JP4627116B2 - ソレノイドバルブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種流体圧力制御等に好適に用いられるソレノイドバルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のソレノイドバルブとしては、たとえば、図9に示すものがある。図9は従来技術に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【0003】
ソレノイドバルブ200は、ソレノイド部200Aとバルブ部200Bとから構成される。
【0004】
ここで、バルブ部200Bはスプールバルブであり、スプールのストロークに応じて弁の開口面積が変化するため、ソレノイドによりスプールのストローク量を制御することによって流体の流入量や流出量を制御できる構成となっている。
【0005】
ソレノイド部200Aは、概略、コイル203と、コイル203への通電によってセンターポスト202に磁気的に吸引されるプランジャ201と、プランジャ201の駆動をバルブ部200B(具体的にはスプール)に伝達するためにプランジャ201に連結されたロッド204と、各種ソレノイド構成部材が組込まれるケース部材208と、コイル203に給電するためのコネクタ211と、を備えている。
【0006】
また、往復動を行うプランジャ201やロッド204の同軸度を高めるための第1軸受205及び第2軸受210とを備えており、プランジャ201に嵌合されたロッド204を軸受205,210で支持し、一方の軸受205はスリーブ206で保持されている。他方の軸受210はセンターポスト202で保持されている。また、磁路を形成するアッパープレート207等を備えている。
【0007】
ここで、プランジャ201は、通常状態、すなわちコイル203に通電していない状態では、センターポスト202から離間する方向に位置する構成となっている。
【0008】
なお、一般的にはスプリング等の付勢部材によって、プランジャ201をセンターポスト202から離間する方向に付勢するように構成されている。図示の例では、スプールをソレノイド部200A方向に付勢するスプリングを設けることによって、プランジャはスプールを介してセンターポスト202から離間されるように構成されている。
【0009】
そして、コイル203に通電することによって、磁路が形成され、プランジャ201はセンターポスト202に磁気的に吸引される。
【0010】
従って、コイル203に通電する電流の大きさによって、磁気力を制御することができ、これによりプランジャ201の移動量を制御することでスプールのストローク量を制御でき、これにより流体の流量を制御し、油圧制御などの各種流体圧力制御等を行うことができるというものである。
【0011】
ここで、従来技術に係るソレノイドバルブ200においては、略円筒形状のケース部材208の中空内部に、プランジャ201やセンターポスト202を含む各種ソレノイド構成部材を、各部材の形状等に応じてケース部材208の両端側から適宜組込んだ後に、ケース部材208の一端側に設けられたかしめ部208aによってアッパープレート207の端部をかしめ、更に、他端側に設けられたかしめ部208bによってバルブ部200Bの端部をかしめることによって、組立を行っていた(ただし、かしめる順序はかしめ部208aが最初になるとは限らない)。
【0012】
ところで、図9に示す従来技術に係るソレノイドバルブ200のように、コネクタ211が、ソレノイドバルブ本体の後端において、円周方向における一部分に配置されるようなタイプの場合には、ソレノイドバルブ本体を所定の取付箇所に取り付けるためのブラケット212との配置関係を、取付箇所に応じて変更しなければならないために互換性が悪いという欠点を有する。
【0013】
そこで、互換性を良くするために、図11に示すように、コネクタ311が、ソレノイドバルブ300の本体の後端部において、ケース部材308の一端側から外部に突出するタイプのものが知られている。
【0014】
この場合、コネクタ311がケース部材308の一端側から外部に突出して、コネクタ311が軸心上にあるような構造のため、ブラケット等との配置関係を考慮する必要がなくなり、互換性に優れたものである。
【0015】
このタイプの場合には、コネクタ端子をインサートモールドすることによって成形されるコネクタ311に、段差部311aを形成して、この段差部311aにケース部材308の一端に設けたかしめ部311aをかしめることで組立を行っていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
【0017】
上記従来技術の場合には、軸受が軸ずれを起こしてしまい、同軸度の精度が低くなるという問題があった。ここで、同軸度とは、軸方向に往復移動を行うプランジャ及びロッドの位置精度のことを意味する。つまり、往復動を行うプランジャ及びロッドの軸心が、ソレノイドバルブ全体の中心軸に近ければ近いほど精度が高いことになる。この同軸度は各部材間の位置決め精度によって決定付けられ、特に、軸受が軸ずれを起こすと、同軸度の精度が低くなってしまう。
【0018】
このように、軸受が軸ずれを起こし、同軸度が低くなると、ロッドやプランジャの摺動抵抗が高くなりヒステリシスを引き起こす等、機能を低下する原因となってしまうのである。
【0019】
この軸ずれを起こす原因としては、かしめ部分の曲げの位置を規定する構成となっていないことが挙げられる。
【0020】
すなわち、従来、かしめは、ケース端部の全周や、かしめ用の突起を設けて、この突起をかしめることで、かしめを行っていたが、かしめ部分の曲げの位置は、かしめを行うための治具(かしめ用の金型)に依存するのみであった。
【0021】
従って、かしめ用の金型は、一般的に、かしめ部分がスムーズに曲がるように、内面が曲面形状の部分をかしめ突起等に突き当ててかしめを行うため、かしめ部分は、その根本部が膨らみやすかった。
【0022】
従って、この膨らんだ部分にプレートがあると、プレートの外周とケース内周との間に隙間が発生するため、この隙間によってプレートがずれやすくなってしまい、軸ずれを大きくする結果となってしまうのである。
【0023】
つまり、一般的に、プレートは、ソレノイドを構成する各種構成部材の位置決め精度に大きく関わる部材である。これは、プレートに対してスリーブ等が一体的に接合され、その他のいくつかの部材を介して、プレートが軸受を位置決めすることになるからである。また、プレートは、その外周がケースの内周に当接して位置決めがなされるものである。
【0024】
従って、プレートがずれると、軸ずれを起こす結果となってしまうのである。
【0025】
これらの点について、上述した図9に示すソレノイドバルブの場合を例にしてより具体的に説明する。
【0026】
図9に示すソレノイドバルブの場合には、上述のように、かしめ部208aによってアッパープレート207の端部をかしめる構成である。従って、かしめ部208aの根本は膨らむように変形しやすいため、アッパープレート207は位置ずれを起こしやすい。
【0027】
一方、アッパープレート207には、スリーブ206が一体的に接合されており、このスリーブ206により軸受205を保持している。従って、アッパープレート207が軸ずれを起こすと、軸受205も軸ずれを起こし、同軸度の精度が低くなってしまうのである。
【0028】
また、他の問題として、かしめ部分でスプリングバックが発生することにより、十分なかしめ固定力が得られないということもあった。
【0029】
この点について、図9中、かしめ部208bについての拡大図を示す図10を参照して説明する。
【0030】
かしめは、一般的に、かしめ部の先端が、相手側の壁面に当接する位置まで曲げるようにして行う。つまり、図示の例では、かしめ部208bの先端がバルブ部の外壁面に当接する位置まで曲げるようにする(図10中点線部)。
【0031】
しかし、ケースは金属製であるため、かしめ部208bは自己の弾性的な復元力によって少し元に戻るような変形、つまり、スプリングバックが発生する。
【0032】
このように、かしめを行った後に、かしめ部208bの先端が図10中、矢印B方向にスプリングバックを起こし、実線に示す位置まで変形するため、隙間が生じ、十分なかしめ固定力が得られなくなることがあった。
【0033】
従って、十分なかしめ固定力が得られない場合には、各種構成部材の位置決めが不十分となり、機能低下の原因となっていた。
【0034】
更に、図11に示すような従来技術に係るソレノイドバルブの構成では、ソレノイド構成部材のうち樹脂材に対してかしめ荷重がかかるため、変形などを起こしやすく、これも各部材間の位置決め精度を悪くする原因となっていた。
【0035】
従って、図11に示すソレノイドバルブ300の場合には、かしめ荷重かかかる樹脂材の負担を十分に考慮しなければならず、シール部材Oを装着する溝から端面までの肉厚L0を十分に大きくしなければならなかった。
【0036】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、かしめを行う場合に、同軸度の安定性を向上させることのできる信頼性に優れたソレノイドバルブを提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のソレノイドバルブにあっては、各種ソレノイド構成部材が挿入された円筒状のケースを有するソレノイド部と、バルブ本体の内部にスプールを有するバルブ部とから構成されるソレノイドバルブにおいて、前記ケースと前記各種ソレノイド構成部材との間の磁路を形成すると共に該ソレノイドバルブを他の要素に取り付けるためのブラケットプレートを備え、前記ケースは、一端側が前記ブラケットプレートを介して前記バルブ本体に取り付けられ、他端側に前記各種ソレノイド構成部材の一つであるコネクタ部材が組み込まれる、ソレノイドバルブであって、前記ケースは、円筒状ケース部材の一端側の端部に切り欠きが複数形成され、切り欠きが設けられていない部分の壁全部によりかしめ用突起を等配に設け、該一端側の該かしめ用突起の内周面は曲面形状となっており、前記ブラケットプレートは、その一方の面に前記バルブ本体の一端が当接され、かつ他方の面に、前記円筒状ケース部材における一端側の前記かしめ用突起が設けられていない領域の端縁が当接されると共に、
該ブラケットプレートの外周面側には、前記かしめ用突起に対応する複数の切り欠き溝が形成され、この切り欠き溝の溝底の外周面はその面全体が前記かしめ用突起の内周面に当接する曲面形状としており、前記バルブ本体は、被かしめ部となる段差部の外周面が、前記ケースのかしめ用突起の内周面に当接する曲面形状として形成されていることを特徴とする。
ここで、前記バルブ本体の被かしめ部となる段差部には、かしめ時における前記かしめ用突起の曲がり始めの位置を規定する第1角部と、該第1角部によって曲げられたかしめ用突起の内周面によって押さえ込まれる第2角部と、前記かしめ用突起の先端が当接する傾斜面とが設けられるとよい。
【0039】
上記発明により、かしめ用突起によってかしめるため、端部全周でかしめる場合に比べて、かしめる部分付近の変形量が少なく、また、バルブに第1角部が備えられることで、かしめ用突起の曲がる位置が規定され、第2角部が備えられることで、かしめ用突起に押さえ込まれるため、十分なかしめ固定力が得られる。
また、スプリングバックによりかしめ用突起の先端がバルブの壁面から離れても、第2角部は押さえ込まれたままなので、十分なかしめ固定力を維持できる。
【0040】
前記かしめ用突起には、突起の先端から前記第1角部近傍まで伸びる溝が設けられるとよい。
【0041】
これにより、かしめ用突起は第1角部付近からスムーズに曲げられる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブについて説明する。まず、本実施の形態に係るソレノイドバルブの全体の概要を図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図であり、図2は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成図((A)は一部破断断面図,(B)は(A)中P方向から見た概観図,(C)は(A)中Q方向から見た概観図)である。
【0044】
ソレノイドバルブ100は、ソレノイド部100Aとバルブ部100Bとから構成される。
【0045】
ここで、バルブ部100Bはスプールバルブであり、バルブ部本体となるバルブスリーブ16の内部にスプール15が往復動自在に備えられており、このスプール15のストロークに応じてバルブスリーブ16に形成した弁の開口面積が変化するため、ソレノイドによりスプール15のストローク量を制御することによって流体の流入量や流出量を制御できる構成となっている。
【0046】
ソレノイド部100Aは、概略、コイル3と、コイル3に給電を行うために電気的に接続される端子17aをインサートモールドしたコネクタ部材17と、コイル3への通電によってセンターポスト2に磁気的に吸引されるプランジャ1と、プランジャ1の駆動をスプール15に伝達するためにプランジャ1に連結されたロッド7と、各種ソレノイド構成部材(上記コイル3やセンターポスト2等)を組み込むためのケース部材9と、を備えている。
【0047】
また、プランジャ1の軸受となるスリーブ4と、コイル3が巻かれるボビン6と、プランジャ1がセンターポスト2から離間しやすくするためのシム8と、バルブ部100B内部からコイル3側への流体の漏れを防止するパッキン10と、磁路を形成するアッパープレート11と、同じく磁路を形成すると共にソレノイドバルブ本体を所定の位置に固定するためのブラケットプレート12とを備えている。
【0048】
更に、ロッド7の軸受13と、スプール15に固定されたE型リング18を付勢することによってスプール15と共にロッド7を介してプランジャ1をセンターポスト2から離間させる方向に付勢するスプリング14と、を備えている。
【0049】
なお、コイル3やボビン6はモールドによってAssy化され、モールドコイルサブAssy5を構成している。
【0050】
ここで、プランジャ1は、通常状態、すなわちコイル3に通電していない状態では、センターポスト2から離間する方向に位置する構成となっており、すなわち、本実施の形態では、上述のようにスプール15を、E型リング18を介してソレノイド部100A方向に付勢することによって、プランジャ1はセンターポスト2から離間される。
【0051】
そして、コイル3に通電することによって、コイル3が磁界を発生し、磁路(ケース9,アッパープレート11,プランジャ1,センターポスト2,ブラケットプレート12によって形成される磁路)が形成され、プランジャ1はセンターポスト2に磁気的に吸引される。
【0052】
従って、コイル3に通電する電流の大きさによって、磁気力を制御することができ、これによりプランジャ1の移動量を制御することでスプール15のストローク量を制御でき、これにより流体の流量を制御し、油圧制御などの各種流体圧力制御等を行うことができるというものである。
【0053】
次に、本実施の形態に係るソレノイドバルブの組立構造について説明する。
【0054】
本実施の形態に係るソレノイドバルブ100の場合には、優れた互換性を実現すべく、ブラケットとの配置関係が周方向に対して無関係とするために、コネクタ部材17が、軸心上にあるようにケース部材9の他端側(後端側)から外部に突出する構造となっている。
【0055】
ここで、ケース部材9は、略円筒形状であり、他端側には内側に曲げられた曲げ部93を有している。この曲げ部93は、ケース部材9を成形加工する際に設けられたものであり、従来技術のようにかしめる構成とは異なるものである。
【0056】
一方、コネクタ部材17は外部に突出する部分よりも径が大きくなるような段差部17bを有しており、ケース部材9の他端側の開口部から挿入すると、段差部17bが上記曲げ部93に引っ掛かって位置決めされるように構成されている。
【0057】
このようにコネクタ部材17を挿入した後に、各種ソレノイド構成部材の全てを順次ケース部材9の一端側の開口部から挿入できるように、各構成部材の寸法形状を設定しており、図示の例では、例えば、モールドコイルサブAssy5,スリーブ4,プランジャ1とロッド7とを予め組み付けて一体としたもの,パッキン10,シム8とセンターポスト2と軸受13とブラケットプレート12とを予め組み付けて一体としたものを取り付ける。
【0058】
ここで、ケース部材9は、上述した曲げ部93とは反対側の端部に、かしめ用の突起94が設けられている。なお、図1ではかしめを行った後の状態を示している。
【0059】
そして、このかしめ用の突起94が設けられていない領域において、その端縁にブラケットプレート12の一方の面が当接するように構成されている。
【0060】
また、ブラケットプレート12を取り付けた後に、バルブ部100Bを取り付けると、その本体であるバルブスリーブ16の一端16bが、ブラケットプレート12の他方の面に当接するように構成されている。
【0061】
この状態で、かしめ用の突起94を、バルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aにかしめることによって、ソレノイド構成部材,ブラケットプレート12及びバルブ部100Bが位置決め固定されて組立が完了する。
【0062】
このように、かしめ用の突起94によってかしめるようにしたので、ケースの端部全周でかしめる場合に比べて、ケース部材の外形の変形を低減することができる。従って、ケース部材の肉厚が厚い場合でも、肉を薄く削るなどの切削を施さなくても、好適にかしめることができる。
【0063】
このかしめ工程に関して、図3〜図6を参照して、さらに詳しく説明する。
【0064】
図3はケース部材とブラケットプレートの取り付けを説明する模式図((A)はケース部材の模式的平面図,(B)はブラケットプレートの模式的平面図,(C)はケース部材にブラケットプレートを取り付けた状態の模式的平面図,(D)は(C)中AA断面図)であり、図4は図3の変形例で、本発明の参考例を示したもの((A)はケース部材の模式的平面図,(B)はブラケットプレートの模式的平面図,(C)はケース部材にブラケットプレートを取り付けた状態の模式的平面図,(D)は(C)中BB断面図)であり、図5はかしめ工程を示す模式図であり、図6はかしめ用突起の好適な態様を示す模式図である。
【0065】
図3(A)に示すように、円筒状のケース部材9の端部においては、複数の切り欠き(図示の例では3箇所の切り欠き)を設けることで、切り欠かれていない部分をかしめ用の突起94としている。
【0066】
従って、かしめ用の突起94の内周面94aは、曲面形状となっている。
【0067】
一方、図3(B)に示すように、ブラケットプレート12には、かしめ用の突起94に対応させて複数(図示の例では3個)の切り欠き溝を形成しており、外周面となる、この切り欠き溝の溝底12aを、上述したかしめ用の突起94の内周面94aの曲面形状に沿うような曲面形状としている。
【0068】
従って、図3(C),(D)に示すように、かしめ用の突起94がブラケットプレート12の切り欠き溝に嵌め込まれるようにすると、かしめ用の突起94の内周面94aとブラケットプレート12の外周面(溝底12aの部分)は、その面全体が当接した状態となる。
【0069】
また、特に図示はしないが、バルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aにおいても、その外周面の少なくとも一部を、上述したかしめ用の突起94の内周面94aの曲面形状に沿うような曲面形状としており、同様に面全体が当接するようになっている。
【0070】
このように、かしめ用の突起94の曲面形状の内周面94aを、ブラケットプレート12及びバルブスリーブ16の外周面の少なくとも一部に沿うように当接させた状態で、かしめを行うことによって、ブラケットプレート12及びバルブスリーブ16のケース部材9に対する径方向のガタを防止(芯ずれ防止)することができる。
【0071】
これにより、ブラケットプレート12と一体のセンターポスト2が偏心することによってプランジャ1に働く横力が大きくなることを防止することができ、これによってヒステリシスを低減することができる。
【0072】
また、かしめ用の突起94に多少の変形が生じたとしても、ブラケットプレート12からは離れた位置でバルブスリーブ16を固定するため、ブラケットプレート12が位置決めされる部分ではケースの変形がなく、ブラケットプレート12は精度良く位置決めされる。従って、軸受の軸ずれを低減でき、同軸度を向上できる。
【0073】
また、ブラケットプレート12を他の要素(ソレノイドバルブ100が取り付けられる装置)に取り付けた場合に、このほかの要素とソレノイドバルブ100の中心位置との位置精度を向上させることができる。
【0074】
なお、図示の例では、スプール15の端部を球面形状として、この部分をロッド7に当接させていることから、ソレノイド部100Aとバルブ部100Bとの間に傾きがあった場合でも、これを吸収できる構造となっており、より一層ヒステリシスを低減することができる。
【0075】
また、図示の例では、かしめ用の突起94を等配に3箇所設ける構成としているため、かしめを行った場合に、中心方向に向かって均等にかしめ力が働くため、軸ずれを低減することができる。
【0076】
また、上記図3に示す例では、円筒状のケース部材9の端部において、切り欠きを設けていない部分の壁の全部をかしめ用の突起94とした場合を示したが、図4の参考例では、円筒のうち、外周側のみをかしめ用の突起94として、内周側に、ブラケットプレート12が当接される当接面94bを残しておく構成を示している。
【0077】
次に、かしめ時における、かしめ治具(金型)とかしめ用の突起の挙動について図5を参照して説明する。
【0078】
図5には、かしめを行うための治具(金型)の一部断面図と、ケース部材9,ブラケットプレート12及びバルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aのそれぞれの一部断面図を模式的に示しており、(A)はかしめ開始時,(B)はかしめ終了時の様子を示している。
【0079】
図示のように、かしめを行うための金型500には、かしめ用の突起94の先端に当接して、かしめ用の突起94を折り曲げるための当接面501が設けられている。この当接面501は、曲面状に傾斜している。
【0080】
そして、かしめを行う場合には、ブラケットプレート12及びバルブスリーブ16を組込んだ状態で、金型500を、図5(A)中矢印X方向に駆動する。
【0081】
これにより、まず、当接面501が、かしめ用の突起94の先端に当接し、さらにX方向に駆動することで、かしめ用の突起94の先端は、当接面501によってブラケットプレート12側と内径方向側にそれぞれ分力を受ける。
【0082】
従って、かしめ用の突起94は、図5(A)中矢印で示すように内側に折れ曲がる。
【0083】
この場合に、かしめ用の突起94は、まず、バルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aに設けられた第1角部16cによって曲がり始めの位置が規定されるため、この第1角部16cを起点として折れ曲がる。
【0084】
そして、さらに折れ曲がると、バルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aに設けられた第2角部16dに当接し、この第2角部16dを押し込みつつ、かしめ用の突起94の先端がバルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aに設けられた傾斜面に当接する位置まで折れ曲がる。
【0085】
このように、第1角部16cを設けたことで、かしめ用の突起94の折れ曲がる位置を規定でき、また、第2角部16dを設けたことで、かしめ用の突起94によって、ブラケットプレート12側に向かって積極的に押さえ込まれるため、十分なかしめ固定力が得られる。
【0086】
また、上述のように、かしめ加工を行った場合には、スプリングバックが発生してしまう。従って、図5(B)に示した状態では、かしめ用の突起94の先端がバルブスリーブ16の段差部16aに設けられた傾斜面に当接しているが、その後、自己の弾性的な復元力によりスプリングバックを生じ、その先端は傾斜面から離れた位置まで少し戻った状態となる。
【0087】
しかし、本実施の形態では、先端が離れてしまっても、第2角部16dは押さえ込まれた状態のままであるため、十分なかしめ固定力が維持される。
【0088】
以上のことから、本実施の形態の構成により、比較的かしめ荷重を低くしても十分なかしめ固定力を得ることが可能となる。
【0089】
ここで、図6に示すように、かしめ用の突起94には、溝94cを設けている。このとき、溝94cの溝底の深さが、上記バルブスリーブ16の被かしめ部となる段差部16aにおける第1角部の位置の近傍(同等か、あるいはそれよりも少し深いくらい)になるようにした。
【0090】
これにより、かしめが行われる場合に、かしめ用の突起94は剛性が低くなるため、溝94cの溝底の付近から曲げられ易くなり、かしめ用の突起94の根本付近のふくらみを防止することができる。
【0091】
すなわち、溝94cを設けない場合には、かしめ用の突起94が、根本付近から曲がろうとするため、ブラケットプレートの外周面付近で、ケースの内周面及び外周面のふくらみが発生する可能性が高くなる。
【0092】
このふくらみは、ブラケットプレートがずれる原因となり、軸ずれの原因となるため、本実施の形態では、上記のようにこのふくらみの発生を防止する構成とした。
【0093】
以上のように、上述したようなかしめを行うことによって、かしめ用の突起94とケース部材9の端縁とで、バルブスリーブ16の一端とブラケットプレート12とを挟持固定することによって、これらバルブスリーブ16及びブラケットプレート12は位置決め固定されると共に、コネクタ部材17は上記のように段差部17bが曲げ部93に対して位置決めされ、その他のソレノイド構成部材は、コネクタ部材17とブラケットプレート12とによって閉じ込められることで位置決め固定される。
【0094】
ここで、かしめ時には、かしめ用の突起94によって、バルブスリーブ16の一端にかしめ荷重をかけることになり、この荷重はブラケットプレート12に伝達することになるが、ブラケットプレート12の荷重を受ける側とは反対側の面は、ケース部材9の端縁に当接するため、ケース部材9のみが荷重を受け、ケース部材9に内包されたその他のソレノイド構成部材はかしめ荷重を受けることはない。
【0095】
また、図示例に示すソレノイドバルブ100においては、ケース部材9を小径部91と大径部92とから構成するようにしており、この点について説明する。
【0096】
まず、小径部91は、その内周面にシール部材(シールリング)であるOリング19が密着し、かつ、アッパープレート11の端面が当接され、このアッパープレート11との間で磁路を形成するため、内径精度の要求が比較的大きい部分である。
【0097】
一方、大径部92は内径精度の要求が比較的少ない部分である。なお、この大径部92の内周面に対しても、パッキン10が密着するが、このパッキン10は寸法ばらつきに対しても十分にシール性を発揮できる構造となっているが、この点についての説明は省略する。
【0098】
このように、寸法精度が要求される部分を減らすことで製造負担を減らすことが可能となる。
【0099】
また、大径部92の内径は、Oリング19の外周面が接触することのない程度の大きさに設定しておくことによって、Oリング19の品質低下を防止することが可能となる。
【0100】
すなわち、上述のように組立を行う場合には、コネクタ部材17をケース部材9の他端側の開口部から挿入することになるが、Oリング19がこのコネクタ部材17の装着溝に装着された状態で挿入作業が行われるため、挿入側の大径部92の内径を上記のように設定しておくことによって、挿入の際に、Oリング19が小径部91に至るまでの間に、大径部92の内周面と擦れてしまうことが防止できるため、Oリング19の品質低下を防止できる。
【0101】
次に、本実施の形態に係るソレノイドバルブ100の好適な適用例について説明する。
【0102】
自動車等のエンジンにおいては、エンジンの吸排気バルブをカムシャフトの回転によってバルブ開閉を行うが、運転状態(高速・低速)によって、バルブのタイミングを適切に制御することによって、燃費が向上し、高い排ガス清浄化を得ることが可能になる。
【0103】
このバルブタイミングの制御は、カムシャフトを回転方向にずらして、位相を変えることにより行うことができ、これをソレノイドバルブによって行う技術が公知技術として知られている。
【0104】
ここで、カムシャフトを回転方向にずらすために、ソレノイドバルブによる油圧制御を行うことになるが、配置スペース等の関係からエンジンオイルの流路の経路上にソレノイドバルブが設置されて、エンジンオイルを利用するのが一般的である。
【0105】
従来、オンオフ制御を行うソレノイドバルブを用いることによって、高速時と低速時の2種類の状態に分けて制御を行うことがなされていたが、近年、より高精細な制御を行うべく、リニア制御が可能なソレノイドバルブが用いられるようになっている。
【0106】
そこで、上述した本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブをこのようなバルブタイミングコントロール(VTC)用のリニア制御ソレノイドバルブとして好適に用いることが可能となる。
【0107】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について、図7を参照して説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【0108】
上記第1の実施の形態の場合には、優れた互換性を達成すべく、コネクタ部材が軸心上に位置する場合を例に説明した。
【0109】
しかしながら、かしめ付近の変形を低減するという点と、十分なかしめ固定力を得るという点に着目すれば、上記第1の実施の形態で示した構造に限定されるものではなく、上記第1の実施の形態とは異なる形態を説明する。
【0110】
図7に示すように、本実施の形態に係るソレノイドバルブ600は、コネクタ部材602が軸心上にはなく、側面に設けられた構成となっている。
【0111】
そして、本実施の形態においても、ケース部材601の一端側におけるかしめ構造については、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0112】
したがって、上記第1の実施の形態の場合と同様に、かしめ付近のケース部材の外形の変形を低減することができ、かつ、十分なかしめ固定力を得ることが可能となる。
【0113】
また、図8は、本発明の参考例を示したもので、ブラケット603とプレート604が一体的ではなく、別体で構成されており、ブラケット603はケース部材601の側面に取り付けられている。なお、その他の構成は、図7に示す構成と同一である。
【0114】
この場合も、かしめ構造は、同様であり、かしめ付近のケース部材の外形の変形を低減することができ、かつ、十分なかしめ固定力を得ることが可能となる。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、かしめ用突起が等配に設けられているので、かしめを行った場合に、中心方向に向かって均等にかしめ力が働くため軸ずれを低減できる。また、バルブ本体の段差部に、第1角部と第2角部が設けられる構成を採用することで、かしめによるケースの外形の変形量が少なく、かつ、かしめ用突起の曲がる位置を規定できると共に、十分なかしめ固定力を得ることが可能であるので、各部の位置決め精度が向上し、同軸度が安定するので信頼性に優れる。
【0116】
かしめ用突起に、突起の先端から第1角部近傍まで伸びる溝を設ければ、かしめ用突起を第1角部付近からスムーズに曲げることができ、ケースのふくらみを防止でき、一層、各部の位置決め精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成図である。
【図3】ケース部材とブラケットプレートの取り付けを説明する模式図である。
【図4】図3の変形例で本発明の参考例を示す模式図である。
【図5】かしめ工程を示す模式図である。
【図6】かしめ用突起の好適な態様を示す模式図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【図8】本発明の参考例に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【図9】従来技術に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
【図10】図9中一部拡大図である。
【図11】従来技術に係るソレノイドバルブの概略構成断面図の一部である。
【符号の説明】
1 プランジャ
2 センターポスト
3 コイル
4 スリーブ
5 モールドコイルサブAssy
6 ボビン
7 ロッド
8 シム
9 ケース部材
91 小径部
92 大径部
93 曲げ部
94 突起
94a (突起の)内周面
94b 当接面
94c 溝
10 パッキン
11 アッパープレート
12 ブラケットプレート
12a 溝底
13 軸受
14 スプリング
15 スプール
16 バルブスリーブ
16a 段差部
16b (バルブスリーブの)一端
16c 第1角部
16d 第2角部
17 コネクタ部材
17a 端子
17b 段差部
18 E型リング
19 シールリング
100 ソレノイドバルブ
100A ソレノイド部
100B バルブ部
500 金型
501 当接面
600 ソレノイドバルブ
601 ケース部材
602 プレート
603 ブラケット
604 コネクタ部材
Claims (3)
- 各種ソレノイド構成部材が挿入された円筒状のケースを有するソレノイド部と、バルブ本体の内部にスプールを有するバルブ部とから構成されるソレノイドバルブにおいて、
前記ケースと前記各種ソレノイド構成部材との間の磁路を形成すると共に該ソレノイドバルブを他の要素に取り付けるためのブラケットプレートを備え、
前記ケースは、一端側が前記ブラケットプレートを介して前記バルブ本体に取り付けられ、他端側に前記各種ソレノイド構成部材の一つであるコネクタ部材が組み込まれる、ソレノイドバルブであって、
前記ケースは、円筒状ケース部材の一端側の端部に切り欠きが複数形成され、切り欠きが設けられていない部分の壁全部によりかしめ用突起を等配に設け、該一端側の該かしめ用突起の内周面は曲面形状となっており、
前記ブラケットプレートは、その一方の面に前記バルブ本体の一端が当接され、かつ他方の面に、前記円筒状ケース部材における一端側の前記かしめ用突起が設けられていない領域の端縁が当接されると共に、
該ブラケットプレートの外周面側には、前記かしめ用突起に対応する複数の切り欠き溝が形成され、この切り欠き溝の溝底の外周面はその面全体が前記かしめ用突起の内周面に当接する曲面形状としており、
前記バルブ本体は、被かしめ部となる段差部の外周面が、前記ケースのかしめ用突起の内周面に当接する曲面形状として形成されていることを特徴とするソレノイドバルブ。 - 前記バルブ本体の被かしめ部となる段差部には、かしめ時における前記かしめ用突起の曲がり始めの位置を規定する第1角部と、該第1角部によって曲げられたかしめ用突起の内周面によって押さえ込まれる第2角部と、前記かしめ用突起の先端が当接する傾斜面とが設けられることを特徴とする請求項1に記載のソレノイドバルブ。
- 前記かしめ用突起には、突起の先端から前記第1角部近傍まで伸びる溝が設けられることを特徴とする請求項2に記載のソレノイドバルブ。
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