WO2010055825A1

WO2010055825A1 - ジンケート型亜鉛めっき浴

Info

Publication number: WO2010055825A1
Application number: PCT/JP2009/069108
Authority: WO
Inventors: 和生伊藤; 智子石川
Original assignee: ユケン工業株式会社
Priority date: 2008-11-11
Filing date: 2009-11-10
Publication date: 2010-05-20
Also published as: EP2357268A4; JP5419021B2; JPWO2010055825A1; EP2357268A1; US20110210007A1

Abstract

　低電流密度でも効率良く亜鉛めっき皮膜を形成させること可能とし、光沢度の高い高品質の亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とする、ジンケート型亜鉛めっき浴を提供する。電気めっきにて、亜鉛を少なくとも含む金属を析出させて、亜鉛めっき皮膜を形成させるためのジンケート型亜鉛めっき浴であって、析出する金属の結晶を微細化する機能を有する一次光沢剤と、例えば２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールなどの所定の構造を有する複素環式化合物を含むめっき促進剤と、を含有するジンケート型亜鉛めっき浴とする。

Description

ジンケート型亜鉛めっき浴

　本発明は、自動車用の鋼板、ボルト、ナットなどに対して、電気めっきによって亜鉛めっき皮膜を形成させるのに使用するジンケート型亜鉛めっき浴に関する。

　亜鉛めっき皮膜は、耐食性を向上させる目的から、自動車用の鋼板やボルトやナットなどの鋼材からなる機械部品にいたるまで、我々の身の回りの物に対して広汎に用いられている。また、耐熱性や耐塩水性の向上などの要求に応じ、亜鉛‐ニッケル合金、亜鉛‐鉄合金、すず‐亜鉛合金など、亜鉛合金めっき皮膜も広く利用されている。

　亜鉛めっき皮膜は、めっき浴に被めっき物を浸漬した状態にて電流を流し、被めっき物を通電させることにより実施される電気めっきにて形成される。亜鉛めっき皮膜を形成するためのめっき浴は、アルカリ浴と酸性浴とに大別され、アルカリ浴にはシアン化物浴やジンケート型亜鉛めっき浴、酸性浴には塩化亜鉛浴や硫酸亜鉛浴がある。これらのめっき浴は、亜鉛めっき皮膜の硬度や光沢性、被めっき物の形状や大きさ、作業環境などの所望の条件に応じて適宜選択されている。

　中でも、ジンケート型亜鉛めっき浴は、排水処理に負担がかかるシアン化物を使用しない上、浴組成が単純で管理しやすく、プレス小物、ボルト、ナットなどにも適用できる利点があるため、好まれて工業的な実施がなされている。ただし、ジンケート型亜鉛めっき浴を用いて得られる亜鉛めっき皮膜は、同じアルカリ浴のシアン化物浴と比較した場合、均一電着性や被覆力には劣るなどの欠点もある。それでも、ジンケート型亜鉛めっき浴は、亜鉛めっき皮膜の形成を工業的環境にて実施するためには非常に有効なものであり、これまで多くの改良型が開発されてきた（例えば、特許文献１参照）。

　特許文献１では、浴可溶性の第四級アンモニウムポリマーを含有するジンケート型亜鉛めっき浴が開示され、このジンケート型亜鉛めっき浴は近年改良された優れたものの中の１つに挙げられる。このジンケート型亜鉛めっき浴では、電流密度に高低の差がある複雑な形状や長さを有する物にも、均一電着性が高く光沢度が高い亜鉛めっき皮膜を形成できる。

特開平８－２０９３７９号公報

　しかしながら、特許文献１にて開示されたジンケート型亜鉛めっき浴は、広範囲の電流密度の分布が生じる電気めっきを実施した際、高電流部でのめっき効率を抑えることにより、高電流部と低電流部での亜鉛めっき皮膜の膜厚の差を小さくし、均一電着性を向上させている。そのため、このジンケート型亜鉛めっき浴では、膜厚が均一で薄い亜鉛めっき皮膜を形成することになる。そこで、上述の従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴には見られない効果、すなわち、広範囲の電流密度の分布が生じる電気めっきの実施において、低電流密度でのめっき効率の向上を主な要因とすることにより、全体として厚い膜厚で、均一電着性の高く、高い光沢度の亜鉛めっき皮膜の形成が可能なジンケート型亜鉛めっき浴が求められている。また、従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴では、めっき効率を高めると、均一電着性及びつきまわり性が低下する問題がある。

　上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、低電流密度での電気めっきの実施によっても、効率良く亜鉛めっき皮膜の形成を可能とするジンケート型亜鉛めっき浴を提供することにある。具体的に述べると、低電流密度での電気めっきの実施において、めっき効率及びつきまわり性の高いジンケート型亜鉛めっき浴を提供することにある。また、低電流密度（０．０５～１．０Ａ／ｄｍ^２）を含む広範囲の電流密度の分布が生じる電気めっきの実施において、低電流密度でのめっき効率の向上を主な要因とすることにより、厚い膜厚の亜鉛めっき皮膜を形成させ、高い均一電着性を発揮するジンケート型亜鉛めっき浴を提供することにある。また、本発明の別の課題としては、光沢度の高い高品質の亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とするジンケート型亜鉛めっき浴を提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明者等は、一次光沢剤、及びめっき促進剤、さらに二次光沢剤に含有されうる多種の化合物を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下に示すジンケート型亜鉛めっき浴が提供される。

［１］　電気めっきにて、亜鉛を少なくとも含む金属を析出させて、亜鉛めっき皮膜を形成させるためのジンケート型亜鉛めっき浴であって、析出する前記金属の結晶を微細化する機能を有する一次光沢剤と、下記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及び／又は前記複素環式化合物の誘導体を含むめっき促進剤と、を含有するジンケート型亜鉛めっき浴。

　（化学式（Ｉ）中、ｎは、１～３の自然数、Ｒ^１とＲ^２は、同じものか、又は異なったものであり、水素、ＣＨ_２ＣＯＯＨ、ＣＨ_２ＣＨ_２ＯＨ、又はＣＨ_２ＣＨ（ＯＨ）ＣＨ_２Ｃｌを表す。）

［２］　前記複素環式化合物及び／又は前記複素環式化合物の誘導体を０．０１ｇ／Ｌ以上１．０ｇ／Ｌ以下含有する、前記［１］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［３］　前記一次光沢剤として、水溶性カチオン高分子化合物を含有する、前記［１］又は［２］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［４］　前記水溶性カチオン高分子化合物として、下記化学式（ＩＩ）にて表される化合物を含む、前記［３］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

　（化学式（ＩＩ）において、ｎは１以上の自然数である。Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３、及びＲ^４は、同じものか、又は異なったものであり、水素、メチル、エチル、イソプロピル、２‐ヒドロキシルエチル‐ＣＨ_２ＣＨ_２（ＯＣＨ_２ＣＨ_２）_ＸＯＨ（Ｘは０～６の自然数）又は２‐ヒドロキシエチル‐ＣＨ_２ＣＨ_２（ＯＣＣＨ_２ＣＨ_２）_ＸＯＨ（Ｘは０～６の自然数）を表す。Ｒ^５は、（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２、（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２、又はＣＨ_２‐ＣＨＯＨ‐ＣＨ_２‐Ｏ‐ＣＨ_２‐ＣＨＯＨ‐ＣＨ_２を表す。Ｙは、Ｓ又はＯを表す。）

［５］　前記亜鉛めっき皮膜を平滑化する機能を有する二次光沢剤を含有する前記［１］～［４］のいずれかに記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［６］　前記二次光沢剤として、有機アルデヒド類、及び複素環式化合物よりなる群から選択される１種以上を含有する、前記［５］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［７］　前記二次光沢剤として、芳香族アルデヒド及びピリジニウム化合物のうち少なくともいずれかを含有する、前記［６］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［８］　亜鉛イオンを５ｇ／Ｌ以上２０ｇ／Ｌ以下含有する、前記［１］～［７］のいずれかに記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［９］　水酸化ナトリウムを８０ｇ／Ｌ以上２５０ｇ／Ｌ以下含有する、前記［１］～［８］のいずれかに記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［１０］　ニッケルイオン又は鉄イオンのうち少なくともいずれかを含有する、前記［１］～［９］のいずれかに記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［１１］　前記ニッケルイオンを１００ｍｇ／Ｌ以上４０００ｍｇ／Ｌ以下含有する、前記［１０］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

［１２］　前記鉄イオンを１０ｍｇ／Ｌ以上１５０ｍｇ／Ｌ以下含有する、前記［１０］又は［１１］に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

　本発明のジンケート型亜鉛めっき浴は、効率良く亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とする。具体的に述べると、低電流密度での電気めっきの実施において、高いめっき効率及び高いつきまわり性を発揮する。また、低電流密度（０．０５～１．０Ａ／ｄｍ^２）を含む広い電流密度の範囲にて電気めっきを実施した際、低電流密度でのめっき効率の向上を主な要因とすることにより、高い均一電着性を発揮し、厚い膜厚の亜鉛めっき皮膜を形成させる。さらに、本発明のジンケート型亜鉛めっき浴は、一次光沢剤として特定の構造を有する水溶性カチオン高分子化合物（下記化学式（ＩＩＩ）に表す）及び二次光沢剤を含有させた場合、光沢度の高い高品質の亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とする。

めっき促進剤として含有される複素環式化合物が被めっき面に吸着している様子を表した模式図である。本発明及び従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴について、電流密度とめっき効率との関係を表した図である。本発明のジンケート型亜鉛めっき浴（実施例９）における電流密度と亜鉛めっき皮膜の膜厚との関係を表した図である。

　以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

１．ジンケート型亜鉛めっき浴：
１－１．本発明のジンケート型亜鉛めっき浴の概要：
　本発明のジンケート型亜鉛めっき浴（以下、「本発明のめっき浴」）は、電気めっきにて、亜鉛を少なくとも含む金属を析出させて、亜鉛めっき皮膜を形成させる。本発明のめっき浴の構成を述べると、析出する金属の結晶を微細化する機能を有する一次光沢剤と、下記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及び／又は前記複素環式化合物の誘導体を含むめっき促進剤と、を含有するジンケート型亜鉛めっき浴である。さらに、本発明のめっき浴は、亜鉛めっき皮膜を平滑化する機能を有する二次光沢剤を含有することもできる。

　本発明のめっき浴は、従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴と同様に、ジンケート亜鉛（［Ｚｎ（ＯＨ）_４］^２－）を含有するものである。ここでいう「一次光沢剤」とは、めっき分野の当業者が一次光沢剤、キャリヤ、応力抑制剤などと称するものと同じものであり、析出する金属の結晶を微細化して平滑な亜鉛めっき皮膜を形成させる機能を有し、亜鉛めっき皮膜の内部応力を緩和する機能を有するものである。ここでいう「二次光沢剤」とは、めっき分野の当業者が二次光沢剤、レベラーなどと称するものと同じものであり、電気めっきにて亜鉛めっき皮膜を形成する際に、亜鉛めっき皮膜の平滑化作用を担うものである。

　これら一次光沢剤及び二次光沢剤は、字義通り、光沢のある亜鉛めっき皮膜を形成させる機能を有する。特に一次光沢剤と二次光沢剤を併用することにより、析出する金属の微細化がさらに促進され、亜鉛めっき皮膜に鏡面光沢を与えることもできる。本発明のめっき浴では、無光沢めっき、半光沢めっき、光沢めっきなど、亜鉛めっき皮膜の外観に応じて、一次光沢剤及び二次光沢剤に含有される化合物を採用できる（詳しくは後述）。

　ここでいう「めっき促進剤」とは、めっき分野の当業者がめっき加工において用いる析出促進作用を有する添加剤のことであり、めっきの電極反応を促進して電流密度を増加させる物質である。なお、本明細書ではめっき皮膜の名称について、主要な金属成分として亜鉛を含むめっき皮膜を総称して「亜鉛めっき皮膜」とし、特に亜鉛と他の金属との合金を成分とするめっき皮膜を区別して称する必要がある場合には「亜鉛合金めっき皮膜」（例えば、Ｚｎ‐Ｎｉ合金めっき皮膜など）と称して説明する。

　上述の本発明のめっき浴では、低電流域にて電気めっきを実施した際にも効率良く亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とし、さらに所定条件下においては光沢度の高い高品質の亜鉛めっき皮膜を形成させることを可能とする。また、本発明のめっき浴は、低電流域にて電気めっきを実施した際にも、均一電着性、つきまわり性、及びめっき効率が高い。そのため、本発明のめっき浴は、低電流域での電気めっきが通常において実施されるバレルめっきにも有効に適用できる（詳しくは後述）。

　以下、本発明のめっき浴の成分について説明する。まず、「基本成分」として亜鉛、アルカリについて説明し、次いで「めっき促進剤」、「一次光沢剤」及び「二次光沢剤」について順次詳しく説明する。

１－２．本発明のめっき浴の基本成分：
　本発明のめっき浴は、従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴と同様に、ジンケート亜鉛（［Ｚｎ（ＯＨ）_４］^２－）を含有し、ジンケート亜鉛の調製は、めっき技術の当業者が通常用いうる手法を適宜採用できる。例えば、このジンケート亜鉛を溶解させためっき浴とするため、従来公知の方法と同様に、酸化亜鉛（ＺｎＯ）を、水酸化ナトリウム（ＮａＯＨ）水溶液などのアルカリ水溶液に溶解することにより、ジンケート亜鉛を調製するとよい。

　本発明のめっき浴では、亜鉛めっき皮膜の品質（外観、膜厚、後処理性、耐食性）に関する実用性の観点からは、亜鉛イオンを５ｇ／Ｌ以上２０ｇ／Ｌ以下含有することが好ましい。めっき浴に含有される亜鉛イオンが５ｇ／Ｌ未満では、亜鉛めっき皮膜の外観低下、及び亜鉛めっき皮膜の厚みの低下により耐食性を悪くするため好ましくない。また、めっき浴に含有される亜鉛が２０ｇ／Ｌ超では、亜鉛めっき皮膜の外観不良やつきまわり性の低下などが生じるため好ましくない。なお、ここでいうめっき浴に含有される亜鉛イオンの量は、酸化亜鉛（ＺｎＯ）などの原材料の質量から分子量換算で算出される亜鉛イオン（Ｚｎ^２＋）の量を適用できる。

　本発明のめっき浴では、めっき浴の安定性及び亜鉛めっき皮膜の品質（外観、膜厚、後処理性、耐食性）に関する実用性の観点からは、水酸化ナトリウム（ＮａＯＨ）を８０ｇ／Ｌ以上２５０ｇ／Ｌ以下含有することが好ましい。めっき浴に含有される水酸化ナトリウムが８０ｇ／Ｌ未満では、めっき浴の安定性が不安定になり亜鉛めっき皮膜の外観不良やつきまわり性の低下などが生じるため好ましくない。また、めっき浴に含有される水酸化ナトリウムが２５０ｇ／Ｌ超では、水酸化ナトリウムの濃度が高すぎて実用性に欠けるため好ましくない。

１－３．めっき促進剤：
　本発明のめっき浴が含有するめっき促進剤は、上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及び／又はこの複素環式化合物の誘導体を含有することを特徴としている。ここでいう「上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物の誘導体」とは、１，３，４－チアジアゾールの誘導体のことを意味する。上記化学式（Ｉ）にて表される化合物及びその誘導体を具体的に挙げると、２，５‐ジメルカプト‐１，３，４‐チアジアゾール、２－チオ酢酸－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール、２，５－ジチオ酢酸－１，３，４－チアジアゾール、２－ヒドロキシエチルチオ－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール、２，５－ジヒドロキシエチルチオ－１，３，４－チアジアゾール、エピクロルヒドリン改質２，５‐ジメルカプト‐１，３，４‐チアジアゾールなどがある。

　図１は、上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及びその誘導体の一例として２，５‐ジメルカプト‐１，３，４‐チアジアゾールを挙げ、この２，５‐ジメルカプト‐１，３、４‐チアジアゾールが被めっき面に吸着している状態として想定されるものを模式的に示している。図１にて示すように、２つの置換基及び５員環を構成する硫黄が、被めっき面と化学吸着する。図１中で水玉模様にて表されている２つの置換基の硫黄及び５員環を構成する硫黄と被めっき面との間の空間は、還元反応が生じやすくなるため、亜鉛等の金属の析出が促進されると推察される。そこで、上述に説明した上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物の誘導体には、図１にて模式的に表されるような化学吸着が生じうると想定される化合物の分子構造であり、めっき技術又は有機化学の分野の当業者が通常設計しうる範囲において上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物に基づき置換基の付加あるいは骨格変更をして得られる化合物をも包含するものとする。

　本発明のめっき浴では、めっき効率を向上させる観点からは、上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及び／又はその誘導体は、０．０１ｇ／Ｌ以上１．０ｇ／Ｌ以下含有されることが好ましい。

　以上に説明した上記式（Ｉ）にて表される複素環式化合物、その誘導体、及びこれら化合物に基づき生成された化合物は、本発明のめっき浴を用いて電気めっきを実施する際、めっき効率の向上に多大に寄与する。また、これら複素環式化合物及びその誘導体は、本発明のめっき浴にて形成される亜鉛めっき皮膜に対して高い光沢性の付与、換言すると、高い光沢度を付与する働きをもつ。

１－４．一次光沢剤：
　本発明のめっき浴は、一次光沢剤を含む。本発明のめっき浴に含有される一次光沢剤としては、一般に一次光沢剤として各種亜鉛めっき浴に使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及びポリアルキレンポリアミン類などの水溶性の高分子有機化合物などを挙げることができる。特に、本発明のめっき浴において、一次光沢剤は、水溶性カチオン高分子化合物を含有するものが好ましい。

　この水溶性カチオン高分子化合物としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエポキシポリアミン、及びポリアルキレンポリアミン、などを挙げることができる。ポリアリルアミンとしては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄の共重合体などを挙げることができる。ポリエポキシポリアミンとしては、エチレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、イミダゾールとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、１－メチルイミダゾールや２－メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、及びアセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのトリアジン誘導体などを含む複素環状アミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体を挙げることができる。ポリアミドポリアミンとしては、３－ジメチルアミノプロピル尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ビス（Ｎ，Ｎ－ジメチルアミノプロピル）尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体などを具体例とするポリアミンポリ尿素樹脂、及びＮ，Ｎ－ジメチルアミノプロピルアミンとアルキレンジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合重合体などを具体例とする水溶性ナイロン樹脂を挙げることができる。また、ポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミンと２，２’－ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンと１，３－ジクロルプロパンとの縮合重合体、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’－テトラメチル－１，３－ジアミノプロパンと２，２’－ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’－テトラメチル－１，３－ジアミノプロパンと１，４－ジクロルブタンとの縮合重合体、及びＮ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’－テトラメチル－１，３－ジアミノプロパンと１，３－ジクロルプロパン－２－オールとの縮合重合体などを挙げることができる。

　特に、本発明のめっき浴に含まれる一次光沢剤において、上述の水溶性カチオン高分子化合物としては、均一電着性やつきまわり性を向上させることができる観点からは、下記化学式（ＩＩ）にて表される化合物を含有することがより好ましい。

１－５．二次光沢剤：
　本発明のめっき浴は、二次光沢剤を任意で含有する。この二次光沢剤としては、有機アルデヒド類及び／又は複素環式化合物を含有するものを挙げることができる。

　特に、光沢性の向上とつきまわり性の向上の観点からは、本発明のめっき浴に用いられる二次光沢剤は、芳香族アルデヒド及びピリジニウム化合物のうち少なくともいずれかを含有することが好ましい。

　本発明のめっき浴において、二次光沢剤として含有することが好ましい芳香族アルデヒドとしては、アニスアルデヒド、ベラトルアルデヒド、サリチルアルデヒド、バニリン、ピペロナール、及びｐ－ヒドロキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。特に、光沢性の向上と亜鉛めっき浴に含有される化合物の安定性の観点からは、本発明のめっき浴に用いられる二次光沢剤として含有される芳香族アルデヒドは、ベラトルアルデヒド、及びバニリンがより好ましい。

　本発明のめっき浴において、二次光沢剤として含有することが好ましいピリジニウム化合物としては、ベンジルピリジニウムカルボキシレート（塩化３－カルボキシベンジルピリジニウム）、及び塩化３－カルバモイルベンジルピリジニウムなどを挙げることができる。

２．亜鉛合金めっき皮膜の形成のための実施形態：
　本発明のめっき浴は、亜鉛のみを主成分とする亜鉛めっき皮膜に限らず、亜鉛‐ニッケル合金（以下、「Ｚｎ‐Ｎｉ合金」）、亜鉛‐鉄合金（以下、「Ｚｎ‐Ｆｅ合金」）、亜鉛‐鉄‐ニッケル合金（以下、「Ｚｎ‐Ｆｅ‐Ｎｉ合金」）などの亜鉛合金めっき皮膜を電気めっきにて形成する用途にも適用できる。なお、本発明のめっき浴において、金属光沢剤としても機能しうるニッケルイオンを含有させる場合、上述の二次光沢剤を含有しないときであっても、良好な光沢外観の亜鉛めっき皮膜（Ｚｎ‐Ｎｉ合金皮膜又はＺｎ‐Ｆｅ‐Ｎｉ合金皮膜）を形成し得ることがある（後述の実施例８参照）。

　本発明のめっき浴は、Ｚｎ‐Ｎｉ合金めっき皮膜を形成する用途にはニッケルイオンを、Ｚｎ‐Ｆｅ合金めっき皮膜を形成する用途には鉄イオンを、Ｚｎ‐Ｆｅ‐Ｎｉ合金を形成する用途には鉄イオン及びニッケルイオンを含有させることができる。本発明のめっき浴にニッケルイオンを含有させる場合には、例えば、ＮｉＳＯ_４・６Ｈ_２Ｏ、ＮｉＣｌ_２・６Ｈ_２Ｏ，Ｎｉ（ＯＨ）_２などをめっき浴中に溶解させることができる。本発明のめっき浴に鉄イオンを含有させる場合には、例えば、Ｆｅ_２（ＳＯ_４）_３・７Ｈ_２Ｏ、ＦｅＳＯ_４・７Ｈ_２Ｏ、Ｆｅ（ＯＨ）_３、ＦｅＣｌ_３・６Ｈ_２Ｏ、ＦｅＣｌ_２・４Ｈ_２Ｏなどを溶解させることができる。

　本発明のめっき浴では、ニッケルイオンを含有する場合、亜鉛めっき皮膜の品質（外観、膜厚、後処理性、耐食性）を向上させる観点からは、ニッケルイオンを１００ｍｇ／Ｌ以上４０００ｍｇ／Ｌ以下含有することが好ましい。めっき浴に含有されるニッケルイオンが、１００ｍｇ／Ｌ未満又は４０００ｍｇ／Ｌ超では、要求外観、後加工性、化成処理性、耐食性、耐熱性などで良好なものを得られない。

　本発明のめっき浴では、鉄イオンを含有する場合、亜鉛めっき皮膜の品質（外観、膜厚、後処理性、耐食性）を向上させる観点からは、鉄イオンを１０ｍｇ／Ｌ以上１５０ｍｇ／Ｌ以下含有することが好ましい。めっき浴に含有される鉄イオンが、１０ｍｇ／Ｌ未満、又は１５０　ｍｇ／Ｌ超では、要求外観、後加工性、化成処理性、耐食性、耐熱性などで良好なものを得られない。

　さらに、亜鉛合金めっき皮膜を形成するための実施形態では、本発明のめっき浴にキレート剤を含有させることが好ましい。なお、このキレート剤は、例えばジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのように、キレート剤としての機能も有する一次光沢剤を用いてもよい。ニッケル又は鉄、もしくは両者を成分に含む亜鉛合金めっき皮膜を形成させる実施形態では、本発明のめっき浴は、例えば、キレート剤として酒石酸、クエン酸、グルコン酸、エチレンジアミン、ヘキサミン、１，２－ジアミノプロパン、１，３－ジアミノプロパン、１，２－ジアミノブタン、１，４－ジアミノブタン、トリアミノトリエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミノプロピルアミン、２－ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、１，３－ビス－（３－アミノプロポキシ）エタン、ニトリロトリ酢酸（ＮＴＡ）、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）、ジエチレントリアミン五酢酸（ＤＴＰＡ）、トリエチレンテトラミン六酢酸（ＴＴＨＡ）などを含むことが好ましい。

３．本発明のジンケート型亜鉛めっき浴の作用・効果：
　図２は、従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴（本願出願前に公知の改良型も含む）、及び本発明のジンケート型亜鉛めっき浴について、広範囲の電流密度の分布が生じる電気めっきを実施した際の電流密度とめっき効率との関係を表す。まず、従来型のジンケート型亜鉛めっき浴では、高電流密度ではめっき効率が高く、低電流密度ではめっき効率が低い（図２中の破線Ａ）。このような電流密度の高低差によるめっき効率のバラツキは、高電流密度にて限定的に亜鉛の析出が促進されるために生じる。加えて、高電流密度の箇所で亜鉛イオンが消費され、低電流密度の箇所では析出に十分な亜鉛イオンを確保できないことによって、電流密度の高低差によるめっき効率のバラツキが助長される。一次光沢剤として下記化学式（ＩＩＩ）に表す水溶性カチオン高分子化合物を含有する本願出願前に公知の改良型のジンケート型亜鉛めっき浴では、高電流密度での電流効率を低下させることにより、高電流密度でのめっき効率を低く抑えている。そのため、上述の改良型のジンケート型亜鉛めっき浴では、高電流密度と低電流密度でのめっき効率の差が小さくなり均一電着性が向上するが、平均のめっき効率は低く、形成される亜鉛めっき皮膜は薄い（図２中の破線Ｂ）。本発明のめっき浴では、低電流密度でのめっき効率が高められている（図２中の実線Ｃ、詳しくは後述の実施例の評価試験４を参照）。この低電流密度でのめっき効率の向上の主な要因は、本発明のめっき浴で均一電着性が向上している点にある。よって、本発明のめっき浴では、平均のめっき効率も高く、膜厚が厚く均一な亜鉛めっき皮膜を形成することができる（詳しくは後述の実施例の評価試験３を参照）。

　以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

４．ジンケート型亜鉛めっき浴の調製：
４－１．亜鉛のみを金属成分とする亜鉛めっき皮膜用：
（実施例１）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン８ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１００ｇ／Ｌ、一次光沢剤としてジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンのモル比１：１の縮合重合物（表１の化合物Ａ、ＵＲＳＡ　ＣＨＥＭＩＥ　ＧＭＢＨ社製、品番：Ｐｒｏｄｕｃｔ　Ｊ　１３８　Ｍ）を０．４ｇ／Ｌ、二次光沢剤として亜硫酸水素ナトリウム溶液に反応溶解させたベラトルアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体（和光純薬工業株式会社製、以下同じ）を０．０３ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ、東洋化成工業株式会社製、ＭＴＤ）０．０５ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。なお、上述の化合物（重合体も含む）の濃度は、入手した各化合物の市販品の純度（含有率）と分子量に基づき換算して調製した（以下、他の市販品の化合物の濃度を規定する場合も同じ）。

（実施例２）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン６ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１００ｇ／Ｌ、一次光沢剤として下記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製［旧ローヌプーラン（Ｒｈｏｎｅ‐Ｐｏｕｌｅｎｃ）社製］、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤として亜硫酸水素ナトリウム溶液に反応溶解させたアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体（和光純薬工業株式会社製、以下同じ）を０．０２５ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０２ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例３）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン９ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１２０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を０．６ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてベラトルアルデヒド０．０２５ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０７５ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例４）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１２ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１２０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０２５ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．１００ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例５）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１５ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１３５ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０５０ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．２００ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例６）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１２ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１２５ｇ／Ｌ、一次光沢剤としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合体（表１の化合物Ｃ、商品名：ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化イオウ共重合体［４級アミン／ＳＯ_２］、日東紡社製、品番：ＰＡＳ－Ａ－５）を０．４ｇ／Ｌ、ベンジルピリジニウムカルボキシレート水溶液（ＢＡＳＦ社製、Ｌｕｇａｌｖａｎ　ＢＰＣ－４８）より二次光沢剤としてベンジルピリジニウムカルボキシレートを０．０６ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０５０ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例７）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１３ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１３０ｇ／Ｌ、一次光沢剤としてエチレンジアミンとエピクロルヒドリンとをモル比１：２にて反応させた縮合重合体（表１の化合物Ｄ、ＵＲＳＡ　ＣＨＥＭＩＥ　ＧＭＢＨ社製、品番：Ｐｒｏｄｕｃｔ　ＪＦ　２２０）を１．５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてベラトルアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．１００ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例９）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１０ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１００ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０６０ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例１０）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１８ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１４０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．２ｇ／Ｌ、及びイミダゾールとエピクロルヒドリンとをモル比１：０．７３にて反応させた縮合重合体（イミダゾール成分約１８％含有）（表１の化合物Ｆ）を固形分で１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０９ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０５０ｇ／Ｌを含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例１１）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１６ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１４０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を０．６ｇ／Ｌ、及びイミダゾールとエピクロルヒドリンとをモル比１：１にて反応させた縮合重合体（イミダゾール成分約１８％含有）（表１の化合物Ｇ）を１．５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２－チオ酢酸－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｋ）０．１００ｇ／Ｌを含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例１２）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１３ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１３０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．２ｇ／Ｌ、及び１－メチルイミダゾール（日本合成化学工業製、１ＭＩ）とエピクロルヒドリンとをモル比１：０．７３にて反応させた縮合重合体（１－メチルイミダゾール成分約２１％含有）（表１の化合物Ｈ）を０．１５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてベンジルピリジニウムカルボキシレート水溶液（ＢＡＳＦ社製、Ｌｕｇａｌｖａｎ　ＢＰＣ－４８）０．０３ｇ／Ｌ、めっき促進剤として２－ヒドロキシエチルチオ－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｌ）０．０７５ｇ／Ｌを含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（実施例１３）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１２ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１２０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．２ｇ／Ｌ、及び２－メチルイミダゾール（日本合成化学工業製、２ＭＩ）とエピクロルヒドリンとをモル比１：１にて反応させた縮合重合体（２－メチルイミダゾール成分約２１％含有）（（表１の化合物Ｉ））を０．５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０９ｇ／Ｌ、めっき促進剤としてエピクロルヒドリン改質２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｍ）０．２０ｇ／Ｌを含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（比較例１）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン８ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１００ｇ／Ｌ、一次光沢剤としてジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンのモル比１：１の縮合重合物（表１の化合物Ａ、ＵＲＳＡ　ＣＨＥＭＩＥ　ＧＭＢＨ社製　、品番：Ｐｒｏｄｕｃｔ　Ｊ　１３８　Ｍ）１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてベラトルアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（比較例２）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１０ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１００ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．０ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

（比較例３）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１４ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１４０ｇ／Ｌ、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（表１の化合物Ｂ、商品名：ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ、ローディア（Ｒｈｏｄｉａ）社製、ＣＡＳ　Ｎｏ．６８５５５‐３６‐２）を１．２ｇ／Ｌ、及びイミダゾールとエピクロルヒドリンとをモル比１：０．７３にて反応させた縮合重合体（イミダゾール成分約１８％含有）（表１の化合物Ｆ）を０．７５ｇ／Ｌ、二次光沢剤としてアニスアルデヒド亜硫酸Ｎａ付加体０．０３ｇ／Ｌを含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

４－２．亜鉛‐ニッケル合金めっき皮膜用：
（実施例８）
　表１にて組成を示すように、亜鉛イオン１１ｇ／Ｌ、ニッケルイオン２．２５ｇ／Ｌ、水酸化ナトリウム１２０ｇ／Ｌ、一次光沢剤としてテトラエチレンペンタミン３０ｇ／Ｌ（表１の化合物Ｅ）、めっき促進剤２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）０．０８０ｇ／Ｌ、を含むジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。

５．ジンケート型亜鉛めっき浴の評価試験：
　実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴に関し、以下に記述する各評価項目に応じた電気めっきを実施し、形成された亜鉛めっき皮膜について検査を行った。

５－１．電流密度域（０．０５～２．５Ａ／ｄｍ^２）を含む広範囲の電流密度の分布が生じる電気めっきにより形成された亜鉛めっき皮膜の光沢外観、はがれ、及びふくれに関する評価試験（評価試験１）：
５－１－１．電気めっき：
　スターラー回転数１０００ｒｐｍの液循環型ハルセル（商品名：スマートハルセル、山本めっき試験器社製、品番：Ｂ‐５３‐ＳＭ）に、実施例１～１３、比較例１～３のめっき浴をそれぞれ収容して電気めっきを実施した。また、亜鉛めっき皮膜を形成させる陽極としては縦×横×厚さが４５×４５×１ｍｍの鉄板、陰極としては山本鍍金試験器製の縦×横×厚さが６７×１００×０．３ｍｍの鉄板を用いた。電気めっきの条件は、電流０．５Ａ（電流密度０．０５～２．５Ａ／ｄｍ^２）、通電時間６０分、めっき浴温度２５℃とした。

５－１－２．光沢外観の評価試験の結果及び評価：
　実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴について、目視により亜鉛めっき皮膜の光沢性を判定する評価試験の結果を表２に示す。めっき促進剤として含有される２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）の有無にて対照となる実施例２と比較例２との組を比較すると、実施例２にて形成された亜鉛めっき皮膜は全面光沢であったのに対し、比較例２にて形成された亜鉛めっき皮膜は半光沢であった。したがって、めっき促進剤として含有される２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールは、亜鉛めっき皮膜の光沢性を向上させる作用を有することが判明した。同様に、めっき促進剤として、２－チオ酢酸－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｋ）を含む実施例１１、２－ヒドロキシエチルチオ－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｌ）を含む実施例１２、エピクロルヒドリン改質２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールを含む実施例１３（表１の化合物Ｍ）についても、亜鉛めっき皮膜の光沢性を向上させる作用を有することが判明した。なお、表２にいう「全面光沢」とは、均一な鏡面に近いものをいう。また、表２にいう「光沢」とは、全面光沢ではあるが少し鈍いものをいう。「半光沢」とは、光沢性がより鈍いものをいう。「全面白色」とは、均一な無光沢のものをいう。

５－１－３．はがれ及びふくれの評価試験の結果及び評価：
　亜鉛めっき皮膜のはがれ及びふくれの評価試験のため、上述の液循環型ハルセルを使用した電気めっき直後、さらに、各実施例及び各比較例のめっき浴を用いて得られためっき物に対して６０℃で７２時間の加熱処理を行った。実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴を用いて形成された亜鉛めっき皮膜について、上述の加熱処理後のはがれやふくれの有無を目視により確認した評価試験の結果を表２に示す。全ての実施例及び比較例について、加熱処理後の亜鉛めっき皮膜では、はがれやふくれは観察されなかった。

　なお、実施例１～１３のジンケート型亜鉛めっき浴にて電気めっきを実施した陰極の鉄板では、陽極と対面した側とは反対側の面においても亜鉛めっき皮膜が形成されていた。よって、実施例１～１３のジンケート型亜鉛めっき浴では、陰極の鉄板の裏側に漏れた非常に微弱な電流によっても亜鉛めっき皮膜を形成できる程度の優れたつきまわり性を備えることが明らかになった。

５－２．バレルめっきにて形成した亜鉛めっき皮膜をさらに化成処理した場合の光沢性等に関する評価試験（評価試験２）：
５－２－１．バレルめっき及び化成処理：
　実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴をそれぞれミニバレル（ドラム直径[φ]×長さ[Ｌ]：１１０ｍｍ×１５０ｍｍ）に収容し、ＪＩＳ規格による寸法がＭ１０の鉄製六角ボルト１ｋｇに対して電流５Ａ、通電時間５０分間のバレルめっきを実施した。このバレルめっき後、めっき物を２００℃で３時間の加熱処理をして放冷後、３価クロム黒色化成処理剤（商品名：メタスＹＦＢ－ＳＡ／ＳＢ、ユケン工業社製）を用いて、ｐＨ２．２の条件下において、３５℃、４５秒間の化成処理を行った。次いで、めっき物を仕上げ処理剤（商品名：メタスＣＲ－Ｕ３／Ｉ２、ユケン工業社製）にて仕上げ処理を行った後、８０℃で２０分間乾燥した。以上により、実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴をそれぞれ用いてバレルめっきを実施し、さらに化成処理を施すことで亜鉛めっき皮膜（以下、「化成処理亜鉛めっき皮膜」）を形成させた。

５－２－２．結果及び評価：
　実施例１～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴について、化成処理亜鉛めっき皮膜に対して、目視にて黒味と光沢性を確認した評価試験の結果を表２に示す。実施例１～５及び実施例８～１３にて形成された化成処理亜鉛めっき皮膜は、黒味と光沢性がともに良好であった。実施例６、７にて形成された化成処理亜鉛めっき皮膜は、黒味は良好であり、光沢はやや良好であった（「光沢がやや良好」の定義については後述）。対して、めっき促進剤として含有される２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）の有無にて実施例１に対照となる比較例１にて形成された化成処理亜鉛めっき皮膜は、ガス跡不良が生じた。同じくめっき促進剤について実施例２に対照となる比較例２にて形成された化成処理亜鉛めっき皮膜は、黒味は良好なものの、光沢が不足していた。よって、めっき促進剤として表１の化合物Ｊ、Ｋ，Ｌ、Ｍを含有するジンケート型亜鉛めっき浴は、実施例１～５、８～１３の結果にみられるように、バレルめっきと化成処理の併用実施という実用的な実施形態においても、亜鉛めっき皮膜の品質（外観、後処理性）を高める作用を有することが判明した。なお、本評価試験のいう「黒味が良好」とは、亜鉛めっき皮膜が漆黒の状態のことをいう。本評価試験のいう「光沢性が良好」とは、亜鉛めっき皮膜がつやのある状態のことをいう。本評価試験のいう「光沢性がやや良好」とは、亜鉛めっき皮膜が光沢性に乏しく煤けた状態のことをいう。本評価試験のいう「ガス跡不良」とは、亜鉛めっき皮膜に水素ガス発生による白色の流れ跡があることをいう。

５－３．電流密度の分布と亜鉛めっき皮膜の膜厚との関係に関する評価試験（評価試験３）：
５－３－１．電気めっき：
　スターラー回転数１０００ｒｐｍの液循環型ハルセル（商品名：スマートハルセル、山本めっき試験器社製、品番：Ｂ‐５３‐ＳＭ）に、実施例９のめっき浴を収容して電気めっきを実施した。また、亜鉛めっき皮膜を形成させる陽極として縦×横×厚さが４５×４５×１ｍｍの鉄板、陰極として山本鍍金試験器製の縦×横×厚さが６７×１００×０．３ｍｍの鉄板を用いた。電気めっきの条件は、電流１．０Ａ、通電時間１５分、めっき浴温度３０℃とした。

５－３－２．亜鉛めっき皮膜の膜厚の測定：
　上述のハルセルの形状で電流１．０Ａの電気めっきの条件から理論的に導きだされた一次電流分布において、５．０Ａ／ｄｍ^２、２．０Ａ／ｄｍ^２、１．０Ａ／ｄｍ^２、０．３３Ａ／ｄｍ^２、０．１Ａ／ｄｍ^２にそれぞれ相当する、ハルセル陰極板のめっき面中央部の高電部端から低電部端に向かって、１０ｍｍ、４０ｍｍ、６０ｍｍ、８０ｍｍ、９０ｍｍの５箇所における亜鉛めっき皮膜の膜厚を、蛍光Ｘ線膜厚計（ＳＩＩ社製、ＳＦＴ－９２００）により測定した。

５－３－３．結果及び評価：
　電流密度の分布と亜鉛めっき皮膜の膜厚との関係を図３に示す。図３において、理論的に導かれた電流密度の分布を白抜き丸印（○）、この理論値の電流密度から理論的に導かれる亜鉛めっき皮膜の膜厚を白抜き三角印（△）にて示す。図３において、実線は膜厚、破線は電流密度を示している。図３では、実施例９のめっき浴を用いた本試験における亜鉛めっき皮膜の膜厚の実測値は、塗りつぶした三角印にてプロットした。理論値の電流密度が０．５Ａ／ｄｍ^２、２．０Ａ／ｄｍ^２、１．０Ａ／ｄｍ^２、０．３３／ｄｍ^２、０．１Ａ／ｄｍ^２の各地点における亜鉛めっき皮膜の膜厚は、全て６μｍ前後であった。すなわち、実施例９のめっき浴では、理論値において０．１～５．０Ａ／ｄｍ^２という広範囲の電流密度分布が生じる電気めっきの実施においても、均一で厚い膜厚の亜鉛めっき皮膜が形成されることが示された。さらに、実施例９のめっき浴では、１５分間という短い通電時間にて電気めっきを実施しても、均一で厚い膜厚の亜鉛めっき皮膜が形成されることが示された。なお、従来公知のジンケート型亜鉛めっき浴では、通電時間を長くしても平均膜厚が最大３～４μｍ程度の亜鉛めっき皮膜しか形成できない（データ示さず）。実施例９のめっき浴を用いた本試験において、膜厚の実測値から算出される平均電流密度は、１．５Ａ／ｄｍ^２と、低い値であった（図３中の四角印（■）にてプロット、なお、平均電流密度（１．０Ａ／ｄｍ^２）でのめっき効率の評価は評価試験４を参照）。

５－４．平均電流密度（１．０Ａ／ｄｍ^２）におけるめっき効率に関する評価試験（評価試験４）：
５－４－１．電気めっき：
　実施例１～７、９～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴を用いた電気めっきにより、縦×横×厚さが５０×２５×０．５ｍｍの冷却圧延鋼板（ＳＰＣＣ）の両面で合計０．２５ｄｍ^２に亜鉛めっき皮膜を形成させた。電気めっきの条件は、平均電流密度１．０Ａ／ｄｍ^２で通電時間２０分間、めっき浴温度２５℃にて実施した。

５－４－２．めっき効率の算出：
　実施例１～７、９～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴を用いて形成された亜鉛めっき皮膜を希塩酸に完全に溶解させて分析試料を調製した。この分析試料についてＩＰＣ分析を行い、分析試料中の亜鉛濃度を計測した。この分析試料の亜鉛濃度に基づき、亜鉛めっき皮膜の亜鉛含有量、すなわち電気めっきによる亜鉛析出量を算出した。実施例１～７、９～１３、比較例１～３のめっき浴を用いて形成された亜鉛めっき皮膜の亜鉛析出量を、電気めっきでの電流及び通電時間で除することにより、めっき効率（ｍｇ／Ａ・ｍｉｎ）を算出した。

５－４－３．結果及び評価：
　実施例１～７、９～１３、比較例１～３のめっき浴について、めっき効率に関する評価試験の結果及び比較例１のめっき効率の値に対する比（百分率）を表２に示す。めっき促進剤に含有される２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）の有無にて対照となる実施例１と比較例１との組、実施例２、９と比較例２との組、及び実施例１０と比較例３との組を検証すると、２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールをめっき促進剤として含有する実施例１、２、９、１０の方が、これらと対照となる比較例１～３よりめっき効率が良いことが判明した。特に、めっき促進剤として表１に示す化合物Ｊ、Ｋ、Ｌ、Ｍを含有する実施例１～７、９～１３では、めっき効率が８４以上と高い数値を示した。よって、めっき促進剤として含有されている２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールは、電流密度が１．５Ａ／ｄｍ^２以下において、めっき効率を高める作用があることが判明した。

　また、めっき促進剤として２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）を含有させた実施例１～７、９、１０や、２－チオ酢酸－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｋ）を含有させた実施例１１、２－ヒドロキシエチルチオ－５－メルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｌ）を含有させた実施例１２、及びエピクロルヒドリン改質２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｍ）を含有させた実施例１３では、比較例１のめっき効率に対して１６～３１％のめっき効率の有意な増加がみられた。

　さらに、低い平均電流密度１．０Ａ／ｄｍ^２での実施において、上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ）を含有するめっき浴においても、従来技術に属する比較例２、３のめっき浴でのそれぞれ７％、１３％のめっき効率の増加と比較し、実施例１～７、９～１３のめっき浴での１６～３１％のめっき効率の増加は、非常に有意なものである。

５－５．均一電着性に関する評価試験（評価試験５）：
５－５－１．電気めっき：
　スターラー回転数１０００ｒｐｍの液循環型ハルセル（商品名：スマートハルセル、山本めっき試験器社製、品番：Ｂ‐５３‐ＳＭ）に、実施例１～７、９～１３、比較例１～３のめっき浴をそれぞれ収容して電気めっきを実施した。また、陰極として山本鍍金試験器社製の縦×横×厚さが６７×１００×０．３ｍｍの鉄板を用いた。電気めっきの条件は、電流０．５Ａ（電流密度０．０５～２．５Ａ／ｄｍ^２）で通電時間６０分、めっき浴温度２５℃とした。

５－５－２．亜鉛めっき皮膜の膜厚の測定：
　まず、亜鉛めっき皮膜の膜厚は、陰極とした上述の鉄板について、以下の２つの測定地点にて測定した。鉄板の表面で、ハルセル（めっき槽）に配置した際のめっき槽の深さ方向でのめっき面の中央にある位置において、高電流密度端から低電流密度端側へ向かって１０ｍｍの位置を測定地点Ａとした。また、同一の鉄板の同一表面で、測定地点Ａと同じ深さの位置において、高電流密度端から低電流密度端側へ向かって８５ｍｍの位置を測定地点Ｂとした。測定地点Ａ及びＢでの亜鉛めっき皮膜の膜厚は、蛍光Ｘ線膜厚計（ＳＩＩ社製、ＳＦＴ－９２００）により測定した。均一電着性は、亜鉛めっき皮膜のＡ地点の膜厚に対するＢ地点の膜厚の比率（百分率）にて算出した。

５－５－３．結果及び評価：
　実施例１～７、９～１３、比較例１～３のジンケート型亜鉛めっき浴ついて、均一電着性に関する評価試験の結果を表２に示す。めっき促進剤に含有される２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾール（表１の化合物Ｊ）の有無にて対照となる実施例１と比較例１との組、及び実施例２と比較例２との組をそれぞれ検証する。上述の算出法より得られた均一電着性の値が、実施例１では４７．９であったのに対し、比較例１では３０．７であった。同様に、均一電着性の値が、実施例２では６６．３であったのに対し、比較例２では６０．８であった。これらの比較から、めっき促進剤に２，５－ジメルカプト－１，３，４－チアジアゾールを含有させることにより、ジンケート型亜鉛めっき浴が発揮する均一電着性が向上することが示された。

　実施例２～５、９～１３及び比較例２のめっき浴では、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ）を含有し、均一電着性が６０以上と高い数値を示した。この結果から、一次光沢剤として含有されている上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ）は、均一電着性の向上に有意に作用することが判明した。さらに、めっき促進剤として表１の化合物Ｊ～Ｍのいずれかを含む実施例２～５、９～１３のめっき浴では、より高い値の均一電着性を示した。よって、上記めっき促進剤が、均一電着性をより一層高める作用を有すると判明した。特に、実施例１０～１３のめっき浴では、一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表す水溶性カチオン高分子化合物（ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ）とイミダゾールとエピクロヒドリンとの縮合重合体（表１の化合物Ｆ～Ｉ）とを併用し且つめっき促進剤として表１の化合物Ｊ～Ｍのいずれかを含み、均一電着性が６７～８０と非常に高い数値を示した。

５－６．総合評価：
　以上の評価試験から、実施例１～１３のめっき浴、すなわち本発明のめっき浴は、低い平均電流密度（０．０５～１．０Ａ／ｄｍ^２）での電気めっきの実施においても、高いめっき効率にて光沢度の高い亜鉛めっき皮膜を形成させることが可能であると実験的に示された。また、実施例２～５、９～１３のジンケート型亜鉛めっき浴は、めっき促進剤として上記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物に該当する表１の化合物Ｊ～Ｍの少なくもいずれか１つ及び一次光沢剤として上記化学式（ＩＩＩ）にて表される水溶性カチオン高分子化合物（ＭＩＲＡＰＯＬ（商標）ＷＴ）を含有する本発明のめっき浴の実施形態であり、低い平均電流密度での高いめっき効率に加えて、高い均一電着性を発揮することが実験的に示された。また、実施例１～５、８～１３のジンケート型亜鉛めっき浴は、通電時間６０分間のバレルめっきと化成処理の併用実施という実用的な実施形態においても、品質（外観、後処理性）の優れた亜鉛めっき皮膜を形成できる効果を奏することが実験的に示された。

　本発明は、自動車用の鋼板、ボルト、ナットなどに対して、電気めっきによって亜鉛めっき皮膜を形成させるのに使用するジンケート型亜鉛めっき浴として利用できる。

Claims

　電気めっきにて、亜鉛を少なくとも含む金属を析出させて、亜鉛めっき皮膜を形成させるためのジンケート型亜鉛めっき浴であって、
　析出する前記金属の結晶を微細化する機能を有する一次光沢剤と、
　下記化学式（Ｉ）にて表される複素環式化合物及び／又は前記複素環式化合物の誘導体を含むめっき促進剤と、を含有するジンケート型亜鉛めっき浴。

　（化学式（Ｉ）中、ｎは、１～３の自然数、Ｒ^１とＲ^２は、同じものか、又は異なったものであり、水素、ＣＨ_２ＣＯＯＨ、ＣＨ_２ＣＨ_２ＯＨ、又はＣＨ_２ＣＨ（ＯＨ）ＣＨ_２Ｃｌを表す。）
　前記複素環式化合物及び／又は前記複素環式化合物の誘導体を０．０１ｇ／Ｌ以上１．０ｇ／Ｌ以下含有する、請求項１に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記一次光沢剤として、水溶性カチオン高分子化合物を含有する、請求項１又は２に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記水溶性カチオン高分子化合物として、下記化学式（ＩＩ）にて表される化合物を含む、請求項３に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。

　（化学式（ＩＩ）において、ｎは１以上の自然数である。Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３、及びＲ^４は、同じものか、又は異なったものであり、水素、メチル、エチル、イソプロピル、２‐ヒドロキシルエチル‐ＣＨ_２ＣＨ_２（ＯＣＨ_２ＣＨ_２）_ＸＯＨ（Ｘは０～６の自然数）又は２‐ヒドロキシエチル‐ＣＨ_２ＣＨ_２（ＯＣＣＨ_２ＣＨ_２）_ＸＯＨ（Ｘは０～６の自然数）を表す。Ｒ^５は、（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２、（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２‐Ｏ‐（ＣＨ_２）_２、又はＣＨ_２‐ＣＨＯＨ‐ＣＨ_２‐Ｏ‐ＣＨ_２‐ＣＨＯＨ‐ＣＨ_２を表す。Ｙは、Ｓ又はＯを表す。）
　前記亜鉛めっき皮膜を平滑化する機能を有する二次光沢剤を含有する請求項１～４のいずれか一項に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記二次光沢剤として、有機アルデヒド類、及び複素環式化合物よりなる群から選択される１種以上を含有する、請求項５に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記二次光沢剤として、芳香族アルデヒド及びピリジニウム化合物のうち少なくともいずれかを含有する、請求項６に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　亜鉛イオンを５ｇ／Ｌ以上２０ｇ／Ｌ以下含有する、請求項１～７のいずれか一項に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　水酸化ナトリウムを８０ｇ／Ｌ以上２５０ｇ／Ｌ以下含有する、請求項１～８のいずれか一項に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　ニッケルイオン又は鉄イオンのうち少なくともいずれかを含有する、請求項１～９のいずれか一項に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記ニッケルイオンを１００ｍｇ／Ｌ以上４０００ｍｇ／Ｌ以下含有する、請求項１０に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。
　前記鉄イオンを１０ｍｇ／Ｌ以上１５０ｍｇ／Ｌ以下含有する、請求項１０又は１１に記載のジンケート型亜鉛めっき浴。