JP2014088608A - ジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤および亜鉛系めっき部材の製造方法 - Google Patents

ジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤および亜鉛系めっき部材の製造方法 Download PDF

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友里 巴山
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Abstract

【課題】均一電着性を向上させることが可能なジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴のための添加剤、および上記の亜鉛系めっき浴を用いて形成される亜鉛系めっき部材の製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式(I)で表わされる化合物(A)および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。

ここで、Rは、鎖式アルキレン基または鎖式ヒドロキシアルキレン基であり、Xは硫黄または酸素であり、nは2から100までのいずれかの整数であって、前記化合物(A)を構成するn個の繰り返し構造単位のうち、少なくとも1つはXが硫黄である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ性であってシアン化物を含有しない、いわゆるジンケート型亜鉛系めっき浴に関する。
本明細書において、亜鉛系めっきとは、亜鉛および不可避的な不純物からなる亜鉛めっきと、亜鉛および合金成分ならびに不可避的な不純物からなる亜鉛合金めっきとの総称である。ここで、亜鉛合金めっきはめっき中の亜鉛の含有量(質量%)が他の合金元素の含有量(質量%)のいずれよりも高くてもよいし、亜鉛の含有量(質量%)よりも含有量が高い合金元素が含まれていてもよい。
亜鉛系めっきからなる皮膜(本明細書において「亜鉛系めっき皮膜」ともいう。)は、自動車用の鋼板やボルトやナットなどの鋼材からなる機械部品をはじめとして、我々の身の回りの部材に対して、耐食性を向上させるなどの目的で広汎に用いられている。亜鉛−ニッケル合金、亜鉛−鉄合金、すず−亜鉛合金など、亜鉛合金めっき皮膜も、耐食性に加えて耐熱性や耐塩水性の向上などが求められる場合には、広く利用されている。
亜鉛系めっき皮膜は、亜鉛系めっき皮膜を形成するためのめっき浴(本明細書において「亜鉛系めっき浴」ともいう。)に被めっき部材を浸漬した状態で電解を行う電気めっきにて形成される。この亜鉛系めっき浴は、アルカリ浴と酸性浴とに大別され、アルカリ浴にはシアン化物浴やジンケート型亜鉛系めっき浴、酸性浴には塩化亜鉛浴や硫酸亜鉛浴がある。求める亜鉛系めっき皮膜の硬度や光沢性、被めっき部材の形状や大きさ、作業環境などの様々な条件を勘案して、これらの亜鉛系めっき浴から適切な浴が選択されている。
これらの亜鉛系めっき浴の中でも、ジンケート型亜鉛系めっき浴は、廃液処理の負担が大きいシアン化物を使用しない上、浴組成が比較的単純で管理しやすく、プレス小物、ボルト、ナットなどにも適用できる利点があるため、好まれて工業的な実施がなされている。
ジンケート型亜鉛系めっき浴のうち、ジンケート型亜鉛めっき浴に対しては、めっき皮膜の厚さの電流密度依存性を低くする、すなわち、めっき浴の均一電着性を向上させる優れた添加剤として下記の一般式(II)により表わされるイオンを含む化合物(polyquatenium-2、CAS No.68555−36−2、以下、「化合物(Z)」ともいう。)が知られて、多用されている。当該化合物(Z)は、特許文献1において効果の実績による好ましいポリマーとされている。
特許第3354767号公報
しかしながら、この化合物(Z)は、ジンケート型亜鉛合金めっき浴においては有効な添加剤として機能せず、この添加剤を含有させても、得られためっき皮膜の厚さには強い電流密度依存性が生じてしまう。すなわち、化合物(Z)は、亜鉛合金めっき浴にとっては均一電着性を向上させる添加剤として機能しない。
本発明は、かかる現状に鑑み、析出金属が亜鉛の場合であっても亜鉛合金の場合であっても、均一電着性を向上させることが可能なジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴のための添加剤、および上記の亜鉛系めっき浴を用いて形成される亜鉛系めっき部材の製造方法を提供することを目的とする。
なお、本明細書において亜鉛系めっき部材とは、被めっき部材と、この被めっき部材の被めっき面上に形成された亜鉛系めっき皮膜とを備えた部材をいう。
上記課題を解決するために本発明者らが検討した結果、化合物(Z)の場合には主鎖に有するエーテル結合をその主鎖に有さず、かつ化合物(Z)の場合には尿素に基づく構造単位となっている部分について、化合物を構成する複数の繰り返し構造単位のうちの少なくとも一部をチオ尿素に基づく構造単位とする化合物からなる添加剤成分は、ジンケート型亜鉛めっき浴およびジンケート型亜鉛合金めっき浴のいずれに添加された場合であっても、めっき浴の均一電着性を向上させることができ、ジンケート型亜鉛系めっき浴に対して好適な添加剤成分であるとの新たな知見を得た。
かかる知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)下記化学式(I)で表わされる化合物(A)および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。

ここで、上記化学式(I)におけるRは、下記化学式(i)(yは2から5のいずれかの整数)または下記化学式(ii)で表わされる鎖式アルキレン基または鎖式ヒドロキシアルキレン基であり、上記化学式(I)におけるXは硫黄または酸素であり、上記化学式(I)におけるnは2から100までのいずれかの整数であって、前記化合物(A)を構成するn個の繰り返し構造単位のうち、少なくとも1つはXが硫黄である。

(2)シアン化物を含有しない上記(1)に記載のめっき浴。
(3)浴可溶性亜鉛含有物質の浴中含有量が亜鉛換算で2g/L以上60g/Lである上記(1)または(2)に記載のめっき浴。
(4)4級アミノ基を有するピリジニウム化合物を0.05g/L以上5g/L以下の浴中含有量でさらに含有する上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のめっき浴。
(5)前記亜鉛系めっき浴は亜鉛めっき浴であって、前記化合物(A)の浴中含有量が、前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上2g/L以下である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のめっき浴。
(6)浴中含有量が0.05g/L以上5g/L以下の一次光沢剤をさらに含有する上記(5)に記載のめっき浴。
(7)前記亜鉛系めっき浴は浴可溶性金属含有物質をさらに含有する亜鉛合金めっき浴であって、当該浴可溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる一種または二種以上である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のめっき浴。
(8)前記化合物(A)の浴中含有量が、前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上5g/L以下である上記(7)に記載のめっき浴。
(9)上記(1)に記載される化合物(A)を含有するジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤。
(10)4級アミノ基を有するピリジニウム化合物をさらに含有する上記(9)に記載のジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤。
(11)前記ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤はジンケート型亜鉛めっき用添加剤であって、当該添加剤は一次光沢剤をさらに含有する上記(9)または(10)に記載の添加剤。
(12)被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に形成された亜鉛めっき皮膜とを備えた亜鉛めっき部材の製造方法であって、上記(5)または(6)に記載されるジンケート型亜鉛めっき浴を用い、当該めっき浴に含有される前記化合物(A)の浴中含有量を前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上2g/L以下の範囲に管理しながらめっきすることを特徴とする亜鉛めっき部材の製造方法。
(13)被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に形成された亜鉛合金めっき皮膜とを備えた亜鉛合金めっき部材の製造方法であって、上記(7)または(8)に記載されるジンケート型亜鉛合金めっき浴を用い、当該めっき浴に含有される前記化合物(A)の浴中含有量を前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上5g/L以下の範囲に管理しながらめっきすることを特徴とする亜鉛合金めっき部材の製造方法。
化合物(A)を含有する本発明に係るジンケート型亜鉛系めっき浴は、当該めっき浴が亜鉛めっき浴であっても亜鉛合金めっき浴であっても、化合物(A)を含有しない亜鉛系めっき浴から形成された場合に比べて、めっき浴の均一電着性を向上させることができる。したがって、本発明に係るジンケート型亜鉛系めっき浴から形成された亜鉛系めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材は、亜鉛系めっき皮膜の厚さの均一性に優れる。また、化合物(A)を含有する本発明に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は、亜鉛めっき浴に対して添加された場合であっても、亜鉛合金めっき浴に対して添加された場合であっても、添加された亜鉛系めっき浴の均一電着性を向上させることができる。しかも、化合物(A)を含有する本発明に係るジンケート型亜鉛系めっき浴が亜鉛めっき浴である場合には、加熱処理が施されてもウイスカーなどが生じにくい亜鉛めっき皮膜を形成することができる。
実施例5から7および比較例2から4に係る亜鉛系めっき部材のめっき面の高電流密度側端部からの位置とその位置における亜鉛合金めっき皮膜の厚さとの関係を示すグラフである。 実施例8に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例9に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例10に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例11に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 比較例5に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例8に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例9に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例10に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例11に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 比較例5に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の面を観察した結果を示す図である。 実施例8に係る未処理加熱部材の亜鉛めっき皮膜を含む断面を観察した結果を示す図である。 実施例8に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜を含む断面を観察した結果を示す図である。 比較例5に係る未処理加熱部材の亜鉛めっき皮膜を含む断面を観察した結果を示す図である。 比較例5に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜を含む断面を観察した結果を示す図である。 実施例8に係る未処理加熱部材の亜鉛めっき皮膜を含む領域の深さプロファイルである。 比較例5に係る未処理加熱部材の亜鉛めっき皮膜を含む領域の深さプロファイルである。 実施例12に係る未処理加熱部材の亜鉛合金めっき皮膜を含む領域の深さプロファイルである。 比較例6に係る未処理加熱部材のめっき皮膜を含む領域の深さプロファイルである。
以下、本発明について詳しく説明する。
1.ジンケート型亜鉛系めっき浴
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、ジンケート型のめっき浴であるから、液性はアルカリ性である。また、本実施形態の好ましい一例に係る亜鉛系めっき浴はシアン化物を含有せず、有害なシアンガスが発生しないため、作業性に優れ、環境に優しい。
(1)金属成分
(1−1)浴可溶性亜鉛含有物質
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、浴可溶性亜鉛含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性亜鉛含有物質とは、亜鉛系めっき皮膜として析出する亜鉛の供給源であって、亜鉛の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。本実施形態に係る亜鉛系めっき浴はジンケート型の浴であるから、めっき浴はアルカリ性である。したがって、浴可溶性亜鉛含有物質の一例はジンケートイオン([Zn(OH)2−)である。
浴可溶性亜鉛含有物質をめっき浴に供給する原料物質(本発明において、「亜鉛源」ともいう。)として、酸化亜鉛が例示される。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴における可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量(可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算の浴中含有量)は限定されない。この含有量が過度に少ない場合には亜鉛系めっき皮膜が析出しにくくなることから、上記の亜鉛換算含有量は2g/L以上であることが好ましく、4g/L以上であることがより好ましく、8g/L以上であることが特に好ましい。可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量が過度に多い場合には外観不良やつきまわり性の低下が生じることが懸念されるため、上記の亜鉛換算含有量は60g/L以下であることが好ましく、40g/L以下であることがより好ましく、20g/L以下であることが特に好ましい。
(1−2)浴可溶性金属含有物質
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、当該めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、浴可溶性金属含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性金属含有物質とは、亜鉛合金めっき皮膜に含有される亜鉛以外の金属の供給源であって、金属元素の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素として、鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンが例示される。好ましい一例において、金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる。
浴可溶性金属含有物質をめっき浴に供給する原料物質(本発明において、「金属源」ともいう。)はその浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素が鉄である場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性鉄含有物質を含有する場合には、Fe(SO・7HO、FeSO・7HO、Fe(OH)、FeCl・6HO、FeCl・4HOなどが鉄源として例示される。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素がニッケルである場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性ニッケル含有物質を含有する場合には、NiSO・6HO、NiCl・6HO,Ni(OH)などがニッケル源として例示される。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素がマンガンである場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性マンガン含有物質を含有する場合には、MnSO,MnSO・HO,MnCl・4HOなどがマンガン源として例示される。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴における可溶性金属含有物質の金属換算含有量は、目的とする亜鉛合金めっきの組成に応じて適宜設定される。亜鉛系めっき浴が浴可溶性鉄含有物質を含有する場合には、可溶性鉄含有物質の鉄換算含有量を5mg/L以上300mg/L以下程度とすることが例示され、10mg/L以上150mg/L以下程度とすることや、20mg/L以上70mg/L以下程度とすることが好ましい場合もある。亜鉛系めっき浴が浴可溶性ニッケル含有物質を含有する場合には、可溶性ニッケル含有物質のニッケル換算含有量を50mg/L以上10000mg/L以下程度とすることが例示され、100mg/L以上4000mg/L以下程度とすることや、200mg/L以上2000mg/L以下程度とすることが好ましい場合もある。亜鉛系めっき浴が浴可溶性マンガン含有物質を含有する場合には、可溶性マンガン含有物質のマンガン換算含有量を2g/L以上80g/L以下程度とすることが例示され、5g/L以上50g/L以下程度とすることや、10g/L以上20g/L以下程度とすることが好ましい場合もある。
(2)添加剤成分
本実施形態に係るめっき浴は次に説明する化合物(A)を添加剤成分として含有し、必要に応じてさらに他の添加剤成分も含有する。
(2−1)化合物(A)
本実施形態に係るめっき浴は下記化学式(I)で表わされる化合物(A)を添加剤成分の一つとして含有する。
ここで、上記化学式(I)におけるRは、下記化学式(i)(yは2から5のいずれかの整数)または下記化学式(ii)で表わされる鎖式アルキレン基または鎖式ヒドロキシアルキレン基であり、上記化学式(I)におけるXは硫黄または酸素であり、上記化学式(I)におけるnは2から100までのいずれかの整数である。

上記化学式(I)により表わされる化合物(A)は、これを構成するn個の繰り返し構造単位のうち、少なくとも1つはXが硫黄であり、全てのXが硫黄であってもよい。Xが硫黄と酸素とからなる場合において、Xが硫黄である繰り返し構造単位とXが酸素である繰り返し構造単位との配置の関係は限定されない。ランダムに配列していてもよいし、規則的に配置されていてもよい。規則的に配置される場合における具体的な配置規則は限定されず、Xが硫黄である繰り返し構造単位とXが酸素である繰り返し構造単位とが交互に配置されていてもよいし、ブロック共重合体のように、Xが硫黄である繰り返し構造単位が複数配置された部分とXが酸素である繰り返し構造単位が複数配置された部分とが存在していてもよい。なお、繰り返し構造単位数nは2以上50以下であることが好ましく、3以上20以下であることがより好ましく、5以上10以下であることが特に好ましい。
この化合物(A)の一種(R’が上記式(i)で表わされるもの)は、例えば、N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]チオ尿素と1,4−ジクロロブタンとを反応させることにより得ることができる。あるいは、この化合物(A)の別の一種(R’が上記式(ii)で表わされるもの)は、例えば、N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]チオ尿素とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
この化合物(A)は亜鉛めっき浴においても、亜鉛合金めっき浴においても、優れた添加剤として機能することができる。
すなわち、亜鉛めっき浴および亜鉛合金めっき浴のいずれの場合においても、化合物(A)を含有させることにより、めっき浴の均一電着性を高めることができる。
しかも、次に説明するように、亜鉛めっき浴に化合物(A)を添加することにより、その亜鉛めっき浴から形成される亜鉛めっき皮膜は、加熱処理が施されてもウイスカーやヒロックといっためっき皮膜表面からの異物形成および/または突出が生じにくい。
前述のように、ジンケート型亜鉛めっき浴は広く使用されているが、ジンケート型亜鉛めっき浴により亜鉛めっき皮膜が形成される際に、発生した水素が被めっき部材中に吸蔵され、この水素によって亜鉛めっき皮膜を有する部材に水素脆性が生じることがある。この問題の発生を回避することが求められる場合には、通常、亜鉛めっき皮膜を有する部材(亜鉛系めっき部材)は、めっき処理後、200℃程度で数時間加熱される処理(本明細書において「加熱処理」ともいう。)が施される。この加熱処理によって亜鉛系めっき部材内部の水素を追い出すことにより水素脆性の問題は回避される。
しかしながら、この加熱処理において、亜鉛系めっき部材の亜鉛めっき皮膜中に含有される成分(有機成分、水分など)によってめっき皮膜内で気泡が発生する場合がある。このような気泡が亜鉛めっき皮膜内部に発生すると、その気泡に起因して、亜鉛めっき皮膜の表面からめっき皮膜を構成する材料が突出する、いわゆるウイスカーやヒロックと呼ばれる現象が発生することがある。このような現象が発生すると、亜鉛めっき皮膜の光沢が低下したり白色化したりする外観上の不具合を生じさせる。さらに、亜鉛めっき皮膜から突出した部分が粉体となって脱落すると、この粉体が他の部材に接触してその部材を疵つけたり、電気回路を短絡させたりする不具合を生じさせることもある。
以上説明した亜鉛めっき皮膜におけるウイスカーなどの異物形成等の発生を抑制する方法の一つとして、シアン化物を亜鉛めっき浴に含有させることが挙げられるが、この場合には、シアン化浴の場合と同様に、めっき処理の作業性が低下したり、毒物であるシアン化物を管理する必要が生じて管理コストが増大したり、廃液処理の負荷が増大したりする問題を招いてしまう。
したがって、ジンケート型亜鉛めっき浴の長所を活かしつつ、亜鉛めっき皮膜に加熱処理を施してもウイスカーなどの異物形成等を発生させにくくするという課題は、亜鉛めっきの技術分野において長きにわたり解決されないものであった。
ところが、化合物(A)を含有する本実施形態に係る亜鉛めっき浴から形成される亜鉛めっき皮膜は、加熱処理を受けてもめっき皮膜内部に気泡が発生しにくい。このため、この気泡の発生を原因とする異物形成等が亜鉛めっき皮膜上に生じにくくなる。亜鉛めっき浴が化合物(A)を含有することによりその亜鉛めっき浴から得られる亜鉛めっき皮膜が加熱処理を受けてもめっき皮膜内部に気泡が発生しにくくなる理由は定かではない。しかしながら、後述する実施例において示すように、化合物(A)を含有する本実施形態に係る亜鉛めっき浴から得られる亜鉛めっき皮膜は、その亜鉛めっき皮膜に不純物として含まれる炭素の含有量が、例えば化合物(Z)を添加剤成分として含有する亜鉛系めっき浴から形成された亜鉛めっき皮膜に比べて低くなる傾向を示す。したがって、化合物(A)は、化合物(Z)等の他の添加剤成分に比べて、めっき金属の析出時にめっき皮膜に取り込まれにくいものであり、このため亜鉛めっき皮膜内部における揮発性物質の混入量が少なくなって、加熱処理しても亜鉛めっき皮膜内に気泡が発生しにくくなっている可能性がある。
本実施形態に係る化合物(A)の亜鉛系めっき浴に添加する際の形態は特に限定されない。通常は、カウンターアニオンも含む溶液の形態とされる。このカウンターアニオンの種類も特に限定されない。塩化物イオンなどのハロゲンイオンが具体例として挙げられる。なお、ハロゲンイオンの中でもフッ化物イオンは、取り扱い性を低下させ、廃液処理の負荷を増大させる場合があるため、使用しないことが好ましい。
本実施形態に係る化合物(A)の亜鉛系めっき浴中含有量も特に限定されず、化合物(A)の添加量が過度に少ない場合には添加させたことの効果が適切に得られにくくなり、化合物(A)の添加量が過度に多い場合には経済的観点、廃液処理の観点等の観点から不利益が生じる場合があり、さらに好ましくない効果が得られるおそれも高まることを考慮して、適宜設定すればよい。好ましい範囲について具体例として示せば、めっき浴が亜鉛めっき浴である場合には、化合物(A)の浴中含有量を塩化物塩換算で0.05g/L以上2g/L以下とすることが挙げられ、浴中含有量を化合物(A)の塩化物塩換算で0.1g/L以上1g/L以下とすることがより好ましい。めっき浴が亜鉛系めっき浴である場合には、化合物(A)の浴中含有量を塩化物塩換算で0.05g/L以上5g/L以下とすることが挙げられ、浴中含有量を化合物(A)の塩化物塩換算で0.1g/L以上2.5g/L以下とすることがより好ましい。
(2−2)その他の添加剤成分
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、上記の化合物(A)以外の添加剤成分を含有してもよい。そのような添加剤成分またはめっき浴中で添加剤成分を与える材料として、次のようなものが例示される。
i)一次光沢剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として一次光沢剤を含有してもよい。かかる一次光沢剤の例として、各種亜鉛めっき浴に使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物などの水溶性の有機化合物などを挙げることができる。
このポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物として、ポリアリルアミン、ポリエポキシポリアミン、ポリアミドポリアミン、およびポリアルキレンポリアミン、などが例示される。前述の化合物(Z)も一次光沢剤の一種に位置付けられる。
ポリアリルアミンの具体例として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体などが挙げられる。ポリエポキシポリアミンの具体例として、エチレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、イミダゾールとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、1−メチルイミダゾールや2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のトリアジン誘導体などを含む複素環状アミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体などが挙げられる。ポリアミドポリアミンの具体例として、3−ジメチルアミノプロピル尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体等のポリアミンポリ尿素樹脂、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンとアルキレンジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合重合体等の水溶性ナイロン樹脂などが挙げられる。また、ポリアルキレンポリアミンの具体例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミンと2,2’−ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンと1,3−ジクロルプロパンとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと2,2’−ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと1,4−ジクロルブタンとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと1,3−ジクロルプロパン−2−オールとの縮合重合体などが挙げられる。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴が亜鉛めっき浴である場合には、めっき浴の経時安定性、すなわち、めっき処理された被めっき面の面積が増加してきたときにも建浴初期と同様の特性を有する亜鉛めっき皮膜を形成する能力を高める観点から、化合物(Z)などの一次光沢剤を含有させることが好ましい場合もある。この場合には、一次光沢剤の浴中含有量を0.05g/L以上5g/L以下とすることが好ましい一例として挙げられる。
ii)二次光沢剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として二次光沢剤を含有してもよい。特に、光沢性の向上などの観点からは、二次光沢剤として、芳香族アルデヒドおよびピリジニウム化合物のうち少なくとも一方を含有してもよい。
二次光沢剤として機能することができる芳香族アルデヒドとしては、アニスアルデヒド、ベラトルアルデヒド、サリチルアルデヒド、バニリン、ピペロナール、およびp−ヒドロキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。光沢性の向上と亜鉛系めっき浴に含有される化合物の安定性の観点から、二次光沢剤として含有されることが好ましい芳香族アルデヒドとして、ベラトルアルデヒド、およびバニリンが例示される。
二次光沢剤として機能することができるピリジニウム化合物としては、ベンジルピリジニウムカルボキシレート(塩化3−カルボキシベンジルピリジニウム)、および塩化3−カルバモイルベンジルピリジニウムなどを挙げることができる。
これらのピリジニウム化合物の中でも、4級アミノ基を有するピリジニウム化合物が好ましい。以下、このピリジニウム化合物を「ピリジニウム化合物(α)」ともいう。ピリジニウム化合物(α)はポリカチオン化合物であり、亜鉛系めっき浴中で加水分解されたりめっき析出のための電解処理によって電気分解されたりしても、この化合物の分解物や重合体が可溶性を維持することができるため、めっき浴中に不溶性物質が発生しにくく、不溶性物質の被めっき面への吸着に基づくめっき皮膜の外観不良が生じにくい。また、一次光沢剤と同等の機能をも示す場合があり、そのような場合には、ピリジニウム化合物(α)単独で、亜鉛系めっき皮膜の均一電着性を高めるとともに皮膜の光沢度を高めることができる。
ピリジニウム化合物(α)の亜鉛系めっき浴への添加量は特に限定されない。ピリジニウム化合物(α)の具体的な構造や亜鉛系めっき浴の組成などに応じて適宜設定されるべきものである。亜鉛系めっき浴中の上記のピリジニウム化合物の浴中含有量を0.05g/L以上5g/L以下とすることが、ピリジニウム化合物(α)の具体的な構造や亜鉛系めっき浴の組成がどのような場合であっても所望の効果を得ることができることが多いため好ましく、0.1g/L以上3g/L以下とすることがより好ましい。
iii)めっき促進剤
「めっき促進剤」とは、めっき金属の析出を促進させる機能を有するものであって、被めっき面に吸着してその吸着した領域近傍で金属イオンの還元反応が生じることを促進しているものと推測される。
そのようなめっき促進剤として、チアジアゾール骨格を有する化合物であるチアジアゾール化合物が例示される。チアジアゾール骨格に含まれる3つの硫黄が被めっき面に化学吸着し、この化学吸着した領域での金属イオンの還元反応を促進している可能性がある。チアジアゾール化合物の具体例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−チオ酢酸−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジチオ酢酸−1,3,4−チアジアゾール、2−ヒドロキシエチルチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジヒドロキシエチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、エピクロルヒドリン改質2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ビス(1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル)などが挙げられる。
iv)キレート剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、キレート剤を含有させてもよい。
キレート剤の具体例として、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、エチレンジアミン、ヘキサミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、トリアミノトリエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)などが例示される。このキレート剤は、例えばジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン化合物のように、一次光沢剤としての機能も有するキレート剤であってもよい。なお、キレート剤がカルボン酸など酸の部分構造を有する場合には、キレート剤はフリーの酸の形態として亜鉛合金めっき浴に添加されてもよいし、塩として添加されてもよい。あるいは、アルカリ性である亜鉛合金めっき浴中で加水分解されることにより酸イオンを形成しうる誘導体(例えばエステル)の形態で亜鉛合金めっき浴に添加されてもよい。
v)酸化防止剤、消泡剤等
酸化防止剤として、フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等のヒドロキシフェニル化合物や、L−アスコルビン酸、ソルビトール等が例示される。なお、上記のキレート剤が還元性物質である場合には、そのキレート剤が酸化防止剤の機能を有しているため、酸化防止剤を含有させなくともよい。
消泡剤として、シリコーン系消泡剤や、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤が例示される。
(3)溶媒、液性
本実施形態に係るめっき浴の溶媒は水を主成分とする。水以外の溶媒としてアルコール、エーテル、ケトンなど水への溶解度が高い有機溶媒を混在させてもよい。この場合には、めっき浴全体の安定性および廃液処理への負荷の緩和の観点から、その比率は全溶媒に対して10体積%以下とすることが好ましい。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴はジンケート型のめっき浴であるから、アルカリ性である。めっき浴をアルカリ性とするために用いられる材料(本明細書において「アルカリ成分」ともいう。)の種類は特に限定されない。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物など公知の材料を用いればよい。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に含まれるアルカリ成分の含有量は特に限定されない。過度に少ない場合には亜鉛系めっき浴の液性をアルカリ性とすることができず、めっき浴中でジンケートイオンを生成することが困難となる。一方、アルカリ成分の含有量が過度に高い場合には、亜鉛系めっき浴の安定性が低下して、得られる亜鉛系めっき皮膜の外観が低下したりつきまわり性が低下したりすることが懸念される。したがって、亜鉛系めっき浴に含まれるアルカリ成分の浴中含有量は、水酸化ナトリウム換算で40g/L以上400g/L以下とすることが好ましく、80g/L以上250g/L以下とすることがより好ましく、100g/L以上200g/L以下とすることが特に好ましい。
(4)調製方法
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴の調製方法は特に限定されない。亜鉛めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源および化合物(A)を与える成分(化合物(A)の塩化物などが例示され、以下、「化合物(A)源」ともいう。)、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを水などの溶媒に溶解させることによって調製することができる。亜鉛合金めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源、金属源および化合物(A)源、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを溶媒に溶解させることによって調製することができる。通常は、溶媒にアルカリ成分を添加し、続いて他の成分を添加することによって、作業性を低下させることなくかつ安全に亜鉛系めっき浴を調製することができる。
2.ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は、上記の本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に含有される添加剤成分を含有する。すなわち、本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は化合物(A)を含有し、必要に応じ、さらに、一次光沢剤、二次光沢剤、めっき促進剤などの他の添加剤成分を含有する。
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤における化合物(A)の含有量は特に限定されない。化合物(A)の塩化物など化合物(A)源は溶解度が高いため、10g/L程度まで浴中含有量を高めることができる。
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤が化合物(A)以外の成分を含有する場合におけるそれらの含有量は、その添加剤の機能との関係で適宜設定されるべきものである。
3.亜鉛系めっき部材の製造方法
亜鉛系めっき部材は、本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に被めっき部材を浸漬させ、被めっき部材をカソード(陰極)として電解を行うことによって得ることができる。被めっき部材の材質は導電性を有する限り特に限定されない。鉄系材料などの金属系材料、および樹脂系材料やセラミックス系材料などからなる導電性を有さない材料の表面に無電解めっきなどにより導電性材料からなる層が形成されたものが例示される。被めっき部材の形状も特に限定されない。板材や棒材、線材などの一次加工品、ねじ、ボルト、プレス加工品などの二次加工品が挙げられる。
なお、アノード(陽極)を構成する材料は特に限定されない。通常は、安価で入手しやすい鉄系材料が用いられる。
電解における電流密度は特に限定されない。電流密度が過度に低い場合には得られる亜鉛系めっき皮膜の析出速度が低く生産性に劣り、電流密度が過度に高い場合には得られる亜鉛めっき皮膜の外観が劣化したり、均一電着性、つきまわり性などが低下したりすることが懸念されることを考慮して、適宜設定すればよい。生産性を高めることとめっき皮膜の品質を高めることとを両立する観点から、0.01A/dm以上10A/dm以下とすることが好ましく、0.5A/dm以上6A/dm以下とすることがより好ましく、0.5A/dm以上3A/dm以下とすることが特に好ましい。
電解におけるめっき浴の温度(めっき浴温度)は室温程度(25℃程度)で行えばよい。めっき浴温度が過度に高い場合には、溶媒や低分子量の有機成分が揮発しやすくなることが懸念される。この揮発が顕著となると、液組成が安定せずめっき皮膜の品質安定性を維持することが困難となる。めっき浴温度が過度に低い場合には、めっき皮膜の析出速度が低下するなど生産性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
電解時間(めっき時間)は、めっき浴の組成、上記の電流密度、めっき浴温度などによって決定されるめっき皮膜の析出速度と求めるめっき皮膜の厚さとから適宜設定される。
めっき設備の構成は特に限定されない。板状または棒状のアノードに対向するようにカソードとしての被めっき部材を亜鉛系めっき浴中に配置し、亜鉛系めっき浴内で液攪拌を適宜行いながら電解して被めっき部材に亜鉛系めっき皮膜を形成してもよいし、ボルトなどの被めっき部材がその内部に入っているバレルを亜鉛系めっき浴中に浸漬させ、バレルを回転させながら電解を行うことで被めっき部材に亜鉛系めっき皮膜を形成してもよい。
以下、本発明の効果を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.亜鉛系めっき浴の調製および亜鉛系めっき皮膜を有する部材の作製
[実施例1]
(1)化合物(A1)の塩化物の製造
上記化学式(I)に示される化合物(A)のうちRが上記化学式(ii)に示される2−ヒドロキシプロピレン基であり、Xは硫黄であり、nの平均値が5〜10程度である化合物(実施例において「化合物(A1)」ともいう。)の塩化物を含有する組成物を次の方法により製造した。
N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]チオ尿素12.7g(0.05mol)と水gを、容量が300mlの三つ口フラスコに入れ撹拌し、常温でエピクロルヒドリン7.2g(0.08mol)を60分間かけ徐々に投入後、フラスコ内を80℃に維持し2時間反応させ、これらの重縮合反応物として化合物(A1)の塩化物を含有する水溶液からなる組成物を得た。この組成物は、収量200g、固形分10質量%の橙色液体(比重:1.0g/cm)であった。化合物(A1)の塩化物は化合物(A)源の一種として位置付けられるものであり、以下、「化合物(A1)源」ともいい、化合物(A1)源を含有する上記の液体を「液体(A1)」ともいう。
(2)ピリジニウム化合物(α1)の塩化物の製造
N,N−ジメチルアミノプロピルアミン22.5g(0.22mol)を容量が300mlの三つ口フラスコに入れ攪拌し、このフラスコ内にニコチノイルクロリド塩酸塩30g(0.17mol)を徐々に投入した。投入に伴いフラスコ内の液温が上昇するので170℃以上に上がらないように注意して投入した。投入後フラスコ内の液温を150℃に維持して1時間攪拌し、その後、フラスコ内の液を攪拌しながら放冷して液温を100℃まで低下させた後、フラスコ内の液体に水を86.3ml添加し、液攪拌によりフラスコ内の反応物を均一に溶解させた。続いて、フラスコ内の液温を70℃に調整し、エチレンクロルヒドリン33.8g(0.42mol)を徐々にフラスコ内に投入した。投入後、フラスコ内の液温100℃として2時間環流して目的物を得た。目的物は、収量172.6g、固形分50質量%の橙色液体(比重:1.1g/cm)であった。目的物に含有される主成分は、下記化学式(III)に示されるピリジニウム化合物(α)のうちRおよびRがいずれも2−ヒドロキシエチル基である化合物(実施例において「ピリジニウム化合物(α1)」ともいう。)の塩化物であり、亜鉛系めっき浴中にピリジニウム化合物(α1)を与える成分の一種として位置付けられるものであった。以下、このピリジニウム化合物(α1)の塩化物を「ピリジニウム化合物(α1)源」ともいい、ピリジニウム化合物(α1)源を含有する上記の橙色液体を「液体(α1)」ともいう。
(3)亜鉛めっき浴の調製
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、液体(A1)を、めっき浴への添加量が7.5ml/Lとなる量(化合物(A1)源として0.75g/L)、および液体(α1)を、めっき浴への添加量が1.8ml/Lとなる量(ピリジニウム化合物(α1)源として1.0g/L)、純水からなる溶媒に溶解させて、浴可溶性亜鉛含有物質、化合物(A1)およびピリジニウム化合物(α1)を含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。
(4)亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材の作製
スターラー回転数1000rpmの液循環型ハルセル試験器(山本めっき試験器社製:スマートハルセルB−53−SM)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦45mm、横45mm、厚さ1mmのアノードとしての鉄板、および縦67mm、横100mm、厚さ0.3mmの被めっき部材(カソード)としての鉄板を配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流:1A
通電時間:10分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は0.1A/dmから5A/dmの範囲であった。
[実施例2]
実施例1に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)の添加量を5.6ml/L(化合物(A1)源として0.56g/L)に変更するとともに、N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素と1,1’−オキシビス[2−クロロエタン]との重縮合反応物である上記式(II)で表わされる化合物(Z)の塩化物を固形分62質量%で含有する液状組成物(ローディア日華社製:MIRAPOL WT、比重:1.13g/cm以下、この組成物を「組成物(Z)」ともいう。)を、当該組成物のめっき浴への添加量が0.3g/Lとなる量(化合物(Z)の塩化物として0.19g/L)さらに添加した以外は、実施例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[実施例3]
実施例2に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)の添加量を3.8ml/L(化合物(A1)源として0.38g/L)に変更するとともに、組成物(Z)の添加量を0.6g/L(化合物(Z)の塩化物として0.38g/L)に変更した以外は、実施例2と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[実施例4]
実施例2に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)の添加量を1.9ml/L(化合物(A1)源として0.19g/L)に変更するとともに、組成物(Z)の添加量を0.9g/L(化合物(Z)の塩化物として0.56g/L)に変更した以外は、実施例2と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[比較例1]
実施例2に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)を添加せず、組成物(Z)の添加量を1.2g/L(化合物(Z)の塩化物として0.75g/L)に変更した以外は、実施例2と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[実施例5]
(1)亜鉛合金めっき浴の調製
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、ニッケル源としての硫酸ニッケルを、これに由来する浴可溶性ニッケル含有物質のめっき浴中のニッケル換算含有量が1.5g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、キレート剤としてのテトラエチレンペンタミン(TEPA)を、めっき浴の含有量が15g/Lとなる量、キレート剤としてのトリエタノールアミン(TEA)を、めっき浴の含有量が10g/Lとなる量、液体(A1)を、めっき浴への添加量が5ml/Lとなる量(化合物(A1)源として0.5g/L)、および液体(α1)を、めっき浴への添加量が1.6ml/Lとなる量(ピリジニウム化合物(α1)源として0.9g/L)、純水からなる溶媒に溶解させて、浴可溶性亜鉛含有物質、浴可溶性ニッケル含有物質、化合物(A1)、ピリジニウム化合物(α1)、TEPAおよびTEAを含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛−ニッケル合金めっき浴を調製した。
(2)亜鉛合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材の作製
スターラー回転数1000rpmの液循環型ハルセル試験器(山本めっき試験器社製:スマートハルセルB−53−SM)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦45mm、横45mm、厚さ1mmのアノードとしての鉄板、および縦67mm、横100mm、厚さ0.3mmの被めっき部材(カソード)としての鉄板を配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流:2A
通電時間:10分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は0.1A/dmから5A/dmの範囲であった。
[実施例6]
実施例5に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)の添加量を10ml/L(化合物(A1)源として1.0g/L)に変更した以外は、実施例5と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[実施例7]
実施例5に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)の添加量を15ml/L(化合物(A1)源とし1.5g/L)に変更した以外は、実施例5と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[比較例2]
実施例5に係るめっき浴の調製にあたり、液体(A1)に代えて、組成物(Z)を、めっき液中で組成物(Z)としての含有量が2.5g/L(化合物(Z)の塩化物として1.6g/L)となる量添加するとともに、液体(α1)に代えて、ベンジルピリジニウムカルボキシレート(BPC)の塩酸塩を、めっき液中で当該塩酸塩としての含有量が0.5g/Lとなる量添加した以外は、実施例5と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[比較例3]
比較例2に係るめっき浴の調製にあたり、組成物(Z)の添加量を5.0g/L(化合物(Z)の塩化物として3.1g/L)に変更した以外は、比較例2と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[比較例4]
比較例2に係るめっき浴の調製にあたり、組成物(Z)の添加量を7.5g/L(化合物(Z)の塩化物として4.7g/L)に変更した以外は、比較例2と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
[実施例8]
縦50mm、横25mm、厚さ1.5mmの冷間圧延鋼板(SPCC−SB)の片面を粘着テープにて被覆して、被めっき部材(被めっき面の面積:約0.125dm)を用意した。
スターラー回転数450rpmの縦100mm、横100mm、高さ145mmのめっき槽を用意し、上記の被めっき部材をめっき槽内に配置した。めっき槽内に上記の実施例1において調製した亜鉛めっき浴のそれぞれを液面が130mmの高さとなるまで入れた。めっき槽内にあらかじめ配置されたアノードおよびカソードとしての上記の被めっき部材をめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。以下、この亜鉛系めっき部材を「未加熱処理部材」という。
電流:3A/dm
通電時間:40分
めっき浴温度:25℃
得られためっき皮膜の厚さは10〜20μmの範囲であった。
上記の条件と同一条件で電気めっきを行って得た亜鉛系めっき部材を別途用意し、それらの亜鉛系めっき部材を200℃で180分間加熱した。この加熱処理後、室温まで放冷して得られた部材を、「加熱処理部材」という。
[実施例9]
実施例2に係るめっき浴を用いて、実施例8と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛めっき皮膜を有する未加熱処理部材および加熱処理部材を得た。
[実施例10]
実施例3に係るめっき浴を用いて、実施例8と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛めっき皮膜を有する未加熱処理部材および加熱処理部材を得た。
[実施例11]
実施例4に係るめっき浴を用いて、実施例8と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛めっき皮膜を有する未加熱処理部材および加熱処理部材を得た。
[比較例5]
比較例1に係るめっき浴を用いて、実施例8と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛めっき皮膜を有する未加熱処理部材および加熱処理部材を得た。
[実施例12]
実施例6に係るめっき浴を用いて、実施例8と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する未加熱処理部材を得た。なお、電気めっきの条件は次のとおりであった。
電流:3A/dm
通電時間:40分
めっき浴温度:25℃
[比較例6]
比較例4に係るめっき浴を用いて、実施例12と同じように冷間圧延鋼板に対して電気めっきを行って、厚さが10〜20μmの亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する未加熱処理部材を得た。
2.評価
(1)めっき膜厚分布
実施例1から7および比較例1から4により作製した亜鉛系めっき部材における、めっき槽内に配置されていた際にめっき液高さの1/2に相当する深さに相当する位置のめっき皮膜の厚さ(単位:μm)を、高電流密度側端部から10mmごとの位置で、蛍光X線膜厚計(SII社製:SFT−9200)により測定した。
測定結果を表1および図1に示す。
(2)めっき面およびめっき断面の観察
実施例8から11および比較例5に係る未処理加熱部材および加熱処理部材のそれぞれについて、被めっき面の中央領域に形成されためっき皮膜の表面(めっき面)を、SEM(日本電子社製走査電子顕微鏡「JSM−6480A」)にて観察した。
また、実施例8および比較例5に係る未処理加熱部材および加熱処理部材のそれぞれについて、FIB装置(日本電子社製集束イオンビーム試料作製装置「JEM−9310FIB」)を用いて、被めっき面の中央領域に形成されためっき皮膜の断面形成加工を行うとともに、形成された断面(めっき断面)の観察を行った。
亜鉛系めっき皮膜の表面および断面の観察の結果を図2から15に示す。
図7から11に示されるように、実施例8から11に係る加熱処理部材のめっき皮膜の表面(図7から10)は、比較例5に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の表面(図11)に比べて、ウイスカーやヒロックの発生量が少なく、特に、実施例8に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の表面(図7)は、ウイスカーやヒロックの発生量が際立って少ないことが確認された。
また、図12から15に示されるように、比較例5に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の断面(図14)と加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の断面(図15)とを対比すると、加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜内には大きな空洞が多数形成されていることが確認された。これに対し、実施例8に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の断面(図13)は、比較例5に係る加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜の断面(図15)において多数確認された大きな空洞がほとんど形成されていないことが確認された。
(3)めっき皮膜の深さ方向の組成分析
マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置(堀場製作所社製「JY−5000RF」)を用いて、下記の条件で、実施例8および12ならびに比較例5および6に係る未加熱処理部材の亜鉛系めっき皮膜を含む領域の深さ方向の分析を行った。
アルゴン圧力:600Pa
高周波出力:35W
分析領域の直径:4mm
分析モード:パルスシンクロモード
測定元素:H、C、S、Ni、ZnおよびFe
測定結果として得られた、検出強度(単位:発光線強度V)を縦軸とし、放電開始からの時間(単位:秒)を横軸とする深さプロファイル(各成分の含有量の深さ依存性を示すグラフ)を、図16から19に示す。
実施例8に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜(図16)は、比較例5に係る未加熱処理部材の亜鉛めっき皮膜(図17)に比べて、炭素の含有量が低い結果となった。この炭素の含有量の相違が亜鉛めっき皮膜中の気泡発生量に影響を与え、亜鉛めっき皮膜表面での異物形成等の相違をもたらしている可能性がある。
(4)ニッケル共析率
実施例5から7および比較例2から4により作製しためっき皮膜を有する部材のめっき皮膜におけるニッケルの共析率(単位:質量%)を、高電流密度側端部から10mmごとの位置で、蛍光X線膜厚計(SII社製:SFT−9200)により測定した。
測定結果を表2に示す。

Claims (13)

  1. 下記化学式(I)で表わされる化合物(A)および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。

    ここで、上記化学式(I)におけるRは、下記化学式(i)(yは2から5のいずれかの整数)または下記化学式(ii)で表わされる鎖式アルキレン基または鎖式ヒドロキシアルキレン基であり、上記化学式(I)におけるXは硫黄または酸素であり、上記化学式(I)におけるnは2から100までのいずれかの整数であって、前記化合物(A)を構成するn個の繰り返し構造単位のうち、少なくとも1つはXが硫黄である。

  2. シアン化物を含有しない請求項1に記載のめっき浴。
  3. 浴可溶性亜鉛含有物質の浴中含有量が亜鉛換算で2g/L以上60g/Lである請求項1または2に記載のめっき浴。
  4. 4級アミノ基を有するピリジニウム化合物を0.05g/L以上5g/L以下の浴中含有量でさらに含有する請求項1から3のいずれか一項に記載のめっき浴。
  5. 前記亜鉛系めっき浴は亜鉛めっき浴であって、前記化合物(A)の浴中含有量が、前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上2g/L以下である請求項1から4のいずれか一項に記載のめっき浴。
  6. 浴中含有量が0.05g/L以上5g/L以下の一次光沢剤をさらに含有する請求項5に記載のめっき浴。
  7. 前記亜鉛系めっき浴は浴可溶性金属含有物質をさらに含有する亜鉛合金めっき浴であって、
    当該浴可溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる一種または二種以上である請求項1から4のいずれか一項に記載のめっき浴。
  8. 前記化合物(A)の浴中含有量が、前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上5g/L以下である請求項7に記載のめっき浴。
  9. 請求項1に記載される化合物(A)を含有するジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤。
  10. 4級アミノ基を有するピリジニウム化合物をさらに含有する請求項9に記載のジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤。
  11. 前記ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤はジンケート型亜鉛めっき用添加剤であって、当該添加剤は一次光沢剤をさらに含有する請求項9または10に記載の添加剤。
  12. 被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に形成された亜鉛めっき皮膜とを備えた亜鉛めっき部材の製造方法であって、
    請求項5または6に記載されるジンケート型亜鉛めっき浴を用い、当該めっき浴に含有される前記化合物(A)の浴中含有量を前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上2g/L以下の範囲に管理しながらめっきすることを特徴とする亜鉛めっき部材の製造方法。
  13. 被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に形成された亜鉛合金めっき皮膜とを備えた亜鉛合金めっき部材の製造方法であって、
    請求項7または8に記載されるジンケート型亜鉛合金めっき浴を用い、当該めっき浴に含有される前記化合物(A)の浴中含有量を前記化合物(A)の塩化物塩換算で0.05g/L以上5g/L以下の範囲に管理しながらめっきすることを特徴とする亜鉛合金めっき部材の製造方法。
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