能を有効に発揮させ、溶融時の離水を有効に防止し、またチーズが硬くなって本発明の特長であるとろーりとした組織が発現しにくくなることがない。

チーズの製造方法
　本発明のプロセスチーズは例えば以下の方法で製造できる。モッツァレラチーズと他のナチュラルチーズの組み合わせより成る原料チーズに、トレハロース、溶融塩、水を混合し、これらをプロセスチーズ溶融装置に投入し、また必要に応じて安定剤を添加し、加熱しながら攪拌することで溶融および乳化を行なったのち、これを冷却してプロセスチーズを得る。本発明のチーズをレトルト食品に具材として添加する場合には、適正な固さを有している必要があり、そのためには上記原材料の配合と製品水分値を適宜適切に設定しておくことが好ましい。こうして得られたプロセスチーズをさらにレトルト食品の具材に適した大きさに裁断することで本発明のプロセスチーズは得られる。

　溶融装置としては、バッチ式の加熱溶融乳化釜（ステファン社製、クスナー社製等）の他に、連続式溶融機（ステファン社製、クスナー社製等）を用いることができる。加熱溶融条件は、原料配合や目標とする製品組成により異なるが、加熱溶融後の到達温度は７５～９５℃が好ましく、８０～９０℃がより好ましい。また加熱溶融時の撹拌スピードは、原料へ十分にせん断を与えて混合し、乳化する必要があるため、撹拌羽根の先端の周速度が２ｍ／秒以上であることが好ましい。

　溶融乳化されたチーズは型に充填包装し冷却して固化させた後に、スライサーやワイヤーカッターなどで裁断する。また溶融乳化されたチーズを連続的に薄板状に成形しながら冷却し、固化したチーズを連続カッターで裁断することもできる。

　本発明のチーズの裁断形状は、例えば、立方体状、直方体状、円柱状、球状などが挙げられ、例えば、立方体状であれば、一辺の長さが５ｍｍ～２０ｍｍ程度が好ましく、１０ｍｍ～１５ｍｍ程度がより好ましい。この程度の大きさとすることで、レトルト食品中において消費者がそれをチーズとして認識し、喫食時にレトルト食品を湯煎調理する際にチーズの中心部まで十分な加熱が行なわれ、その結果として本発明の特長であるとろーりとした物性が発現し易くなる。

レトルト食品
　本発明によるチーズは、レトルト殺菌をしてもチーズの形が残り、喫食時に温めればチーズがとろーりとして、糸引きがよいチーズが得られ、また長期にわたり、チーズの前記物性が維持される。従って、本発明によるチーズはレトルト食品に用いることが出来、レトルト食品の具体例としては、例えば、パスタソース、カレー、リゾットなどが挙げられる。従って、本発明によれば、本発明によるチーズが添加されたチーズ入り食品、特にチーズ入りレトルト食品が提供される。さらに、本発明によれば、レトルト食品の製造のための、本発明によるチーズの使用が提供される。

　さらに、本発明によるチーズは、上述の特性を液性が酸性の食品中にあっても保持する。従って、例えば、トマトソースやボロネーゼのように酸性のソースに添加されても、本発明によるチーズは上記特性を発揮する。本発明の好ましい態様によれば、食品の酸性度合いはｐＨ４．５～５．５の範囲にあることが好ましい。

　本発明において、食品のｐＨの調整はｐＨ調整剤を用いて行うことが出来る。ｐＨ調整剤としては、クエン酸のナトリウム塩、クエン酸のカリウム塩、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムなどの有機酸アルカリ金属塩が挙げられる。特に、クエン酸のナトリウム塩としては、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムを用いることが好ましく、より好ましくはクエン酸三ナトリウムである。

　本発明によるチーズ入りレトルト食品のソース（すなわち、チーズと具材を除いた液状のもの）は、例えば、原料を加熱攪拌し、ｐＨを適切な条件に調節して得られる。ソースの配合原料としては、例えば、食用油脂、増粘剤、乳化剤、食塩、醤油、砂糖、液糖、グルタミン酸ナトリウム、核酸系旨味調味料等の各種調味料、ペッパー、唐辛子等の香辛料、各種エキス、色素、発色剤が挙げられる。

　上記原料のうち食用油脂は、食品に供される油脂であればいずれのものでも特に限定するものではない。このような食用油脂としては例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等動植物油又はこれらの精製油、ＭＣＴ（中鎖脂肪酸トリグリセリド）、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油脂等のような化学的あるいは酵素処理等を施して得られる油脂、または各種スパイスオイル等が挙げられる。

　また、本発明によるチーズ入りレトルト食品のソースには、種々の添加剤を添加することができる。例えば、増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルエーテル澱粉、馬鈴薯澱粉など澱粉や、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンなどの増粘多糖類が用いられる。また、乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどのリン脂質などが用いられる。

　また、本発明によるチーズ入りレトルト食品の具材は特に限定されないが、例えば、ナス、ひき肉、ひらたけ、椎茸、エリンギ、しめじ、マッシュルーム、玉葱、ニンニク、トマト、オリーブ、ズッキーニ等が挙げられる。また、具材の充填時期は特に限定されないが、好ましくはチーズ及び具材以外のソースを容器に充填する前に充填するのがよい。

　また、本発明によるチーズの充填時期も特に限定されないが、例えば上記の具材とともに充填されてよい。

　本発明によるソース入りレトルト食品を充填する耐熱性容器としては、例えば缶、レトルトパウチが挙げられる。レトルトパウチのなかでもアルミニウム箔、有機樹脂塗工フィルム、又はアルミナ若しくはシリカ蒸着フィルム等のガスバリア層含有耐熱性パウチがよく、更に好ましくは、自立性を有したスタンディングパウチがよい。

　本発明によるソース入りレトルト食品、例えばトマトソースの製造方法は特に限定されないが、例えば、食用油、トマトペースト、トマトパウダー、調味料、増粘剤、乳化剤、有機酸アルカリ金属塩、水を蒸気式ニーダーに投入し、８０～９０℃に加熱、攪拌する。具材の一部を前記ソースのなかに添加して調製してもよい。例えば、ボロネーゼソースを調製する場合に、合挽き肉、玉ねぎを前記ソースにおいて原料と一緒に投入して調製する。その後、前記ソースは容器に充填される。

　続いて、充填密封されたチーズ入りパスタソースは、食品衛生法等の諸規制に規定する条件を満足する温度及び時間で、加熱殺菌される。

　以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において重量％を単に％と記載する。

実施例１（プロセスチーズ１の調製）
　原料チーズとして、モッツァレラチーズ１８００ｇおよびゴーダチーズ１０００ｇを混合し、それにトレハロース（二水和物）１６０ｇ、クエン酸三ナトリウム・二水和物４６ｇ、ローカストビーンガム１５．８ｇを添加し、さらに最終製品の水分値が４５．０％になるような量の水と最終製品のｐＨが５．８５になるような量の乳酸を添加した。得られた混合物を、試験溶融乳化釜（東北大江社製バッチ式チーズニーダー、加熱用ジャケット付き、直径２１ｃｍ、５Ｌ容）に投入した。加熱溶融条件は、蒸気を注入しながら、チーズの到達温度が８８℃になるまで、回転数２００ｒｐｍで加熱攪拌するものとした。得られたプロセスチーズ３２７０ｇは約５×４×１１ｃｍの型に充填して一晩冷蔵し、ブロック状チーズとした。翌日、これを押出し式ワイヤーカッターによって裁断し、１辺が約１２ｍｍの立方体形状のチーズを得た。

実施例２（プロセスチーズ２の調製）
　原料チーズとして、モッツァレラチーズ１８００ｇおよびゴーダチーズ１０００ｇを混合し、それにトレハロース（二水和物）１６０ｇ、クエン酸三ナトリウム・二水和物６９ｇ、ローカストビーンガム１５．８ｇを添加し、さらに最終製品の水分値が４５．０％になるような量の水と最終製品のｐＨが５．８５になるような量の乳酸を添加した。得られた混合物を、試験溶融乳化釜（東北大江社製バッチ式チーズニーダー、加熱用ジャケット付き、直径２１ｃｍ、５Ｌ容）に投入した。実施例１と同様の条件で加熱溶融し、得られたチーズ３３１０ｇを充填、裁断し、１辺が約１２ｍｍの立方体形状のチーズを得た。

実施例３（プロセスチーズ３の調製）
　原料チーズとして、モッツァレラチーズ１８００ｇおよびゴーダチーズ１０００ｇを混合し、それにトレハロース（二水和物）１６０ｇ、クエン酸三ナトリウム・二水和物４６ｇ、キサンタンガム６．３ｇを添加し、さらに最終製品の水分値が４５．０％になるような量の水と最終製品のｐＨが５．８５になるような量の乳酸を添加し、試験溶融乳化釜（東北大江社製バッチ式チーズニーダー、加熱用ジャケット付き、直径２１ｃｍ、５Ｌ容）に投入した。実施例１と同様の条件で加熱溶融し、得られたチーズ３２５０ｇを充填、裁断を実施し、１辺が約１２ｍｍの立方体形状のチーズを得た。

比較例１（プロセスチーズ４の調製）
　原料チーズとして、モッツァレラチーズ１８００ｇおよびゴーダチーズ１０００ｇを混合し、それにクエン酸三ナトリウム・二水和物４６ｇ、ローカストビーンガム１５．８ｇを添加し、さらに最終製品の水分値が４５．０％になるような量の水と最終製品のｐHが５．８５になるような量の乳酸を添加した。得られた混合物を、試験溶融乳化釜（東北大江社製バッチ式チーズニーダー、加熱用ジャケット付き、直径２１ｃｍ、５Ｌ容）に投入した。実施例１と同様の条件で加熱溶融し、得られたチーズ２９８０ｇを充填、裁断し、１辺が約１２ｍｍの立方体形状のチーズを得た。

比較例２（プロセスチーズ５の調製）
　原料チーズとして、モッツァレラチーズ１８００ｇおよびゴーダチーズ１０００ｇを混合し、それにトレハロース（二水和物）１６０ｇ、リン酸水素二ナトリウム４６ｇ、ローカストビーンガム１５．８ｇを添加し、さらに最終製品の水分値が４５．０％になるような量の水と最終製品のｐＨが５．８５になるような量の乳酸を添加した。得られた混合物を、試験溶融乳化釜（東北大江社製バッチ式チーズニーダー、加熱用ジャケット付き、直径２１ｃｍ、５Ｌ容）に投入した。実施例１と同様の条件で加熱溶融し、得られたチーズ３２８０ｇを充填、裁断を実施し、１辺が約１２ｍｍの立方体形状のチーズを得た。

実施例４（プロセスチーズ１入りレトルトパスタソースの調製）
　撹拌機付き蒸気ニーダー（カジワラ社製）に、サラダ油、予めミキサーで均一混合しておいたトマトペースト、トマト粉末、トマト、玉ねぎ、食塩、砂糖、ポリグリセリン脂肪酸エステル（HLB10）、ヒドロキシプロピルエーテル澱粉、水を下記の表に示される配合割合で加え、９０℃で加熱撹拌しながら、ソース（本実施例でのソースとはチーズと具材を除いた液状のものを指す）のｐＨが４．７となるように、クエン酸三ナトリウム水溶液を添加しソースを得た。プロセスチーズ１（実施例１）、なすとズッキーニ、及び得られたソースをそれぞれ１０ｇ、１５ｇ、１３０ｇずつ耐熱性レトルトパウチに充填し、密封した後、１２１℃で1５～３０分間レトルト処理をし、その後冷却して、チーズ入りレトルトパスタソース１を得た。

実施例５及び６
　プロセスチーズ１に代えて、プロセスチーズ２（実施例２）又は３（実施例３）を充填する以外は実施例４と同様の方法により、それぞれチーズ入りレトルトパスタソース２（実施例５）および３（実施例６）を得た。

比較例３及び４
　プロセスチーズ１に代えて、プロセスチーズ４（比較例１）又は５（比較例２）を充填する以外は、実施例４と同様の方法により、チーズ入りレトルトパスタソース４（比較例３）および５（比較例４）を得た。

実施例７（ｐＨ５．２のパスタソース）
　クエン酸三ナトリウムの水溶液で、ソ―スのｐＨを５．２とした以外は、実施例４と同様にして、ｐＨ５．２のチーズ入りレトルトパスタソース６（実施例7）を得た。

比較例５（ｐＨ４．１のパスタソース）
　クエン酸三ナトリウムを添加せずに、それに代えて同量の水を添加した以外は実施例４と全く同様にして、ｐＨ４．１のチーズ入りレトルトパスタソース７（比較例５）を得た。

比較例６（ｐＨ５．６のパスタソース）
　クエン酸三ナトリウムの水溶液で、ソ―スのｐＨを５．６とした以外は実施例４と全く同様にして、チーズ入りレトルトパスタソース８（比較例６）を得た。

比較例７（ｐＨ調整剤が水酸化ナトリウムのパスタソース）
　クエン酸三ナトリウム水溶液に代えて10W/V％の水酸化ナトリウム水溶液を添加した以外は実施例７と全く同様にして、ｐＨ５．２のチーズ入りレトルトパスタソース９比較例７を得た。

比較例８（ｐＨ調整剤が炭酸水素ナトリウムのパスタソース）
　クエン酸三ナトリウム水溶液に代えて10W/V％炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した以外は実施例７と全く同様にして、ｐＨ５．２のチーズ入りレトルトパスタソース１０（比較例８）を得た。

比較例９（ｐＨ調整剤が炭酸カリウムのパスタソース）
　クエン酸三ナトリウム水溶液に代えて10W/V％炭酸カリウム水溶液を添加した以外は実施例４と全く同様にして、ｐＨ５．２のチーズ入りレトルトパスタソース１１（比較例９）を得た。

試験例１（チーズの食感）
　レトルト殺菌後一週間以内のチーズ入りパスタソース（実施例４～６ならびに比較例３および４）を約１０分湯煎した。専門パネラー５人に、品温７０～８０℃の温かいうちに口に含んでもらい、下記の基準で食感を評価させた。５人の評価の平均は表２に示されるとおりであった。

チーズの物性評価基準：
５点：チーズが非常にとろ～りとしている。（やわらかくて、とろっと伸びる。）
４点：チーズがとろ～りとしている。（やわらかくて、触ると伸びる。）
３点：チーズがややとろりとしている。（やわらかいが伸びにくい）
２点：チーズがやや硬くなる。
１点：チーズが硬い。
ソースの味の評価基準：
◎：大変よい。
○：よい。
△：やや悪い。
×：悪い。

試験例２（ソースのｐＨの違いとｐＨ調整剤の影響）
　実施例７および比較例５～９について、試験例１と同様の方法で、チーズの物性とソースの味を評価した。その結果は表3に示されるとおりであった。

　表２および３から、ソースのｐＨが４．１ではソースの味は大変よいが、チーズの物性が悪く、また、ｐＨが５．６ではチーズの物性及びソースの味が共に悪く、ｐＨが４．７及び５．２では、チーズの物性も、ソースの味もよい。また、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムをｐＨ調整剤として使用した場合には、チーズの物性は、適するが、ソースの味は悪いので不適である。

試験例３（保存安定性試験）
　チーズ入りパスタソース１（実施例４）および７（実施例７）を２０℃にて4ヶ月間保存した。その後、食品を試験例1に準じた評価した。その結果、いずれもチーズの評価は４以上、ソースの味の評価は◎であり、安定性には問題ないことがわかった。

Claims

　クエン酸三ナトリウムを０．５～５．０重量％と、トレハロースを０．５～１０重量％と、モッツァレラチーズと、モッツァレラチーズ以外のチーズとを含んでなり、前記モッツァレラチーズと前記モッツァレラチーズ以外のチーズとの混合質量比率が１０：９０～１００：０である、プロセスチーズ。
　前記モッツァレラチーズ以外のチーズが、ゴーダチーズである、請求項１に記載のチーズ。
　レトルト食品に添加して用いられる、請求項１または２に記載のチーズ。
　前記レトルト食品が、有機酸アルカリ金属塩によりソースのｐＨが４.５～５.５に調整されてなるものである、請求項３に記載のチーズ。
　有機酸アルカリ金属塩がクエン酸三ナトリウムである、請求項４に記載のチーズ。
　前記レトルト食品が、パスタソースである、請求項３～５のいずれか一項に記載のチーズ。
　前記パスタソースがトマトソース又はボロネーゼソースである、請求項６に記載のチーズ。
　請求項１又は２に記載のチーズを含有してなる、レトルト食品。
　前記レトルト食品が、有機酸アルカリ金属塩によりソースのｐＨが４.５～５.５に調整されてなるものである、請求項８に記載のレトルト食品。
　有機酸アルカリ金属塩がクエン酸三ナトリウムである、請求項９に記載のレトルト食品。
　前記レトルト食品が、パスタソースである、請求項８～１０のいずれか一項に記載の食品。
　前記パスタソースがトマトソース又はボロネーゼソースである、請求項１１に記載の食品。
　レトルト食品の製造のための、請求項１または２に記載のチーズの使用。