第1実施形態
本発明の第1実施形態について、図1を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係るソレノイドバルブ11は、スプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば自動車の自動変速機等の油圧の制御を行うために用いられるものである。
ソレノイドバルブ11は、電動駆動部としてのソレノイド部(リニアソレノイド)20と、バルブ本体40と、リテーナ45とを有する。バルブ本体40に対して、軸方向Zに沿った一方の端部(後端)にソレノイド部20が装着され、他方の端部(先端)にリテーナ45が装着される。ソレノイド部20は、ソレノイドケース21の内部に、コイル22を内蔵するモールド成形体23、センターポスト27、スペーサ36、サイドリング37、ロッド26及びプランジャ24を有する。バルブ本体40は、一方の端部がソレノイドケース21の一方の端部のケース開口部25に嵌合されてソレノイド部20と一体化される。
コイル22は、ソレノイドケース21に装着されるモールド成形体23に埋め込まれており、ソレノイドケース21の外部に突き出ているモールド成形体23のコネクタ部233に設置されたコネクタ28から制御電圧が供給されるようになっている。コイル22は、制御電圧に応じて所望の強さで所望の向きの磁界を発生し、プランジャ24に軸方向Zの駆動力(磁気吸引力)を発生させる。その駆動力は、ロッド26を介してスプール60に伝達され、スプール60を軸方向に移動させる。
モールド成形体23のバルブ本体40側の端部付近には、円環状のロアプレート35が一体成形されている。ロアプレート35の中央開口には、センターポスト27が嵌合される。
また、モールド成形体23の内周側には、軸方向に沿って各々環状のサイドリング37、スペーサ36及びセンターポスト27が設置されている。サイドリング37の内周には、プランジャ24が軸方向移動自在に配置され、センターポスト27の内周には、ロッド26が軸方向移動自在に配置されている。プランジャ24とロッド26とは一体的に移動可能になっている。
ロッド26の先端26a(バルブ本体40側の端面)は、スプール60のスプール軸61の後端61a(ソレノイド部20側の端面)に通常状態において接触している。従って、コイル22による磁気吸引力によりプランジャ24及びロッド26がバルブ本体40側へ移動した場合には、スプール軸61の後端61aがロッド26の先端26aに押されて、スプール60はリテーナ45方向に移動される。また、コイル22による磁気吸引力が相対的に弱まりスプリング42の弾性力によりスプール60がソレノイド部20側へ移動した場合は、ロッド26の先端26aがスプール軸61の後端61aに押されて、プランジャ24及びロッド26はエンドプレート33方向に移動される。
スプール60のソレノイド部20方向への移動は、例えば図1に示すように、後述するスプール60の第3のランド65のソレノイド部20側の端面がソレノイド部20のセンターポスト27のバルブ本体40側の端面に当接することにより規制される。この状態において、プランジャ24及びロッド26がさらにエンドプレート33側に移動した場合には、ロッド26の先端26aとスプール軸61の後端61aとの間には隙間が生じる。本実施形態のソレノイドバルブ11においては、後述するように、このような隙間が生じても、制御を開始した時(再びコイル22の磁気吸引力によりプランジャ24及びロッド26をバルブ本体40側へ移動させた時)には、迅速にロッド26の先端26aがスプール軸61の後端61aに当接し、バラツキのない安定した応答性によりスプール60の移動を開始できるものである。
スプール60の先端には、リテーナ45の内部に装着してあるスプリング42の後端が装着してあり、スプリング42の弾性力により、スプール60は、常に、プランジャ24のロッド26方向に押圧されている。なお、リテーナ45は、バルブ本体40のバルブスリーブ41の先端に対してカシメ止めされている。
バルブスリーブ41の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、鉄、樹脂等が例示される。リテーナ45の材質は特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、樹脂等が例示される。
バルブスリーブ41には、周壁を貫通する開口として、スリーブ41の先端側から後端側に向けて順に、図示しないドレインポート、制御ポート、入力ポート及びフィードバックポートが形成されている。
また、バルブスリーブ41のソレノイド部20側の端部(後端部)近傍の周壁には、ソレノイド部20のプランジャ24のスプール60側の空間に対して、バルブ本体40の外部から流体を流入出させる呼吸口46が形成されている。呼吸口46は、口述するスプール60に形成された呼吸溝66を介してプランジャ24のスプール60空間に連通しており、スプール60がソレノイド部20側に移動された時においても、プランジャ24のスプール60側の空間とバルブ本体40の外部とを連通可能に接続している。
入力ポートは、図示しないタンクからポンプによって供給される制御流体(例えば作動油)が流入するポートである。制御ポートは、図示しない自動変速機等の制御流体要求先(負荷)に制御流体を供給するポートである。フィードバックポートと制御ポートとはソレノイドバルブ11の外部で連通しており、制御ポートから流出する制御流体の一部がフィードバックポートに流入する。
スプール60は、バルブスリーブ41の略中心に軸方向Zに沿って移動自在に配置されており、スプール軸61と円柱状に形成された第1~第3のランド63~65とから構成されている。
第1~第3のランド63~65は、スプール60のスプリング42の側端部から軸方向Zに沿って順に所定の間隔で、スプール軸61に一体的に形成されている。
第1~第3のランド63~65の外径は、スプール軸61の外径よりも大きい。また、第1のランド63と第2のランド64の外径は略同じであるが、第3のランド65の外径は、第1のランド63と第2のランド64の外径に比べて小さい。
第3のランド65のソレノイド部20側の端面には、ソレノイド部20のプランジャ24のスプール60側の空間に対して、バルブ本体40の外部から流体を流入出させる呼吸溝66が形成されている。スプール60の第3のランド65のソレノイド部20側の端面は、スプール60がバルブスリーブ41の中をソレノイド部20側に移動しセンターポスト27のバルブ本体40側の端面に当接することにより、スプール60のソレノイド部20方向への移動を規制するように形成されている。この状態、すなわち、スプール60が最もソレノイド部20側に移動し第3のランド65のソレノイド部20側の端面とセンターポスト27のバルブ本体40側の端面とが当接した状態において、第3のランド65のソレノイド部20側の端面に形成された呼吸溝66は、ソレノイド部20のプランジャ24のスプール60側の空間と、バルブスリーブ41のソレノイド部20側の端部(後端部)近傍の周壁に形成された呼吸口46とを接続する。
このような呼吸溝66を設けることにより、プランジャ24及びロッド26がバルブ本体40の方向に移動した時にプランジャ24のスプール60側の空間の流体を速やかに外部に排出することができ、ソレノイドバルブ11の応答性を速くすることができる。また、プランジャ24及びロッド26がバルブ本体40から離れる方向に移動した時に、プランジャ24のスプール60側の空間に流体を速やかに外部から流入させることができ、その場合もソレノイドバルブ11の応答性を速くすることができる。
特に、制御を開始する場合で、プランジャ24がエンドプレート33側の端部に位置してロッド26の先端26aとスプール軸61の後端61aとの間に隙間が存在する場合においても、プランジャ24吸引側の油室の流体を迅速に排除し(押し出して)ロッド26とスプール60の隙間を無くす、すなわち、ロッド26をスプール60の端面に当接した状態とすることができるので、従来、応答性にバラツキが生じることが問題であった制御開始時においても、バラツキを生じることなく適切な応答性能で制御が可能となる。
また、一方で、前述したように呼吸溝66及びバルブスリーブ41の呼吸口46により形成される流体流路は、ある程度小さい断面積に形成される。その結果、流体の流入出の際の流体抵抗がプランジャ24の移動に係るダンピング作用を発揮するものとなり、ソレノイドバルブ11の応答性能が向上させることができる。呼吸溝66及びバルブスリーブ41の呼吸口46により形成される流体流路の断面積は、具体的には、例えば約0.2~2.1mm2 が好ましい。
バルブスリーブ41の内部において、第2のランド64と第3のランド65との間には、フィードバック室67が形成されている。第2のランド64の外径と第3のランド65の外径には差があるため、フィードバック室67にフィードバックされた制御流体がスプール60に作用する面積が異なる。そのため、面積の差(ランド64とランド65との外径差)により発生するフィードバック力、スプリング42によるスプリング力、及び電流の大きさにより変化する電磁力の3つの力のバランスで、制御ポートから流出する制御流体について所望の出力圧を得ることができる。例えば、ソレノイド部20に供給する電流を増大させるほど出力圧が減少するタイプの制御弁の場合、3つの力のバランスは、次の式(1)で表すことができる。
[スプリング力]=[出力圧(=ランドの外径差に発生するフィードバック力)]+[電磁力] ・・・(1)
また、ソレノイド部20に供給する電流を減少させるほど出力圧が増大するタイプの制御弁の場合には、3つの力のバランスは、次の式(2)で表すことができる。
[スプリング力]+[出力圧(=ランドの外径差に発生するフィードバック力)]=[電磁力] ・・・(2)
スプール60は、通常の制御状態において、軸方向Zに沿って一端はスプリング42に当接しており、軸方向Zに沿って他端はロッド24に当接している。そのため、スプール60には、フィードバック室67における制御流体の押圧力(フィードバック力)の他に、スプリング42の押圧力(スプリング力)と、ロッド24を介してプランジャ24の動きによる押圧力(電磁力)とが伝達される。これらの押圧力によりスプール60はバルブスリーブ41内を軸方向Zに摺動する。
このような構成のソレノイドバルブ11において、スプール60は、スプリング42の押圧力(スプリング力)と、コイル22に供給される電流により発生する磁界の磁器吸引力でプランジャ24がスプール60を押圧する力(電磁力)とフィードバック室67の制御流体の圧力によりスプール60が受ける押圧力(フィードバック力)とがつり合う位置で静止する。細かくは、静的にはつり合う位置でつり合っているが、実際には入力ポートとドレインポートを頻繁に開閉して制御している。
スプール60のバルブスリーブ41内部での位置は、上述した力により制御され、入力ポート及び/又はドレインポートが所望の状態に開閉される。
また、入力ポートから出力ポートへ流れる制御流体の量は、入力ポートの開口量によって決定される。入力ポートの開口量は、バルブスリーブ41内部でのスプール60の位置によって決定される。
そして、このように構成されたソレノイドバルブ11においては、図示せぬ制御回路からソレノイド部20のコイル22に電流が供給されることにより、コイル22は所望の強さで所望の向きの磁界を発生し、この磁界による電磁力によりプランジャ24が移動し、スプール60がバルブ本体40のバルブスリーブ41中を移動する。
従って、コイル22に供給される電流量を大きくし、プランジャ24に対して大きな電磁力を作用させると、スプール60がバルブ本体40のバルブスリーブ41中を、スプリング42側に移動する。スプール60がバルブスリーブ41内をスプリング42側に移動すると、制御ポートからドレインポートへ流れる制御流体の量が増大する。
一方、コイル22に供給される電流量を相対的に小さくし、プランジャ24に対して作用する電磁力を減少させると、スプール60がバルブスリーブ41内を、ソレノイド部20側に移動する。スプール60がバルブスリーブ41内をソレノイド部20側に移動すると、入力ポートから制御ポートへ流れる制御流体の量が増大する。
このように、本実施形態のソレノイドバルブ11においては、スプール60の第3のランド65のソレノイド部20側の端面に呼吸溝66を設け、バルブスリーブ41の周壁に呼吸溝66に連通する呼吸口46を設けており、これらにより形成される流体流路の断面積を適切な断面積としているので、適切な迅速性と適切なダンピング性能を有する安定した応答性能を得ることができる。
第2実施形態
本発明の第2実施形態について、図2を参照して説明する。本実施形態に係るソレノイドバルブ12も、第1実施形態のソレノイドバルブ11と同様にスプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば自動車の自動変速機等の油圧の制御を行うために用いられるものである。
第1実施形態のソレノイドバルブ11では、スプール60のソレノイド部20側の端面となる第3のランド65に呼吸溝66を形成することにより、スプール60が最もソレノイド部20側に配置された場合において、プランジャ24のスプール60側の空間とバルブスリーブ41に形成されている呼吸口46とを接続する流体流路を形成した。
これに対して本実施形態のソレノイドバルブ12では、スプール60が最もソレノイド部20側に配置された場合に第3のランド65のソレノイド部20側の端面に当接するセンターポスト27のスプール60側の端面に呼吸溝29を形成することにより、プランジャ24のスプール60側の空間とバルブスリーブ41に形成されている呼吸口46とを接続する流体流路を形成したものである。
このような構成のソレノイドバルブ12においても、ソレノイド部20のセンターポスト27のバルブ本体40側の端面に呼吸溝29を設け、バルブスリーブ41の周壁に呼吸溝66に連通する呼吸口46を設けており、これらにより形成される流体流路の断面積を適切な断面積としているので、第1実施形態のソレノイドバルブ11と同様に適切な迅速性と適切なダンピング性能を有する安定した応答性能を得ることができる。
なお、第2実施形態のソレノイドバルブ12においては、第1実施形態のソレノイドバルブ11において第3のランド65に形成していた呼吸溝66を形成しないものとし、センターポスト27に呼吸溝29を形成するものとした以外の構成については、同一符号を付した第1実施形態のソレノイドバルブ11の対応する構成と実質的に同一である。
第3実施形態
本発明の第3実施形態について、図3A~3Cを参照して説明する。第3実施形態のソレノイドバルブ13も、第1実施形態のソレノイドバルブ11及び第2実施形態のソレノイドバルブ12と同様にスプールタイプのソレノイドバルブであって、自動車の自動変速機等の油圧の制御を行うために用いられるものである。
前述した第1実施形態のソレノイドバルブ11及び第2実施形態のソレノイドバルブ12は、プランジャ24のスプール60側の空間に対して流体を適切な流路抵抗で(適切な応答性能となるように)出し入れ可能にするものであった。スプールタイプのソレノイドバルブにおいては、プランジャ24の反対側に形成される空間(エンドプレート33側の空間)についても、プランジャ24がバルブ本体40側に移動する場合(プランジャ24がエンドプレート33から離れる方向に移動する場合)には流体が適切に流入し、プランジャ24がエンドプレート33側に移動する場合には流体が適切に排出されるのが望ましい。本実施形態のソレノイドバルブ13は、プランジャ24のスプール60側及び反対側(エンドプレート33側)の両方に対して、適切に流体の流動を行えるようにしたものである。
図3A~3Cは、第3実施形態のソレノイドバルブ13の構成を示す図であり、図3Aはモールド成形体23の外周面の構成を説明するための図であり、図3Bはソレノイドバルブ13を図3AのX-Xの方向から見た図であってサイドリング37の端面の構成を説明するための図であり、図3Cはソレノイドバルブ13を図3AのY-Yの方向から見た図であってモールド成形体23のコネクタ部233及びソレノイドケース21の構成を説明するための図である。
なお、以下の説明において、第1実施形態及び第2実施形態のソレノイドバルブ11及び12と実質的に同一の構成については、同一の符号を付するとともにその説明は省略する。
ソレノイドバルブ13は、第1の実施形態のソレノイドバルブ11及び第2実施形態のソレノイドバルブ12の各呼吸口46(図1及び図2参照)と同様に、バルブスリーブ41のソレノイド部20側の端部にプランジャ24のスプール60側の空間に連通する呼吸口47が形成されている。スプール60が最もソレノイド部20側に配置されている時のプランジャ24のスプール60側の空間と呼吸口47との間は、前述した第1実施形態のソレノイドバルブ11のような第3のランド65に形成された呼吸溝66により、あるいは、前述した第2実施形態のソレノイドバルブ12のようなセンターポスト27に形成された呼吸溝29により連通されているものとする。
ソレノイドバルブ13においてバルブスリーブ41に形成された呼吸口47は、第1あるいは第2実施形態のソレノイドバルブ11あるいは12の呼吸口46のように外部(バルブ本体40の周囲)との間で流体を流入出するものではなく、図3Cに示すように、ソレノイドケース21の内周とモールド成形体23の外周との間の隙間との間で流体を流入出させるように形成されている。
ソレノイドバルブ13においては、モールド成形体23の外周部に、軸方向に沿って、流体流路(呼吸路)としての溝(軸方向呼吸路)231が形成されている。軸方向呼吸路231は、本実施形態においてはモールド成形体23の外周の中心角度が180°ずれた対向する位置に2本形成されている。
また、モールド成形体23のバルブ本体40側に設置されるロアプレート35にも、モールド成形体23の軸方向呼吸路231に連通する切り欠き部351が形成されている。すなわち、軸方向呼吸路231は、ロアプレート35とモールド成形体23とが一体化された構成物に対して、これらを貫通する形態の溝として形成されている。
軸方向呼吸路231のバルブ本体40側の端部は、モールド成形体23のバルブ本体40側の底面とソレノイドケース21の内側底面との間の隙間に連通している。ソレノイドバルブ13において、バルブスリーブ41、ソレノイドケース21及びモールド成形体23は、各部材に適宜形成されている図示しない係合部(例えば、係合凸部と係合凹部)を係合させることにより、周方向の相対的な位置が特定の位置関係となるように設置される。バルブスリーブ41に形成される呼吸口47、モールド成形体23の底面とソレノイドケース21の底面との間に形成される隙間及びモールド成形体23に形成される軸方向呼吸路231は、その状態において順次連通し、流体の流路(呼吸路)を形成する。
モールド成形体23のエンドプレート33側の端部側の外周には、モールド成形体23の外周を周方向に沿って周回するように形成された同じく流体流路(呼吸路)としての溝(周方向呼吸路)232が形成されている。この周方向呼吸路232の軸方向の位置は、モールド成形体23をソレノイドケース21に装着した場合に、モールド成形体23のコネクタ部233が嵌合するソレノイドケース21の切り欠き部210の位置に周方向呼吸路232が配置されるように規定される。ソレノイドケース21の切り欠き部210は、コネクタ部233が嵌合された状態においても閉塞されずに外部に開口した呼吸窓211を有し、周方向呼吸路232は、その呼吸窓211を介して外部に開口され、流体が流入出される。
前述したモールド成形体23の軸方向呼吸路231は、エンドプレート33側の端部が周方向呼吸路232に連通するように形成される。
図3Cに2点鎖線で示すソレノイドケース21には、前述したようにモールド成形体23のコネクタ部233が嵌合される切り欠き部210を有する。切り欠き部210は、コネクタ部233が嵌合された状態においても閉塞されない領域であって、モールド成形体23の周方向呼吸路232に連通する呼吸窓211と、呼吸窓211を確実に確保するように、また、広い開口の呼吸窓211を確保し流体の流入出をスムーズに行うように、コネクタ部233の突起部234に係合する係合部212とを有する。
サイドリング37のエンドプレート33側の端面には、サイドリング37の中央開口と外周とを連通する径方向溝371が形成されている。またサイドリング37の外周部には、軸方向に沿って軸方向溝372が形成されている。軸方向溝372は、本実施形態においてはサイドリング37の外周の中心角度が180°ずれた対向する位置に2本形成されており、径方向溝371は、この2本の軸方向溝372と中央開口とを各々接続するように2本形成されている。また、これら径方向溝371及び軸方向溝372は、モールド成形体23のコネクタ部233に対して、各々、中心角度が90°ずれた位置となるように形成する。
また、モールド成形体23のエンドプレート33側の端面の外周角部は面取りされて面取り部235に形成されており、これにより、サイドリング37との間の外周を周回するように形成された流体流路(呼吸路)373が形成されている。この周方向呼吸路373には、サイドリング37の軸方向溝372が連通しており、また、周方向呼吸路373は、ソレノイドケース21の切り欠き部210に連通している。
その結果、プランジャ24のエンドプレート33側の空間であるサイドリング37の中央開口内の空間は、サイドリング37に形成された径方向溝371及び軸方向溝372、サイドリング37とモールド成形体23の間の外周部に形成される周方向呼吸路373、及び、ソレノイドケース21の切り欠き部210を介してソレノイドバルブ13の外部と連通する。
このような構成のソレノイドバルブ13においては、プランジャ24のスプール60側の空間、及び、プランジャ24のエンドプレート33側の空間の両方に対して流体を出し入れする呼吸路を形成している。従って、これら各呼吸路の断面積を適切な断面積とすることにより、適切な迅速性と適切なダンピング性能を有する安定した応答性能を有するソレノイドバルブ13を得ることができる。
また、本実施形態のソレノイドバルブ13においては、コネクタ部233に形成した切り欠き部210において流体を外部と出し入れするようにしており、ソレノイド部に他の呼吸窓を設ける必要はない。
また、モールド成形体23の外周に形成された2本の軸方向呼吸路231はソレノイドケース21の切り欠き部210に対して各々中心角度が90°ずれるように形成、設置され、周方向呼吸路232を介して切り欠き部210につなげられており、プランジャ24のスプール60側の空間からコネクタ部233の切り欠き部210までの呼吸路は、極力長く複雑になるように確保されている。また、サイドリング37に形成された径方向溝371及び軸方向溝372もソレノイドケース21の切り欠き部210に対して各々中心角度が90°ずれるように形成、設置され、サイドリング37とモールド成形体23との間の周方向呼吸路373を介して切り欠き部210につなげられており、プランジャ24のエンドプレート33側の空間からコネクタ部233の切り欠き部210までの呼吸路も、極力長く複雑になるように確保されている。その結果、ソレノイドバルブ13の周囲に存在するコンタミがプランジャ24のスプール60側の空間、及び、プランジャ24のエンドプレート33側の空間に入る可能性を低減することができ、耐コンタミ性を向上させることができる。
他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
例えば、前述した第1実施形態のソレノイドバルブ11においては第3のランド65に呼吸溝66を形成することにより、また、前述した第2実施形態のソレノイドバルブ12においてはセンターポスト27に呼吸溝29を形成することにより、ともにプランジャ24のスプール60側の空間とバルブスリーブ41の呼吸口46とを接続する所望の断面積の流体通路を形成するようにしていた。これに対して、第3のランド65及びセンターポスト27の対向する面に各々呼吸溝66及び呼吸溝29を形成し、これら2つの呼吸溝66及び呼吸溝29を合わせることにより、プランジャ24のスプール60側の空間とバルブスリーブ41の呼吸口46とを接続する所望の断面積の流体通路を形成するようにしても良い。
産業上の利用分野
本発明に係るソレノイドバルブは、自動車の自動変速機の油圧制御等、流体の流量や圧力を制御する任意の装置において利用することができる。